(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20221013BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20221013BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
B01J19/12 C
(21)【出願番号】P 2021115970
(22)【出願日】2021-07-13
【審査請求日】2021-07-16
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】521310381
【氏名又は名称】PoC TECH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167184
【氏名又は名称】井上 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】青澤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】小澤 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】田島 琢巳
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-135570(JP,A)
【文献】登録実用新案第3231661(JP,U)
【文献】特開2006-296968(JP,A)
【文献】登録実用新案第3230607(JP,U)
【文献】特開2009-50584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00-19/32
C02F 1/30- 1/38
A61L 9/00- 9/22
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底の本体部と、
前記本体部に配置されたねじ溝に螺合して蓋体が回転して停止位置に配置されることで前記本体部を覆い閉空間を形成する蓋体と、
前記閉空間内に配置される被照射物に紫外線を照射する照射部と、
を有し、
前記蓋体は、導電性を有する伸縮部と、前記伸縮部を伸張方向に付勢するバネを有し、
前記本体部は、前記蓋体が前記停止位置に配置されたとき、前記バネを付勢して前記バネを収縮させて前記伸縮部に通電する付勢手段を有し、
前記通電により前記照射部が紫外線を照射する、
ことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記蓋体が停止位置の手前に配置されているとき前記伸縮部に接触し、前記伸縮部への付勢を漸増する斜部と、前記蓋体が停止位置に配置されているときに前記斜部に位置していたときよりも前記伸縮部を強く付勢する頂部とを有する請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記本体部は円環状の開口部を有し、
前記蓋体が前記本体部に螺合して180度回転して閉まったときに、前記通電により前記照射部が紫外線を照射する請求項1または2に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
UV-C照射は、水中、大気中、固体表面のバクテリアとウィルスを不活性化するための殺菌方法として効果が証明されている。
空の容器、内容物が充填された容器、又は内容物自体を熱と紫外線照射を用いて殺菌する殺菌装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「殺菌用UV-C照射に関するポジションステートメント UV-C安全ガイドライン」、[online]、2020年8月、一般社団法人日本照明工業会、[令和3年6月1日検索]、インターネット<URL:https://www.jlma.or.jp/anzen/covid-19/pdf/GLA_UV-C_Safety_Position_Statement_japanese.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの研究により、紫外線は、人体に影響を及ぼすことが知られつつある。このため、照射される紫外線が装置の外部に漏れないようにするのが好ましい。
1つの側面では、本発明は、紫外線が容器の外部に漏れ出すことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、開示の紫外線照射装置が提供される。この紫外線照射装置は、有底の本体部と、本体部に配置されたねじ溝に螺合して蓋体が回転して停止位置に配置されることで本体部を覆い閉空間を形成する蓋体と、閉空間内に配置される被照射物に紫外線を照射する照射部と、を有し、蓋体は、導電性を有する伸縮部と、伸縮部を伸張方向に付勢するバネを有し、本体部は、蓋体が停止位置に配置されたとき、バネを付勢してバネを収縮させて伸縮部に通電する付勢手段を有し、通電により照射部が紫外線を照射する。
【発明の効果】
【0007】
1態様では、紫外線が容器の外部に漏れ出すことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態の紫外線照射装置を示す斜視図である。
【
図6】端子部と導電性スイッチとの位置関係を説明する図である。
【
図7】端子部と導電性スイッチとの位置関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態の紫外線照射装置を、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
以下の図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲等に限定されない。
実施の形態において単数形で表される要素は、文面で明らかに示されている場合を除き、複数形を含むものとする。
<実施の形態>
図1は、実施の形態の紫外線照射装置を示す斜視図である。
【0011】
実施の形態の紫外線照射装置100は、UV-Cの深紫外線を照射する装置である。ここで、UV-Cは、紫外線(UV)スペクトルの一部を形成し、ISO規格ISO-21348において、100nmから280nmの波長を有するものとして定義されている。
紫外線照射装置100は、本体部1と蓋部2とを有している。
【0012】
本体部1および蓋部2にはねじ溝(後述)が設けられている。蓋部2は、本体部1に設けられたねじ溝に螺合して蓋部2が回転して停止位置に配置される。これにより、本体部1を覆い閉空間(外部に紫外線が漏れない空間)を形成する。
本体部1には紫外線照射対象物(例えばマスク等)が配置される。
蓋部2には、ケーシング21と、取っ手22と、LED(発光部)23a、23b、23cとが配置されている。
【0013】
ケーシング21は、蓋部2が備えるUV―C LEDや制御回路等(後述)を収容する筐体である。UV―C LEDは、照射部の一例である。ケーシング21の構成材料は特に限定されないが例えばポリプロピレン等が挙げられる。
【0014】
取っ手22はケーシング21に取り付けられており、例えば利用者が蓋部2を回転させる際に把持する。取っ手22とケーシング21は一体的に形成されていてもよいし、別個の部材であってもよい。
【0015】
LED23a、23b、23cは、紫外線の照射状況を説明する。LED23a、23b、23cの発光パターンにより、例えばスタンバイ(紫外線照射前)、紫外線照射中、紫外線照射終了等を利用者に報知することができる。
図2は、蓋部の裏面を説明する図である。
【0016】
蓋部2の裏面には、ねじ溝24と、UV―C LED25と、タイマ制御基板26と、電源制御基板27と、導電性スイッチ28とが配置されている。なお、蓋部2の裏面には、UV―C LED25と導電性スイッチ28以外を覆う光反射板(図示せず)が配置されていてもよい。
ねじ溝24は、本体部1に設けられたねじ溝と螺合する。
【0017】
UV―C LED25は、通電によりUV-Cを照射する。UV―C LED25は、蓋部2の裏面に配置されている。このため、紫外線は本体部1の内部に照射される。このUV―C LED25を取り囲むように放熱板25aが配置されている。放熱板25aは、例えばアルミニウム等の金属で形成され、UV―C LED25から生じる熱を冷却する。
タイマ制御基板26は、UV―C LED25を照射する時間を制御する。またタイマ制御基板26は、LED23a~23cの発行パターン等を制御する。
電源制御基板27は、UV―C LED25に供給する電力を制御する。
導電性スイッチ28は、本体部に配置される接触端子(後述)に対応する位置に配置されている。
図3は、導電性スイッチを説明する図である。
導電性スイッチ28は、ベース28aと、伸縮部28bと、バネ28cとを有している。
ベース28aは、タイマ制御基板26に取り付けられる。ベース28aには、端子28a1が取り付けられている。
【0018】
伸縮部28bは、ベース28aに対し伸縮可能であり、紙面下方向からの圧により縮む。伸縮部28bの下端部には紙面下側が湾曲した接触端子28b1が配置されている。
【0019】
バネ28cは、伸縮部28bを取り囲むように配置されている。バネ28cは、ベース28aと伸縮部28bの接触端子28b1とにより支持される。バネ28cは、伸縮部28bを紙面下方向に付勢する。
ベース28a、伸縮部28bは金属等の導電性を有する部材で形成されている。
図4は本体部の平面図である。
【0020】
本体部1は、平面視で円形状をなしている。本体部1は、平らな円形の底部11を有し、内部はサラダボウルのような形状をなしている。本実施の形態の本体部1は、ステンレス鋼で形成されている。
本体部1の円環状の開口部12の外部近傍には、蓋部2のねじ溝24に嵌合するねじ溝13が形成されている。
【0021】
本体部1の開口部12の内部の縁部近傍には、ほぼ180°隔てて2つの端子部14、14が配置されている。また、
図4には図示していないが、
図1に示すように本体部1にはDC12Vを取り込む端子が設けられている。端子部の数は2つに限定されない。
なお、本実施の形態ではAC100VをDC12Vに変換する機能を本体部1の外部に配置するが、本体部1が変換機能を有していてもよい。
図5は、端子部を説明する図である。
端子部14は、任意の固定手段(接着、半田付け等)により本体部1に固定される。
図5(a)に示す端子部14は、六角形をなしており、頂部(第2の部位)14aと、斜部(第1の部位)14b、14bとを有している。
【0022】
頂部14aには、導電性を有する接触端子14cが配置されている。
図5(b)は、
図5(a)に示す端子部を上から見た図である。
図5(b)に示すように、接触端子14cは、長手方向の端部141cが内側に湾曲している。これにより、接触端子14が接触端子28b1と接触したときに衝撃を和らげることができる。なお、本実施の形態では、接触端子14cの両端部を湾曲させた形状としたが、これに限らず、接触端子28b1と接触する側(本実施の形態では紙面左側)のみを湾曲させた形状としてもよい。
【0023】
接触端子14cには、導線14dを介してDC12Vが供給される。導線14dは、例えば紫外線硬化接着剤で覆われていてもよい。また、例えば紫外線照射対策として、端子部14に銀色の塗装が施されていてもよい。
次に、紫外線照射装置100の作用の一例を説明する。
【0024】
(1)本体部1と蓋部2とが螺合している場合は、利用者は取っ手22を把持して蓋部2を180度回転させて本体部1から取り外す。蓋部2は180度回転して開閉する仕組みになっている。
【0025】
(2)本体部1にマスク等の紫外線照射対象物を入れる。紫外線照射対象物に紫外線が万遍なく照射されるように紫外線照射対象物を底部11付近に設置するのが好ましい。好ましい設置位置を示すマーカーが本体部1に配置されていてもよい。
【0026】
(3)利用者は取っ手22を把持して蓋部2を本体部1に螺合する。蓋部2は180度回転して閉まる。蓋部2が閉まった状態では本体部1と蓋部2とにより密閉空間が形成され、密閉空間は気密に保たれる。また外部に光が漏れないようになっている。
【0027】
(4)蓋が閉まると、タイマ制御基板26にDC12Vが供給される。これによりタイマ制御基板26が起動する。タイマ制御基板26は紫外線の照射スタンバイの発光パターンに従い、LED23a、23b、23cを発光させる。一例として5秒間経過後、タイマ制御基板26は、電源制御基板27に電力を供給する。これによりUV―C LED25がUV-Cを照射する。UV―C LED25がUV-Cを照射すると、タイマ制御基板26は紫外線の照射中の発光パターンに従い、LED23a、23b、23cを発光させる。タイマ制御基板26は、タイマにて所定のエネルギーに達する照射時間(例えば30秒)を計測する。照射時間が終了すると、タイマ制御基板26は電源制御基板27への電力の供給を停止する。これによりUV―C LED25がUV-Cの照射を停止する。
(5)利用者は取っ手22を把持して蓋部2を180度回転させて本体部1から取り外す。利用者は紫外線照射対象物を本体部1から取り出す。
次に、上記(1)の端子部14と導電性スイッチ28との位置関係を説明する。
図6および
図7は、端子部と導電性スイッチとの位置関係を説明する図である。
【0028】
蓋部2を閉める方向に回転させると、接触端子28b1が斜部14bに接触する。蓋部2が回転するにつれて、斜部14bにより接触端子28b1への付勢が漸増し伸縮部28bが収縮する。
【0029】
蓋部2が180度回転して蓋が閉まった状態では、接触端子28b1は、接触端子14cに接触する。これにより、導線14d、接触端子14c、接触端子28b1(伸縮部28b)、ベース28a、端子28a1を経由してタイマ制御基板26にDC12Vが供給される。蓋部2を開ける方向に回転させると、接触端子28b1が接触端子14cから離間する。これにより、タイマ制御基板26および電源制御基板27への電力の供給がストップする。従って、UV―C LED25の照射中に蓋部2を開けようとするとUV―C LED25に駆動電力が供給されなくなるため、紫外線が容器の外部に漏れ出すことを抑制できる。
【0030】
なお、接触端子28b1が接触端子14cから離間して、さらにある程度蓋部2を開ける方向に回転させないと蓋部2を本体部1から取り外すことはできないよう設計されている。また、蓋部2が回転してタイマ制御基板26に電力が供給されるときは、本体部1の開口部より下にUV―C LED25が位置している。また、溝部の構造により、UV―C LED25から照射した光が外部に漏れないようになっている。
【0031】
以上述べたように、本実施の形態の紫外線照射装置100によれば、有底の本体部1と、本体部1に配置されたねじ溝に螺合して蓋部2が回転して停止位置に配置されることで本体部1を覆い閉空間を形成する蓋部2と、閉空間内に配置される被照射物に紫外線を照射するUV―C LED25と、を有し、蓋部2は、導電性を有する伸縮部28bと、伸縮部28bを伸張方向に付勢するバネ28cを有し、本体部1は、蓋部2が停止位置に配置されたとき、バネ28cを付勢してバネ28cを収縮させて伸縮部28bに通電する端子部14を有し、通電によりUV―C LED25が紫外線を照射する。
【0032】
従って、蓋部2が停止位置に配置されなければ紫外線が照射されないため、紫外線が容器の外部に漏れ出すことを抑制できる。また、蓋部2を開け閉めするだけで簡単に電源のオン、オフが可能である。
【0033】
UV-Cは直視したり皮膚に当たったりすると人体に悪影響を及ぼすおそれがあるため、実施の形態の紫外線照射装置100では、蓋部2を開けると必ず電源が落ちる。ネジ構造の為、隙間からは照射を覗けない。
【0034】
また、UV―C LED25の照射を開始する前に一定期間(本実施の形態では5秒間)のスタンバイ期間を設けることにより、蓋の開け閉めを短期間で繰り返してもUV―C LED25の照射に一定の期間が設けられる。従って、UV―C LED25の故障の抑制、長寿命化が図れる。
【0035】
また、本実施の形態では接触端子28b1と、接触端子14cとの接触面積が一定である。これにより、例えば接触面積が変わる板バネ構造などに比べて、長寿命化が図れる。
また、接触端子28b1は湾曲しているため、接触端子14cとの接触が滑らかとなる。従って、操作性がよく耐久性が高い。
【0036】
直流電源の電極は変化しないが、蓋部2のねじ始めとねじ終わりが180度・2箇所あり、タイマ制御基板26に入力される電圧の極性は締め込み位置で変化する。
タイマ制御基板26は極性を判断し、電源制御基板27に正しい極性で直流電源を供給する。
また、接触端子28b1を円弧状とすることで、接触端子14cの損傷を抑制することができる。
なお、本実施の形態ではUV―C LED25を蓋部側に配置したが、本体側に配置してもよい。
また、端子部14が本体部1に内蔵(埋め込まれる)されていてもよい。
【0037】
また、利用者は取っ手22を把持して蓋部2を本体部1に螺合するが、蓋部2を本体部1に締めすぎを抑制するため蓋部が停止位置に達したときに音や光で利用者に報知するようにしてもよい。
【0038】
以上、本発明の紫外線照射装置を、図示の実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。例えば、本実施の形態では、端子部14の形状を六角形状としたが、これに限られない。
図8は、端子部の変形例を説明する図である。
【0039】
例えば
図8(a)に示すように、斜部14bが一様に漸増する五角形状の端子部141であってもよい。
図8(b)に示すように、斜部14bが円弧状の端子部142であってもよい。
また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
また、本発明は、前述した各実施の形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 本体部
11 底部
12 開口部
13 ねじ溝
14 端子部
14a 頂部
14b 斜部
14c 接触端子
14d 導線
2 蓋部
21 ケーシング
22 取っ手
23a、23b、23c LED
24 ねじ溝
25 UV―C LED
25a 放熱板
26 タイマ制御基板
27 電源制御基板
28 導電性スイッチ
28a ベース
28a1 端子
28b 伸縮部
28b1 接触端子
28c バネ
100 紫外線照射装置
【要約】
【課題】紫外線が容器の外部に漏れ出すことを抑制する。
【解決手段】紫外線照射装置100によれば、有底の本体部1と、本体部1に配置されたねじ溝に螺合して蓋体2が回転して停止位置に配置されることで本体部1を覆い閉空間を形成する蓋体2と、閉空間内に配置される被照射物に紫外線を照射するUV―C LEDと、を有し、蓋体2は、導電性を有する伸縮部28bと、伸縮部28bを伸張方向に付勢するバネ28cを有し、本体部1は、蓋体2が停止位置に配置されたとき、バネ28cを付勢してバネ28cを収縮させて伸縮部28bに通電する端子部14を有し、通電によりUV―C LEDが紫外線を照射する。
【選択図】
図6