(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】逆止弁を含む配管の溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 37/00 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
B23K37/00 301B
(21)【出願番号】P 2018224561
(22)【出願日】2018-11-30
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】田頭 直人
(72)【発明者】
【氏名】牧 秀治
(72)【発明者】
【氏名】阿形 治樹
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-038574(JP,A)
【文献】特開平07-276048(JP,A)
【文献】実開昭49-070110(JP,U)
【文献】実開昭52-093027(JP,U)
【文献】特開平05-177388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の配管である第1の配管と、逆止弁の一次側へ導入する配管である第2の配管とを溶接により接合する方法であって、
前記第1の配管に、該配管から分岐して大気圧開放する分岐配管を設け、該分岐配管を閉止又は開度調節する第1の開度調節手段を接続するステップと、
前記第1の配管と第2の配管の端面同士を密着するように突き当てるステップと、
前記第1の配管にバックシールドガスを供給し、前記第1の開度調節手段により前記分岐配管を閉止又は開度調節して、前記第1及び第2の配管内の前記バックシールドガスの圧力を、前記逆止弁の開弁圧力より高い第1の圧力に設定し、前記逆止弁を開いて、該第1及び第2の配管内を前記バックシールドガスで置換するステップと、
前記第1の開度調節手段により、又は、前記第1の開度調節手段を前記分岐配管の開度調節する第2の開度調節手段に交換して該第2開度調節手段により、前記分岐配管を開度調節して、前記第1及び第2の配管内のバックシールドガスの圧力を、大気圧より高く前記逆止弁の開弁圧力より低い第2の圧力に設定し、前記逆止弁を閉じた状態で、前記第1の配管と第2の配管とを溶接するステップと、を含むことを特徴とする、配管接合方法。
【請求項2】
前記第1の配管と第2の配管とを溶接するステップは、前記逆止弁の二次側を閉止した状態で行うことを特徴とする、請求項1に記載の配管接合方法。
【請求項3】
前記第1の配管の前記分岐と前記端面との間に、開閉バルブが設けられており、前記第1及び第2の配管内を前記バックシールドガスで置換するステップと、前記第1の配管と第2の配管とを溶接するステップとを、前記開閉バルブを開いた状態で行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の配管接合方法。
【請求項4】
前記第2の圧力は、溶接箇所が内側へ変形するのを抑制できる圧力である、請求項1~3のいずれかに記載の配管接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管接合方法、及び流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等のチャンバ等へ各種のプロセスガスを供給するために使用される流体制御装置としては、上流から下流に向かって複数の流体機器が配列された流体制御装置(IGS)が広く用いられている。
このような流体制御装置にガスを供給するために、電磁弁や逆止弁やそれらを接続するステンレス配管からなる分配システムがしばしば用いられ、この分配システムの配管同士の接合には、省スペースの観点からTIG溶接等の溶接技術が用いられている。これらの配管を溶接する際には、配管の端面同士を密着するように当接させたのち、大気との接触による内面焼けを抑えるために、配管内の残留ガスをArガスなどのバックシールドガスに置換する。また、溶接箇所が内側へ変形するのを抑制するため、バックシールドガスで配管内の内圧を大気圧より高くして溶接を行っている(例えば特許文献1)。
【0003】
このような溶接を逆止弁の直前の上流側の配管について行う場合、
図5に示すように、逆止弁204の二次側に内圧モニタリング装置210(圧力計211、流量調整バルブ212等からなる作業工具)を接続する。そして、バックシールドガスを一次側の供給源201から逆止弁204の開弁圧力(クラッキング圧力)以上の圧力で供給し、配管202a-2と逆止弁導入配管202bとの溶接個所及び逆止弁204を通過して二次側に流し、上記内圧モニタリング装置210の流量調整バルブ212の開度を調整することにより、配管202a-2と202bの内圧を調整している。尚、
図5に記載された開閉バルブ203は、溶接時には開弁させているので、前後の配管202a-1、202a-2と合わせて、1つの配管と等価と考えてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法では、溶接中にも逆止弁を通過してバックシールドガスを流すので、溶接の熱による一次側配管内の圧力変化等によって、逆止弁のチャタリングが起き、溶接個所の内圧の脈動が発生することがある。その結果、溶接品質にばらつきが起きることがある。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、逆止弁の上流側の配管同士を溶接により接合する方法であって、チャタリングの発生を防ぎ、溶接品質を安定させることができる、配管の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配管接合方法は、上流側の配管である第1の配管と、逆止弁の一次側へ導入する配管である第2の配管とを溶接により接合する方法であって、
前記第1の配管に、該配管から分岐して大気圧開放する分岐配管を設け、該分岐配管を閉止又は開度調節する第1の開度調節手段を接続するステップと、
前記第1の配管と第2の配管の端面同士を密着するように突き当てるステップと、
前記第1の配管にバックシールドガスを供給し、前記第1の開度調節手段により、前記第1及び第2の配管内の前記バックシールドガスの圧力を、前記逆止弁の開弁圧力より高い第1の圧力に設定し、前記逆止弁を開いて、該第1及び第2の配管内を前記バックシールドガスで置換するステップと、
前記第1の開度調節手段により、又は、前記第1の開度調節手段を前記分岐配管の開度調節する第2の開度調節手段に交換して該第2の開度調節手段により、前記分岐配管を開度調節して、前記第1及び第2の配管内のバックシールドガスの圧力を、大気圧より高く前記逆止弁の開弁圧力より低い第2の圧力に設定し、前記逆止弁を閉じた状態で、前記第1の配管と第2の配管とを溶接するステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記第1の配管と第2の配管とを溶接するステップは、前記逆止弁の二次側を閉止した状態で行ってもよい。
【0009】
前記第1の配管の前記分岐と前記端面との間に、開閉バルブが設けられており、前記第1及び第2の配管内を前記バックシールドガスで置換するステップと、前記第1の配管と第2の配管とを溶接するステップとを、前記開閉バルブを開いた状態で行ってもよい。
【0010】
前記第2の圧力は、溶接箇所が内側へ変形するのを抑制できる圧力であることが好ましい。
【0011】
本発明の流体制御装置は、上流側の配管である第1の配管と、逆止弁の一次側から導出する第2の配管とが溶接により接合された部分を有する流体制御装置であって、前記第1の配管には該配管から分岐する分岐配管が設けられ、前記溶接の際には、前記分岐配管に該分岐配管を開度調節する開度調節手段を接続し該開度調節手段を経由して大気圧開放できるようにしたことを特徴とする。
【0012】
前記流体制御装置において、前記第1の配管の前記分岐と前記溶接により接合された部分との間に、開閉バルブが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶接部分の上流の配管に、該配管から分岐して大気圧開放する分岐配管を設けて、開度調節手段で該分岐配管を開度調節し、溶接対象の管内のバックシールドガスの圧力を逆止弁の開弁圧力より低い第2の圧力に調整するので、溶接中にバックシールドガスが逆止弁を通過して流れることがない。したがって、チャタリングが発生せず、溶接時に管内の圧力が安定して、溶接の品質が安定する。
また、溶接中は管内を大気圧より高い第2の圧力に設定して溶接を行うので、溶接箇所が内側へ変形するのを抑制できる。
また、溶接前に、管内のバックシールドガスの圧力を逆止弁の開弁圧力より高い第1の圧力に調整して逆止弁を開弁させるので、溶接する各管内がバックシールドガスで十分に置換され、内面焼けが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の別の実施形態の溶接例を示す概略図。
【
図4】本発明の溶接方法の他の実施例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の溶接方法について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る溶接方法を示す概略図である。
【0016】
図1に示すように、バックシールドガスの供給源101と、配管102a-1と、途中に設けられた開閉バルブ103と、配管102a-2と、逆止弁導入配管102bと、逆止弁104と、下流側の配管102cとで構成される。ここで、配管102a-2の端面と逆止弁導入配管102bの端面とは、まだ接合されていないが、密着するように突き当てられている。また、溶接のために、配管102a-1から分岐する分岐配管102dが設けられおり、内圧モニタリング装置110(圧力計111、流量調整バルブ112等からなる作業工具)が接続され、これを経由して大気圧開放されている。この内圧モニタリング装置110は、第1の開度調節手段に相当する。
【0017】
次にこのように準備した接合対象配管系の接合手順について説明する。
まず、バックシールドガス(Arガス等)を供給源101から配管102a-1に供給し、開閉バルブ103を開いて、配管102a-2と逆止弁導入配管102bとの当接部分を通過して、逆止弁104に到達させる。
バックシールドガスは、また、配管102a-1の途中の分岐から配管102dにも導入され、内圧モニタリング装置110を経由して、大気圧開放されている。
【0018】
ここで、内圧モニタリング装置110の流量調整バルブ112の開度を絞って、圧力計111でモニターされている管内圧力を上げ、これを逆止弁104の開弁圧力以上の圧力である第1の圧力に設定する。この開弁圧力は、一定流量の流体が流れ始める圧力である「クラッキング圧力」であってもよい。すると、逆止弁104は開き、バックシールドガスは、下流の配管102cにも流れる。この状態を所定時間保つことにより、配管102a-1から102cまでの配管内は、バックシールドガスで十分に置換される。
【0019】
次に、流量調整バルブ112の開度を開けて、圧力計111でモニターされている管内圧力を下げ、これを逆止弁104の開弁圧力より低く大気圧以上より高い圧力である第2の圧力に設定する。この結果、逆止弁104は閉じ、この状態で、前記端面同士を密着するように突き当てられた配管102a-2と逆止弁導入配管102bとを、溶接により接合する。
このとき、逆止弁104は閉じたままで、バックシールドガスが通過しないので、溶接の熱による若干の圧力変動があっても、逆止弁のチャタリングが生ずることがなく、管内圧力は安定する。
このステップにおいて、逆止弁104の二次側を閉止することが望ましい。これにより、チャタリングの原因となるバックシールドガスの逆止弁104通過を、より確実に防ぐことができるからである。
この第2の圧力は、溶接時に溶接個所が内側へ変形することを抑制できる一定の内圧を生ずる圧力であることが好ましい。逆止弁104の開弁圧力(クラッキング圧力)以下でも、このような圧力を設定することは可能である。
【0020】
なお、上記接合手順においては、第1の開度調節手段として、流量調整バルブ112を含む内圧モニタリング装置110を、バックシールドガスで置換するステップと溶接するステップの両方に用いたが、両ステップで別々の開度調節手段を用いてもよい。例えば、バックシールドガスで置換するステップでは、第1の開度調節手段として、単に分岐配管102dを閉止するプラグを用いて管内圧力を第1の圧力に設定し、溶接するステップでは、これを第2の開度調節手段(例えば、上記した流量調整バルブ112を含む内圧モニタリング装置110)に交換して、該第2の開度調節手段により管内圧力を第2の圧力に設定してもよい。
但し、溶接するステップでは、分岐配管102dを開く必要があるので、このステップに用いる第1又は第2の開度調節手段として、閉止のみを目的とするプラグ等は用いられない。
【0021】
なお、開閉バルブ103は、本発明では必須ではないが、実際の適用例として開閉バルブ103と逆止弁104との間で本発明の溶接方法が適用されるケースが多いので、
図1に表示している。したがって、
図2に示すように開閉バルブ103を除いた形態で、上流側の配管102aと逆止弁導入配管102bとの接合を行ってもよく、その場合の接合手順も
図1の形態と同様で、同様の効果が得られる。
また、内圧モニタリング装置110の接続に用いた分岐配管102dは、上記溶接後は除去しても良く、他の目的に利用しても良い。
【0022】
(実施例1)
図3は、開閉バルブ103の下流の配管102a-2と逆止弁導入配管102bとを、溶接により接合する場合を示す斜視図である。配管102a-2と逆止弁導入配管102bは共にステンレス配管である。
溶接する部分の上流側の配管系は、上流の配管102a-1と、その下流側端部に取り付けられたT型継手と、このT型継手により垂直方向に分岐する配管102dと、前記T型継手の下流に取り付けられた開閉バルブ103と配管102a-2から構成されている。なお、開閉バルブ103に隠れて見えないが、前記T型継手の二次側と開閉バルブ103の一次側の配管は、従来の溶接方法で事前に溶接されている。
一方、溶接する部分の下流側の配管系は、逆止弁導入配管102bと逆止弁104と、その二次側(下流側)に接続された配管102cとで構成されている。逆止弁104と配管102cも、従来の溶接方法で事前に溶接されている。
【0023】
ここで、開閉バルブ103の二次側の配管102a-2と、逆止弁104への導入配管102bとを、本発明の方法で接合する。
まず、配管102a-1の上流側をバックシールドガス(Arガス)の供給源(図示省略)に接続し、配管102dの下流に内圧モニタリング装置(図示省略)を接続する。次に、上記配管102a-2の端面と上記逆止弁導入配管102bの端面とを、密着するように突き当てる。
次いで、配管102a-1にバックシールとガスを導入するとともに、開閉バルブ103を開く。上記のように、内圧モニタリング装置(図示省略)の流量調整バルブ112により、管内圧力を、逆止弁104の開弁圧力より高い第1の圧力に設定して、逆止弁104を開き、バックシールドガスを流して管内を十分にバックシールドガスで置換する。
次いで、前記流量調整バルブ112により、管内圧力を、逆止弁104の開弁圧力より低く大気圧より高い第2の圧力に設定して逆止弁104を閉じ、この状態で、配管102a-2と、逆止弁導入配管102bとを溶接する。これにより、両配管は適切に接合される。
【0024】
(実施例2)
図4は、
図3の接合部分に並行して、開閉バルブ103の下流の配管102a-1と逆止弁導入配管102bとを、溶接により接合する場合を示す斜視図である。
この場合、手前側の配管102a-1からバックシールドガスを導入し、手前側の分岐配管102dに内圧モニタリング装置(図示省略)を接続して、上記実施例と同様の手順で溶接により接合を行う。これにより、両配管は適切に接合される。
【0025】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0026】
上記実施形態では、開閉バルブ、レギュレータ、流量制御装置等の各種流体機器を集積化した流体制御装置に、上記実施形態の配管接合方法や、流体制御装置の外部に配管を接続する構成の配管接合方法を取り入れてもよい。
また、上記実施形態で溶接完了後、配管102dから内圧モニタリング装置110を取り外し、新たに配管等を接合してもよい。
【符号の説明】
【0027】
101 :供給源
102a :配管
102a-1:配管
102a-2:配管
102b :逆止弁導入配管
102c :配管
102d :配管(分岐配管)
103 :開閉バルブ
104 :逆止弁
110 :内圧モニタリング装置(開度調節手段)
111 :圧力計
112 :流量調整バルブ
201 :供給源
202a-1:配管
202a-2:配管
202b :配管
202c :配管
203 :開閉バルブ
204 :逆止弁
210 :内圧モニタリング装置
211 :圧力計
212 :流量調整バルブ