(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法及び応用
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20221013BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20221013BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2020561674
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2019114867
(87)【国際公開番号】W WO2020088615
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】201811299884.X
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811300078.X
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516217413
【氏名又は名称】上海海洋大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI OCEAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.999, Huchenghuan Rd, Pudong New District, Shanghai 201306 China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】陳 新軍
(72)【発明者】
【氏名】魏 広恩
(72)【発明者】
【氏名】余 為
(72)【発明者】
【氏名】張 忠
(72)【発明者】
【氏名】方 舟
(72)【発明者】
【氏名】韋 記朋
(72)【発明者】
【氏名】雷 林
(72)【発明者】
【氏名】汪 金涛
【審査官】阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/001338(WO,A1)
【文献】坂口健司 ほか,北海道オホーツク海沿岸におけるスルメイカの漁獲量の予測方法,水産海洋研究,79(2),日本,一般社団法人水産海洋学会,2015年,pp.43-51,URL:http://www.jsfo.jp/contents/pdf/79-2/79-2-43.pdf
【文献】河野光久,日本海南西山口県沿岸域におけるケンサキイカの漁況予測,山口県水産研究センター研究報告,第6号,日本,山口県水産研究センター,2008年03月,pp.19-24,URL:https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010872301.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行するプロセッサと、プログラムの記憶されたメモリと、データ収集装置を備えた電子機器
により、スルメイカの遠洋漁獲を指導するために使用される太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法であって、
(1)
前記データ収集装置によって、過去N年間にスルメイカが分布していた海域の月別の太平洋振動指数PDO値を取得し、前記スルメイカはスルメイカ秋季発生系群又はスルメイカ冬季発生系群であるステップと、
(2)
前記プロセッサによって、時系列分析方法を利用して、スルメイカ資源豊度CPUEと過去N年間の月別のPDO値に対して相関性分析を行い、そのうち統計的に有意な相関を示す月のPDO値を選択し、選択したこれらの月のPDO値を、スルメイカ資源豊度に影響を与える気候因子とし、選択したこれらの月のPDO値を1、2、3…z…mの順で番号付けし、これらの月のPDO値を順にx
1、x
2、x
3…x
z…x
m(mは選択した月のPDO値の数)とするステップと、
(3)
前記プロセッサによって、x
1、x
2、x
3…x
mのうちの任意1~m個の気候因子に対して、多変数線形方程式を利用して最多2
m-1個のスルメイカ資源豊度予測モデルを作成し、各予測モデルの統計的P値を計算し、スルメイカ資源豊度予測モデルの式は、
CPUE=a+b
1*x
1+b
2*x
2+b
3*x
3+…+b
z*x
z+…+b
m*x
m (CPUEは日本の中小型イカ釣り漁船の1日あたりの漁獲量、aは定数、b
1、b
2、b
3、…b
z…、b
nはそれぞれx
1、x
2、x
3…x
z…x
mに対応する係数)であるステップと、
(4)
前記プロセッサによって、上記最多2
m-1個のスルメイカ資源豊度予測モデルのうち、統計的P値が最も小さいモデルを最適モデルとして選択するステップと、を含む
ことを特徴とする太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項2】
前記プロセッサによって、最適モデルを得た後、該最適モデルに対応するx
1、x
2、x
3…x
z…x
mを取得して最適モデルに入力し、最適モデルがスルメイカ資源豊度を出力すると、スルメイカ資源豊度の予測が完了する
請求項1に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項3】
スルメイカ予測モデルが気候因子x
zに対して作成される場合、b
1、b
2、b
3、…b
z-1、b
z+1、…、b
nはいずれも0である
請求項1に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項4】
前記統計的に有意な相関とは、算出されたP値<0.05であり、
スルメイカ秋季発生系群が分布している海域は日本海海域であり、
スルメイカ冬季発生系群が分布している海域は北海道の太平洋側海域である
請求項1に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項5】
前記スルメイカはスルメイカ秋季発生系群であり、
ステップ(2)では、統計的に有意な相関を示す2つの月のPDO値、すなわち過去2年目の10月のPDO値及び過去1年目の10月のPDO値を選択し、スルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEと過去2年目の10月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数が-0.390であり、スルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEと過去1年目の10月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数が-0.4486である
請求項1に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項6】
ステップ(3)では、以下の計3個の予測モデルを作成し、
1)予測モデルI
気候因子の過去2年目の10月のPDO値x
11及び過去1年目の10月のPDO値x
12に対して日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=2.3463-0.1674*x
11-0.1977*x
12であり、
F値は4.9268であり、P=0.0161<0.05であり、
2)予測モデルII
気候因子の過去2年目の10月のPDO値x
11に対して日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=2.3894-0.2127*x
11であり、
F値は4.4922であり、P=0.0442<0.05であり、
3)予測モデルIII
気候因子の過去1年目の10月のPDO値x
12に対して日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=2.3958-0.2323*x
12であり、
F値は6.2984であり、P=0.0189<0.05である
請求項5に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項7】
ステップ(4)では、予測モデルIを最適モデルとして選択し、最適モデルは、
CPUE=2.3463-0.1674*x
11-0.1977*x
12である
請求項6に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項8】
前記スルメイカはスルメイカ冬季発生系群であり、
ステップ(2)では、統計的に有意な相関を示す10個の月のPDO値、すなわち、過去2年目の10、11及び12月のPDO値、過去1年目の1、2、3及び4月のPDO値、同年の1、2、3及び4月のPDO値を選択し、
スルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEと過去2年目の10、11及び12月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4506、-0.4985及び-0.5878であり、
スルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEと過去1年目の1、2、3及び4月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4665、-0.4365、-0.4295及び-0.5072であり、
スルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEと同年の1、2、3及び4月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4746、-0.4837、-0.5458及び-0.5570である
請求項1に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項9】
ステップ(3)では、以下の計5個の予測モデルを作成し、
1)予測モデル1
気候因子の過去2年目の11月のPDO値x
21、過去2年目の12月のPDO値x
22、同年の2月のPDO値x
23、同年の3月のPDO値x
24及び過去1年目の3月のPDO値x
25に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.2048+0.0330*x
22-0.1811*x
21-0.2260*x
23+0.0749*x
24-0.0196*x
25であり、
F値は4.5183であり、P=0.0069<0.01であり、
2)予測モデル2
気候因子の過去2年目の11月のPDO値x
21、過去2年目の12月のPDO値x
22、同年の2月のPDO値x
23及び同年の3月のPDO値x
24に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.1968+0.0273*x
22-0.1865*x
21-0.2290*x
23+0.0740*x
24であり、
F値は5.9135であり、P=0.0026<0.01であり、
3)予測モデル3
気候因子の同年の2月のPDO値x
23、同年の3月のPDO値x
24及び過去1年目の3月のPDO値x
25に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.3257-0.1120*x
23-0.0461*x
24-0.1307*x
25であり、
F値は5.1699であり、P=0.0078<0.01であり、
4)予測モデル4
気候因子の同年の2月のPDO値x
23及び同年の3月のPDO値x
24に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.3093-0.0792*x
23-0.1223*x
24であり、
F値は5.1233であり、P=0.0149<0.05であり、
5)予測モデル5
気候因子の過去2年目の11月のPDO値x
21及び過去2年目の12月のPDO値x
22に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.1582+0.0383*x
22-0.2125*x
21であり、
F値は5.8894であり、P=0.0089<0.01である
請求項8に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項10】
ステップ(4)では、予測モデル2を最適モデルとして選択し、最適モデルは、
CPUE=1.1968+0.0273*x
22-0.1865*x
21-0.2290*x
23+0.0740*x
24である
請求項9に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法。
【請求項11】
電子機器であって、1つ又は複数のプロセッサ、1つ又は複数のメモリ、1つ又は複数のプログラム、及びデータ収集装置を備え、
前記データ収集装置は最適モデルに対応するx
1、x
2、x
3…x
z…x
mを取得するために使用され、前記1つ又は複数のプログラムは前記メモリに記憶され、前記1つ又は複数のプログラムが前記プロセッサにより実行されると、前記電子機器に請求項1ないし10のいずれかに記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法を実行させる
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイカ資源量の予測の技術分野に属し、太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
マイカTodarodes pacificus(スルメイカともいう)は世界で重要な経済的頭足類資源であり、太平洋北西海域及び東太平洋のアラスカ湾のみに分布している。主に西太平洋の21°-50°Nの海域、すなわち日本海、日本太平洋沿岸及び中国の黄海、東シナ海に分布している。それは暖温帯の海洋性浅海種であり、海面から500mの水層に生息し、適温範囲が広い。マイカの産卵期、成長タイプ及び回遊経路に応じて、冬季発生系群、秋季発生系群及び夏季発生系群の3つの系群に分けられる。それらは生活環が異なるが、習性が同じである。冬季発生系群は最も広く分布し、1970年代以前は、該系群は数量が最も大きく、産卵場が九州南西部の東シナ海大陸棚の外縁にあり、主に東シナ海の中部及び北部に集中し、産卵期が1-3月であり、春と夏には日本列島の両側に沿って北上して索餌し、秋と冬には南下して産卵する。
【0003】
マイカは世界で頭足類のうち最も早く大規模に開発利用されている種類の1つである。1970年代以前は、その漁獲量は日本国内の頭足類の総漁獲量の70-80%を占めていた。FAOの統計によると、1968年に、マイカの総漁獲量は、75万トンを超え、史上最高となった。しかし、漁獲強度の向上に伴い、以降、漁獲量は年々減少していた。1986年に、わずか12万トン余りで、1950年以来の最低漁獲量となった。その後、1996年まで連続的に増加し、年間漁獲量は略70万トンに達した。その後、再び減少し、現在、マイカの総漁獲量は32-42万トンとなり安定している。
【0004】
マイカの秋季発生系群の主な漁獲は日本海からであり、主な漁期が5~10月である。日本及び韓国は主な漁獲国であり、そのほか、北朝鮮及び中国も少量漁獲している。沿岸海域では、主に小型のイカ釣り漁船(30トン未満)であり、漁獲物を生鮮品とする。外海では、中型のイカ釣り漁船(30~185トン)であり、漁獲物を冷凍品とする。また、イカ釣りに加えて、定置網操業及び底引き網操業もある。日本の漁獲量は、70年代後半に30万トンに達し、その後減少し、1986年にわずか5万トン程度であり、その後増加し、90年代に7~18万トンとなり安定していた。近年、日本及び韓国の累計漁獲量は10~20万トンである。
【0005】
マイカの冬季発生系群は主に日本及び韓国により漁獲され、操業は主に釣り、底引き、定置網、巻き網等を含む。主な操業漁場は、7月に常磐-三陸太平洋沿岸から開始し、9~11月に北海道太平洋沿岸海域まで移動し、11月以降に日本海側に移動し、漁期の末期(12月~翌年の2月)に九州北西部海域である。冬季発生系群の漁獲量は1950~1960年代にピークを迎えた。主な漁場は北海道東部の太平洋海域であり、1968年、主な漁場の漁獲量は56万トンであり、日本全国のマイカ漁獲量の84%を占めた。その後、漁獲量は急激に減少し、1980年代に最低レベルとなった。1989年以降、漁獲量はある程度回復し、1996年に38万トンに達した。その後、漁獲量は常に大幅に変動している。現在、漁獲量は20~30万トンである。
【0006】
マイカ資源は海洋環境因子の影響を受けやすい。張碩ら(2017)は2000-2010年のマイカの冬季発生系群の単位努力量当たりの漁獲量(CPUE)、及び産卵期(1-3月)における産卵場(28°~40°N、125°~140°E)の海面水温(SST)データに基づいて、統計的に有意なSSTを、資源豊度に影響を与える因子として選択し、それぞれ多変数線形及びBPニューラルネットワークの資源豊度予測モデルを作成する。研究によると、30°~32°N、135°~138°E及び37°~38°N、129°~131°E付近海域の海面水温は1-3月の産卵場の暖流(黒潮及び対馬海流)の強さを表し、当年のマイカの冬季発生系群の資源豊度を左右し、作成されたBPニューラルネットワークモデルをその資源豊度の予測モデルとすることができる。胡飛飛ら(2015)は、日本によるマイカの秋季発生系群の資源評価レポート、及び産卵場の海面水温(SST)、クロロフィルaの質量濃度(Chl-a)に基づいて、マイカの産卵期における産卵場の月別の最適海面水温範囲の、総面積に対する比率(PS)、産卵場の環境を表すtSST、Chl-a等の様々な環境因子と単位努力量当たりの漁獲量(CPUE)との相関性を計算分析し、主要環境因子に基づく様々な資源補充量予測モデルを作成した。上記研究からわかるように、現在、中国国内外の各学者はスルメイカの秋季発生系群/冬季発生系群の産卵場の環境によるその資源補充量への影響を鋭意研究して、対応する資源量予測モデルを作成したが、どのようにして気候因子を利用してその資源量を事前に予測するかは未だに空白のままである。
【0007】
従って、気候因子に基づいてスルメイカの資源豊度を予測する方法を開発することは、非常に現実的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術に存在している問題及び欠陥を克服し、太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法及びその応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供し、
電子機器に適用され、スルメイカの遠洋漁獲を指導するために使用される太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法であって、
(1)過去N年間にスルメイカが分布していた海域の月別の太平洋振動指数PDO値を取得し、前記スルメイカはスルメイカ秋季発生系群又はスルメイカ冬季発生系群であるステップと、
(2)時系列分析方法を利用して、スルメイカ資源豊度CPUEと過去N年間の月別のPDO値に対して相関性分析を行い、そのうち統計的に有意な相関を示す月のPDO値を選択し、選択したこれらの月のPDO値を、スルメイカ資源豊度に影響を与える気候因子とし、選択したこれらの月のPDO値を1、2、3…z…mの順で番号付けし、これらの月のPDO値を順にx
1、x
2、x
3…x
z…x
m(mは選択した月のPDO値の数である)とするステップと、
(3)x
1、x
2、x
3…x
mのうちの任意1~m個の気候因子に対して、多変数線形方程式を利用して最多2
m-1個のスルメイカ資源豊度予測モデルを作成し、各予測モデルの統計的P値を計算し、スルメイカ資源豊度予測モデルの式は、
CPUE=a+b
1*x
1+b
2*x
2+b
3*x
3+…+b
z*x
z+…+b
m*x
mであり、
式中、CPUEは日本の中小型イカ釣り漁船の1日あたりの漁獲量、aは定数、b
1、b
2、b
3、…b
z…、b
nはそれぞれx
1、x
2、x
3…x
z…x
mに対応する係数であり、
(4)上記最多2
m-1個のスルメイカ資源豊度予測モデルのうち、統計的P値が最も小さいモデルを最適モデルとして選択するステップと、を含む。
【0010】
本発明に係る太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法によれば、気候因子(太平洋振動指数)とスルメイカ資源豊度の予測との関係を初めて作成し、気候因子(太平洋振動指数)によってスルメイカ資源豊度の迅速かつ正確な予測を実現でき、海洋漁業生産(スルメイカ秋季発生系群/スルメイカ冬季発生系群の漁獲)では優れた指導の役割を果たし、漁獲効率を大幅に向上させ、漁獲コストを低減させ、将来性が期待でき、また、本発明によって得られる最適モデルは一律ではなく、リアルタイムに取得される最新データに応じて最適モデルを再取得することができ、本発明の方法は適応性が高く、将来性が期待できる。
【0011】
好適な技術的解決手段としては、
前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法において、最適モデルを得た後、該最適モデルに対応するx1、x2、x3…xz…xmを取得して最適モデルに入力し、最適モデルがスルメイカ資源豊度を出力すると、スルメイカ資源豊度の予測が完了する。
【0012】
前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法において、スルメイカ予測モデルが気候因子xzに対して作成される場合、b1、b2、b3、…bz-1、bz+1、…、bnはいずれも0であり、以下同様に、スルメイカ資源豊度予測モデルが気候因子x1及びxzに対して作成される場合、b2、b3、…bz-1、bz+1、…、bnはいずれも0である。
【0013】
前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法において、前記統計的に有意な相関とは、算出されたP値<0.05である。P値は、統計では仮説検定の結果を判定するためのパラメータであり、P値(P value)は、帰無仮説を真とするときに得られる標本観察結果又はより極端な結果が発生する確率である。P値が非常に小さいと、帰無仮説状況の発生する確率が非常に小さいことを示し、発生したら、小確率原理に従って、帰無仮説を拒否する理由があり、P値が小さいほど、帰無仮説を拒否する理由が十分になる。要するに、P値が小さいほど、結果が有意であることを示す。
【0014】
スルメイカ秋季発生系群が分布している海域は日本海海域であり、
スルメイカ冬季発生系群が分布している海域は北海道の太平洋側海域である。
【0015】
前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法において、前記スルメイカはスルメイカ秋季発生系群であり、
ステップ(2)では、統計的に有意な相関を示す2つの月のPDO値、すなわち過去2年目の10月のPDO値及び過去1年目の10月のPDO値を選択し、スルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEと過去2年目の10月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数が-0.390(P<0.05)であり、スルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEと過去1年目の10月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数が-0.4486(P<0.05)であり、
スルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEと同年の月別のPDO値との相関性分析によると、スルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEと同年の1-12月のPDO値との相関性は有意ではない。
【0016】
ここ及び以下で言及される予測モデルの数は単にデータの一部で本発明の予測方法の動作ロジックを示すためのものであり、本発明の保護範囲はこれに限定されず、当業者は実際の必要に応じて適切なデータを選択してスルメイカ資源豊度を予測することができ、選択される統計的に有意な相関を示す月のPDO値の数は2個に限定されず、予測モデルの数は選択される統計的に有意な相関を示す月のPDO値の数に応じて変化する。
【0017】
前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法において、ステップ(3)では、以下の計3個の予測モデルを作成し、
1)予測モデルI
気候因子の過去2年目の10月のPDO値x11及び過去1年目の10月のPDO値x12に対して日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=2.3463-0.1674*x11-0.1977*x12であり、
F値は4.9268であり、P=0.0161<0.05であり、F値はF検定の統計値であり、F検定は帰無仮説(null hypothesis、H0)の下で統計値がF-分布に従う検定であり、通常、2個以上のパラメータを用いた統計モデルを分析して、該モデル中の全部又は一部のパラメータが母集団の推定に適用できるか否かを判断するために使用され、線形関係を検定するものであり、
2)予測モデルII
気候因子の過去2年目の10月のPDO値x11に対して日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=2.3894-0.2127*x11であり、
F値は4.4922であり、P=0.0442<0.05であり、
3)予測モデルIII
気候因子の過去1年目の10月のPDO値x12に対して日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=2.3958-0.2323*x12であり、
F値は6.2984であり、P=0.0189<0.05である。
【0018】
前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法において、ステップ(4)では、予測モデルIを最適モデルとして選択し、最適モデルは、
CPUE=2.3463-0.1674*x11-0.1977*x12である。
【0019】
前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法において、前記スルメイカはスルメイカ冬季発生系群であり、
ステップ(2)では、統計的に有意な相関を示す10個の月のPDO値、すなわち、過去2年目の10、11及び12月のPDO値、過去1年目の1、2、3及び4月のPDO値、同年の1、2、3及び4月のPDO値を選択し、
スルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEと過去2年目の10、11及び12月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4506(P<0.05)、-0.4985(P<0.05)及び-0.5878(P<0.01)であり、
スルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEと過去1年目の1、2、3及び4月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4665(P<0.05)、-0.4365(P<0.05)、-0.4295(P<0.05)及び-0.5072(P<0.01)であり、
スルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEと同年の1、2、3及び4月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4746(P<0.05)、-0.4837(P<0.05)、-0.5458(P<0.01)及び-0.5570(P<0.01)である。
【0020】
前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法において、ステップ(3)では、以下の計5個の予測モデルを作成し、
1)予測モデル1
気候因子の過去2年目の11月のPDO値x21、過去2年目の12月のPDO値x22、同年の2月のPDO値x23、同年の3月のPDO値x24及び過去1年目の3月のPDO値x25に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.2048+0.0330*x22-0.1811*x21-0.2260*x23+0.0749*x24-0.0196*x25であり、
F値は4.5183であり、P=0.0069<0.01であり、
2)予測モデル2
気候因子の過去2年目の11月のPDO値x21、過去2年目の12月のPDO値x22、同年の2月のPDO値x23及び同年の3月のPDO値x24に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.1968+0.0273*x22-0.1865*x21-0.2290*x23+0.0740*x24であり、
F値は5.9135であり、P=0.0026<0.01であり、
3)予測モデル3
気候因子の同年の2月のPDO値x23、同年の3月のPDO値x24及び過去1年目の3月のPDO値x25に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.3257-0.1120*x23-0.0461*x24-0.1307*x25であり、
F値は5.1699であり、P=0.0078<0.01であり、
4)予測モデル4
気候因子の同年の2月のPDO値x23及び同年の3月のPDO値x24に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.3093-0.0792*x23-0.1223*x24であり、
F値は5.1233であり、P=0.0149<0.05であり、
5)予測モデル5
気候因子の過去2年目の11月のPDO値x21及び過去2年目の12月のPDO値x22に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.1582+0.0383*x22-0.2125*x21であり、
F値は5.8894であり、P=0.0089<0.01である。
【0021】
前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法において、ステップ(4)では、予測モデル2を最適モデルとして選択し、最適モデルは、
CPUE=1.1968+0.0273*x22-0.1865*x21-0.2290*x23+0.0740*x24である。
【0022】
本分野の常識をもとに上記各好適な条件を任意に組み合わせることができ、それにより本発明の各好適な例が得られる。
【0023】
本発明は電子機器をさらに提供し、1つ又は複数のプロセッサ、1つ又は複数のメモリ、1つ又は複数のプログラム、及びデータ収集装置を備え、
前記データ収集装置は最適モデルに対応するx1、x2、x3…xz…xmを取得するために使用され、前記1つ又は複数のプログラムは前記メモリに記憶され、前記1つ又は複数のプログラムが前記プロセッサにより実行されると、前記電子機器に前記太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法を実行させる。
【発明の効果】
【0024】
有益な効果については
(1)本発明に係る太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法によれば、太平洋振動指数PDOを利用してスルメイカ資源豊度の予測を実現することで、海洋漁業生産(スルメイカの漁獲)では優れた指導の役割を果たし、漁獲効率を大幅に向上させ、漁獲コストを低減させ、将来性が期待できる。
【0025】
(2)本発明に係る太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法によれば、最適モデルは一律ではなく、リアルタイムに取得される最新データに応じて最適モデルを再取得することができ、本発明の方法は適応性が高く、将来性が期待できる。
【0026】
(3)本発明に係る電子機器は、構成が簡単で、コストが低く、太平洋振動指数PDOに基づいてスルメイカ資源豊度を迅速に予測でき、将来性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は本発明に係る太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は1990-2016年のスルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEの年間変化図である。
【
図3】
図3は1990-2016年の日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEの実際値及び予測値の変化分布図である。
【
図4】
図4は1992-2016年のスルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEの年間変化模式図である。
【
図5】
図5は1992-2016年の日本海のスルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEの実際値及び予測値の変化分布図である。
【
図6】
図6は本発明に係る電子機器の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例の図面を参照しながら本発明の実施例の技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、明らかなように、説明される実施例は本発明の一部の実施例であり、全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力をせずに想到し得るほかの実施例はすべて本発明の保護範囲に属する。
【0029】
図1に示すように、スルメイカの遠洋漁獲を指導するために使用される太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法は、
過去N年間にスルメイカが分布していた海域の月別の太平洋振動指数PDO値を取得し、スルメイカはスルメイカ秋季発生系群又はスルメイカ冬季発生系群であり、スルメイカ秋季発生系群が分布している海域は日本海海域であり、スルメイカ冬季発生系群が分布している海域は北海道の太平洋側海域であるステップ101と、
時系列分析方法を利用して、スルメイカ資源豊度CPUEと過去N年間の月別のPDO値に対して相関性分析を行い、そのうち統計的に有意な相関を示す月のPDO値を選択し、選択したこれらの月のPDO値を、スルメイカ資源豊度に影響を与える気候因子とし、選択したこれらの月のPDO値を1、2、3…z…mの順で番号付けし、これらの月のPDO値を順にx
1、x
2、x
3…x
z…x
m(mは選択した月のPDO値の数である)とするステップ102と、
x
1、x
2、x
3…x
mのうちの任意1~m個の気候因子に対して、多変数線形方程式を利用して最多2
m-1個のスルメイカ資源豊度予測モデルを作成し、各予測モデルの統計的P値を計算し、スルメイカ資源豊度予測モデルの式は、
CPUE=a+b
1*x
1+b
2*x
2+b
3*x
3+…+b
z*x
z+…+b
m*x
mであり、
式中、CPUEは日本の中小型イカ釣り漁船の1日あたりの漁獲量、aは定数、b
1、b
2、b
3、…b
z…、b
nはそれぞれx
1、x
2、x
3…x
z…x
mに対応する係数であるステップ103と、
上記最多2
m-1個のスルメイカ資源豊度予測モデルのうち、統計的P値が最も小さいモデルを最適モデルとして選択するステップ104と、
該最適モデルに対応するx
1、x
2、x
3…x
z…x
mを取得して最適モデルに入力し、最適モデルがスルメイカ資源豊度を出力すると、スルメイカ資源豊度の予測が完了するステップ105と、を含む。
【0030】
実施例1
【0031】
1、資料及び方法
【0032】
(1)データソース
【0033】
スルメイカ秋季発生系群は日本海の周辺海域に幅広く分布しており、主な操業漁場は日本海に分布しており、その産卵場及び索餌場の環境状況は太平洋振動指数(Pacific Decadal Oscillation、PDO)の影響を受けやすい。太平洋振動指数は10年周期で変化する太平洋気候変化現象である。変換周期は通常20~30年である。PDOの特徴は、太平洋北緯20度以北の地域の海面水温が異常に高く又は低いことである。太平洋十年規模振動の「温暖位相」(又は「正位相」)期間において西太平洋が寒く、東太平洋が暖かく、「冷却位相」(又は「負位相」)期間において西太平洋が暖かく、東太平洋が寒い。PDOはアメリカのワシントン大学のウェブサイト(http://research.jisao.washington.edu/pdo/PDO.latest.txt)からであり、期間が1988年1月~2017年12月(表1)である。
【0034】
スルメイカ秋季発生系群資源豊度指数CPUE(単位はトン/船)は日本の中小型イカ釣り漁船の漁獲量からであり、期間が1990年~2016年(表2)である。
【0035】
【0036】
【0037】
(2)研究方法及びステップ
【0038】
日本の中小型イカ釣り漁船の1日あたりの漁獲量CPUEをスルメイカ秋季発生系群資源豊度の指標とし、時系列分析方法を利用して、スルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEと1988-2016年1-12月のPDO値に対して相関性分析を行い、そのうち統計的に有意な相関(P値<0.05)を示す月のPDO値を選択し、選択したこれらの月のPDO値を、スルメイカ秋季発生系群資源豊度に影響を与える気候因子とし、選択したこれらの月のPDO値を1、2、3…z…mの順で番号付けし、これらの月のPDO値を順にx1、x2、x3…xz…xm(mは選択した月のPDO値の数である)とし、
x1、x2、x3…xmのうちの任意1~m個の気候因子に対して、多変数線形方程式を利用して最多2m-1個のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、各予測モデルの統計的P値を計算し、スルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルの式は、
CPUE=a+b1*x1+b2*x2+b3*x3+…+bz*xz+…+bm*xmであり、
式中、CPUEは1日1隻あたりの漁獲量、aは定数、b1、b2、b3、…bz…、bnはそれぞれx1、x2、x3…xz…xmに対応する係数であり、
上記最多2m-1個のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルのうち、統計的P値が最も小さいモデルを最適モデルとして選択し、
該最適モデルに対応するx1、x2、x3…xz…xmを取得して最適モデルに入力し、最適モデルがスルメイカ秋季発生系群資源豊度を出力すると、スルメイカ秋季発生系群資源量の予測が完了する。
【0039】
2、研究結果
【0040】
(1)年間資源豊度CPUEの変化
【0041】
図2からわかるように、スルメイカ秋季発生系群資源豊度CPUEは大きな年間変化を示し、1990-1992、2001-2002年、2004-2005年、2015-2016年では低い資源量レベルであったが、2001-2003年、2008-2009年では高い資源量レベルであった。
【0042】
(2)資源豊度CPUEに影響を与えるPDO値
【0043】
資源豊度CPUEと過去2年目の月別のPDO値との相関性分析を行った結果、資源豊度CPUEと過去2年目の10月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.390(P<0.05)であり、
資源豊度CPUEと過去1年目の月別のPDO値との相関性分析を行った結果、資源豊度CPUEと過去1年目の10月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4486(P<0.05)であり、
資源豊度CPUEと同年の月別のPDO値との相関性分析を行った結果、資源豊度CPUEと同年の1-12月のPDO値との相関性は有意ではない。
【0044】
(3)資源豊度予測モデルの作成
【0045】
1)予測モデルI
気候因子の過去2年目の10月のPDO値x11及び過去1年目の10月のPDO値x12に対して日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=2.3463-0.1674*x11-0.1977*x12であり、
F値は4.9268であり、P=0.0161<0.05であり、
実際値と予測値の統計表は表3に示される。
【0046】
【0047】
2)予測モデルII
気候因子の過去2年目の10月のPDO値x11に対して日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=2.3894-0.2127*x11であり、
F値は4.4922であり、P=0.0442<0.05であり、
実際値と予測値の統計表は表4に示される。
【0048】
【0049】
3)予測モデルIII
気候因子の過去1年目の10月のPDO値x12に対して日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=2.3958-0.2323*x12であり、
F値は6.2984であり、P=0.0189<0.05であり、
実際値と予測値の統計表は表5に示される。
【0050】
【0051】
上記3個のモデルを比較分析した結果、予測モデルIを最適モデルとして選択し、最適モデルは、CPUE=2.3463-0.1674*x
11-0.1977*x
12である。1990~2016年の結果に対応するx
11及びx
12を最適モデルに入力して予測値を得て(2000年の結果を例にすると、x
11は1998年10月のPDO値、x
12は1999年10月のPDO値である)、その実際値と予測値の資源豊度の変化傾向は
図3に示され、
図3からわかるように、予測値と実際値の変化傾向はほぼ同じであり、つまり、本発明の方法によって、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度を効果的に予測できる。
【0052】
実施例2
【0053】
1、資料及び方法
【0054】
(1)データソース
【0055】
スルメイカ冬季発生系群は日本海の周辺海域に幅広く分布しており、主な操業漁場は北海道の太平洋側海域に分布しており、その産卵場及び索餌場の環境状況は太平洋振動指数(Pacific Decadal Oscillation、PDO)の影響を受けやすい。太平洋振動指数は10年周期で変化する太平洋気候変化現象である。変換周期は通常20~30年である。PDOの特徴は、太平洋北緯20度以北の地域の海面水温が異常に高く又は低いことである。太平洋十年規模振動の「温暖位相」(又は「正位相」)期間において西太平洋が寒く、東太平洋が暖かく、「冷却位相」(又は「負位相」)期間において西太平洋が暖かく、東太平洋が寒い。PDOはアメリカのワシントン大学のウェブサイト(http://research.jisao.washington.edu/pdo/PDO.latest.txt)からであり、期間が1990年1月~2017年12月(表6)である。
【0056】
スルメイカ冬季発生系群資源豊度指数CPUE(単位はトン/船)は日本の中小型イカ釣り漁船の漁獲量からであり、期間が1992年-2016年(表7)である。
【0057】
【0058】
【0059】
(2)研究方法及びステップ
【0060】
日本の中小型イカ釣り漁船の1日あたりの漁獲量CPUEをスルメイカ冬季発生系群資源豊度の指標とし、時系列分析方法を利用して、スルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEと1990-2016年1-12月のPDO値に対して相関性分析を行い、そのうち統計的に有意な相関(P値<0.05)を示す月のPDO値を選択し、選択したこれらの月のPDO値を、スルメイカ冬季発生系群資源豊度に影響を与える気候因子とし、選択したこれらの月のPDO値を1、2、3…z…mの順で番号付けし、これらの月のPDO値を順にx1、x2、x3…xz…xm(mは選択した月のPDO値の数である)とし、
x1、x2、x3…xmのうちの任意1~m個の気候因子に対して、多変数線形方程式を利用して最多2m-1個のスルメイカ冬季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、各予測モデルの統計的P値を計算し、スルメイカ冬季発生系群資源豊度予測モデルの式は、
CPUE=a+b1*x1+b2*x2+b3*x3+…+bz*xz+…+bm*xmであり、
式中、CPUEは1日1隻あたりの漁獲量、aは定数、b1、b2、b3、…bz…、bnはそれぞれx1、x2、x3…xz…xmに対応する係数であり、
上記最多2m-1個のスルメイカ冬季発生系群資源豊度予測モデルのうち、統計的P値が最も小さいモデルを最適モデルとして選択し、
該最適モデルに対応するx1、x2、x3…xz…xmを取得して最適モデルに入力し、最適モデルがスルメイカ冬季発生系群資源豊度を出力すると、スルメイカ冬季発生系群資源量の予測が完了する。
【0061】
2、研究結果
【0062】
(1)年間資源豊度CPUEの変化
【0063】
図4からわかるように、スルメイカ冬季発生系群資源豊度CPUEは大きな年間変化を示し、1992、1996、2007-2009年、2011年では高い資源量レベルであったが、1998-1999年、2006年、2015-2016年では低い資源量レベルであった。
【0064】
(2)資源豊度CPUEに影響を与えるPDO値
【0065】
資源豊度CPUEと過去2年目の月別のPDO値との相関性分析を行った結果、資源豊度CPUEと過去2年目の10-12月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4506(P<0.05)、-0.4985(P<0.05)、-0.5878(P<0.01)であり、
資源豊度CPUEと過去1年目の月別のPDO値との相関性分析を行った結果、資源豊度CPUEと過去1年目の1-4月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4665(P<0.05)、-0.4365(P<0.05)、-0.4295(P<0.05)、-0.5072(P<0.01)であり、
資源豊度CPUEと同年の月別のPDO値との相関性分析を行った結果、資源豊度CPUEと同年の1-4月のPDO値との相関性は有意であり、負の相関を示し、相関係数がそれぞれ-0.4746(P<0.05)、-0.4837(P<0.05)、-0.5458(P<0.01)、-0.5570(P<0.01)である。
【0066】
(3)資源豊度予測モデルの作成
【0067】
1)予測モデル1
気候因子の過去2年目の11月のPDO値x21、過去2年目の12月のPDO値x22、同年の2月のPDO値x23、同年の3月のPDO値x24及び過去1年目の3月のPDO値x25に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.2048+0.0330*x22-0.1811*x21-0.2260*x23+0.0749*x24-0.0196*x25であり、
F値は4.5183であり、P=0.0069<0.01であり、
実際値と予測値の統計表は表8に示される。
【0068】
【0069】
2)予測モデル2
気候因子の過去2年目の11月のPDO値x21、過去2年目の12月のPDO値x22、同年の2月のPDO値x23及び同年の3月のPDO値x24に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.1968+0.0273*x22-0.1865*x21-0.2290*x23+0.0740*x24であり、
F値は5.9135であり、P=0.0026<0.01であり、
実際値と予測値の統計表は表9に示される。
【0070】
【0071】
3)予測モデル3
気候因子の同年の2月のPDO値x23、同年の3月のPDO値x24及び過去1年目の3月のPDO値x25に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.3257-0.1120*x23-0.0461*x24-0.1307*x25であり、
F値は5.1699であり、P=0.0078<0.01であり、
実際値と予測値の統計表は表10に示される。
【0072】
【0073】
4)予測モデル4
気候因子の同年の2月のPDO値x23及び同年の3月のPDO値x24に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.3093-0.0792*x23-0.1223*x24であり、
F値は5.1233であり、P=0.0149<0.05であり、
実際値と予測値の統計表は表11に示される。
【0074】
【0075】
5)予測モデル5
気候因子の過去2年目の11月のPDO値x21及び過去2年目の12月のPDO値x22に対して、日本海のスルメイカ秋季発生系群資源豊度予測モデルを作成し、具体的には、
CPUE=1.1582+0.0383*x22-0.2125*x21であり、
F値は5.8894であり、P=0.0089<0.01であり、
実際値と予測値の統計表は表12に示される。
【0076】
【0077】
上記5個のモデルを比較分析した結果、予測モデル2を最適モデルとして選択し、最適モデルは、CPUE=1.1968+0.0273*x
22-0.1865*x
21-0.2290*x
23+0.0740*x
24である。1992~2016年の結果に対応するx
22、x
21、x
23及びx
24を最適モデルに入力して予測値を得て(2000年の結果を例にすると、x
21は1998年11月のPDO値、x
22は1998年12月のPDO値、x
23は2000年2月のPDO値、x
24は2000年3月のPDO値である)、実際値と予測値の資源豊度の変化傾向は
図5に示され、
図5からわかるように、予測値と実際値の変化傾向はほぼ同じであり、つまり、本発明の方法によって、日本海のスルメイカ冬季発生系群資源豊度を効果的に予測できる。
【0078】
実施例3
【0079】
電子機器であって、
図6に示すように、1つ又は複数のプロセッサ、1つ又は複数のメモリ、1つ又は複数のプログラム、及びデータ収集装置を備え、
データ収集装置は最適モデルに対応するx
1、x
2、x
3…x
z…x
mを取得するために使用され、1つ又は複数のプログラムはメモリに記憶され、1つ又は複数のプログラムがプロセッサにより実行されると、電子機器に実施例1又は実施例2に記載の太平洋振動指数に基づくスルメイカ資源豊度の予測方法を実行させる。
【0080】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、当業者であれば、これらは単に例示的な説明であり、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲に定められると理解できる。当業者は本発明の原理及び趣旨を逸脱せずに、これらの実施形態に対して種々の変更や修正を行うことができ、これらの変更や修正はすべて本発明の保護範囲に属する。