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特許7157471(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)を非ラセミ比で含む相乗的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)を非ラセミ比で含む相乗的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4188 20060101AFI20221013BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 31/708 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A61K31/4188
A61K45/00
A61K31/337
A61K31/7068
A61K31/708
A61P25/02
A61P35/00
A61P31/12
A61P25/02 101
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020202501
(22)【出願日】2020-12-07
(62)【分割の表示】P 2020516950の分割
【原出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2021073171
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】17173760.4
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519427413
【氏名又は名称】メティス ファーマシューティカルズ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】シェルツ ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ファリーナ カルロ
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6810983(JP,B2)
【文献】国際公開第93/009120(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/125674(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/055057(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/010217(WO,A1)
【文献】国際公開第00/032558(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07D
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における末梢神経障害の感覚症状を治療するために用いられる、(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))および(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))、
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)が33%以上且つ54%以下であり、
経口、筋肉内、皮下、局所、経皮、鼻腔内、静脈内、舌下または直腸内に投与される、
前記組成物。
【請求項2】
前記末梢神経障害の感覚症状が、低温感受性、ヒリヒリする(tingling)感覚、焼けるような(burning)感覚、またはうずくような(aching)感覚を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記末梢神経障害の感覚症状が、アロディニアである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アロディニアが、一次性アロディニア又は二次性アロディニアである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記末梢神経障害の感覚症状が、痛覚過敏である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記痛覚過敏が、オキサリプラチン誘導性の痛覚過敏である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
抗腫瘍薬を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗腫瘍薬が、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗腫瘍薬が、ソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンからなる群から選択される、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
抗ウイルス薬を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗ウイルス薬が、ヌクレオシド又はヌクレオチドである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗ウイルス薬が、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジンまたはジドブジンである、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、1投与あたり10mg~3000mgの間の用量で投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記対象が、ヒト又はヒト以外の動物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
対象におけるグルタメート誘発性のグルタメート放出を抑制するするために用いられる、(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))および(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))、
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)が33%以上且つ54%以下である、
前記組成物。
【請求項16】
前記グルタメート誘発性のグルタメート放出が、損傷末梢神経に起因する、請求項15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月31日に出願された欧州特許出願第17173760.4号の優先権の利益を主張するものであり、当該出願は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、ある範囲の比の(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))と(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))およびそれらの薬学的に許容される溶媒和物または共結晶を含む組成物およびキット、前記組成物を含む医薬組成物、それらの医薬品としての使用、ならびに典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択される疾患または障害の治療および/または予防のための本発明の組成物または医薬組成物またはキットの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は、脳に広範に存在する興奮性神経伝達物質である。興奮性メッセンジャーとしてのその役割は、最初の徴候が1950年代に現れ、グルタメートの静脈内投与によって、痙攣が誘発されることが認められた。しかし、生合成および分解酵素、細胞取り込み機構、細胞内貯蔵放出系、ならびにその細胞表面イオンチャネルおよびGタンパク質共役受容体を含むグルタミン酸作動性神経伝達物質系全体の検出は1970年代まで行われず、1980年代になって、好適な薬理学的ツールが初めて同定された。新たに出現した分子生物学的ツールによって、グルタミン酸作動性イオンチャネル、受容体、トランスポーターなどの分子同定および分類のための手段が提供されたのは、1990年代だった。
【0003】
興奮性アミノ酸であるグルタメートおよびグリシンによって開閉され、生体異物化合物であるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)にも応答する膜結合イオンチャネルは、2価および1価の両陽イオンのシナプス前およびシナプス後神経系細胞への流入を制御する(Foster et al., Nature 1987, 329:395-396; Mayer et al., Trends in Pharmacol. Sci. 1990, 11:254-260を参照のこと)。それらは、生体異物物質であるカイネートまたはα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)に応答する、グルタメート開閉型陽イオン伝導性イオンチャネルとは分子的、電気生理学的、および薬理学的に異なり、同様にグルタメート開閉型Gタンパク質共役受容体のファミリー、いわゆる代謝型グルタメート受容体とは異なる。
NMDA選好性グルタメート開閉型イオンチャネルは、それぞれGRIN1遺伝子および4つのGRIN2遺伝子の1つによってコードされる2つの必須GluN1ユニットおよび2つの可変性GluN2受容体サブユニットのヘテロ四量体構造基部を有する。1つまたは両方のGluN2サブユニットを、GluN3AまたはGluN3Bサブユニットによって潜在的に置き換えることができる。GRIN1遺伝子産物は8つのスプライスバリアントを有する一方、異なる4つのGluN2サブユニットをコードする異なる4つのGRIN2遺伝子(GRIN2A-D)が存在する。グリシン結合部位はGluN1サブユニット上に存在し、グルタメート結合部位はGluN2サブユニット上に存在する(Paoletti P et al., Nat Rev Neurosci. 2013; 14(6):383-400)。
【0004】
グルタメート開閉型イオンチャネルのポジティブまたはネガティブアロステリックモジュレーターのクラスが複数述べられてきた。それらはグルタメート開閉型イオンチャネルと、それぞれのイオンチャネルのリガンド結合領域(LBD)のサブユニット間境界、すなわちLBD内に存在するグルタメートまたはグリシン結合部位とは異なる部位において結合する(Sun et al., 2002; Jin et al., 2005; Hackos et al., 2016)。アロステリックモジュレーターは、NMDA型グルタメート開閉型イオンチャネルの膜貫通領域に結合することも述べられており(Wang et al. 2017)、イオンチャネルが閉鎖または不活性化状態であるとき、高度に保存された構造モチーフ(いわゆる「Lurcher領域」)によって、細孔を通るイオン流が制限される(Karakas and Furukawa, 2014; Lee et al., 2014; Ogden and Traynelis, 2013)。
【0005】
グルタメート開閉型イオンチャネルのアロステリックモジュレーターは、健常個体において、学習、記憶処理、気分、注意、感情、運動ニューロン疾患、末梢性感覚神経障害および疼痛知覚などの多様な分野で治療可能性、さらには有用性を有する(Cull-Candy S et al., Curr Opin Neurobiol. 2001; 11(3):327-35)。
【0006】
NMDA受容体機能をモジュレートする化合物は、双極性障害(Martucci L et al., Schizophrenia Res, 2006; 84(2-3):214-21)、大うつ病性障害(Li N et al., Biol Psychiatry. 2011; 69(8):754-61)、治療抵抗性うつ病(Preskorn SH et al. J Clin Psychopharmacol. 2008; 28(6):631-7)および他の気分障害(統合失調症(Grimwood S et al., Neuroreport. 1999; 10(3):461-5)、産前および産後うつ病(Weickert CS et al. Molecular Psychiatry (2013) 18, 1185-1192)、季節性感情障害などを含む);アルツハイマー病(Hanson JE et al., Neurobiol Dis. 2015; 74:254-62; Li S et al., J Neurosci. 2011; 31(18):6627-38)および他の認知症(Orgogozo JM et al. Stroke 2002, 33: 1834-1839)、パーキンソン病(Duty S, CNS Drugs. 2012; 26(12):1017-32; Steece-Collier K et al., Exp Neurol. 2000; 163(1):239-43; Leaver KR et al. Clin Exp Pharmacol Physiol. 2008; 35(11):1388-94)、ハンチントン舞踏病(Tang TS et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2005; 102(7):2602-7; Li L et al., J Neurophysiol. 2004; 92(5):2738-46)、多発性硬化症(Grasselli G et al., Br J Pharmacol. 2013; 168(2):502-17)、認知障害(Wang D et al. 2014, Expert Opin Ther Targets 2014; 18(10):1121-30)、頭部外傷(Bullock MR et al., Ann N Y Acad Sci. 1999; 890:51-8)、脊髄損傷、脳卒中(Yang Y et al., J Neurosurg. 2003; 98(2):397-403)、癲癇(Naspolini AP et al., Epilepsy Res. 2012 Jun; 100(1-2):12-9)、運動障害(例えば、ジスキネジア)(Morissette M et al., Mov Disord. 2006; 21(1):9-17)、様々な神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(Fuller PI et al., Neurosci Lett. 2006; 399(1-2):157-61)または細菌性もしくは慢性感染を伴っている神経変性、緑内障(Naskar R et al. Semin Ophthalmol. 1999 Sep; 14(3):152-8)、疼痛(例えば、慢性、がん性、術後および神経障害性疼痛(Wu LJ and Zhuo M, Neurotherapeutics. 2009; 6(4):693-702)、糖尿病性神経障害、片頭痛(Peeters M et al., J Pharmacol Exp Ther. 2007; 321(2):564-72)、脳虚血(Yuan H et al., Neuron. 2015; 85(6):1305-18)、脳炎(Dalmau J. et al., Lancet Neurol. 2008; 7(12):1091-8)、自閉症および自閉症スペクトラム障害(Won H. et al., Nature. 2012; 486(7402):261-5)、記憶および学習障害(Tang, Y. P. et al., Nature. 1999; 401(6748):63-9)、強迫性障害(Arnold PD et al., Psychiatry Res. 2009; 172(2):136-9)、注意欠陥多動性障害(ADHD)(Dorval KM et al., Genes Brain Behav. 2007; 6(5):444-52)、PTSD(Haller J et al. Behav Pharmacol. 2011; 22(2):113-21; Leaderbrand K et al. Neurobiol Learn Mem. 2014; 113:35-40)、耳鳴り(Guitton MJ, and Dudai Y, Neural Plast.2007; 80904; Hu SS et al. 2016; 273(2): 325-332)、睡眠障害(ナルコレプシーまたは日中眠気過度のような睡眠障害、国際公開第2009/058261号)、めまいおよび眼振(Straube A. et al., Curr Opin Neurol. 2005; 18(1):11-4; Starck M et al. J Neurol. 1997 Jan; 244(1):9-16)、不安、神経精神全身性エリテマトーデスのような自己免疫障害(Kowal C et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2006; 103, 19854-19859)、ならびに耽溺性疾患(例えば、アルコール嗜癖、薬物嗜癖)(Nagy J, 2004, Curr Drug Targets CNS Neurol Disord. 2004; 3(3):169-79.; Shen H et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2011; 108(48):19407-12)を含むがこれらに限定されない多くの神経および精神障害の治療において有用であり得る。
【0007】
末梢性感覚神経障害の最も顕著な症状の1つである末梢神経障害性疼痛(Zilliox LA, 2017)を含めて症状は、頻繁に遭遇する臨床状態である。一般集団における有病率は、7%~10%の間であると推定された(van Hecke O et al., 2014)。米国では、有痛性糖尿病性末梢神経障害は単独で、約1千万人を冒すと推定される。末梢性感覚神経障害は治療に対して耐性を示すことが多く、それらの治療について低い患者満足度を伴う。いくつかの薬物は、糖尿病性神経障害および疱疹後神経痛を伴っている末梢性感覚神経障害を治療する際に有効であることが示された。これらの薬物を使用して、同様に他の状態を伴っている神経障害性疼痛を治療することが多い。これらの治療は、望ましくない有害作用を示すことが多く、治療の中止が問題となり得る。末梢性感覚神経障害は日常生活の多くの側面に影響を及ぼし、不十分な全身の健康、生活の質の低下、浅眠、ならびにより強い不安およびうつ病を伴うことを認識することは重要である。実際、慢性末梢性感覚神経障害者における生活の質の程度は、臨床的うつ病、冠動脈疾患、亜急性心筋梗塞、またはコントロール不良糖尿病の患者の生活の質の程度と同じくらい低いと評価された(Smith BH et al., 2007)。
【0008】
米国神経学会は、有痛性糖尿病性神経障害(Bril V et al., 2011)、疱疹後神経痛(Dubinsky RM et al., 2004)、および三叉神経痛(Gronseth G et al., 2008)の治療に関する診療ガイドラインを出版した。神経障害性疼痛の治療に対するいくつかの他の診療ガイドラインも出版された(Attal N et al., 2010; Moulin D, et al., 2014)。
【0009】
感覚神経障害は、通常、症状を引き起こしている病変の部位に応じて、中枢性または末梢性と分類される。末梢性感覚神経障害を伴っている状態の例は、糖尿病性神経障害、ヒト免疫不全ウイルスを伴っている神経障害、化学療法誘発性末梢神経障害、疱疹後神経痛、三叉神経痛、複合性局所疼痛症候群、圧迫性単神経障害、神経根神経障害、炎症性神経障害(急性および慢性炎症性脱髄性多発神経障害)、外傷後神経障害、または幻肢神経障害である。
【0010】
典型的に、末梢性感覚神経障害は、陽性と陰性の両症状を有する。陽性症状としては、ピリピリ(「ピリピリする感覚」)、チクチク、電撃様もしくは乱刺感、うずく、ナイフの様な、引っ張られるもしくは締め付ける様な症状、灼熱するもしくは焼け付く様な、または電気的疼痛が挙げられる。陰性症状としては、しびれ、無感覚、または靴下をはいている感じが挙げられる。末梢性感覚神経障害のいくつかの独特の側面としては、痛覚過敏(刺激に対する増加した応答は、普通は有痛性である);アロディニア(典型的には疼痛を引き起こさない刺激による疼痛);感覚過敏(刺激に対する感受性の増加);異常感覚(誘発であれ自発であれ、知覚異常);感覚異常(不快な知覚異常);感覚鈍麻(普通は有痛性の刺激に応答しての疼痛の減少);痛覚消失(痛覚の消失);および麻酔(感覚の消失)が挙げられる。陽性の徴候または症状は、閾値の低下または興奮性の増強のために感覚系伝導路における過剰活動を表すと考えられている。陰性の徴候および症状は、感覚の減少または不在として発症し、感覚機能の消失が原因である。
いくつかの薬理作用剤は、末梢性感覚神経障害の症状の治療において有効であることが判明している(Finnerup NB et al., 2015)が、神経障害性疼痛患者のうち薬物療法に対して完全寛解を示すのは少数にすぎない。患者の大部分は、治療により、疼痛が耐えられるものとなることを期待するのが賢明である。一般に、11段階の数値評価スケールで30%の疼痛低減は、臨床的に重要であるとみなされ、「中等度の緩和」または「大幅な改善」を構成する。不安やうつ病などの併存疾患を認識および治療することも重要であり、二次治療の目標としては、睡眠の改善、機能の推進、および生活の質全体の向上を挙げることができる。これらの目標は、薬理学的療法が、治療への集学的手法の一構成要素であるとき最もうまく達成される。
【0011】
米国食品医薬品局により認可された神経障害性疼痛薬は、カルバマゼピン、デュロキセチン、プレガバリン、ガバペンチン、局所リドカイン、および局所カプサイシンである。トラマドールおよびオピオイド鎮痛薬は、様々なタイプの神経障害性疼痛において有効であるが、一般的には長期の安全性についての懸念のため第一選択治療として推奨されない。しかし、それらは、急性神経障害性疼痛、がんによる神経障害性疼痛、および重度神経障害性疼痛の反復性増悪における第一選択治療として推奨される。様々な神経障害性疼痛状態の治療における強力なオピオイド(コデイン、モルヒネ、オキシコドンおよびフェンタニル)の使用には議論の余地があり、公衆衛生の懸念に、医療用オピオイドに関連した死亡の数の増加が加わる。これらの薬物が有する過量、依存、および嗜癖の重大なリスクは、潜在的利益を上回るおそれがある。
したがって、末梢性感覚神経障害および末梢神経障害性疼痛に対して経口投与で有効であり、中毒学的に良性であり、依存および嗜癖の現象への可能性がない新規治療剤を開発する、緊急で重要な医学的必要性が残っている。
【0012】
5th version of the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-5)に記載されているものなどの神経精神疾患;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患の治療に対して経口投与で有効な新規治療剤を開発する重要な医学的必要性も残っている。
ジミラセタム(2,5-ジオキソヘキサヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]イミダゾール、IUPAC名:(RS)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン)は、二環式2-ピロリジノン誘導体およびラセタムファミリーの向知性メンバーである。
【0013】
【化1】
オーストラリア特許出願公開第2012/201853号には、慢性疼痛の治療および/または予防に有用な医薬品の製造におけるジミラセタムまたはその薬学的に許容される溶媒和物の単独使用または他の活性成分を伴う使用が開示されている。
国際公開第93/09120号は、いくつかの縮合イミダゾール誘導体を調製する、特にキラル縮合イミダゾール誘導体を調製するいくつかの方法に関する。
米国特許第5,200,406号には、ジミラセタムが、学習を回復させ、記憶障害を治療する際に有用であり得ることが述べられている。ジミラセタムで治療される疾患の一例は、アルツハイマー病である。
【0014】
ジミラセタムは、元来認知増強剤として開発され、ラットにおける学習および記憶を改善することができることが示された(Pinza M et al., 1993;欧州特許第335483号)。単一用量のヒト健常ボランティアの研究(Torchio L et al., 1995)において、ジミラセタムは、プラセボと比べて、スコポラミンの注射によって誘発される認知能力の一時的低下のいくつかの程度を向上させることがわかった。ジミラセタムの別の医学的用途は、特にげっ歯類の神経障害性疼痛モデルにおけるその幅広い有効性を含めて記載されている。起源の異なる神経障害性疼痛の治療におけるジミラセタムの有効性は、神経損傷、化学療法、またはモノヨードアセテート(MIA)誘発性変形性関節症によって誘発される神経障害性疼痛の十分に確立されたモデルにおいて確認されている(Fariello R et al., 2014); Di Cesare Mannelli L et al., 2015a; Di Cesare Mannelli L et al., 2015b;国際公開第2008/125674号;欧州特許第2857017号、米国特許出願公開第2010/0125096号;国際公開第2012/055057号)。化学療法誘発性の神経毒性症状は、どの化学療法剤が使用されているかにかかわらず、ジミラセタムに応答する。ジデオキシシチジン-(ddC-)、オキサリプラチン-、ビンクリスチン-、パクリタキセル-、およびソラフェニブ-誘導モデルはすべて、ジミラセタムの効果に応答し、ジミラセタムは、これらの化学療法剤の投与によってもたらされる症状の治療だけでなく、予防においても有効であることが示された。ジミラセタムの単独経口投与は、痛覚過敏およびアロディニアを健常対照のレベルに、完全ではあるが一時的に戻すことができる。1日2回の反復経口投与によって、タキフィラキシーまたは耐性の証拠もなく、用量減少および1日1回経口投与への用量間隔増加にもかかわらず、最大効果が持続する。さらに、ジミラセタムの効果は疾患特異的である。ラットが末梢神経障害性疼痛の状態を坐骨神経の周囲に外科的結紮留置を施された一方の後肢で生じるが、偽手術を施された他方の後肢では生じない、一側性の慢性絞扼損傷(CCI)モデルにおいて、ジミラセタムの単一の経口用量により、偽手術された肢で痛覚過敏またはアロディニアに影響することなく、神経結紮された肢でのみ疼痛反応が低減される。このプロファイルは、例えばこのモデルにおける両肢に影響するオピエートの効果とは著しく異なる(Christensen D et al., 1998)。
【0015】
ジミラセタムの薬理作用の機序は、海馬および脊髄のシナプトソーム調製物を使用して探索された。このアッセイは、グルタメートによってトリガーされるグルタメート遊離の生理的過程を薬理学的に模倣するように意図されている。そのpH感受性、Zn2+感受性およびイフェンプロジル感受性は、pH感受性のGluN1およびGluN2Aサブユニットを含むNMDA受容体アイソフォームの関与を示唆する(Fariello et al., 2014)。グルタメートシグナル伝達の阻害は、神経障害性疼痛の予防または治療の十分に確立された基礎である(Latremoliere and Woolf, 2009)。脊髄では、末梢感覚求心路が中枢神経系の介在ニューロンへの最初で最後のシナプス結合を形成する接合部(Marieb, Wilhelm and Mallat, 2017)において、グルタメート誘発性グルタメート遊離が、損傷末梢神経に起因する上方制御または「増感」されたシグナル伝達の構成要素である(Latremolier and Woolf, 2009)。
【0016】
海馬のシナプトソーム調製物において、ジミラセタムは、中程度に強力な阻害剤であり、約3μMのIC50で、シナプトソーム調製物中にあらかじめロードされた[3H]-D-アスパルテートの遊離がNMDA+グリシンによってトリガーされるのを阻害する。しかし、脊髄のシナプトソーム調製物においては、ジミラセタムは、はるかにより強力であり、約20nMのIC50で、NMDA+グリシンによってトリガーされる[3H]-D-アスパルテート遊離を阻害する(Fariello R et al., 2014)。
【0017】
ジミラセタムが脊髄におけるグルタメートによってトリガーされるグルタメート遊離を遮断する能力が、末梢性感覚神経障害の予防または治療におけるその有用性の根底にあり、脳における他の機序が、ラットにおけるうつ病の治療におけるその有効性(Fariello et al., 2011;国際公開第2015/010217号);ならびにラットおよびヒトのスコポラミン誘発性認知障害モデルにおけるその有効性(Pinza et al., 1993)の根底にあり得る。
【0018】
ジミラセタムは、単一の立体中心を有するキラル化合物であるが、その(R)-および(S)-エナンチオマーのラセミ混合物として臨床開発を遂げてきた。(R)-ジミラセタムのほうが高い活性を示すエナンチオマーであるが、このラセミ混合物としての臨床開発が行われた(国際公開第2008/125674号)。というのは、ジミラセタムのラセミ体は、単一エナンチオマーのどちらか一方よりはるかに強力であることが明らかになってきたからである。例えば、2’,3’-ジデオキシシチジン(ddC、ザルシタビン)で前処置されたラットにおいて、(R)-ジミラセタムの単一の経口用量は部分有効性応答をもたらし、(S)-エナンチオマーは、(R)-エナンチオマーの対応する用量より小さい応答をもたらした。一方、ラセミのジミラセタムは、(R)-または(S)-ジミラセタムのどちらか単独と比較して優れた応答をもたらした(国際公開第2008/125674号)。(S)-、(R)-、およびラセミのジミラセタムの効力のこの順位序列は、MIA誘発性痛覚過敏の回復に対するジミラセタムの効果においても見られる(国際公開第2008/125674号)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
今回、驚くべきことにかつ予想外なことに、30%以上、60%以下の(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)を有するジミラセタムの(R)-および(S)-エナンチオマーの組成物は、対応する個々のエナンチオマーよりまたはラセミ体よりも高い薬理学的効力を示し、したがって、個々のエナンチオマーまたはラセミ体の効力に基づいては予想することができなかった相乗効果をもたらすことがわかった。これらの組成物は、好ましくはNMDA+グリシンによって惹起されるラット脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸遊離を約10nMの濃度で少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約45%阻害する。
【0020】
したがって、驚くべきことにかつ予想外なことに、(ジミラセタムエナンチオマーの(R):(S)比2:1に対応する)33%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する好ましい本発明の組成物は、NMDA+グリシンによって惹起されるラット脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸遊離を10nMの濃度で約50%阻害することがわかった(図1A、表1)。(ジミラセタムエナンチオマーの(R):(S)比3:1に対応する)50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する別の好ましい本発明の組成物は、NMDA+グリシンによって惹起されるラット脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸遊離を1nMの濃度で52%阻害さえする(図1B、表1)。比較すると、ラセミのジミラセタムは、NMDA+グリシンによって惹起されるラット脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸遊離を10nMの濃度で36%阻害し、IC50推定値15nMに対応する(図1C;表1);(R)-ジミラセタムは、IC50推定値123nMを有する(図1D);(S)-ジミラセタムは、IC50推定値418nMを有する(図1E)。
【0021】
これらの驚くべき結果は、MIA誘発性膝関節炎モデルまたはオキサリプラチン誘発性神経障害性疼痛モデルなどの異なる別のラット末梢神経障害性疼痛モデルにおいて確認される。したがって、ある(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物は、モノヨード酢酸ナトリウムの投与後のpaw-pressure試験における末梢神経障害性疼痛を低減する際に(MIA;図2)、またはオキサリプラチン誘発性末梢神経障害性疼痛の予防において(図3)、ジミラセタムのラセミ混合物よりはるかに効率的である。ある(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物は、過剰量のジミラセタムの(S)-エナンチオマーが存在する組成物よりはるかに効率的でもある(図2)。
【0022】
したがって、30%以上、60%以下の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率(ee)を有する本発明のジミラセタムの(R)-および(S)-エナンチオマーの組成物は、純粋なエナンチオマー単独またはラセミのジミラセタムと比較して、所与の用量で薬理学的により効果的である。ラセミのジミラセタムという用語は、(R)-および(S)-エナンチオマーの質量により1:1の混合物を指し、したがって、その混合物は、0%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率(ee)を有する。したがって、本発明を伴っている効果は、驚くべきことに(R)-ジミラセタムと(S)-ジミラセタムの間の特定範囲の比に起因する相乗効果である。
【0023】
(R)-または(S)-ジミラセタムの経口投与後のラット血漿中濃度-時間プロファイルは同一であり、(R)-および(S)-エナンチオマーはインビボで相互変換しない(それぞれ、図4Aおよび図4B)ので、エナンチオマーの本発明の組成物の挙動は、エナンチオマーの薬物動態または代謝によっては説明されない。(R)-および(S)-エナンチオマーは両方とも(効力は異なるが)個別に有効であり、適切な比で組み合わされると、それらの薬理学的効力はラセミ体の薬理学的効力より高いという事実は、それらはラセミのジミラセタムと、同じ薬理学的機序および同じ医学的適応症の治療に対する適合性を共有することを示す。したがって、本発明の組成物は有益であり、詳細な説明に記載される多数の疾患および障害の治療および/または予防に使用することができる。疾患または障害は、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択される。より好ましくは、疾患または障害は、典型的に末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛;発作;うつ病;または認知障害から選択される。
【0024】
第1の態様において、本発明は、(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))および(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))、
【0025】
【化2】
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)が30%以上、60%以下である、組成物を提供する。
本発明によるそのような組成物の一具体例は、3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン(ジミラセタム)の非ラセミ混合物およびその薬学的に許容される溶媒和物または共結晶であり、前記非ラセミ混合物は、(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))および(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))を30%以上、60%以下の前記(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)で含む。
【0026】
【化3】
別の態様において、本発明は、本発明の組成物、例えば本発明の非ラセミ混合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、(R)-ジミラセタム(1)および(S)-ジミラセタム(2)と、(R)-ジミラセタム(1)および(S)-ジミラセタム(2)を組み合わせて、30%以上、60%以下の前記(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)を得るための指示書とを含むパーツのキットを提供する。この態様において、組成物に関して本明細書に記載されるのと同じ好ましい範囲の前記(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)ならびに(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)のエナンチオマー比が当てはまる。
さらに別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、疾患または障害の治療または予防における使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットであって、疾患または障害が、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択される、組成物または医薬組成物またはキットを提供する。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、動物、好ましくはヒトの疾患または障害の治療および/または予防の方法であって、疾患または障害が、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択され、前記方法が、本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを動物、好ましくはヒトに投与するステップを含む、方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、疾患または障害の治療および/または予防のための医薬品の製造における本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットの使用であって、疾患または障害が、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態、うつ病、または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択される、使用を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、本発明の組成物または本発明の医薬組成物と、容器またはパッケージと、添付文書などの書面による説明および投与指示書とを含む製品を提供する。
【0028】
本出願の組成物は本発明の非ラセミ混合物を包含することを理解すべきであり、したがって本発明の組成物への言及はいずれも、本発明の非ラセミ混合物への言及と理解されるべきである。
本発明の別の態様および実施形態は、本明細書が先に進むにつれて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A】NMDA(10μM)+グリシン(1μM)によって刺激されるプレロードされた脊髄シナプトソームからの[3H]-D-Aspの遊離に対する(エナンチオマーの(R):(S)比2:1に対応する)33.3%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物の増え続けるモル濃度の効果を示す図である。
図1B】NMDA(10μM)+グリシン(1μM)によって刺激されるプレロードされた脊髄シナプトソームからの[3H]-D-Aspの遊離に対する(エナンチオマーの(R):(S)比3:1に対応する)50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物の増え続けるモル濃度の効果を示す図である。
図1C】NMDA(10μM)+グリシン(1μM)によって刺激されるプレロードされた脊髄シナプトソームからの[3H]-D-Aspの遊離に対するジミラセタムラセミ体の増え続けるモル濃度の効果を示す図である。
図1D】NMDA(10μM)+グリシン(1μM)によって刺激されるプレロードされた脊髄シナプトソームからの[3H]-D-Aspの遊離に対する(R)-ジミラセタムの増え続けるモル濃度の効果を示す図である。
図1E】NMDA(10μM)+グリシン(1μM)によって刺激されるプレロードされた脊髄シナプトソームからの[3H]-D-Aspの遊離に対する(S)-ジミラセタムの増え続けるモル濃度の効果を示す図である。 図1A~Eにおいて、結果は、基礎遊離の増加%として表され、データは、3回繰り返して実行された実験6回の平均±S.E.M.である。
図2】ラットのMIA誘発性変形性関節症モデルにおける、(エナンチオマーの(R):(S)比3:1に対応する)50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物の単一用量の抗痛覚過敏効果を、ジミラセタムラセミ体および(R):(S)が1:3の過剰量のジミラセタムの(S)-エナンチオマーを有する組成物と比べて示す図である。疼痛閾値をRandall & Selittoアナルゲシメータによって評価した。結果をグラム数として表し、各値はラット20匹の平均±S.E.M.を表す。**:ビヒクル-MIAに対して、P<0.01。
図3】オキサリプラチン誘発性機械痛覚過敏に対する(エナンチオマーの(R):(S)比3:1に対応する)50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物およびジミラセタムラセミ体の反復経口投与の効果を示す図である。疼痛閾値を、朝の投与前にRandall & Selittoアナルゲシメータによって評価した。各値は、ラット6匹の平均±S.E.M.を表す。オキサリプラチン+ビヒクルで処置した動物に対して、*P<0.05および**P<0.01;オキサリプラチン+ジミラセタム15mg/kgに対して、°P<0.05および°°P<0.01;オキサリプラチン+ジミラセタム50mg/kgに対して、#P<0.05および##P<0.01。
図4A】(R)-ジミラセタム(75mg/kg)の経口投与後とラセミのジミラセタム(150mg/kg)の経口投与後の(R)-エナンチオマーの血漿中濃度-時間プロファイルの比較を示す図である。
図4B】(S)-ジミラセタム(2)(75mg/kg)の経口投与後とラセミのジミラセタム(150mg/kg)の経口投与後の(S)-エナンチオマーの血漿中濃度-時間プロファイルの比較を示す図である。 図4Aおよび4Bから、本発明の組成物のインビボにおける薬理学的優位性は薬物動態の差に帰することができないことが明らかになる。
図5】ラセミのジミラセタム(丸印)および異なる5つのエナンチオマー混合物(丸印、RとSの比2:1~4:1)による、NMDA+グリシン誘発性[3H]-D-アスパルテート遊離(四角印)の阻害を示す図である。このデータは、例5において得られた。
図6】受動的回避試験を示す図である。異なる3つのR:S比(1:1、2:1および3:1)を有するジミラセタムのエナンチオマー混合物を、1日目における訓練試験の30分前に3、10または30mg/kgで経口投与した。スコポラミン(1.5mg/kg腹腔内投与)を、1日目における罰の直後に注射した。訓練セッション時に記録された潜伏時間は、すべての群で同等であった(約15秒)。2日目に、保持セッションが行われた。潜伏時間は棒で記録される。データは、異なる2つの実験セットで分析されたマウス12匹の平均±S.E.M.として表される。ビヒクル+ビヒクル(ビヒクル)に対して、##P<0.01;スコポラミン+ビヒクル(スコポラミン)に対して、*P<0.05および**P<0.01。
図7】強制水泳試験を示す図である。異なる3つのR:S比(1:1、2:1および3:1)を有するジミラセタムのエナンチオマー混合物を、試験の25分前に10、30または100mg/kgで経口投与した。マウスを、水を含むガラスシリンダーに6分間入れ、可動の期間を最後の4分間に記録した。データは、異なる2つの実験セットで分析されたマウス12匹の平均±S.E.M.として表される。ビヒクル+ビヒクル(ビヒクル)に対して、*P<0.05および**P<0.01(動物をスコポラミンの代わりにビヒクルで処置し、続いて、被験化合物の代わりにビヒクルで再び処置したことを示す)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
エナンチオマー過剰率を特徴付けるために使用される場合の「約」という用語は、別段の指示のない場合、所与の数値を参照して±4%を意味する。本発明の実施形態のそれぞれにおいて、「約」を削除することができる。
「好ましくは」という用語は、本発明において必要とされないが、改善された技術的効果を引き起こすことができ、したがって望ましいが、必須ではない特徴または実施形態を説明するために使用される。
【0031】
本明細書に記載の数値に関して、別段の明示のない限り、数値の最後の小数位は、好ましくはその精度を示す。したがって、他の許容誤差が与えられていない限り、最大許容範囲は、好ましくは丸め規則を最後の小数位に適用することによって確かめられる。したがって、2.5という値は、好ましくは2.45~2.54の許容誤差を有する。
本発明は、(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))および(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))をある比で含む組成物に関する。「組成物」という用語は、(R)-ジミラセタム(1)および(S)-ジミラセタム(2)は混合されなければならないことを必要としないと理解すべきである。それらは、一緒にまたは別々に製剤化し、同時にまたは続いて投与することができる。ただし、治療対象において達成される(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の比は、本発明によって必要とされる通りであることを条件とする。好ましくは、本発明の組成物は、(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の混合物であるが、本発明の組成物は、(R)-ジミラセタム(1)を含む1つもしくは複数の物品および(S)-ジミラセタム(2)を含む1つもしくは複数の物品の組合せ、または(R)-ジミラセタム(1)を含む1つもしくは複数の物品およびジミラセタムラセミ体を含む1つもしくは複数の物品の組合せも包含することができる。
【0032】
さらに、本発明の組成物に含まれるジミラセタムは、本発明において必要とされる(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の比の全範囲、あるいは(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率として表される全範囲内で存在しなければならない。言い換えれば、等量の(R)-ジミラセタム(1)および(S)-ジミラセタム(2)を含む組成物を、過剰量の(R)-ジミラセタム(1)を含む構成要素と過剰量の(S)-ジミラセタム(2)を含む別の構成要素に理論的に分割することは、本発明の主旨に反することである。したがって、本発明の組成物の物理的形がどちらであろうと、組成物は全体として、本発明の(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の比の範囲、あるいは(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率として表される範囲に関する要件を満たさなければならない。(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の比は、あるいは(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率として表されるが、統計的に意味のある数のジミラセタム分子、典型的には1000個を超えるジミラセタム分子に基づいていることを理解すべきである。本発明において、(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の相対量は、(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の比によって、または(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率によって表される。
【0033】
本明細書で用いられる(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の「比」は、別段の明示のない限り、(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の質量比を指すことを理解すべきである。(R)-ジミラセタム(1)および/または(S)-ジミラセタム(2)の溶媒和物が使用される場合、溶媒はこの計算において無視されることになる。言い換えれば、(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の「比は以下の通り計算される。
【0034】
【表1】
【0035】
当業者によって公知であるように、(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の場合などにおけるキラリティーのみが異なる化合物の比は、キラルな保持体を使用するクロマトグラフィー、偏光の回転の旋光測定、キラルシフト試薬を使用する核磁気共鳴分光法、またはモッシャー酸などのキラル化合物を使用する化合物の誘導体化と、その後に続くクロマトグラフィーもしくは核磁気共鳴分光法を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知であるいくつかの方式で決定することができる。さらに、エナンチオマーを、共結晶中に存在する特定の水素結合相互作用の形成を利用するキラル共結晶化技法により、ラセミ体、すなわちジミラセタムのキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)および直接分別結晶化を含めて、当業者に公知の方法で混合物から単離することができる(Springuel GR, et al., 2012;および米国特許第6,570,036号を参照のこと)。有用な共結晶化パートナーとしては、マンデル酸、リンゴ酸、酒石酸およびその誘導体のエナンチオマーが挙げられ、またはエナンチオマーを不斉合成により調製することができる。例えば、Eliel and Wilen, 1994を参照のこと。
【0036】
非ラセミ混合物などの本発明の組成物の(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の比(キラル純度と呼ばれることもある)は、典型的にかつ好ましくはキラルHPLCにより決定し(詳細については、例を参照のこと)、方程式:
ee=(AR-AS)/(AR+AS)×100%
で計算して、そのエナンチオマー過剰率(ee)で表わすこともできる。式中、ARは、試料溶液のHPLCクロマトグラムにおける(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン、すなわちジミラセタムの(R)-エナンチオマー(1)のピーク面積であり、ASは、試料溶液のHPLCクロマトグラムにおける(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン、すなわちジミラセタムの(S)-エナンチオマー(2)のピーク面積である。
【0037】
この点に関して、キラル「純度」が上述されているが、本発明の主旨は、高いキラル純度の(R)-ジミラセタム(1)または(S)-ジミラセタム(2)を実現するものではないと認められている。むしろ、本発明の主旨は、(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の間のある範囲の比は、特に相乗効果を引き起こすことである。単に化合物の純度を改善するべき場合、すなわち目的が知られている、すなわち特定の一化合物を理想的には100%の純度で得るべき場合とは対照的に、本発明は、以前には知られていなかった比の2つの化合物、すなわち(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)に基づいている。
【0038】
「薬学的に許容される」という用語は、化合物または組成物、典型的にかつ好ましくは溶媒和物、共結晶または担体が、典型的にかつ好ましくは製剤において使用されるとき、または典型的にかつ好ましくはそれを用いて動物、好ましくはヒトを治療するのに使用されるとき、他の成分、典型的にかつ好ましくは本発明の組成物と化学的にまたは中毒学的に相溶性でなければならないことを示す。好ましくは、「薬学的に許容される」という用語は、化合物または組成物、典型的にかつ好ましくは溶媒和物、共結晶または担体が、典型的にかつ好ましくは製剤において使用されるとき、または典型的にかつ好ましくはそれを用いて動物、好ましくはヒトを治療するのに使用されるとき、他の成分、典型的にかつ好ましくは本発明の組成物と化学的にかつ中毒学的に相溶性でなければならないことを示す。医薬組成物は、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy", Pharmaceutical Press, 22nd editionに公表されている技法など当業者に公知である技法によって製剤化することができると認められている。
【0039】
「溶媒和物」は、1個または複数の溶媒分子とジミラセタムの(R)-エナンチオマー(1)またはジミラセタムの(S)-エナンチオマー(2)との会合体または複合体を指す。溶媒和物を形成する溶媒の例としては、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を指す。
【0040】
「共結晶」は、周囲条件下においてそれらの純粋な形で固体である異なる少なくとも2つの化合物を含む結晶構造を指す。異なる少なくとも2つの化合物は、(R)-ジミラセタム(1)および/もしくは(S)-ジミラセタム(2)ならびに/または組成物のいずれか別の成分もしくは医薬組成物の賦形剤を含むことができる。共結晶は、中性分子種から作製され、すべての種は結晶化後も中性のままである。さらに、典型的にかつ好ましくは、それらは、2つ以上のビルディング化合物が定義された化学量論比で存在する結晶性均質相材料である。この点に関して、Wang Y and Chen A, 2013;およびSpringuel GR, et al., 2012;ならびに米国特許第6,570,036号を参照のこと。(R)-ジミラセタム(1)および/または(S)-ジミラセタム(2)は、いずれかの多形体の形をとり得ることが理解されるべきである。様々な共結晶およびそのような共結晶を調製する技法については、RSC Drug Discovery, Pharmaceutical Salts and Co-crystals, published in 2012 by the Royal Society of Chemistry and edited by Johan Wouters and Luc Quere, in particular in chapters 15 and 16に記載されている。共結晶形成剤の好ましい例は、この参考文献の表16.1で開示されているものである。さらにより好ましい共結晶には、α-ヒドロキシ酸、α-ケト酸および/またはα-ケトアミドと本明細書に開示される(R)と(S)の比のジミラセタムエナンチオマーとの共結晶が含まれる。α-ヒドロキシ酸の例としては、アトロラクチン酸、ベンジル酸、4-クロロマンデル酸、クエン酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、エチルピルベート、ガラクツロン酸、グルコノラクトン、グルクロン酸、グルクロノラクトン、グリコール酸、2-ヒドロキシブタン酸、2-ヒドロキシペンタン酸、2-ヒドロキシヘキサン酸、2-ヒドロキシヘプタン酸、2-ヒドロキシオクタン(hydroxyactanoic)酸、2-ヒドロキシノナン酸、2-ヒドロキシデカン酸、2-ヒドロキシウンデカン酸、4-ヒドロキシマンデル酸、3-ヒドロキシ-4-メトキシマンデル酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシマンデル酸、α-ヒドロキシアラキドン酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシラウリン酸、α-ヒドロキシミリスチン酸、α-ヒドロキシパルミチン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、3-(2’-ヒドロキシフェニル)乳酸、3-(4’-ヒドロキシフェニル)乳酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、メチル乳酸、メチルピルベート、粘液酸、α-フェニル酢酸、α-フェニルピルビン酸、ピルビン酸、糖酸、酒石酸およびタルトロン酸が挙げられる。α-ケト酸の例としては、2-ケトエタン酸(グリオキシル酸)、メチル2-ケトエタノエート、2-ケトプロパン酸(ピルビン酸)、メチル2-ケトプロパノエート(メチルピルベート)、エチル2-ケトプロパノエート(エチルピルベート)、プロピル2-ケトプロパノエート(プロピルピルベート)、2-フェニル-2-ケトエタン酸(ベンゾイルギ酸)、メチル2-フェニル-2-ケトエタノエート(ベンゾイルギ酸メチル)、エチル2-フェニル-2-ケトエタノエート(ベンゾイルギ酸エチル)、3-フェニル-2-ケトプロパン酸(フェニルピルビン酸)、メチル3-フェニル-2-ケトプロパノエート(メチルフェニルピルベート)、エチル3-フェニル-2-ケトプロパノエート(エチルフェニルピルベート)、2-ケトブタン酸、2-ケトペンタン酸、2-ケトヘキサン酸、2-ケトヘプタン酸、2-ケトオクタン酸、2-ケトドデカン酸およびメチル2-ケトオクタノエートが挙げられる。α-ケトアミドの例としては、α-ケト酸の上記の例のいずれか1つを第一級または第二級アミンと反応させることによって得られ得るいずれかの化合物が挙げられる。
【0041】
第1の態様において、本発明は、(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))および(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))、
【0042】
【化4】
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
前記(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)が30%以上、60%以下である、組成物を提供する。この組成物、ならびに本発明によるいずれか他の組成物および医薬組成物は、好ましくはNMDA+グリシンによって惹起されるラット脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸遊離を約10nMの濃度で少なくとも約36%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約45%、さらにより好ましくは約50%阻害する。このパラメータを測定するアッセイは、例5に記載される。
【0043】
そのような組成物の一例は、3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオンの非ラセミ混合物およびその薬学的に許容される溶媒和物または共結晶であり、前記非ラセミ混合物は、(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))および(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))を30%以上、60%以下の前記(R)-ジミラセタム1のエナンチオマー過剰率(ee)で含む。
【0044】
【化5】
典型的に、非溶媒和または非共結晶化組成物が好ましい。さらに好ましいのは、非溶媒和および非共結晶化組成物である。
したがって、別の態様において、本発明は、3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオンの組成物であって、(R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))および(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))を30%以上、60%以下の前記(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)で含む組成物を提供する。
【0045】
より好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は30%以上、約54%以下である。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は30%以上、54%以下である。
より好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は約33%以上、約54%以下である。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は33%以上、54%以下である。
より好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は30%以上、約53%以下である。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は30%以上、53%以下である。
より好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は約33%以上、約53%以下である。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は33%以上、53%以下である。
さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は約33%以上、約50%以下である。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は33%以上、50%以下である。
【0046】
より好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は約30%以上、約50%以下である。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は30%以上、50%以下である。
より好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は約35%以上、約54%以下、好ましくは約53%以下である。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は35%以上、54%以下、好ましくは53%以下である。
より好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は約40%以上、約54%以下、好ましくは約53%以下である。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は40%以上、54%以下、好ましくは53%以下である。
より好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は約45%以上、約54%以下、好ましくは約53%以下である。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は45%以上、54%以下、好ましくは53%以下である。
【0047】
さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は、約33%、約35%、約37%、約39%、約41%、約43%、約45%、約47%、約50%および約53%から選択される。さらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は、33%、35%、37%、39%、41%、43%、45%、47%、50%および53%から選択される。
いっそうさらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は約50%から選択される。
いっそうさらにより好ましくは、前記(R)-ジミラセタム(1)の前記エナンチオマー過剰率(ee)は50%である。
【0048】
当業者に公知であるように、エナンチオマー過剰率の代わりに、(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の比を参照することができる。(R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の比の好ましい範囲は、2:1~3.5:1、好ましくは2:1~3.3:1、より好ましくは2.0:1.0~3.3:1.0、さらにより好ましくは2.00:1.00~3.30:1.00である。別の好ましい範囲は、2.0:1.0~3.25:1.0、2.00:1.00~3.25:1.00、2:1~3:1、2.0:1.0~3.0:1.0および2.00:1.00~3.00:1.00である。別の好ましい範囲には、2.3:1~3.3:1、2.6:1~3.3:1、2.7:1~3.2:1、2.8:1~3.2:1、2.9:1~3.1:1、ならびに3:1および3.0:1.0が含まれる。他の好ましい範囲には、2.1:1~2.9:1、2.2:1~2.8:1、2.3:1~2.7:1、2.4:1~2.6:1、ならびに2.5:1および2.5:1.0が含まれる。
【0049】
別の態様において、本発明は、本発明の組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
別の態様において、本発明は、(R)-ジミラセタム(1)および(S)-ジミラセタム(2)と、(R)-ジミラセタム(1)および(S)-ジミラセタム(2)を組み合わせて、30%以上、60%以下の前記(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)を得るための指示書とを含むパーツのキットを提供する。以下において、本発明の組成物の使用が記載されているときはいつでも、本発明によるキットを代わりとして使用し得ることを理解すべきである。当業者は、キットの成分を投与前に組み合わせることができ、これが好ましく、またはキットの成分を別々に投与することができることを理解する。後者の場合、本発明の効果を達成するためには、キットの成分を典型的に多くとも30分の時間範囲内で投与すべきである。
【0050】
さらに別の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、以下に記載するものなど多数の疾患および障害の治療または予防における使用のための本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを提供する:
a)脊髄もしくは高次脳構造または神経細胞経路の増感を伴っている一次性アロディニア、二次性アロディニア、または他の疼痛もしくは不快感を含めて、化学療法、細菌発育抑制療法、ウイルス感染およびウイルス治療、疱疹後神経痛、骨壊死、三叉神経痛、または糖尿病性末梢神経障害を伴っているものなど、低温感受性(cold sensitivity)ヒリヒリする感覚(tingling sensation)焼けるような感覚(burning sensation)、またはうずくような感覚(aching sensation)を含めて、末梢神経障害の陽性症状の予防または治療のため;
b)骨および関節痛、骨壊死疼痛、反復運動疼痛、歯痛、月経困難症疼痛、がん性疼痛、筋筋膜痛、外科的疼痛、周術期疼痛、および乳房切除後症候群、開胸術後症候群、または断端痛などの術後疼痛症候群、ならびにアンギナを伴っている疼痛、神経腫疼痛、複合性局所疼痛症候群、慢性骨盤痛、慢性腰痛を含めて、疼痛の予防または治療のため;
c)変形性関節症、関節リウマチ、リウマチ性疾患、慢性関節炎痛および関連神経痛、腱鞘炎ならびに痛風などの炎症性疼痛の予防または治療のため;
d)化学療法誘発性疼痛、外傷後損傷疼痛、挫傷痛、有痛性外傷性単神経障害、有痛性多発神経障害、脊椎損傷、腰痛、神経圧迫または絞扼によって生ずる疼痛、仙骨痛、三叉神経痛、片頭痛、疱疹後神経痛、幻肢疼痛、疱疹後疼痛、糖尿病性神経障害、末梢神経系のいずれかのレベルにおける病変によって引き起こされる中枢性疼痛症候群などの神経障害性疼痛の予防または治療のため;
e)神経精神障害の予防または治療のため。神経精神障害の例としては、統合失調症、統合失調症を含む精神病、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想性障害、短期精神病性障害、物質関連障害、妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症または型分類困難な統合失調症、物質誘発性精神病性障害、物質関連障害および嗜癖行動が挙げられる;
f)焦点性および全般性の両方の癲癇および他の発作;
g)過剰食物摂取、神経性過食症を伴っている肥満または他の摂食障害;
h)脳卒中、脳水腫、脳虚血、脳出血、神経変性疾患、心臓バイパス手術および移植、周産期低酸素症、心停止、ならびに低血糖性脳損傷の後に起こる脳障害;
i)不眠、ナルコレプシー、または下肢静止不能障害などの睡眠障害;
j)感情障害、パニック発作、パニック障害、急性ストレス障害、広場恐怖症、全般不安障害、強迫性障害、外傷後ストレス障害、分離不安障害、社交恐怖症、特定恐怖症、物質誘発性不安障害などの不安障害;
k)うつ病、快感消失、単極性うつ病、双極性障害、精神病性うつ病などの気分障害;
l)物質嗜癖、薬物依存、アルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚薬、吸入剤、ニコチン、オピオイド、フェンシクリジン、鎮静薬、催眠薬または抗不安薬を含めて物質耐性、依存または離脱;
m)アルツハイマー病、虚血、外傷、血管の問題または脳卒中、HIV疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト-ヤコブ病、化学療法、周産期低酸素症、他の医学的全身状態または物質乱用を伴っている異なるタイプの認知症などの加齢性認知機能低下または認知障害など認知機能の障害;
n)薬物誘発性パーキンソニズムを含めてパーキンソン病、または脳炎後パーキンソニズム;
o)注意欠陥多動性障害(ADHD)、強迫性障害、恐怖症、外傷後ストレス症候群、自閉症および自閉症スペクトラム障害、衝動制御障害などの注意欠陥障害;
p)耳鳴り、老人性難聴;
q)学習および記憶を増強するため;
r)遺伝性または散発性運動ニューロン障害の予防または治療のため。それらの例としては、筋萎縮性側索硬化症、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮症、進行性球麻痺、フリードライヒ運動失調症、脆弱X症候群が挙げられる;
s)運動障害の予防または治療のため。それらの例としては、ジストニア、ハンチントン舞踏病を含めて舞踏病、パーキンソン病関連ジストニア、クロイツフェルト-ヤコブ病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、大脳基底核石灰化が挙げられる;
t)無動性硬直症候群などの無動症のため、
u)神経遮断薬誘発性パーキンソニズムなどの薬物誘発性パーキンソニズム、神経遮断性悪性症候群、神経遮断薬誘発性急性ジストニア、神経遮断薬誘発性急性静坐不能、神経遮断薬誘発性遅発性ジスキネジアならびに安静時振戦、姿勢時振戦および企図振戦を含めて、薬物誘発性姿勢時振戦、舞踏病(シデナム舞踏病、ハンチントン病、良性遺伝性舞踏病、神経有棘赤血球症、症候性舞踏病、薬物誘発性舞踏病およびヘミバリスムなど)、全般性または焦点性ミオクローヌス、チック(単純性チック、複雑性チックおよび症候性チックを含む)、およびジストニア(突発性ジストニア、薬物誘発性ジストニア、症候性ジストニアおよび発作性ジストニアなどの全般性ジストニア、ならびに眼瞼痙攣、顎口腔ジストニア、痙攣性発声障害、痙性斜頸、軸性ジストニア、ジストニアの書痙および片麻痺性ジストニアなどの局所性ジストニアを含む)、筋痙攣、ならびに振戦を含めて筋痙縮または脱力を伴っている障害などのジスキネジアのため;
v)ならびに尿失禁、多系統萎縮症、結節性硬化症、オリーブ-橋-小脳萎縮症、脳性麻痺、薬物誘発性視神経炎、虚血性網膜症、糖尿病網膜症、緑内障、痙縮、ミオクローヌス、およびトゥレット症候群を伴っているジスキネジアのため。
上記の疾患リストは、具体例として記載しているにすぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解すべきである。上記のうち、好ましいのは、a)、e)、q)、r)、およびs)から選択される1つまたは複数である。
【0051】
疾患または障害は、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択される。
さらに、本発明の組成物は、健常対象における学習および記憶を増強するために、例えば非治療的使用の形で使用することもできる。
さらに別の態様において、本発明は、疾患または障害の治療および/または予防の方法であって、疾患または障害が、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択され、前記方法が、本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットを投与するステップを含む、方法を提供する。
【0052】
本発明の一部分は、疾患または障害の治療の方法であって、治療有効量の本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットが、それを必要とする動物、好ましくはヒトに投与される、方法を提供することでもある。ここで「治療有効量」という用語は、治療される状態または疾患の症状の1つまたは複数をモジュレートするのに十分な量を指し、好ましくは投与1回当たり10mg~3000mgの間、経口経路により1日1回または1日2回または1日3回投与される。さらに、本発明の一部分は、疾患または障害の予防の方法であって、治療有効量の本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットが、それを必要とすると合理的に予想される動物、好ましくはヒトに投与される、方法を提供することでもある。ここで「治療有効量」という用語は、回避されるべき状態または疾患の予想される症状の1つまたは複数をモジュレートするのに十分な量を指し、好ましくは投与1回当たり10mg~3000mgの間、経口経路により1日1回または1日2回または1日3回投与される。
【0053】
さらに別の態様において、本発明は、疾患または障害の治療および/または予防において使用するための医薬品の製造における本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットの使用であって、疾患または障害が、典型的にかつ好ましくは末梢性感覚神経障害から選択され、好ましくは末梢神経障害性疼痛および末梢性感覚神経障害の他の症状;ならびに発作などの神経精神状態;うつ病;または認知障害;および筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患から選択される、使用を提供する。
【0054】
本発明の一部分は、本発明の組成物または本発明の医薬組成物を、副作用として末梢神経障害性疼痛および末梢神経障害の他の症状の暴動を呈する活性成分および活性剤、特に抗腫瘍薬および抗ウイルス薬をそれぞれ伴って投与することでもある。組成物または医薬組成物またはキットは、好ましくは単独でまたは少なくとも1つの抗腫瘍薬もしくは少なくとも1つの抗ウイルス薬と共に使用される。より好ましくは、組成物または医薬組成物またはキットは単独で使用される。より好ましくは、組成物または医薬組成物またはキットは、少なくとも1つの抗腫瘍薬と共に使用される。あるいは、好ましくは、組成物または医薬組成物またはキットは、少なくとも1つの抗ウイルス薬と共に使用される。
【0055】
組成物または医薬組成物またはキットは、少なくとも1つの抗腫瘍薬または少なくとも1つの抗ウイルス薬を伴って投与されることがさらにより好ましく、前記少なくとも1つの抗腫瘍薬または前記少なくとも1つの抗ウイルス薬を伴った前記組成物または前記医薬組成物の前記投与は、並行、同時、連続または別個の投与である。
【0056】
そのような抗腫瘍薬の限定されない例は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択される。そのような抗ウイルス薬の限定されない例は、ヌクレオシド類似体またはヌクレオチド類似体から選択される。前記抗腫瘍薬は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択されることがさらにより好ましい。前記抗腫瘍薬は、好ましくはソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンから選択される。前記抗ウイルス薬は、好ましくはザルシタビン、ジダノシン、スタブジンおよびジドブジンから選択される。
【0057】
組成物または医薬組成物またはキットは、好ましくは少なくとも1つの抗ウイルス薬と共に使用され、前記抗ウイルス薬が好ましくはヌクレオシドまたはヌクレオチドから選択され、さらに好ましくはザルシタビン、ジダノシン、スタブジンまたはジドブジンから選択される。
前記疾患または障害は、好ましくは発作である。あるいは、前記疾患または障害は、好ましくはうつ病である。さらに好ましくは、前記疾患または障害は、認知障害である。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、末梢性感覚神経障害である。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、末梢神経障害性疼痛である。
前記疾患または障害は、より好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、(i)糖尿病性神経障害、(ii)疱疹後神経障害、(iii)腰痛、(iv)仙骨痛、(v)外科的疼痛、(vi)圧挫損傷、(vii)脊椎損傷、(viii)複合性局所疼痛症候群、(ix)幻肢感覚、(x)変形性関節症を伴っている末梢性感覚神経障害、(xi)関節リウマチを伴っている末梢性感覚神経障害、(xii)自己免疫性骨関節症を伴っている末梢性感覚神経障害、(xiii)頭痛、(xiv)線維筋痛、(xv)細菌発育抑制療法によって誘発される末梢性感覚神経障害、(xvi)化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、(xvii)内蔵損傷を伴っている末梢性感覚神経障害、(xviii)骨壊死を伴っている末梢性感覚神経障害、(xix)ヒト免疫不全ウイルス感染を伴っている末梢性感覚神経障害、および(xx)抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害からなる群から選択される。
【0058】
前記疾患または障害は、好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、(i)糖尿病性神経障害、(ii)疱疹後神経障害、(iii)腰痛、(iv)仙骨痛、(v)外科的疼痛、(vi)圧挫損傷、(vii)脊椎損傷、(viii)複合性局所疼痛症候群、(ix)幻肢感覚、(x)変形性関節症を伴っている末梢性感覚神経障害、(xi)関節リウマチを伴っている末梢性感覚神経障害、(xii)自己免疫性骨関節症を伴っている末梢性感覚神経障害、(xiii)頭痛、(xiv)線維筋痛、(xv)細菌発育抑制療法によって誘発される末梢性感覚神経障害、(xvi)化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、(xvii)内蔵損傷を伴っている末梢性感覚神経障害、(xviii)骨壊死を伴っている末梢性感覚神経障害、(xix)ヒト免疫不全ウイルス感染を伴っている末梢性感覚神経障害、(xx)抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、および(xxi)末梢神経障害性疼痛からなる群から選択される。
【0059】
前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、糖尿病性神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、疱疹後神経障害である。前記疾患または障害は、好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、腰痛である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、仙骨痛である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、外科的疼痛である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、圧挫損傷である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、脊椎損傷である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、複合性局所疼痛症候群である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、幻肢感覚である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、変形性関節症を伴っている末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、関節リウマチを伴っている末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、自己免疫性骨関節症を伴っている末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、頭痛である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、線維筋痛である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、細菌発育抑制療法によって誘発される末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、内蔵損傷を伴っている末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、骨壊死を伴っている末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、ヒト免疫不全ウイルス感染を伴っている末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害である。前記疾患または障害は、さらに好ましくは末梢性感覚神経障害であり、前記末梢性感覚神経障害は、末梢神経障害性疼痛である。
【0060】
前記末梢性感覚神経障害は、好ましくは化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害から選択される。
【0061】
前記疾患または障害は、さらにより好ましくは化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、典型的にかつ好ましくは、前記化学療法剤は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイドおよび白金塩からなる群から選択される。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、前記化学療法剤は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイドおよび白金塩からなる群から選択される。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、前記化学療法剤は、ソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチン、またはオキサリプラチンからなる群から選択される。前記疾患または障害は、さらにより好ましくは化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、前記化学療法剤は、ソラフェニブ、ビンクリスチン、パクリタキセル、またはオキサリプラチンからなる群から選択される。非常に好ましくは、前記末梢性感覚神経障害は化学療法剤によって誘発され、前記化学療法剤は、ソラフェニブ、パクリタキセル、ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチンである。
【0062】
さらに好ましくは、前記疾患または障害は、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、好ましくは、前記抗ウイルス剤は、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤である。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、前記抗ウイルス剤は、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジンまたはジドブジンから選択される。さらにより好ましくは、前記疾患または障害は、ザルシタビンによって誘発される末梢性感覚神経障害である。
好ましくは、前記化学療法誘発性末梢性感覚神経障害は、アロディニアまたは感覚異常の症状、より好ましくは手または足のアロディニアまたは感覚異常、さらに好ましくはソラフェニブ、ビンクリスチン、パクリタキセル、またはカルボプラチン、シスプラチン、もしくはオキサリプラチンによって誘発される手または足のアロディニアまたは感覚異常を伴う。
さらにより好ましくは、前記末梢性感覚神経障害は、疼痛、異常感覚、感覚異常またはアロディニアを伴う。
さらに好ましくは、本発明の組成物または本発明の医薬組成物を、抗腫瘍性化学療法剤成分が末梢性感覚神経障害およびその付随症状を誘発する前に予防的に投与することができる。
さらに好ましくは、本発明の組成物または本発明の医薬組成物を間欠的に投与することができる。さらに、本発明において、本発明の組成物または本発明の医薬組成物を、抗腫瘍性化学療法剤成分の繰り返しサイクルと同調させて投与することができることが好ましい。
【0063】
用量は、特定の患者または対象に個々のレジメンおよび用量レベルを決定するとき担当医によって普通考慮される投与経路、疾患の重症度、患者または対象の年齢および質量ならびに他の因子に依存する。
【0064】
本発明の組成物または医薬組成物は、経口、筋肉内、皮下、局所、経皮、鼻腔内、静脈内、舌下または直腸内投与を含めて、いずれの経路によっても投与することができる。典型的にかつ好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口経路により単回用量単位で1日1回、1日2回または1日3回、最も好ましくは1日1回または1日2回投与される。最も好ましい実施形態において、本発明の組成物または医薬組成物は、1日2回投与される。
【0065】
典型的にかつ好ましくは、本発明の組成物または本発明の医薬組成物の経口用量は、投与1回当たり10mg~3000mgの間、より好ましくは投与1回当たり20mg~2000mgの間、さらにより好ましくは投与1回当たり50mg~1000mgの間である。典型的にかつ好ましくは、前記組成物または前記医薬組成物は、投与1回当たり10mg~3000mgの間、より好ましくは投与1回当たり20mg~2000mgの間、さらにより好ましくは投与1回当たり50mg~1000mgの間の用量で1日2回経口投与される。
【0066】
本発明の医薬組成物は、当業者に公知の好適に選択された薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、アジュバント、添加剤、界面活性剤、乾燥剤または希釈剤を混合することによって調製することができ、経口、非経口または局所投与に好適に適応させることができる。典型的にかつ好ましくは、本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル、サシェ、粉末、顆粒、ペレット、経口または非経口用溶液、懸濁液、坐剤、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、ペーストの形で投与され、かつ/またはリポソーム、ミセルおよび/もしくはミクロスフェアを含むことができる。
本発明の医薬組成物の薬学的に許容される担体は、限定されることなく、いずれかの薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、アジュバント、添加剤、界面活性剤、乾燥剤または希釈剤である。好適な薬学的に許容される担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターである。本発明の薬学的に許容される担体は、固体、半固体または液体であり得る。
【0067】
経口投与のための錠剤、カプセルまたはサシェは通常、用量単位で供給され、結合剤、充填剤、希釈剤、錠剤形成剤、滑沢剤、洗浄剤、崩壊剤、着色剤、フレーバーおよび湿潤剤などの通常の賦形剤を含むことができる。錠剤は、当技術分野において周知の方法に従ってコーティングしてもよい。好適な充填剤としては、好ましくはセルロース、マンニトール、ラクトースおよび同様の薬剤を含み、またはそれらである。好適な崩壊剤としては、好ましくはデンプン、ポリビニルピロリドン、およびデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体を含み、またはそれらである。好適な滑沢剤としては、好ましくは例えばステアリン酸マグネシウムを含み、またはそれである。好適な湿潤剤としては、好ましくはラウリル硫酸ナトリウムを含み、またはそれである。これらの経口用固体組成物は、通常の混合、充填または打錠方法で調製することができる。混合操作を繰り返して、大量の充填剤を含む組成物に活性剤を分散させることができる。これらの操作は通常の操作である。
【0068】
経口用液体組成物は、例えば水性溶液、乳濁液、シロップもしくはエリキシルの形で、または使用時に水もしくは好適な液体担体で再構成させる乾燥製品の形で提供することができる。液体組成物は、懸濁化剤、例えばソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素化食用脂肪;乳化剤、例えばレシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアカシア;非水性担体(食用油を含むことができる)、例えばアーモンド油、分留ヤシ油、グリセリンエステルなどの油性エステル、プロピレングリコールまたはエチルアルコール;保存剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸、および望むなら、通常のフレーバーまたは着色剤など通常の添加剤を含むことができる。経口製剤としては、錠剤または顆粒などの通常の製剤を挙げることもでき、またはそれらとして製剤化することができる。非経口投与には、本発明の組成物および無菌担体を含む液体用量単位を調製することができる。
経口製剤は、経口製剤の風味認識を最適化するために風味マスキング成分をさらに含んでもよい。そのような風味マスキング成分の例は、当業者に公知の、柑橘、甘草、ミント、ブドウ、クロフサスグリまたはユーカリベースフレーバラントであり得る。
非経口溶液は通常、化合物を担体に溶解し、濾過により滅菌した後に、好適なバイアルまたはアンプルに充填し、密封することによって調製される。
【0069】
局所麻酔薬、保存剤および緩衝剤などのアジュバントは、医薬組成物に添加することができる。安定性を高めるために、組成物をバイアルに充填した後に凍結させ、真空下で水を除去することができる。本発明の組成物の一様分布を促進するために、界面活性剤または保水剤を医薬組成物に有利に含めることができる。
局所製剤は、好ましくは軟膏、クリーム、ローション、ゲル、ゴム、溶液、ペーストを含み、もしくはそれらであり、またはリポソーム、ミセルもしくはミクロスフェアを含むことができる。
【0070】
本発明の組成物または医薬組成物によって治療される対象は、ヒトおよび動物である。好ましい動物は家畜であり、モルモット、ウサギ、ウマ、ロバ、ラクダ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ネコ、イヌおよびオウムを含むが、これらに限定されない。より好ましい対象は、哺乳動物であり、さらにより好ましくはヒトである。
さらに別の態様において、本発明は、本発明の組成物または本発明の医薬組成物または本発明のキットと、容器またはパッケージと、添付文書などの書面による説明および投与指示書とを含む製品を提供する。
【0071】
(R)-ジミラセタムまたは(S)-ジミラセタムと、アニラセタム、ブリバラセタム、セバラセタム、コルラセタム、ドリラセタム、デュプラセタム、エチラセタム/レベチラセタム、ファソラセタム、イムラセタム、メチルフェニルピラセタム、ネブラセタム、ネフィラセタム、オムベラセタム(ヌーペプト)、オキシラセタム、フェニルピラセタム、フェニルピラセタムヒドラジド、ピラセタム、プラミラセタム、ロリプラム、ロルジラセタムおよび/またはセレトラセタムなどの他のラセタムとの組成物は、特に(R)-ジミラセタムまたは(S)-ジミラセタムと他のラセタムまたは他のラセタムのエナンチオマーの比が(R)-ジミラセタムと(S)-ジミラセタムの混合物について本明細書に開示される範囲内で選択される場合に、相乗的混合物および組成物を調製するために使用することもできることがさらに想定される。
(R)-ジミラセタムまたは(S)-ジミラセタムと、米国特許第7544705号または米国特許第8334286号で開示されたものなどジミラセタムの他の誘導体との組成物は、特に(R)-ジミラセタムとジミラセタム様化合物またはジミラセタム様化合物のエナンチオマーの比が(R)-ジミラセタムと(S)-ジミラセタムの混合物について本明細書に開示される範囲内で選択される場合に、相乗的混合物および組成物を調製するために使用することもできることがさらに想定される。
【0072】
本発明は、疾患、損傷、または障害を治療および/または予防する方法であって、対象に請求項1に記載の組成物を投与するステップを含み、疾患、損傷、または障害が、末梢性感覚神経障害、発作、うつ病、または認知障害である、方法にも関する。本方法において、疾患、損傷、または障害は、好ましくは末梢性感覚神経障害、神経精神障害、運動ニューロン障害、または運動障害である。より好ましくは、疾患、損傷、または障害は、末梢性感覚神経障害である。末梢性感覚神経障害は、好ましくは末梢神経障害性疼痛である。末梢性感覚神経障害は、好ましくは糖尿病性神経障害、疱疹後神経障害、腰痛、仙骨痛、外科的疼痛、圧挫損傷、脊椎損傷、複合性局所疼痛症候群、幻肢感覚、変形性関節症を伴っている末梢性感覚神経障害、関節リウマチを伴っている末梢性感覚神経障害、自己免疫性骨関節症を伴っている末梢性感覚神経障害、頭痛、線維筋痛、細菌発育抑制療法によって誘発される末梢性感覚神経障害、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、内蔵損傷を伴っている末梢性感覚神経障害、骨壊死を伴っている末梢性感覚神経障害、ヒト免疫不全ウイルス感染を伴っている末梢性感覚神経障害、末梢神経障害性疼痛、または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害から選択される。場合によっては、末梢性感覚神経障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害である。いくつかの場合において、末梢性感覚神経障害は、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、化学療法剤は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択され、好ましくはソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンから選択される。場合によっては、末梢性感覚神経障害は、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、抗ウイルス剤は、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤である。場合によっては、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤は、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、またはジドブジンである。
【0073】
場合によっては、方法は、抗腫瘍薬を投与するステップをさらに含み、抗腫瘍薬は、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択される。場合によっては、抗腫瘍薬は、ソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンからなる群から選択される。場合によっては、方法は、抗ウイルス薬を投与するステップをさらに含み、抗ウイルス薬は、ヌクレオシドまたはヌクレオチドである。場合によっては、抗ウイルス薬は、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、またはジドブジンである。場合によっては、組成物は、投与1回当たり10mg~3000mgの間、投与1回当たり20mg~2000mgの間、または投与1回当たり50mg~1000mgの間の用量で1日2回経口投与される。
【0074】
本発明はさらに、学習および記憶を増強する方法であって、本明細書に記載される本発明の組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。本方法の一部の場合では、対象は、健常対象である。
【0075】
本明細書に引用された非特許参考文献は、第一著者に刊行年を添えて略記する。完全な引用文献を以下に列挙する。
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【実施例
【0076】
本発明の例は、単に例示のためであり、限定するためのものではない。ラセミのジミラセタム、(R)-ジミラセタム、および(S)-ジミラセタムの試料は、市販の出発物質、すなわち下記を使用して合成することができる:
米国特許第5,200,406号に記載されているR,S-ジミラセタムの調製:
【0077】
【表2】

国際公開第2012/013640号に記載されているR,S-ジミラセタムの調製:
【0078】
【表3】

国際公開第93/09120号に記載されているR-ジミラセタムの調製:
【0079】
【表4】

国際公開第93/09120号に記載されているS-ジミラセタムの調製:
【0080】
【表5】

これらの市販の供給物は、当業者に周知の準備合成方法および技法を使用して、さらに精製することなく供給元から受け入れたままの状態で使用することができる。
【0081】
(例1)
ジミラセタムの組成物の合成
(R)-および(S)-ジミラセタムならびにジミラセタムのラセミ混合物は、国際公開第93/09120号;Pinza et al., 1993;および国際公開第2012/013640号、ならびにCamilleri et al., 1993に記載されている方法に従って調製した。合成された(R)-および(S)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率は、Camilleri et al., 1993に記載されているように決定した。(R)-および(S)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率は、本発明の組成物を調製するために別々に使用されるとき、各エナンチオマーについて96%以上であった。
30%以上ee(過剰(R))および60%以下ee(過剰(R))の所望のエナンチオマー過剰率、ならびに本発明による他の所望の特定の組成物を達成するには、当業者に公知のいくつかの方法を適用することができる。例えば、個々のエナンチオマーを混合することによって、またはジミラセタムのラセミ体をそれぞれの量の(R)-ジミラセタムと混合することによって、前記組成物を調製した。さらに、ラセミのジミラセタムから出発して、(S)-エナンチオマーの一部分または全部を、分取キラルカラムクロマトグラフィーによって除去することができる。
【0082】
(例2)
ラット脊髄シナプトソームからのNMDA+グリシン誘発性グルタメート遊離の阻害
神経伝達物質遊離実験
グリアの混入物がないラット脊髄シナプトソームは、Nakamura et al., 1993の方法の改変であるPaluzzi S. et al., 2007の方法に従って、以下の通り調製した。
90~130日齢のSprague-Dawleyラットを使用した。動物を、一定温度(22±1℃)および相対湿度(50%)で規則的な明暗スケジュール(照明7.00am~7.00pm)下に収容した。飼料および水は、自由摂取させた。
【0083】
ラットを断頭により屠殺し、脊髄全体を迅速に取り出し、4℃で維持した。ガラス-テフロン製組織グラインダー(クリアランス0.25mm)を使用して、ラット脊髄を、pH7.4で緩衝した氷冷0.32Mスクロース10体積(10ml中組織1g)中でホモジナイズした(90rpm;2分で24回の上下ストローク)。ホモジネートを遠心して(4℃で5分、1000g)、核および砕片を除去し、不連続Percoll(登録商標)(Sigma Aldrich社、St Louis、MO、USA)勾配(Tris緩衝スクロース中2、6、10および20v/v%)を用いて、上清を0~4℃で穏やかに層別化し、33,500gで5分間遠心した。10%Percollと20%Percollの間の層(すなわち、シナプトソーム画分)を回収し、以下の組成(mM)を有する生理的媒体中で遠心分離によって洗浄した:NaCl、140;KCl、3;MgSO4 1.2;NaH2PO4、1.2;NaHCO3 5;CaCl2 1.2;HEPES10;グルコース、10;pH7.4。タンパク質含有量は、Bradford MM, 1976に従ってウシ血清アルブミンを標準として用いて測定した。
【0084】
シナプトソーム(タンパク質約70μg)を、2.5mLの0.05μM[3H]-D-アスパルテート([3H]-D-Asp;Perkin Elmer Italia社、Monza、Milano、Italy)中、37℃で15分間インキュベートした。次いで、37℃に保った生理的媒体を用いて、懸濁液を122.5mLに希釈し、このシナプトソーム懸濁液の5mLアリコートを、37℃に保った25mLの平行スーパーフュージョンチャンバ24個1組(Superfusion system、Ugo Basile社、Comerio、Varese、Italy)の底部に配置された微多孔性フィルター上で層形成した。次いで、生理的媒体を用いて、スーパーフュージョンを速度0.5mL/分で開始し、46分間継続した。t=37分で開始し、9つの連続した1分濾液試料を回収した。回収した第1の試料の終わりに、NMDA(10μM)およびグリシン(1μM)を導入し、実験の終わりまで維持した。
【0085】
Ultima Goldシンチレーション液(Perkin-Elmer Milan社、Italy)を使用して、各濾液試料に含まれている放射能をシンチログラフィー法によって測定した。3mLのシンチレーション液を添加することによって、それぞれ0.5mLの試料全体を放射能について計数した。
各試料において測定されたトリチウム含有量は、画分のパーセント(すなわち、それぞれの回収期間の始まりにおける全[3H]含有量に対する各試料の含有量%)として表した。(NMDAの最大効果に達した)7番目の回収画分における流出物と1番目の画分(基礎遊離、NMDA+グリシンの適用より前)の流出物との間の比を算出することによって、薬物効果を評価した。この比を、対照条件下で得られた同じ7番目および1番目の画分比と比較した。
【0086】
シナプトソーム画分におけるNMDA誘発性グルタメート遊離に対する効果
ラット脊髄シナプトソームからのNMDA+グリシン誘発性神経伝達物質遊離に対するラセミおよび非ラセミのジミラセタム混合物の考え得る効果を評価した。
ジミラセタムエナンチオマーの(R):(S)比2:1に対応する33.3%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物は、NMDA+グリシンによって惹起されるラット脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸遊離をIC50推定値10nMで阻害し(図1A)、ジミラセタムエナンチオマーの(R):(S)比3:1に対応する50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する本発明の組成物は、NMDA+グリシンによって惹起されるラット脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸遊離をIC50推定値1nM未満で阻害する(図1B)。比較すると、ラセミのジミラセタム、すなわち(R):(S)が1:1は、NMDA+グリシンによって惹起されるラット脊髄シナプトソームからの[3H]-D-アスパラギン酸遊離をIC50推定値14.6nMで阻害し(図1C;表1)、(R)-ジミラセタムはIC50推定値123nMを有し(図1D)、(S)-ジミラセタムはIC50推定値418nMを有する(図1E)。
表1に、確認の実験データをさらに1組示す。
【0087】
【表6】
【0088】
(例3)
ラットの誘発性末梢神経障害性疼痛モデル
疼痛反応の評価
評価下にあるモデルによる疼痛反応のピークにおいて、被験化合物、ビヒクルおよび対照物の単一用量の効果を評価した。その後、耐性の起こり得る発生を評価するために、ラセミおよび非ラセミのジミラセタム混合物の反復投与を研究した。痛覚過敏もアロディニアも評価した。有効性の評価はすべて、ラットの処置の割付けを知らされていない担当医師によって実施された。
【0089】
Paw pressure試験(痛覚過敏)
足の機械感受性は、一定速度(32g/秒)で増加する力を及ぼすRandall & Selitto装置(Randall and Selitto, 1957)を使用して決定した。足の逃避を引き起こす刺激を、処置前および処置後の異なる時間に評価した。結果は、足の逃避の機械閾値の平均を表し、グラム数として表される。ラットの足への考え得る損傷を回避するために、加えられる最大の力を240gに設定した。単回投与プロトコルにおいて、paw pressure試験を処置前(投与前)および処置後一定間隔で行った。
【0090】
変形性膝関節症モデル
モノヨード酢酸ナトリウム(MIA)の単回関節内注射を、Fernihough J et al., 2004によって記載された方法に従ってラットの膝関節に導入した。モノヨード酢酸ナトリウム(MIA)は、投与14日後に軟骨下骨肥厚を伴っている軟骨における骨関節炎様限局性病変の形で軟骨分解を導く軟骨細胞代謝を阻害する(Guingamp et al., 1997)。したがって、このモデルは、ヒト疾患において観察されたものと同様の骨関節炎様病変および機能障害をラットにおいて容易にかつ急速に再現することができる(Guzman et al., 2003)。注射7日後に、炎症性成分は鎮静し、残っている疼痛は、事実上神経障害性疼痛とみなされる。簡潔に言えば、ラットをジエチルエーテルで深く麻酔した。後足ピンチ逃避反射の廃止に続いて、27ゲージの針を脛骨プラトーと大腿顆の間の関節腔に導入した。適切な位置に収まると、2mgのMIAを25mLの1%CMC(水中カルボキシメチルセルロース、Sigma-Aldrich社、Italy)の体積に希釈し、1つの膝関節に注射し、ラットを疼痛評価前に14日間回復させた。
動物は、MIA注射16日後に、ラセミのジミラセタム(150および300mg/kg経口投与)または(R):(S)比3:1および(R):(S)比1:3のジミラセタムの(R)および(S)エナンチオマーの組成物を150および300mg/kgで単回投与された。対照ラットは、等体積の食塩水で処置した。
【0091】
化学療法誘導性末梢性感覚神経障害-オキサリプラチンモデル
成体ラットにおいて、Cavaletti et al., 2001に従って食塩水中オキサリプラチン(Tocris社)を2.4mg/kgで1日1回、毎週連続5日間、3週間腹腔内投与すること(蓄積量36mg/kg)によって、末梢性感覚神経障害が誘発された。第1回のオキサリプラチン投与21日後から開始して、オキサリプラチン誘発性機械痛覚過敏に対するラセミのジミラセタムまたはエナンチオマーの(R):(S)比3:1に対応する50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する好ましい本発明の組成物の反復経口投与の効果を評価した。
【0092】
(例4)
ラットの末梢神経障害性疼痛モデルにおける実験の結果
1.変形性膝関節症モデル
ラセミのジミラセタムおよびジミラセタムエナンチオマーの非ラセミ混合物の様々な組成物の末梢神経障害性疼痛に対する影響は、以上で説明したモノヨード酢酸ナトリウム(MIA)のラット膝関節(変形性膝関節症モデル)への単回関節内注射後にpaw-pressure試験によって評価した。
図2は、ジミラセタムのラセミ混合物、ならびに(R)-ジミラセタムと(S)-ジミラセタムの異なる非ラセミ混合物、すなわちエナンチオマーの(R):(S)比3:1に対応する50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する好ましい本発明の組成物および(R):(S)が1:3の組成物の単一用量経口投与後のpaw-pressure試験で得られた結果を示す。50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する好ましい本発明の組成物は、モノヨード酢酸ナトリウム(MIA)の注射後のpaw-pressure試験において末梢神経障害性疼痛を低減する際に、ジミラセタムのラセミ混合物または過剰量のジミラセタムの(S)-エナンチオマー[(R):(S)が1:3]を有する混合物より効率的である。
【0093】
2.オキサリプラチンモデル
ラセミのジミラセタムまたは50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する好ましい本発明の組成物の反復経口投与後に、オキサリプラチン誘発性機械痛覚過敏を測定した。疼痛閾値を、朝の投与前にRandall & Selittoアナルゲシメータによって評価した。50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する好ましい本発明の組成物は、オキサリプラチン誘発性痛覚過敏(図3A)、アロディニア(図3B)、および低温感受性図3C)を低減する際にラセミのジミラセタムより強力である。したがって、この化学療法誘発性末梢性感覚神経障害モデルにおいても、過剰量のジミラセタムの(R)-エナンチオマーを有する本発明の組成物は、末梢神経障害性疼痛を低減する際に同量のジミラセタムのラセミ混合物より効率的である。耐性の発生は観察されなかった。
【0094】
(例5)
ラット脊髄シナプトソームにおいて添加されたNMDA+グリシンによって誘発されるプレロードされた[3H]-D-アスパルテート遊離のインビトロ阻害
ラセミのジミラセタムの阻害効力よりも優れた阻害効力を提供するジミラセタムエナンチオマーのエナンチオマー混合物の(R):(S)比の範囲を確立するために、(R):(S)が2:1~4:1の間のいくつかの混合物を10nMで試験した。これらの実験は、既に公表された方法(Fariello et al. Neuropharmacology. 2014, (81), 85-94)に従って行われた。結果を図5に示す。
さらに、データを、以下の表2に示すようにまとめることができる。
【0095】
【表7】

ここで、s.d.は標準偏差であり、s.e.は平均の標準誤差である。
このデータからわかるように、本発明による組成物、特に(R):(S)比2:1~3.3:1または前記値の中間を有する組成物は、ラセミのジミラセタムの阻害効力よりも明らかに優れている著しく改善された阻害効力を示す。
【0096】
(例6)
マウスの受動的回避パラダイムにおけるインビボ抗健忘活性
ラセミのジミラセタムならびにそのRおよびSエナンチオマーの異なる2つの混合物(それぞれ(R):(S)が2:1および(R):(S)が3:1)を、マウスの受動的回避試験において3、10および30mg/kgの用量で経口投与30分後に試験した。
【0097】
方法。試験は、Jarvik ME ad Kopp R, Psychol Rep, 21:221-224, 1967によって記載されたステップスルー法に従って行った。装置は、2コンパートメントのアクリル箱からなるものであり、明コンパートメントがギロチンドアによって暗コンパートメントに連結されている。マウスは、暗コンパートメントに入るとすぐに苦痛を与える電気ショック(0.3mA、1秒)を受ける。試験を連続2日行った。マウスを2コンパートメントの箱の明コンパートメント側に置き、暗コンパートメントに入る潜伏時間を、第1日目の訓練セッションにおいて、また24時間後、2日目の保持セッションにおいて測定した。マウスは、訓練セッションにおいて暗室に入ると罰を受け、それらの記憶力が健忘薬によって減退されない限り、翌日のセッションでそれを思い出した。訓練セッションにおいて、60秒の潜時後に暗コンパートメントに入らなかったマウスを、残りの実験から除外した。各群から、約20~30%のマウスを除外した。調査薬物はすべて、訓練セッション30分前に経口投与した。記憶混乱については、訓練セッションの完了直後に、マウスに健忘薬スコポラミンを注射した(1.5mg/kg腹腔内投与)。
ビヒクル処置マウスは、訓練セッション直後にスコポラミン注射の対照として食塩水の腹腔内注射を受けた。24時間後、試験を繰り返した(保持セッション)。2日目においては、薬物を投与しなかった。保持セッションにおいて許容された最大の進入潜時は180秒であった。結果を図6に示す。
したがって、3:1比または2:1比のR:Sエナンチオマーが使用された場合に観察された潜時は、ジミラセタムのラセミ体が使用された場合の潜時よりはるかに長かったことがわかる。
【0098】
(例7)
マウスの強制水泳(Porsolt社)試験における抗うつ活性
ラセミのジミラセタムならびにそのRおよびSエナンチオマーの2つの混合物(それぞれ、2:1および3:1)を、マウスの強制水泳(Porsolt社)試験において10、30および100mg/kgの用量で経口投与25分後に試験した。
【0099】
方法。用いた強制水泳試験は、Porsolt RD, Bertin A, Jalfre M, Arch. Int Pharmacodyn. Ther. 1977, 229:327-336に記載されている試験と同じであった。簡潔に言えば、マウスを22~23℃に保った水を12cm入れたガラスシリンダー(高さ:25cm、直径:10cm)に個別に置き、そこに6分間置いておいた。マウスは、水中に立位で浮遊し、微小運動のみを行って、その頭部を水上に出しておく場合、運動不能であると判断された。可動の期間を、6分の試験の最後の4分間に記録した。可動の期間の増加は、抗うつ薬様効果の指標であると考えられた。結果を図7に示す。
したがって、ジミラセタムの3:1比または2:1比のR:Sエナンチオマーの使用によって達成可能であったマウスの可動は、ジミラセタムのラセミ体の場合の可動より著しく高かったことがわかる。
上記を考えると、ジミラセタムの特許請求された比のR:Sエナンチオマーの効果は、ジミラセタムのラセミ体が使用された場合より明らかによい、ラット脊髄シナプトソームからのグルタメート遊離の低減、末梢神経障害性疼痛の低減、抗健忘効果および抗うつ効果を導くことがわかる。
【0100】
(例8)
ラットのオキサリプラチンモデルにおけるPaw pressure試験、Von Frey試験、および冷板試験
ラセミのジミラセタムまたは50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する好ましい本発明の組成物の反復経口投与後に、オキサリプラチン誘発性機械痛覚過敏を測定した。疼痛閾値を、朝の投与前にRandall & Selittoアナルゲシメータによって評価した(Leighton et al. Br. J. Pharmacol. 93:553-560, 1988)。28日目の朝に、さらに機械的アロディニア(Sakurai et al. Pain 147:165-74, 2009)および低温感受性も、von Freyおよび冷板試験(Di Cesare Mannelli et al. Exp Neurol 261:22-33, 2014)をそれぞれ使用して評価した。図3および表3に示すように、50%の(R)-ジミラセタムのエナンチオマー過剰率を有する好ましい本発明の組成物は、オキサリプラチン誘発性痛覚過敏、アロディニアおよび低温感受性を低減する際により強力である。したがって、この化学療法誘発性末梢性感覚神経障害モデルにおいても、過剰量のジミラセタムの(R)-エナンチオマーを有する本発明の組成物は、末梢神経障害性疼痛を低減する際にジミラセタムのラセミ混合物より効率的である。耐性の発生は観察されなかった。
【0101】
【表8】
paw pressure試験、Von Frey試験および冷板試験は、以下の通り実施した。
【0102】
Paw pressure試験
足の機械感受性は、一定速度(32g/秒)で増加する力を及ぼすRandall & Selitto装置を使用して決定した。ラットが足を逃避させた刺激を、処置前および処置後の異なる時間に評価した。結果は、機械閾値の平均を表し、グラム数として表される。動物の足への考え得るいずれかの損傷を回避するために、加えられる最大の力を240gに固定した(Leighton et al. Br. J. Pharmacol. 93:553-560, 1988)。
【0103】
Von Frey試験
ベンチの20cm上に金網床を装備した20cm×20cmのプレキシグラス箱に、動物を置いた。動物を、試験の前にその環境に15分間慣れさせた。電子式Von Freyヘアユニット(Ugo Basile社、Varese、Italy)を使用した。逃避閾値は、0~50gに及ぶ力を0.2gの精度で加えることによって評価した。断続刺激を、プラスチックチップによって網床の下から各前足の足底中央部に送り、逃避閾値を画面上に自動的に表示した。足の感受性閾値は、足の強く迅速な逃避反射を誘発するのに必要とされた最小の力と定義した。歩行運動を伴っている随意運動は、逃避反応とみなさなかった。刺激を、各後足に5秒間隔で加えた。測定を5回繰り返し、5つの測定値を平均することによって最終値を得た(Sakurai et al. Pain 147:165-74, 2009)。
【0104】
冷板試験
冷板を床として備えたステンレス箱(12cm×20cm×10cm)に、動物を置いた。冷板の温度を4℃±1℃で一定に維持した。疼痛関連行動(すなわち、後足の持ち上げおよび舐め)を観察し、最初の徴候の時間を記録した。足の持ち上げまたは舐めの潜時のカットオフ時間を60秒に設定した(Di Cesare Mannelli et al. Exp Neurol 261:22-33, 2014)。
【0105】
以上に引用されたすべての特許、刊行物、および要約は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的の実現として記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の例示にすぎないことを認識すべきである。多数の修正およびその改変は、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者に容易に明らかである。
なお、本発明としては、以下の態様も好ましい。
〔1〕 (R)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((R)-ジミラセタム(1))および(S)-3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン((S)-ジミラセタム(2))、
ならびに/またはそれらの薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶を含む組成物であって、
(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)が33%以上且つ54%以下である、組成物。
〔2〕 (R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)の比が、2:1~3.3:1である、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕 (R)-ジミラセタム(1)および/またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶と(S)-ジミラセタム(2)および/またはその薬学的に許容される溶媒和物もしくは共結晶が、別々に包装されている、〔1〕または〔2〕に記載の組成物。
〔4〕 組成物が、3,6,7,7a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[1,5-a]イミダゾール-2,5-ジオン(ジミラセタム)の非ラセミ混合物およびその薬学的に許容される溶媒和物または共結晶であり、非ラセミ混合物が、(R)-ジミラセタム(1)を(S)-ジミラセタム(2)に対して33%以上且つ54%以下の(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)で含む、〔1〕に記載の組成物。
〔5〕 〔1〕から〔4〕までのいずれか1項に記載の組成物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
〔6〕 (R)-ジミラセタム(1)および(S)-ジミラセタム(2)と、(R)-ジミラセタム(1)および(S)-ジミラセタム(2)を組み合わせて、33%以上且つ54%以下の(R)-ジミラセタム(1)のエナンチオマー過剰率(ee)を得るための指示書とを含むパーツのキット。
〔7〕 医薬品としての使用のための、〔1〕から〔4〕までのいずれか1項に記載の組成物または〔5〕に記載の医薬組成物または〔6〕に記載のパーツのキット。
〔8〕 疾患または障害の治療および/または予防における使用のためのものであって、疾患、損傷または障害が、末梢性感覚神経障害、発作、うつ病または認知障害から選択される、〔7〕に記載の組成物または医薬組成物またはキット。
〔9〕 疾患、損傷または障害の治療および/または予防における使用のためのものであって、疾患、損傷または障害が、末梢性感覚神経障害、神経精神障害、運動ニューロン障害、または運動障害から選択される、〔7〕に記載の組成物または医薬組成物またはキット。
〔10〕 疾患、損傷または障害が末梢性感覚神経障害であり、好ましくは末梢性感覚神経障害が末梢神経障害性疼痛である、〔8〕または〔9〕に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
〔11〕 末梢性感覚神経障害が、糖尿病性神経障害、疱疹後神経障害、腰痛、仙骨痛、外科的疼痛、圧挫損傷、脊椎損傷、複合性局所疼痛症候群、幻肢感覚、変形性関節症を伴っている末梢性感覚神経障害、関節リウマチを伴っている末梢性感覚神経障害、自己免疫性骨関節症を伴っている末梢性感覚神経障害、頭痛、線維筋痛、細菌発育抑制療法によって誘発される末梢性感覚神経障害、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害、内蔵損傷を伴っている末梢性感覚神経障害、骨壊死を伴っている末梢性感覚神経障害、ヒト免疫不全ウイルス感染を伴っている末梢性感覚神経障害、末梢神経障害性疼痛、または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害である、〔8〕または〔10〕に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
〔12〕 末梢性感覚神経障害が、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害または抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害から選択される、〔8〕から〔11〕までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
〔13〕 末梢性感覚神経障害が、化学療法剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、化学療法剤が、キナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイド、および白金塩からなる群から選択され、好ましくはソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン(satraplain)、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンから選択される、〔8〕から〔12〕までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
〔14〕 末梢性感覚神経障害が、抗ウイルス剤によって誘発される末梢性感覚神経障害であり、抗ウイルス剤が、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤であり、好ましくはザルシタビン、ジダノシン、スタブジンおよびジドブジンから選択される、〔8〕から〔13〕までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
〔15〕 組成物または医薬組成物が、少なくとも1つの抗腫瘍薬と共に使用され、抗腫瘍薬が、好ましくはキナーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、タキサン、ビンカアルカロイドおよび白金塩からなる群から選択され、より好ましくはソラフェニブ、スニチニブ、アファチニブ、アキシチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、イキサゾミブ、ボルテゾミブ、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ネダプラチン、ロバプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンから選択される、〔8〕から〔14〕までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
〔16〕 組成物または医薬組成物が、少なくとも1つの抗ウイルス薬と共に使用され、抗ウイルス薬が、好ましくはヌクレオシドまたはヌクレオチドから選択され、さらに好ましくはザルシタビン、ジダノシン、スタブジンおよびジドブジンから選択される、〔8〕から〔15〕までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
〔17〕 組成物または医薬組成物が、投与1回当たり10mg~3000mgの間、より好ましくは投与1回当たり20mg~2000mgの間、さらにより好ましくは投与1回当たり50mg~1000mgの間の用量で1日2回経口投与されるものである、〔8〕から〔16〕までのいずれか1項に記載の使用のための組成物または医薬組成物またはキット。
〔18〕 学習および記憶を増強する方法における使用のための、〔1〕から〔4〕までのいずれか1項に記載の組成物または〔5〕に記載の医薬組成物または〔6〕に記載のパーツのキット。
〔19〕 (R)-ジミラセタム(1)と(S)-ジミラセタム(2)、または
(R)-ジミラセタム(1)とジミラセタムのラセミ体
を組み合わせるステップを含む、〔1〕から〔4〕までのいずれか1項に記載の組成物または〔5〕に記載の医薬組成物を調製する方法。
〔20〕 〔1〕から〔4〕までのいずれか1項に記載の組成物または〔5〕に記載の医薬組成物または〔6〕に記載のキットの調製における(R)-ジミラセタム(1)および/または(S)-ジミラセタム(2)および/またはジミラセタムのラセミ体の使用。
〔21〕 健常対象における学習および記憶を増強するための〔1〕から〔4〕までのいずれか1項に記載の組成物の非治療的使用。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7