(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20221013BHJP
F16K 7/12 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
F16K27/02
F16K7/12 B
(21)【出願番号】P 2019551108
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2018039154
(87)【国際公開番号】W WO2019087838
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2017210282
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186750
【氏名又は名称】藤本 健司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一誠
(72)【発明者】
【氏名】執行 耕平
(72)【発明者】
【氏名】相川 献治
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆博
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-047514(JP,A)
【文献】特開2015-036563(JP,A)
【文献】特開平10-311451(JP,A)
【文献】特開2003-021248(JP,A)
【文献】特開平03-168494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/02
F16K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック状のバルブボディを有するバルブ装置であって、
前記バルブボディは、
対向する上面および底面、前記上面および底面の間で延びる側面を画定するとともに、当該バルブボディの上面で開口しかつバルブ要素が内蔵される収容凹部と、前記収容凹部に接続された一次側流路および二次側流路と、を画定し、
前記バルブ要素は、前記一次側流路と前記二次側流路との前記収容凹部を通じた直接的な連通を遮断し、かつ、当該バルブ要素を通じて前記一次側流路と前記二次側流路とを連通させる
ものであり、
当該バルブ要素は、
一端面に形成された環状の座面と、他端面に形成された環状のシール面と、前記座面およびシール面の内側に形成され前記一端面および他端面を貫通する流通流路とを有するバルブシートと、
前記収容凹部内に設けられ、前記バルブシートのシール面が当接し当該シール面からの押圧力を支持する支持面を有するバルブシートサポートと、
前記座面に当接および離隔可能に前記収容凹部内に設けられたダイヤフラムと、
を有し、
前記ダイヤフラムは、当該ダイヤフラムと前記座面との間隙を通じて、前記流通流路と前記二次側流路とを連通させ、
前記バルブシートサポートは、前記収容凹部の内壁面の一部と協働して前記一次側流路と前記二次側流路との連通を遮断するシール面と、前記一次側流路と前記流通流路を接続する迂回流路とを有する、バルブ装置。
【請求項2】
前記一次側流路は、前記バルブボディの底面で開口し、
前記二次側流路は、前記バルブボディ内で複数に分岐する分岐流路を含み、
複数の前記分岐流路は、前記上面、底面および側面のいずれかで開口している、ことを特徴とする請求項
1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記二次側流路は、前記バルブボディの長手方向において前記収容凹部に対して互いに反対側に形成された第1および第2の二次側流路を含み、
前記第1および第2の二次側流路の一方の端部は前記バルブボディ内で閉塞し、
前記第1および第2の二次側流路の他方の端部は前記側面で開口している、ことを特徴とする請求項
1又は2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記第1および第2の二次側流路は、前記バルブボディの長手方向に延びる共通の軸線上に形成されている、ことを特徴とする請求項
3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記収容凹部の内壁面の一部と前記バルブシートサポートのシール面との間に設けられたシール部材をさらに有する、ことを特徴とする請求項
1~4のいずれかに記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記シール部材は、前記バルブシートからの押圧力を受けて、前記収容凹部の内壁面の一部と前記バルブシートサポートとの間で圧し潰されるように形成されている、請求項
5に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記バルブシートを前記支持面に対して位置決めし、かつ、当該バルブシートを前記支持面に向けて押圧する位置決め押圧部材をさらに有し、
前記位置決め押圧部材は、前記ダイヤフラムと前記座面との間隙を介して前記流通流路と前記二次側流路とを連通させる流路を有する、請求項
1に記載のバルブ装置。
【請求項8】
前記位置決め押圧部材は、前記バルブボディと前記ダイヤフラムとの間に設けられている、請求項
7に記載のバルブ装置。
【請求項9】
前記ダイヤフラムを駆動するアクチュエータをさらに有し、
前記アクチュエータを収容するケーシングが前記バルブボディにねじ込まれ、
前記位置決め押圧部材は、前記ケーシングのねじ込み力を利用して前記バルブシートを
、前記バルブシートサポートを挟んで前記収容凹部の底面に向けて押圧する、請求項
7又は8に記載のバルブ装置。
【請求項10】
流体の流量を制御する流量制御装置であって、
請求項
1~9のいずれかに記載のバルブ装置を含む、流量制御装置。
【請求項11】
流体の流量制御に請求項
1~9のいずれかに記載のバルブ装置を用いた流量制御方法。
【請求項12】
複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、請求項
1~9のいずれかに記載のバルブ装置を含む、流体制御装置。
【請求項13】
密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に請求項
1~9のいずれかに記載のバルブ装置を用いる、半導体製造方法。
【請求項14】
処理チャンバにプロセスガスを供給する流体制御装置を有し、
前記流体制御装置は、複数の流体機器を含み、
前記流体機器は、請求項
1~9のいずれかに記載のバルブ装置を含む、半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置、これを用いた流量制御装置、流体制御装置、流量制御方法、半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス等の各種製造プロセスにおいては、正確に計量したプロセスガスをプロセスチャンバに供給するために、開閉バルブ、レギュレータ、マスフローコントローラ等の各種の流体機器を集積化した流体制御装置が用いられている。
上記のような流体制御装置では、管継手の代わりに、流路を形成した設置ブロック(以下、ベースブロックと呼ぶ)をベースプレートの長手方向に沿って配置し、このベースブロック上に複数の流体機器や管継手が接続される継手ブロック等を含む各種流体機器を設置することで、集積化を実現している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各種製造プロセスにおけるプロセスガスの供給制御には、より高い応答性が求められており、流体制御装置をできるだけ小型化、集積化して、流体の供給先であるプロセスチャンバのより近くに設置する必要がある。
半導体ウエハの大口径化等の処理対象物の大型化が進んでおり、これに合わせて流体制御装置からプロセスチャンバ内へ供給する流体の供給流量も増加させる必要がある。
流体制御装置に使用されるバルブ装置では、ブロック状のバルブボディに流体流路が直接形成される。
流体制御装置の小型化に伴い、バルブボディの小型化も当然必要である。しかしながら、バルブボディが小型化すると、流路の流量を確保しつつ流路を最適に配置するのは容易ではない。例えば、流体が流入する一次側の流路に対して、バルブを通過した流体が流通する二次側流路を複数に分岐させる場合、流路の断面積や形成位置を確保することは容易ではなく、バルブボディの小型化も困難となる。
さらに、バルブ装置の一次側の流路に流入する流体を二次側で多数に分流させて流出させる必要がある場合には、分流の数に応じた流路を形成する必要があり、バルブボディを大型化する必要がある。
【0005】
本発明の一の目的は、必要な流量を確保しつつ、バルブボディの流路の配置自由度を飛躍的に高めることが可能な小型化されたバルブ装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、装置の小型化を維持しつつ、一次側の流路に流入する流体を二次側で多数に分流可能なバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係るバルブ装置は、ブロック状のバルブボディを有するバルブ装置であって、
前記バルブボディは、当該バルブボディの表面で開口しかつバルブ要素が内蔵される収容凹部と、前記収容凹部に接続された一次側流路および二次側流路と、を画定し、
前記バルブ要素は、前記一次側流路と前記二次側流路との前記収容凹部を通じた直接的な連通を遮断し、かつ、当該バルブ要素を通じて前記一次側流路と前記二次側流路とを連通させる。
【0007】
好適には、前記バルブボディは、対向する上面および底面、前記上面および底面の間で延びる側面を画定し、
前記収容凹部は、前記バルブボディの上面で開口しており、
前記バルブ要素は、
一端面に形成された環状の座面と、他端面に形成された環状のシール面と、前記座面およびシール面の内側に形成され前記一端面および他端面を貫通する流通流路とを有するバルブシートと、
前記収容凹部内に設けられ、前記バルブシートのシール面が当接し当該シール面からの押圧力を支持する支持面を有するバルブシートサポートと、
前記バルブシートサポートに支持された前記座面に当接および離隔可能に前記収容凹部内に設けられたダイヤフラムと、を有し、
前記ダイヤフラムは、当該ダイヤフラムと前記座面との間隙を通じて、前記流通流路と前記二次側流路とを連通させ、
前記バルブシートサポートは、前記収容凹部の内壁面の一部と協働して前記一次側流路と前記二次側流路との連通を遮断するシール面と、前記一次側流路と前記流通流路を接続する迂回流路とを有する。
【0008】
さらに好適には、前記一次側流路は、前記バルブボディの底面で開口し、
前記二次側流路は、前記バルブボディ内で複数に分岐し、分岐流路は、前記バルブボディの上面、底面および側面のいずれかで開口している、構成を採用できる。また、前記二次側流路は、前記バルブボディの長手方向において前記収容凹部に対して互いに反対側に形成された第1および第2の二次側流路を含み、前記第1および第2の二次側流路の一方の端部は前記バルブボディ内で閉塞し、前記第1および第2の二次側流路の他方の端部は前記バルブボディの側面で開口している、構成を採用できる。さらに好適には、前記第1および第2の二次側流路は、前記バルブボディの長手方向に延びる共通の軸線上に形成されている、構成を採用できる。
【0009】
また、前記収容凹部の内壁面の一部と前記バルブシートサポートのシール面との間に設けられたシール部材をさらに有する、構成を採用できる。この場合、
前記シール部材は、前記バルブシートからの押圧力を受けて、前記収容凹部の内壁面の一部と前記バルブシートサポートとの間で押し潰されるように形成されている、構成を採用できる。
【0010】
さらに、前記バルブシートを前記バルブシートサポートの支持面に対して位置決めし、かつ当該バルブシートを前記バルブシートサポートの支持面に向けて押圧する位置決め押圧部材をさらに有し、
前記位置決め押圧部材は、前記ダイヤフラムと前記座面との間隙を介して前記バルブシートの流通流路と前記二次側流路とを連通させる流路を有する、構成を採用できる。好適には、前記位置決め押圧部材は、前記バルブボディと前記ダイヤフラムとの間に設けられている、構成を採用できる。さらに好適には、前記ダイヤフラムを駆動するアクチュエータをさらに有し、前記アクチュエータを収容するケーシングが前記バルブボディにねじ込まれ、前記位置決め押圧部材は、前記ケーシングのねじ込み力を利用して前記バルブシートを前記バルブシートサポートの支持面に向けて押圧する、構成を採用できる。
【0011】
本発明の流量制御装置は、流体の流量を制御する流量制御装置であって、
上記のバルブ装置を含む。
本発明の流量制御方法は、流体の流量制御に上記構成のバルブ装置を含む流体制御装置を用いる。
【0012】
本発明の流体制御装置は、
複数の流体機器が配列された流体制御装置であって、
前記複数の流体機器は、上記のバルブ装置を含む。
【0013】
本発明の半導体製造方法は、密閉されたチャンバ内においてプロセスガスによる処理工程を要する半導体装置の製造プロセスにおいて、前記プロセスガスの流量制御に上記のバルブ装置を用いる。
【0014】
本発明の半導体製造装置は、処理チャンバにプロセスガスを供給する流体制御装置を有し、
前記流体制御装置は、複数の流体機器を含み、
前記流体機器は、上記のバルブ装置を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バルブボディに収容凹部を設け、当該収容凹部にバルブシートサポートを収容し、一次側流路と二次側流路との連通を遮断し、一方で、バルブシートサポートに支持されたバルブシートの流通流路と一次側流路とをバルブシートサポートの迂回流路で接続する構成としたので、一次側流路および二次側流路は、収容凹部に接続されていればよく、一次側流路および二次側流路の配置の自由度を飛躍的に高めることができる。
また、本発明によれば、一次側流路および二次側流路の配置を最適化することで、バルブボディのさらなる小型化も可能となる。
さらに、本発明によれば、二次側流路の配置を最適化しつつ二次側流路を分岐させることにより、一次側の流路に流入する流体を二次側で多数に分流可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るバルブ装置の一部に縦断面を含む正面図。
【
図2】
図1Aのバルブ装置の要部拡大断面図であって、バルブ閉鎖状態を示す図。
【
図3】
図1Aのバルブ装置の要部拡大断面図であって、バルブ開放状態を示す図。
【
図7】本実施形態のバルブ装置を用いる流体制御装置の一例を示す斜視図。
【
図8】本実施形態に係るバルブ装置が適用される半導体製造装置の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面においては、機能が実質的に同様の構成要素には、同じ符号を使用することにより重複した説明を省略する。
図1A~
図1Eは本発明の一実施形態に係るバルブ装置の構造を示し、
図2および
図3は
図1Aのバルブ装置の動作を示す、
図4はインナーディスク、
図5はバルブシートおよび
図6はバルブシートサポートの断面構造を示している。
図1A~
図3において、図中の矢印A1,A2は上下方向であってA1が上方向、A2が下方向を示すものとする。矢印B1,B2は、バルブ装置1のバルブボディ20の長手方向であって、B1が一端側、B2が他端側を示すものとする。C1,C2は、バルブボディ20の長手方向B1,B2に直交する幅方向を示し、C1が前面側、C2が背面側を示すものとする。
【0018】
バルブボディ20は、上面視で長方形状を有するブロック状の部材であり、上面20f1および底面20f2、上面20f1および底面20f2の間で延びる側面4つの側面20f3~20f6を画定している。加えて、上面20f1で開口する収容凹部22を画定している。
図2等からわかるように、収容凹部22は、直径の異なる内周面22a,22b,22cと底面22dとで構成されている。内周面22a,22b,22cは、この順に直径が小さくなっている。収容凹部22に、後述するバルブ要素2が内蔵されている。
バルブボディ20は、収容凹部22に接続された一次側流路21および二次側流路24を画定している。一次側流路21は、バルブ要素2を通じてガス等の流体が外部から供給される側の流路であり、二次側流路24はガス等の流体を外部へ流出させる流路である。一次側流路21は、バルブボディ20の底面20f2に対して傾斜して形成され底面20f2で開口している。一次側流路21の開口の周囲には、図示しないシール保持部21aが形成されている。シール保持部21aには、シール部材としてガスケットが配置される。バルブボディ20は図示しない他の流路ブロックとねじ穴20h1に締結ボルトをねじ込むことで連結される。この際に、シール保持部21aに保持部されたガスケットは、図示しない他の流路ブロックとの間で締結ボルトの締結力で押し潰されるので、一次側流路21の開口の周囲はシールされる。
【0019】
ガスケットとしては、金属製又は樹脂製などのガスケットを挙げることが出来る。ガスケットしては、軟質ガスケット、セミメタルガスケット、メタルガスケットなどが挙げられる。具体的には、以下のものが好適に使用される。
(1)軟質ガスケット
・ゴムOリング
・ゴムシート(全面座用)
・ジョイントシート
・膨張黒鉛シート
・PTFEシート
・PTFEジャケット形
(2)セミメタルガスケット
・うず巻形ガスケット(Spiral-wound gaskets)
・メタルジャケットガスケット
(3)メタルガスケット
・金属平形ガスケット
・メタル中空Oリング
・リングジョイント
なお、後述する分岐流路25,26の開口の周囲に設けられたシール保持部25a1,26b1も同様であり詳細説明は省略する。
【0020】
二次側流路24は、バルブボディ20の長手方向B1,B2において収容凹部22に対して互いに反対側に形成された2つの二次側流路24A,24Bを含む。二次側流路24A,24Bは、バルブボディ20の長手方向B1,B2に延びる共通の軸線J1上に形成されている。二次側流路24Aは、一端が収容凹部22の内周面22bで開口し、他端24a1はバルブボディ20の内部で閉塞している。二次側流路24Bは、一端が収容凹部22の内周面22bで開口し、他端24b1は側面20f6側で開口している。二次側流路24Bの側面20f6の開口には、溶接等の手段により、閉塞部材30が設けられ、二次側流路24Bの開口は閉塞されている。二次側流路24A,24Bは、ドリル等の工具を用いて容易に加工できる。
二次側流路24Aは、他端24a1で2本の分岐流路25に分岐し、上面20f1で開口している。二次側流路24Bは、中途で2本の分岐流路26に分岐し、上面20f1で開口している。
すなわち、本実施形態に係るバルブ装置1では、一次側流路21に流入するガス等の流体を、二次側流路24の分岐流路25,26により4つに分流することができる。
【0021】
バルブ要素2は、ダイヤフラム14と、インナーディスク15と、バルブシート16と、バルブシートサポート50とを有する。バルブ要素2は、一次側流路21と二次側流路24との収容凹部22を通じた直接的な連通を遮断し、かつ、当該バルブ要素2を通じて一次側流路21と二次側流路24とを連通させる。以下、バルブ要素2について具体的に説明する。
収容凹部22内には、内周面22cと嵌合する外径をもつバルブシートサポート50が挿入されている。バルブシートサポート50は、
図6に示すように、円柱状の金属製部材であり、中心部に貫通孔からなる迂回流路50aが形成され、上端面に迂回流路50aを中心とする環状の支持面50f1が形成されている。バルブシートサポート50の支持面50f1は、平坦面からなり、その外周部には、段差が形成されている。バルブシートサポート50の外周面50b1は、収容凹部22の内周面22cに嵌る直径を有し、下端側の小径化された外周面50b2との間には段差が存在する。この段差により、円環状の端面50b3が形成されている。外周面50b2には、
図2等に示すように、PTFE等の樹脂製のシール部材51が嵌め込まれる。シール部材51は、断面形状が矩形状に形成され、後述するように、収容凹部22の底面22dとバルブシートサポート50の端面50b3との間で押し潰される寸法を有する。シール部材51が収容凹部22の底面22dとバルブシートサポート50の端面50b3との間で押し潰されると、バルブシートサポート50の外周面50b1と収容凹部22の内周面22cおよび底面22dとの間に樹脂が入り込み、バルブシートサポート50と収容凹部22との間が確実にシールされる。すなわち、シール面としての外周面50b2および端面50b3は、収容凹部22の内周面22cおよび底面22dと協働して一次側流路21と二次側流路24との連通を遮断する。
【0022】
バルブシートサポート50の迂回流路50aは、収容凹部22の底面22dで開口する一次側流路21と接続される。
バルブシートサポート50の支持面50f1上には、バルブシート16が設けられている。
バルブシート16は、PFA、PTFE等の樹脂で弾性変形可能に形成され
図5に示すように、円環状に形成され、一端面に円環状の座面16sが形成され、他端面に円環状のシール面16fが形成されている。座面16sおよびシール面16fの内側には、貫通孔からなる流通流路16aが形成されている。バルブシート16は、その外周側に小径部16b1と大径部16b2とを有し、小径部16b1と大径部16b2との間には段差部が形成されている。
【0023】
バルブシート16は、位置決め押圧部材としてのインナーディスク15により、バルブシートサポート50の支持面50f1に対して位置決めされ、かつバルブシートサポート50の支持面50f1に向けて押圧されている。具体的には、インナーディスク15の中心部に形成された大径部15a1と小径部15a2とが形成され、大径部15a1と小径部15a2との間には段差面15a3が形成されている。インナーディスク15の一端面側には、円環状の平坦面15f1が形成さている。インナーディスク15の他端面側には、外側に円環状の平坦面15f2が形成され、内側に円環状の平坦面15f3が形成されている。平坦面15f2と平坦面15f3とは高さが異なり、平坦面15f3が平坦面15f1寄りに位置している。インナーディスク15の外周側には、収容凹部22の内周面22aに嵌合する外周面15bが形成されている。さらに、一端面および他端面を貫通する流路15hが円周方向に等間隔に複数形成されている。インナーディスク15の大径部15a1と小径部15a2とに、バルブシート16の大径部16b2と小径部16b1とが嵌ることにより、バルブシート16は、バルブシートサポート50の支持面50f1に対して位置決めされる。
インナーディスク15の平坦面15f2は、収容凹部22の内周面22aと内周面22bとの間に形成された平坦な段差面上に設置される。インナーディスク15の平坦面15f1上には、ダイヤフラム14が設置され、ダイヤフラム14上には、押えリング13が設置される。
【0024】
アクチュエータ10は、空圧等の駆動源により駆動され、上下方向A1,A2に移動可能に保持されたダイヤフラム押え12を駆動する。アクチュエータ10のケーシング11の先端部は、
図1Aに示すように、バルブボディ20にねじ込まれて固定されている。そしてこの先端部が、押えリング13を下方A2に向けて押圧し、ダイヤフラム14は、収容凹部22内で固定される。ダイヤフラム14は、収容凹部22を開口側で密閉している。また、インナーディスク15も下方A2に向けて押圧される。インナーディスク15の平坦面15f2が収容凹部22の段差面に押し付けられた状態において、段差面15a3がバルブシート16をバルブシートサポート50の支持面50f1に向けて押圧するように、段差面15a3の高さは設定されている。また、インナーディスク15の平坦面15f3は、バルブシートサポート50の上端面に当接しないようになっている。
ダイヤフラム14は、バルブシート16よりも大きな直径を有し、ステンレス、NiCo系合金などの金属やフッ素系樹脂で球殻状に弾性変形可能に形成されている。ダイヤフラム14は、バルブシート16の座面16sに対して当接離隔可能にバルブボディ20に支持されている。
【0025】
図2において、ダイヤフラム14はダイヤフラム押え12により押圧されて弾性変形し、バルブシート16の座面16sに押し付けられている状態にある。ダイヤフラム14は、ダイヤフラム押え12による押圧を開放すると、
図3に示すように、球殻状に復元する。ダイヤフラム14がバルブシート16の座面16sに押し付けられている状態では、一次側流路21と二次側流路24との間の流路は閉鎖された状態にある。ダイヤフラム押え12が上方向A1に移動されると、
図3に示すように、ダイヤフラム14がバルブシート16の座面16sから離れる。そして、一次側流路21から供給される流体は、ダイヤフラム14とバルブシート16の座面16sとの間隙を通じて、二次側流路24A,24Bに流入し、最終的には、分岐流路25,26を通じてバルブボディ20の外部に流出する。
【0026】
以上のように、本実施形態によれば、バルブボディ20に収容凹部22を設け、当該収容凹部22にバルブシートサポート50を収容し、一次側流路21と二次側流路24との連通を遮断し、一方で、バルブシートサポート50に支持されたバルブシート16の流通流路16aと一次側流路21とをバルブシートサポート50の迂回流路50aで接続している。この結果、一次側流路21および二次側流路24は、収容凹部22に接続されていればよく、一次側流路21および二次側流路24の配置の自由度が飛躍的に増す。すなわち、本実施形態のように、二次側流路24を長手方向B1,B2に延在させることが可能となり、流路の配置の最適化が非常に容易となる。一次側流路21および二次側流路24の配置を最適化することで、バルブボディ20のさらなる小型化も可能となる。
【0027】
上記実施形態では、二次側流路24は、バルブボディ20内で複数に分岐し、分岐流路25,26がバルブボディ20の上面20f1で開口する場合を例示したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、底面20f2や側面20f3~20f6のいずれかで開口する構成も採用できる。
【0028】
上記実施形態では、インナーディスク15とバルブシート16とを別部材としたが、インナーディスク15とバルブシート16とを一体化することも可能である。
【0029】
図7を参照して、上記実施形態に係るバルブ装置1が適用される流体制御装置の一例を説明する。
図7に示す流体制御装置には、幅方向W1,W2に沿って配列され長手方向G1,G2に延びる金属製のベースプレートBSが設けられている。なお、W1は正面側、W2は背面側,G1は上流側、G2は下流側の方向を示している。ベースプレートBSには、複数の流路ブロック992を介して各種流体機器991A~991Eが設置され、複数の流路ブロック992によって、上流側G1から下流側G2に向かって流体が流通する図示しない流路がそれぞれ形成されている。
【0030】
ここで、「流体機器」とは、流体の流れを制御する流体制御装置に使用される機器であって、流体流路を画定するボディを備え、このボディの表面で開口する少なくとも2つの流路口を有する機器である。具体的には、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D、流量制御装置であるマスフローコントローラ991E等が含まれるが、これらに限定されるわけではない。なお、導入管993は、上記した図示しない流路の上流側の流路口に接続されている。
【0031】
本実施形態に係るバルブ装置1は、上記のマスフローコントローラ991Eに適用可能であり、このマスフローコントローラ991Eで流体の流量制御が行われる。また、開閉弁(2方弁)991A、レギュレータ991B、プレッシャーゲージ991C、開閉弁(3方弁)991D等のバルブに、本実施形態に係るバルブ装置1を適用可能である。
【0032】
次に、上記の流体制御装置が適用される半導体製造装置の例を
図8に示す。
半導体製造装置1000は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition 法)による半導体製造プロセスを実行するためのシステムであり、600はプロセスガス供給源、700はガスボックス、710はタンク、800は処理チャンバ、900は排気ポンプを示している。
図7に示した流体制御装置は、ガスボックス700内に収容される。
基板に膜を堆積させる処理プロセスにおいては、処理ガスを安定的に供給するためにガスボックス700から供給される処理ガスをバッファとしてのタンク710に一時的に貯留し、処理チャンバ800の直近に設けられたバルブ720を高頻度で開閉させてタンクからの処理ガスを真空雰囲気の処理チャンバへ供給する。
ALD法は、化学気相成長法の1つであり、温度や時間等の成膜条件の下で、2種類以上の処理ガスを1種類ずつ基板表面上に交互に流し、基板表面上原子と反応させて単層ずつ膜を堆積させる方法であり、単原子層ずつ制御が可能である為、均一な膜厚を形成させることができ、膜質としても非常に緻密に膜を成長させることができる。
ALD法による半導体製造プロセスでは、処理ガスの流量を精密に調整する必要があるとともに、基板の大口径化等により、処理ガスの流量をある程度確保する必要もある。
流体制御装置を内蔵するガスボックス700は、正確に計量したプロセスガスを処理チャンバ800に供給する。タンク710は、流体制御装置700から供給される処理ガスを一時的に貯留するバッファとして機能する。
処理チャンバ800は、ALD法による基板への膜形成のための密閉処理空間を提供する。
排気ポンプ900は、処理チャンバ800内を真空引きする。
【0033】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、上記適用例では、バルブ装置1をALD法による半導体製造プロセスに用いる場合について例示したが、これに限定されるわけではなく、本発明は、例えば原子層エッチング法(ALE:Atomic Layer Etching 法)等、精密な流量調整が必要なあらゆる対象に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 バルブ装置
2 バルブ要素
10 アクチュエータ
11 ケーシング
12 ダイヤフラム押え
13 押えリング
14 ダイヤフラム
15 インナーディスク
15h 流路
16 バルブシート
16a 流通流路
16f シール面
16s 座面
20 バルブボディ
20f1 上面
20f2 底面
20f3~20f6 側面
20h1 ねじ穴
21 一次側流路
21a シール保持部
24A,24B,24 二次側流路
25,26 分岐流路
30 閉塞部材
50 バルブシートサポート
50a 迂回流路
50f1 支持面
50b2,50b3 シール面
51 シール部材
600 プロセスガス供給源
700 ガスボックス
710 タンク
720 バルブ
800 処理チャンバ
900 排気ポンプ
1000 半導体製造装置
991A :開閉弁(2方弁)
991B :レギュレータ
991C :プレッシャーゲージ
991D :開閉弁(3方弁)
991E :マスフローコントローラ
992 :流路ブロック
993 :導入管
A1 上方向
A2 下方向
BS :ベースプレート
J1 :軸線
W1 :幅方向
W2 :幅方向