IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 谷口商会株式会社の特許一覧

特許7157443アルカリ漏洩検知テープ及びアルカリ性流体の漏洩検知方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】アルカリ漏洩検知テープ及びアルカリ性流体の漏洩検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/04 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
G01M3/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018192687
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020060474
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)メンテナンス・レジリエンスTOKYO2018における展示,平成30年7月18日~平成30年7月20日の3日間 (2)メンテナンス・レジリエンスTOKYO2018におけるサンプル配布,平成30年7月18日~平成30年7月20日の3日間 (3)東神電材株式会社(代理店)へのサンプル送付,平成30年8月1日 (4)株式会社ノバーク(代理店)へのサンプル送付,平成30年8月1日 (5)株式会社 エム・アイ・オー(代理店)へのサンプル送付,平成30年8月1日 (6)有限会社メディアプランニング(代理店)へのサンプル送付,平成30年8月1日 (7)ダイキン工業株式会社滋賀製作所(顧客)へのサンプル送付,平成30年5月30日 (8)サントリープロダクツ株式会社(顧客)へのサンプル送付,平成30年6月1日 (9)太平洋機工株式会社(顧客)へのサンプル送付,平成30年6月1日 (10)JFEスチール株式会社東日本製鉄所(顧客)へのサンプル送付,平成30年6月1日 (11)リックス株式会社技術開発センター(顧客)へのサンプル送付,平成30年5月31日 (12)東策株式会社(顧客)へのサンプル送付,平成30年6月21日 (13)山陽工業株式会社千葉事業所(顧客)へのサンプル送付,平成30年7月6日 (14)日本キャボット・マイクロエレクトロニクス株式会社(顧客)へのサンプル送付,平成30年7月25日 (15)宝石油機工株式会社(顧客)への販売,平成30年10月4日 (16)株式会社イプロスが運営するWEBサイト「イプロス製造業」への掲載(https://www.ipros.jp/product/detail/2000356518他),平成30年2月15日 (17)自社ホームページへの掲載(https://www.taniguti.co.jp/products/acid.htm他),平成30年7月11日 (18)製品カタログ「万全のバシッドテープBAS-idTAPE」の配布,平成30年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】596098254
【氏名又は名称】谷口商会株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】松浦 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 隼人
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-097547(JP,A)
【文献】特開2007-033165(JP,A)
【文献】特開2012-180615(JP,A)
【文献】特開2001-003019(JP,A)
【文献】特開昭60-042630(JP,A)
【文献】特開昭61-296268(JP,A)
【文献】特開昭61-050032(JP,A)
【文献】中山茂吉,ボルタンメトリーによる緑青を含む腐食生成物の化学状態分析,材料と環境,2015年,64,pp.508-513
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00ー 3/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布に無機銅化合物を付着させたアルカリ漏洩検知テープ。
【請求項2】
前記不織布を構成する繊維の平均繊維径Dが、30マイクロメートル以下である請求項1記載のアルカリ漏洩検知テープ。
【請求項3】
前記無機銅化合物を、前記不織布1g当たりに対して30mg以上付着させた請求項1又は2記載のアルカリ漏洩検知テープ。
【請求項4】
前記無機銅化合物が、塩基性炭酸銅、塩基性硫酸銅又は水酸化銅を含むものである請求項1~3いずれか記載のアルカリ漏洩検知テープ。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載のアルカリ漏洩検知テープを用いてアルカリ性の液体又は気体の漏洩を検知するアルカリ性流体の漏洩検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性(塩基性)の液体や気体に触れると色が変化することで、その液体や気体の漏洩を検知できるようにしたアルカリ漏洩検知テープと、これを用いてアルカリ性の液体や気体の漏洩を検知するアルカリ性流体の漏洩検知方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
強アルカリ性(pH11を超えるアルカリ性のこと。以下同じ。)の液体や気体は、手指等に触れると化学熱傷の原因となり、また生物毒性があるため、環境中に放出されることは好ましくない。このため、このような強アルカリ性流体を扱うプラント等においては、配管の継ぎ目等から強アルカリ性流体が漏洩することを防止するとともに、万が一漏洩した場合にも、これを早期に発見することが重要である。というのも、強アルカリ性流体は腐食性を有することが多いため、初期漏洩を見落としてしまうと、漏洩箇所の周囲に腐食が広がり、より大規模な漏洩につながるおそれがあるからである。
【0003】
このような配管の継ぎ目からの漏洩を発見するための方法としては、従来、[1]継ぎ目部分に電極を配しておき、漏洩した液体が電極に接触することで起こる伝導率の変化によって漏洩を検知する方法(以下、「電磁センサー法」と呼ぶことがある)や、[2]継ぎ目部分に予めpH指示剤を塗布しておき、漏洩した強アルカリ性流体がその塗膜に接触することで起こるpH指示剤の変色によって漏洩を可視化する方法(以下、「塗料法」と呼ぶことがある)や、[3]pH指示剤を定着させたテープを継ぎ目部分に予め巻き付けておき、漏洩した強アルカリ性流体がテープに接触することで起こるpH指示剤の変色によって漏洩を可視化する方法(以下、「テープ法」と呼ぶことがある)等が提案されている。このうち、電磁センサー法は、気体の漏洩検知には使用することができないという問題や、全ての継ぎ目部分に電極を設置する必要があるため大きなコストがかかるという問題を有している。また、電極に雨等がかかると、これを漏洩として検知してしまうため、屋外では使用することができないという問題も有している。一方、塗料法は、全ての継ぎ目部分に塗料を塗布しようとすると非常に手間がかかるという問題に加えて、屋外に設置された配管に塗料を塗布する場合には、雨天を避けて作業する必要があり、作業スケジュールが組みにくいという問題も有している。
【0004】
この点、テープ法は、気体の漏洩検知にも使用することができ、低コストで、屋外に設置された配管にも容易に取り付けることができるという点で優れている。このようなテープ法に用いられるテープとしては、例えば、特許文献1に記載の検知テープが挙げられる。同文献の第2図等に示されるように、この検知テープ6は、基材9に粘着剤8を塗布したものとなっている。基材9は、軟質ポリ塩化ビニル等の透明なプラスチックスシートからなっている。粘着剤8も、透明であるものの、この粘着剤8には、チモールブルーやフェノールレッド等の、強アルカリ性流体に触れると変色するpH指示薬が配合混錬されている。この検知テープ6を、同文献の第1図に示されるように、パイプ1(配管)のパイプ連結部(継ぎ目)におけるフランジ2の側面に、粘着剤8側を内側にして貼り付けておくと、パイプ1内を流れる内部流体5がパイプ連結部から漏洩した際には、その内部流体5に触れた部分のpH指示薬が変色し、透明な基材9を通してその変色箇所が外部から視認可能な状態となる。これにより、漏洩箇所を目視で容易に発見できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-093329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の検知テープ6は、pH指示薬としてチモールブルーやフェノールレッド等の有機系pH指示薬を使用しているため、配管に取り付けてからある程度日にちが経つと、紫外線や熱や湿気等によりpH指示薬が変性して、正常な変色反応を示さなくなるという問題を有していた。特に、屋外に設置された配管に使用する場合には、紫外線等の影響により、pH指示薬が短期間のうちに変性してしまうという問題があった。このため、数ヶ月程度の短い周期で定期的に検知テープ6を新たなものに交換する必要があり、維持管理の手間やコストが大きくなっていた。
【0007】
加えて、特許文献1に記載の検知テープ6は、基材9も粘着剤8も透明なものとなっているため、pH指示薬がアルカリ性の内部流体5に触れた際に現れる色と、フランジ2の側面の色とが同系色である場合には、漏洩が起こってpH指示薬が変色したとしても、これを目視で発見しにくいという問題もあった。このため、同文献の検知テープ6を貼り付ける際には、同文献の第2頁右上欄第7行~第10行等に記載されているように、検知テープ6を貼り付けるべき部分(同文献の第2図においては、フランジ2の側面)を予め白色に塗装等しておくことによって、pH指示薬の変色を速やかに発見できるようにすることが記載されている。しかし、検知テープ6を貼り付けるべきすべての部分を予め白色に塗装しようとすると、多大な手間がかかるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、屋外に設置された配管等に使用する場合であっても、紫外線や熱や湿気等によるpH指示剤の変性が生じにくく、交換の手間とコストを削減することができるアルカリ漏洩検知テープを提供するものである。また、アルカリ性流体の漏洩箇所を目視により発見しやすいアルカリ漏洩検知テープを提供することも本発明の目的である。さらに、このアルカリ漏洩検知テープを用いてアルカリ性の液体や気体の漏洩を検知するアルカリ性流体の漏洩検知方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、不織布に銅化合物を付着させたアルカリ漏洩検知テープを提供することによって解決される。
【0010】
本発明のアルカリ漏洩検知テープは、pH指示剤として無機化合物である銅化合物を使用している。このため、屋外に設置された配管等にこのテープを使用する場合であっても、紫外線や熱や湿気等によってpH指示剤が変性しにくいため、アルカリ性流体の漏洩が発生しない限りは、長期間に亘り交換の必要がない。これにより、アルカリ漏洩検知テープを交換する手間とコストを削減することができる。なお、本発明のアルカリ漏洩検知テープは、その使用箇所を配管に限定されるものではなく、アルカリ性流体の漏洩が起こり得る箇所であれば、どのような箇所にでも使用することができる。
【0011】
また、本発明のアルカリ漏洩検知テープは、アルカリ性流体の漏洩箇所を、目視により発見しやすいものとなっている。というのも、本発明のアルカリ漏洩検知テープは、基材として不織布を用いたものであるところ、このような不織布は、通常、不透明(半透明を含む。)であるため、基材上で起こるpH指示剤の変色を、アルカリ漏洩検知テープを取り付けた場所の色に関わらず、目視にて確認しやすいからである。なお、後で詳しく説明するように、本発明のアルカリ漏洩検知テープは、平常時(アルカリ性の液体や気体に触れる前の状態。以下同じ。)には、付着させた銅化合物のために薄い水色~薄緑色をしているが、アルカリ性の液体や気体に触れると、鮮やかな青色~紫色や濃い褐色~黒色に変色するようになっている。
【0012】
加えて、本発明のアルカリ漏洩検知テープをアルカリ性液体の漏洩検知に用いる場合には、配管の裏側等、作業者から目視しにくい箇所で漏洩が起こったとしても、当該漏洩を容易に発見することができる。というのも、本発明のアルカリ漏洩検知テープは、基材として不織布を用いたものであるため、これにアルカリ性液体が付着すると、毛細管現象等により当該液体がテープ内で比較的広範囲まで浸潤し、その浸潤した先でも変色が起こるようになっている。これにより、例えば、アルカリ漏洩検知テープを配管に巻き付けて設置した場合に、配管の裏側でアルカリ性液体の漏洩が起こったとしても、当該液体がテープ内を浸潤して、アルカリ漏洩検知テープにおける配管の表側に巻き付けられた部分にも変色を起こさせるため、その変色が作業者から容易に視認できるようになるからである。
【0013】
さらに、本発明のアルカリ漏洩検知テープをアルカリ性液体の漏洩検知に用いる場合には、アルカリ性液体が漏洩した際にも、人や環境に危険が及びにくいようにすることができる。というのも、基材として使用している不織布が、漏液をある程度吸収することができるため、漏洩が始まってから発見までのしばらくの間、漏洩したアルカリ性液体が滴下することを防ぐことができるからである。
【0014】
本発明のアルカリ漏洩検知テープにおいて、基材として使用する不織布の具体的な構造は、特に限定されない。しかし、本発明のアルカリ漏洩検知テープは、不織布にpH指示剤である銅化合物を付着させたものであるところ、不織布の比表面積が小さすぎると、不織布に十分な量の銅化合物を付着させることができないおそれがある。このため、前記不織布は、これを構成する繊維の平均繊維径Dが、30マイクロメートル以下のものとすると好ましい。これにより、不織布の比表面積を大きくして、銅化合物が不織布に付着しやすくすることができる。
【0015】
本発明のアルカリ漏洩検知テープにおいて、基材である不織布に付着させる銅化合物の量は、特に限定されないが、銅化合物の量が少なすぎると、アルカリ性流体が接触した際にもアルカリ漏洩検知テープが十分に変色せず、アルカリ性流体の漏洩を効果的に可視化することができないおそれがある。このため、前記銅化合物は、前記不織布1g当たりに対して30mg以上付着させるようにすると好ましい。
【0016】
本発明のアルカリ漏洩検知テープにおいて、不織布に付着させる銅化合物は、アルカリ性流体に接触した際に変色するものであれば、その具体的な組成を特に限定されない。このような銅化合物としては、塩基性炭酸銅、塩基性硫酸銅又は水酸化銅を含むものが挙げられる。なお、前記銅化合物は、1種類の化合物としても、複数種類の化合物の混合物としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、屋外に設置された配管等に使用する場合であっても、紫外線や熱や湿気等によるpH指示剤の変性が生じにくく、交換の手間とコストを削減することができるアルカリ漏洩検知テープを提供することが可能になる。また、アルカリ性流体の漏洩箇所を目視により発見しやすいアルカリ漏洩検知テープを提供することも可能になる。さらに、このアルカリ漏洩検知テープを用いてアルカリ性の液体や気体の漏洩を検知するアルカリ性流体の漏洩検知方法を提供することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好適な実施態様について、より具体的に説明する。本発明のアルカリ漏洩検知テープは、基材である不織布にpH指示剤である銅化合物を付着させたものである。この銅化合物は、後で詳しく説明するように、アルカリ性流体に触れると青系又は褐色系の色に変色する。このため、アルカリ性流体が漏洩する可能性のある部分(以下、「被検知部分」と表現することがある。)にこのアルカリ漏洩検知テープを取り付けておくと、被検知部分からアルカリ性流体が漏洩した際には、漏液に触れたテープが変色して、当該漏洩を容易に検知することができる。
【0019】
被検知部分に対して、アルカリ漏洩検知テープをどのように取り付けるかについては特に限定されない。例えば、アルカリ漏洩検知テープの片面に粘着性を有する粘着部を設けて、当該粘着部を被検知部分又はその周辺に貼り付けるようにしてもよい。この場合には、被検知部分の形状を問わない(テープを巻き付けたり括り付けたりする手がかりのない壁面等に対してもアルカリ漏洩検知テープを取り付けることができる)等の利点がある。しかし、粘着部によってアルカリ漏洩検知テープを被検知部分に貼り付けようとすると、被検知部分に液体や錆や砂埃等が付着している場合には、予めその液体等を拭き取ってからアルカリ漏洩検知テープを貼り付ける必要があり、アルカリ漏洩検知テープの取り付けに手間がかかるおそれがある。加えて、粘着部は、通常、粘着剤をアルカリ漏洩検知テープに塗布すること等によって形成されるところ、このような粘着剤は有機物であることが多く、アルカリ漏洩検知テープを屋外で使用する場合には紫外線等によって粘着剤が変性するおそれがある。また、漏洩が起こって、アルカリ性流体が粘着剤に触れた場合にも、粘着剤が変性するおそれがある。粘着剤が変性して、その粘着性が低下すると、アルカリ漏洩検知テープが被検知部分から剥がれ落ちてしまい、適切に漏洩を検知できなくなる可能性がある。
【0020】
このため、アルカリ漏洩検知テープは、粘着剤を使用しない方法で被検知部分に取り付けるようにすると好ましい。このような方法としては、例えば、アルカリ漏洩検知テープを紐のようなもので被検知部分に括り付ける方法や、アルカリ漏洩検知テープを被検知部分に巻き付けて、テープの末端を包袋止め金具のようなものでテープ自身に固定する方法等も考えられる。しかし、これらの方法では、アルカリ漏洩検知テープに加えて紐や金具等の固定具を用意する必要があり、アルカリ漏洩検知テープの取り付け作業が煩雑になるおそれがある。このため、アルカリ漏洩検知テープを、自着性(自己同士は接着するが、他の物質には接着しない性質のこと。以下同じ。)を有するものとし、被検知部分に巻き付けたアルカリ漏洩検知テープの末端を、アルカリ漏洩検知テープ自身に接着させて固定できるようにすると好ましい。これにより、固定具を用いなくとも、アルカリ漏洩検知テープを被検知部分に取り付けることができる。
【0021】
アルカリ漏洩検知テープに自着性を与える方法は、特に限定されない。この自着性は、ウレタン樹脂等を利用した化学的な自着性であってもよいが、微細な引っ掛かり構造等による機械的な自着性とすると、紫外線にさらされた場合やアルカリ性流体に触れた場合にも自着性が失われにくいため好ましい。このような機械的な自着性をアルカリ漏洩検知テープに与える方法としては、例えば、捲縮性を有する不織布を基材として採用する方法や、基材である不織布の少なくとも片面に面ファスナー様のかぎ状突起を設ける方法等が挙げられる。
【0022】
本発明のアルカリ漏洩検知テープにおいては、既に述べたように、基材である不織布の比表面積が小さすぎると、不織布に十分な量の銅化合物を付着させることができないおそれがある。このため、不織布を構成する繊維の平均繊維径Dは、30マイクロメートル以下とすると好ましい。平均繊維径Dは、25マイクロメートル以下とするとより好ましく、20マイクロメートル以下とするとさらに好ましい。一方、不織布を構成する繊維をあまりに細くしすぎると、却って不織布に銅化合物を付着させにくくなるおそれがある。また、不織布を構成する繊維を非常に細くするためには特殊な製造技術が必要となるため、不織布の製造コストが高くなるおそれもある。このため、平均繊維径Dは、通常、1マイクロメートル以上とされる。平均繊維径Dは、5マイクロメートル以上とするとより好ましく、10マイクロメートル以上とするとさらに好ましい。本実施形態においては、平均繊維径Dを13~15マイクロメートル程度としている。
【0023】
アルカリ漏洩検知テープの基材となる不織布の厚みは、特に限定されないが、不織布の厚みが薄すぎると、不織布に十分な量の銅化合物を付着させることができないおそれがある。また、アルカリ漏洩検知テープ内に保持できる漏液の量が少なくなるため、漏洩したアルカリ性液体がすぐに滴下してしまい、人や環境に害が及びやすくなるおそれもある。このため、不織布の厚みは、0.5mm以上とすることが好ましく、0.7mm以上とするとより好ましい。一方、不織布の厚みが厚すぎると、漏洩したアルカリ性液体が不織布内を横方向(厚み方向に略垂直な方向)に浸潤する速度が遅くなり、配管の裏側等で起こった漏洩を発見しにくくなるおそれがある。このため、不織布の厚みは、5mm以下とすることが好ましく、3mm以下とするとより好ましい。本実施形態においては、不織布の厚みを1mm程度としている。
【0024】
アルカリ漏洩検知テープの基材となる不織布の空隙率も、特に限定されないが、空隙率が小さすぎる(不織布の目が詰まりすぎている)と、テープ内に保持できる漏液の量が少なくなり、漏洩開始後すぐに漏液が滴下しやすくなるおそれがある。また、漏液が不織布内で浸潤しにくくなり、配管の裏側等で起こった漏洩を発見しにくくなるおそれもある。このため、不織布の空隙率は、50%以上とすることが好ましい。不織布の空隙率は、70%以上とするとより好ましく、90%以上とするとさらに好ましい。しかし、不織布の空隙率が大きすぎる(不織布の目が粗すぎる)と、却ってテープ内に漏液を保持しにくくなるおそれがある。また、アルカリ漏洩検知テープの変色を視認しにくくなるおそれもある。このため、不織布の空隙率は、97%以下とすると好ましい。不織布の空隙率は、95%以下とするとより好ましい。本実施形態においては、不織布の空隙率を93%程度としている。
【0025】
不織布を構成する繊維は、その種類を特に限定されず、天然繊維(セルロース繊維等の植物性繊維や、動物の体毛等の動物性繊維等)を用いてもよいが、化学繊維を用いると、アルカリ漏洩検知テープの耐アルカリ性や耐候性等を高めることができるため好ましい。化学繊維は、再生繊維、半合成繊維及び合成繊維に大別されるが、中でも合成繊維を採用すると、アルカリ漏洩検知テープの耐候性等をより高めることができるため好ましい。合成繊維としては、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリスチレン繊維、ビニロン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリクラール繊維、フッ素繊維、ノボロイド繊維、ポリエーテルエステル系繊維、ポリ乳酸繊維等が例示される。合成繊維としては、合成樹脂を複数種類混合したものを紡糸した繊維を採用してもよい。不織布を構成する繊維は、1種類のみを用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。本実施形態においては、アルカリ漏洩検知テープの基材として、ポリエステル繊維製の不織布を採用している。
【0026】
基材である不織布に銅化合物を付着させる方法についても、特に限定されず、不織布に化合物や粒子を付着させる際に用いられる一般的な方法を採用することができる。このような方法としては、微結晶状又は粉末状に形成した銅化合物(以下、単に「銅化合物の粉末」と表現することがある。)を、固着剤(バインダー)を用いて不織布に固着させる方法や、銅化合物の粉末を含む混濁液を不織布で濾過したのち、その不織布を乾燥させる方法や、銅イオンを含む水溶液を不織布に含侵させたのち、その不織布を特定の雰囲気条件下で乾燥させる方法や、銅イオンを含む水溶液内に不織布を漬け入れて不織布表面に銅化合物を析出させたのち、その不織布を乾燥させる方法等が挙げられる。また、不織布を熱可塑性繊維で構成する場合には、繊維の原料樹脂に予め銅化合物の粉末を練り込んでおく方法や、原料樹脂を繊維状に押出成形した直後に繊維表面に対して銅化合物の粉末を吹き付ける方法や、成形後の不織布を加熱して繊維表面の樹脂を溶かし、そこに銅化合物の粉末を振りかけてから冷却する方法等を採用することもできる。
【0027】
基材である不織布に対して、どの程度の量の銅化合物を付着させるかについても特に限定されないが、銅化合物の付着量が少なすぎると、アルカリ性流体に触れた際にもアルカリ漏洩検知テープが十分に変色せず、漏洩を見落としてしまうおそれがある。このため、不織布1gに対する銅化合物の付着量は、30mg以上とすると好ましい。不織布1gに対する銅化合物の付着量は、40mg以上とするとより好ましく、50mg以上とするとさらに好ましい。銅化合物の付着量を多くしすぎたとしても、特に弊害はないが、不織布1gに対する銅化合物の付着量は、通常、200mg以下とされる。本実施形態においては、不織布1gに対する銅化合物の付着量は、50~150mg程度となっている。
【0028】
本発明のアルカリ漏洩検知テープにおいて、基材である不織布に付着させる銅化合物は、アルカリ性流体に接触した際に変色するものであれば、その具体的な組成を特に限定されない。この銅化合物は、水に溶けやすいものを採用することもできるが、この場合には、アルカリ漏洩検知テープを屋外で使用する場合に、雨等によって銅化合物が流れ落ちてしまうおそれがある。このため、不織布に付着させる銅化合物は、水に溶けにくいものを採用すると好ましい。このような銅化合物としては、例えば、塩基性銅化合物や、水酸化銅や、酸化銅等が挙げられる。塩基性銅化合物としては、塩基性炭酸銅、塩基性硫酸銅、塩基性塩化銅、塩基性酢酸銅等が挙げられる。銅化合物は、1種類のみを用いても、複数種類を組み合わせて用いてもよい。また、銅化合物として、いわゆる緑青を用いることもできる。本実施形態においては、基材である不織布に付着させた銅化合物は、塩基性炭酸銅、塩基性硫酸銅及び水酸化銅の混合物となっている。
【0029】
塩基性炭酸銅、塩基性硫酸銅及び水酸化銅の混合物を不織布に付着させたアルカリ漏洩検知テープは、既に述べたように、平常時には薄い水色~薄緑色となっている。このアルカリ漏洩検知テープに、各種のアルカリ性流体を接触させると、以下のような変色反応を示した。すなわち、水酸化ナトリウム水溶液を接触させた場合には、テープが濃い青色~紺色に変色した。これは、水酸化銅(II)が生じたためであると考えられる。過剰の強アルカリ性流体を接触させた場合には、テープが青色に変色した後に褐色~黒色に変色することがあったが、これは、水酸化銅(II)から酸化銅への反応が進行したためであると考えられる。一方、気体のアンモニア又はアンモニア塩の水溶液に接触させた場合には、テープは濃い紺色~群青色に変色し、エチレンジアミンに接触させた場合には、テープは濃い鮮やかな群青色~紫色に変色した。これは、アミン類と銅イオンとが錯体を形成したためであると考えられる。また、次亜塩素酸ナトリウムを接触させた場合には、テープは黒色に変色した。これは、次亜塩素酸ナトリウムの酸化力によって銅イオンが酸化され、酸化銅を生じたためであると考えられる。これらの変色反応は、アルカリ漏洩検知テープを1年以上屋外に放置した後でも、ほとんど変化しなかった。
【0030】
本発明のアルカリ漏洩検知テープは、その使用場所を特に限定されず、アルカリ性流体の漏洩の可能性がある場所であれば、どのような場所でも使用することができる。このような場所としては、例えば、アルカリ性流体を扱うプラント(工場)等が挙げられる。より具体的には、アルカリ性流体を扱うプラントにおける、アルカリ性流体を輸送するための配管や、アルカリ性流体を貯蔵又は輸送するためのタンクや、アルカリ性流体をその内部で使用する反応槽や混合槽等が挙げられる。特に、これらの設備における継ぎ目部分は、アルカリ性流体が漏洩しやすい箇所となっているため、本発明のアルカリ漏洩検知テープを取り付ける箇所として好適である。