(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 25/00 20060101AFI20221013BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20221013BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20221013BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20221013BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G02B25/00 A
G02B5/18
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
G02B3/08
(21)【出願番号】P 2017245711
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502176580
【氏名又は名称】コピン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】井場 陽一
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02126747(GB,A)
【文献】特開2017-211475(JP,A)
【文献】特開2017-211474(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/08
G02B 5/18
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/00
G02B 27/02
H04N 5/64 - 5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
覗き込み型の映像表示装置であって、
接眼光学系と、
前記接眼光学系の前側焦点位置近傍に対角長が40mm以下である、光を出力する表示面を有する表示パネルと、を備え、
前記接眼光学系は、前記接眼光学系の光軸に沿って前記表示パネルから射出された光が進行する方向を正の方向としたとき、前記表示パネル側から正の方向の側へ順に、第1レンズ群と第2レンズ群とからなり、
前記第1レンズ群は、前記表示パネル側に負の屈折力を有する第1光学面をもち、正の方向の側に外周部が負の曲率をもつとともにレンズ媒質の外側に向かって凸の形状を有した第2光学面をもつ、屈折レンズである第1エレメント
からなり、
前記第2レンズ群は、互いに近接して配置された、前記表示パネル側から正の方向へ順に、正の方向の側に面した面が正の屈折力のフレネル面をもつ第2エレメントと、前記表示パネル側に面した面が正の屈折力のフレネル面をもつ第3エレメントと、を有し、
前記接眼光学系は、最大画角が80度以上で光を出射する
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像表示装置であって、
前記第2レンズ群は、正の屈折力のDOE面をもつエレメントを有している
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像表示装置であって、
前記第2エレメントがもつフレネル面と、前記第3エレメントがもつフレネル面と、前記DOE面のうち、前記接眼光学系の光軸上における最も前記表示パネル側に存在する上記いずれかの面と最も前記正の方向の側に存在する上記いずれかの面との間の距離は、前記接眼光学系の焦点距離の三分の一以下である
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項4】
請求項2に記載の映像表示装置であって、
前記DOE面は、前記第2エレメントがもつフレネル面と、前記第3エレメントがもつフレネル面との間に配置されている
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の映像表示装置であって、
前記第1エレメントの前記第2光学面は、外周部より光軸へ向かい曲率が正の方向に変化しており、
前記第2エレメントのフレネル面が有する同心円状の各光学平面を仮想的に連結した際の連結面の曲率が、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化しており、
前記第3エレメントのフレネル面が有する同心円状の各光学平面を仮想的に連結した際の連結面の曲率が、光軸から外周部へ向かい負の方向に変化している
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項6】
請求項4に記載の映像表示装置であって、
前記接眼光学系の屈折力をP0とし、前記第2エレメントのアッベ数をV2とし、前記第3エレメントのアッベ数をV3とし、前記DOE面の屈折力をP4、V0=(V2+V3)/2としたとき、下記の関係式が成り立つことを特徴とする映像表示装置。
3.453×(P0/V0)×0.7 < P4 < 3.453×(P0/V0) ×1.3
【請求項7】
請求項1に記載の映像表示装置であって、
前記第2エレメントは、前記表示パネル側の面が、前記表示パネル側に向かって凹面の形状を有している
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の映像表示装置であって、
前記接眼光学系は、前記表示面と直交する方向に前記表示面から出力された光であって、前記第3エレメントを射出して前記接眼光学系の光軸に対する傾角が前記最大画角の4分の1となる光線の前記接眼光学系の光軸との交点が、前記接眼光学系から正の方向へ15mm以上離れて位置するように屈曲させる
ことを特徴とする映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
覗き込み型の映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、HMD(head mounted display)を利用して、バーチャルリアリティシステムを実現する取り組みが成されている。
【0003】
バーチャルリアリティシステムへの利用に際しては、臨場感が重要となる。非特許文献1では、映像の最大画角の増加とともに臨場感が高まり、80度から臨場感が飽和することが示されている。従って、臨場感をもたせるために、80度を超える最大画角を有するとともに、HMDとしての実用に堪えるように取り回しのし易い小型なHMDが現状所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】畑田豊彦, 坂田晴夫,日下秀夫著、 テレビジョン学会誌 Vol. 33 (1979) No. 5 P 407-413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、臨場感を引き出すために最大画角が80度を超えるHMDを作成しようとした場合、小型化が困難であった。
【0006】
HMDにおいて、映像光を導光する接眼光学系は、映像光特性に優れているテレセントリックな光学系であることが望ましい。その場合、装着する際の使い勝手、例えば、使用者の睫等とぶつからない距離等を考慮すると、接眼光学系の焦点位置であるアイポイントは、接眼光学系から15mm以上離れていることが望ましい。
【0007】
また、従来、最大画角が80度を超えるHMDが有する接眼光学系は、軽量化のためレンズ枚数を減らし、非球面の凸レンズを主要エレメントとして利用しており、接眼光学系が有する屈折力のほとんどを該凸レンズが担っている場合が多かった。
【0008】
以上の実情を考慮したとき、凸レンズで生じ得る収差を十分に抑制するために屈折力を低減させた設計とすると、接眼光学系の焦点距離は、30mm以上とされる場合が多かった。しかし、焦点距離が30mm以上である従来の接眼光学系を用いて、80度を超えた最大画角を確保するHMDを作成した場合、映像を出力する表示パネルの対角長が50mm以上必要となってしまい、装置が大型化してしまう。
【0009】
即ち、最大画角が80度であることと、小型化を兼ねて実現することは難しかった。
【0010】
以上の実情を鑑みて、本発明では、最大画角が80度を超える小型の覗き込み型の映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様における映像表示装置は、覗き込み型の映像表示装置であって、接眼光学系と、前記接眼光学系の前側焦点位置近傍に対角長が40mm以下である、光を出力する表示面を有する表示パネルと、を備え、前記接眼光学系は、前記接眼光学系の光軸に沿って前記表示パネルから射出された光が進行する方向を正の方向としたとき、前記表示パネル側から正の方向の側へ順に、第1レンズ群と第2レンズ群とからなり、前記第1レンズ群は、前記表示パネル側に負の屈折力を有する第1光学面をもち、正の方向の側に外周部が負の曲率をもつとともにレンズ媒質の外側に向かって凸の形状を有した第2光学面をもつ、屈折レンズである第1エレメントからなり、前記第2レンズ群は、互いに近接して配置された、前記表示パネル側から正の方向へ順に、正の方向の側に面した面が正の屈折力のフレネル面をもつ第2エレメントと、前記表示パネル側に面した面が正の屈折力のフレネル面をもつ第3エレメントと、を有し、前記接眼光学系は、最大画角が80度以上で光を出射する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、最大画角が80度を超える小型の覗き込み型の映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態における映像表示装置の構成を示す図である。
【
図2】一実施形態の変形例に係る映像表示装置の構成を示す図である。
【
図3】一実施形態の別の変形例に係る映像表示装置の構成を示す図である。
【
図4】一実施形態のさらに別の変形例における、映像表示装置の構成の一部を示す図である。
【
図5】一実施形態のさらに別の変形例における、映像表示装置の構成の一部を示す図である。
【
図6】一実施形態のさらに別の変形例における、映像表示装置の構成の一部を示す図である。
【
図7】実施例1に係る映像表示装置が有するレンズ構成を示す図である。
【
図10】第2エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図11】3エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図13】接眼光学系の結像性能を示す別の図である。
【
図14】実施例2に係る映像表示装置が有するレンズ構成を示す図である。
【
図15】第1光学面の曲率のグラフを示す図である。
【
図16】第2光学面の曲率のグラフを示す図である。
【
図17】第2エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図18】第3エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図20】接眼光学系の結像性能を示す別の図である。
【
図21】実施例3に係る映像表示装置が有するレンズ構成を示す図である。
【
図22】第1光学面の曲率のグラフを示す図である。
【
図23】第2光学面の曲率のグラフを示す図である。
【
図24】第2エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図25】第3エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図27】接眼光学系の結像性能を示す別の図である。
【
図28】実施例4に係る映像表示装置が有するレンズ構成を示す図である。
【
図29】第1光学面の曲率のグラフを示す図である。
【
図30】第2光学面の曲率のグラフを示す図である。
【
図31】第2エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図32】第3エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図34】接眼光学系の結像性能を示す別の図である。
【
図35】実施例5に係る映像表示装置が有するレンズ構成を示す図である。
【
図36】第1光学面の曲率のグラフを示す図である。
【
図37】第2光学面の曲率のグラフを示す図である。
【
図38】第2エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図39】第3エレメントがもつフレネル面の連結面の曲率のグラフを示す図である。
【
図41】接眼光学系の結像性能を示す別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態における映像表示装置10について説明する。
図1は、映像表示装置10の構成を示す図である。
【0015】
映像表示装置10は、表示パネルDE、接眼光学系EPを備えている。映像表示装置10は、覗き込み型の映像表示装置であり、表示パネルDEが出力した光を接眼光学系EPが使用者の瞳へ直接導光する。尚、以下表示パネルDE側から接眼光学系EPの光軸に沿って進行する光の方向を正の方向として説明する。
【0016】
表示パネルDEは、接眼光学系EPの前側焦点位置近傍に、光を出力する表示面DPを有している。また、表示面DPは、対角長が40mm以下であるものとする。
【0017】
接眼光学系EPは、表示パネルDEから正の方向の側へ順に、第1レンズ群G1、第2レンズ群G2を有する。また、接眼光学系EPは、好ましくは接眼光学系EPの光軸に略平行な主光線を導光するテレセントリック光学系である。
【0018】
第1レンズ群G1は、表示パネルDE側に負の屈折力をもつ光学面S0(第1光学面)と、正の方向の側に外周部が正の屈折力をもつ光学面S1(第2光学面)を有する屈折レンズである第1エレメントE1を有している。
【0019】
より詳しくは、光学面S0は、後述する実効的後側焦点XPを通過する光線(以降では主光線とも表記し表示面DPと略直交する方向に出力される)を、負の屈折力の作用により、接眼光学系EPの光軸に対し正の傾きを有するように屈曲させる。尚、光線の光軸に対する傾きが正とは、光線が光軸に対して発散する方向に傾きを有している状態を示し、光線の光軸に対する傾きが負とは、光線が光軸に対して収束する方向に傾きを有している状態を示す。
【0020】
また、光学面S1(第2光学面)は、外周部において媒質(レンズ媒質)の外側に向かって凸の形状を有している。即ち、光学面S0で屈曲された正の傾きを有する主光線は、光学面S1に対して比較的小さな角度で入射するため、光学面S1における屈曲作用が小さい。従って、第1レンズ群G1へ入射した主光線は、光学面S0、S1で屈曲された後も正の傾きを維持し、第2レンズ群G2へ向けて出射される。
【0021】
第2レンズ群G2は、表示パネルDEから正の方向の側へ順に、正の方向の側に面した面に正の屈折力のフレネル面である光学面S2をもつ第2エレメントE2と、表示パネルDE側に面した面に正の屈折力をもつフレネル面である光学面S3をもつ第3エレメントE3と、を有している。また、第2エレメントE2及び第3エレメントE3は、互いに近接して配置される。
【0022】
この配置により、第2レンズ群G2へ入射した主光線は、第2エレメントの光学面SF、フレネル面(光学面S2)、及び第3エレメントE3のフレネル面(光学面S3)、光学面SBにより段階的に屈曲され、第2レンズ群G2を出射する際には、負の傾きを有する光線となる。即ち、上記のように光学面S2を正の方向の側の面に、光学面S3を表示パネルDE側の面に配置することで、光線の傾きの変化を四段階にわけてより徐々に行うことができ、第2レンズ群G2で発生する収差を抑制する効果を奏する。
【0023】
さらに、別の一構成例として、第2レンズ群G2の各エレメントの各面を、球面あるいは非球面形状にすることで、設計の自由度が増して接眼光学系EPの収差を抑えることができる。特に、第2エレメントE2の表示パネルDE側の光学面SFは、表示パネルDE側に向かって凹面の形状を有するものが考えられる。一般に、光学面で光線が屈曲する際に発生する収差の中には、光学面の入射角度(光学面の法線と光学面に入射する光線とが成す角度)の3乗或いは5乗に比例して増大するものがある。接眼光学系EPの全系の中でも、光学面SFに入射する主光線は大きな正の傾きをもっているため、光学面SFへの入射角度が大きくなり大きな収差が発生しやすい。しかし、光学面SFの面形状を、表示パネルDE側に向かって凹面とすることで、入射角度を減じることができ、光学面SFで発生する収差を効果的に抑えることができる。
【0024】
尚、表示面DPと直交する方向に表示面から出力された光線は、出射位置が光軸付近である光線と、光軸から離れている光線と、では、接眼光学系EPの持つ瞳の球面収差により、光軸への集光位置が前後に多少ずれる。そこで、表示面DPと直交する方向に表示面から出力された光線であって、接眼光学系EPを出射して接眼光学系EPの光軸に対する傾角が接眼光学系EPの最大画角の4分の1(即ち半画角の2分の1)となる光線Rの光軸との交点を実効的後側焦点XPと定義する。光線Rの光軸との交点位置は、瞳の球面収差によるばらつきを考えた場合、各光線の光軸との交点の中の略中心となる位置であり、交点間のズレが互いに最も少なくなるような位置である。そして、この実効的後側焦点XPをアイポイントとすることで、接眼光学系EPは、テレセントリック光学系として作用する。
【0025】
以上の構成を有する映像表示装置10の作用について説明する。
【0026】
接眼光学系EPと実効的後側焦点XPとの間の距離FBは、最大画角が一定とした場合、最大画角の映像を作る主光線が第2レンズ群G2を出射するときの光線高に略比例する。また、第2レンズ群G2が有する第2エレメントE2及び第3エレメントE3は、互いに近接して配置されるため、第2レンズ群G2内での各エレメントにおける最大の主光線高は略等しいといえる。従って、距離FBは、第2レンズ群G2における最大の主光線高に略比例するといえる。
【0027】
第2レンズ群G2への入射時の主光線の光線高は、第1レンズ群G1の光学面S0の負の屈折力が大きいほど高くなることから、光学面S0の屈折力の大きさを調整することで、実効的後側焦点XPと接眼光学系EPとの間の距離FBを、人が覗く際に睫がぶつからない等の適切な距離に調整することができる。尚、適切な距離は、通常15mm以上であればよいとされる。
【0028】
また、このとき、光学面S0の屈折力の大きさの変更による接眼光学系EPの焦点距離への影響は下記説明のとおり少ないことから、光学面S0の屈折力の大きさを変更する場合に他の光学面の屈折力を微調整するだけで、生じる焦点距離の変化を打ち消すことができる。即ち、接眼光学系EPにおいて、規定の焦点距離を維持した距離FBの調整が容易となる。
【0029】
光学面S0、光学面S1、光学面S2、光学面S3の屈折力をそれぞれ、Pa、Pb、Pc、Pd、としたとき、また、光線R2の光学面S0、光学面S1、光学面S2、光学面S3、それぞれでの光線高をHa、Hb、Hc、Hdとしたとき、次式(1)が成り立つ。尚、光線R2とは、表示面DPの中心から出力され、且つ、接眼光学系EPの光軸に対し僅かな傾きを有する光線を示す。
P0 ∝ Ha×Pa + Hb×Pb + Hc×Pc + Hd×Pd ・・・(1)
【0030】
そして、光線高がHa < Hb, Hc, Hdであることを踏まえると、接眼光学系EPの焦点距離に対する屈折力Paの変更による影響は軽微であることが明らかである。
【0031】
また、映像表示装置10では、表示面DPの対角長が40mm以下である表示パネルDEを用いることから、画角を80度以上の臨場感のある状態を実現するために、下記条件式により焦点距離が25mm以下に設定されることとなる。そしてこの焦点距離の大半を第2レンズ群G2で作り出す必要がある。
【0032】
表示面DPの対角長をDLとし、接眼光学系EPの焦点距離をFL、接眼光学系EPの最大画角をFVとすると、下記のように条件式が成り立ち、焦点距離FLの条件が導かれる。尚、ここでいう実効的焦点距離は、実光線追跡で求めた焦点距離を示す。接眼光学系EPの像歪を考慮しても焦点距離FLの条件に大きな差は生じない。
DL = 2×FL×tan(FV / 2) ・・・(2)
FL = DL / {2×tan(FV / 2)} ≦ 40 mm / {2 tan(80°/ 2)} ≒ 25 mm ・・・(3)
【0033】
そしてこのとき、第2レンズ群G2での出射面での最大主光線高をHとすると、Hは、上述の条件から下記のように導かれる。
H ≒ FB×tan(FV / 2) ≒ 12.5 mm
【0034】
第2レンズ群G2内での各エレメント内の主光線高が略等しいことから、第2レンズ群G2内のエレメント(第2エレメントE2、第3エレメントE3)の有効径は、その2倍以上であることが望ましく、25mm以上であることが望ましい。
【0035】
また、目の回旋中心は、瞳孔から10mm離れた眼球内にあり、映像の周辺に視線を向けるように目を回旋した場合も考慮すると、瞳孔のシフト量は、10 mm×tan(80°/ 2) = 8.4 mmとなり、第2レンズ群G2内のエレメントの有効径は、(12.5 + 8.4)×2 ≒ 40 mm以上確保されることが望ましい。
【0036】
以上から、接眼光学系EPは25mm以下の焦点距離を有するとともに、第2レンズ群G2は、主光線に対するF値(焦点距離 / 有効径)が、25 mm / 25 mm = 1よりも明るく、より好ましくは主光線に対するF値(焦点距離 / 有効径)が、25 mm / 40 mm ≒ 0.6よりも明るいことが条件となる。
【0037】
ここで、第2レンズ群G2は、フレネル面である光学面S2、フレネル面である光学面S3が近接するように配置される第2エレメントE2、第3エレメントE3を含んでおり、フレネル面のもつ大きな正の屈折力により、必要なF値を確保している。そして、フレネル面を有するエレメントによって構成することで、他のレンズエレメント(一般的な凹凸形状を有する屈折レンズ型のエレメント等)を用いて上記のようなF値を確保するレンズ構成とする場合と比較して、装置の軽量化、小型化を実現することができる。そもそも、こうしたレンズエレメントは、大きな屈折力をもたせると中心肉厚が増えてしまうことから、接眼光学系EPの焦点距離25mm以下であるという必要な条件を作り出そうとすると、接眼光学系EPとアイポイントである実効的後側焦点XPとの距離を15mm以上にすることすら困難である。
【0038】
第2レンズ群G2の構成、即ち、正の方向へ順に、光学面SF、フレネル面S2、フレネル面S3、光学面SBが、配置されている構成によれば、主光線の傾きを、光学面S2、S3のみならず、SF、SBが、徐々に変化させる作用を持つ。これによって大きな正の屈折力をもつ第2レンズ群G2で発生する収差を効果的に抑制することができる。
【0039】
尚、このように光線の傾きの変化を徐々に行う構成として、より好ましくは、下記の条件式(4)を満たす。
| P2 - P3 |/ ( P2 + P3 ) < 0.3 ・・・(4)
【0040】
光学面S2、S3のそれぞれの屈折力P2、P3が互いに略等しい状態であることで光線の傾きの変化を均等に行うことができる。
【0041】
また、第2レンズ群G2の各エレメントの各面を、球面あるいは非球面形状にすることで、設計の自由度が増して接眼光学系EPの収差を抑えることができる。特に第2レンズ群G2では、第2エレメントE2の表示パネルDE側の光学面SFが表示パネルDE側に向かって凹面の形状を有する構成とすることで、主光線が光学面SFの法線方向に近づき(即ち、入射角度が減少する)収差の抑制に寄与することができる。
【0042】
以上の構成を有する映像表示装置10によれば、対角長が40mm以下の表示面を有する表示パネルDE、屈折レンズに、フレネル面を有するエレメントを含む小型なレンズ構成によって、最大画角が80度を超える臨場感のある映像を提供することができる。また、大きな屈折力をもつエレメントにおける収差の発生についても抑制し、良好な映像を提供することが可能である。
【0043】
以下、本発明の一実施形態における映像表示装置10において、より望ましい構成について記載する。
【0044】
図2は、映像表示装置10の変形例の構成を示す図である。
図2に示すように、映像表示装置10は、第2レンズ群G2内に、正の屈折力をもつDOE(Diffractive Optical Element)面である光学面S4を含むエレメント(第4エレメントE4)を有していても良い。
【0045】
一般に、DOE面は、ガラスやプラスチックのもつ色分散と逆向きの非常に大きな色分散をもち、フレネルレンズを含む屈折光学素子と組み合わせて光学系を構成することで、その光学系の色収差を除去する効果を奏する。
【0046】
本変形例では、DOE面の上述の特徴を利用し、強い色収差をもつ強い正の屈折力を有するフレネル面である光学面S2、S3の色収差を軽減する。具体的には、DOE面である光学面S4が、フレネル面である光学面S2、S3に近接するように、第4エレメントE4が配置されている。より詳しくは、光学面S2、S3とDOE面である光学面S4との距離が、接眼光学系EPの焦点距離(実効的焦点距離)と比較して十分に短くなるように近接して配置される。この配置により、フレネル面である光学面S2、S3で発生する軸上の色収差と倍率の色収差を同時にバランス良く補正することが可能となる。
【0047】
このとき、望ましくは、第2エレメントE2がもつフレネル面である光学面S2と、第3エレメントE3がもつフレネル面である光学面S3と、DOE面のうち、接眼光学系EPの光軸上における最も表示パネルDE側に存在する上記いずれかの面と、最も正の方向の側に存在する上記いずれかの面の間の距離が、接眼光学系EPの焦点距離(実効的焦点距離)FLの三分の一以下であるとよい。
【0048】
尚、
図2は、DOE面の配置の一例を示したものであり、DOE面を配置する構成は、
図2の構成に限定されない。例えば、
図3のように、第2エレメントE2が表示パネルDE側の光学面にDOE面S4を有している構成であってもよい。これにより第2レンズ群G2全体の肉厚を薄くできる。且、DOE面は、光学面S2、S3の主点位置に近接して配置される構成であれば、光学面S2、S3の軸上の色収差と倍率の色収差を補正する効果を十分に奏するためである。
【0049】
一方で、DOE面に入射する主光線がDOE面に対して斜めであると、不要な次数の回折光が発生しやすくなる。そのため、DOE面に入射する光線がなるべくDOE面に対し直交する方向から入射させることで不要な次数の回折光を減少させるべく、
図2に示すように、DOE面は、第2エレメントがもつフレネル面である光学面S2と、第3エレメントがもつフレネル面である光学面S3との間に配置されていることがより望ましい。光学面S2、S3の間では、接眼光学系EPにおいて徐々に屈曲させる過程で、接眼光学系EPの光軸に対して主光線が平行に近づくため、DOE面に入射する主光線をDOE面に対し直交する方向に進行するものとすることができる。
【0050】
また、
図2、
図3のようにDOE面を有する映像表示装置10において、下記条件式を満たすことがより望ましい。
V0=(V2+V3)/2
3.453×(P0/V0)×0.7 < P4 <3.453×(P0/V0)×1.3・・(5)
【0051】
上記条件式(5)では、接眼光学系EPの屈折力をP0(=1/FL)とし、光学面S4の屈折力をP4とし、第2エレメントE2、第3エレメントE3、第4エレメントE4のもつアッベ数をV2、V3、V4(=-3.453)としている。
【0052】
接眼光学EPの屈折力の大半は第2エレメントと第3エレメントが作り出していることを考慮すると、接眼光学系EPの色収差は、V2とV3の影響を強く受ける。このことを考慮すると、DOEを除く接眼光学系EPが持つ色収差をDOE面である光学面S4により相殺する条件式として、下記式(6)を導くことができる。そして、DOE面を有する第4エレメントE4の既知のアッベ数V4(=-3.453)を代入すると下記式(7)となる。
P0/V0+ P4 / V4 ≒ 0 ・・・(6)
P4 ≒ 3.453×(P0/V0) ・・・(7)
【0053】
実用上においては、厳密に式(7)を満たさずとも、条件式(5)を満たすようにP4が決められていれば、接眼光学系EPの色収差を良好に補正することができる。
【0054】
なお、DOEのパワーが大きいとDOEを構成する溝のピッチが微細になり加工が難しくなる。条件式(5’)はそのことを考慮し、DOEの下限値を条件式(5)よりも広げてあるが、この条件であっても色収差の補正効果は十分得られる。
3.453×( P0/V0)×0.5 < P4 <3.453×(P0/V0)×1.3・・(5’)
【0055】
図4、
図5、
図6は、映像表示装置10のさらに別の変形例における、映像表示装置10の構成の一部を示す図である。
図4、
図5、
図6はそれぞれ、第1エレメントE1の光学面S1の形状、第2エレメントE2の光学面S2の形状、第3エレメントE3の光学面S3の形状、を示す図である。
【0056】
図4に示すように、第1エレメントE1の光学面S1(第2光学面)は、外周部S1Aよりも光軸(光軸部S1B)へ向かい曲率が正の方向へ変化している。即ち、光学面S1は、光軸部S1Bの屈折力に比べ、外周部S1Aの屈折力が正の方向へ強くなっている。
【0057】
また、
図5に示すように、第2エレメントE2の光学面S2について、フレネル面の中の光学的に寄与する同心円状に配置された各光学面S2fを仮想的に連結した際の連結面S2f’の曲率が、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。尚、光学面S2fは、フレネル面のうち、光線を後段の光学系へ導光するように、光学的に寄与する面を示す。即ち、光学面S2は、外周部の屈折力に比べ、光軸部の屈折力が正の方向に強くなっている。
【0058】
また、
図6に示すように、第3エレメントE3の光学面S3について、フレネル面の中の光学的に寄与する同心円状に配置された各光学面S3fを仮想的に連結した際の連結面S3f’の曲率が、光軸から外周部へ向かい負の方向に変化している。即ち、光学面S2と同様、光学面S3は、外周部の屈折力に比べ、光軸部の屈折力が正の方向に強くなっている。
【0059】
一般に、最大画角が80°を超えるHMDの光学系の多くは、糸巻き型の像歪を有する。そのため、映像信号を工夫し、HMDの表示パネルに表示する映像を樽型に歪ませることで、結果として歪のない映像を表示できるようにされている場合が多い。本変形例は、普及している上記のような、最大画角が80°を超えるHMD用に準備された映像信号と互換性を持たせるために、映像表示装置10内の接眼光学系EPにおいても糸巻き型の像歪をもたせるようにしたものである。
【0060】
図4、
図5、
図6に示した各種エレメントを有することにより、光線高の高い主光線(主光線Re)と光線高の低い主光線(主光線Rc)とを考えたとき、主光線Reは、主光線Rcと比較して光学面S1の正の屈折力の屈曲作用をより強く受ける。また、主光線Rcは、主光線Reと比較して光学面S2、S3の正の屈折力の屈曲作用をより強く受ける。いずれの場合においても、表示面DPが接眼光学系EPの前側焦点位置付近に配置されていることから、光線高の高い主光線Reを結像する際の接眼光学系EPの実効的焦点距離は、光線高の低い主光線Rcを結像する際の接眼光学系EPの実効的焦点距離よりも短い距離となる。そのため、主光線Reが作る虚像の拡大倍率の方が、主光線Rcが作る虚像の拡大倍率よりも大きくなる。
【0061】
以上から、虚像の拡大倍率は、画角の小さな領域よりも画角の大きな領域の方が大きくなり、即ち映像の中心よりも外側の方が拡大されるように作用するものとなる。つまり上記の条件において、接眼光学系EPに糸巻き型の像歪を持たせることができる。
【0062】
以下、実施形態で説明した映像表示装置の具体的な実施例について説明する。
[実施例1]
図7は、実施例1に係る映像表示装置100が有するレンズ構成を示す図である。映像表示装置100の接眼光学系EPは第1レンズ群G1、第2レンズ群G2を含んでいる。
【0063】
第1レンズ群G1は、表示面DP側に負の屈折力を有する光学面S0をもち、正の方向の側に外周部が負の曲率を持つとともにレンズ媒質の外側に向かって凸の形状を有した光学面S1をもつ、屈折レンズである第1エレメントE1を含んでいる。尚、各エレメントがもつ面の曲率の詳細については後述する。
【0064】
第2レンズ群G2は、正の方向の側にフレネル面(光学面S2)を設けた第2エレメントE2、表示面DP側にフレネル面(光学面S3)を設けた第3エレメントE3、を含んでいる。
【0065】
以下、実施例1に係るレンズデータについて記載する。
面番号 R’ T nd vd 有効半径
1 ∞ 9.39 1 0
2 ∞ 3.1 1.534 56 10.7
3 -17.954 0.6 1 0 17.0
4 ∞ 2 1.534 56 21.0
5 ∞ 0.6 1 0 21.9
6 ∞ 2 1.534 56 21.9
7 ∞ 20.15 1 0 21.1
8 - -1000 1 0
9 - 0 1 0
【0066】
ここで、R’は、面番号1、4、7における接眼光学系EPの光軸上での曲率半径(mm)であり、面番号2、3、5、6の後述の式(8)、(9)のCを求めるパラメータをしめす。さらに、Tは面間隔(mm)を、ndは屈折率を、vdは、アッベ数を示す。面番号1は、表示パネルDEの表示面DPを示す。面番号2から7は、接眼光学系EPを構成する光学面を示す。面番号2は光学面S0に、面番号3は光学面S1に、面番号5は光学面S2に、面番号6は光学面S3に該当する。面番号8は、利用者の目の瞳孔の位置を示す。面番号9は、利用者に提示する虚像の像面を示す。
【0067】
面番号2、3は非球面であり、そのサグZは、下記式(8)で規定される。
【0068】
sは、接眼光学系EPの光軸からの距離、Cは1/R’で表される値、kは定数、A2、A4、A6、A8は、各次数のパラメータとなる定数である。
【0069】
面番号5、6はフレネル面であり、フレネル面(面番号5、6)の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面のサグZは、下記式(9)で規定される。
面番号2、3、5、6の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 A4 A6 A8 A10
2 0 -5.595E-02 -1.919E-04 -5.873E-07 9.131E-09 0.000E+00
3 0 3.013E-02 -1.725E-04 1.212E-06 -3.270E-09 3.161E-12
5 0 -5.486E-02 5.915E-05 -2.540E-07 6.040E-10 -4.992E-13
6 0 3.701E-02 -3.346E-05 9.414E-08 -1.177E-10 2.314E-14
【0070】
また、表示パネルDEの表示面DPの対角長は19mm、最大画角FVは80°、実効的後側焦点XPと接眼光学系EPとの距離FBは20.25mm、接眼光学系EPの焦点距離FLは17.092mmである。従って、表示面DPの対角長が40mm以下、接眼光学系EPの最大画角が80°超、距離FBが15mm以上、焦点距離FLが25mm以下であるという条件を満たしている。また、第2エレメントE2がもつフレネル面である光学面S2と、第3エレメントE3がもつフレネル面である光学面S3のうち、接眼光学系EPの光軸上における最も表示パネルDE側の光学面S2(面番号5)と最も正の方向の側の光学面S3(面番号6)の間の距離は、0.6mmであることから、該距離が接眼光学系EPの焦点距離FLの1/3以下であるという条件も満たしている。
【0071】
また、フレネル面の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面の曲率及び非球面の曲率は、下記の式(10)のようになり、式(10)は、サグZを光軸からの距離sで微分した式である式(11)、式(12)におけるZ’(s)とZ’’(s)を代入することで算出される。
【0072】
上述の面番号2、3のデータを代入し、光学面S0、S1の曲率を求め、グラフ化すると、それぞれ
図8、
図9のようになる。また、フレネル面である光学面S2、S3については、
図5、6で示したような、フレネル面の中の同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した連結面(それぞれ連結面S2f’、連結面S3f’)の曲率を、面番号5、6のデータを代入することで求め、グラフ化するとそれぞれ
図10、
図11のようになる。
【0073】
図8に示されるように、光学面S0の曲率は外周部をのぞき面全体が負である。
図9に示されるように、光学面S1の曲率は外周部において負であり、媒質の外側に向かって凸の形状を有している。
図10に示されるように、連結面S2f’の曲率は、光軸部が負であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。
図11に示されるように、連結面S3f’の曲率は、光軸部が正であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。また、
図12、
図13は、実施例1における接眼光学系EPの結像性能を示す。
図12、
図13で示される結像性能は、便宜的に、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から、接眼光学系EPを介して表示面DPに向かい光線を追跡し結像する像性能を示している。
【0074】
図12は、像面湾曲を示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が結像位置(mm)を示している。実線はタンジェンシャルの像面湾曲を、破線はサジタルの像面湾曲を示す。L1、L2は、波長が0.588E-03mmである光線の像面湾曲に対応した線を示している。
【0075】
図13は、パーセントディストーションを示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が歪の無い場合の光軸から像までの距離(理想像高)を基準に、実像高から理想像高を差し引いた量を求め、さらにその量を理想像高で除算した像歪の相対値を示している。
図13では、波長が0.588E-03mmである光線のパーセントディストーションを示す曲線が描かれている。
【0076】
また、
図13に示されるように、視野角が増加するに従い、パーセントディストーションが負の方向に増加している。即ち、表示面DPに結像する像は、樽型の歪を持っている。上述したように、
図13は、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から光線追跡を行ったものであるから、逆に表示面DPから、接眼光学系EPを介して光線追跡を行った場合、糸巻き型の歪を持つ像が形成されることを意味しており、接眼光学系EPが糸巻き型の像歪を形成するものであることが確認できる。
【0077】
[実施例2]
図14は、実施例2に係る映像表示装置200が有するレンズ構成を示す図である。映像表示装置200の接眼光学系EPは第1レンズ群G1、第2レンズ群G2を含んでいる。
【0078】
第1レンズ群G1は、表示面DP側に負の屈折力を有する光学面S0をもち、正の方向の側に外周部が負の曲率を持つとともにレンズ媒質の外側に向かって凸の形状を有した光学面S1をもつ、屈折レンズである第1エレメントE1を含んでいる。尚、各エレメントがもつ面の曲率の詳細については後述する。
【0079】
第2レンズ群G2は、正の方向の側にフレネル面(光学面S2)を設けた第2エレメントE2、正の方向の側にDOE面(光学面S4)を設けた第4エレメントE4、表示面DP側にフレネル面(光学面S3)を設けた第3エレメントE3、を含んでいる。
【0080】
以下、実施例2に係るレンズデータについて記載する。
面番号 R’ T nd vd 有効半径
1 ∞ 9.39 1 0
2 ∞ 3.1 1.534 56 11.4
3 18.3 0.6 1 0 17.1
4 ∞ 2 1.534 56 21.2
5 ∞ 0.6 1 0 22.0
6 ∞ 2 1.534 56 22.0
7 ∞ 0.6 1 0 21.9
8 ∞ 2 1.534 56 21.9
9 ∞ 19 1 0 21.1
10 - -1333 1 0
11 - 0 1 0
【0081】
ここで、R’は、面番号1、4、6、9における接眼光学系EPの光軸上での曲率半径(mm)であり、面番号2、3、5、7、8における式(8)、(9)、(13)のCを求めるパラメータをしめす。さらに、Tは面間隔(mm)を、ndは屈折率を、vdは、アッベ数を示す。面番号1は、表示パネルDEの表示面DPを示す。面番号2から9は、接眼光学系EPを構成する光学面を示す。面番号2は光学面S0に、面番号3は光学面S1に、面番号5は光学面S2に、面番号7は光学面S4に、面番号8は光学面S3に該当する。面番号10は、利用者の目の瞳孔の位置を示す。面番号11は、利用者に提示する虚像の像面を示す。
【0082】
面番号2、3は非球面であり、そのサグZは、上述した式(8)で規定される。
【0083】
面番号5、8はフレネル面であり、フレネル面(面番号5、8)の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面のサグZは、上述した式(9)で規定される。
【0084】
面番号2、3、5、8の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 A4 A6 A8 A10
2 0 -4.650E-02 -1.620E-04 -1.970E-06 1.780E-08 0.000E+00
3 0 3.250E-02 -1.890E-04 1.140E-06 -2.620E-09 1.840E-12
5 0 -5.120E-02 4.930E-05 -2.120E-07 5.090E-10 -4.310E-13
8 0 3.390E-02 -2.540E-05 4.990E-08 -2.770E-11 -4.030E-14
【0085】
面番号7はDOE面であり、DOE面がDOE面を通過する光に与える位相量Dは次式(13)で規定される。
mは回折次数、λは基準波長、kは定数、A2、A4…は各次数のパラメータとなる定数であり、A4以降の定数はゼロとなる。
【0086】
面番号7の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 回折次数m 基準波長λ(mm)
7 0 -25.3 1 0.533×10-3
【0087】
また、表示パネルDEの表示面DPの対角長は19.8mm(表示パネルDEの対角長は25.4mmである)、最大画角FVは90°、実効的後側焦点XPと接眼光学系EPとの距離FBは18.8mm、接眼光学系EPの焦点距離FLは17.1mmである。従って、表示面DPの対角長が40mm以下、接眼光学系EPの最大画角が80°超、距離FBが15mm以上、焦点距離FLが25mm以下であるという条件を満たしている。また、第2エレメントE2がもつフレネル面である光学面S2と、第3エレメントE3がもつフレネル面である光学面S3と、DOE面のうち、接眼光学系EPの光軸上における最も表示パネルDE側の光学面S2(面番号5)と最も正の方向側の光学面S3(面番号8)の間の距離はDOE面である光学面S4(面番号7)を挟み、3.2mmであることから、該距離が接眼光学系EPの焦点距離FLの1/3以下であるという条件も満たしている。
【0088】
また、フレネル面の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面の曲率及び非球面の曲率は、上記式(10)のようになり、式(10)は、サグZを光軸からの距離sで微分した式である式(11)、式(12)におけるZ’(s)とZ’’(s)を代入することで算出される。
【0089】
上述の面番号2、3のデータを代入し、光学面S0、S1の曲率を求め、グラフ化すると、それぞれ
図15、
図16のようになる。また、フレネル面である光学面S2、S3については、
図5、6で示したような、フレネル面の中の同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した連結面(それぞれ連結面S2f’、連結面S3f’)の曲率を、面番号5、8のデータを代入することで求め、グラフ化するとそれぞれ
図17、
図18のようになる。
【0090】
図15に示されるように、光学面S0の曲率は外周部をのぞき面全体が負である。
図16に示されるように、光学面S1の曲率は外周部において負であり、媒質の外側に向かって凸の形状を有している。
図17に示されるように、連結面S2f’の曲率は、光軸部が負であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。
図18に示されるように、連結面S3f’の曲率は、光軸部が正であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。
【0091】
また、式(13)で規定されるDOE面の屈折力は、以下の式(14)により算出される。
P = -(mλ/2π)・(C+2・A2)・・・(14)
【0092】
上記式(14)より、DOE面である光学面S4の屈折力P4は、下記のように算出される。
P4=4.29×10-3 ・・・(15)
【0093】
式(15)で規定される屈折力P4、及び、P0(=1/FL)、及び、V0(= (V2 + V3) / 2)は、式(5)を満たすものである。
【0094】
また、
図19、
図20は、実施例2における接眼光学系EPの結像性能を示す。
図19、
図20で示される結像性能は、便宜的に、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から、接眼光学系EPを介して表示面DPに向かい光線を追跡し結像する像性能を示している。
【0095】
図19は、像面湾曲を示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が結像位置(mm)を示している。実線はタンジェンシャルの像面湾曲を、破線はサジタルの像面湾曲を示す。L1、L4は、波長が0.656E-03mmである光線の像面湾曲に対応した線を示している。L2、L5は、波長が0.588E-03mmである光線の像面湾曲に対応した線を示している。L3、L6は、波長が0.486E-03mmである光線の像面湾曲に対応した線を示している。
【0096】
図19に示されるように、タンジェンシャルの像面もサジタルの像面も、結像位置がほぼ一致しており、接眼光学系EPは、軸上の色収差が良好に補正されている。
【0097】
図20は、パーセントディストーションを示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が歪の無い場合の光軸から像までの距離(理想像高)を基準に、実像高から理想像高を差し引いた量を求め、さらにその量を理想像高で除算した像歪の相対値を示している。
【0098】
図20では、波長が0.486E-03mm、0.588E-03mm、0.656E-03mmである各光線のパーセントディストーションを示す曲線が描かれているが、よく重なっておりほぼ一本に見える。従って、接眼光学系EPは、倍率の色収差が良好に補正されている。
【0099】
また、
図20に示されるように、視野角が増加するに従い、パーセントディストーションが負の方向に増加している。即ち、表示面DPに結像する像は、樽型の歪を持っている。上述したように、
図20は、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から光線追跡を行ったものであるから、逆に表示面DPから、接眼光学系EPを介して光線追跡を行った場合、糸巻き型の歪を持つ像が形成されることを意味しており、接眼光学系EPが糸巻き型の像歪を形成するものであることが確認できる。
【0100】
[実施例3]
図21は、実施例3に係る映像表示装置300が有するレンズ構成を示す図である。映像表示装置300の接眼光学系EPは第1レンズ群G1、第2レンズ群G2を含んでいる。
【0101】
第1レンズ群G1は、表示面DP側に負の屈折力を有する光学面S0をもち、正の方向の側に外周部が負の曲率を持つとともにレンズ媒質の外側に向かって凸の形状を有した光学面S1をもつ、屈折レンズである第1エレメントE1を含んでいる。尚、各エレメントがもつ面の曲率の詳細については後述する。
【0102】
第2レンズ群G2は、正の方向の側にフレネル面(光学面S2)を設けた第2エレメントE2、表示面DP側にフレネル面(光学面S3)を設けた第3エレメントE3、表示面DP側にDOE面(光学面S4)を設けた第4エレメントE4を含んでいる。
【0103】
以下、実施例3に係るレンズデータについて記載する。
面番号 R’ T nd vd 有効半径
1 ∞ 9.98 1 0
2 ∞ 3.1 1.534 56 11.4
3 -18.301 0.6 1 0 17.8
4 ∞ 2 1.534 56 22.2
5 ∞ 0.6 1 0 23.0
6 ∞ 2 1.534 56 22.8
7 ∞ 0.6 1 0 22.2
8 ∞ 2 1.534 56 21.9
9 ∞ 18.46 1 0 21.1
10 - -1333 1 0
11 - 0 1 0
【0104】
ここで、R’は、面番号1、4、7、9における接眼光学系EPの光軸上での曲率半径(mm)であり、面番号2、3、5、6、8における式(8)、(9)、(13)のCを求めるパラメータをしめす。さらに、Tは面間隔(mm)を、ndは屈折率を、vdは、アッベ数を示す。面番号1は、表示パネルDEの表示面DPを示す。面番号2から9は、接眼光学系EPを構成する光学面を示す。面番号2は光学面S0に、面番号3は光学面S1に、面番号5は光学面S2に、面番号6は光学面S3に、面番号8は光学面S4に該当する。面番号10は、利用者の目の瞳孔の位置を示す。面番号11は、利用者に提示する虚像の像面を示す。
【0105】
面番号2、3は非球面であり、そのサグZは、上述した式(8)で規定される。
【0106】
面番号5、6はフレネル面であり、フレネル面(面番号5、6)の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面のサグZは、上述した式(9)で規定される。
【0107】
面番号2、3、5、6の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 A4 A6 A8 A10
2 0 -5.274E-02 -1.513E-04 -1.818E-06 1.682E-08 0.000E+00
3 0 3.172E-02 -1.661E-04 1.057E-06 -2.640E-09 2.416E-12
5 0 -5.328E-02 4.926E-05 -2.143E-07 5.123E-10 -4.088E-13
6 0 3.483E-02 -3.294E-05 5.835E-08 -3.332E-11 -2.879E-14
【0108】
面番号8はDOE面であり、DOE面がDOE面を通過する光に与える位相量Dは上記式(13)で規定される。
【0109】
面番号8の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 回折次数m 基準波長λ(mm)
8 0 -2.21E+01 1 0.533E-03
【0110】
また、表示パネルDEの表示面DPの対角長は19.9mm、最大画角FVは90°、実効的後側焦点XPと接眼光学系EPとの距離FBは18.46mm、接眼光学系EPの焦点距離FLは17.13mmである。従って、表示面DPの対角長が40mm以下、接眼光学系EPの最大画角が80°超、距離FBが15mm以上、焦点距離FLが25mm以下であるという条件を満たしている。また、第2エレメントE2がもつフレネル面である光学面S2と、第3エレメントE3がもつフレネル面である光学面S3と、DOE面のうち、接眼光学系EPの光軸上における最も表示パネルDE側の光学面S2(面番号5)と最も正の方向側のDOE面である光学面S4(面番号8)の間の距離は光学面S3を挟み、3.2mmであることから、該距離が接眼光学系EPの焦点距離FLの1/3以下であるという条件も満たしている。
【0111】
また、フレネル面の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面の曲率及び非球面の曲率は、上記式(10)のようになり、式(10)は、サグZを光軸からの距離sで微分した式である式(11)、式(12)におけるZ’(s)とZ’’(s)を代入することで算出される。
【0112】
上述の面番号2、3のデータを代入し、光学面S0、S1の曲率を求め、グラフ化すると、それぞれ
図22、
図23のようになる。また、フレネル面である光学面S2、S3については、
図5、6で示したような、フレネル面の中の同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した連結面(それぞれ連結面S2f’、連結面S3f’)の曲率を、面番号5、6のデータを代入することで求め、グラフ化するとそれぞれ
図24、
図25のようになる。
【0113】
図22に示されるように、光学面S0の曲率は外周部をのぞき面全体が負である。
図23に示されるように、光学面S1の曲率は外周部において負であり、媒質の外側に向かって凸の形状を有している。
図24に示されるように、連結面S2f’の曲率は、光軸部が負であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。
図25に示されるように、連結面S3f’の曲率は、光軸部が正であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。
【0114】
上記式(14)より、DOE面である光学面S4の屈折力P4は、下記のように算出される。
P4= 3.8 × 10-3・・・(16)
【0115】
式(16)で規定される屈折力P4、及び、P0(=1/FL) 、及び、V0(= (V2 + V3) / 2)は、式(5)を満たすものである。
【0116】
また、
図26、
図27は、実施例3における接眼光学系EPの結像性能を示す。
図126、
図27で示される結像性能は、便宜的に、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から、接眼光学系EPを介して表示面DPに向かい光線を追跡し結像する像性能を示している。
【0117】
図26は、像面湾曲を示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が結像位置(mm)を示している。実線はタンジェンシャルの像面湾曲を、破線はサジタルの像面湾曲を示す。尚、波長が0.656E-03mm 、0.588E-03mm 、0.486E-03mm である各光線の像面湾曲が示されているが、タンジェンシャルの像面湾曲とサジタルの像面湾曲のそれぞれ毎によく重なっており、略一本の線に見える。即ち、タンジェンシャルの像面もサジタルの像面も、結像位置がほぼ一致しており、接眼光学系EPは、軸上の色収差が良好に補正されている。
【0118】
図27は、パーセントディストーションを示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が歪の無い場合の光軸から像までの距離(理想像高)を基準に、実像高から理想像高を差し引いた量を求め、さらにその量を理想像高で除算した像歪の相対値を示している。
【0119】
図27では、波長が0.486E-03mm、0.588E-03mm、0.656E-03mmである各光線のパーセントディストーションを示す曲線が描かれているが、よく重なっておりほぼ一本に見える。従って、接眼光学系EPは、倍率の色収差が良好に補正されている。
【0120】
また、
図27に示されるように、視野角が増加するに従い、パーセントディストーションが負の方向に増加している。即ち、表示面DPに結像する像は、樽型の歪を持っている。上述したように、
図27は、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から光線追跡を行ったものであるから、逆に表示面DPから、接眼光学系EPを介して光線追跡を行った場合、糸巻き型の歪を持つ像が形成されることを意味しており、接眼光学系EPが糸巻き型の像歪を形成するものであることが確認できる。
【0121】
[実施例4]
図28は、実施例4に係る映像表示装置400が有するレンズ構成を示す図である。映像表示装置400の接眼光学系EPは第1レンズ群G1、第2レンズ群G2を含んでいる。
【0122】
第1レンズ群G1は、表示面DP側に負の屈折力を有する光学面S0をもち、正の方向の側に外周部が負の曲率を持つとともにレンズ媒質の外側に向かって凸の形状を有した光学面S1をもつ、屈折レンズである第1エレメントE1を含んでいる。尚、各エレメントがもつ面の曲率の詳細については後述する。
【0123】
第2レンズ群G2は、正の方向の側にフレネル面(光学面S2)を設けた第2エレメントE2、正の方向側にDOE面(光学面S4)を設けた第4エレメントE4、表示面DP側にフレネル面(光学面S3)を設けた第3エレメントE3、を含んでいる。
【0124】
以下、実施例4に係るレンズデータについて記載する。
面番号 R’ T nd vd 有効半径
1 ∞ 9.79 1 0
2 ∞ 3.1 1.534 56 11.0
3 -18.3 0.5 1 0 16.3
4 -66.6 1.5 1.534 56 19.1
5 105 0.88 1 0 21.7
6 ∞ 1.5 1.534 56 21.7
7 ∞ 0.5 1 0 21.7
8 ∞ 1.5 1.534 56 21.7
9 ∞ 19 1 0 21.7
10 - -1000 1 0
11 - 0 1 0
【0125】
ここで、R’は、面番号1、4、6、9における接眼光学系EPの光軸上での曲率半径(mm)であり、面番号2、3、5、7、8における式(8)、(9)、(13)のCを求めるパラメータを示す。さらに、Tは面間隔(mm)を、ndは屈折率を、vdは、アッベ数を示す。面番号1は、表示パネルDEの表示面DPを示す。面番号2から9は、接眼光学系EPを構成する光学面を示す。面番号2は光学面S0に、面番号3は光学面S1に、面番号5は光学面S2に、面番号7は光学面S4に、面番号8は光学面S3に該当する。面番号10は、利用者の目の瞳孔の位置を示す。面番号11は、利用者に提示する虚像の像面を示す。
【0126】
面番号2、3は非球面であり、そのサグZは、上述した式(8)で規定される。
【0127】
面番号8はフレネル面であり、フレネル面(面番号8)の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面のサグZは、上述した式(9)で規定される。
【0128】
面番号5は非球面の上にフレネル面が形成された面であり、非球面のサグZは、上述した式(8)で規定される。さらにその非球面の上に形成されているフレネル面(面番号5)の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面の、非球面を基準としたサグZは、上述した式(9)で規定される。
【0129】
面番号2、3、5の上述した式(8)の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 A4 A6 A8 A10
2 0 -4.171E-02 -3.183E-04 -5.116E-07 1.039E-08 0.000E+00
3 0 2.895E-02 -2.680E-04 1.651E-06 -3.709E-09 1.943E-12
5 0 -5.554E-02 3.098E-05 -6.911E-08 1.460E-10 -2.400E-13
【0130】
面番号5、8の上述した式(9)の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 A4 A6 A8 A10
5 0 0 -3.46E-06 -8.835E-08 1.648E-10 0
8 0 3.810E-02 -6.203E-05 2.537E-07 -4.652E-10 2.973E-13
面番号7はDOE面であり、DOE面がDOE面を通過する光に与える位相量Dは上記式(13)で規定される。
【0131】
面番号7の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 回折次数m 基準波長λ(mm)
7 0 -2.22E+01 1 0.533E-3
【0132】
また、表示パネルDEの表示面DPの対角長は20mm、最大画角FVは90°、実効的後側焦点XPと接眼光学系EPとの距離FBは19.11mm、接眼光学系EPの焦点距離FLは16.99mmである。従って、表示面DPの対角長が40mm以下、接眼光学系EPの最大画角が80°超、距離FBが15mm以上、焦点距離FLが25mm以下であるという条件を満たしている。また、第2エレメントE2がもつフレネル面である光学面S2と、第3エレメントE3がもつフレネル面である光学面S3と、DOE面のうち、接眼光学系EPの光軸上における最も表示パネルDE側の光学面S2(面番号5)と最も正の方向の側の光学面S3(面番号8)の間の距離はDOE面である光学面S4(面番号7)を挟み、2.88mmであることから、該距離が接眼光学系EPの焦点距離FLの1/3以下であるという条件も満たしている。
【0133】
また、フレネル面の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面の曲率及び非球面の曲率は、上記式(10)のようになり、式(10)は、サグZを光軸からの距離sで微分した式である式(11)、式(12)におけるZ’(s)とZ’’(s)を代入することで算出される。
【0134】
上述の面番号2、3のデータを代入し、光学面S0、S1の曲率を求め、グラフ化すると、それぞれ
図29、
図30のようになる。また、フレネル面である光学面S2、S3については、
図5、6で示したような、フレネル面の中の同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した連結面(それぞれ連結面S2f’、連結面S3f’)の曲率を、面番号5、8のデータを代入することで求め、グラフ化するとそれぞれ
図31、
図32のようになる。
【0135】
図29に示されるように、光学面S0の曲率は外周部をのぞき面全体が負である。
図30に示されるように、光学面S1の曲率は外周部において負であり、媒質の外側に向かって凸の形状を有している。
図31に示されるように、連結面S2f’の曲率は、光軸部が負であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。
図32に示されるように、連結面S3f’の曲率は、光軸部が正であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。
【0136】
上記式(14)より、DOE面である光学面S4の屈折力P4は、下記のように算出される。
P4= 3.8 × 10-3・・・(17)
【0137】
式(17)で規定される屈折力P4及びP0(=1/FL) 、及び、V0(= (V2 + V3) / 2)は、式(5)を満たすものである。
【0138】
また、
図33、
図34は、実施例4における接眼光学系EPの結像性能を示す。
図33、
図34で示される結像性能は、便宜的に、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から、接眼光学系EPを介して表示面DPに向かい光線を追跡し結像する像性能を示している。
【0139】
図33は、像面湾曲を示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が結像位置(mm)を示している。実線はタンジェンシャルの像面湾曲を、破線はサジタルの像面湾曲を示す。尚、波長が0.656E-03mm 、0.588E-03mm 、0.486E-03mm である各光線の像面湾曲が示されているが、タンジェンシャルの像面湾曲とサジタルの像面湾曲のそれぞれ毎によく重なっており、略一本の線に見える。即ち、タンジェンシャルの像面もサジタルの像面も、結像位置がほぼ一致しており、接眼光学系EPは、軸上の色収差が良好に補正されている。
【0140】
図34は、パーセントディストーションを示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が歪の無い場合の光軸から像までの距離(理想像高)を基準に、実像高から理想像高を差し引いた量を求め、さらにその量を理想像高で除算した像歪の相対値を示している。
【0141】
図34では、波長が0.486E-03mm、0.588E-03mm、0.656E-03mmである各光線のパーセントディストーションを示す曲線が描かれているが、よく重なっておりほぼ一本に見える。従って、接眼光学系EPは、倍率の色収差が良好に補正されている。
【0142】
また、
図34に示されるように、視野角が増加するに従い、パーセントディストーションが負の方向に増加している。即ち、表示面DPに結像する像は、樽型の歪を持っている。上述したように、
図34は、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から光線追跡を行ったものであるから、逆に表示面DPから、接眼光学系EPを介して光線追跡を行った場合、糸巻き型の歪を持つ像が形成されることを意味しており、接眼光学系EPが糸巻き型の像歪を形成するものであることが確認できる。
【0143】
[実施例5]
図35は、実施例5に係る映像表示装置500が有するレンズ構成を示す図である。映像表示装置500の接眼光学系EPは第1レンズ群G1、第2レンズ群G2を含んでいる。
【0144】
第1レンズ群G1は、表示面DP側に負の屈折力を有する光学面S0をもち、正の方向の側に外周部が負の曲率を持つとともにレンズ媒質の外側に向かって凸の形状を有した光学面S1をもつ、屈折レンズである第1エレメントE1を含んでいる。尚、各エレメントがもつ面の曲率の詳細については後述する。
【0145】
第2レンズ群G2は、表示面DP側にDOE面(光学面S4)を設け、正の方向の側にフレネル面(光学面S2)を設けた第2エレメントE2、表示面DP側にフレネル面(光学面S3)を設けた第3エレメントE3を含んでいる。
【0146】
以下、実施例5に係るレンズデータについて記載する。
面番号 R’ T nd vd 有効半径
1 ∞ 10.15 1 0
2 ∞ 3.1 1.534 56 11.1
3 -18.301 0.6 1 0 17.2
4 ∞ 2.0 1.534 56 21.2
5 ∞ 0.60 1 0 21.9
6 ∞ 2.0 1.534 56 21.9
7 ∞ 20 1 0 21.1
8 - -1000 1 0
9 - 0 1 0
【0147】
ここで、R’は、面番号1、7における接眼光学系EPの光軸上での曲率半径(mm)であり、面番号2、3、4、5、6における式(8)、(9)、(13)のCを求めるパラメータをしめす。さらに、Tは面間隔(mm)を、ndは屈折率を、vdは、アッベ数を示す。面番号1は、表示パネルDEの表示面DPを示す。面番号2から7は、接眼光学系EPを構成する光学面を示す。面番号2は光学面S0に、面番号3は光学面S1に、面番号4は光学面S4に、面番号5は光学面S2に、面番号6は光学面S3に該当する。面番号8は、利用者の目の瞳孔の位置を示す。面番号9は、利用者に提示する虚像の像面を示す。
【0148】
面番号2、3は非球面であり、そのサグZは、上述した式(8)で規定される。
【0149】
面番号5、6はフレネル面であり、フレネル面(面番号5、6)の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面のサグZは、上述した式(9)で規定される。
【0150】
面番号2、3、5、6の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 A4 A6 A8 A10
2 0 -5.795E-02 -1.179E-04 -1.165E-06 1.016E-08 0.000E+00
3 0 2.765E-02 -1.226E-04 7.922E-07 -1.809E-09 1.123E-12
5 0 -5.252E-02 4.898E-05 -1.801E-07 4.496E-10 -3.943E-13
6 0 3.620E-02 -3.582E-05 1.018E-07 -1.387E-10 4.129E-14
面番号4はDOE面であり、DOE面がDOE面を通過する光に与える位相量Dは上記式(13)で規定される。
【0151】
面番号4の各種パラメータを記載すると、下記のようになる。
面番号 k A2 回折次数m 基準波長λ(mm)
4 0 -1.56E+01 1 0.533E-3
【0152】
また、表示パネルDEの表示面DPの対角長は19.8mm、最大画角FVは90°、実効的後側焦点XPと接眼光学系EPとの距離FBは20mm、接眼光学系EPの焦点距離FLは17.27mmである。従って、表示面DPの対角長が40mm以下、接眼光学系EPの最大画角が80°超、距離FBが15mm以上、焦点距離FLが25mm以下であるという条件を満たしている。また、第2エレメントE2がもつフレネル面である光学面S2と、第3エレメントE3がもつフレネル面である光学面S3と、DOE面のうち、接眼光学系EPの光軸上における最も表示パネルDE側のDOE面である光学面S4(面番号4)と最も正の方向の側の光学面S3(面番号6)の間の距離は光学面S2を間に挟み、2.6mmであることから、該距離が接眼光学系EPの焦点距離FL(17.27mm)の1/3以下となるように第2エレメントE2、第3エレメントE3が近接配置されるという条件についても満たしている。
【0153】
また、フレネル面の中の、同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した際の連結面の曲率及び非球面の曲率は、上記式(10)のようになり、式(10)は、サグZを光軸からの距離sで微分した式である式(11)、式(12)におけるZ’(s)とZ’’(s)を代入することで算出される。
【0154】
上述の面番号2、3のデータを代入し、光学面S0、S1の曲率を求め、グラフ化すると、それぞれ
図36、
図37のようになる。また、フレネル面である光学面S2、S3については、
図5、6で示したような、フレネル面の中の同心円状に配置された各光学面を仮想的に連結した連結面(それぞれ連結面S2f’、連結面S3f’)の曲率を、面番号5、6のデータを代入することで求め、グラフ化するとそれぞれ
図38、
図39のようになる。
【0155】
図36に示されるように、光学面S0の曲率は外周部をのぞき面全体が負である。
図37に示されるように、光学面S1の曲率は外周部において負であり、媒質の外側に向かって凸の形状を有している。
図38に示されるように、連結面S2f’の曲率は、光軸部が負であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。
図39に示されるように、連結面S3f’’の曲率は、光軸部が正であり、光軸から外周部へ向かい正の方向に変化している。
【0156】
上記式(14)より、DOE面である光学面S4の屈折力P4は、下記のように算出される。
P4= 2.6 × 10-3・・・(18)
【0157】
式(18)で規定される屈折力P4及びP0(=1/FL) 、及び、V0(= (V2 + V3) / 2)は、式(5)を満たすものである。
【0158】
また、
図40、
図41は、実施例5における接眼光学系EPの結像性能を示す。
図40、
図41で示される結像性能は、便宜的に、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から、接眼光学系EPを介して表示面DPに向かい光線を追跡し結像する像性能を示している。
【0159】
図40は、像面湾曲を示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が結像位置(mm)を示している。実線はタンジェンシャルの像面湾曲を、破線はサジタルの像面湾曲を示す。L1、L4は、波長が0.486E-03mmである光線の像面湾曲に対応した線を示している。L2、L5は、波長が0.588E-03mmである光線の像面湾曲に対応した線を示している。L3、L6は、波長が0.656E-03mmである光線の像面湾曲に対応した線を示している。
【0160】
図40に示されるように、タンジェンシャルの像面もサジタルの像面も、結像位置がほぼ一致しており、接眼光学系EPは、軸上の色収差が良好に補正されている。
【0161】
図41は、パーセントディストーションを示すグラフであり、縦軸が視野角(度)を示し、横軸が歪の無い場合の光軸から像までの距離(理想像高)を基準に、実像高から理想像高を差し引いた量を求め、さらにその量を理想像高で除算した像歪の相対値を示している。
【0162】
図41では、波長が0.486E-03mm、0.588E-03mm、0.656E-03mmである各光線のパーセントディストーションを示す曲線が描かれているが、よく重なっておりほぼ一本に見える。従って、接眼光学系EPは、倍率の色収差が良好に補正されている。
【0163】
また、
図41に示されるように、視野角が増加するに従い、パーセントディストーションが負の方向に増加している。即ち、表示面DPに結像する像は、樽型の歪を持っている。上述したように、
図41は、接眼光学系EPがつくる虚像の位置から光線追跡を行ったものであるから、逆に表示面DPから、接眼光学系EPを介して光線追跡を行った場合、糸巻き型の歪を持つ像が形成されることを意味しており、接眼光学系EPが糸巻き型の像歪を形成するものであることが確認できる。
【0164】
上述した実施形態、実施例は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態、実施例に限定されるものではない。上述した映像表示装置は、特許請求の範囲に記載した本発明を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0165】
10、100、200、300、400、500 映像表示装置
DE 表示パネル
DP 表示面
EP 接眼光学系
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
E1 第1エレメント
E2 第2エレメント
E3 第3エレメント
S0、S1、S2、S3、SF、SB 光学面