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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】透明カバー層分離回収装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20221013BHJP
   B09B 1/00 20060101ALI20221013BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20221013BHJP
   H02S 40/00 20140101ALI20221013BHJP
【FI】
B09B5/00 Z ZAB
B09B1/00 Z
B29B17/02
H02S40/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018104142
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019209219
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】312012184
【氏名又は名称】ミクロンメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】寒 河 江 滿
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140580(JP,A)
【文献】特開2015-212011(JP,A)
【文献】特開平11-277535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 5/00
B09B 1/00
B29B 17/02
H02S 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
簾状膜が吊下された入り口、出口用の門型ゲートが開口され、上流空間,処理空間および下流空間を有する処理ブース、および該処理ブース内にリサイクル対象の太陽電池パネルを自動搬入、自動搬出するコンベアを有し、該処理ブースの処理空間には、一軸心の遠心方向に向けられた複数枚のブレードが、同一軸心の周囲に配された投射ロータを、該一軸心が、リサイクル対象の太陽電池パネルおよび同透明カバー層に対して平行か、またはリサイクル対象の太陽電池パネルおよび同透明カバー層に対して傾いた姿勢かの何れか一方となると共に、100mmないし800mmの投射距離を隔てて対峙するよう配され、該投射ロータの軸心付近に投射材供給機構が組み込まれ、該コンベアの進行方向に直交する同コンベアの幅方向両がわに、夫々一基ずつ配され、リサイクル対象の太陽電池パネルの一枚に対し、同時に投射材を投射する複数基のショットブラスト機が設けられ、該コンベア下に、太陽電池パネルから分離された透明カバー粉砕物と、該透明カバー粉砕物に混在する、比重が0.7ないし8.8、モース硬度が1ないし14の球形または円柱形の少なくとも何れか一方の形状の投射材との混合物である破砕回収物を回収する自動回収部、および、該コンベアの進行方向に平面視で直交する幅方向の外がわ直近となる位置に立設された筐体内に、同筐体内の上下端間に配された無端チェーンと、該無端チェーンの中途複数箇所に互いに隔てて設けられた複数個の篩籠とを備えた篩を兼ねたエレベーターが配され、該自動回収部に回収した破砕回収物から、該投射材供給機構に供給する投射材を選別する選別機構と、透明カバー粉砕物を排出する排出機構とからなる破砕物回収機が設けられ、該処理ブースの上流空間および下流空間には、夫々集塵機の吸気ダクトが接続され、該下流空間のコンベアの下流がわの端部には、同下流空間から搬出される直前の太陽電池パネル上に残存する透明カバー粉砕物および投射材を吹き飛ばすして清浄化するブロアが設けられてなるものとしたことを特徴とする透明カバー層分離回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部構造に強固に一体化した透明カバー層を効率的に分離、除去可能とする処理技術に関連するものであり、特に、太陽電池モジュールのカバーガラスなどのような内部構造部分に強固に一体化している透明カバー層を効率的に分解し、資源回収可能とするリサイクル技術を提供する分野は勿論のこと、そのリサイクル処理に利用する資材や機械装置、部品類、および、それらに必要となる素材、例えば、ガラス、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
太陽光発電システムは、地球温暖化や異常気象の原因とされる二酸化炭素の排出量削減や省エネ意識の高まりに伴い、現在、急速に普及してきており、今後、太陽電池モジュールのリサイクル需要が拡大する場合に備え、各メーカー毎に構造、材質が異なる太陽電池モジュールに対応可能な汎用リサイクル処理技術の開発を進める必要があり、リサイクル処理の効率化を求める観点から、自動化が可能な一貫処理設備を実現化するのが最も望ましいと言える。
【0003】
リサイクル対象となる太陽電池モジュールには、例えば、図9に示すように、バックシートM2上に、結晶系Siセル92および配線からなる太陽電池部91が、EVA(エチレン・ビニル・アセテート:エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)からなる封止剤90で密閉された太陽電池層9が積層され、該太陽電池層9上に透明カバー層8としてのカバーガラス8が積層状に一体化された上、外周縁に沿ってアルミニウム製外枠M1が装着されてなる結晶Si系太陽電池モジュールM、図10に示すように、バックシートM2上に、基板ガラス93上面にCIS(銅、インジウム、セレン)デバイス膜94、および、EVAからなる封止剤90が積層状に一体化された太陽電池層9が設けられ、該太陽電池層9上に透明カバー層8としてのカバーガラス8が積層、一体化された上、外周縁にアルミニウム製外枠M1が設けられたCIS系太陽電池パネルM、および同図11が示しているように、バックシートM2上に、EVAからなる封止剤90、およびアモルファスSiデバイス膜95が層状に一体化され、太陽電池層9が設けられた上、該太陽電池層9上に透明カバー層8としてのカバーガラス8が積層、一体化され、外周縁にアルミニウム製外枠M1が設けられた薄膜Si系太陽電池モジュールMなどがあり、こうした各種太陽電池モジュールM,M,……を、1つの処理システムによって効率的にリサイクル処理するには、各社毎に構造の異なる太陽電池部91の分離・リサイクル技術の開発に先立ち、太陽電池層9に対して層状をなすよう強固に結合されている透明カバー層8としてのカバーガラス8を効率的に分離、リサイクル処理する技術について、優先且つ速やかに開発する必要がある。
【0004】
(従来の技術)
こうした状況に鑑み、本願出願人は、既に幾つかの解決策と成り得る技術の開発および実用化に成功している。
本願出願人が既に開発済みの技術には、例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、低分子型有機EL装置を製造する蒸着装置の内部治具に付着した有機材料に対し、重曹の粉末を噴射することにより、該内部治具に付着した有機材料を除去するようにした有機材料の除去方法であって、前記製造装置から除去した有機材料と重曹との混合物から重曹を水に溶解させることにより、有機材料を分離することを可能としてなる有機材料の除去方法や、同特許文献1(2)に見られるような、リサイクル対象太陽電池パネルのカバーガラス層などの透明カバー層に対し、同透明カバー層と同じ材質のガラスビーズなどの投射材を、高圧エアーなどの噴射流体を伴って投射し、該透明カバー層下の太陽電池層が露出するまで、該透明カバー層を粉砕、分離した後、当該太陽電池パネルから分離された透明カバー粉砕物を、それに混在する投射材諸共回収するようにした透明カバー層分離回収方法である。
【0005】
前述のとおり、前記特許文献1(1)示した有機材料の除去方法は、重曹の粉末を投射材とし、除去処理後の有機材料の粉砕物と投射材との混合物を水洗浄するなどして重曹のみを水に溶解、除去可能なものとし、投射材の分離回収の工程に要する工数や経費を大幅に削減可能としたものであり、特許文献1(2)の透明カバー層分離回収方法は、透明カバー層と同じ材質の投射材を用いることにより、投射材の分離回収の工程を不要とすることができるものとしているが、何れの技術も、高圧エアーなどの噴射流体を伴って投射材を投射する技術であり、先端開口の小さなノズルを通じて高速の噴射流体と共に投射材を噴射することになることから、大型の太陽電池パネルのように広い面積のカバーガラス層などを除去するには多大な労力と工数とを要し、今後、大量に発生することが予想される使用済み太陽電池パネルを効率的にリサイクル処理可能とするには不十分な技術となってしまう虞があった。
【文献】(1)特許第5220219号公報 (2)特許第6154924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある各種の表層部材などの分離回収技術は、何れも単位時間毎に剥離処理可能な面積が狭く、例えば、大型の太陽電池パネルなどのカバーガラス層を除去する場合には、投射ノズルをカバーガラス層に対して縦横に移動させながら除去処理を進めなければならず、多大な労力と工数とを要するものとなってしまい経済的に処理するのが困難であるという欠点が残るものであり、大型の太陽電池パネルなどであっても、大面積を一気に剥離処理してしまうことが可能であり、今後、大量に発生することが予想される廃棄太陽電池パネルなどを、より効率的にリサイクル処理可能とする新技術開発の可能性を痛感するに至ったものである。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、大型の太陽電池パネルであっても、より迅速且つ効率的にリサイクル処理可能とする新たな表層部材の分離回収技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の透明カバー層分離回収方法、およびそれに利用する透明カバー層分離回収装置を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の透明カバー層分離回収装置は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、簾状膜が吊下された入り口、出口用の門型ゲートが開口され、上流空間,処理空間および下流空間を有する処理ブース、および、該処理ブース内にリサイクル対象の太陽電池パネルを自動搬入および自動搬出するコンベアを有し、該処理ブースの処理空間には、一軸心の遠心方向に向けられた複数枚のブレードが、同一軸心の周囲に配された投射ロータを、該一軸心が、リサイクル対象の太陽電池パネルおよび同透明カバー層に対して平行か、またはリサイクル対象の太陽電池パネルおよび同透明カバー層に対して傾いた姿勢かの何れか一方となると共に、100mmないし800mmの投射距離を隔てて対峙するよう配され、該投射ロータの軸心付近に投射材供給機構が組み込まれ、該コンベアの進行方向に直交する同コンベアの幅方向両がわに、夫々一基ずつ配され、リサイクル対象の太陽電池パネルの一枚に対し、同時に投射材を投射する複数基のショットブラスト機が設けられ、該コンベア下に、太陽電池パネルから分離された透明カバー粉砕物と、該透明カバー粉砕物に混在する、比重が0.7ないし8.8、モース硬度が1ないし14の球形または円柱形の少なくとも何れか一方の形状の投射材との混合物である破砕回収物を回収する自動回収部、および、該コンベアの進行方向に平面視で直交する幅方向の外がわ直近となる位置に立設された筐体内に、同筐体内の上下端間に配された無端チェーンと、該無端チェーンの中途複数箇所に互いに隔てて設けられた複数個の篩籠とを備えた篩を兼ねたエレベーターが配され、該自動回収部に回収した破砕回収物から、該投射材供給機構に供給する投射材を選別する選別機構と、透明カバー粉砕物を排出する排出機構とからなる破砕物回収機が設けられ、該処理ブースの上流空間および下流空間には、夫々集塵機の吸気ダクトが接続され、該下流空間のコンベアの下流がわの端部には、同下流空間から搬出される直前の太陽電池パネル上に残存する透明カバー粉砕物および投射材を吹き飛ばして清浄化するブロアが設けられてなるものとしたこの発明の基本をなす前記透明カバー層分離回収方法に利用する透明カバー層分離回収装置である。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり、この発明の透明カバー層分離回収装置によると、コンベアに供給されたリサイクル対象の太陽電池パネルが、処理ブース内に自動的に搬送され、ショットブラスト機から太陽電池パネルの広範囲に大量の投射材が投射されるものとなっているから、太陽電池パネルの一枚毎の透明カバー層の剥離処理速度が大幅に短縮され、短時間の中により多くの太陽電池パネルのリサイクル処理を達成可能なものとすることができる上、太陽電池パネルから分離された透明カバー粉砕物と、該透明カバー粉砕物に混在する投射材との混合物である破砕回収物を自動的に回収する自動回収部、および、該自動回収部に回収した破砕回収物から、該投射材供給機構に供給する投射材を選別する選別機構と、透明カバー粉砕物を排出する排出機構とからなる破砕物回収機が設けられているから、透明カバー粉砕物をより効率的に回収することができ、処理ブースに、集塵機の吸気ダクトが接続されたものとなっているから、透明カバー層が剥離された後の太陽電池パネルの表面に、透明カバー粉砕物が付着して残存するのを防止することができると共に、処理ブースの外に、透明カバー粉砕物などの粉塵が漏出するのをより確実に防止できるものとなる。
【0010】
この発明の透明カバー層分離回収装置を使った透明カバー層分離回収方法によれば、従前までの投射材を高圧エアーなどの高圧流体を伴ってリサイクル対象の太陽電池パネルの表面に高速で吹き付け、透明カバー層を剥離する技術とは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、投射材に遠心力を与えて透明カバー層に投射するようにしたから、より広範囲に連続的且つ大量の投射材を投射可能となり、従前までであれば、透明カバー層の剥離作業に長時間を要していた大型の太陽電池パネルであっても、より迅速且つ効率的に透明カバー層の剥離作業を完了できるものとなり、今後、耐久寿命を迎え、大量発生することが予想される使用済みの太陽電池パネルのリサイクル処理を格段に効率化することができるという秀でた特徴が得られるものである。
【0011】
加えて、リサイクル対象の太陽電池パネルから、透明カバー層を粉砕、分離した後、該太陽電池パネルから分離された透明カバー粉砕物と、該透明カバー粉砕物に混在する投射材との混合物である破砕回収物を回収し、該破砕回収物を投射材として利用可能な粒度の選別投射材と、それ以外の粒度の透明カバー粉砕物とに分離処理し、該選別投射材を投射材として該投射ロータの軸心付近に供給すると共に、分離処理後の透明カバー粉砕物をリサイクル処理するようにすることにより、透明カバー粉砕物のリサイクル処理を、より円滑に行えると共に、投射材の減少を抑制して一段と経済的なリサイクル処理を実現化することができるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
リサイクル対象の太陽電池パネルは、老朽化や破損など様々な理由によって撤去や廃棄することとなった太陽電池モジュールから、外枠やジャンクションボックスなどが取り外され、太陽電池部が封止剤によって封止された太陽電池層に透明カバー層が積層され、背面にバックシートが残されたままのものであり、例えば、結晶Si系、CIS系、薄膜Si系、その他の型式のものであるということができる。
そして、リサイクル対象の太陽電池モジュールは、老朽化や破損など様々な理由によって撤去や廃棄することとなった太陽電池モジュールであり、太陽電池部を封止剤で封止した太陽電池層に透明カバー層を積層してなる発電パネルに、バックシートやジャンクションボックス、外枠などを装着したものである。
【0013】
この発明の透明カバー層分離回収方法は、投射ロータ、およびそれに一体に設けられた複数枚のブレードを高速回転し、該投射ロータの軸心付近に供給された投射材を、太陽電池パネルの透明カバー層に対して、投射距離を隔てた位置から、遠心力を伴って衝突させ、該透明カバー層下の太陽電池層が露出するまで、該透明カバー層を粉砕、分離するようにしたものであり、投射ロータに対して太陽電池パネルを相対的に連続的に送り移動させるようにすることが可能であり、また、一定時間毎に断続的に送り移動するようにしながら、透明カバー層の粉砕、分離の工程を進めるようにしたものとすることができる。
【0014】
投射距離は、回転する投射ロータから投射される投射材が、太陽電池パネルの透明カバー層に対し、より大きな衝撃力を与えることができる距離とするのが望ましく、投射材に加わる遠心力が、最も大きくなる距離に設定されたものとするのが良く、投射ロータの直径や回転数、投射材の粒度や比重、リサイクル対象の太陽電池パネルの寸法などの様々な条件によって適する距離に設定すべきであり、例えば、装置の大型化を避けるため、1mmないし1000mmとすることができ、より具体的には、現在実用化されている太陽電池パネルの大きさを考慮すると、後述する実施例にも示すように、100mmないし800mm、望ましくは500mmとするのが良いといえる。
【0015】
投射材は、高速回転する投射ロータおよびブレードからの遠心力を受けて、リサイクル対象の太陽電池パネルに衝突し、その慣性力を伴った衝突力により、リサイクル対象の太陽電池パネルの透明カバー層を粉砕、分離する機能を分担し、寸法、形状、比重、硬度、価格などの各条件に基づき選択することが可能であり、慣性力を伴った衝突力によって透明カバー層を粉砕するため、透明カバー層よりも硬度の低い素材を選択することが可能であり、破砕が進み、透明カバー層の下の太陽電池層が露出した場合の過剰な破砕を防止することを考慮すると、透明カバー層よりも低い硬度の材質を選択するのが望ましく、より具体的には、亜鉛ショット、亜鉛カットワイヤー、還元鉄粉(鉄粉)、ステンレスビーズ、ステンレスカットワイヤー、ステンレスラウンドカットワイヤー、スチールショット、スチールカットワイヤー、スチールラウンドカットワイヤー、スチールビーズ、スチールグリッド、白銑グリッド、アルミカットワイヤー、銅カットワイヤー、などの金属系、ガラスビーズ、ガラスパウダーなどのガラス系、シリコンショット、シリコンビーズ、シリコングリッド、エメリー、ジルショットHDC(セリア安全化ジルコニア)、褐色溶融アルミナ、白色溶融アルミナ、カーボランダム、グリーンカーボランダム、ボロンカーバイトなどのセラミック系、ナイロンメディア、ポリエクストラ、シェーブメディアY、シェーブメディアMなどの樹脂系、エンバイロストリップ、エンバイロストリップXL、イーストリップGPX、クルミ、アプリコット、ピーチ、コーンなどの植物系、二酸化モリブデン、ドライアイス、重曹などの特殊系の少なくとも何れか一種を選択するのが望ましく、外郭形状は、球形、円柱形および多角形の少なくとも一種とすることができ、さらに、別の観点からは、比重が0.5ないし9.5、望ましくは比重が0.7ないし8.8の素材製のものとするのが良く、モース硬度が、0.5ないし17、望ましくは1ないし14の素材製とすることができ、さらにまた、多孔性素材製とすることも可能である。
【0016】
透明カバー層分離回収装置は、リサイクル対象の太陽電池パネルから透明カバー層を分離、回収する機能を担っていて、太陽電池パネルを移送するコンベア、該コンベアが移送する太陽電池パネルに投射材を投射するショットブラスト機を有するものとしなければならず、さらに、ショットブラスト機およびショットブラスト処理中の太陽電池パネルを防塵するよう包囲可能な処理ブース、および、破砕回収物を回収する自動回収部を有するものとするのが望ましいといえる。
【0017】
ショットブラスト機は、投射材に遠心力を与え、リサイクル対象の太陽電池パネルの透明カバー層に対して投射距離から投射材を投射し、太陽電池パネルの透明カバー層に衝突させ、該透明カバー層下の太陽電池層が露出するまで該透明カバー層を粉砕、分離する機能を担い、一軸心の遠心方向に向けられた複数枚のブレードを同一軸心の周囲に配するようにした投射ロータが、その一軸心を、リサイクル対象の太陽電池パネルおよび同透明カバー層に対して平行か、またはリサイクル対象の太陽電池パネルおよび同透明カバー層に対して傾けられた姿勢かの何れか一方となるようにすると共に、投射距離を隔てて対峙するよう配され、該投射ロータの軸心付近に投射材供給機構が組み込まれたものとしなければならず、処理ブースに搬入されるリサイクル対象の太陽電池パネルの一枚に対し、複数基のショットブラスト機が設けられ、複数基のショットブラスト機が同時に一枚または複数枚の何れか一方の太陽電池パネルの透明カバー層に対して投射材を投射するものとすることができる。
【0018】
これは、後述する実施例にも示すように、二基のショットブラスト機が同時に一枚の太陽電池パネルの透明カバー層に対して投射材を投射するものとすることができ、さらに、二基のショットブラスト機が、一枚の太陽電池パネルの透明カバー層の互いの投射範囲同士が重なり合わず、全く異なる範囲に投射材を同時に投射するもの、二基のショットブラスト機が、一枚の太陽電池パネルの透明カバー層に対し、互いの投射範囲の一部同士が重なり合う範囲に投射材を同時に投射するもの、または一枚の太陽電池パネルの透明カバー層に対し、互いの投射範囲の全部が重なり合う範囲に投射材を同時に投射するものなどとすることが可能であり、さらにまた、一枚の太陽電池パネルの透明カバー層の、互いの投射範囲同士が重なり合わず、全く異なる範囲に投射材を時間的に前後ずらして投射するもの、二基のショットブラスト機が、一枚の太陽電池パネルの透明カバー層に対し、互いの投射範囲の一部同士が重なり合う範囲に投射材を時間的に前後ずらして投射するもの、または一枚の太陽電池パネルの透明カバー層に対し、互いの投射範囲の全部が重なり合う範囲に投射材を時間的に前後ずらして投射するものなどとすることができ、例えば、リサイクル対象の太陽電池パネルを搭載して移送するコンベアの上流がわから下流がわに沿って連続的に点在するよう複数基のショットブラスト機が配され、リサイクル対象の太陽電池パネルがコンベアの上流がわから下流がわまで移送される過程で、次第に透明カバー層下の太陽電池層が露出するまで、該透明カバー層が粉砕、分離するように設定されたものとすることが可能である。
【0019】
ショットブラスト機は、リサイクル対象の太陽電池パネルの透明カバー層に対し、投射距離を維持したまま移動可能なものとすることが可能であり、透明カバー層に平行する方向に、適宜設定された送り速度で移動するものとされたものとすることができ、また、ショットブラスト機は、投射材を投射ロータの軸心付近に供給する投射材供給機構が設けられたものとすべきであり、また、複数基のショットブラスト機が設けられるものの場合には、各ショットブラスト機のブレード幅や投射ロータ直径などが互いに異なるものにされたものとすることが可能である外、各ショットブラスト機に供給される投射材が、材質、粒度、硬度、比重、質量および形状などの条件の中、少なくとも一が異なる投射材とされたものとすることが可能である。
【0020】
この発明の透明カバー層分離回収装置は、自動回収部が設けられたものとするのが望ましく、該自動回収部は、太陽電池パネルから分離された透明カバー粉砕物と、該透明カバー粉砕物に混在する投射材との混合物である破砕回収物を自動的に回収する機能を分担し、後述する実施例にも示しているように、コンベア下に配されたホッパー状の屑受け容器、および該屑受け容器の最下部に設けられたスクリューコンベアからなるものとすることができる。
【0021】
また、この発明の透明カバー層分離回収装置は、自動回収部が回収した破砕回収物から該投射材供給機構に供給する投射材を選別する選別機構と、透明カバー粉砕物を排出する排出機構とからなる破砕物回収機が設けられたものとするのが望ましく、選別機構は、破砕回収物に混在する投射材を選別し、透明カバー粉砕物と分離する機能を分担し、遠心分離機とすることができ、例えば、透明カバー層と投射材とが、ガラス同士や合成樹脂同士の組み合わせなどとなって、リサイクル処理のための選別が不要な場合には、選別機構が設けられていないもの、または、選別機構を有しており、該選別機構の選別機能を停止した状態で使用可能なものなどとすることが可能である外、後述する実施例にも示すとおり、篩によって投射材として適した粒度のものを選別するものとすることができ、排出機構は、投射材から選別された透明カバー粉砕物を当該透明カバー層分離回収装置から排出する機能を分担し、選別機構から外部の排出口に向けて下り勾配を有する樋状および管路状の少なくとも何れか一方の排出路からなるものとすることができる外、選別機構から外部の排出口に向けて配された排出用のコンベア類などとすることができる。
【0022】
さらにまた、この発明の透明カバー層分離回収装置は、処理ブースに集塵機の吸気ダクトが接続されてなるものとすることが可能であり、集塵機は、空気中に含まれた透明カバー粉砕物や投射材などの微粒子を回収し、清浄化された空気を放出する機能を分担し、処理ブースの適所に吸気ダクトが接続されたものとするのが望ましく、例えば、各種フィルター類や遠心分離機構などを有するものとすることができ、後述する実施例にも示すように、処理ブースにおけるコンベアの流れ方向の、ショットブラスト機を挟む前後の夫々に吸気ダクトが接続されたものとするのが良く、さらに、処理ブースのコンベアの下流端付近に設けられ、透明カバー層が除去されて太陽電池層が露出された太陽電池パネルの表面に残存する破砕回収物を、排除して清浄化可能とする回転ブラシ、洗浄ブラシ、拭き取りウエス、ワイパーなどの除去清掃機類、吸引ノズル、バキュームノズルなどの吸引清掃機類、または、ブロア、エアノズル、洗浄ノズルなどの流体の吹き付けによる流体圧力清掃機類などの何れかを有するものとすることができる。
【0023】
破砕回収物は、投射材と、リサイクル対象の太陽電池パネルから破砕、分離された透明カバー粉砕物とが混合された状態のものであり、回収後に、透明カバー粉砕物と投射材とに分離されることによって透明カバー粉砕物をリサイクル利用することが可能となり、また、分離された投射材は、投射材として再利用することが可能となるものであり、後述する実施例にも示してあるとおり、投射材は、篩などによって投射材として利用できる粒度のものに選別されたものとし、材質の硬度や密度に係わらず、同等程度の粒度の範囲内にある透明カバー粉砕物が混在されたものとすることも可能である。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面は、この発明の透明カバー層分離回収方法、およびそれに利用する透明カバー層分離回収装置の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
図1】透明カバー層分離回収方法を示すフローチャートである。
図2】一部に改良を加えた透明カバー層分離回収方法を示すフローチャートである。
図3】処理工程毎の太陽電池パネルの腰部を(a)~(d)に示す断面図である。
図4】ショットブラスト機を示す正面図である。
図5】ショットブラスト機を示す側面図である。
図6】透明カバー層分離回収装置を概念的に示す平面図である。
図7】透明カバー層分離回収装置を示す正面図である。
図8】透明カバー層分離回収装置を示す側面図である。
図9】結晶Si系太陽電池モジュールの腰部を示す断面図である。
図10】CIS系太陽電池パネルの腰部を示す断面図である。
図11】薄膜Si系太陽電池モジュールの要部を示す断面図である。
【実施例1】
【0025】
図1および図2のフローチャートに示すこの発明の基本を成す事例を、図3ないし図8の代表的な具体例と共に示すもので、一軸心20の遠心方向に向けられた複数枚のブレード22が、該一軸心20の周囲に配された投射ロータ21を、リサイクル対象の太陽電池パネルM0の透明カバー層8に対して、投射距離PDを隔てて対峙するよう配した上、該投射ロータ21に投射材3を供給すると同時に、該投射ロータ21およびブレード22を高速回転し、投射材3に遠心力を与えて該投射材3を投射し、太陽電池パネルM0の透明カバー層8に衝突させ、該透明カバー層8下の太陽電池層9が露出するまで、該透明カバー層8を粉砕、分離した後、当該太陽電池パネルM0から分離された透明カバー粉砕物J0と、該透明カバー粉砕物J0に混在する投射材3との混合物である破砕回収物Jを回収し、該破砕回収物Jを透明カバー粉砕物J0と投射材3とに分離処理し、透明カバー粉砕物J0をリサイクル処理するようにした、この発明の透明カバー層分離回収方法における代表的な一実施例である。
以下では、この発明の透明カバー層分離回収方法に利用する、この発明の透明カバー層分離回収装置の代表的な一例を先に示し、それを利用した透明カバー層8の分離、回収の工程について順次示して行くこととする。
【0026】
図3ないし図8に示すように、この発明の透明カバー層分離回収装置1は、処理ブース10およびコンベア4を有し、該処理ブース10には、一軸心20の遠心方向に向けられた複数枚のブレード22が、同一軸心20の周囲に形成する投射ロータ21に対して投射距離PDを隔てて対峙するよう配され、投射材供給機構23が組み込まれたショットブラスト機2が設けられ、該コンベア4下に、太陽電池パネルM0から分離された透明カバー粉砕物J0と、該透明カバー粉砕物J0に混在する投射材3との混合物である破砕回収物Jを自動的に回収する自動回収部5が設けられたものである。
【0027】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の透明カバー層分離回収装置1は、リサイクル対象の太陽電池パネルM0を複数枚並べられる程度の左右間長のコンベア4が、装置本体フレーム11によって、地上1000ないし1400mmの高さ位置に水平姿勢に支持され、該装置本体フレーム11には、該コンベア4の全長方向両端間中央付近のリサイクル対象とする太陽電池パネルM0が、三枚並ぶ範囲を包囲する上流空間12、処理空間13、および下流空間14が続くトンネル型のボックス形状であって、該上流空間12および下流空間14のコンベア4の進行方向前後の各端壁に、軟質合成樹脂製シートまたは軟質天然ゴム製シートなどからなっていて、コンベア4上に平置きされた太陽電池パネルM0の厚みを通過可能とするよう、複数本の下端開放状の縦スリットが複数本設けられた柔軟性の簾状膜16が吊下された入り口、出口用の門型ゲート15,15が開口された処理ブース10が設けられるようにし、該装置本体フレーム11のコンベア4よりも下方には、自動回収部5が設けられている。
【0028】
自動回収部5は、装置本体フレーム11のコンベア4の全幅および全長を上回る範囲に渡る下方に沿って配され、該コンベア4上および処理ブース10内から落下してくる破砕回収物Jを回収可能な平面視矩形の器形状であって、その器形状の底壁部分の、コンベア4の幅方向両端間の中央部に、同コンベア4の全長方向両端間に渡って樋状最低壁面部51が設けられ、器形状の全体がホッパー型とされた屑受け容器50とされ、該屑受け容器50の上端開口縁の、コンベア4の進行方向に直交する幅方向端に対峙する上端開口幅方向端縁が、装置本体フレーム11の左右内壁に連続するよう一体化され、さらに、該樋状最低壁面部51内の全長に渡ってスクリューコンベア52が内装され、破砕回収物Jは、スクリューコンベア52の中途直下位置に、スクリューコンベア52(およびコンベア4)に平面視で交叉する水平方向に向けて延伸させるようにし、破砕物回収機6の中継用のスクリューコンベア管60の一端の供給口61に落下、供給されるものとなっている。
【0029】
破砕物回収機6の中継用のスクリューコンベア管60の一端の供給口61とは反対がわとなる他端の送出口62は、装置本体フレーム11のコンベア4の進行方向に平面視で直交する幅方向の外がわ直近となる位置に、処理ブース10を超える高さの柱状箱型の筐体64が隣接するよう立設され、該筐体64内には、上下端の夫々に水平に配された一対の水平軸およびスプロケット間に巻掛けられた無端チェーン、および該無端チェーンの中途複数箇所に互いに適宜間隔を隔てるよう設けられた複数個の篩籠を備え、篩を兼ねたエレベーター(何れも図示せず)からなる選別機構63が内装され、該選別機構63の篩を兼ねたエレベーターが、スクリューコンベア管60の供給口61から供給された破砕回収物Jを、処理ブース10の高さを超えた柱状箱型の筐体64内の上端まで上昇するよう搬送すると共に、上昇の過程で篩に微振動を加え、投射材3として利用可能な粒度だけとする選別投射材3に選別可能なものとされている。
そして、この選別機構63の下端には、落下選別された破砕回収物Jを、透明カバー層分離回収装置1の外部に搬送するベルトコンベアやスクリューコンベア、または、柱状箱型の筐体64の下端の適所に設けられた開閉扉付きの破砕回収物J用の掻き出し口など(何れも図示せず)からなる排出機構65が設けられている。
【0030】
また、破砕物回収機6は、筐体64内に、上下端の夫々に水平に配された一対の水平軸およびスプロケット間に巻掛けられた無端チェーン、および該無端チェーンの中途複数箇所に、互いに適宜間隔を隔てるよう設けられた複数個のバケットを備えたエレベーターが設けられ、該エレベーターの上端付近に、選別機構63となるロータリーセパレーター(篩機)(何れも図示せず)が配され、スクリューコンベア管60の供給口61から供給された破砕回収物Jを、処理ブース10の高さを超えた柱状箱型の筐体64内の上端まで上昇するよう搬送すると共に、選別機構63となるロータリーセパレーター(篩機)が、投射材3として利用可能な粒度だけの選別投射材3に選別可能なものとされたものに置き換えることが可能である。
【0031】
選別機構63の上端からは、処理ブース10の天面で、コンベア4の進行方向(図7に実線矢印で示す)の両端間中央(処理空間13上)付近まで、投射材3および選別投射材3を投射材3として降下、供給する二本の投射材供給管路66,66が垂下され、該処理ブース10の処理空間13直上となる該処理ブース10の天面上で、コンベア4の進行方向に直交する同コンベア4の幅方向両がわに、夫々一基ずつ、合計二基のショットブラスト機2,2が搭載されており、図4および図5に示すように、それらショットブラスト機2は、一軸心20の遠心方向に向けられた複数枚のブレード22が、同一軸心20の周囲に配された投射ロータ21を有し、例えば、ブレード22の幅Wが60mm、投射ロータ21の外径Φが450mmに設定され、該一軸心20が、コンベア4に搭載されたリサイクル対象の太陽電池パネルM0および同透明カバー層8に対して平行し、しかもコンベア4の進行方向に向けられ、投射ロータ21の下端縁が、処理空間13内に移動された場合の太陽電池パネルM0の透明カバー層8まで500mmの投射距離PDを隔てて対峙するよう配され、さらに、該投射ロータ21の軸心20付近に、投射材供給管路66の下端が接続されたホッパー状の投射材供給機構23が組み込まれたものとなっている。
【0032】
図6ないし図8に示すように、処理ブース10の処理空間13直上となる天面上に、コンベア4の進行方向に直交する方向に隣り合うよう配された二基のショットブラスト機2,2は、図示しない回転駆動源によって、例えば毎分3000回転の速度で回転し、コンベア4により、各ショットブラスト機2,2の直下まで搬送されてきた該処理ブース10内の太陽電池パネルM0に対し、図4に示すように、ブレード22の幅方向(コンベア4の進行方向)に約60°の開き角α(図4に示す)を以って、図4図5図7、および図8中に破線で示すように、下方に向けて平面積が拡開状となる範囲に投射材3を投射するものとされている。
【0033】
投射材3は、リサイクル対象の太陽電池パネルM0の透明カバー層8の下層部である封止剤90にダメージを与えず、より短時間の投射によって透明カバー層8を剥離可能な材質のものとするのが望ましく、比重および硬度の高い素材ほど、例えば金属系の投射材3などは、効率良く透明カバー層8を剥離することが可能であるといえるが、硬度の高い投射材3は、ショットブラスト機2および処理ブース10内の摩耗が激しくなるので、それらショットブラスト機2、および処理ブース10内の耐摩耗強度を高めたものとしなければならず、透明カバー層分離回収装置1の高騰化を招くという理由から、亜鉛製や銅製のものとするのが望ましく、より具体的に示すならば、例えば、亜鉛ショット(球形、比重7.2、硬度2)、亜鉛カットワイヤー(円柱形、比重7.2、硬度4.5)、銅カットワイヤー(円柱形、比重8.8、硬度6)などにすると好都合のものとなる。
【0034】
図6ないし図8に示すように、処理ブース10の上流空間12および下流空間14の天面壁には、夫々吸気ダクト70,70の先端が、外がわから処理ブース10の内部に繋がるよう接続され、各吸気ダクト70,70の基端が、装置本体フレーム11の外がわに設置された集塵機7まで延伸、接続されており、該集塵機7は、その内部に遠心分離機構(図示せず)を有し、該遠心分離機構の下部に塵埃排出口71を備え、図6中に破線矢印で示すように、各吸気ダクト70,70を通じて処理ブース10内の空気を吸引し、集塵機7内で該空気中から分離された塵埃が、該塵埃排出口71から集塵機7外に排出されるものとなっている。
さらに、処理ブース10の下流空間14の天面壁のコンベア4の下流がわの端部には、同下流空間14の門型ゲート12から搬出される直前の太陽電池パネルM0上に残存する透明カバー粉砕物J0および投射材3を吹き飛ばして清浄化するブロア72が設けられたものとなっている。
【0035】
図7に示すように、透明カバー層分離回収装置1の適所、例えば処理ブース10の天面上に、この透明カバー層分離回収装置1のショットブラスト機2、コンベア4、自動回収部5、破砕物回収機6、排出機構64、集塵機7およびブロア72などの各部を操作可能な操作パネル17が設けられており、さらに、マイコンやリレー回路などからなる制御装置、および要所々々にセンサー類やリミットスイッチ類など(何れも図示せず)が配され、該操作パネル17への入力操作を受けて自動的に制御されるようにしたものとなっており、また、透明カバー層分離回収装置1のコンベア4の上流端には、天板に複数のローラー滑車が設けられたフリーコンベア40が、該フリーコンベア40の天面が、コンベア4の天面と面一となるよう配されたものとしてある。
【0036】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の透明カバー層分離回収装置1は、図1および図2中に示すように、この発明の基本となる透明カバー層分離回収方法に利用することができる。
以下に、この発明の透明カバー層分離回収装置1を利用した透明カバー層分離回収方法の各行程について示して行くこととする。
【0037】
図3の(a),(b)、および図6ないし図8に示すように、リサイクル対象の複数枚の太陽電池モジュールMから、夫々の外枠M1およびジャンクションボックスM3を取り外し、リサイクル対象の太陽電池パネルM0とされた後、透明カバー層8を上に、バックシートM2が下に向くようフリーコンベア40上に平置きし、コンベア4の上流端へ供給した上、操作パネル17の操作によって透明カバー層分離回収装置1を起動する。
【0038】
図1ないし図8に示すように、起動された透明カバー層分離回収装置1は、コンベア4が毎分2mの速度で駆動すると共に、自動回収部5のスクリューコンベア52、破砕物回収機6のスクリューコンベア管60および選別機構63、ショットブラスト機2,2が起動し、リサイクル対象の複数枚の太陽電池パネルM0は、処理ブース10の上流がわの門型ゲート15の簾状膜16下を通じて上流空間12内へと一枚ずつ連続的に供給されて行き、処理空間13に達した一枚の太陽電池パネルM0に対して、二基のショットブラスト機2,2が、毎分3000回転の速度で回転しながら、ショットブラスト機2の一基が、太陽電池パネルM0の進行方向に直交する幅寸法の約1/2幅SW(コンベア4の幅方両端間の1/2幅)、例えば150ないし170mmの範囲に投射材3を投射し、二基のショットブラスト機2,2で、一枚の太陽電池パネルM0の全幅(例えば300ないし340mm)に投射材3を投射するものとなり、コンベア4の送り搬送を受けて、該二基のショットブラスト機2,2の直下となる透明カバー層8が粉砕、分離され(A)、処理空間13から下流空間14に向かって進行する太陽電池パネルM0は、該二基のショットブラスト機2,2の直下を通過しながら次第に全面に渡る透明カバー層8下の太陽電池層9が露出するまで、該透明カバー層8が粉砕、分離され、太陽電池層9の弾性を有する封止剤90が、投射材3の衝撃力を緩衝して太陽電池層9の破砕や剥離を防止するものとなり、透明カバー層8だけが太陽電池パネルM0から効率的に除去、分離されるようにするものとなる。
【0039】
より具体的にすれば、従来型の圧縮空気によるサンドブラスト処理装置の研磨剤噴射量は、毎分10kgであり、1枚の太陽電池パネルM0から透明カバー層8を除去するのに10分の時間を要するものであったが、これに比較して、前記実施例1に示したショットブラスト機2は、投射材3を毎分160kg投射することができ、1枚の太陽電池パネルM0から透明カバー層8を除去するために要する時間は、1分と従前までの1/10となり、しかも、投射材3の補充量は、リサイクル対象の太陽電池パネルM0を100枚処理する毎に、10kg未満と非常に少ない補充量に抑えることができるものとなった。
【0040】
全面に渡って透明カバー層8を破砕、分離された太陽電池パネルM0は、コンベア4によって次第に処理ブース10の下流空間14まで移送され、さらに、下流がわの門型ゲート15の簾状膜16の直前まで移動すると、太陽電池層9にブロア72からの高圧エアーが吹き付けられ、太陽電池層9上に残存する透明カバー粉砕物J0や投射材3などの破片や粉塵が吹き飛ばされ、清浄化された後、下流がわの門型ゲート15の簾状膜16下を通過してコンベア4の下流端がわへと送出されることとなり、図3の(c)および(d)に示すように、太陽電池層9が露出された太陽電池パネルM0は、リサイクル処理の次工程に送り出されることとなる。
【0041】
図6ないし図8に示しているように、リサイクル対象となる複数枚の太陽電池パネルM0,M0,……が、連続的に処理ブース10を通過しながら、夫々の透明カバー層8,8,……を破砕、分離され、処理ブース10内、コンベア4から透明カバー粉砕物J0、および投射材3の混合物(J0,3)が、自動回収部5の屑受け容器50内に落下し、それら透明カバー粉砕物J0、および投射材3の混合物(J0,3)が、破砕回収物Jとなり(B)、樋状最低壁面部51まで自重によって滑落状に集まり、スクリューコンベア52が、破砕物回収機6のスクリューコンベア管60の供給口61へと移送し、破砕回収物Jは、該スクリューコンベア管60の送出口62から選別機構63へと供給され、選別機構63は、筐体64内の篩を兼ねたエレベーター(何れも図示せず)により、破砕回収物Jから篩選別された選別投射材3(投射材3として利用可能な粒度範囲内の透明カバー粉砕物J0および投射材3)が該筐体64の上端付近まで上昇(C)された後、投射材3として二基のショットブラスト機2,2の投射材供給機構23,23に供給されるものとなり(E)、該破砕回収物Jから選別投射材3として選別されずに排除された透明カバー粉砕物J0は、排出機構65を通じて透明カバー層分離回収装置1外に排出され、リサイクル処理の次工程に送られる(D)こととなる。
【0042】
図6ないし図8に示すように、集塵機7は、吸気ダクト70,70を通じて処理ブース10内の上流空間12および下流空間14の空気、および空気中に混在する透明カバー粉砕物J0や投射材3などの破片や粉状物諸共、吸引し、同処理ブース10内の上流空間12および下流空間14を清浄化すると共に、該集塵機7内により、空気と、透明カバー粉砕物J0や投射材3などの破片や粉状物とを分離し、分離後の空気を該集塵機7外に放出し、また、空気から分離された透明カバー粉砕物J0や投射材3などの破片、粉状物が集塵機7の塵埃排出口71から落下するよう排出されるものとなっておりこうして回収された塵埃中から透明カバー粉砕物J0や投射材3などの各種成分を分離し、リサイクル利用することができる。
【0043】
(結 び)
叙述の如く、この発明の透明カバー層分離回収方法、およびそれに利用する透明カバー層分離回収装置は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも投射材に遠心力を与えて投射するショットブラスト機を備えたこの発明の透明カバー層分離回収装置は、従前からの圧縮エアーを伴って投射材を吹き付ける技術に比較すると、コンプレッサーが不要となり、装置全体を小型化することができ、製造も容易な上、リサイクル対象とする太陽電池パネルの透明カバー層のより広い面積を、より迅速に粉砕、分離可能なものとなり、複数枚の太陽電池パネルを連続的且つ短時間でリサイクル処理できることから、今後、大量に発生することが予想される太陽電池モジュールのリサイクル処理を請け負うリサイクル業界は固よりのこと、リサイクル処理費用の負担をできるだけ抑制したいと考える太陽電池モジュール利用の発電業界や、リサイクル処理によって得られた素材を再生利用して新たな商品を製造する各種製品の製造業界などにおいても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0044】
1 透明カバー層分離回収装置
10 同 処理ブース
11 同 装置本体フレーム
12 同 上流空間
13 同 処理空間
14 同 下流空間
15 同 門型ゲート
16 同 簾状膜
17 同 操作パネル
2 ショットブラスト機
20 同 一軸心
21 同 投射ロータ
Φ 同 投射ロータの外径
22 同 ブレード
W 同 ブレード幅
23 同 投射材供給機構
3 投射材(選別投射材)
PD 同 投射距離
α 同 ブレード幅(一軸心)方向の投射角度
SW 同 ブレード幅(一軸心)方向の投射範囲長
4 コンベア
40 同 フリーコンベア
5 自動回収部
50 同 屑受け容器
51 同 樋状最低壁面部
52 同 スクリューコンベア
6 破砕物回収機
60 同 スクリューコンベア管
61 同 供給口
62 同 送出口
63 同 選別機構
64 同 筐体
65 同 排出機構
66 同 投射材供給管路
7 集塵機
70 同 吸気ダクト
71 同 塵埃排出口
72 同 ブロア
M リサイクル対象の太陽電池モジュール
M0 同 リサイクル対象の太陽電池パネル
M1 同 外枠
M2 同 バックシート
M3 同 ジャンクションボックス
8 透明カバー層
9 太陽電池層
90 同 封止剤
91 同 太陽電池部
92 同 太陽電池セル(素子、薄膜太陽電池デバイス、デバイス部)
93 同 基板ガラス
94 同 CISデバイス膜(銅、インジウム、セレン)
95 同 アモルファスSiデバイス膜
J 破砕回収物
J0 同 透明カバー粉砕物
A 透明カバー層に投射材を投射する工程
B 破砕回収物を回収する工程
C 破砕回収物から透明カバー粉砕物を分離する工程
D 透明カバー粉砕物をリサイクル利用する工程
E 選別投射材を投射材として投射ロータに供給する工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11