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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20221013BHJP
   A61F 13/534 20060101ALI20221013BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/535 100
A61F13/534 110
A61F13/537 220
A61F13/537 310
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018007027
(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公開番号】P2019122717
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】小縄 聡子
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-042249(JP,A)
【文献】特許第5318747(JP,B2)
【文献】特開2015-112401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/535
A61F 13/534
A61F 13/537
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌側の上層シートと非肌側の下層シートとの間の所定領域に、高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備えた吸収性物品であって、
前記ポリマーシートは、前記上層シートと下層シートとが接合された接合部によって周囲を囲まれ、内部に前記高吸水性ポリマーが配置されたポリマー配置領域が、隣接する該ポリマー配置領域同士で前記接合部を連続させながら正格子状又は千鳥格子状に多数配置されるとともに、前記ポリマー配置領域を囲む前記接合部によって周囲を囲まれ、内部に前記高吸水性ポリマーが配置されないポリマー無配置領域が、隣接する4つの前記ポリマー配置領域の中央にそれぞれ配置され、
少なくとも一部の前記ポリマー無配置領域に、前記上層シート及び下層シートを貫通する開孔が設けられているとともに、前記開孔は、着用者の体液排出部に対応する部分に相対的に多く配置され、それ以外の部分には相対的に少なく配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
肌側の上層シートと非肌側の下層シートとの間の所定領域に、高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備えた吸収性物品であって、
前記ポリマーシートは、前記上層シートと下層シートとが接合された接合部によって周囲を囲まれ、内部に前記高吸水性ポリマーが配置されたポリマー配置領域が、隣接する該ポリマー配置領域同士で前記接合部を連続させながら正格子状又は千鳥格子状に多数配置されるとともに、前記ポリマー配置領域を囲む前記接合部によって周囲を囲まれ、内部に前記高吸水性ポリマーが配置されないポリマー無配置領域が、隣接する4つの前記ポリマー配置領域の中央にそれぞれ配置され、
少なくとも一部の前記ポリマー無配置領域に、前記上層シート及び下層シートを貫通する開孔が設けられているとともに、前記開孔は、隣り合う前記ポリマー無配置領域のうち、1つおき又は複数個おきに設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項3】
前記接合部は、前記ポリマー配置領域の周囲に沿って連続又は間欠して設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
平面視略円形又は楕円形の前記ポリマー配置領域が、吸収性物品の長手方向及び幅方向に沿って正格子状に配列され、隣接する4つの前記ポリマー配置領域の中央に、平面視略菱形の前記ポリマー無配置領域が配置されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ポリマーシートは、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間において、吸水性の繊維集合体を含む繊維集合体層の肌側に積層して配置されるか、単独で配置されている請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳しくは上層シートと下層シートとの間に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備えた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に、体液を吸収し保持する機能を備えた吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、前記吸収体として、2層のシート間に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備えたものが提案されている。前記ポリマーシートは、大量の体液を吸収して保持する点では優れているが、内部に粉粒状の高吸水性ポリマーの集合体が配設されているため、通液性が低く、吸収スピードが遅いという課題があった。このため、一度に大量の体液が排出されたとき、高吸水性ポリマーに吸水されずにポリマーシート上に体液があふれるおそれがあった。
【0004】
このようなポリマーシートを用いた吸収性物品としては、例えば下記特許文献1~3を挙げることができる。下記特許文献1においては、上側シート状吸収層と繊維集合層と下側シート状吸収層とを、トップシート側からこの順で有し、各シート状吸収層はそれぞれ、不織布シート間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有さず、不織布シート間に、吸水性樹脂が配された複数の吸水性樹脂存在領域と、前記吸水性樹脂存在領域に隣接して吸水性樹脂非存在領域とを有し、前記吸水性樹脂非存在領域で、不織布シートどうしが接合されて封止部を形成している吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2においては、トップシートとバックシートとの間に吸収体が介在され、前記吸収体及びトップシートの間にセカンドシートが配置され、吸収性ポリマーが2枚の液透過性シートに挟持された吸収性シートが前記トップシートとセカンドシートとの間に存在し、前記吸収性シートが、2枚の液透過性シートに吸収性ポリマーが挟持されている吸収性ポリマー存在領域と、前記2枚の液透過性シートに吸収性ポリマーが挟持されていない吸収性ポリマー非存在領域とを有する吸収性物品が開示されている。
【0006】
更に、下記特許文献3においては、吸収性材料を、熱融着性の合成樹脂を含むシート部材で包んだ吸収性物品用の吸収体であって、前記吸収体は、前記シート部材どうしを融着してなる融着部を、該吸収体の全周縁の少なくとも一部に形成することにより、袋状に形成されており、前記吸収体の全周よりも内側に、前記シート部材どうしを融着してなる内側融着部を有し、該内側融着部の内側には貫通孔が形成されている吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5318747号公報
【文献】特開2012-110364号公報
【文献】特開2015-112401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1、2に記載された吸収性物品では、上層シートと下層シートの間に高吸水性ポリマーが配置されたポリマー配置領域とポリマー無配置領域とを有することにより、ポリマー配置領域で体液を吸収するとともに、ポリマー無配置領域を通って体液が下層の繊維集合体からなる吸収体に移行しやすくしているが、前記ポリマー無配置領域において上層シート及び下層シートの2層のシートを体液が通過するのに時間がかかり、充分な液透過性及び吸収スピードが得られない場合があった。
【0009】
一方、上記特許文献3に記載された吸収体では、貫通孔が形成されているため、この貫通孔を通って体液が下層側に流れやすくなると考えられるが、前記貫通孔が融着部に設けられているため、融着部の表面を平面方向に拡散しようとする体液が前記貫通孔を通って下層側に流れてしまい、平面方向の拡散性が低下し、体液排出部及びその近傍の高吸水性ポリマーのみが吸水して、吸水効率が悪くなるおそれがあった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、体液の平面方向への拡散性を保持しつつ、通液性を向上させた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、肌側の上層シートと非肌側の下層シートとの間の所定領域に、高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備えた吸収性物品であって、
前記ポリマーシートは、前記上層シートと下層シートとが接合された接合部によって周囲を囲まれ、内部に前記高吸水性ポリマーが配置されたポリマー配置領域が、隣接する該ポリマー配置領域同士で前記接合部を連続させながら正格子状又は千鳥格子状に多数配置されるとともに、前記ポリマー配置領域を囲む前記接合部によって周囲を囲まれ、内部に前記高吸水性ポリマーが配置されないポリマー無配置領域が、隣接する4つの前記ポリマー配置領域の中央にそれぞれ配置され、
少なくとも一部の前記ポリマー無配置領域に、前記上層シート及び下層シートを貫通する開孔が設けられているとともに、前記開孔は、着用者の体液排出部に対応する部分に相対的に多く配置され、それ以外の部分には相対的に少なく配置されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
また、請求項2に係る本発明として、肌側の上層シートと非肌側の下層シートとの間の所定領域に、高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシートを備えた吸収性物品であって、
前記ポリマーシートは、前記上層シートと下層シートとが接合された接合部によって周囲を囲まれ、内部に前記高吸水性ポリマーが配置されたポリマー配置領域が、隣接する該ポリマー配置領域同士で前記接合部を連続させながら正格子状又は千鳥格子状に多数配置されるとともに、前記ポリマー配置領域を囲む前記接合部によって周囲を囲まれ、内部に前記高吸水性ポリマーが配置されないポリマー無配置領域が、隣接する4つの前記ポリマー配置領域の中央にそれぞれ配置され、
少なくとも一部の前記ポリマー無配置領域に、前記上層シート及び下層シートを貫通する開孔が設けられているとともに、前記開孔は、隣り合う前記ポリマー無配置領域のうち、1つおき又は複数個おきに設けられていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項1、2記載の発明では、前記接合部によって周囲を囲まれたポリマー配置領域が、隣接する該ポリマー配置領域同士で前記接合部を連続させながら正格子状又は千鳥格子状に多数配置されているため、この接合部の表面を体液が流れることにより、平面方向に体液が拡散しやすく、広い範囲の高吸水性ポリマーに体液が吸収され、体液の吸収効率が向上するようになる。
【0014】
また、本発明に係る吸収性物品では、前記ポリマー無配置領域が隣接する4つの前記ポリマー配置領域の中央にそれぞれ配置され、このポリマー無配置領域に、上層シート及び下層シートを貫通する開孔が設けられている。すなわち、前記開孔が前記接合部とは別の領域であるポリマー無配置領域に設けられている。このため、体液が前記接合部の表面を流れて平面方向へ拡散する、体液の平面方向への拡散性を保持しつつ、前記開孔を通って下層側に流れる、下層側への通液性が向上できるようになる。
【0015】
さらに、前記請求項1に係る発明では、前記開孔は、着用者の体液排出部に対応する部分に相対的に多く配置され、それ以外の部分には相対的に少なく配置されている一度に大量の体液が排出された場合などにおいて、体液排出部近傍の吸収スピードが遅いと体液が表面にあふれるおそれがあるため、この部分に開孔を多く設けている。
【0016】
他方、前記請求項2に係る発明では、前記開孔は、隣り合う前記ポリマー無配置領域のうち、1つおき又は複数個おきに設けられている間隔をあけて開孔を配置することにより、体液をポリマーシートの表面で、ある程度平面方向に拡散させてから、適度に下層側へ通液させている。
【0017】
請求項に係る本発明として、前記接合部は、前記ポリマー配置領域の周囲に沿って連続又は間欠して設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項記載の発明では、前記接合部を連続線又は間欠線で形成することにより、連続線とした場合には、前記接合部の表面を体液がより広い範囲に流れやすく、より広範囲の高吸水性ポリマーに体液が吸収されるようになり、間欠線とした場合には、前記接合部に沿った体液の流れが緩やかとなり、前記開孔を通って下層側に通液しやすくなる。
【0019】
請求項に係る本発明として、平面視略円形又は楕円形の前記ポリマー配置領域が、吸収性物品の長手方向及び幅方向に沿って正格子状に配列され、隣接する4つの前記ポリマー配置領域の中央に、平面視略菱形の前記ポリマー無配置領域が配置されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明は、ポリマー配置領域及びポリマー無配置領域の配置パターンとして代表的なものを挙げている。このパターンで配置することにより、前記接合部の表面を流れる平面方向への体液の拡散性を保持しつつ、バランスよく前記開孔を通って下層側に通液できるようになる。
【0021】
請求項に係る本発明として、前記ポリマーシートは、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間において、吸水性の繊維集合体を含む繊維集合体層の肌側に積層して配置されるか、単独で配置されている請求項1~いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項記載の発明では、前記ポリマーシートを繊維集合体層の肌側に積層して配置した場合には、前記開孔を通って繊維集合体層に体液が通液しやすくなり、繊維集合体層にも体液が吸収されるようになる。一方、前記ポリマーシートを単独で配置した場合には、吸収性物品の厚みを大幅に薄くできるとともに、前記開孔を通って下層シートに通液しやすくなり、下層シートに吸収された体液が平面方向に拡散しながら高吸水性ポリマーに吸収されるようになる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、体液の平面方向の拡散性を保持しつつ、通液性が向上できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII-II線矢視図である。
図3】ポリマーシート4の拡大平面図である。
図4図3のIV-IV線矢視図である。
図5図3のV-V線矢視図である。
図6】変形例に係る図3のIV-IV線矢視図である。
図7】変形例に係る図3のV-V線矢視図である。
図8】変形例に係るポリマーシート4の拡大平面図である。
図9】変形例に係る開孔16の配置パターン(その1)である。
図10】変形例に係る開孔16の配置パターン(その2)である。
図11】ポリマーシート4の製造装置を示す側面図である。
図12】(A)~(D)は、ポリマーシート4の製造手順を示す断面図である。
図13】ポリマーシート4を単独で配置した生理用ナプキン1の横断面図である。
図14】変形例に係るポリマーシート4の横断面図である。
図15】変形例に係るポリマーシート4の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在され、2層のシート間に高吸水性ポリマーが配置されたポリマーシート4と、前記ポリマーシート4と不透液性裏面シート2との間に介在され、吸水性の繊維集合体を含む繊維集合体層5と、表面両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイド不織布7,7とから構成されている。また、前記繊維集合体層5の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2、透液性表面シート3の外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では繊維集合体層5及びポリマーシート4の側縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接合手段によって接合され、外周に繊維集合体層5及びポリマーシート4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0027】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0028】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。前記透液性表面シート3は、後段で詳述するポリマーシート4の上層シート10が肌当接面層を構成する場合には、設けなくてもよい。
【0029】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される繊維集合体層5は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入した吸収体を使用できる。前記繊維集合体層5は、図2に示されるように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するために被包シート6によって囲繞するのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記繊維集合体層5として、親水性の繊維からなる不織布などを用いてもよい。
【0030】
また、前記繊維集合体層5には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
一方、本生理用ナプキン1の表面側の両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによってウイング状フラップW、Wが形成されている。
【0032】
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0033】
前記サイド不織布7の内方側は、図2に示されるように、前記サイド不織布7をほぼ二重に折り返すとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材8,8が配設され、その収縮力によって前記二重シート部分を肌側に起立させた立体ギャザーBS、BSが形成されている。
【0034】
〔ポリマーシート4〕
以下、前記ポリマーシート4について詳細に説明する。前記ポリマーシート4は、透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間であって、前記繊維集合体層5(あるいは前記繊維集合体層5を囲繞する被包シート6)の肌側(透液性表面シート3側)に隣接して配置されている。前記ポリマーシート4は、図1に示される例では、繊維集合体層5の外形とほぼ同等かこれより若干小さな平面形状を有している。
【0035】
前記ポリマーシート4は、肌側(透液性表面シート3側)に配置された上層シート10と非肌側(不透液性裏面シート2側)に配置された下層シート11との間の所定領域に、高吸水性ポリマー12が配置された構造を成している。前記高吸水性ポリマー12は、パルプなどの繊維状吸収材に混入されるのではなく、粉粒状の高吸水性ポリマー12のみの集合体として配置されている。
【0036】
前記ポリマーシート4を構成する前記上層シート10としては、不織布が用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、前記透液性表面シート3と同様に、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができる。前記不織布の加工法は問わないが、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法など、得られた製品の繊維密度が大きくなる加工法とするのが好ましい。また、後段で詳述するように、上層シート10は所定の凹凸加工が施されるため、熱可塑性を有する素材を含むのが好ましい。前記上層シート10は、凹凸加工のしやすさ、高吸水性ポリマー12の保持性などを考慮すると、不織布を用いるのが好ましい。
【0037】
前記下層シート11としては、前記上層シート10と同様に、不織布が用いられる。不織布の加工法についても同様に、特に問わないが、高吸水性ポリマー12の脱落を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法など、得られた製品の繊維密度が大きくなる加工法とするのが好ましい。
【0038】
前記高吸水性ポリマー12としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0039】
前記ポリマーシート4は、図3に示されるように、前記高吸水性ポリマー12が配置されたポリマー配置領域13と、前記高吸水性ポリマー12が配置されないポリマー無配置領域14とが形成されている。前記ポリマー配置領域13は、前記上層シート10と下層シート11との間に高吸水性ポリマー12が所定の目付以上で介在する領域である。前記ポリマー無配置領域14は、2層のシート10、11間に高吸水性ポリマー12が全く介在しないか、前記ポリマー配置領域13に高吸水性ポリマー12を散布する際にこぼれ落ちるなどして若干高吸水性ポリマー12が存在するが、その量が前記ポリマー配置領域13と比較して極端に少ない領域である。前記ポリマー配置領域13は、上層シート10及び下層シート11の外縁まで達しない上層シート10及び下層シート11の中間領域に形成されている。
【0040】
前記ポリマー配置領域13は、図3に示されるように、前記上層シート10と下層シート11とが接合された接合部15によって周囲を囲まれ、内部に前記高吸水性ポリマー12が配置された領域である。ここで、接合部15によって周囲を囲まれるとは、図示例のように閉合する連続線からなる接合部15で周囲が完全に封止される場合の他に、ポリマー配置領域13の周囲に沿って接合区間と非接合区間とが交互に配置された間欠線からなる接合部15によって周囲を囲まれる場合(図8参照。)も含む概念である。
【0041】
前記ポリマー配置領域13は、隣接するポリマー配置領域13、13同士で前記接合部15を連続させながら、正格子状又は千鳥格子状に、図示例では正格子状に多数配置されている。すなわち、隣り合うポリマー配置領域13、13同士で、周囲を囲む接合部15、15の一部が重なるか接続して配置されている。図3に示される例では、ある一つのポリマー配置領域13の周囲を囲む接合部15に着目したとき、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向の両端部がそれぞれ、隣接するポリマー配置領域13の周囲を囲む接合部15と重なって配置されている。このように隣接するポリマー配置領域13、13同士で接合部15を連続させることにより、接合部15の表面を流れる体液が接合部15に沿って平面方向に連続して拡散しやすくなる。
【0042】
前記ポリマー配置領域13に充填される高吸水性ポリマー12の目付は、20~300g/m、好ましくは80~200g/mとするのがよい。
【0043】
一方、前記ポリマー無配置領域14は、図3に示されるように、前記ポリマー配置領域13を囲む接合部15によって周囲を囲まれ、内部に高吸水性ポリマー12が配置されない領域である。すなわち、前記ポリマー配置領域13及び接合部15以外の領域がポリマー無配置領域14となっている。前記ポリマー無配置領域14は、隣接する4つの前記ポリマー配置領域13、13…の中央にそれぞれ配置されている。前記ポリマー無配置領域14においては、上層シート10と下層シート11との間に高吸水性ポリマー12が介在せず、上層シート10と下層シート11とが隙間を空けずに隣接して積層されている。
【0044】
前記ポリマー無配置領域14には、前記上層シート10及び下層シート11を貫通する開孔16が設けられている。前記開孔16は、図1及び図3に示される例では、全てのポリマー無配置領域14に設けられているが、少なくとも一部のポリマー無配置領域14に設けてあればよい。前記開孔16は、ポリマー無配置領域14の中央部であって、周囲の接合部15から離隔する中間部に、1つ設けられている。つまり、前記開孔16は、接合部15とは別の領域であるポリマー無配置領域14に設けられ、且つ前記接合部15に接続しないポリマー無配置領域14の中間位置に設けられている。したがって、前記開孔16と接合部15との間には、上層シート10及び下層シート11が接合されずに積層されたポリマー無配置領域14の一部が介在している。
【0045】
前記開孔16は、平面視略円形で設けるのが好ましいが、略楕円形や多角形などで形成してもよい。前記開孔16の面積は、この開孔16を体液が通過しやすいように、0.01~8mm、好ましくは1~5mmとするのがよい。
【0046】
前記接合部15としては、図4及び図5に示されるように、ホットメルト接着剤などの接着剤による接着手段を用いてもよいし、図6及び図7に示されるように、ヒートシールや超音波シールなどの上層シート10の表面側からの圧搾融着による接合手段を用いてもよい。
【0047】
前記接合部15が接着剤からなる場合、接着剤の非透水性により、接合部15での体液の浸透が制限され、接合部15の表面を該接合部15に沿って体液が流れやすくなる。また、前記接合部15が圧搾融着からなる場合、上層シート10の表面がラミネート化されて体液の浸透が制限され、接合部15の表面を該接合部15に沿って体液が流れやすくなる。また、図6及び図7に示されるように、この場合の接合部15は、断面形状が非肌側に窪んだ凹状の圧搾溝からなるため、この圧搾溝に沿って体液が流れやすくなる。いずれにしても、接合部15の表面を体液が流れることにより、体液が平面方向に拡散しやすくなっている。
【0048】
前記接合部15は、図3に示されるように、連続線で形成してもよいし、図8に示されるように、間欠線で形成してもよい。連続線とは、ポリマー配置領域13の周囲を周方向に連続して接合したものであり、間欠線とは、ポリマー配置領域13の周囲を周方向に沿って接合区間と非接合区間とが交互に配置され、前記接合区間によって間欠して接合したものである。前記接合部15を連続線とした場合には、体液が接合部15の表面を流れやすく、より広範囲のポリマー配置領域13の高吸水性ポリマー12に吸収されるようになる。前記接合部15を間欠線とした場合には、接合部15に沿った体液の流れが緩やかで、前記開孔16を通って下層側に通液しやすくなる。前記接合部15を間欠線とした場合において、隣接するポリマー配置領域13、13を囲む接合部15、15を連続させるには、図8に示されるように、間欠して配置された接合区間を重ね合わせるか、接続して配置すればよい。
【0049】
前記ポリマーシート4におけるポリマー配置領域13及びポリマー無配置領域14の配置パターンの最も好ましい実施形態としては、図3及び図8に示されるように、平面視で、少なくとも上下左右位置が上層シート10を下層シート11に接合する接合部15によって囲まれるとともに、生理用ナプキン1の長手方向及び幅方向に沿って正格子状に配列され、内部に高吸水性ポリマー12が配置された複数のポリマー配置領域13、13…と、隣接する4つのポリマー配置領域13、13…の中央に位置するとともに、内部に高吸水性ポリマー12が配置されないポリマー無配置領域14とに区画された構造とするのが好ましい。
【0050】
図3に示される実施形態と図8に示される実施形態とは、接合部15が連続線からなるか、間欠線からなるかの違いだけで、ポリマー配置領域13及びポリマー無配置領域14の配置パターンとしては同じなので、図8に示される実施形態を例に挙げ、この配置パターンについてより具体的に説明する。前記ポリマーシート4は、上層シート10と下層シート11とが、千鳥格子状配置で設けられた第1接合部15aによって接合されるとともに、上下左右位置に存在する4つの各第1接合部15a、15a…同士を結ぶ斜め中間位置に設けられた第2接合部15bによって接合されている。前記千鳥格子状配置とは、ピッチが同じ隣り合う行又は列を、1行おき又は1列おきに半ピッチずらして配置したものであり、1行おき又は1列おきに上下方向及び左右方向に整列するように配置したものである。また、本書において、上下位置とは、生理用ナプキン1の長手方向(前後方向)に一致する方向の位置であり、左右位置とは、生理用ナプキン1の幅方向に一致する方向の位置である。
【0051】
また、前記ポリマーシート4は、前記第1接合部15aと第2接合部15bとによって囲まれるとともに、ナプキン長手方向及び幅方向に沿って正格子状に配列された、内部に高吸水性ポリマー12が封入された複数のポリマー配置領域13と、隣接する(上下方向及び左右方向に近接する)4つのポリマー配置領域13、13…の中央に位置するとともに、斜め4方向が前記第2接合部15bによって囲まれたポリマー無配置領域14とに区画されている。
【0052】
すなわち、前記ポリマー配置領域13は、上下左右位置にそれぞれ配置された第1接合部15a、15a…と、上下左右位置の中間であって斜め4方向位置にそれぞれ配置された第2接合部15b、15b…とによって囲まれている。また、前記ポリマー無配置領域14は、正格子状に配列された前記ポリマー配置領域13、13…が上下方向及び左右方向に近接する4つのポリマー配置領域13、13…で囲まれた中央に位置し、斜め4方向がそれぞれ前記第2接合部15bによって囲まれている。
【0053】
ある1つのポリマー配置領域13を基準としてみたとき、その周囲には、パッド長手方向にそれぞれポリマー配置領域13が隣接するとともに、パッド幅方向にそれぞれポリマー配置領域13が隣接し、かつこれら周囲に配置されたポリマー配置領域13、13…の中間であって、基準となる中央のポリマー配置領域13の斜め4方向にそれぞれポリマー無配置領域14が隣接している。
【0054】
前記ポリマー配置領域13及びポリマー無配置領域14は、任意の平面形状で形成することが可能である。前記ポリマー配置領域13及びポリマー無配置領域14の平面形状とはそれぞれ、図3及び図8に示されるように、前記接合部15とによって囲まれた領域の基端部分の平面形状のことであり、接合部15に内接する閉合する仮想線S1、S2の平面形状のことである。前記ポリマー配置領域13の平面形状は、楕円形、円形、多角形、菱形などで形成することができ、ポリマー無配置領域14の平面形状は、略菱形、楕円形、円形、多角形などで形成することができる。長手方向と短手方向を有する平面形状からなるものでは、長手方向をナプキン長手方向に配向してもよいし、ナプキン幅方向に配向してもよい。これらの平面形状のうち、特に好ましいものは、図3及び図8に示されるように、前記ポリマー配置領域13の平面形状が、ナプキン長手方向に長い楕円形に形成されるとともに、ポリマー無配置領域14の平面形状が、略菱形に形成されるようにしたものである。これにより、ポリマーシート4にポリマー配置領域13及びポリマー無配置領域14がほぼ隙間なく配置されるようになり、ポリマーシート4の吸水効率が向上できる。前記ポリマー無配置領域14の平面形状が略菱形とは、各辺が直線からなる菱形の他、各辺が内側に凸の曲線からなる略菱形の形状も含むものである。
【0055】
前記ポリマー配置領域13では、図4及び図5に示されるように、前記第1接合部15a及び第2接合部15bで囲まれた領域内の上層シート10が、概ね中央部を頂点としてドーム状に肌側に膨出することにより、上層シート10と下層シート11との間に空間部が形成されるようになっている。一方、ポリマー無配置領域14では、図5に示されるように、上層シート10の平坦部分が下層シート11の上面に積層されることにより、上層シート10と下層シート11との間に隙間が形成されないようになっている。
【0056】
以上の構成からなるポリマーシート4を備えた生理用ナプキン1の作用について説明すると、前記透液性表面シート3を浸透して上層シート10に達した体液は、上層シート10に吸収されるが、その際、前記接合部15では、該接合部15がホットメルトなどの接着剤からなる場合には、接着剤の不透水性により、該接合部15が圧搾溝からなる場合には、表面がラミネート化されることにより、体液が前記接合部15の表面を平面方向に流れやすくなる。この接合部15の表面を流れる体液は、隣接するポリマー配置領域13、13同士で前記接合部15が連続しているため、広い範囲に拡散しやすくなり、拡散する過程でポリマー配置領域13に収容された高吸水性ポリマー12に吸収されるようになる。このように、広い範囲の高吸水性ポリマー12によって体液が分散して吸収できるため、ある特定の部位に配置された高吸水性ポリマー12に集中せず、体液の吸収効率が向上するようになる。
【0057】
また、本生理用ナプキン1では、前記開孔16が接合部15とは別の領域であるポリマー無配置領域14に設けられているため、接合部15の表面を体液が平面方向に流れて平面方向へ拡散する、体液の平面方向への拡散性を保持しつつ、この接合部15からあふれた体液やポリマー無配置領域14に浸透した体液などが必要に応じて前記開孔16を通って下層側の繊維集合体層5に流れる、下層側への通液性が向上できる。このため、一度に大量の体液が排出されたときでも、ポリマーシート4の表面に体液があふれにくく、下層側に配置された繊維集合体層5への通液性が向上できる。
【0058】
前記開孔16の配置パターンの変形例として、図9に示されるように、前記開孔16を、着用者の体液排出部Hに対応する部分に相対的に多く配置し、それ以外の部分には相対的に少なく配置することができる。これによって、体液排出部Hに対応する部分において前記開孔16を通って下層の繊維集合体層5に通液しやすくなるため、一度に大量の体液が排出された場合などにおいて、体液排出部H近傍の吸収スピードを特に速めることができ、体液排出部付近である程度下層側に通液させながら、体液を拡散及び吸収することができるので、体液が表面にあふれるのがより確実に防止できる。
【0059】
この場合、体液排出部Hに対応する部分において排出された体液の多くが前記開孔16を通って下層側の繊維集合体層5に移行するため、図9に示されるように、ポリマーシート4は、生理用ナプキン1の長手方向中間の体液排出部Hに対応する部分を含む領域に配置されていればよく、前側部分及び後側部分には繊維集合体層5にポリマーシート4を積層しなくてもよい。
【0060】
一方、前記開孔16の配置パターンの他の変形例として、図10に示されるように、前記開孔16を、隣り合うポリマー無配置領域14、14のうち、1つおき又は複数個おきに設けてもよい。この実施形態では、ポリマーシート4を体液排出部Hより後側の着用者の臀部に対応する領域に設けることにより、間隔をあけて開孔16を配置したポリマーシート4において、体液を平面方向に拡散させながら、適度に下層側に通液させることができるようになる。
【0061】
前記ポリマーシート4を製造するには、図11及び図12に示されるように、前記ポリマー配置領域13に対応する多数の凸状部21a、21a…が配列された第1エンボスロール21と、前記凸状部21aに対応する多数の凹状部22a、22a…が配列されるとともに、前記開孔16に対応する位置に突き刺し用のピン22bが配置された第2エンボスロール22との間に、上層シート10を通過させることにより、前記凸状部21aと凹状部22aとの噛み合わせによって前記ポリマー配置領域13の膨出部分を形成するとともに、前記ピン22bの突き刺しによって上層シート10の開孔を形成する。
【0062】
その後、前記上層シート10が配置された前記第2エンボスロール22の表面に高吸水性ポリマー12を散布し、前記ポリマー配置領域13に対応する凹状部22aに高吸水性ポリマー12を収容し、第2エンボスロール22とフラットロール23との間に、別経路から搬送された下層シート11を積層した状態で通過させることにより、前記接合部15によって前記上層シート10と下層シート11とを接合し一体化させると同時に、前記ピン22bの突き刺しによって下層シート11の開孔部分を形成する。これらの接合は、前記第2エンボスロール22の凸部に対応する上層シート10の外面にホットメルト接着剤等を塗布しておき下層シート11と接着するか、前記フラットロール23との噛み合わせ時に前記第2エンボスロール22の凸部を加熱又は超音波放射により、前記上層シート10と下層シート11とを融着させることにより行われる。
【0063】
必要に応じて前記第2エンボスロール22の凹状部22aの底部に吸引口を設けることによって、エンボス時に上層シート10を吸引しエンボスしやすくするとともに、高吸水性ポリマー12の散布時に吸引してポリマーの落下を防止することができる。また、高吸水性ポリマー12の散布後、スクレーパーなどで表面を均すことによって、ポリマー配置領域13に収容される高吸水性ポリマー12の量を調整してもよい。
【0064】
しかる後、長手方向に連続するポリマーシート4、4…を、ポリマー配置領域13が設けられない上層シート10と下層シート11との積層部分にて裁断する。
【0065】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記ポリマーシート4は、透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に、繊維集合体層5の肌側に積層して配置していたが、図13に示されるように、透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に、単独で配置し、繊維集合体層5を設けないこととしてもよい。この場合には、上層シート10の表面の体液が、前記開孔16を通って下層シート11に通液しやすくなり、下層シート11に吸収された体液が、平面方向に拡散して高吸水性ポリマー12に吸収されやすくなるという効果も奏するようになる。前記ポリマーシート4を単独で配置する場合、前記下層シート11に吸収された体液が該下層シート11を平面方向に拡散しやすくなるように、前記下層シート11として、親水性の不織布を用いるのが好ましい。
【0066】
(2)図14に示されるように、前記下層シート11の肌側面に隣接して、平面方向の体液の拡散を促進する液拡散シート17を積層してもよい。すなわち、前記ポリマーシート4は、透液性表面シート3側から不透液性裏面シート2側に向けて、上層シート10、液拡散シート17、下層シート11の順に積層され、前記上層シート10と液拡散シート17との間の所定領域に高吸水性ポリマー12が配置されている。
【0067】
前記液拡散シート17は、平面方向の体液の拡散性に優れ、かつ上層シート10及び下層シート11より厚み方向の液透過性が低い繊維集合体で構成するのが好ましい。このような特性を備えた素材としては、例えばクレープ紙やティッシュペーパーを挙げることができる。
【0068】
前記液拡散シート17は、高吸水性ポリマー12の非肌側にのみ設けられ、高吸水性ポリマー12の肌側には設けないのが好ましい。仮に、高吸水性ポリマー12の肌側に設けた場合には、前記液拡散シート17によって厚み方向の体液の浸透速度が低下し、ポリマーシート4の吸収スピードが遅くなるおそれがある。
【0069】
前記液拡散シート17は、1層のみで構成してもよいし、複数のシートを積層した多層構造としてもよい。多層構造からなる場合、全て同じ性質を有するシート部材を積層したものでもよいし、異なる性質を有するシート部材を積層したものでもよい。すなわち、少なくとも1つの層が平面方向の体液の拡散性に優れ、且つ厚み方向の液拡散性が低い性質を有するもので構成するか、少なくとも1つの層が平面方向の体液の拡散性に優れ、他の少なくとも1つの層が厚み方向の液透過性が低い性質を有するもので構成する。後者の場合、肌側面を構成する層が平面方向の体液の拡散性に優れる性質を有し、非肌側面を構成する層が厚み方向の液透過性が低い性質を有するように配置するのが好ましい。
【0070】
前記液拡散シート17に備えられる平面方向の体液の拡散性に優れた性質としては、JIS P8141に規定される「紙及び板紙のクレム法による吸水度試験方法」によるクレム吸水度が10分で25mm以上、特に30mm以上であるのが好ましい。かかる性質を有するものとしては、具体的にはクレープ紙やティッシュペーパーなどの薄い吸収紙が挙げられる。
【0071】
具体的に、次の各素材について、前記クレム吸水度を測定した結果を表1に示す。測定は、素材のライン流れ方向(MD方向)と、これと直交する方向(CD方向)とについて、それぞれ10回ずつ行い、その平均値をクレム吸水度とした。測定に用いた素材は、(1)液拡散シート17(クレープ紙、15g/m)、(2)エアスルー不織布(ポリエチレン/ポリプロピレンの複合繊維と、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの複合繊維の積層体、25g/m)、(3)スパンボンド不織布(ポリプロピレン、18g/m)の3種類である。表1に示されるように、クレム吸水度は、素材によって大きく異なるが、本発明で使用する(1)の素材は平面方向の液拡散性に優れるようになる。
【表1】
【0072】
前記液拡散シート17は、前記上層シート10及び下層シート11より厚み方向の液透過性が低い性質を有するのが好ましい。このような性質を有すると、液拡散シート17に吸収された体液が直ちに下層シート11に移動するのではなく、液拡散シート17内でより広範囲に拡散し、より多くの高吸水性ポリマー12と接触できるようになるため好ましい。これによって、高吸水性ポリマー12が体液をより確実に吸収できるようになる。
【0073】
このような性質を有するものとしては、クレープ紙やティッシュペーパーなどの薄い吸収紙や、前記上層シート10及び下層シート11より親水度の低い不織布等の繊維集合体等を挙げることができる。
【0074】
前記液拡散シート17は、上層シート10及び下層シート11とほぼ同じ平面形状で形成されるか、これより若干小さな少なくとも全てのポリマー配置領域13を含む大きさで形成するのが好ましい。また、前記液拡散シート17は、面方向の体液の拡散を促進させたい部分のみ、例えば排尿口部対応領域とその周辺領域にのみ配置してもよい。
【0075】
前記上層シート10は、前記液拡散シート17に直接接触した状態で所定の接合部15で接合されている。
【0076】
前記液拡散シート17を配置したポリマーシート4では、前記開孔16を通って、又は前記上層シート10から浸透して液拡散シート17に吸収された体液が、液拡散シート17の平面方向の液拡散作用によって平面方向に素早く拡散され、広い範囲の高吸水性ポリマー12に体液が接触して、効率良く吸収できるようになる。また、前記液拡散シート17によって平面方向に拡散した体液が、ポリマー配置領域13に配置された高吸水性ポリマー12の下側から回り込むようにして吸収されるため、高吸水性ポリマー12による体液吸収が効率良く行われるようになる。更に、前記液拡散シート17によって平面方向に拡散させた体液を広い領域の高吸水性ポリマー12によって吸収しているため、特定の狭い領域の高吸水性ポリマー12にのみ体液が集中して吸収されることにより、この狭い領域の高吸水性ポリマー12だけが膨潤して増厚する装着感の悪化が防止できるようになる。
【0077】
(3)前記ポリマー配置領域13及びポリマー無配置領域14の平面形状の変形例としては、図15(A)に示されるように、ポリマー配置領域13の平面形状を円形に形成してもよい。また、配置パターンの変形例としては、図15(B)に示されるように、ポリマー配置領域13を千鳥格子状に配置してもよいし、図15(C)に示されるような正格子状に配置してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…ポリマーシート、5…繊維集合体層、7…サイド不織布、10…上層シート、11…下層シート、12…高吸水性ポリマー、13…ポリマー配置領域、14…ポリマー無配置領域、15…接合部、16…開孔、17…液拡散シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15