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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】皮膚外用剤用キット
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20221013BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221013BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/365
A61K8/73
A61Q19/00
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/38
A61P17/00
A61K33/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021187455
(22)【出願日】2021-11-18
(62)【分割の表示】P 2020024518の分割
【原出願日】2015-08-28
(65)【公開番号】P2022028825
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 隆行
(72)【発明者】
【氏名】山下 実夏
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-181192(JP,A)
【文献】特開2014-185125(JP,A)
【文献】特開2015-214515(JP,A)
【文献】特開2016-008181(JP,A)
【文献】特開2013-063955(JP,A)
【文献】特開2015-110634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 31/33-33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性皮膚外用剤を得るためのキットであって、炭酸ガス発生物質、酸、ゲル化剤、多価アルコール及び水を含有し、第一剤の粘度が5200~430300mPa・sであり、第二剤の粘度が2740mPa・s以下であり、以下の(A)又は(B)のいずれかの形態であることを特徴とするキット。
(A)第一剤が炭酸ガス発生物質、ゲル化剤及び水を含有する組成物であり、第二剤が酸、水及び多価アルコールを含有する組成物。
(B)第一剤が酸、ゲル化剤及び水を含有する組成物であり、第二剤が炭酸ガス発生物質、水及び多価アルコールを含有する組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性皮膚外用剤を得るためのキットであって、第一剤が炭酸ガス発生物質、ゲル化剤及び水を含有する組成物であり、第二剤が酸、水及び多価アルコールを含有する組成物であることを特徴とするキットに関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスが皮膚に作用すると皮膚の血行促進効果があることから、種々の炭酸ガスを利用した皮膚外用剤が提案されている。これらの多くは、酸と炭酸ガス発生物質の反応により、炭酸ガスを発生させるものである。例えば、発生した炭酸ガスの効果を保持するために、酸、水及び増粘剤を含む含水粘性組成物と、固体状の炭酸ガス発生物質を使用直前に混合して使用する方法が提案されている(特許文献1)。また、加水分解されて酸を生じる物質、炭酸塩、増粘剤、カルシウムイオンによってゲル化するゲル化剤、及び水不溶性又は水難溶性カルシウム塩を含む粒状物に、使用直前に水と混合して使用する方法が提案されている(特許文献2)。また、キシログルカンと多価アルコールによりゲル化する組成物を用いる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO99/24043号公報
【文献】WO2006/80398号公報
【文献】特開2014-181192号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で炭酸ガスを発生させる場合、含水粘性組成物と固体状の炭酸ガス発生物質との均一な混合は困難であり、炭酸ガスによる発泡にムラが生じやすく、発泡が開始するまでに時間がかかってしまう。また、特許文献2に記載の方法では、水の計量に手間がかかるため、使用者にとっては面倒であり、また、使用する水の品質により使用時の粘度や炭酸ガス発生量が一定にならず、使用毎に効果が異なってしまう。また、特許文献3に記載の方法では、使用後の除去は容易であるものの、組成物の粘性が高い上にゲル化しやすい設計であるため、炭酸ガスの効果が得られにくいものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、混合時に均一に混ざりやすく、炭酸ガスがムラなく発生し、一定品質の発泡性皮膚外用剤を得るためのキットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発泡性皮膚外用剤を得るためのキット(以下、本発明のキットとも言う)を提供するものである。
<1>発泡性皮膚外用剤を得るためのキットであって、炭酸ガス発生物質、酸、ゲル化剤、多価アルコール及び水を含有し、以下の(A)又は(B)のいずれかの形態であることを特徴とするキット。
(A)第一剤が炭酸ガス発生物質、ゲル化剤及び水を含有する組成物であり、第二剤が酸、水及び多価アルコールを含有する組成物。
(B)第一剤が酸、ゲル化剤及び水を含有する組成物であり、第二剤が炭酸ガス発生物質、水及び多価アルコールを含有する組成物。
<2>第一剤のゲル化剤がタマリンドガムであることを特徴とする、<1>に記載のキット。
<3>第二剤が、液状の組成物であることを特徴とする、<1>又は<2>のいずれかに記載のキット。
<4>第一剤の粘度が、100mPa・s以上であることを特徴とする、<1>~<3>のいずれかに記載のキット。
<5>第二剤の粘度が、20,000mPa・s以下であることを特徴とする、<1>~<4>のいずれかに記載のキット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用者が混合時に均一に混ぜやすく、炭酸ガスがムラなくすぐに発生し、炭酸ガスの効果を得やすく、使用後に除去しやすいキットを提供することができる。また、本発明のキットを用いて得られた発泡性皮膚外用剤をパック剤として使用することで、肌状態改善効果、特に、短時間での美白効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、発泡性皮膚外用剤を得るためのキットであって、炭酸ガス発生物質、酸、ゲル化剤、多価アルコール及び水を含有し、以下の(A)又は(B)のいずれかの形態であることを特徴とするキットに関する。
(A)第一剤が炭酸ガス発生物質、ゲル化剤及び水を含有する組成物であり、第二剤が酸、水及び多価アルコールを含有する組成物。
(B)第一剤が酸、ゲル化剤及び水を含有する組成物であり、第二剤が炭酸ガス発生物質、水及び多価アルコールを含有する組成物。
【0009】
そして、本発明のキットにおいては、使用者が、使用時に、前記第一剤と第二剤とを適宜混合することにより炭酸ガス発生による発泡を生じせしめ、皮膚に塗布して用いることができる。本発明のキットは、第一剤と第二剤に分けることにより保存安定性が良く、かつ、使用者が使用時に取り扱いやすいという特徴を有する。また、ゲル化剤と多価アルコールを含有することにより、脱水作用によるゲル化剤の凝集、多価アルコールとゲル化剤との水素結合による高次のネットワーク形成により、発泡性皮膚外用剤はゲル化するため、使用後に容易に除去することが可能である。以下、本発明のキット及び本発明のキットを用いて得られる発泡性皮膚外用剤に含まれる各構成成分及びその製法について説明する。
【0010】
本発明のキットには、炭酸ガス発生物質、酸、ゲル化剤、多価アルコール及び水を含有する。本発明の詳細について以下に説明する。
【0011】
≪炭酸ガス発生物質≫
本発明に用いられる炭酸ガス発生物質としては、様々なものが特に限定されることなく使用できる。また、使用する炭酸ガス発生物質は、固体状が好ましく、水又は保湿剤への溶解性の観点から、顆粒状、細粒状、粉末状がより好ましい。
【0012】
前記炭酸ガス発生物質として、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、セスキ炭酸ナトリウム等の炭酸塩、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等の炭酸水素塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうち、炭酸水素塩が好ましく使用でき、程よい発泡力を実現することができる点で炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
【0013】
前記炭酸ガス発生物質の配合量は、第一剤又は第二剤中に0.05~40質量%が好ましく、0.1~35質量%がより好ましく、0.5~30質量%が特に好ましい。また、発泡性皮膚外用剤中に0.01~30質量%が好ましく、0.05~25質量%がより好ましく、0.1~20質量%が特に好ましい。
【0014】
≪酸≫
本発明に用いられる酸としては、有機酸、無機酸のいずれでもよく、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0015】
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の直鎖脂肪酸又はその塩類、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸又はその塩類、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸又はその塩類、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α-オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、サリチル酸、没食子酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸等のオキシ酸又はその塩類等が挙げられ、無機酸としては、リン酸、亜硫酸等の無機酸又はその塩類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、安全性、第二剤への溶解性の観点から、クエン酸又はその塩類、アスコルビン酸又はその塩類、リンゴ酸又はその塩類、コハク酸又はその塩類が好ましく、クエン酸又はその塩類、アスコルビン酸又はその塩類がより好ましい。
【0016】
前記酸の配合量は、第一剤又は第二剤中に0.01~40質量%が好ましく、0.05~35質量%がより好ましく、0.1~30質量%が特に好ましい。また、発泡性皮膚外用剤中に0.001~30質量%が好ましく、0.005~25質量%がより好ましく、0.01~20質量%が特に好ましい。
【0017】
≪ゲル化剤≫
本発明に使用されるゲル化剤は、多価アルコールと反応してゲル化する性質を有する。使用できるゲル化剤の具体例としては、タマリンドガムが挙げられる。
【0018】
前記ゲル化剤の配合量は、第一剤中に0.01~40質量%が好ましく、0.05~35質量%がより好ましく、0.1~30質量%が特に好ましい。また、発泡性皮膚外用剤中に0.001~30質量%が好ましく、0.005~25質量%がより好ましく、0.01~20質量%が特に好ましい。
【0019】
≪多価アルコール≫
本発明に用いる多価アルコールとしては、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するものであり、通常化粧品、外用医薬品、医薬部外品等で使用できるものであれば特に限定されず、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等のポリグリセリン、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、エリトリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール、ポリグリセリン誘導体、スクロース、トレハロース等の糖類等が挙げられる。前記多価アルコールのうち、第二剤の保存安定性や製造コスト、使用時の皮膚への刺激緩和の観点から少なくとも1種の多価アルコールを使用することが好ましく、2種類以上を使用することが好ましい。特にグリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールのうち少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0020】
前記多価アルコールの配合量は、第二剤中に10質量%以上であれば良く、30質量%以上が好ましく、30~99質量%がより好ましい。また、多価アルコールは第一剤にも配合することが好ましく、配合する場合は、1質量%以上であれば良く、3~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。さらに、多価アルコールの配合量は発泡性皮膚外用剤中に5質量%以上であれば良く、10~90質量%が好ましく、20~80質量%以上がより好ましいく、30~70質量%が特に好ましい。発泡性皮膚外用剤中の多価アルコールの含有量が5質量%より少ないと、使用時にゲル化しにくくなるだけでなく、拡散水分量や弾力等の肌への効果が低くなり、使用時の取り扱いやすさ、例えば混ぜやすさや塗りやすさ、垂れにくさ、除去のしやすさが悪くなる。
【0021】
≪水≫
本発明に使用される水は、化粧品、外用医薬品、医薬部外品等で使用できる水を使用することができるが、精製水、蒸留水、膜濾過水、イオン交換水、が好ましい。本発明においては、第一剤、第二剤それぞれ0.1質量%以上配合していれば良く、好ましくは0.5質量%以上である。また、水は発泡性皮膚外用剤中に5質量%以上配合していれば良く、10~85質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。水が5質量%未満であると、混合した際に炭酸ガスが発生しにくくなる、炭酸ガスの発生量が減少する等の問題が生じてしまい、その結果、十分な血行促進作用を得ることができなくなる。
【0022】
本願発明において、発泡性皮膚外用剤中の多価アルコール:水の配合比(質量比)は特に限定されないが、好ましくは1:0.05~20であり、より好ましくは1:0.1~10であり、特に好ましくは1:0.5~5である。多価アルコールに対して水の配合比が0.05未満であると、第一剤、第二剤中での炭酸ガス発生物質、酸、増粘剤の溶解に時間がかかるため、製造効率が悪くなるのみでなく、第一剤と第二剤の反応による炭酸ガス発生速度が著しく低下してしまう。しかも、第一剤と第二剤の混合後のゲル化速度が速いため、炭酸ガスが発生する前にゲル化が起こってしまい、血行促進作用等の炭酸ガスによる効果を得にくくなる。また、多価アルコールに対して水が20より多いと、第一剤と第二剤との混合後のゲル化が著しく遅くなるため、使用後に剥がしづらくなり、使用者にとって使用しづらいものとなる。
【0023】
本発明の第一剤は粘度が高いことが好ましい。具体的には、25℃における粘度が、好ましくは100mPa・s以上であり、より好ましくは500mPa・s以上であり、特に好ましくは1,000mPa・s以上である。本発明において、第一剤の粘度が100mPa・s未満の場合、第二剤との混合後の組成物が垂れやすくなってしまい、使用しにくいのみでなく。皮膚外用剤の効果を得られにくくなる。
【0024】
本発明の第二剤は粘度が低いことがより好ましい。具体的には、25℃における粘度が、好ましくは20,000mPa・s以下であり、より好ましくは10,000mPa・s以下であり、特に好ましくは5,000mPa・s以下である。また、本発明の第二剤は、液状であることが好ましく、増粘剤を含有する場合は0.2質量%未満であることが好ましく、実質的に増粘剤を含まないことがより好ましい。ここで、実質的に増粘剤を含まないとは、後述する増粘剤を、第二剤に含まないことを言う。本発明において、第二剤の粘度が20,000mPa・sを超える場合、参考例1及び2から明らかな通り、第一剤との混合時に混ぜにくいため、混合のムラが生じるため、炭酸ガスによる発泡にムラが発生しやすくなる。
【0025】
本発明においては、第一剤の粘度を100mPa・s以上、かつ、第二剤の粘度を20,000mPa・s以下とすることが好ましい。より好ましくは、第一剤の粘度が500mPa・s以上、かつ、第二剤の粘度が10,000mPa・s以下であり、より好ましくは第一剤の粘度が1,000mPa・s以上、かつ、第二剤の粘度が5,000mPa・s以下である。第一剤、第二剤の粘度を前記の範囲にすることにより、発泡性皮膚外用剤のゲル化能と炭酸ガスによる肌への効果をバランス良く両立させることが可能となる。特に、後述する実施例から明らかな通り、肌のしっとり感、弾力、明るさ、赤み、なめらかさ、すべすべ感、ひきしめ感等の肌状態が向上するとともに、使用時に混合しやすく、塗りやすく、垂れにくく、使用後に剥がしやすいものとすることができるため、使用者にとって取り扱いが容易となる。
【0026】
<皮膚外用剤>
本発明のキットを用いて製造される発泡性型皮膚外用剤は、用途や目的に応じ、第一剤、第二剤に含まれる成分に加え、その他有効成分、増粘剤、保湿剤、防腐剤、pH調整剤、油脂、香料、着色剤、酸化防止剤、防菌防かび剤、アルコール、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤、無機塩、滑沢剤、溶剤等の、通常皮膚外用剤に使用される成分の一種以上を使用することができる。この場合、添加する成分は第一剤、第二剤いずれか一方の剤に使用することができるし、どちらの剤にも使用しても良い。
【0027】
以下、本発明のキットを用いて製造される発泡性型皮膚外用剤に含有される、酸、炭酸ガス発生物質、ゲル化剤、増粘剤、多価アルコール以外の成分の代表的なものについて更に説明する。
【0028】
本発明に使用される有効成分としては、特に限定されることなく、化粧品、外用医薬品、医薬部外品等に用いられる薬剤や植物等を目的に応じ使用することができる。代表的なものとして、例えば、グリチルリチン酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、グリチルレチン酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン、パンテノール、アラントイン等の抗炎症剤、アスコルビン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、システイン及びその誘導体並びにその塩、グラブリジン、グラブレン、リクイリチン、イソリクイリチン、プラセンタ、ハイドロキノン及びその誘導体、レゾルシン及びその誘導体、グルタチオン等の美白剤、イオウ、チアントロール等の抗脂漏剤、サリチル酸、オウバク抽出物等の殺菌剤、トコフェロール及びその誘導体、甘草、アロエ、茶葉等の植物成分、エストラジオール等のホルモン等が挙げられる。なお、植物成分を使用する場合は、その全草、葉(葉身、葉柄等)、果実(成熟、未熟等)、種子、花(花弁、子房等)、茎、根茎、根、塊根等を、そのまま、切断、破砕、粉砕、搾取、抽出して用いるか、又はこれら処理されたものを乾燥若しくは粉末化して用いることができる。本発明に使用される有効成分は、第一剤、第二剤のいずれにも使用することができる。
【0029】
本発明において抽出物を用いる場合、抽出に用いる溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルエーテル、アセトンなどの有機溶媒を挙げることができる。これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。安全性等の点から、人体に無害な水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、又はこれらの混合溶媒を抽出溶媒として用いることが好ましい。抽出は抽出溶媒の沸点以下であればよく、抽出温度によって適宜抽出時間は変更することができる。
【0030】
本発明に使用される増粘剤としては、化粧品、外用医薬品、医薬部外品等で使用できる水溶性成分であれば特に限定されるものでなく、合成高分子、半合成高分子、天然高分子、粘度鉱物等が使用できる。増粘剤は第一剤、第二剤のどちらにも使用できるが、第一剤に使用することが好ましい。
【0031】
合成高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツ/アクリル酸アルキルクロスポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルキルアクリルアミド/ポリアクリルアミドコポリマー、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、プルロニックをはじめとする親水性合成高分子が挙げられる。
【0032】
半合成高分子としては、セルロース誘導体としては例えば、カルボキシメチルセルロース又はその塩類、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スルホン化セルロース誘導体などが挙げられる。その他の半合成高分子として、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸エチレングリコールエステル、デキストリン脂肪酸エステル、ゼラチン脂肪酸エステル、ゼラチン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0033】
天然高分子としては、多糖類及びその誘導体、例えば、キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、セルロース類、ガラクタン、アラビアガム、トラガントガム、寒天、アガロース、マンナン、カードラン、アルギン酸又はその塩類、アラビアゴム、ペクチン、クインシード、デンプン、アルゲコロイド、コンドロイチン硫酸又はその塩類、キトサン及びその誘導体などが挙げられる。その他の天然高分子としては、核酸又はその塩類、リボ核酸又はその塩類、カゼイン、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、フィブロイン、エラスチン、ケラチン、セリシン等の水溶性タンパク質、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類などが挙げられる。
【0034】
粘土鉱物としては、ラポナイト、ベントナイト、スメクタイトカオリナイト、モンモリロナイト等が挙げられる。
【0035】
以上の増粘剤のなかでも、溶解性又は分散性が高いものを用いることが、増粘剤のダマを生じず均一に溶解又は分散でき、且つ、未溶解成分や未分散成分に起因する肌のざらつき感を緩和することができるため好ましい。
【0036】
このような増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース又はその塩類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、セルロース類、ガラクタン、アラビアガム、トラガントガム、寒天、マンナン、カードラン、アルギン酸又はその塩類、コラーゲン、ゼラチン、アルブミン等を挙げる事ができ、カルボキシメチルセルロース又はその塩類、キサンタンガム、カラギーナン、アルブミンを用いることが好ましい。前記増粘剤は1種又は2種以上を使用できる。
【0037】
本発明に使用される界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は合成界面活性剤、天然界面活性剤のいずれも使用できるが、皮膚への安全性の観点から、天然界面活性剤が好ましい。ここで言う天然界面活性剤とは、主に動物または植物の由来の界面活性効果を有する物質のことを言い、具体例としては、レシチンなどのリン脂質、糖脂質、ラノリン、コレステロール、サポニン、セラミドなどのスフィンゴ脂質、ペクチン、グリチルリチン酸塩、胆汁酸、植物抽出アミノ酸系界面活性剤等が挙げられる。その中でも、リン脂質、サポニン、スフィンゴ脂質、ペクチン、グリチルリチン酸塩を含む抽出物を含有していることが好ましく、サポニンを含む抽出物を含有していることが特に好ましい。サポニンを含む抽出物としては、植物由来の抽出物を用いることが好ましい。サポニンを含む植物の例としては、ダイズ、アズキ、インゲン、ホウレンソウ、サトウダイコン、ブドウ、キキョウ、甘草、セネガ、キラヤ、ムクロジ、サボンソウ、オタネニンジン、ヘチマ、茶種子、エンジュ、ユリ科植物や、ヤマノイモ科植物、チモ(知母)、バクモンドウ(麦門冬)などを挙げることができる。本発明においては、サポニンを含む抽出物として、これら植物のうち、ダイズ、アズキ、甘草、ムクロジ、ヘチマから選ばれる1種以上の植物の抽出物を含有することが好ましく、とりわけ、ムクロジの抽出物を含有することが好ましい。
【0038】
前記天然界面活性剤は増粘剤と併用することで気泡をより長く保つことができる。
【0039】
<発泡性皮膚外用剤の使用形態>
本発明のキットは、発泡性皮膚外用剤を得るための使用に際し、第一剤と第二剤を適量容器内で混合することにより炭酸ガスによる発泡を生じさせる。第一剤と第二剤は1:0.1~1:30の割合で混合することが好ましく、1:0.5~1:10の割合で混合することがより好ましい。
【0040】
本発明のキットを保存する方法としては、化粧品、外用医薬品、医薬部外品等を保存する方法を用いることができ、特に制限はない。使用される保存容器の形状は、目的に応じて適宜選択でき、カップ状、チューブ状、バッグ状、瓶状、スティック状、ポンプ状、ジャー状、缶詰状等が挙げられる。また、保存容器を構成する材料は、例えば、プラスチック、ガラス、アルミニウム、紙、各種ポリマー等を単独あるいは2種以上選択して用いることができるが、これらに限定されない。
【0041】
容器の具体例としては、密閉性、内容物の保存安定性、製造コスト等の点で、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミスティック、アルミバッグ等の保存容器、チャック付きスタンドパウチ、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミフィルム等で蓋をヒートシールしたポリエチレンテレフタレート製の保存容器等が好ましい。
【0042】
<発泡性皮膚外用剤の用途>
本発明のキットを使用して得られる発泡性皮膚外用剤は、皮膚血流量の増加を促すものであり、美白、肌質改善、そばかす改善、肌の若返り、肌の引き締め、部分痩せ、皮膚を清浄にする、肌を整える、肌のキメを整える、皮膚をすこやかに保つ、肌荒れを防ぐ、肌をひきしめる、皮膚にうるおいを与える、皮膚の水分,油分を補い保つ、皮膚の柔軟性を保つ、皮膚を保護する、皮膚に乾燥を防ぐ、肌を柔らげる、肌にはりを与える、肌にツヤを与える、肌を滑らかにする、日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ、乾燥による小ジワを目立たなくすることを目的とした化粧品だけでなく、肌あれ、あれ性、あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびの予防、油症肌、かみそりまけの予防、日やけによるしみ・そばかすの予防、日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ、肌をひきしめる、肌を清浄にする、肌を整える、皮膚をすこやかに保つ、皮膚にうるおいを与える、皮膚を保護する、皮膚の乾燥を防ぐ等を目的とした、化粧品、医薬部外品、薬品等の医薬品のいずれにも好適に使用することができる。本発明の皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品としての使用が好ましく、乳液、クリーム、パック剤、ピーリング剤等の化粧品、薬用化粧品としての使用がより好ましい。特にその中でもパック剤として使用すると、使用感がよく、短時間で高い肌状態改善効果が得やすいため好ましい。
【0043】
本発明のキットを用いて得られた発泡性皮膚外用剤をパック剤として使用する場合、所望の部位を覆うように0.2mm以上、好ましくは0.5mm以上の厚さに塗布すればよい。0.2mm以上の厚さに塗布することで、炭酸ガスによる肌状態改善効果を得ることができる。また、使用時間は1分以上であれば良く、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上である。塗布終了後は拭き取るか、水などで洗い流すか、あるいはその両方を行ってもよい。
【実施例
【0044】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。下記の各実施例及び参考例において、使用する原料は特にことわりのない限り、市販品を用いた。
【0045】
<発泡性皮膚外用剤の製造>
表1に示した組成に従い、本発明のキットを製造した。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1~8、参考例1~3
[第一剤]
ビーカーに精製水を加え、次いで第一剤に記載の原料を加えて撹拌し、第一剤を得た。
[第二剤]
ビーカーに精製水を加え、次いで第二剤に記載の原料を加えて撹拌し、第二剤を得た。
【0048】
<発泡性皮膚外用剤の特性評価>
下記要領に従い、前記実施例1~3及び参考例1~3で得られた発泡性皮膚外用剤の特性を評価した。
[評価例1.第二剤粘度の評価]
表1に記載の第二剤において、粘度計(ブルックフィールド社製 RVT型)を用いて、25℃における実施例1~8、参考例1~3の粘度を測定した。第一剤の粘度結果を表2に、第二剤の粘度測定結果を表3に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
[評価例2.使用前後の肌状態測定]
前記実施例1~8、参考例1~3で得られた本発明のキットを用いて発泡性皮膚外用剤を調製し、得られた発泡性皮膚外用剤の使用前後における角層水分量(測定機器:SKICON―200EX)、水分蒸散量(測定機器:TewameterTM300)、色差(測定機器:色彩色差計)及び弾力(測定機器:Cutometer MPA580)を測定した。
被験者(30代女性2名)の前腕内側を洗顔料で洗浄し測定室で15分間安静に過ごした。次に、発泡性皮膚外用剤使用前の測定を行った。次に、測定部位に、第一剤:第二剤を2:1で混合した前記発泡性皮膚外用剤を塗布し、10分間静置した。次に、発泡性皮膚外用剤を除去し、軽く水で湿らせた布で拭き取った。洗浄後15分経過してから発泡性皮膚外用剤使用後の測定を行った。尚、被験者は測定中、測定室にて安静に過ごした。
使用後の肌状態測定結果を表4に示す。表4は角層水分量、水分蒸散量、色差及び弾力の測定結果である。表4はそれぞれ発泡性皮膚外用剤使用前を1とした比較値を表す。角層水分量は数値が大きいほど肌が潤っていて良いことを示し、水分蒸散量は数値が小さいほどバリア機能が整っていて良い結果であることを示し、色差は数値が大きいほど色が白くなったことを示し、弾力は数値が大きいほど肌のハリがあって良いことを示す。
【0052】
【表4】
【0053】
[評価例3.発泡性皮膚外用剤の使用感の評価]
前記実施例1~8、参考例1~3で得られた本発明のキットを用いて発泡性皮膚外用剤を調製し、得られた発泡性皮膚外用剤の使用時、及び使用後について、表5、表6に示す項目の評価を行った。
まず、被験者(30代女性2名)の前腕内側を洗顔料で洗浄し、15分間安静に過ごした。次に、測定部位に、第一剤:第二剤を2:1で混合した前記発泡性皮膚外用剤を塗布し、10分間静置した。次に、発泡性皮膚外用剤を除去し、軽く水で湿らせた布で拭き取った。その後、表5の8項目、表6の7項目についてアンケートを実施した。アンケートの評価は、下記の項目について、1(とても悪い)~7(とても良い)の7段階で評価し、平均点を算出した。尚、被験者は測定中、測定室にて安静に過ごした。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
表2より、実施例1~8は第一剤の粘度が500mPa・s以上、かつ、第二剤の粘度が20,000mPa・s以下である。一方、参考例1、2は第一剤の粘度が500mPa・s以上であるが、第二剤の粘度が20,000mPa・s以上であり、参考例3は第一剤の粘度が500mPa・s以下、かつ、第二剤の粘度が20,000mPa・s以下あることがわかる。
表4より、使用後の肌の状態は、角層水分量は実施例7>実施例5>実施例8>実施例6>実施例3>実施例4>実施例2>実施例1>参考例1>参考例2>参考例3の順でよい結果が得られ、水分蒸散量は実施例7>実施例3>実施例5>実施例4>実施例2>実施例6>実施例8>実施例1>参考例3>参考例2>参考例1の順でよい結果が得られ、色差は実施例6>実施例8>実施例7>実施例5>実施例4>実施例3>実施例2>実施例1>参考例2>参考例1>参考例3の順でよい結果が得られ、弾力は実施例6>実施例8>実施例4>実施例5>実施例7>実施例3>実施例1>実施例2>参考例1>参考例3>参考例2の順でよい結果が得られた。すなわち、参考例1~3に比べて実施例1~8は使用後の状態向上に効果があることがわかり、特に第二剤に多価アルコールを2種類以上配合する実施例3~8でその効果が高くなる、すなわち、肌をみずみずしく保ち、バリア機能が整い、色が白くハリのある肌となるとがわかる。
また、表5より、本発明のキットを用いて得られた発泡性皮膚外用剤は参考例1~3と比べて使用時の評価が高いことがわかる。特に、第一剤と第二剤の混合時に混ぜやすく、混合後に塗りやすく、垂れにくく、使用後に剥がしやすいことがわかる。
また、表6より、使用後の肌のしっとり感、弾力、肌が明るくなる、肌の赤み、肌のなめらかさ、すべすべ感、ひきしめ感が確認できる効果が得られているため、使用者にとって容易に使用しやすく、かつ、肌への効果が高いことがわかる。
以上の結果より、本発明のキットを用いて得られた発泡性皮膚外用剤は、使用者にとって容易に使用しやすく、かつ、肌への効果が高いことがわかる。
【0057】
以下に、本発明のキットの具体的な処方例を示す。第一剤、第二剤とも実施例1の製法と同様の製法又は一般的な化粧品の製法にて製造することができる。
【0058】
実施例9
【0059】
【表7】
【0060】
表7に記載の処方にて、実施例1と同様の方法で発泡性皮膚外用剤用キットを調整した。得られたキットの第一剤と第二剤を1:1で混合すると、発泡性皮膚外用剤を得ることができる。
【0061】
実施例10
【0062】
【表8】
【0063】
表8に記載の処方にて、実施例1と同様の方法で発泡性皮膚外用剤用キットを調整した。得られたキットの第一剤と第二剤を3:1で混合すると、発泡性皮膚外用剤を得ることができる。
【0064】
実施例11
【0065】
【表9】
【0066】
表9に記載の処方にて、実施例1と同様の方法で発泡性皮膚外用剤用キットを調整した。得られたキットの第一剤と第二剤を1:1で混合すると、発泡性皮膚外用剤を得ることができる。
【0067】
実施例12
【0068】
【表10】
【0069】
表10に記載の処方にて、実施例1と同様の方法で発泡性皮膚外用剤用キットを調整した。得られたキットの第一剤と第二剤を2:1で混合すると、発泡性皮膚外用剤を得ることができる。
【0070】
前記検討から明らかなように、本発明のキットは、均一に混合することが容易であり、使用時に炭酸ガスがムラなく発生するという効果を奏する。更に、本発明のキットを用いて得られた発泡性皮膚外用剤を用いることで、肌をみずみずしく保ち、バリア機能が整い、色が白くハリのある肌が得られるという効果を奏することがわかる。