(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】探傷装置
(51)【国際特許分類】
G01N 25/72 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
G01N25/72 Y
(21)【出願番号】P 2017225527
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391021385
【氏名又は名称】株式会社KJTD
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】羽深 嘉郎
(72)【発明者】
【氏名】西谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】福井 涼
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5574261(JP,B2)
【文献】特開2006-260795(JP,A)
【文献】特開2014-078511(JP,A)
【文献】特開2008-146962(JP,A)
【文献】特開2016-103413(JP,A)
【文献】特開2005-243339(JP,A)
【文献】特開2016-024904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光することにより被検材の表面を加熱する放電管を備えた加熱装置と、前記加熱によって生じる前記被検材内部の熱の変化を観察可能とする画像取得装置とを備え、前記観察にて前記被検材の欠陥を調べるものであり、前記加熱装置はトリガ電源に接続されたトリガ導電部を備え、前記トリガ導電部が放電管の前記発光の放電を誘発するトリガ電圧を供給する探傷装置において、
前記加熱装置は、前記放電管を冷却する冷却部と、アルミニウムで形成された反射部材と、筐体とを備え、
前記冷却部は、前記トリガ電圧による誘電を遮蔽せず且つ前記放電管の発する光を透過する中空の筒状部を備え、前記放電管は、前記筒状部の中空部分へ配置され、
前前記冷却部は、前記筒状部の内周面と前記放電管の外周面との間の空間を冷却液の流路として、冷却液を移動させることにより前記放電管を水冷し、前記冷却液を前記放電管から隔てる、空気層を備えないものであり、
前記冷却液は、絶縁性を備えたものであり、
前記加熱装置は、前記放電管の前記両端を保持する一対の保持部を備え、前記保持部の内部は、前記放電管の端部を挿入する挿入空間を備え、
前記筒状部は、前記放電管よりも短く、前記各保持部の前記挿入空間内にて、左右に伸びる前記放電管の両端は前記筒状部の両端より突出し、
前記保持部は前記筒状部と共に前記筐体へ収容され、
前記反射部材は、湾曲した板状体であり、前記筒状部の外側へ前記筒状部と間隔を開けて配置され、前記筒状部を取り囲ものであり、湾曲する前記反射部材の内面は、前記放電管の光を反射する反射面であり、
前記筐体には、左右に伸びる前記放電管の左側と右側とに、ブラケットが固定されており、
前記ブラケットの夫々には、碍子が設けられ、前記碍子は、放電管の上方の右側と左側とに配置され、
前記トリガ導電部は、金属線材にて形成されたトリガ線であり、
前記トリガ導電部は、前記筒状部の外周面へ巻き付けたものであり前記筒状部の径外側へ配置され、
前記トリガ線の両端に設けられた左右の引出線の夫々は、前記筒状部へ巻き付けられた前記トリガ線の両端を引っ張るように前記トリガ線と前記碍子との間へ張られたものである探傷装置。
【請求項2】
前記各保持部の内部は
、前記挿入空間へ連絡する通水連絡部
を備え、
前記通水連絡部について、一端が前記挿入空間へ連絡し他の一端が前記保持部の外部へ連絡する空間であり、
一方の前記保持部の前記通水連絡部から前記
冷却液が前記流路へ導入され、他の一方の保持部の前記通水連絡部を通じて前記
冷却液が前記流路から排出されるものであり、
前記冷却部は、前記冷却液を供給するタンクと、前記冷却液を循環させるポンプと、チラーと、コンピュータに接続された温度センサとを備え、
一方の前記保持部の前記通水連絡部へ導入用のホースが接続され、前記導入用のホースは前記タンクへ接続され、
他の一方の前記保持部の前記通水連絡部へ排出用のホースが接続され、前記
排出用のホースも前記タンクへ接続され、回収した前記冷却液を再び前記タンクへ収容するものであり、
前記ポンプは、前記放電管の、特性と加熱エネルギーに対応する、前記冷却液の流量と前記冷却液の流速に応じた能力のものであり、
前記ポンプは、前記チラーと別途のものであるか或いは前記チラーの備えるものであり、
前記温度センサは、少なくとも前記タンクと前記導入用のホースと前記
排出用のホースの何れかに設けられ、所定以上の温度上昇を前記コンピュータから警報するか、前記チラーの冷却装置を自動的に作動させて冷却液の温度調整を行うものである請求項1記載の探傷装置。
【請求項3】
前記反射部材は、前記筒状部を挟んで前記被検材の反対側に配置される副反射部と、前記副反射部よりも前記被検材寄りに配置される主反射部とを備え、
前記副反射部は、前記放電管から受けた光を前記被検材及び前記主反射部へ向けて反射する反射面を備えたものであり、
前記主反射部は、前記放電管から直接受けた光及び前記副反射部の反射した光を前記被検材へ向けて反射する反射面を備えたものであり、
前記主反射部は、第1主反射部と第2主反射部とを備え、
前記第1主反射部と第2主反射部とは、互いの反射面を対向させ、前記第1主反射部と第2主反射部の間にて前記放電管から前記被検材へ向かう光を通すものであり、
前記第1主反射部の反射面と第2主反射部の反射面との間隔を、前記副反射部側から前記被検材側へ向け漸次広げるものである請求項1又は2に記載の探傷装置。
【請求項4】
前記副反射部は、前記主反射部と別体に形成されたものであり、
少なくとも第1主反射部と第2主反射部夫々の前記反射面について、前記放電管の長手方向と直交する平面へ投影された輪郭が放物線の一部を呈することを特徴とする請求項3記載の探傷装置。
【請求項5】
前記第1主反射部は前記副反射部の一端から延設され、前記副反射部と連続するものであり、
前記第2主反射部は前記副反射部の他の一端から延設され、前記副反射部と連続するものであり、
第1主反射部及び第2主反射部夫々の前記反射面と副反射部の反射面について、前記放電管の長手方向と直交する平面へ投影された輪郭が連続する放物線を呈することを特徴とする請求項3記載の探傷装置。
【請求項6】
前記画像取得装置は、赤外線カメラにて赤外線サーモグラフィーによる画像を取得するものであり、
前記放電管は、キセノンランプであり、
前記筒状部は、石英管であり、
前記冷却部は、前記冷却液を循環させるチラーを備え、
前記加熱装置は、前記筒状部と共に前記放電管の両端を保持する保持部を備え、
前記加熱装置は、前記保持部と前記主反射部とが取り付けられた基盤を備え、
前記筐体は前記主反射部を支持し且つ前記筐体には前記基盤が着脱可能に取り付けられ、
前記筐体は、少なくとも、前記放電管と前記筒状部と前記トリガ導電部と前記保持部と前記副反射部とを収容するものであり、
前記筐体から前記基盤を取り外すことにより、前記主反射部を前記筐体に残し、前記放電管と前記筒状部と前記トリガ導電部と前記保持部と前記副反射部とを一体にして前記筐体から取り出すことができる請求項4記載の探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電管にて被検材即ち検査対象の表面を瞬間的に加熱し、当該加熱によって生じる熱の移動を赤外線カメラなどにて可視化し観察することにより被検材内部の傷や密度むらなどの欠陥を検出し欠陥を計測する赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査が近年利用されつつある。
一般に、サーモグラフィー(thermography)は、物体から放射される赤外線を分析し熱分布を図として表した画像を指す。
赤外線サーモグラフィーを利用した探傷法は、超音波による探傷法のように水や油などの超音波の媒介液が不要なため、媒介液を付着させたくない被検材の探傷を行う場合や、製品の製造工程において、オンラインにて迅速で簡便に探傷を行いたい場合などに利用の用途が広まっている。例えば、赤外線サーモグラフィーを利用した探傷法は、金属材料のほか、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の欠陥検出の有効な手段として注目されている。
【0003】
具体的には、赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査は、キセノンランプなどにより、検査対象表面に熱を加え、その熱が内部へ拡散し内部の状況に対応して変化する表面の温度の時間変化を検知して検査対象内部の状況を解析するものである。
検査対象の内部に欠陥が存在する場合には、検査対象内部へと伝播する熱の流れの速さが変化するため、検査対象表面に局所的な温度変化が発生する。この温度変化を検出することで、探傷対象の内部に生じている欠陥を検出することができる。
特許文献1には、赤外線サーモグラフィーによる探傷方法とその装置の例が示されている。
【0004】
特許文献1に示された装置は、加熱手段02と共に赤外線カメラ等の温度測定手段03を用いて、加熱された検査対象物01の温度を測定し、時間と温度の関係を示すデータを取得する(段落0014及び
図1)。そして、データ解析ソフト05が導入されたコンピュータと結果画像表示用の表示手段06を用い取得したデータを適切に解析することによって、欠陥検出を確実に行う(段落0015~0029)。
【0005】
上記の赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査では、上記キセノンランプの照射によるランプエネルギーが検査対象物に熱エネルギーを加えるものである。当該熱エネルギーは物質内に伝搬する。上記の赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査において、当該伝播の様子を赤外線カメラで測定することで検査対象物内部の検査を行うものであるため、熱エネルギーは、対象物の表面を極力一様に加熱することが要求される。
上記要求を前提とし、上記赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査では、検査対象の大きさ、材質、検査に要求される時間間隔などによって、光源の大きさ、強度、種類を選定するのである。
赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査では、加熱装置即ち通常加熱用の光源である放電管として1つ又は複数の、上記キセノンランプ(キセノンフラッシュランプ)が用いられる。
【0006】
光源となる上記放電管は、瞬間的に発光することにより熱を発生させて瞬時に検査対象を加熱することができるものであるが、発生する熱によって消耗も激しいものであった。
具体的には、上記キセノンランプなどの放電管については、赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査で必要とする加熱エネルギーを短時間の発光で確保するものであり、その上発光する時間間隔が短い場合や、更には検査を連続して長時間実施する場合には、発生する熱によるランプの消耗は極めて大きく、ランプの性能維持、保護などのため、ランプを冷却することが必要となる。
赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査の加熱装置以外に放電管を使用する場合を含め、放電管の冷却は、ファンにて放電管へ送風したり、ヒートシンクを用いるなどの空冷によるのが一般的である。
しかし、上記赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査では、上記の通りキセノンランプを用いて瞬時にまた繰り返し多量の発熱を伴う発光を行うものであるため、より冷却能力の高い冷却手段が望まれた。
非破壊検査以外の分野では、キセノンランプはYAGレーザの励起光源として使用されることが良く知られている。即ち、YAGレーザ発振では、キセノンランプが、励起源として使用されている。特に眼科の治療や皮膚の治療などに用いるYAGレーザは、発光の繰り返しが早く出力の安定性が要求されるので一般に水冷による冷却方法が採用されている。
YAGレーザにおいては、光源からの光を拡散して対象物へ照射するという上記非破壊検査とは異なり、閉じた空間でキセノンランプを発光させて外部へ放散させることなく光ファイバ中にて光を導きレーザを発するレーザ材料にエネルギーを加えている。上記YAGレーザにおいて、貯められた冷却水へランプとレーザのYAGロッドを纏めて水没させて冷却する。そして上記YAGレーザにおいて、ランプの発光に必要なトリガ電圧は、発信器の筐体を電極として印加され、筐体の外部に対し筐体内全体を絶縁する構造になっている。
キセノンランプに関し、上記レーザ発振に使用される場合と非破壊検査に使用される場合の根本的な違いは、レーザではレーザ発振材料に光エネルギーを照射しエネルギーを集中することが目的であるのに対し、非破壊検査の場合は検査対象物の表面に極力一様にエネルギーを照射することが目的であり、このため非破壊検査の場合は上記の通りランプの光をオープンに外部即ち大気中にて放射するという点がレーザの場合と異なるのである。
照射する距離についても、レーザは至近距離であるが、赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査の場合には、検査対象物の大きさなどにより至近距離とは限らない。従って、赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査では、上記レーザの場合と比較して放電管からの熱の拡散が大きく、より効果的に放電管の水冷を行うことが必要である。
以上を鑑み本発明の発明者は、赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査に適した水冷方法として、特許文献2へ示される高圧放電ランプにおける水冷ユニットのように、水冷管を用いて通水により冷却を行う水冷について着目した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5574261号公報
【文献】特開2016-103413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のキセノンランプといった放電管は、封入されたガスを放電より発光させるものである。当該放電を発生させるためには、当該放電を誘発するトリガ即ちきっかけとなる放電が先ず必要であり、このトリガ放電を行うトリガ線を放電管の近傍へ配置する必要がある。
詳しくは、特許文献2の
図1へ示される通り、水冷ユニット20は、水冷管として円筒状に形成された内管21と外管22を備えた二重構造となっており、内管21の内部空間へ放電管(放電管ランプ10)が収容され、内管21と外管22の間に冷却水が通水される。上記トリガ線(ワイヤ14)を放電管の近傍へ配置するため、放電管と上記内管21との間にはトリガ線を通す隙間(空間)が設けられている。
従って、水冷による場合、上記隙間というトリガ線を配置するための専用のスペースが放電管の近傍特に放電管の径(方向)外側に設けられることで、内管21即ち冷却水の流路から放電管ランプ10が、トリガ線を収容する空気層に隔てられ、通水による冷却効果が低減してしまう。
本発明は、上記問題を解決して、サーモグラフィーによる非破壊検査において効果的に放電管の水冷を行うことを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、発光することにより被検材の表面を加熱する放電管を備えた加熱装置と、前記加熱によって生じる前記被検材内部の熱の変化を観察可能とする画像取得装置とを備え、前記観察にて前記被検材の欠陥を調べるものであり、前記加熱装置はトリガ電源に接続されたトリガ導電部を備え、前記トリガ導電部が放電管の前記発光の放電を誘発するトリガ電圧を供給する探傷装置について、次の構成を採るものを提供できた。
即ち、前記加熱装置は、前記放電管を冷却する冷却部を備え、前記冷却部は、前記放電管の径外側にて冷却液を移動させることにより、前記放電管を水冷するものであり、前記トリガ導電部は、前記放電管に対し前記水冷を邪魔しない位置へ配置されたことを特徴とする。
被検材の欠陥を調べるというのは、被検材が目的とする状態となっているか否か或いは被検材が目的とする状態とどのように異なっているかを調べることであり、例えば、内部欠陥又は表面欠陥について、欠陥の有無、欠陥の大きさ、欠陥の位置、欠陥の形状、又は欠陥の種類を検出することを含むものである。欠陥の種類には、傷やボイド、剥離、密度むらなどを含み、異物の存在やバリを含む。上記検出には、検査対象の温度を調べることにより、単に欠陥を検出する場合はもとより検出した欠陥の位置や大きさなどを計測することも含む。
また本発明では、前記冷却部は、前記放電管の発する光を透過する中空の筒状部を備え、前記放電管は、前記筒状部の中空部分へ配置され、前記冷却部は、前記筒状部の内周面と前記放電管の外周面との間の空間を前記冷却液の流路として、前記中空部分へ前記冷却液を流すものであり、前記冷却液は、前記トリガ電圧に対する絶縁性を備えたものであり、前記トリガ導電部は、前記流路内に配置されたものである探傷装置を提供できた。
更に本発明では、前記冷却部は、前記トリガ電圧による誘電を遮蔽せず且つ前記放電管の発する光を透過する中空の筒状部を備え、前記放電管は、前記筒状部の中空部分へ配置され、前記冷却部は、前記中空部分へ前記冷却液を流す流路を有し、前記トリガ導電部は、前記筒状部の径外側へ配置された探傷装置を提供できた。
更にまた本発明では、前記加熱装置は、反射部材を備え、前記反射部材は、前記筒状部を挟んで前記被検材の反対側に配置される副反射部と、前記副反射部よりも前記被検材寄りに配置される主反射部とを備え、前記副反射部は、前記放電管から受けた光を前記被検材及び前記主反射部へ向けて反射する反射面を備えたものであり、前記主反射部は、前記放電管から直接受けた光及び前記副反射部の反射した光を前記被検材へ向けて反射する反射面を備えたものであり、前記主反射部は、第1主反射部と第2主反射部とを備え、前記第1主反射部と第2主反射部とは、互いの反射面を対向させ、前記第1主反射部と第2主反射部の間にて前記放電管から前記被検材へ向かう光を通すものであり、前記第1主反射部の反射面と第2主反射部の反射面との間隔を、前記副反射部側から前記被検材側へ向け漸次広げるものである探傷装置を提供できた。
また本発明では、前記副反射部は、前記主反射部と別体に形成されたものであり、少なくとも第1主反射部と第2主反射部夫々の前記反射面について、前記放電管の長手方向と直交する平面(仮想面)へ投影された輪郭が放物線の一部を呈する探傷装置を提供できた。
更に本発明では、前記第1主反射部は前記副反射部の一端から延設され、前記副反射部と連続するものであり、前記第2主反射部は前記副反射部の他の一端から延設され、前記副反射部と連続するものであり、第1主反射部及び第2主反射部夫々の前記反射面と副反射部の反射面について、前記放電管の長手方向と直交する平面(仮想面)へ投影された輪郭が連続する放物線を呈する探傷装置を提供できた。
更にまた本発明では、前記画像取得装置は、赤外線カメラにて赤外線サーモグラフィーによる画像を取得するものであり、前記トリガ導電部は、金属線材にて形成されたトリガ線であり、前記放電管は、キセノンランプであり、前記筒状部は、石英管であり、前記冷却部は、前記冷却液を循環させるチラーを備え、前記加熱装置は、前記筒状部と共に前記放電管の両端を保持する保持部を備え、前記加熱装置は、前記保持部と前記主反射部とが取り付けられた基盤を備え、前記加熱装置は筐体を備え、前記筐体は前記主反射部を支持し且つ前記筐体には前記基盤が着脱可能に取り付けられ、前記筐体は、少なくとも、前記放電管と前記筒状部と前記トリガ導電部と前記保持部と前記副反射部とを収容するものであり、前記筐体から前記基盤を取り外すことにより、前記主反射部を前記筐体に残し、前記放電管と前記筒状部と前記トリガ導電部と前記保持部と前記副反射部とを一体にして前記筐体から取り出すことができる探傷装置を提供できた。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、被検材の表面を加熱する放電管を備えた加熱装置と、被検材内部の熱の移動を観察可能とする画像取得装置とを備え、前記観察にて前記被検材の欠陥を調べる探傷装置であって放電管を水冷するものについて、放電管の放電を誘発するトリガ導電部を前記水冷の邪魔とならないものとし、放電管の水冷による冷却を効果的なものとした。即ち、本発明は、トリガ線(トリガ導電部)の配置専用の空間を加熱装置内へ確保する必要をなくして、水冷によるより効果的な放電管の冷却を実現した。本発明は、特に発光方向である放電管の径の内外方向について、トリガ導電部の配置のために冷却液を放電管から隔てるような空気層を設けない。
また、本発明は、加熱装置から上記配置専用の空間を排除することにて上記加熱装置の構造の複雑化を防いだ。
また、
冷却液の流路中にトリガ導電部を配置し直接トリガ導電部を放電管の表面へ沿わせることにて、トリガ導電部専用の上記配置空間を不要とすると共に、放電管の径外において放電管に最も近い位置にトリガ導電部を配置することを可能とし、放電管径外の他の位置へトリガ導電部を配置した場合に比べて放電を行い易いものとした。
更に、本発明では、冷却液の流路の外側即ち筒状部の径外へトリガ導電部を配置することで、放電管に対し簡単にトリガ導電部を設けることができるものとした。
特に上記本願の各発明のように、a)冷却液の流路中にトリガ導電部を配置するもの、b)冷却液の流路外側に位置する筒状部の外側へトリガ導電部を配置するものでは、特許文献2に示す、放電管(高圧放電ランプ10)を内包する内管21を設け内管21と放電管との間の空間へトリガ導電部(導電性ワイヤ14)を配置するもののように(段落0023,0024及び
図1)、冷却液の流路と間へ内管21を配置し上記空間にて隔するという構成を採る必要がない。従って、本願の上記各発明では、特許文献2のように冷却液の流路から放電管を隔てて水冷を邪魔するものと異なり、トリガ導電部の配置のための構成によって水冷を邪魔せず、冷却液を直接放電管へ接触させることができ、より効果的な放電管の冷却が行える。
また上記b)の場合トリガ導電部の配置に保持部を関与させる必要がなく、トリガ導電部の取り回しを容易なものとした。
更に、被検材へ効率よく放電管の発する光を向ける反射部材について、主反射部と当該主反射部とは別体に形成された副反射部とで構成することにより、放電管(を内包する筒状部)と、反射部材の反射面の各位置との間隔の設定が容易となり、特にb)の冷却液の流路外側に位置する筒状部の外側へトリガ導電部を配置するものであっても反射部材へ放電させない適切な間隔を確保する設計を行い易いものとした。
また、上記筐体から基盤を取り外すことにより、基盤と一体のユニットとして放電管と筒状部とトリガ導電部と保持部と副反射部とを、筐体から取り出すことができるため、加熱装置の主要部のメンテナンスや交換が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は本発明に係る赤外線サーモグラフィーによる探傷装置の概要の説明図、(B)は本発明の他の実施の形態に係る赤外線サーモグラフィーによる探傷装置の概要の説明図。
【
図2】本発明に係る探傷装置の一実施の形態を示す全体説明図。
【
図3】(A)は本発明に係る探傷装置が備える加熱装置の一実施の形態を示す略縦断面図、(B)は(A)の要部拡大断面図。
【
図4】(A)は本発明に係る探傷装置が備える加熱装置の更に他の実施の形態を示す略縦断面図、(B)は(A)の要部拡大断面図。
【
図5】
図2へ示す反射部材の平面図、(B)は(A)の反射部材の正面図。
【
図7】(A)は
図6の主反射部から放電管ユニットを取り外した状態を示す断面図、(B)は(A)の主反射部の平面図。
【
図9】本発明に係る探傷装置の反射部材の更に他の実施の形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(探傷装置の概要)
本発明は、金属材料又はプラスチック、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を含む複合材料、セラミック、その他の材料を検査対象即ち被検材として、光を照射することにより被検材を加熱し、前記加熱によって生じる前記被検材内を伝導する熱の変化を観察することにより、前記被検材の欠陥を調べるものである。ここでは、特に被検材としてCFRPを例に挙げ、図面に基づき本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1(A)へ示す通り、この例は、被検材mへ照射した光による被検材mからの輻射熱のサーモグラフィーを解析するものである。
図1(A)及び
図2へ示す通り、この探傷装置は、画像取得装置1と、加熱装置3とを備える。
【0013】
(画像取得装置1)
画像取得装置1は、赤外線カメラ10と、画像処理装置11とを備える。
赤外線カメラ10は、上記被検材mへ向けられ、被検材mのサーモグラフィーを撮影する。
図2において、白抜きの矢印が被検材mへ向けて照射した光を示し、実線の太い矢印が被検材mから赤外線カメラ10へ向けて放出された赤外線を示す。
被検材mを建造物の壁面などの所定の場所へ定着されたものとする場合や被検材mの重量が大きく移動が難しい場合は、上記画像取得装置1と加熱装置3とを被検材mのある場所へ配置し、被検材mに対し必要な間隔や向きを採るように、画像取得装置1と加熱装置3との位置を調整する。
一方、被検材mが可搬性を有する場合、所定の場所にセットされた画像取得装置1と加熱装置3に対し被検材mの位置を調整するものとしてもよく(
図2)、勿論画像取得装置1と加熱装置3と被検材mの夫々の位置を調整するものとしてもよい。
被検材mが軽量なものである場合、赤外線カメラ10や加熱装置3(放電管4)に対して位置が変わらないように、被検材mを適切な固定手段にて位置を固定する。例えば、台に固定されたホルダにて被検材mを傷つけないように保持させることで、被検材mを当該台に固定すればよい(図示しない)。但し、被検材mを定位置に設置して探傷を行うものに限定するものではない。例えば、本発明は、製造ライン上の被検材mに対し探傷を行うものも含む。製造ライン上の被検材mに対し探傷を行う場合、加熱装置3の放電管4の発光は、製造ライン上を移動中の被検材mに対し行い、被検材mが赤外線カメラ10の前に到達した際、ラインを停止して赤外線カメラ10の前で撮影する間被検材mを静止させればよい。また、赤外線カメラ10をラインの移動に同期して移動させるものとし、製造ラインを停止させずに探傷を行うものとしてもよい。更に、赤外線カメラ10を固定したまま、ラインを停止させずに通過時のみ撮影するものとしても実施可能である。
【0014】
画像処理装置11は、赤外線カメラ10で撮影した映像を可視化してオペレータにおいて解析できるようにモニタへ表示する。モニタへの表示は、赤外線カメラ10が捉えた熱画像をそのまま表示するものとしても、或いは赤外線カメラ10が捉えた熱画像をデータとして記録し、記録されたデータを再生して表示するものとしてもよい。
この例では、上記探傷装置は、解析ソフトウエアを導入したコンピュータ(以下PC)にて構築された解析装置2を備え、画像処理装置11の取得した画像データからPCが熱の移動を解析し被検材の欠陥の有無や欠陥の大きさの判定を行い、またはPCがオペレータによる上記判定を補助する。
【0015】
また、上記画像処理装置11も上記PCにて構築することができる。具体的には、この例では、画像のキャプチャーボード或いは周知の他のインターフェースを介して赤外線カメラ10をPCへ接続し、PCのモニタ12へサーモグラフィーを表示可能とする。また上記画像処理装置11は、PCの備える記憶装置へキャプチャーした画像データを保存し、保存した当該画像データをモニタ12へ表示可能とし、更に上記解析結果をモニタ12へ表示可能とする。上記解析ソフトウエアには、上記画像データの取り込みもサポートするものを用いればよい。
【0016】
簡単に欠陥の有無を判定する原理について触れると、被検材mに傷や、剥離、ボイド(空隙)などの欠陥F1,F2,F3がある場合、加熱装置1にて被検材mへ与えられた熱(
図1(A)のa1,a2,a3)については欠陥F1,F2,F3中の空気に阻害されて移動が遅くなる。従って、欠陥F1,F2,F3のある位置(光を照射した被検材mの面)における温度変化及び温度変化の時間と欠陥のない位置(光を照射した被検材mの面)における温度変化及び温度変化の時間を比較すると温度変化や温度変化の時間は異なるのである。当該温度変化及び温度変化の時間を分析することにより、被検材mにおける欠陥や当該欠陥の大きさや位置などを検出することができる。尚
図1(A)のPCのモニタにおいて、g1は最も浅い位置にある欠陥F1の熱画像を、g2は欠陥F1よりも深い位置にある欠陥F2の熱画像を、g3は欠陥F2よりも深い位置にある欠陥F3の熱画像を示している。
【0017】
(加熱装置3)
加熱装置3について、第1の実施の形態について説明する。
図2へ示す通り、加熱装置3は、放電管4と、保持部30と、電源(以下発光用電源5)、トリガ導電部6と、トリガ電源7と、冷却部8と、反射部材9と、筐体13とを備える。
【0018】
放電管4は、放電により発光する発光気体を封入した封入管である。放電管4の両端即ち放電管4の正負両電極40の夫々が当該放電の上記発光用電源5の電極の夫々と接続される。前記封入管は、透明の石英管である。この例では、放電管4は、キセノンガスが充填されたキセノンランプである。放電管4には、特に発光時間が短く、短い時間間隔を開けて発光を繰り返すことができるキセノンフラッシュランプが好適である。
上記の放電管4の正負の電極40は、放電管4(石英管)から露出する露出部分40aと、放電管4内へ内包される内包部分40bとを備える。
【0019】
保持部30は、円筒状の放電管4の両端に一対配置され、放電管4の両端を保持する。保持部30は、絶縁性と耐熱性を備えた素材にて形成する。具体的には、放電管4の放電・発光時に流れる電流を絶縁し、当該放電・発光時に瞬間的に生じる高熱に耐える耐熱性を備えた素材にて、保持部30を形成するのが望ましい。
保持部30全体は、テフロン(登録商標)、アクリル、その他の熱可塑性エンジニアリングプラスチックといった絶縁材にて形成することができる。
例えば、保持部30の上記熱影響を受ける部分は、耐熱性を備えたセラミックにて形成するのが望ましい。また保持部30の全体について耐熱性を備えたセラミックにて形成してもよい。保持部30に用いる上記セラミックについては、アルミナセラミックが好ましい。但し放電管4の放熱に対し適切な耐熱性を備えたものであれば、アルミナセラミック以外の他のセラミックや、セラミック以外の素材を採用して実施することも可能である。
保持部30として使用可能な材料には、例えば、耐熱材料ファインセラミックでは、アルミナ以外に、ジルコニア、炭化珪素、石英を挙げることができる。
図3(A)へ示す通り、保持部30の内部は、放電管4の端部を挿入する挿入空間30aと、通水連絡部30bとを備える。上記挿入空間30aへ放電管4の端部が嵌め込まれているのである。
この例では、放電管4の挿入空間30aへ挿入される部位へ、シリコン系素材、具体的にはシリコンなどの耐熱素材で形成された冷却液bの液漏れ防止用のパッキン34を装着し、挿入空間30aへ放電管4を嵌めている。
尚、
図3(A)では図面の煩雑を避けるため加熱装置3の反射部材9や筐体13は省略して描いている。
両保持部30の挿入空間30aの夫々には、放電管4の電極40の露出部分40aが通される。挿入空間30aから突き出て各保持部30の外部へ露出する電極40の露出部分40aの夫々へ、発光用電源5と接続された電線51,52即ち発光のための放電用の入力ケーブル(入力線)が接続されているのである。
詳しくは放電管4左右の電極40の露出部分40aには、ソケット51a,52aが着脱自在に装着される(
図3(A))。一方のソケット51aは上記一方の電線51の端部に設けられている。当該電線51の他の一端が上記発光用電源5の正負一方の極へ接続されている。
他の一方のソケット52aは上記他の一方の電線52の端部に設けられている。当該電線52の他の一端が上記発光用電源5の正負他の一方の極に接続されている。
放電管4は両ソケット51a,52aへ上記の通り装着されることにより、電気的に発光用電源5へ接続可能となる。
上記発光用電源5は、コンデンサを備える。発光用電源5は、商用電源に接続されて放電管4の発光に必要な蓄電を行う。
【0020】
また、通水連絡部30bは、一端が挿入空間30aへ連絡し他の一端が保持部30の外部へ連絡する空間である。
この例では、更に保持部30内に、一端が通水連絡部30bと連絡し他の一端側が保持部30の外部へ連絡する引出線挿入部30cが設けられている。
図2へ示す放電管4の左右に配された一対の上記保持部30は、冶具32を介して基盤31へ固定されている。
図2の33は左右の保持部30を締結し放電管4に対する保持部30の位置を定める位置決め部材を示している。左右の保持部30の外側へ配された一対の上記位置決め部材33は、夫々板状の部材であり、電極40の露出部分40aを通す穴hを備える(
図3)。穴hの径は、放電管4の電極40の上記露出部分40以外の部分よりも小さい。
位置決め部材33の夫々には、当該穴h以外の位置にて締結部材33aが突き通される(
図2)。締結部材33aは座面を提供する頭部を備えたボルトであり、締結部材33aの軸外周面に雄螺子が形成されている。
図2において、左右の締結部材33aの前記頭部のみ現れている。前記位置決め部33には、締結部材33aを通す穴が設けられ当該穴を通り抜けた締結部材33aの先端側は保持部30に設けられた螺子穴にねじ込まれる。当該螺子穴には雌螺子が形成されており締結部材33aの前記雄螺子がねじ込まれるのである。
締結部材33aの頭部座面は、保持部30との間に位置決め部材33を挟み保持部30と位置決め部材33とを締結する。保持部30へ固定された位置決め部33にて、保持部30に対し放電管4の位置決めがなされる。
また基盤31は、ネジ止め・ボルト止めなどの周知の取付手段により、直接又は間接的に上記筐体13へ着脱自在に固定される板材である。基盤31は、筐体13へ取り付けることによって、筐体13の一部を構成する。例えば
図2へ示す例では、筐体13は下方に開口を備え、基盤31の上記取り付けによって当該開口を塞いでいる。
基盤31の上面即ち筐体13を臨む面に放電管4と筒状部81とトリガ導電部6と保持部30とが設けられ、筐体13へ基盤31を取り付けることにより、放電管4と筒状部81とトリガ導電部6と保持部30と基盤31とをまとめて筐体13内へ収容することができる。
放電管4の交換時には、基盤31を筐体13から取り外すことにより、放電管4と筒状部81とトリガ導電部6と保持部30とを基盤31と共に取り外すことができる。即ち、筐体13に対して、放電管4と筒状部81とトリガ導電部6と保持部30と冶具32と位置決め部材33と基盤31とを1つのユニットとして一体に着脱できる。
図2へ示す例では、上記ユニットとは別にトリガ電源7が筐体13内に収容されている。但しトリガ電源7は筐体13の外部へ配置するものとしてもよい。
【0021】
トリガ導電部6は、この例では、トリガ電圧を与える導線である(以下必要に応じてトリガ線6と呼ぶ)。
トリガ線6の基端は上記トリガ電源7の出力電極へ接続される。トリガ線6がトリガ電源7から電圧を受けて放電管4発光の際の放電を誘発する。
トリガ線6は、絶縁材で被覆されていないむき出しの金属線であり、トリガ線6基端は、絶縁材で被覆された電線61(以下導電線61と呼ぶ。)を介してトリガ電源7に接続されている。詳しくは、トリガ線6(トリガ導電部6)は引出線60を介して導電線61に接続されている。トリガ線6と引出線60は一体に形成された金属線である。即ち、トリガ線6と引出線60は1本の線材であり、ここでは、当該線材において、放電管4へ配置され放電に関与する区間をトリガ線6と呼び、放電管4から離れて放電に関与しない区間を引出線60と呼ぶ。
図2へ示す例では、引出線60は上記引出線挿入部30c内に通される。
トリガ電源7には、必要なトリガ電圧を供給できるものを採用する。具体的には、トリガ電源7は、20~30KVのトリガ電圧を供給する能力を備えたものを採用する。
トリガ電源7は、トランス(トリガトランス)であり、当該トランスの一次側が上記発光用電源5に接続されている。
この例では、トリガ線6は、ニッケルの線材である。但し、トリガ線6は、トリガ放電を行うことが可能な導線であれば、ニッケル以外の金属線を採用して実施することも可能である。
トリガ線6は、放電管4へ向け安定して放電を誘発する位置にあればよい。トリガ線6は、放電管4の電極40の露出部分40aを避け、放電管4の長手方向について放電管4の正極と負極の露出部分40a同士の間にのみ配置される。言い換えるとトリガ線6は、放電管4の長手方向について正負両電極40の露出部分40aに挟まれた区間のみに配置されておれば、放電管4の正負両電極40の内包部分40bと前記長手方向の位置について幾分重なるものであってもよい。トリガ線6を提供する上記線材において、上記引出線60は、放電しないように露出部分40a外周面から露出部分40aの径外側へ離されている。
上記発光用電源5は、信号線にて上記PCに接続されている。発光用電源5は、上記画像取得装置1による画像取得時にPCからの指令を受けて、蓄電した電荷を放電管4へ放出する。発光用電源5に接続されているトリガ電源7は、発光用電源5の上記電荷の放出動作に伴いトリガ線6へ必要な電圧を供給する。
【0022】
トリガ線6は、この例では、
図3(A)(B)へ示す通り、放電管4の外周面へ直接巻き付けられている。即ち、トリガ線6は放電管4へ螺旋状に巻きつけられている。
トリガ線6は、放電管4の光の放出を阻害しないように放電管4の外周へ疎に巻回されており、光を遮るような密に巻かれるものではない。トリガ線6の長さは、放電管4の径や長さ、種類、発熱量等その他の事項により適宜変更可能である。
上記の通りトリガ線6を放電管4へ巻き付けるものに限定するものではなく、巻き付けずに単に放電管4の外周面へ沿わせるのを排除するものではない。例えば、放電管4の長手方向に沿って真っすぐ伸びるものであってもよい。また、トリガ線6は放電管4と接触するものに限らず、トリガ線6は後述する冷却液bの流路r内に配置されるのみで放電管4とは接触しないものとしてもよい。
上記のトリガ線6の全区間が放電管4と接触するものや、トリガ線6の全区間が放電管4と接触しないものの他、トリガ線6の一部が放電管4表面と接触しトリガ線6の他の部分は放電管4と接触しないものとしても実施できる。例えば、放電管4の表面に巻き付けたトリガ線6が部分的に放電管4表面から浮き上がって放電管4から離れたものとなっていてもよいのである。
この例では、トリガ線6の先端は、輪6aにされて放電管4の外周へ留められている。
【0023】
上記赤外線サーモグラフィーで被検材mの広い面積を検査する場合には、放電管4には光の放射により広い面を加熱する能力を備えたものを採用する。特に消費電力について限定はないが、被検材mや探傷の条件に応じて、放電管4には、1回の発光につき500Jから20000Jの電力を消費するものを採用することが考えられ、特に放電管4には1回の発光につき1000J~12000Jの電力を消費するものを採用することが考えられる。
CFRPの表層における剥離を検出する場合において2000J~4000Jの電力消費のもので実施可能であることを確認している。
但し、被検材mによって放電管4は上記数値範囲以外の能力のものを採用して実施するのを排除するものではない。即ち、1回の発光につき、500J未満の消費電力である放電管4や20000Jを超える消費電力の放電管4の採用を排除するものではない。
上記冷却部8は、上記発光にて加熱する放電管4の冷却の能力を備えたものを用いる。
冷却部8について具体的に説明する。
冷却部8は、上述の冷却液bの流路rを形成する筒状部81と、冷却液bを供給するタンクTと、冷却液bを循環させるポンプPとを備える。具体的には、筒状部81は中空で透明な石英管であり、筒状部81の内径は、放電管4の外径よりも大きい。筒状部81は、放電管4の外部へ配置される。即ち、筒状部81の中空部分へ放電管4が配置される。放電管4の外周面と筒状部81の内周面との間の隙間が冷却液bの上記流路rを構成する。流路rである上記隙間へ冷却液bが流され、冷却液bは、移動中放電管4の表面と直接接触する。上記の通り筒状部81は、放電管4の径外へ上記冷却液bの流路を形成する水冷管である。
筒状部81は放電管4と共に保持部30の挿入空間30aへ嵌められる。筒状部81は、
図3(A)へ示す通り、放電管4よりも短く、保持部30の挿入空間30a内にて、放電管4の両端(電極40の露出部分40a,40b)は筒状部81の両端より突出している。挿入空間30aの径について、筒状部81の挿入される区間は上記露出部分40a,40bを収容する小径区間よりも大きい大径区間である。上記小径区間と大径区間は同心とされ、上記大径区間へ筒状部81を嵌め、上記小径区間へ放電管4を嵌めることにより、放電管4と筒状部81の周方向の各位置において均等に流路rとなる隙間を設けることができる。
また、放電管4において上記小径区間に嵌められた露出部分40a,40bへ上記水漏れ防止用のパッキン34が装着されているのである。筒状部81の挿入空間30aへ嵌められる部位にも、放電管4の上記水漏れ防止用のパッキン34と同様素材のパッキン35が装着されている。
冷却液bに関し、上記のパッキン34,35により保持部30から外部へ漏れることが防がれており、冷却液bにより確実に放電管4からの熱を排除することができる。
この例では、引出線挿入部30c内の上記引出線60の周囲の隙間を放電管4の放熱性に耐える耐熱性を備えた周知の接着剤やパテにて塞いでいる。
上記の筒状部81即ち水冷管が、放電管4の発する光を通すことにより当該光を外部へ放出し、被検材mを加熱する。
【0024】
一方(
図2及び
図3(A)中左側)の保持部30の上記通水連絡部30bへ導入用のホース83が接続され、導入用のホース83は上記ポンプPを介して上記タンクTへ接続されている。他の一方(
図2及び
図3(A)中右側)の保持部30の上記通水連絡部30bへ排出用のホース84が接続され、回収した冷却液bを再びタンクTへ収容する。
一方の保持部30の通水連絡部30bから水冷管内に導入された冷却液bは、放電管4及び上記水冷管の長手方向沿って流れ(
図3(B)の白抜き矢印)他方の保持部30の通水連絡部30bから排出され、タンクTを経て再び上記一方の保持部30の通水連絡部30bから水冷管内に導入されるのである。
また、冷却液bは、絶縁性を備えた液体である必要がある。絶縁性を備えた液体として、冷却液bに純水を採用すればよい。
図示は省略するが、タンクT又はホース83,84に温度センサと導電率計とを備える。上記温度センサと導電率計はPCに接続され、所定以上の温度の上昇や所定以上の冷却液bの純度の変化が生じれば、PCから警報が出される。オペレータは冷却液bが冷却に必要な温度であるか否か更に絶縁性を備える純度を保っているかモニタ12を見て確認できる。
冷却液bの絶縁性が低下すれば、タンクTの冷却液bを絶縁性の高いものに入れ替えればよい。冷却液bの温度が高くなった場合も、冷却液bの入れ替えで対応することができるが、ここでは、冷却部8はチラーを備え(図示しない。)、上記温度センサの温度の検出によって自動的に冷却装置を作動させて冷却液bの温度を調整するものとする。従って、
冷却液bの純度変化のみ上記警報を行えばよく、導電率計のみPCへ接続して実施することも可能である。
具体的には、タンクTには収容した冷却液を冷却する熱交換器などの上記冷却装置が設けられている。尚、冷却装置は、タンクTと別にホース83,84へ設けることにて、冷
却液bの循環経路中に配置するものとしてもよい。
上記にて、冷却液bは、一定の水温に保たれ水質について純水であることを維持できる。
冷却液bの流量とその流速は、ランプの特性、加熱エネルギーに対応した値が選択される。即ち当該値の選択に応じた能力のものを上記ポンプpに採用する。但し、別途の上記ポンプpを設けるのではなく、上記チラーの備えるポンプにて冷却液bを循環させるものとしてもよい。
また、冷却液bの循環経路の途中にイオン交換器を設けて、冷却液bの絶縁性の低下に対し、自動的に冷却液bの絶縁性を回復するものとしてもよい。
上記において前記温度センサと前記導電率計はPCへ接続するものとしたが、前記温度センサと前記導電率計はPLC(programmable logic controller)へ接続してシーケンス制御するものとしてもよい。
【0025】
反射部材9の例を
図5乃至
図7へ示す。
反射部材9は、放電管4が発した光を効率よく被検材mへ向けるものである。
反射部材9は、湾曲した板状体である。反射部材9は、筒状部81の外側へ筒状部81と間隔を開けて配置され、筒状部81を取り囲む。湾曲する反射部材9の内面は、放電管4の光を反射する反射面90である。
詳しくは、反射部材9は、主反射部92と、副反射部91とを備える(
図6)。
副反射部91は筒状部81を挟んで被検材mの反対側に配置され、主反射部92は、副反射部91よりも被検材m寄りに配置される。
主反射部92と副反射部91夫々の内面が、上記反射面90をなすものである。
副反射部91の反射面90は放電管から受けた光を被検材m及び主反射部92へ向けて反射し、主反射部92の反射面90は放電管4から直接受けた光及び副反射部91の反射した光を被検材mへ向けて反射する。
また、主反射部92は、第1主反射部92aと第2主反射部92bとを備える。第1主反射部92aと第2主反射部92bとは、互いの反射面90を対向させる。第1主反射部92aと第2主反射部92bとは夫々放電管4(筒状部81)側から被検材m側へ伸び、第1主反射部92aと第2主反射部92bの間にて放電管4から被検材mへ向かう光を通す。反射部材9の側面視において、第1主反射部92aと第2主反射部92bは、互いの反射面90間の間隔を、副反射部91側から被検材m側へ向け漸次広げる。
【0026】
図5(A)及び
図6へ示す通り副反射部91は樋状に形成されている。
主反射部92の側面側は、側板95で覆われている。側板95の内側面は、この例では主反射部92の反射面90よりも反射率の低い面である。但し、側板95の内側面は、主反射部92の反射面90よりも反射率の低い面に限定するものではなく、側板95の内側面の反射率は、主反射部92の反射面90の反射率と同じ若しくは主反射部92の反射面90の反射率よりも大きなものであってもよい。
また、第1主反射部92aと第2主反射部92bとからなる主反射部92において、側板95は第1主反射部92aと第2主反射部92bとを接続する接続面を提供する(
図5(B)及び
図6)。
例えば、被検材mを放電管4の上方に配置し下方から上方の被検材mへ向けて光を発するものとし尚且つ加熱装置3の前後方向について第1主反射部92aは第2主反射部92bの前方に配されたものとすると、側板95は、主反射部92の左右に配置され、第1主反射部92aの左右側辺の夫々と第2主反射部92bの左右側辺の夫々とを接続する。但し、主反射部92の左右を覆うものであればよく、側板95は第1主反射部92a及び第2主反射部92bに接続されたものでなくてもよい。側板95は主反射部92と一体である必要はないのである。
上記主反射部92の底を上記副反射部91が塞ぐ。この例では、副反射部91は主反射部92と別体に形成され主反射部92から分離できる(
図6及び
図7)。主反射部92の上端は、光の放射口93として開放されている。
図示を省略するが、主反射部92は、螺子、ボルト、ピン或いは溶接といった周知の固着手段により前述の筐体13へ固着されている。
【0027】
この
図5~
図7へ示す例では、副反射部91は、放電管4と筒状部81とトリガ導電部6と保持部30と冶具32と位置決め部材33と共に上記基盤31へ設けられ、上記ユニットの一部として筐体13から取り外すことができる(
図2、
図5~
図7)。上記ユニットを筐体13から取り外すことにより、副反射部91を筐体13へ固着している主反射部92と分離して筐体13から取り外すことができる。
図7(A)(B)へ示す通り、副反射部91が取り除かれた主反射部92の底は、開口部94として開口する。
【0028】
図6へ示す通り、この例では、副反射部91と主反射部92夫々の反射面90については、放電管4(筒状部81)の長手方向と直交する平面(仮想面)へ投影された輪郭が放物線を呈する。
上記放物線の焦点と放電管4の中心軸(仮想線)とが一致するように、反射部材9に対し放電管4及び筒状部81を配置するのが好ましい。但し上記焦点に対し放電管4の中心軸が若干ずれていたとしても反射に支障のない範囲であればよい。
放電管4であるキセノンランプが反射部材9の反射面の呈する放物面の上記焦点上に配置されることにより、放電管4の発する光を乱反射し、加熱装置3は放射口93から被検材mへ向けて光を放射する。
【0029】
反射部材9の少なくとも反射面90には、反射率の高い金属板を採用することができる。この例では、反射部材9としてアルミニウムを採用する。また、反射部材9の反射面に複数の凹凸を分布させることにより、受けた光を乱反射させて均一な光とすることができる。
図6及び
図7へ示す例の他、主反射部92の上記輪郭即ち第1主反射部92aと第2主反射部92bの上記輪郭が放物線の一部を呈するものとし、副反射部91は放物線の一部と異なる輪郭を呈するものとしてもよく、副反射部91を
図6及び
図7へ示す樋状以外の形状に形成するものとしてもよい。また、副反射部91の上記輪郭についても、厳密な放物線に限定するものではなく、適切な反射を行うことができれば放物線と若干異なる形状を採るものとしてもよい。
【0030】
次に
図4(A)(B)を用いて、加熱装置3の第2の実施の形態について説明する。
この第2の実施の形態において、トリガ線6は冷却部4を構成する筒状部81の外周面へ配置されている。
この例は、特にトリガ線6を上記筒状部81の外周面へ螺旋状に巻き付けたものである。但し、トリガ線6は巻き付けずに単に筒状部81の外周面へ沿わせたものであってもよい。
図4へ示す第2の実施の形態では、トリガ線6は冷却部4を構成する筒状部81の外周面へ配置されるので、トリガ線6は放電管4や筒状部81の構成に影響を与えることなく設置できる。
また第2の実施の形態についても、冷却液bは絶縁性を備えたものとするのが好ましい。第2の実施の形態においてトリガ線6は冷却液bと直接接触するものではないが、トリガ線6に電圧が掛かった際、
冷却液bに通電してしまい発光の放電の誘発が適切に行われないという事態を避けるためである。
【0031】
第2の実施の形態では、アルミニウムで形成された反射部材9へトリガ線6が放電を行う危険があるので、トリガ線6と反射部材9の各部位との間の間隔を上記放電を生じさせない大きさとすることが必要である。当該大きさは、トリガ線6へ10~30kvの電圧を印加する場合3mm以上とするのが適切である。トリガ線6の供給する電圧によって当該大きさを変更すればよい。
【0032】
また、
図4(A)へ示す例では、トリガ電源7は、ブラケット14にて、筐体13へ取り付けられている。ブラケット14は棚状に形成された板材である。
ブラケット14は、左右に伸びる放電管4の右側と左側とに配置され筐体13へ固定されている。左右のブラケット14の夫々には、碍子62が設けられている。上記ブラケット14上部の棚部分の夫々に設けられることにて碍子62は、放電管4の上方の右側と左側とに配置される。
一端をトリガ電源7に接続された導電線61の他の一端は、一方のブラケット14の碍子62へネジ止めされている。そして筒状部81の外周面へ巻き付けられたトリガ線6の一端から伸びる引出線60の他の一端は、上記導電線61と共に上記碍子62へ止められ、当該引出線60と導電線61とが電気的に接続される。前記側板95には貫通部分96が設けられている(
図8)。当該引出線60は、貫通部分96を通ってトリガ線6の一端と碍子62に止められた導電線61とを結ぶ。
【0033】
また、
図4(A)へ示す通り筒状部81の外周面へ巻き付けられたトリガ線6の他の一端も、上記トリガ電源7のブラケット14と放電管4(筒状部81)を挟んで反対側に位置するブラケット14の碍子62へネジ止めされている。主反射部92の左右両側の側板95の夫々に上記貫通部分96が形成されている。上記反対側のブラケット14の碍子62にネジ止めされる上記他の一方の引出線60も、他方の側板95の貫通部分96へ通される(
図4(A)及び
図8)。この例では両貫通部分96は、側板95に設けられた切り欠き部分であるが、側板95に穴を設けて貫通部分96としてもよい。
左右の引出線60は、筒状部81へ巻き付けられたトリガ線6の両端を引っ張るようにトリガ線6と碍子62との間へ張られる。引出線60は、弛みのないように張っておくのが望ましい。
貫通部分96は、引出線60と反射部材9との絶縁性を確保するため、トリガ線6と碍子62との間に張られた引出線60と反射部材9(主反射部材92)とが接触しない十分な大きさを有するものとする。貫通部分96は、
図8へ示す紡錘形の輪郭を備えたものに限定するものではなく、他の形状を備えたものであってもよい。また、引出線60や導電線61、碍子62、トリガ電源7、ブラケット14の各配置は、図示したものに限定するものではなく適宜変更可能である。更にブラケット14の形状についても図示したものに限定するものではなく適宜変更可能である。
【0034】
トリガ線6と反射部材9の各部位との間の間隔に関し、上記放電を生じさせない大きさを確保するのに適した変更例について
図9へ示す。
図9へ示す例は、反射部材9について、副反射部91を主反射部92と別体に形成する点、
図7及び
図8へ示す例と同様であるが、主反射部92の開口部94の縁と副反射部91の上端とを一致させるのではなく、主反射部92の開口部94から間隔を開けて副反射部91が配置される。即ち、筐体13へ基盤31を取り付けた状態において、
図9へ示す通り、放電管4(及び筒状部81)と共に副反射部91を、主反射部92から間隔を開けて配置するものとする。当該配置により、副反射部91と主反射部92の上記輪郭は、夫々放物線の一部を呈するものの、放物線全体としては若干途切れたものとなる。しかし、筒状部81外側のトリガ線6と、主反射部92との間の間隔を確保する設計が容易である。
第2の実施の形態及び
図9へ示す変更例も特に言及しなかった事項については、上記第1の実施の形態と同様である。
【0035】
(装置の他の変更例)
図3及び
図4へ示す各実施の形態において、トリガ導電部6は、線材即ちトリガ線6としたが、
図3及び
図4の夫々の実施の形態において、トリガ導電部6は板状の部材(金属板)であってもよく、更には、放電管4表面、筒状部81内周面又は筒状部81外周面へ、メッキにより形成された金属メッキ層であってもよい。
冷却部8は、上述した水冷の構成に加えて冷却用ファンなどの空冷の構成を備えるものとしてもよい。
【0036】
また、放電管4の交換時など前述のユニットを筐体13から着脱するものとしたが、この他、上記基盤31から筒状部81と共に直接放電管4を取り外すものとしてもよい。具体的には、
図2へ示す筐体13の主反射部92の放射口93から放電管4を内包する筒状部81を取り出すものとしてもよい。筒状部81の上記放射口93からの取り出しにおいて、放電管4の両端(電極40の露出部分40a)付近が反射部材9の側面部95に邪魔されないように、反射部材9や保持部30の寸法や形状を定めればよい。
また、筒状部81の上記放射口93からの取出しにおいて、筒状部81のみならず、筒状部81と共に副反射部91も上記放射口93から取り出せるように形成してもよい。
更に、
図2へ示す筐体13から副反射部91と共に主反射部92も取り外せるものとしてもよい。副反射部91と共に主反射部92を筐体13から取り外すものとする場合、上記ユニットに主反射部92を含むものとし、基盤31の筐体13からの取外しによってユニットの他の構成部材と共に主反射部92を取り外せるものとしてもよい。
図2へ示す例では、基盤31は筐体13底部の上記開口を塞ぐものとしたが、筐体31の底部以外に上記ユニットを出し入れする開口を設けて実施するものとしてもよい。筐体31の底部以外の開口から上記ユニットを出し入れする場合、基盤31で当該開口を塞ぐものとせず、別途の蓋体にて当該開口を塞ぐものとしてもよい。
【0037】
副反射部91は、主反射部92と一体に形成されたものとし主反射部92から分離できな
いものとしてもよい(図示しない)。即ち、第1主反射部92aを副反射部91の一方の上端から延設されて副反射部91と連続するものとし、第2主反射部92bを副反射部91の他の一方の上端から延設されて副反射部91と連続するものとしてもよい。
副反射部91を主反射部92と一体とする場合も主反射部92から分離可能とする場合も、放電管4の長手方向と直交する平面へ投影した輪郭が、上記放物線を描くものとするのが好ましい。但し、上記輪郭を放物線に近似する他の曲線とするのを除外するものではない。
尚、反射部材9の上記各説明において、放電管4の上方へ被検材mを配置するものとしたが、各部の相対的な位置関係を説明する便宜上のものであり、放電管4の上方へ被検材mを配置するのに限定するものではない。
【0038】
(探傷方法の変更例)
上述してきた各実施の形態では、被検材mに対し、加熱装置3(放電管4)と同じ側に赤外線カメラ10を配置して画像を取得するものであった。
この他
図1(B)へ示す通り、被検材mを挟んで加熱装置3(放電管4)と反対側に赤外線カメラを配置して画像を取得するものとしても実施できる。
図1(B)へ示す例では、
図1(A)へ示す例と異なり、加熱装置3(放電管)と赤外線カメラ10との間へ被検材mを配置し、加熱装置3から発されて被検材mを伝導してきた熱を被検材mを挟んで加熱装置3と反対側から観察するものである。
図1(B)へ示す例では、赤外線カメラ10の周囲を覆うケーシングcの天部c1に被検材mが載せられる。被検材mを載せたケーシングcの天部c1は、上下に貫通する貫通部c2を備える。被検材mは、貫通部c1を塞ぐようにケーシングcの上記天部へ載せられる。ケーシングc内にて上記貫通部cへ向けられた赤外線カメラ10は、貫通部c2を通じて被検材mを伝導する熱についてサーモグラフィーを撮影することができる。
図1(B)へ示す例においても、特に言及しなかった事項については、上述してきた実施の形態と同様である。
また、加熱装置3は、上記探傷装置に用いるものに限定するものではなく、上記探傷装置以外の用途に用いるものとしてもよい。
【0039】
(総括)
赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査において利用されるキセノンランプといった放電管4は、レーザ用のものと異なり、放電管4の光を被検材に向けて照射するために、放電管4の一部が外部にオープンとなっている必要がある。即ち反射部材9に設けられた放射口93から被検材mへ向けて光が投射される。また、上記非破壊検査において、冷却するにも、レーザ用途のように、構造的にランプ(放電管)やレーザロッド、反射面全体を水没させることができない。
そして、赤外線サーモグラフィーによる非破壊検査では、(1)冷却と(2)光の照射を同時に実行するものである。更に、ランプ(放電管)は放電をするために、(3)10~30kVの高電圧のトリガパルスを外部から、要求されるタイミングで発光することが要求される。
本発明では、冷却部8について、放電管4の径外側にて冷却液bを移動させるものとして、放電管4を水冷すると共に、トリガ線6について、放電管4に対し冷却部8による水冷を邪魔しない位置へ配置することにて、上記(1)~(3)の要求を充足する赤外線サーモグラフィーによる探傷装置を提供できたものである。
【符号の説明】
【0040】
1 画像取得装置
2 解析装置
3 加熱装置
4 放電管
5 (発光)電源
6 トリガ線(トリガ導電部)
6a(トリガ線6の)輪
7 トリガ電源
8 冷却部
9 反射部材
10 赤外線カメラ
11 画像処理装置
12 モニタ
13 筐体
14 ブラケット
30 保持部
30a 挿入空間
30b 通水連絡部
30c 引出線挿入部
31 基盤
32 冶具
33 位置決め部材
33a 締結部材
34 パッキン
35 パッキン
40 (放電管4の)電極
40a(電極40の)露出部分
40b(電極40の)内包部分
51 電線
51a(電線51の)ソケット
52 電線
52a(電線52の)ソケット
60 引出線
61 導電線
62 碍子
81 筒状部
83 導入用のホース
84 排出用のホース
90 反射面
91 副反射部
92 主反射部
92a 第1主反射部
92b 第2主反射部
93 放射口
94 開口部
95 側板
96 貫通部分
a1 熱
a2 熱
a3 熱
b 冷却液
c ケーシング
m 被検材
r 流路
F1 欠陥
F2 欠陥
F3 欠陥
g1 欠陥F1の熱画像
g2 欠陥F2の熱画像
g3 欠陥F3の熱画像
h (位置決め部材33の)穴
P ポンプ
T タンク