(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】インサータ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
A61M25/09 530
(21)【出願番号】P 2019101475
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】秋岡 貴生
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-33690(JP,A)
【文献】特開2005-160952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0100103(US,A1)
【文献】特開2004-202006(JP,A)
【文献】特開2002-143317(JP,A)
【文献】特表平3-501087(JP,A)
【文献】特開2011-62522(JP,A)
【文献】中国実用新案第211962780(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部と、前記管状部に後端に連結して配置された把持部と、を備え、
前記管状部には、ワイヤを挿入可能なワイヤ等挿通部を有し、
前記把持部には、前記ワイヤ等挿通部と連通したC字溝を有し、
前記ワイヤ等挿通部は、軸方向全長に形成されたスリット又は溝を少なくとも一部に備え、
前記把持部は、
両側に上面に対して底面側に立設された側面を有するとともに、前記C字溝の深さは、使用されるワイヤやマイクロカテーテルの直径よりも浅い深さに形成されており、前記側面を把持することによって、前記C字溝及び、前記スリット又は前記溝の少なくとも一部がワイヤの直径以上に開くことが可能であり、かつ把持を解除することで初期状態に復帰することを特徴とするインサータ。
【請求項2】
前記把持部の
底面側若しくは後端側又は両方に弧状に形成された把持部復帰補助部材を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインサータ。
【請求項3】
前記把持部は、前記C字溝に対して反対側が空洞に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインサータ。
【請求項4】
前記把持部は、側面と上面の境界が面取りされているか又は曲面に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインサータ。
【請求項5】
前記スリット又は前記溝の底面部は、周囲と比較して薄肉で形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインサータ。
【請求項6】
前記スリット又は前記溝の底面部は、周囲と比較して軟質の素材で形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインサータ。
【請求項7】
前記C字溝及び前記スリット又は前記溝の端部は、硬質な部材で作製されているか、又は硬質な素材が挿入されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインサータ。
【請求項8】
前記C字溝及び前記スリット又は前記溝の端部は、周囲と比較して軟質な部材で作製されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインサータ。
【請求項9】
前記スリット又は前記溝は、空洞側か
らV字状に形成された逆V字溝を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のインサータ。
【請求項10】
前記スリットは、前記管状部の先端から前記把持部の後端に向かって前記スリットの幅が徐々に広くなるように形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のインサータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガイドワイヤや操作用ワイヤ等の医療用ワイヤやマイクロカテーテルをカテーテルやシース等のチューブに挿入する際の補助を目的としてインサータが用いられている。かかるインサータは、通常、カテーテルやシースの端部にワイヤ等導出部を有する管状部材の一部を挿入し、後端側からワイヤを挿入することによってワイヤをカテーテルやシース内に配置できるようにしたものである。
【0003】
こうしたインサータにおいて、湾曲した先端部を有するガイドワイヤをインサータ内に挿入することを容易にした発明として、内部にガイドワイヤを挿通可能な空間を有する管状部材と、管状部材の軸方向全長に延びる断面V字状のスリットと、その基部側にホルダーチューブとの連結が可能なホルダーチューブ連結部材と、管状部材とホルダーチューブ連結部材を繋ぐ平板状の中間部材を有しているガイドインサータが提案されている(特許文献1)。
【0004】
かかる発明によれば、スリットからガイドワイヤを空間に挿入するときに、横断面のV字部分が開いて管状部材の表面から挿入しやすく、また、ガイドワイヤが管状体の空間に入りやすく、一旦入ると、不意にスリットから抜けないという効果を奏する。
【0005】
確かに、湾曲した先端部を有するガイドワイヤをインサータに配置しやすく、かつスリットからガイドワイヤを空間に挿入する際に挿入しやすく、一旦挿入されたガイドワイヤが管状体に入った場合には、スリットから抜けないという点では優れた発明である。しかしながら、インサータは、ガイドワイヤがカテーテル内に挿入された後は、その役割は終了しており、ガイドワイヤからインサータを取り外す必要がある場合も存在する。
【0006】
こうした場合においては、スリットからワイヤが抜けない場合、インサータをガイドワイヤより狭く形成されたスリットから強引に外さなければならないため、ガイドワイヤが損傷したり、屈曲等の変形をおこなしたりする可能性があった。マイクロカテーテルに関しては、ワイヤよりも脆弱な素材で作製されていることが多く、特にスリットからの取り外し時の損傷等に悪影響を及ぼす可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、インサータのスリットからワイヤ又はマイクロカテーテルを取り外す際に損傷等の悪影響を及ぼすことなく取り外すことができ、役割を終えたインサータを容易かつ迅速にガイドワイヤ又はマイクロカテーテルの側方方向に取り外すことが可能なインサータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0010】
本発明にかかるインサータは、
管状部と、前記管状部の後端に連結して配置された把持部と、を備え、
前記管状部には、ワイヤを挿入可能なワイヤ等挿通部を有し、
前記把持部には、前記ワイヤ等挿通部と連通したC字溝を有し、
前記ワイヤ等挿通部は、軸方向全長に形成されたスリット又は溝を少なくとも一部に備え、
前記把持部の側面を把持することによって、前記C字溝及び、前記スリット又は前記溝の少なくとも一部がワイヤの直径以上に開くことが可能であり、かつ把持を解除することで初期状態に復帰することを特徴とする。
【0011】
かかる構成を採用することによって、ワイヤ又はマイクロカテーテルをカテーテルやシース等の挿入した後に、把持部を挟持することによって管状部のスリット又は溝がワイヤ又はマイクロカテーテル以上に開くことから、容易にインサータをワイヤの側方方向に取り外すことができる。また、把持部は、把持による挟持を解除することによって、把持部の弾性力によって初期の位置に復帰するように形成されている。
【0012】
さらに、本発明にかかるインサータにおいて、前記把持部の底面側又は後端側もしくは両方に弧状に形成された把持部復帰補助部材を備えていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
把持部復帰補助部材を設けることによって、把持部を掴んで挟持した状態から挟持状態を開放した際に把持部を速やかに元の形態に戻すことができる。
【0014】
また、本発明にかかるインサータにおいて、前記把持部は、前記C字溝に対して反対側が空洞に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0015】
かかる構成を採用することによって、把持部の両側側面を挟持した際に空洞によって潰れやすくなり、C字溝及びスリット又は溝を開きやすくすることができる。また、箱状に形成することによって、壁面による弾性で把持部を速やかに元の形態に戻すことができる。
【0016】
さらに、本発明にかかるインサータにおいて、前記把持部は、側面と上面の境界が面取りされているか又は曲面に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
かかる構成を採用することによって、把持部を片手で持ちやすくなり、かつC字溝の近くを持って挟持しやすくすることができる。
【0018】
さらに、本発明にかかるインサータにおいて、前記スリット又は前記溝の底面部は、周囲と比較して薄肉で形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0019】
かかる構成を採用することによって、管状部のスリット又は溝と反対側が曲がりやすくなり、スリット又は溝を開口させやすくすることができる。
【0020】
さらに、本発明にかかるインサータにおいて、前記スリット又は前記溝の底面部は、周囲と比較して軟質の素材で形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0021】
かかる構成を採用することによって、管状部のスリット又は溝と反対側が曲がりやすくなり、管状部のスリット又は溝を開口させやすくすることができる。
【0022】
さらに、本発明にかかるインサータにおいて、前記C字溝及び前記スリット又は前記溝の端部は、硬質な部材で作製されているか、又は硬質な素材が挿入されていることを特徴とするものであってもよい。
【0023】
かかる構成を採用することによって、把持部によって開かれた力が管状部に伝わりやすくなるため、管状部のスリット又は溝を開口させやすくすることができる。
【0024】
さらに、本発明にかかるインサータにおいて、C字溝及び前記スリット又は前記溝の端部は、周囲と比較して軟質の素材で形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0025】
かかる構成を採用することによって、前記C字溝及び前記スリット又は前記溝の端部が柔らかいため、管状部のスリット又は溝を開口させやすくすることができる。
【0026】
さらに、本発明にかかるインサータにおいて、前記スリット又は前記溝は、空洞側から逆V字状に形成された逆V字溝を有することを特徴とするものであってもよい。
【0027】
かかる構成を採用することによって、スリット又は溝がワイヤの直径より大きく開かなかった場合であってもインサータのスリット又は溝がワイヤによって開きやすくなるため、インサータを取り外しやすくすることができる。
【0028】
さらに、本発明にかかるインサータにおいて、前記スリットは、前記管状部の先端から前記把持部の後端に向かって前記スリットの幅が徐々に広くなるように形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0029】
かかる構成を採用することによって、後端からワイヤを徐々に外すことによって、スリット又は溝を開きやすくすることができる。そのため、インサータを取り外しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明にかかるインサータによれば、ワイヤ又はマイクロカテーテルをカテーテルやシースに挿入した後に、インサータをワイヤ又はマイクロカテーテルの側方方向へ容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるインサータ100の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるインサータ100の平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるインサータ100の管状部10の断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるインサータ100の管状部10の断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるインサータ100の把持部20の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかるインサータ100の底面側を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかるインサータ100の把持部20を潰した状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかるインサータ100の使用方法を示す模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかるインサータ100の管状部10の別実施形態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態にかかるインサータ100の管状部10のさらなる別実施形態を示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態にかかるインサータ100の別実施形態を示す平面図である。
【
図12】
図12は、実施形態にかかるインサータ100の管状部10の別実施形態を示す断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態にかかるインサータ100の管状部10の別実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明にかかるインサータ100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、説明の便宜のため、特許請求の範囲及び明細書において、上面側、底面側、側面側、先端側、後端側とは、
図1における矢印の方向を示す。
【0033】
図1は、実施形態にかかるインサータ100の斜視図が示されている。実施形態にかかるインサータ100は、主として、カテーテルやシース等のチューブ状部材80(
図8参照)内にガイドワイヤや医療用処置ワイヤ等のワイヤ又はマイクロカテーテル90を挿入するための補助器具であり、主として、チューブ状部材80の端部に先端の一部が挿入されてワイヤ又はマイクロカテーテル90(
図8参照)をチューブ状部材80に導出するワイヤ等導出部11を有する管状部10と、この管状部10に連結されて形成されており、インサータ100を把持する把持部20と、を備えている。
【0034】
管状部10は、
図1に示すように、細長い管状に形成されており、内部にワイヤ又はマイクロカテーテル90を挿通可能な大きさの断面円形の空洞からなるワイヤ等挿通部30が全長に渡って形成されている。ワイヤ等挿通部30の内径は、ワイヤ又はマイクロカテーテル90がスムーズに移動可能であって、かつワイヤ又はマイクロカテーテル90が略直線状態を維持可能な程度の径に形成することが好ましく、概ね0.30mm~2.0mm程度に作製することが好ましいがこのサイズに限定するものではない。また、内径は、管状部10の先端側10aを除き、同径に形成することが好ましい。先端部10a近傍のワイヤ等挿通部30は、ワイヤ又はマイクロカテーテル90を先端の中心から導出するために先細りとなるような形態に形成してもよい。管状部10の外形は、先端側10aから後端側10bまで同径に形成してもよいし、先端側10aに向かって細くなるようにテーパーを設けたり、段差を設けたりしてもよい。また、
図1に示すように、先端側10a近傍は、カテーテルやシース等のチューブ状部材80の端部開口に挿入しやすいように、大きく先細りするように構成してもよい。管状部10の長さは、限定するものではないが、カテーテルの端部には、コネクタ等が取り付けられる場合もあるので、こうしたコネクタ内を介してカテーテルの端部に届く程度の長さを有することが好ましい。
【0035】
管状部10には、
図1又は
図2に示されるように、管状部10の上面側に外周表面からワイヤ等挿通部30に向かって軸方向全長に延びるスリット12又は溝13が設けられている。スリット12は、
図3Aに示すように、隙間がなく単に切れ込みが設けられているものである。溝13は軸方向全長に設けられており、
図3Bに示すように、少なくとも遠位端側では、ワイヤ又はマイクロカテーテル90の直径より小さい幅の間隔を有する隙間αが設けられている。もちろん全長に渡って、ワイヤ又はマイクロカテーテル90の直径より小さい幅の間隔を有する隙間αに形成しても構わない。スリット12及び溝13には、外周側(上面側)が広くなるように断面がV字状になるようにV字溝15を設けても良い。このようにV字溝15に設けることによって、管状部10の側面からワイヤ又はマイクロカテーテル90を挿入する際に、ワイヤ又はマイクロカテーテル90をV字溝15に配置した後、ワイヤ又はマイクロカテーテル90を押し込むことで容易にV字溝15が開いてワイヤ又はマイクロカテーテル90をワイヤ等挿通部30に挿入しやすくなる。管状部10は少なくともワイヤ又はマイクロカテーテル90を挿入可能な大きさまで開くような硬さで作製される。素材自体は特に限定するものではないが、PE、PP等のオレフィン系樹脂、エステル系樹脂又はスチレン系エラストマーを使用するとよい。また、外周側を広く形成する際には、V字のみではなく、
図4に示すように、スリット12及び溝13の端部を弧状に形成してもよい。
【0036】
把持部20は、
図1に示すように、管状部10の後端側10bに連接されている部材であり、片手でつかみやすいように、管状部10より大きく幅広に形成されている。把持部20の上面には、
図5に示すように、管状部10のワイヤ等挿通部30から連続し、かつ、上面側が開放された断面略C字形状に形成されたC字溝21が形成されている。把持部20は、
図6に示すように、底面側が開口した空洞に形成された箱状に形成するとよい。これにより、把持部20の両側の側面を摘んで挟持することで把持部20を潰しやすくなり、この潰しによって、
図7に示すように、C字溝21の溝の端部21aの溝幅βを開くことができる。このC字溝21は、ワイヤ等挿通部30のスリット12又は溝13と連通しているため、スリット12又は溝13も広げられることになる。また、箱状に形成することによって、壁面による弾性で把持部を速やかに元の形態に戻すことができる。このため、インサータ100にワイヤ又はマイクロカテーテル90が取り付けられている状態から容易にワイヤ又はマイクロカテーテル90の側方方向に広がったスリット12又は溝13を介して取り外すことができる。スリット12又は溝13からC字溝21に連通させるに際しては、
図1又は
図2に示すように、ワイヤ等挿通部30のスリット12又は溝13からC字溝21に向かって徐々に広くなるように形成するとよい。かかる構成を採用することによって、C字溝21から把持部20を後端部から先に斜めになるように引くことでスリット12又は溝13がワイヤ又はマイクロカテーテル90の直径以上に開ききっていない場合であってもワイヤ又はマイクロカテーテル90によってスリット12又は溝13を徐々に開きつつ容易に取り外すことができる。このように管状部10のスリット12又は溝13は、把持部20の挟持によって必ずしも管状部10の先端側10aまで完全に開ききっている必要はなく、管状部10の後端側1cm程度が開口するだけでも、従来と比較してワイヤ又はマイクロカテーテル90から取り外しやすいインサータ100とすることができる。なお、C字溝21の深さは、使用されるワイヤ又はマイクロカテーテル90の直径よりも浅い深さに形成することが好ましい。このような構成にすることで、ワイヤ又はマイクロカテーテル90の一部がC字溝21からはみ出した状態で配置されるため、把持部20の上面を指で滑らせることにより、ワイヤ又はマイクロカテーテル90を進退させることができる。
【0037】
把持部20の形態は、特に限定するものではないが、本実施形態においては掴みやすいように、全体が直方体に作製され、中央部分上面がやや低くなるように形成されるとともに、上面及び側面との境界が面取り又は曲面25に形成されている。このような形状にすることで、つまんだ際に、よりC字溝21に近い位置で摘むことができるので、よりC字溝21を開きやすくすることができる。また把持部20の側面には、底面側が凹状となるように切欠部26が設けられており、指をこの凹部に配置することで把持部20が指に対して位置決めできるようにされている。
【0038】
以上のように構成されたインサータ100は、以下のようにして使用される。まず、先端が湾曲していないワイヤ又はマイクロカテーテル90を使用する場合には、
図8Aに示すように、カテーテルやシース等のチューブ状部材80の端部開口に管状部10の先端側10aを挿入し、把持部20のC字溝21にワイヤ又はマイクロカテーテル90の先端を載置し、管状部10の後端からワイヤ又はマイクロカテーテル90を管状部10に挿入することによって、ワイヤ又はマイクロカテーテル90をカテーテルやシースに配置することができる。
【0039】
こうして、ワイヤ又はマイクロカテーテル90を所望の位置まで挿入した後、把持部20の両側面をつまんで挟持することによって、C字溝21及び管状部10のスリット12又は溝13が開口するので、
図8Bに示すように、ワイヤ又はマイクロカテーテル90の側方方向に容易にインサータ100を取り外すことができる。
【0040】
なお、本発明は上述した各実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0041】
上述した第1実施形態にかかるインサータ100において、管状部10のスリット12又は溝13を把持部20による挟持によって開きやすくするために、以下のような構成を採用してもよい。
【0042】
図9Aに示すように、管状部10のスリット12又は溝13と反対側の部位(底面部16)を薄肉に形成しても良い。かかる構成を採用することによって、底面部16で湾曲しやすくなり、把持部20を挟持した際に管状部10のスリット12又は溝13を開きやすくすることができる。また、薄肉部を形成するに際しては、
図9Bに示すように、背面溝16aを全長に渡って形成してもよい。
【0043】
また、
図10に示すように、管状部10のスリット12又は溝13と反対側の部位(底面部16)は管状部10の他の部位と比較して軟質の素材を採用してもよい。かかる構成を採用することによって、底面部16で湾曲しやすくなり、把持部20を挟持した際に管状部10のスリット12又は溝13を開きやすくすることができる。
【0044】
さらに、
図11に示すように、管状部10のスリット12又は溝13の端部18(
図11の網掛けの部分)を把持部20のC字溝21の端部18まで連続するように硬質に形成したり、金属線等の硬質の素材を挿入したりしてもよい。かかる構成を採用することによって、端部18が硬く形成されるので、把持部20で開いたC字溝21の端部18の力が管状部10のスリット12又は溝13の端部18に伝わりやすくなり、把持部20を挟持した際にスリット12又は溝13を開きやすくすることができる。
【0045】
さらに、
図11の硬質に形成した部分に代えて、管状部10のスリット12又は溝13の端部18(
図11の網掛けの部分)を軟質に形成してもよい。この部位を軟質に形成することで湾曲しやすくなり、把持部20を挟持した際にスリット12又は溝13を開きやすくすることができる。
【0046】
さらに、
図12に示すように、管状部10のスリット12又は溝13の部分にワイヤ等挿通部30の内側から断面略逆V字状となる逆V字溝19を軸方向全長に渡って設けてもよい。かかる構成を採用することによって、管状部10のスリット12又は溝13がワイヤ又はマイクロカテーテル90の直径まで開かなかった場合であってもワイヤ又はマイクロカテーテル90を逆V字溝19に当たるようにして側面方向へ移動することでスリット12又は溝13をワイヤ又はマイクロカテーテル90で開きやすくなり、容易に管状部10からワイヤ又はマイクロカテーテル90を取り外すことができる。
【0047】
さらに、
図13に示すように、把持部20を挟持した後に手を離した場合に、迅速に初期の形状に復帰するように把持部復帰補助部材28を設けても良い。把持部復帰補助部材28は、弾性力を有する部材で作製されており、把持部20の底面側に両側側面に弧状に架設された形状及び後端側に両側側面に弧状に架設された形状に作製されている。把持部20を挟持した場合には円弧が潰され、把持部20を離すと把持部復帰補助部材28の弾性力によって元の円弧に復帰しようとする力によって把持部の復帰を補助することになる。なお、把持部復帰補助部材28は、底面側及び後端側のいずれか一方であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上述した実施の形態で示すように、カテーテルやシース等のチューブ状部材にワイヤを挿入する補助具として利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…管状部、10a…先端側、10b…後端側、11…ワイヤ等導出部、12…スリット、13…溝、15…V字溝、16…底面部、16a…背面溝、18…端部、19…逆V字溝、20…把持部、21…C字溝、21a…端部、25…曲面、26…切欠部、30…ワイヤ等挿通部、80…チューブ状部材、90…ワイヤ又はマイクロカテーテル、91…湾曲部、100…インサータ