(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20221013BHJP
G01L 19/14 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G01L19/00 101
G01L19/14
(21)【出願番号】P 2020550522
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019039017
(87)【国際公開番号】W WO2020075600
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2018190708
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】日高 敦志
(72)【発明者】
【氏名】中谷 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特許第4185477(JP,B2)
【文献】特開2005-148002(JP,A)
【文献】特許第6665744(JP,B2)
【文献】特許第6115935(JP,B2)
【文献】特許第6327633(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 19/00
G01L 19/14
-----------------------------------
本件特許出願に対応する国際特許出願PCT/JP2019/039017の
調査結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を形成したボディに前記流体通路と連通する状態で気密状に取り付けられる筒状部材と、前記筒状部材に接続されて前記ボディの前記流体通路内を流れる流体の圧力を検出する圧力センサ部とを備えた圧力センサであって、
前記筒状部材は、ニッケル-モリブデン-クロム合金材又はステンレス鋼材により
前記圧力センサ部の最大外径よりも小径に形成され、
前記圧力センサ部は、前記流体が流入する受圧室及び前記受圧室に流入した前記流体に接するダイヤフラムを有し前記ダイヤフラムにより一端が閉塞されたセンサボディと、前記ダイヤフラムの変位を圧力として出力する圧力検出素子とを備え、
前記センサボディは、コバルト-ニッケル合金材により形成され、開口側端部が前記筒状部材の一端部に気密状に接続されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
流体通路を形成したボディに前記流体通路と連通する状態で気密状に取り付けられる筒状部材と、前記筒状部材に接続されて前記ボディの前記流体通路内を流れる流体の圧力を検出する圧力センサ部とを備えた圧力センサであって、
前記筒状部材は、ニッケル-モリブデン-クロム合金材又はステンレス鋼材により形成され、
前記圧力センサ部は、前記流体が流入する受圧室及び前記受圧室に流入した前記流体に接するダイヤフラムを有し前記ダイヤフラムにより一端が閉塞されたセンサボディと、前記ダイヤフラムの変位を圧力として出力する圧力検出素子とを備え、
前記圧力センサ部のセンサボディの開口側端部の端面に、前記圧力センサ部の最大外径よりも小径で且つ内径が前記筒状部材の内径と同一の接続用筒部を突出形成し、
前記センサボディは、コバルト-ニッケル合金材により形成され、前記センサボディの前記接続用筒部の開口側端部が前記筒状部材の一端部に気密状に接続されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
前記筒状部材と前記センサボディは、溶接により気密状に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記筒状部材の一端部に溶接用フランジ部を設けると共に、前記筒状部材の他端部に取付け用フランジ部を設け、
前記センサボディの前記接続用筒部の開口側端部に、前記筒状部材の溶接用フランジ部に当接する溶接用フランジ部を設け、
前記筒状部材の溶接用フランジ部と前記センサボディに形成した前記接続用筒部の溶接用フランジ部とを溶接により気密状に接続固着したことを特徴とする請求項3に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記筒状部材と前記センサボディは、フランジ接続により気密状に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記筒状部材の一端部に接続用フランジ部を設けると共に、前記筒状部材の他端部に取付け用フランジ部を設け、
前記センサボディの前記接続用筒部の開口側端部に、前記筒状部材の接続用フランジ部に当接する接続用フランジ部を設け、
前記筒状部材の接続用フランジ部と前記センサボディに形成した接続用筒部の接続用フランジ部との間にガスケットを挟み込み、前記筒状部材の接続用フランジ部と前記接続用筒部の接続用フランジ部とを、ボルト及びナットで締め付けて気密状に接続固定したことを特徴とする請求項5に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記筒状部材の一端部に接続用フランジ部を設けると共に、前記筒状部材の他端部に取付け用フランジ部を設け、
前記センサボディの前記接続用筒部の開口側端部に、前記筒状部材の接続用フランジ部に当接する接続用フランジ部を設け、
前記筒状部材の接続用フランジ部と前記センサボディに形成した接続用筒部の接続用フランジ部との間にガスケットを挟み込み、前記筒状部材の接続用フランジ部と前記接続用筒部の接続用フランジ部とを、クランプによって外部から挟んで気密状に接続固定したことを特徴とする請求項5に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体製造設備や化学プラント等のガス等の流体供給ラインや当該流体供給ラインに組み込まれる圧力式流量制御装置や濃度測定装置等に設けられ、流体供給ラインを流れるガス等の流体の圧力を検出する圧力検出素子(ストレインゲージや感圧素子)を用いたダイヤフラム式の圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前から半導体製造設備等の流体供給ラインを流れる流体の圧力検出には、様々な形式の圧力センサが使用されている。
【0003】
例えば、前記圧力センサとしては、ダイヤフラムにストレインゲージを取り付けて流体の圧力を検出する圧力センサ、ダイヤフラムに隣接する空間を真空室とした絶対圧型の圧力センサ、ダイヤフラムに隣接する空間にシリコンオイル等の圧力伝達用媒体を封入した圧力センサ、ダイヤフラムやボディを耐食性に優れたステンレス材により形成した圧力センサ等が知られている(特許文献1~3参照)。
【0004】
ところで、半導体製造設備のガス供給ラインのように、塩化水素、臭化水素等のハロゲン系ガスや弗素ガス、弗化水素等の弗素系ガスのような腐食性ガスが流れる場合には、腐食性ガスに接するダイヤフラム(感圧部)等を耐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼により形成した圧力センサが使用されている。
【0005】
しかし、感圧部であるダイヤフラムをオーステナイト系ステンレス鋼により形成した圧力センサにおいては、前記ダイヤフラムは耐食性に優れているが、引っ張り強さや耐力が低い。そのため、圧力センサを長時間・長期間使用したり、或いは、感圧部であるダイヤフラムの歪を大きく取って感度を上げたりすると、ダイヤフラムの耐力が劣化することになる。
【0006】
従って、前記圧力センサにおいては、オーステナイト系ステンレス鋼製のダイヤフラムを感圧部として長時間・長期間使用すると、耐力の劣化により歪等が大きくなってゼロ点のずれ等の問題を引き起こすことになり、高い精度で圧力を測定することができないと言う問題が発生する。但し、オーステナイト系ステンレス鋼を圧力センサの腐食性ガスと接触しないボディの材料として使用する分には、前記問題が発生することはない。
【0007】
尚、上記問題を解決するには、ダイヤフラム(感圧部)を耐食性及び耐力に優れた材料により形成すれば良い。
【0008】
例えば、特開2005-148002号公報(特許文献4)や特開2018-048859号公報(特許文献5)には、ダイヤフラム(感圧部)を耐食性及び耐力に優れた金属材で形成した圧力センサが記載されている。
【0009】
即ち、従来の圧力センサ30は、
図5に示す如く、流体に接するダイヤフラム31aが形成された感圧部31と、ダイヤフラム31aに設けたストレインゲージ32と、感圧部31の外周縁部を支持し、感圧部31のダイヤフラム31aとの間で基準圧力室33を形成する支持部34とを備えており、ダイヤフラム31aが形成された感圧部31を耐食性及び耐力に優れたコバルト-ニッケル合金材(スプロン(登録商標))により形成している。
【0010】
前記圧力センサ30は、ダイヤフラム31aが形成された感圧部31を耐食性及び耐力に優れたコバルト-ニッケル合金材で形成しているため、長時間・長期間使用しても歪等が発生し難く、高い精度で圧力を測定することができる。
【0011】
ところで、前記圧力センサ30の感圧部31を形成するコバルト-ニッケル合金材は、圧力によって変形するため、ダイヤフラム31aとして使用するには適しているが、シール等を行う構造に使用するには、不向きな材料である。何故なら、コバルト-ニッケル合金材は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて硬度がかなり高いので、流体通路を形成したボディ等へ締め付け固定したりすると、緩み等が発生し易くなり、シール性が損なわれるからである。
【0012】
従って、前記圧力センサ30においては、コバルト-ニッケル合金材で形成された感圧部31側を、流体通路を形成したボディ等に締め付け固定したりすると、緩み等が発生し易くなり、シール性が損なわれると言う問題が発生することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】実開平05-069647号公報
【文献】特開平10-082707号公報
【文献】特開2007-033075号公報
【文献】特開2005-148002号公報
【文献】特開2018-048859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、ダイヤフラムを有するセンサボディを耐食性、耐力及び弾力性に優れた金属材により形成すると共に、前記センサボディを流体通路を形成したボディに取り付けるための筒状部材を耐食性に優れてシール構造に適した金属材により形成することによって、高い精度で圧力を測定することができると共に、シール性にも優れた圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態による圧力センサは、流体通路を形成したボディに前記流体通路と連通する状態で気密状に取り付けられる筒状部材と、前記筒状部材に接続されて前記ボディの前記流体通路内を流れる流体の圧力を検出する圧力センサ部とを備えた圧力センサであって、前記筒状部材は、ニッケル-モリブデン-クロム合金材又はステンレス鋼材により形成され、前記圧力センサ部は、前記流体が流入する受圧室及び前記受圧室に流入した前記流体に接するダイヤフラムを有し前記ダイヤフラムにより一端が閉塞されたセンサボディと、前記ダイヤフラムの変位を圧力として出力する圧力検出素子とを備え、前記センサボディは、コバルト-ニッケル合金材により形成され、開口側端部が前記筒状部材の一端部に気密状に接続されている。
【0016】
ある実施形態において、前記筒状部材と前記センサボディは、溶接により気密状に接続されている。
【0017】
ある実施形態において、前記筒状部材を前記圧力センサ部の最大外径よりも小径に形成し、前記筒状部材の一端部に溶接用フランジ部を設けると共に、前記筒状部材の他端部に取付け用フランジ部を設け、また、前記圧力センサ部のセンサボディの開口側端部の端面に、前記圧力センサ部の最大外径よりも小径で且つ内径が前記筒状部材の内径と同一の接続用筒部を突出形成し、前記接続用筒部の開口側端部に、前記筒状部材の溶接用フランジ部に当接する溶接用フランジ部を設け、前記筒状部材の溶接用フランジ部と前記センサボディに形成した前記接続用筒部の溶接用フランジ部とを溶接により気密状に接続固着している。
【0018】
ある実施形態において、前記筒状部材と前記センサボディは、フランジ接続により気密状に接続されている。
【0019】
ある実施形態において、前記筒状部材を前記圧力センサ部の最大外径よりも小径に形成し、前記筒状部材の一端部に接続用フランジ部を設けると共に、前記筒状部材の他端部に取付け用フランジ部を設け、また、前記圧力センサ部のセンサボディの開口側端部の端面に、前記圧力センサ部の最大外径よりも小径で且つ内径が前記筒状部材の内径と同一の接続用筒部を突出形成し、前記接続用筒部の開口側端部に、前記筒状部材の接続用フランジ部に当接する接続用フランジ部を設け、前記筒状部材の接続用フランジ部と前記センサボディに形成した接続用筒部の接続用フランジ部との間にガスケットを挟み込み、前記筒状部材の接続用フランジ部と前記接続用筒部の接続用フランジ部とを、ボルト及びナットで締め付けて気密状に接続固定する。
【0020】
ある実施形態において、前記筒状部材を前記圧力センサ部の最大外径よりも小径に形成し、前記筒状部材の一端部に接続用フランジ部を設けると共に、前記筒状部材の他端部に取付け用フランジ部を設け、また、前記圧力センサ部のセンサボディの開口側端部の端面に、前記圧力センサ部の最大外径よりも小径で且つ内径が前記筒状部材の内径と同一の接続用筒部を突出形成し、前記接続用筒部の開口側端部に、前記筒状部材の接続用フランジ部に当接する接続用フランジ部を設け、前記筒状部材の接続用フランジ部と前記センサボディに形成した接続用筒部の接続用フランジ部との間にガスケットを挟み込み、前記筒状部材の接続用フランジ部と前記接続用筒部の接続用フランジ部とを、クランプによって外部から挟むことによって気密状に接続固定する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態に係る圧力センサは、圧力センサ部のダイヤフラムを有するセンサボディを、耐食性、耐力及び弾力性に優れたコバルト-ニッケル合金材により形成しているため、長時間・長期間使用してもセンサボディに歪等が発生し難く、高い精度で圧力を測定することができる。
【0022】
また、本発明の実施形態に係る圧力センサは、流体通路を形成したボディに取り付けられる筒状部材を、耐食性に優れてセンサボディの硬度よりも低いニッケル-モリブデン-クロム合金材又はステンレス鋼材により形成しているため、筒状部材をボディ側へ締め付け固定したりしても、緩み等が発生し難く、シール性が損なわれることがない。
【0023】
更に、本発明の実施形態に係る圧力センサは、ダイヤフラムを有するセンサボディの開口側端部の端面に接続用筒部を突出形成すると共に、当該接続用筒部の開口側端部に流体通路を形成したボディに気密状に取り付けられる筒状部材を気密状に接続し、筒状部材の開口側端部とセンサボディのダイヤフラムとの距離が長くなるようにしているため、筒状部材の開口側端部に設けた取付け用フランジ部をボンネットナットにより流体通路を形成したボディに締め付け固定して気密状に取り付けても、筒状部材の取付け用フランジ部に掛かる応力が筒状部材及び接続用筒部により吸収されてダイヤフラムに伝わると言うことがなく、ダイヤフラムへの応力影響をなくすことができ、圧力センサのボディへの取付け前と取付け後における出力特性の変動がなくなる。その結果、エージング(稼働試験)が不要となる。
【0024】
更に、本発明の実施形態に係る圧力センサは、流体通路を形成したボディに取り付けられる筒状部材を圧力センサ部の最大外径よりも小径に形成しているため、ボディに圧力センサを取り付けるためのスペースが小さくて済み、ボディの小型化及び流体通路の内容積の減少を図れる。
【0025】
更に、本発明の実施形態に係る圧力センサは、筒状部材及びセンサボディの接続用筒部にそれぞれ溶接用フランジ部を設け、両溶接用フランジ部を溶接により固着するようにしているため、溶接部の肉厚を厚くすることができて溶接割れを防止することができると共に、溶接部の溶け込み深さを深くすることができ、気密性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧力センサを流体通路を形成したボディに取り付けた状態の縦断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る圧力センサを流体通路を形成したボディに取り付けた状態の縦断面図である。
【
図5】従来の圧力センサの一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1~
図3は本発明の一実施形態に係る圧力センサ1を示し、当該圧力センサ1は、主に半導体製造設備のガスの流体供給ラインに組み込まれる圧力式流量制御装置や濃度測定装置等に設けられ、流体供給ラインを流れるガスの圧力を検出するものであり、圧力検出素子2(ストレインゲージや感圧素子)を用いた絶対圧型のダイヤフラム式の圧力センサである。
【0029】
前記圧力センサ1は、流体通路3を形成したボディ4に流体通路3と連通する状態で気密状に取り付けられる筒状部材5と、当該筒状部材5に気密状に接続されてボディ4の流体通路3内を流れる流体の圧力を検出する圧力センサ部6とを備えている。
【0030】
前記筒状部材5は、
図1及び
図3に示す如く、耐食性に優れてシール構造に適した金属材により圧力センサ部6の最大外径よりも小径の円筒状に形成されており、筒状部材5の一端部には、圧力センサ部6に溶接(電子ビーム溶接やレーザー溶接等)により接続固着される溶接用フランジ部5aが一体的に設けられ、また、筒状部材5の他端部には、ボディ4に取り付けられる取付け用フランジ部5bが一体的に設けられている。
【0031】
本実施形態においては、筒状部材5は、耐食性等に優れたニッケル-モリブデン-クロム合金材の一つであるハステロイC-22(ハステロイは登録商標)又は耐食性等に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の一つであるSUS316Lにより形成されている。また、筒状部材5の内周面は、電解研磨処理が施されている。
【0032】
尚、ハステロイC-22の硬度(Hv)は≦260、SUS316Lの硬度(Hv)は≦200となっている。
【0033】
前記圧力センサ部6は、
図1及び
図2に示す如く、流体が流入する受圧室7及び当該受圧室7に流入した流体に接して流体の圧力に応じて変位するダイヤフラム8aを有し、当該ダイヤフラム8aにより一端が閉塞された筒状のセンサボディ8と、ダイヤフラム8aの外側面に設けられ、ダイヤフラム8aの変位を圧力として出力する圧力検出素子2と、センサボディ8の外周面に気密状に嵌合固定されたベースリング9と、一端面がベースリング9の一端面に気密状に接続され、ダイヤフラム8aの外側面周囲を囲うと共に、複数本のリード線10が気密状に挿通されるハーメチックリング11と、ハーメチックリング11の他端面に気密状に接続され、ダイヤフラム8aとの間に真空室12を形成する閉塞用円盤13と、ハーメチックリング11に挿通された複数本のリード線10を直角状態に保持するカバー体14とを備えている。
【0034】
具体的には、前記筒状のセンサボディ8は、
図1及び
図2に示す如く、耐食性、耐力及び弾力性に優れた金属材により一端が閉塞された筒状に形成されており、外径が筒状部材5の最大外径(取付け用フランジ部5bの外径)よりも大径に形成され、内径が筒状部材5と同一に形成された筒状部材5よりも厚肉の円筒部8bと、円筒部8bの一端に一体的に設けられ、円筒部8bの一端側開口を閉塞するダイヤフラム8aと、円筒部8bの開口側端部の端面に一体的に設けられ、筒状部材5に気密状に接続される接続用筒部8cとを備えている。
【0035】
また、センサボディ8の接続用筒部8cは、円筒部8bの開口側端部の端面に外方へ突出する状態で形成されており、外径が筒状のセンサボディ8の最大外径(円筒部8bの外径)よりも小径で且つ内径が筒状部材5の内径と同一に形成されている。
【0036】
更に、センサボディ8の接続用筒部8cの開口側端部には、筒状部材5の溶接用フランジ部5aに当接する溶接用フランジ部8dが一体的に設けられており、筒状部材5の溶接用フランジ部5aと筒状のセンサボディ8の溶接用フランジ部8dとを電子ビーム溶接やレーザー溶接等の溶接により気密状に接続固着できるようになっている。
【0037】
そして、センサボディ8のダイヤフラム8a、円筒部8b及び接続用筒部8cで囲まれた空間は、ガス等の流体が流入する受圧室7となっている。
【0038】
本実施形態においては、筒状のセンサボディ8は、耐食性、耐力及び弾力性に優れたコバルト-ニッケル合金材の一つであるスプロン510(スプロンは登録商標)により形成されている。このスプロン510の硬度(Hv)は500±30となっている。
【0039】
前記圧力検出素子2は、金属細線又は金属箔の抵抗線を絶縁物で覆ってフィルム状に形成したストレインゲージ部を備えた金属ストレインゲージから成る。この金属ストレインゲージは、ストレインゲージ部と抵抗変化を検出するブリッジ回路部とを別体にしたもの又はストレインゲージ部とブリッジ回路部とを合体させたものであっても良い。
【0040】
前記ベースリング9は、
図1及び
図2に示す如く、耐食性に優れた金属材により筒状のセンサボディ8の円筒部8bと略同じ長さで且つ円筒部8bの外周面に密接状に嵌合するリング状に形成されており、ベースリング9の一端部(ダイヤフラム8aに近い方の端部)には、断面形状が階段形状の環状段部が形成されている。このベースリング9は、当該ベースリング9を筒状のセンサボディ8の円筒部8bの外周面に嵌合し、円筒部8bの一端部外周縁とベースリング9の一端部内周縁とを溶接(電子ビーム溶接やレーザー溶接等)することによって、センサボディ8の外周面に気密状に嵌合固着されている。
【0041】
本実施形態においては、ベースリング9は、耐食性等に優れたニッケル-モリブデン-クロム合金材の一つであるハステロイC-22(ハステロイは登録商標)により形成されている。尚、ベースリング9は、ダイヤフラム8aのような変形が求められないので、ハステロイC-22(ハステロイは登録商標)の代わりにステンレス鋼(例えば、SUS316L等)を用いても良い。
【0042】
前記ハーメチックリング11は、
図1及び
図2に示す如く、耐食性に優れた金属材によりベースリング9の外径と同じ外径のリング状に形成されており、ハーメチックリング11の一端部(ベースリング9に対向する端部)には、ベースリング9の一端部に形成した環状段部に嵌合される断面形状が階段形状の環状段部が形成されている。このハーメチックリング11は、その環状段部をベースリング9の環状段部に突合せ嵌合し、ハーメチックリング11とベースリング9の突合せ部の外周縁を溶接(電子ビーム溶接やレーザー溶接等)することによって、ベースリング9の一端面に気密状に接続固着されている。
【0043】
また、ハーメチックリング11には、複数本のリード線10の先端部が低融点ガラス材15を介して気密状に挿通されており、各リード線10の先端部は圧力検出素子2である金属ストレインゲージに接続されている。
【0044】
本実施形態においては、ハーメチックリング11は、耐食性等に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の一つであるSUS316Lにより形成されている。
【0045】
閉塞用円盤13は、
図1及び
図2に示す如く、耐食性に優れた金属材によりハーメチックリング11の外径と同じ外径の円盤状に形成されており、閉塞用円盤13の内側面外周縁部には、ハーメチックリング11の他端部が嵌合される環状の切欠き部が形成されている。閉塞用円盤13は、その環状の切欠き部をハーメチックリング11の他端部に嵌合し、ハーメチックリング11の他端面外周縁と閉塞用円盤13の内側面外周縁とを溶接(電子ビーム溶接やレーザー溶接等)することによって、ハーメチックリング11の他端部端面に気密状に接続固着されている。これによって、閉塞用円盤13とダイヤフラム8aとの間には空間が形成されることになり、この空間は真空室12に形成されている。
【0046】
本実施形態においては、閉塞用円盤13は、耐食性等に優れたオーステナイト系ステンレス鋼の一つであるSUS316Lにより形成されている。
【0047】
前記カバー体14は、
図1及び
図2に示す如く、合成樹脂材により断面形状がL字型の環状に形成されており、閉塞用円盤13の外周縁部及びハーメチックリング11の他端部外周面に嵌合され、ハーメチックリング11に挿通された複数本のリード線10を直角状態に保持する複数の貫通孔14aが形成されている。尚、複数本のリード線10を保持する状態は、直角状態に限定されることは無く、保持したい状態に合わせた形状にしても良く、また、リード線10を保持する必要がなければ、カバー体14を省略しても良い。
【0048】
このように構成された圧力センサ1は、その筒状部材5が流体通路3を形成したボディ4に流体通路3と連通する状態でガスケット16、ワッシャー17及びボンネットナット18により気密状に取付け固定されている。
【0049】
前記ボディ4は、圧力式流量制御装置や濃度測定装置の流体通路3を形成したボディ4、或いは、流体供給ラインに介設された流体通路3を形成したボディ4から成り、耐食性や耐久性等に優れた金属材(例えば、オーステナイト系ステンレス鋼)により適宜の形状に形成されている。これらのボディ4に形成した流体通路3には、ガス等の流体(例えば、半導体製造装置のプロセスガス)が流れるようになっている。
【0050】
また、ボディ4には、
図1に示す如く、圧力センサ1の筒状部材5を取り付けるための円形の挿着穴19が形成されており、当該挿着穴19の内周面には、ボンネットナット18が着脱自在に螺着される雌ネジ4aが形成されている。
【0051】
更に、ボディ4の挿着穴19の底面中央部には、
図1に示す如く、流体通路3と挿着穴19とを連通状に接続する連通孔20が形成されている。
【0052】
前記ガスケット16は、
図1に示す如く、オーステナイト系ステンレス鋼によりボディ4の挿着穴19に挿入される大きさのリング状に形成されており、断面形状が矩形状に形成されている。このガスケット16の一端面は、ボディ4の挿着穴19の底面に当接し、また、ガスケット16の他端面は、筒状部材5に形成した取付け用フランジ部4bの外側端面に当接するようになっている。尚、ガスケット16の断面形状は、矩形状に限定されず、円形や多角形のものであっても良い。
【0053】
前記ワッシャー17は、
図1に示す如く、環状の板状部材に形成されており、筒状部材5に形成した取付け用フランジ部4bの内側面に当接するようになっている。このワッシャー17は、二枚使用されており、重ね合わせたときの接触面で摺動可能となっている。また、ワッシャー17は、合成樹脂製の板状部材やステンレス製等の金属板を用いる。ワッシャー17が金属板の場合、直接金属表面同士を摺動するようにしても良いし、摺動面にコーティング等を行って摺動し易くしても良い。
【0054】
前記ボンネットナット18は、
図1に示す如く、オーステナイト系ステンレス鋼により筒状部材5に外嵌される大きさの筒状に形成されており、その外周面には、ボディ4の挿着穴19の内周面に形成した雌ネジ4aに着脱自在に螺着される雄ネジ18aが形成されている。
【0055】
また、ボンネットナット18の下端部内周縁部には、筒状部材5の取付け用フランジ部5b及びワッシャー17が嵌め込まれる環状の嵌合凹部18bが形成されていると共に、ボンネットナット18の上端部外周面(雄ネジ18aを形成していない部分)の形状は、ボンネットナット18をスパナ等の工具で回転させることができるように多角形に形成されている。
【0056】
尚、本実施形態においては、圧力センサ部6の最大外径(カバー体14の外径)は20mmに、圧力センサ部6の高さは11.7mmに、圧力センサ部6のカバー体14を除く高さは9.7mmに、センサボディ8の円筒部8bの外径は13mmに、センサボディ8の内径は8mmに、センサボディ8の溶接用フランジ部8dの外径は10mmに、ベースリング9、ハーメチックリング11及び閉塞用円盤13の外径は15.7mmに、筒状部材5の溶接用フランジ部5aの外径は10mmに、筒状部材5の取付け用フランジ部5bの外径は12.8mmに、筒状部材5の内径は8mmに、筒状部材5の取付け用フランジ部5bの高さは1.5mmにそれぞれ設定されている。尚、ここに記載した寸法は、一つの実施形態に過ぎず、それぞれの状況に合わせて上記の各寸法を変更することは可能である。
【0057】
次に、上述した圧力センサ1を、流体通路3を形成したボディ4に取り付ける場合について説明する。
【0058】
先ず、ガスケット16をボディ4に形成した挿着穴19に挿入し、ガスケット16をその中心が連通孔20と合致するように挿着穴19の底面に載置する。
【0059】
次に、筒状部材5、二枚のワッシャー17及びボンネットナット18を組み合わせたものをボディ4の挿着穴19に挿入し、ボンネットナット18の雄ネジ18aを挿着穴19の内周面に形成した雌ネジ4aに螺着し、ボンネットナット18をボディ4側へ締め付けて、ボンネットナット18によりガスケット16、筒状部材5の取付け用フランジ部4b及びワッシャー17を挿着穴19の底面側へ押圧する。
【0060】
そうすると、筒状部材5の取付け用フランジ部5bによりガスケット16が押圧され、ガスケット16の一端面と挿着穴19の底面との間及びガスケット16の他端面と取付け用フランジ部5bの外側面との間がそれぞれシール部となり、筒状部材5は挿着穴19に気密状に取り付けられることになる。
【0061】
尚、上記の実施形態においては、筒状部材5、二枚のワッシャー17及びボンネットナット18を組み合わせたものをボディ4の挿着穴19に挿入するようにしたが、他の実施形態においては、ボディ4の挿着穴19に筒状部材5、二枚のワッシャー17及びボンネットナット18を順番に挿入するようにしても良い。
【0062】
そして、ボディ4に筒状部材5を気密状に取り付けたら、筒状部材5の溶接用フランジ部5aに圧力センサ部6に設けた溶接用フランジ部8dを突合せ、筒状部材5の溶接用フランジ部5aと圧力センサ部6に設けた溶接用フランジ部8dとを溶接(電子ビーム溶接やレーザー溶接等)により気密状に接続固着する。
【0063】
このようにして、圧力センサ1は、流体通路3を形成したボディ4に取り付けられる。
【0064】
前記圧力センサ1は、圧力センサ部6のダイヤフラム8aを有するセンサボディ8を、耐食性、耐力及び弾力性に優れたコバルト-ニッケル合金材により形成しているため、長時間・長期間使用してもセンサボディ8に歪等が発生し難く、高い精度で圧力を測定することができる。
【0065】
また、前記圧力センサ1は、流体通路3を形成したボディ4に取り付けられる筒状部材5を、耐食性に優れてセンサボディ8の硬度よりも低いニッケル-モリブデン-クロム合金材又はステンレス鋼材により形成しているため、筒状部材5をボディ4側へ締め付け固定したりしても、緩み等が発生し難く、シール性が損なわれることがない。
【0066】
更に、前記圧力センサ1は、ボディ4と筒状部材5の取付け用フランジ部5bとで挿着穴19内に挿入したガスケット16を挟持し、この状態で筒状部材5の取付け用フランジ部2bをボディ4の挿着穴19に螺着したボンネットナット18によりボディ4側へ押圧し、筒状部材5の取付け用フランジ部5bをボディ4とボンネットナット18により締め付け固定するようにしているため、筒状部材5の取付け用フランジ部5bを締め付け固定しても、筒状部材5の取付け用フランジ部5bに掛かる応力が筒状部材5及び接続用筒部8cにより吸収されてダイヤフラム8aに伝わると言うことがなく、ダイヤフラム8aへの応力影響をなくすことができ、圧力センサ1のボディ4への取付け前と取付け後における出力特性の変動がなくなる。
【0067】
図4は本発明の他の実施形態に係る圧力センサ1を示し、当該圧力センサ1は、溶接による接続に替えてフランジ接続を採用し、筒状部材5と筒状のセンサボディ8とをフランジ接続により気密状に接続したものである。
【0068】
即ち、前記圧力センサ1は、筒状部材5を圧力センサ部6の最大外径(カバー体14の外径)よりも小径に形成し、筒状部材5の一端部に接続用フランジ部5a′を設けると共に、筒状部材5の他端部に取付け用フランジ部5bを設け、また、圧力センサ部6の筒状のセンサボディ8の開口側端部の端面に、圧力センサ部6の最大外径よりも小径で且つ内径が筒状部材5の内径と同一の接続用筒部8cを突出形成し、接続用筒部8cの開口側端部に、筒状部材5の接続用フランジ部5a′に当接する接続用フランジ部8d′を設け、筒状部材5の接続用フランジ部5a′と筒状のセンサボディ8に形成した接続用筒部8cの接続用フランジ部8d′との間に金属板製の環状のガスケット21を挟み込み、筒状部材5の接続用フランジ部5a′と接続用筒部8cの接続用フランジ部8d′とをボルト22及びナット23で締め付けて気密状に接続固定したものである。ここでは、接続用フランジ部5a′,8d′同士の固定をボルト22とナット23で行っているが、クランプ(図示省略)を用いて二つの接続用フランジ部5a′,8d′を外部から挟持固定するようにしても良い。例えば、前記クランプには、二つ割り状のハウジング形のクランプを使用しても良い。
【0069】
尚、前記圧力センサ1は、筒状部材5と筒状のセンサボディ8との接続構造を溶接構造に替えてフランジ構造としたこと以外は、
図1に示す圧力センサ1と同一構造に構成されており、
図1に示す圧力センサ1と同一の部材・部位には同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
前記圧力センサ1も、
図1に示す圧力センサ1と同様の作用効果を奏する。
【0071】
尚、上記の実施形態においては、圧力センサ部6に真空室12を形成すると共に、圧力検出素子2にストレインゲージを使用するようにしたが、他の実施形態においては、圧力センサ部6の真空室12に替えて圧力伝達媒体を充填した圧力室を形成すると共に、圧力室に感圧素子(圧力検出素子2)を配設するようにしても良い。前記感圧素子には、従来公知の圧力検知ダイヤフラムを備える拡散型半導体圧力トランスデューサーが使用されている。
【0072】
また、上記の実施形態においては、ベースリング9とハーメチックリング11と閉塞用円盤13とを全て別体に形成したが、他の実施形態においては、ベースリング9とハーメチックリング11又はハーメチックリング11と閉塞用円盤13若しくはベースリング9とハーメチックリング11と閉塞用円盤13とを一体的に形成しても良い。また、ベースリング9、ハーメチックリング11及び閉塞用円盤13の材質も、上記の実施形態に係るものに限定されるものではなく、耐食性に優れている金属材であれば良い。
【0073】
更に、上記の実施形態においては、筒状部材5は、耐食性に優れてシール構造に適したハステロイC-22(ハステロイは登録商標)又はSUS316Lにより形成したが、筒状部材5の材質は、上記の実施形態に係るものに限定されるものではなく、耐食性に優れてシール構造に適した材質であれば、如何なる材質であっても良い。
【0074】
更に、上記の実施形態においては、ダイヤフラム8aを有するセンサボディ8は、耐食性、耐力及び弾力性に優れたスプロン510(スプロンは登録商標)により形成したが、センサボディ8の材質は、上記の実施形態に係るものに限定されるものではなく、耐食性、耐力及び弾力性に優れた材質であれば、如何なる材質であっても良い。
【0075】
更に、上記の実施形態においては、センサボディ8の円筒部8bにダイヤフラム8aを一体的に形成したが、他の実施形態においては、センサボディ8の円筒部8bとダイヤフラム8aとを別体に形成し、ダイヤフラム8aの外周縁部を円筒部8bに溶接により気密状に接続固着するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る圧力センサ1は、主として半導体製造設備のガス供給ラインにおいて利用されるが、その利用対象は前記半導体製造装置に限定されるものではなく、化学プラントや薬品産業、食品産業等の各種装置における流体供給ライン等においても利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 圧力センサ
2 圧力検出素子
3 流体通路
4 ボディ
5 筒状部材
5a 溶接用フランジ部
5a′接続用フランジ部
5b 取付け用フランジ部
6 圧力センサ部
7 受圧室
8 センサボディ
8a ダイヤフラム
8b 円筒部
8c 接続用筒部
8d 溶接用フランジ部
8d′接続用フランジ部
16 ガスケット
22 ボルト
23 ナット
W 溶接