(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】トレイ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20221013BHJP
B65D 1/36 20060101ALI20221013BHJP
B65D 77/02 20060101ALI20221013BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B65D81/26 Z
B65D1/36
B65D77/02 C
B65D85/50 100
(21)【出願番号】P 2020143763
(22)【出願日】2020-08-27
(62)【分割の表示】P 2019150956の分割
【原出願日】2016-08-17
【審査請求日】2020-08-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390041058
【氏名又は名称】シーピー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 忠
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-268779(JP,A)
【文献】特開2012-188131(JP,A)
【文献】特開2011-073725(JP,A)
【文献】特開2003-192074(JP,A)
【文献】中国実用新案第202054198(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B65D 1/36
B65D 77/02
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四周に壁部を有するトレイ容器であって、このトレイ容器の底面の四周を除いた部分を隆起部とし、この隆起部からは複数の平行するリブが
食材を載置可能に立ち上がり、これらリブの間にはそれぞれ溝を有し、これらの溝は中央部を一番高くして、両側方向に対称に勾配を与えられた一対の傾斜溝とするとともに、前記底面の壁部側には前記一対の傾斜溝の最低部それぞれが連絡する一対の油だまりを備え、この油だまりは前記傾斜溝の最低部から前記底面に達する深さを有して、前記それぞれのリブは前記一対の油だまりの間を長さ方向に途切れなく、且つ、前記底面からの高さを同一として前記隆起部から立ち上がり、前記油だまりには長さ方向に直交し、前記リブとは不連続で、隆起部の高さを超えない別のリブをさらに設けて、当該別のリブにより、前記傾斜溝から流入した前記食材からの油分や滲出液が前記油だまり内部で移動することを規制可能としたことを特徴とするトレイ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂シートを成形して得られる成形容器に係り、主として載置された調理食材から滲出する食品油や汁気などに食材自身が浸らずに陳列できる構造のトレイ容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から天ぷらやフライ物のような食材を加工したものをスーパーなどで展示・販売する際に合成樹脂シートを成形したトレイ容器が広く採用されている。そして、これらの容器は衛生のためにトレイ容器を同様に成形した蓋で遮蔽することが一般的である。もちろん、蓋を採用せずにトレイ容器の開口を樹脂フィルムなどで覆う形態が採用されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-185787号公報
【文献】特開2000-191040号公報
【文献】特開2003-192074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トレイ容器の底面の構造として一番単純なものは平坦面を有する底であるが、全体の強度を確保するためにまずは底面や壁面にリブが採用された。続いて近年はこの種のトレイ容器の多様化にともなって、内部に収容する被収容物の特質に応じた底面の構造を持つトレイ容器が開発されている。このような開発の方向は、非発泡性樹脂シートを用いたトレイ容器についても、発泡性樹脂シートを用いたトレイ容器についても同様である。
【0005】
そして、食材から滲出した油分などの液体や、食材表面に付着した水分が食材に滞留しないような構成についても、種々開発されている。特許文献1に示された発明では、生鮮食料品から流出した水を交互に並列する複数の凸条と、凹溝に設けられた複数の凹壺によって、トレイ内に溜めるようにしている。特許文献2に示された発明では、トレイの底面に膨出部が形成され、この膨出部に生鮮物を載せた場合に膨出部間に存在する集水溝に生鮮物から染み出した水を集めようとしている。また、特許文献3に示された発明では、容器の底壁に傾斜溝とリブを交互に形成し、この傾斜溝によってリブで支持した食材と水滴や油分との接触を有効に防止しようとしている。
【0006】
上記各特許文献のうち、特許文献1は凹溝に設けられた小さい凹壺に水を捕獲するようにしているが、凹壺が捕獲できる量の水分を超えて生鮮食料品から水が流出した場合にどのように対処するかという点については考慮されていない。また、特許文献2の集水溝とは実質的にはトレイの底面を指しており、第1と第2の集水溝が存在するように記載されているが、実質的には同一平面をなす底面である。したがって、集められた水は集水溝を自由に移動することができ、安定した状態で捕獲することができないという課題がある。また、特許文献3では、傾斜溝によって水滴や油分を食品と分離させて一定の場所に回収するものであるが、傾斜溝はリブと同じ高さ、あるいはリブと同じ平面から始まっている。そうすると、食材から分離する対象が粘度の高い油分やソース類などの場合には傾斜溝の開始点付近では粘性が高いので滞留してしまい、予想した通りには回収することができないという課題を有している。
【0007】
本発明は、上記従来の技術が有する課題を一気に解決するもので、特に調理食材の場合に内部から滲出した液体や、表面に付着した余分な油分、あるいは粘性が高いソースなどを効果的に分離し、回収するもので、回収した液体や油分などが食材に再付着しない構造のトレイ容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した目的を達成するために、トレイ容器の底の構造を改良した。具体的には、四周に壁部を有するトレイ容器であって、このトレイ容器の底面の四周を除いた部分を隆起部とし、この隆起部からは複数の平行するリブが食材を載置可能に立ち上がり、これらリブの間にはそれぞれ溝を有し、これらの溝は中央部を一番高くして、両側方向に対称に勾配を与えられた一対の傾斜溝とするとともに、前記底面の壁部側には前記一対の傾斜溝の最低部それぞれが連絡する一対の油だまりを備え、この油だまりは前記傾斜溝の最低部から前記底面に達する深さを有して、前記それぞれのリブは前記一対の油だまりの間を長さ方向に途切れなく、且つ、前記底面からの高さを同一として前記隆起部から立ち上がり、前記油だまりには長さ方向に直交し、前記リブとは不連続で、隆起部の高さを超えない別のリブをさらに設けて、当該別のリブにより、前記傾斜溝から流入した前記食材からの油分や滲出液が前記油だまり内部で移動することを規制可能とした。この構成では、リブが食材を陳列する場所として機能し、傾斜溝は食材から出た油分などを捕獲してその勾配に沿って油分を油だまりに導く機能を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記手段を採用することとしたので、例えば油分を豊富に含む天ぷらやフライ物などを陳列する場合であっても、リブに食材を載置すれば油分が傾斜溝に捕獲され、その勾配にしたがって油分が油だまりに導かれるので、食材の購入者が食事に供するまで最適な状態を維持することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のトレイ容器の好ましい実施形態の一つを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は、本発明のトレイ容器の一実施形態を示した平面図である。当該トレイ容器は、基本的な構成として、底面1と、この底面の周囲から立ち上がった壁部2からなるが、壁部2の構成は特に限定するものではなく、底面1から立ち上がって必要であれば蓋(図示せず)を組み合わせたり、開口を樹脂フィルムで遮蔽するに十分な範囲で公知の蓋を採用することができる。
【0012】
図1において、3a・3bはそれぞれ水平で同一高さの立ち上がり方向に設けられたリブ、4a・4bはそれぞれ矢印方向に勾配を持つ傾斜溝であって、
図1においてはトレイ容器の長手方向中央部を境界として逆方向の勾配が与えられている。
図2はリブ3と傾斜溝4の関係を示した端面図であるが、
図1の底面形状とは厳密には一致していない。
図2に示した構成は、リブ3と傾斜溝4が交互に波形に出現することが容易に把握できることを主としたものであり、その目的において理解すべきである。なお、
図2からは、トレイ容器の底面1は四周を除いた部分全体を隆起部としていることが示されており、この隆起部にリブ3a・3bと傾斜溝4a・4bが設けられている。5は、傾斜溝4a・4bのそれぞれ最低部6に連続し、傾斜溝4a・4bの勾配に沿って流れ落ちた油分や食材の滲出液を捕獲するための油だまりである。
図3は、
図1の右半分に出現する傾斜溝3aを示したものであり、
図4は、
図1の左半分に出現する傾斜溝3bを示したものであるが、
図3、
図4ともに
図2の場合と同様に細部については一部省略して示している。油だまり5には図示したように長さ方向に直角状に細かいリブ7が形成されているが、これは捕獲した油分などが油だまり5の内部で容易に移動しないようにすること、及び底面1全体の強度を確保するためのものであるが、省略することもある。なお、リブ3a・3bの高さは、全ての高さが一致することが強度確保の面、及び審美性などの面から好ましいが、リブ3と傾斜溝4によって繰り返し出現する凹凸がトレイ容器の底面1の奥行を強調し、リブ3の表面に陳列される食材のボリューム感を演出することができるのであれば、それぞれのリブ3同士の高さを完全に一致させる必要はない。これについては、適宜選択できる事項であるが、必要なことはリブ3によって区画される傾斜溝4が油分などを捕獲するに十分な深さであり、かつ凹凸による奥行が視認できるのであれば、特に問うものではない。
【0013】
なお、本実施形態では油だまり5を矩形の底面1の対角を挟んでそれぞれL字状としているが、必ずしも短辺部分5aまで延長するものではない。要は、食材から滲出する油分などを十分に油だまり5で捕獲できるのであれば、直線状の部分のみで構成することも可能である。
【0014】
図1において、8はそれぞれ傾斜溝4a・4bの最高部側に設けられた平坦部であり、アーチ状に膨出した枕部9が設けられている。枕部9は、ソースなどのパウチを置くためであるが、併せて食材が移動した場合のストッパとしても機能し、食材がパウチに接触して油汚れしないようにしている。そして、必要であればこの部分にパウチに封入されたソースや汁が置かれ、滲出した油分などで汚れないようにしている。10はそれぞれ平坦部8の外周側に設けられ、平坦部8の高さとほぼ同等の高さの仕切り部であって、平坦部8と協働してソースなどのパウチを置く場所として機能する。また、当該仕切り部10によって油だまり5の両端を区画する機能も有している。仕切り部10にも、油だまり5に設けられたリブ7と同様に、必要に応じてリブ11が設けられることがある。
【0015】
上述した実施形態のトレイ容器は、主にフライ物や空揚げなどのように油分を含む食材や、時間の経過にしたがって内部の液体が滲出することが不可避な野菜のお浸しなどが陳列される。そして、必要であればソースのパウチが平坦部8、仕切り部10に載置され、枕部9にはパウチの端部や口部が位置決めされる。このようにすると、食材から滲出した油分などは食材自身が再度吸収することなく傾斜溝4a・4bに流れ込み、傾斜に沿って油だまり5に流入する。また、本実施形態では油だまり5とパウチを載置する箇所である平坦部8や仕切り部10とは明確に分けられており、容器が運搬時に揺れた場合でも捕獲した油分がパウチを汚すことを回避することができる。このようにして、食材は食前まで適切な状態を維持する。なお、本実施形態ではトレイ容器の左右方向半分で傾斜溝4a・4bの傾斜方向を逆にし、さらにこれに対応して油だまり5、平坦部8、仕切り部10などの設置場所を対称にしている。このようにすることによって、食材から滲出する油分が多い場合でも一部に偏って溜まることがなく、不要な油分の溢れ出しを避けることができる。
【0016】
図1に示した実施形態は、トレイ容器を横長の矩形として説明したが、リブ3と傾斜溝4の関係については矩形である必要はなく、底面が正方形、円形、楕円形であってもよく、その形状にとらわれることなく広く適用することができるのはいうまでもない。
【0017】
図5は、
図3、及び
図4に示した傾斜溝4a・4bとは別の実施形態を示したもので、図面の中央部を一番高くして、図面上の左右方向に対称に勾配を有する傾斜溝4c・4dが設けられた切妻状としたものである。なお、傾斜溝の形態として、切妻状に換えて中央部が一番高くなるようなアーチ状、あるいは楕円弧状とすることもある。このように構成することによって、油分は両方向に流下する。特に切妻状とした場合には、勾配の角度は
図3、
図4に示した傾斜溝の勾配よりも大きくなるので、傾斜溝に流入した油分などがより流れやすくなり、粘性が高い油分であっても傾斜溝に残留することなく効果的に油だまりに捕獲することができる。
【0018】
本実施形態では、トレイ容器本体についてのみ説明したが、この発明が適用される容器としては、別体としての蓋でトレイ本体を遮蔽することであっても、ヒンジによってトレイ容器と蓋が接続されているフードパックであってもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0019】
1 底面
2 壁部
3 リブ
4a~4d 傾斜溝
5 油だまり
8 平坦部
9 枕部
10 仕切り部