IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社那須クリエイトの特許一覧

<>
  • 特許-発電機能付き汚水浄化装置 図1
  • 特許-発電機能付き汚水浄化装置 図2
  • 特許-発電機能付き汚水浄化装置 図3
  • 特許-発電機能付き汚水浄化装置 図4
  • 特許-発電機能付き汚水浄化装置 図5
  • 特許-発電機能付き汚水浄化装置 図6
  • 特許-発電機能付き汚水浄化装置 図7
  • 特許-発電機能付き汚水浄化装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】発電機能付き汚水浄化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20060101AFI20221013BHJP
   H02S 10/00 20140101ALI20221013BHJP
【FI】
C02F3/00 B
C02F3/00 E
H02S10/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019556494
(86)(22)【出願日】2017-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2017043169
(87)【国際公開番号】W WO2019106807
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】517232969
【氏名又は名称】株式会社那須クリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】100143546
【弁理士】
【氏名又は名称】押久保 政彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋一
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-077673(JP,A)
【文献】特開2008-289969(JP,A)
【文献】特開2016-043281(JP,A)
【文献】特開2010-264415(JP,A)
【文献】特開2008-297783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00
E03D 1/00- 7/00、
11/00-13/00
B65D 88/00-90/66
E04H 15/00
H02S 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置された複数の浄化槽と、前記複数の浄化槽の上方を覆う屋根と、前記屋根に設置される複数の太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルにより発電された電力を蓄電すると共に商用電源に接続される電源設備とを備えた発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記浄化槽は、円筒状又は角筒状の本体を備え、前記本体内で微生物によって汚水を浄化する浄化槽であり、
前記太陽電池パネルの発電面が向いている方向を基準方向としたときに、前記複数の浄化槽のうち、前記基準方向の最前列に設置された浄化槽の前記本体の中心軸が前記基準方向と90°プラスマイナス10°の範囲となるように設置されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記屋根は、前記複数の浄化槽と前記電源設備の上方を全て覆うものであることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記電源設備は、前記複数の浄化槽の内の少なくとも前記基準方向の最前列に設置された浄化槽に対して前記基準方向とは反対側に設置されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記電源設備は、前記基準方向と直交する方向の両側に前記浄化槽が配置されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記電源設備から前記複数の浄化槽への電源を供給する電源用配線は、前記屋根の裏面に設けられた配線ラックを介して設置され、
前記浄化槽に接続されている浄化槽配線と前記電源用配線とは前記配線ラックで保持されて接続されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項6】
請求項3に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記電源設備から前記複数の浄化槽への電源を供給する電源用配線は、前記屋根の裏面に設けられた配線ラックを介して設置され、
前記浄化槽に接続されている浄化槽配線と前記電源用配線とは前記配線ラックで保持されて接続されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記複数の浄化槽は、微生物により汚水の浄化を行う微生物槽と、前記微生物槽の温度調節を行う温度調節部とを有し、
前記基準方向の最前列に設置された第1浄化槽と、前記第1浄化槽よりも前記基準方向の背面側に設置された第2第n浄化槽(nは3以上の整数)を備えており、
前記温度調節部により、前記第1浄化槽における前記微生物槽の温度が、前記第2~第n浄化槽と同一となるように調整されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項8】
前記微生物槽は、好気性微生物により汚水の浄化を行うものであり、
前記温度調節部は、前記微生物槽内に温度調節がなされた空気を送風するブロワを備えていることを特徴とする請求項7に記載の発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記複数の浄化槽は、微生物により汚水の浄化を行う微生物槽と、前記微生物槽の微生物濃度の調節を行う濃度調節部とを有し、
前記基準方向の最前列に設置された第1浄化槽と、前記第1浄化槽よりも前記基準方向の背面側に設置された第2第n浄化槽(nは3以上の整数)を備えており、
前記第1浄化槽における前記微生物槽の微生物濃度が、前記第2~第n浄化槽の前記微生物槽とは異なるように調整されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項10】
地上に設置された複数の浄化槽と、前記複数の浄化槽の上方を覆う屋根と、前記屋根に設置される複数の太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルにより発電された電力を蓄電すると共に商用電源に接続される電源設備とを備えた発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記浄化槽は、円筒状又は角筒状の本体を備え、前記本体内で微生物によって汚水を浄化する浄化槽であり、
前記太陽電池パネルの発電面が向いている方向を基準方向としたときに、前記複数の浄化槽が、前記本体の中心軸が前記基準方向と同一方向又はプラスマイナス10°の範囲となるように設置されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記屋根は、前記複数の浄化槽と前記電源設備の上方を全て覆うものであることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記電源設備は、前記複数の浄化槽の内の少なくとも前記基準方向の最前列に設置された浄化槽に対して前記基準方向とは反対側に設置されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【請求項13】
請求項12に記載の発電機能付き汚水浄化装置であって、
前記電源設備は、前記基準方向と直交する方向の両側に前記浄化槽が配置されていることを特徴とする発電機能付き汚水浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機能を有する汚水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の汚水浄化装置として、特許文献1(実公平6-26395号、実開平1-2539号)に記載の装置が知られている。特許文献1に記載の装置は、円筒状の浄化槽を地下に設置する際の架台に関する技術を開示している。
【0003】
この種の浄化槽は地下に埋められて設置されることが多く、特許文献1においても、地表を切削して穴を設け、その穴の中に浄化槽を設置し、浄化槽の周囲を土で埋める構造となっている。
【0004】
また、浄化槽は、一般に沈殿槽、濾過槽、及び曝気槽等を備え、微生物を用いて汚水の浄化を行うことが一般的である。微生物を用いた汚水の浄化の場合、浄化槽内の温度は、ヒーター等の温度調節手段を用いて当該微生物が活性化する温度に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公平6-26395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような地中に埋めるタイプの浄化槽においては、地中浄化槽が地中に埋められているため外気温度の変化の影響を受けにくい。このため、浄化槽内に設けられている温度調節手段に高い性能を必要としていない。
【0007】
一方で、このような浄化槽を地上に設置する場合もある。この場合、浄化槽の外壁は大気に接することとなり、降雨の影響も受けると共に、日中は日光の影響も受けることになる。大気中においては、地中の場合と比べて外気温度の変化及び日光の影響を直接受けることになる。
【0008】
この場合、浄化槽を建物内に設置することも考えられるが、大規模な汚水浄化装置の場合、建物を建設するには多くのコストが必要となる。また、このような浄化槽は、地中においても腐食等が生じないような構成となっているため、必ずしも建物内に設置する必要がないという事情もある。
【0009】
さらに、このような浄化槽は、水を循環させるためのポンプや、温度調節手段等を稼働させるために電力が必要である。近年では、太陽光発電装置を利用して電力を確保することが行われているが、多くの電力を必要とする場合、数多くの太陽電池パネルが必要となり、設置場所の確保が必要となる。
【0010】
本発明は、このような諸事情を考慮して、コストの上昇を抑えながら、浄化槽が外気温度及び日光の影響を受けにくい汚水浄化装置を提供することを目的とする。さらに、本発明は、浄化槽等で必要な電力について発電装置を利用して供給することができる汚水浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の発電機能付き汚水浄化装置は、地上に設置された複数の浄化槽と、前記複数の浄化槽の上方を覆う屋根と、前記屋根に設置される複数の太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルにより発電された電力を蓄電すると共に商用電源に接続される電源設備とを備えた発電機能付き汚水浄化装置であって、前記浄化槽は、円筒状又は角筒状の本体を備え、前記本体内で微生物によって汚水を浄化する浄化槽であり、前記太陽電池パネルの発電面が向いている方向を基準方向としたときに、前記複数の浄化槽のうち、前記基準方向の最前列に設置された浄化槽の前記本体の中心軸が前記基準方向と90°プラスマイナス10°の範囲となるように設置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の発電機能付き汚水浄化装置によれば、複数の浄化槽の上方を屋根で覆うことにより、浄化槽に対する日光や降雨の影響を軽減させることができる。また、この屋根によって、浄化槽の周囲の外気温度の変化を小さくすることができる。また、単に屋根を設置するだけでなく、この屋根に太陽電池パネルを設置している。このため、太陽電池パネルの設置場所の問題も解消することができる。
【0013】
また、浄化槽の上方に屋根を設置した場合、太陽電池パネルの発電面が向いている基準方向の最前列に設置された浄化槽には、太陽の傾斜角によって日光が当たることがある。また、複数の浄化槽が設置されている場合、最前列に設置されている浄化槽は、これらの浄化槽の内側に設置されている浄化槽に比べて、外部からの風の影響を受けやすいため、その周囲の外気温の変化が大きくなる。
【0014】
本発明によれば、基準方向の最前列に設置された浄化槽の本体の中心軸が基準方向と90°プラスマイナス10°の範囲となるように設置することにより、日光の影響を最前列に設置された浄化槽に限定することができる。
【0015】
基準方向と浄化槽の本体の角度を上記範囲とすることにより、屋根の上方からの投影面内に効率よく浄化槽を配置することができると共に、最前列以外の浄化槽への日光の影響を小さくすることができる。よって、浄化槽の設置場所によって、日光の影響が大きい場合は、当該最前列の浄化槽に対して日光対策を行えばよい。
【0016】
また、本発明の発電機能付き汚水浄化装置においては、前記屋根は、前記複数の浄化槽と前記電源設備の上方を全て覆うものであることが好ましい。当該構成により、複数の浄化槽及び電源設備への日光や降雨等の影響を小さくすることができる。
【0017】
また、本発明の発電機能付き汚水浄化装置においては、前記電源設備は、前記複数の浄化槽の内の少なくとも前記基準方向の最前列に設置された浄化槽に対して前記基準方向とは反対側に設置されていることが好ましい。当該構成により、電源設備に対する日光や降雨の影響を小さくすることができる。
【0018】
また、本発明の発電機能付き汚水浄化装置においては、前記電源設備は、前記基準方向と直交する方向の両側に前記浄化槽が配置されていることが好ましい。当該構成によれば、電源設備の両側に配置された浄化槽によって、電源設備に対する風雨の影響を低減させることができる。これにより、電源設備の長寿命化、およびメンテナンスの容易化を実現することができる。
【0019】
また、本発明の発電機能付き汚水浄化装置においては、前記電源設備から前記複数の浄化槽への電源を供給する電源用配線は、前記屋根の裏面に設けられた配線ラックを介して設置され、前記浄化槽に接続されている浄化槽配線と前記電源用配線とは前記配線ラックで保持されて接続されていることが好ましい。
【0020】
浄化槽及び電源設備を地上に設置する場合、降雨の状況によっては、これらの設備の設置面が浸水するおそれがある。本発明によれば、電源用配線が配線ラックに保持されており、浄化槽配線と電源用配線との接続部も配線ラックに保持されることになる。よって、仮に設備の設置面が浸水した場合であっても、これらの配線への被害を防止することができる。
【0021】
また、本発明の発電機能付き汚水浄化装置においては、前記複数の浄化槽は、微生物により汚水の浄化を行う微生物槽と、前記微生物槽の温度調節を行う温度調節部とを有し、前記基準方向の最前列に設置された第1浄化槽と、前記第1浄化槽よりも前記基準方向の背面側に設置された第2第n浄化槽(nは3以上の整数)を備えており、前記温度調節部により、前記第1浄化槽における前記微生物槽の温度が、前記第2~第n浄化槽と同一となるように調整されていることが好ましい。
【0022】
当該構成によれば、第1浄化槽が日光等の影響で他の第2~第n浄化槽と温度が異なる状況になった場合であっても、温度調節部により微生物槽の温度が他の浄化槽と同一に保たれるため、日光等の影響によって浄化能力が不均一になることがない。
【0023】
また、前記微生物槽が、好気性微生物により汚水の浄化を行うものであるときは、前記温度調節部が、前記微生物槽内に温度調節がなされた空気を送風するブロワを備えるものとすることが好ましい。当該構成によれば、好気性微生物が収容された微生物槽内に温度調節された空気がブロワにより送られるため、空気により微生物槽内を攪拌しながら迅速に温度調節ができ、第1浄化槽と他の第2~第n浄化槽の浄化能力を均一に保つことができる。
【0024】
また、本発明の発電機能付き汚水浄化装置においては、前記複数の浄化槽は、微生物により汚水の浄化を行う微生物槽と、前記微生物槽の微生物濃度の調節を行う濃度調節部とを有し、前記基準方向の最前列に設置された第1浄化槽と、前記第1浄化槽よりも前記基準方向の背面側に設置された第2第n浄化槽(nは3以上の整数)を備えており、前記第1浄化槽における前記微生物槽の微生物濃度が、前記第2~第n浄化槽の前記微生物槽とは異なるように調整されていることが好ましい。
【0025】
当該構成によれば、第2~第n浄化槽とは異なり、外気温や日光の影響を受けやすい第1浄化槽における微生物槽の微生物濃度を変更することにより、各浄化槽における浄化能力を均一にすることができる。例えば、第1浄化槽が日光の影響を受けやすく、温度が他の浄化槽よりも高くなる場合は、微生物濃度を下げても他の浄化槽と同等の浄化能力とすることができる。逆に、第1浄化槽が他の浄化槽に比べて温度が低い場合は、微生物濃度を上げることもできる。
【0026】
一方で、本発明の発電機能付き汚水浄化装置においては、地上に設置された複数の浄化槽と、前記複数の浄化槽の上方を覆う屋根と、前記屋根に設置される複数の太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルにより発電された電力を蓄電すると共に商用電源に接続される電源設備とを備えた発電機能付き汚水浄化装置であって、前記浄化槽は、円筒状又は角筒状の本体を備え、前記本体内で微生物によって汚水を浄化する浄化槽であり、前記太陽電池パネルの発電面が向いている方向を基準方向としたときに、前記複数の浄化槽が、前記本体の中心軸が前記基準方向と同一方向又はプラスマイナス10°の範囲となるように設置するようにしてもよい。
【0027】
当該構成によれば、各浄化槽に対する日光の影響を均一化することができる。具体的には、円筒状又は角筒状の浄化槽に対しては、中心軸が基準方向と同一か所定範囲内に設置されているので、基準方向から日光が照射された場合、各浄化槽には主に中心軸の向きに日光が照射される。この場合、各浄化槽には均一に日光が照射されるので、各浄化槽における日光による温度上昇が均一となる。よって、各浄化槽における浄化能力の均一化を図ることができる。
【0028】
上記構成の場合も、前記屋根は、前記複数の浄化槽と前記電源設備の上方を全て覆うものであることが好ましい。また、前記電源設備は、前記複数の浄化槽の内の少なくとも前記基準方向の最前列に設置された浄化槽に対して前記基準方向とは反対側に設置されていることが好ましい。また、前記電源設備は、前記基準方向と直交する方向の両側に前記浄化槽が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明の発電機能付き汚水浄化装置によれば、地上に設置することにより工事費等のコストを削減することができると共に、安定した電源等のインフラのない地域においても安定して汚水を浄化してきれいな水を生成することができる。このため、インフラの整っていない地域においても設置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態の一例である発電機能付き汚水浄化装置を示す説明図。
図2図1の装置において、屋根と太陽電池パネルを除いた状態を示す説明図。
図3】本発明における装置の機能的構成を示す説明図。
図4】電源装置の外観を示す説明図。
図5】浄化槽の内部構造を示す説明図。
図6】屋根と、浄化槽及び電源装置の配置を示す説明図。
図7】屋根と、浄化槽及び電源装置の他の配置を示す説明図。
図8】屋根と、浄化槽及び電源装置の他の配置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図1図8を参照して、本発明の実施形態の一例である発電機能付き汚水浄化装置(以下「本件装置1」と省略することがある。)について説明する。本件装置1は、図1に示すように、太陽光発電装置10と汚水浄化装置30とを備えており、太陽光発電機能付きの汚水浄化装置となっている。
【0032】
太陽光発電装置10は、汚水浄化装置30の上方を覆うように設けられた屋根50の上に設置された複数の太陽電池パネル11を備えている。また、汚水浄化装置30は、屋根50の下方で、地上に設置された複数の浄化槽31を備えている。これらの太陽光発電装置10と汚水浄化装置30は、図2に示すように、屋根50の下方に設けられた電源設備17に接続されている。
【0033】
太陽光発電装置10は、図1及び図3に示すように、屋根50の表面に並行して設置された複数の太陽電池パネル11と、これらの複数の太陽電池パネル11に接続された充放電制御部12と、充放電制御部12に接続されたバッテリ13と、DC-ACコンバータ(以下単に「コンバータ14」という。)と、商用電源15に接続された電源制御部16とを備えている。本実施形態では、充放電制御部12、コンバータ14、及び電源制御部16は、電源設備17内に設置されている。
【0034】
太陽電池パネル11は、図1に示すように、基準方向Aに向けて配置されている。この基準方向Aは、太陽光発電装置10が設置される場所において、太陽電池パネル11の発電面が1日を通じて長く太陽光を受けることができる方向である。
【0035】
本件装置1における屋根50は、地表面から立ち上がる複数の縦フレーム51と、この縦フレーム51の上端部に掛け渡された横フレーム52とを備え、縦フレーム51及び横フレーム52により天板53を支持することにより構成されている。本件装置1では、屋根50は、汚水浄化装置30と電源設備17の上方の全てを覆うように形成されている。
【0036】
縦フレーム51の下端部は、地中に設けられた基礎(図示省略)に接続されている。また、天板53の裏面には、横フレーム52同士を接続する補強材(図示省略)も設けられている。また、屋根50の裏面には、天板53から下方につり下げられた配線ラック54が設けられている(図2参照)。これらの縦フレーム51、横フレーム52、天板53及び配線ラック54の材質は特に限定されず、鉄材の表面に塗料を塗布したものとしてもよく、アルミ材を用いたものとしてもよい。
【0037】
図3は、本件装置1の機能的構成を示す説明図である。図3において、複数設置された太陽電池パネル11は、電源設備17内の充放電制御部12に接続されている。この充放電制御部12は、バッテリ13及びコンバータ14に接続されている。コンバータ14は電源制御部16に接続されている。電源制御部16は、商用電源15と複数の汚水浄化装置30に接続されている。
【0038】
図3において、太陽電池パネル11と充放電制御部12は充電用配線18により接続されている。また、電源制御部16と複数の浄化槽31とは電源用配線19により接続され、電源設備17から複数の浄化槽31へ電源が供給されている。電源用配線19の先端部には、浄化槽31に設けられた浄化槽配線20に接続されるコネクタ21が設けられている。
【0039】
充放電制御部12は、太陽電池パネル11による発電量、及びバッテリ13の残容量に応じて、バッテリ13への充電を行うか否かを決定する。電源制御部16は、太陽電池パネル11による発電量、或いはバッテリ13の残容量によって、浄化槽31の使用電力を太陽光発電による電力とするか、バッテリ13からの電力とするか、或いは商用電源15からの電力とするかの切り替えを行う。
【0040】
充電用配線18は、図1において図示を省略しているが、太陽電池パネル11の下端部から屋根50に設けられた穴を介して屋根50の裏面に導出され、屋根50の裏面に沿って取り付けられて電源設備17に接続されている。
【0041】
電源設備17は、図4に示すように、充放電制御部12等が収納されたケース22と、ケース22の下方に固定される設置台23とを有している。電源設備17は、太陽電池パネル11により発電された電力を蓄電すると共に商用電源15に接続されている。
【0042】
ケース22はアルミフレーム及びパネル等から形成されており、各装置の状態を示すモニタ24、ケース22内の換気を行う2つの通気口25、商用電源15が接続される電源用コネクタ26、充電用配線18及び電源用配線19が挿通される配線口27が設けられている。
【0043】
設置台23は、ケース22を接地面から離して固定するものであり、設置場所において浸水等の生じた際に、ケース22内に水が入り込まないようにするものである。この設置台23は、設置場所の状況に応じて高さを変更するようにすることが好ましく、運搬用のパレット等の板状の部材を複数積み重ねるものとしてもよい。また、設置台23の下方にキャスター(図示省略)を設けることにより、電源設備17を移動可能としてもよい。
【0044】
また、図2に示すように、電源用配線19は、屋根50の裏面に設けられている配線ラック54の上に配置されており、コネクタ21は配線ラック54の上に保持されている。このように、上記充電用配線18の取り付け構造及び配線ラック54により、充電用配線18、電源用配線19及びコネクタ21が地上から離れた位置に配置されるので、仮に洪水等の被害があった場合であっても、被害を最小限に食い止めることができる。
【0045】
浄化槽31は、図1及び図2に示すように、本実施形態では円筒状に形成された本体32を有している。本実施形態では、この本体32は矢印で示す軸方向32Aに長い横型のタンクを用いている。本体32の上方には、本体32のメンテナンス時に人が歩けるように足場33が設けられている。なお、各図においては、実際には本体32に設けられているメンテナンス用のハッチや、足場33、及びその他の付属機器の記載を必要に応じて省略している。
【0046】
本実施形態においては、図1及び図2に示すように、浄化槽31は、基準方向Aに向けて最前列に設けられた第1浄化槽31(1)から、最後列に設けられた第4浄化槽31(4)まで、4行2列の配置となっている。第1浄化槽31(1)を含む浄化槽31は、本体32の中心軸の方向である軸方向32Aが基準方向Aに対して角度が90°となるように設置されている。
【0047】
この行と列の数は任意であり、本件装置1に求められる処理能力や設置される敷地の広さ等に応じて決められる。また、本体32の軸方向32Aの基準方向Aに対する角度は、正確に90°でなくともよく、プラスマイナス10°以内の範囲であればよい。
【0048】
図5は浄化槽31の本体32の内部構造を示す模式図である。汚水浄化装置30を構成する浄化槽31は、内部に好気性微生物により汚水の浄化を行う接触曝気槽34(微生物槽)を備えている。浄化槽31は、この接触曝気槽34において、本体32内で微生物によって汚水を浄化するものである。
【0049】
接触曝気槽34には、このエリア内の微生物濃度を変化させる微生物濃度調節部35が設けられている。また、浄化槽31には、接触曝気槽34内の温度を検出する温度センサ36と、接触曝気槽34内に温度調節が行われた空気を供給する温度調節機能付きブロワ37(温度調節部)及び曝気パネル38が設けられている。
【0050】
本件装置1におけるブロワ37は、好気性微生物が活性化する温度まで空気の温度を調節することができ、接触曝気槽34内の温度を一定温度に保つことができる。曝気パネル38は、ブロワ37から送られてくる温度調節がなされた空気を接触曝気槽34内に均一に供給する。当該構成により、本件装置1では、接触曝気槽34内の好気性微生物を活性を変化させて汚水の浄化能力を調節することができる。
【0051】
複数の浄化槽31は、いずれも同一の構成を有しているが、微生物濃度調節部35によって接触曝気槽34内の微生物濃度をそれぞれ異なるように調整することができる。また、ブロワ37及び曝気パネル38により、複数の浄化槽31の浄化能力を同一にすることもでき、浄化能力をそれぞれ異なるようにすることもできる。なお、浄化槽31は、接触曝気槽34以外に、微生物槽として嫌気性微生物により浄化を行う浄化槽等を備えているが、詳細な説明は省略する。
【0052】
次に、図6を参照して、本件装置1における浄化槽31及び電源設備17の配置について説明する。図6は、本件装置1を上方から見た状態を示しており、浄化槽31及び電源設備17を囲む四角形は、屋根50の輪郭を示している。
【0053】
図6に示す本件装置1においては、屋根50の輪郭を示す四角形内に、8台の浄化槽31が、本体32の軸方向32Aが基準方向Aに対して90°の角度となるように向けられている。また、8台の浄化槽31が4行2列に配置されている。
【0054】
図6においては、基準方向Aの最前列の浄化槽31である第1浄化槽31(1)が2台設置され、その背面側(基準方向Aとは反対方向)に並列して第2浄化槽31(2)が2台、同様に第3浄化槽31(3)が2台、第4浄化槽31(4)が2台となっている。即ち、図6においては、第n浄化槽(nは3以上の整数)のnは4となる。
【0055】
第1浄化槽31(1)は、基準方向Aの最前列に設置されているため、太陽の照射角度によっては日光の照射を受ける場合がある。しかしながら、太陽の照射角度が大きい(90°に近い)と、日光が屋根50に遮られる量が増えるため、第1浄化槽31(1)に対する日光の照射量は少なくなる。太陽の照射角度が大きい場合は、設置場所の緯度の小さい(赤道に近い)か夏季となる状態であるが、このような状態のときには屋根50によって第1浄化槽31(1)に対する太陽の照射を少なくすることができる。
【0056】
一方で、太陽の照射角度が小さい(90°から0°に近づく)と、日光が屋根50に遮られる量が減り、第1浄化槽31(1)に対する日光の照射量が多くなる。この場合は、設置場所の緯度が大きいか冬季となる状態であるが、このような状態のときには第1浄化槽31(1)に対して太陽の照射を多くすることができる。これにより、第1浄化槽31(1)の微生物濃度調節部35により接触曝気槽34内の微生物濃度を第2浄化槽31(2)等より低くしても、これらの第2浄化槽31(2)等と同様の浄化能力とすることも可能となる。
【0057】
第2浄化槽31(2)から第4浄化槽31(4)においては、ほとんどの日光の照射を屋根50によって遮ることができる。従って、第2浄化槽31(2)から第4浄化槽31(4)は日光の照射による温度変化を最小限に抑えることができる。
【0058】
本件装置1においては、浄化槽31は、内部に微生物により汚水の浄化を行う接触曝気槽34と、このエリア内の微生物濃度を変化させる微生物濃度調節部35と、このエリア内の温度の調節を行うブロワ37が設けられている。
【0059】
第1浄化槽31(1)において、日光の影響等により他の第2浄化槽31(2)から第4浄化槽31(4)と比較して温度が上昇した場合、この温度上昇が温度センサ36により検知される。この場合、微生物濃度調節部35が、温度と微生物濃度と汚水の浄化能力との関係を記録した調節テーブル等を参照して微生物濃度を下げることにより、他の浄化槽と同様の汚水の浄化能力を確保することが可能となる。
【0060】
なお、ブロワ37は、単なる送風のみならず、温熱器(図示省略)と共に用いて送風する空気の温度を自在に調節することができる。従って、第1浄化槽31(1)におけるブロワ37で接触曝気槽34内の温度を上下させることができるので、第1浄化槽31(1)の接触曝気槽34の温度を他の浄化槽と同様にすることも可能となる。
【0061】
電源設備17は、2台の第4浄化槽31に挟まれる位置に設置されている。即ち、第1浄化槽31(1)に対して基準方向Aの反対側の位置に設置されており、基準方向Aと直交する方向の両側に第4浄化槽31(4)が配置される配置となっている。
【0062】
当該配置により、電源設備17に対しては、屋根50によって日光が照射されるのを防止することができる。また、図6において、電源設備17の左右両側に第4浄化槽31(4)が設けられているため、図6における左右方向からの風等の影響も軽減することができる。また、電源設備17は、ケース22のモニタ24を基準方向Aとは反対方向に向けて設置することにより、作業員によるモニタ24の確認を容易にすることができる。
【0063】
次に、図7を参照して、本件装置1における浄化槽31及び電源設備17の他の配置について説明する。図7に示す本件装置1においては、第1浄化槽31(1)は図6の場合と同様に、本体32の軸方向32Aが基準方向Aに対して90°の角度となるように向けられている。
【0064】
一方で、第2浄化槽31(2)から第6浄化槽31(6)は、本体32の軸方向32Bが基準方向Aと同一方向に向けられている。このように浄化槽31を配置した場合であっても、日光による影響を受けるのが第1浄化槽31(1)となり、他の第2浄化槽31(2)から第6浄化槽31(6)には影響は及ばない。
【0065】
また、図7に示す例においては、電源設備17は第6浄化槽31(6)に隣接して設けられている。一方で、図7に示す浄化槽31の配置においては、第2浄化槽31(2)から第6浄化槽31(6)のいずれの浄化槽に隣接する位置に設置してもよい。
【0066】
次に、図8を参照して、本件装置1おける浄化槽31及び電源設備17の他の配置について説明する。図8に示す本件装置1においては、11台の浄化槽31が2行6列(6列目は1台のみ)に配置された構造となっている。
【0067】
各浄化槽31は、本体32の軸方向32Bが基準方向Aと同一方向となるように配置されている。これにより、各列における最前列の浄化槽31(F)についても、本体32の軸方向32Bが基準方向Aと同一となるので、これらの浄化槽31(F)に対する日光の影響は、各浄化槽31(F)において均一となる。
【0068】
また、基準方向Aから日光が照射している際には、各浄化槽31(F)に日光が照射された場合であっても、各浄化槽31(F)の前面のみに日光が照射される。このように、浄化槽31(F)を配置することにより、図6図7で示した第1浄化槽31(1)のように浄化槽の側面に日光が照射される場合に比べて、日光の照射による浄化槽31(F)への影響が抑制される。
【0069】
よって、図8における配置の場合、最前列に配置される浄化槽31(F)と、その背面側に配置される各浄化槽31について、微生物濃度調節部35による調節を必要としない状況も可能となる。
【0070】
また、本件装置1によれば、太陽電池パネル11による発電によって、汚水の浄化に必要な電力以上の電力が発生した場合、或いはバッテリ13に蓄電された電力が十分ある場合は、汚水の浄化以外に、近隣設備に電力を供給することも可能となる。
【0071】
このように、本件装置1によれば、地上に設置することにより、従来のように設備を地下に埋設する必要がないため工事費等のコストを削減することができる。また、安定した電源等のインフラのない地域においても安定して汚水を浄化してきれいな水を生成することができる。さらには、近隣設備に対して安定して電力を供給することができる。
【0072】
なお、上記実施形態において、本発明の発電機能付き汚水浄化装置の一例を示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、浄化槽31は、円筒状の浄化槽を用いて説明しているが、形状は角筒状であってもよい。また、純粋な円筒状または角筒状の形状に限られず、太さが異なるものや形状が異なるものも含まれる。
【0073】
また、発電機能を有する装置として、太陽電池パネル11を用いているが、この太陽電池パネル11は、一般に用いられている結晶シリコンの板状のものの他に、薄膜系の太陽電池、塗布型の太陽電池等の他のタイプの太陽電池を用いてもよい。さらに、発電機能を有する装置として、太陽電池パネル11に代えて、屋根50の上に地熱発電装置や風力発電装置等の発電装置を設置してもよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、屋根50は浄化槽31及び電源設備17の上方を全て覆っているが、設置場所やコストの関係で、これらの一部を覆うものとしてもよい。また、電源設備17は、第1浄化槽31(1)の裏面側に設けられているが、この電源設備17の設置場所も任意である。また、配線ラック54は、屋根50の裏面に設けられているが、地上から柱を立てて屋根50の裏面に配置するようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態においては、接触曝気槽34において、温度調節機能付きのブロワ37と曝気パネル38により温度調節を行っているが、これに限らず、ヒーター等の温度調節手段を用いてもよい。また、浄化槽31の本体32の周囲を断熱材等で覆って、断熱効果を高めてもよい。
【0076】
また、上記実施形態においては、接触曝気槽34において、微生物濃度調節部35と温度調節機能付きブロワ37を併用しているが、これに限らず、どちらか一方の設備により接触曝気槽34内の浄化能力を調節してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…本件装置、10…太陽光発電装置、11…太陽電池パネル、12…充放電制御部、15…商用電源、16…電源制御部、17…電源設備、26…電源用コネクタ、27…配線口、30…汚水浄化装置、31…浄化槽、32…本体、34…接触曝気槽、35…微生物濃度調節部、37…ブロワ、38…曝気パネル、50…屋根、54…配線ラック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8