(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】走行車両
(51)【国際特許分類】
B62D 11/04 20060101AFI20221013BHJP
B66F 9/24 20060101ALN20221013BHJP
B66F 11/04 20060101ALN20221013BHJP
【FI】
B62D11/04 Z
B66F9/24 Z
B66F11/04
(21)【出願番号】P 2018134690
(22)【出願日】2018-07-18
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】須田 元昭
(72)【発明者】
【氏名】森山 亮
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 耕
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-320342(JP,A)
【文献】特許第6080458(JP,B2)
【文献】特開2009-096357(JP,A)
【文献】特開2003-137128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 11/04
B66F 9/24
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右に設けられた左側および右側クローラ走行装置と、
操作方向および操作量に応じて走行方向および
目標走行速度を
示す走行指令信号を出力する走行操作装置と、
操作方向および操作量に応じて旋回方向および
目標旋回量を
示す旋回量指令信号を出力する旋回操作装置と、
前記走行操作装置
から出力される走行指令信号および前記旋回操作装置
から出力される旋回量指令信号に基づき、前記左側および右側クローラ走行装置の駆動を制御する走行制御装置とを備え、
前記走行制御装置は、
前記走行操作装置
から出力される走行指令信号を受けてこの走行指令信号に基づく走行方向および目標走行速度で前記左側および右側クローラ走行装置を駆動させる制御を行っている状態で、前記旋回操作装置が操作されてこの操作に対応する旋回量指令信号を受けたときに、
前記左側および右側クローラ走行装置のうち、前記旋回量指令信号に基づく旋回方向において内側となるクローラ走行装置について、前記旋回量指令信号に基づく目標旋回量が増加するのに応じて前記目標走行速度よりも速度を低下させた目標内側旋回走行速度を設定し、当該目標内側旋回走行速度となるように前記内側となるクローラ走行装置を駆動する制御を行うように構成され、
前記旋回操作装置の操作量が大きくなるのに応じて前記目標内側旋回走行速度を低下させるとともに、前記旋回操作装置の操作量が、前記内側となるクローラ走行装置が停止状態となるピボット走行となる目標旋回量にする第1操作量となったときに、前記内側となるクローラ走行装置が停止するように設定し、
前記旋回操作装置の操作量が、前記第1
操作量を
含む所定範囲内
においては、前記内側となるクローラ走行装置が停止保持されるように前記目標内側旋回走行速度を設定することを特徴とする走行車両。
【請求項2】
前記走行制御装置は、
前記左側および右側クローラ走行装置のうち、前記旋回量指令信号に基づく旋回方向において外側となるクローラ走行装置について、前記旋回量指令信号に基づく目標旋回量が増加するのに応じて前記目標走行速度を低下させて前記目標内側旋回走行速度より大きな目標外側旋回走行速度を設定し、前記目標外側旋回走行速度となるように前記外側となるクローラ走行装置を駆動する制御を行うように構成され、
前記旋回操作装置の操作量が前記第1
操作量を含む前記所定範囲内
においては、前記外側となるクローラ走行装置
が一定の速度に保持されるように前記目標外側旋回走行速度を設定することを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項3】
前記車体の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器を備え、
前記走行制御装置は、前記傾斜角度検出器により検出された前記車体の傾斜角度および前記旋回操作装置の操作量に応じて、前記所定範囲を変更させることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の走行車両。
【請求項4】
前記旋回操作装置の操作量が前記第1
操作量を含む前記所定範囲内であるときに、旋回方向において内側となる前記クローラ走行装置を強制的に停止保持する停止保持装置を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の走行車両。
【請求項5】
車体の左右に設けられた左側および右側クローラ走行装置と、
操作方向および操作量に応じて走行方向および
目標走行速度を
示す走行指令信号を出力する走行操作装置と、
操作方向および操作量に応じて旋回方向および
目標旋回量を
示す旋回量指令信号を出力する旋回操作装置と、
前記走行操作装置
から出力される走行指令信号および前記旋回操作装置
から出力される旋回量指令信号に基づき、前記左側および右側クローラ走行装置の駆動を制御する走行制御装置とを備え、
前記走行制御装置は、
前記走行操作装置
から出力される走行指令信号を受けてこの走行指令信号に基づく走行方向および目標走行速度で前記左側および右側クローラ走行装置を駆動させる制御を行っている状態で、前記旋回操作装置が操作されてこの操作に対応する旋回量指令信号を受けたときに、
前記左側および右側クローラ走行装置のうち、前記旋回量指令信号に基づく旋回方向において内側となるクローラ走行装置について、前記旋回量指令信号に基づく目標旋回量が増加するのに応じて前記目標走行速度よりも速度を低下させた目標内側旋回走行速度を設定し、当該目標内側旋回走行速度となるように前記内側となるクローラ走行装置を駆動する制御を行うように構成され、
前記旋回操作装置の操作量が大きくなるのに応じて前記目標内側旋回走行速度を低下させるとともに、前記旋回操作装置の操作量が所定の第1操作量となるまでは前記目標内側旋回走行速度を低下させるように設定し、
前記旋回操作装置の操作量が、前記第1
操作量を越えたとき
から前記内側とな
るクローラ走行装置
を逆方向に駆動させる
ように前記目標内側旋回走行速度を変更設定することを特徴とする走行車両。
【請求項6】
前記左側クローラ走行装置を駆動する左側電気モータおよび前記右側クローラ走行装置を駆動する右側電気モータを備え、
前記走行制御装置は、
前記走行操作装置から出力される走行指令信号および前記旋回操作装置から出力される旋回量指令信号に基づき、前記左側および右側電気モータの駆動を制御して前記左側および右側クローラ走行装置の駆動を制御することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の走行車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の左右両側にクローラ走行装置を有して走行可能な走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなクローラ走行装置を備えた走行車両では、走行操作レバーおよび旋回量操作ダイヤルの操作方向および操作量に応じて左右のクローラ走行装置の回転方向および回転速度を制御することにより、前進または後進の直進走行、スラローム旋回走行、ピボット旋回走行およびスピン旋回走行を行うことができるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、上記走行操作レバーおよび旋回量操作ダイヤルに代えて、左右二本の走行操作レバーを備えたクローラ式走行車両(例えば、特許文献2を参照)や、前進および後進の切り替えを行う走行レバーと、走行速度を設定するアクセルペダルと、旋回方向および旋回量を設定するハンドルとを備えたクローラ式走行車両(例えば、特許文献3を参照)や、一本の走行操作レバーにより前進、後進、走行速度、旋回方向および旋回量を設定可能なジョイスティック型の走行操作装置を備えたクローラ式走行車両も知られている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6080458号公報
【文献】特開2003‐343510号公報
【文献】実開平5‐24481号公報
【文献】特開2002‐104227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のクローラ式走行車両では、旋回方向において内側となるクローラ走行装置への出力指令が小さい領域(例えば、スラローム旋回走行からピボット旋回走行に移行する直前のスラローム旋回領域)において、内側のクローラ走行装置がトルクを確保することができずに外側のクローラ走行装置に負けて車両が直進走行するという不具合があった。特に、下り傾斜路を走行しているときには、このような不具合が発生しやすかった。このような不具合を防止するには、内側のクローラ走行装置のトルクを大きくすればよいが、そのためには消費電力が過大になるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、消費電力を抑えつつ、旋回走行時における車両の走行操作性を向上させることができる走行車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の本発明に係る走行車両は、車体の左右に設けられた左側および右側クローラ走行装置と、操作方向および操作量に応じて走行方向および目標走行速度を示す走行指令信号を出力する走行操作装置(例えば、実施形態における走行操作レバー47)と、操作方向および操作量に応じて旋回方向および目標旋回量を示す旋回量指令信号を出力する旋回操作装置(例えば、実施形態における旋回量操作レバー48)と、前記走行操作装置から出力される走行指令信号および前記旋回操作装置から出力される旋回量指令信号に基づき、前記左側および右側クローラ走行装置の駆動を制御する走行制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ60の走行制御部)とを備える。その上で、前記走行制御装置は、前記走行操作装置から出力される走行指令信号を受けてこの走行指令信号に基づく走行方向および目標走行速度で前記左側および右側クローラ走行装置を駆動させる制御を行っている状態で、前記旋回操作装置が操作されてこの操作に対応する旋回量指令信号を受けたときに、前記左側および右側クローラ走行装置のうち、前記旋回量指令信号に基づく旋回方向において内側となるクローラ走行装置について、前記旋回量指令信号に基づく目標旋回量が増加するのに応じて前記目標走行速度よりも速度を低下させた目標内側旋回走行速度を設定し、当該目標内側旋回走行速度となるように前記内側となるクローラ走行装置を駆動する制御を行うように構成され、前記旋回操作装置の操作量が大きくなるのに応じて前記目標内側旋回走行速度を低下させるとともに、前記旋回操作装置の操作量が、前記内側となるクローラ走行装置が停止状態となるピボット走行となる目標旋回量にする第1操作量となったときに、前記内側となるクローラ走行装置が停止するように設定し、前記旋回操作装置の操作量が、前記第1操作量を含む所定範囲内においては、前記内側となるクローラ走行装置が停止保持されるように前記目標内側旋回走行速度を設定するように構成される。
【0007】
上記構成の走行車両において、前記走行制御装置は、前記左側および右側クローラ走行装置のうち、前記旋回量指令信号に基づく旋回方向において外側となるクローラ走行装置について、前記旋回量指令信号に基づく目標旋回量が増加するのに応じて前記目標走行速度を低下させて前記目標内側旋回走行速度より大きな目標外側旋回走行速度を設定し、前記目標外側旋回走行速度となるように前記外側となるクローラ走行装置を駆動する制御を行うように構成され、前記旋回操作装置の操作量が前記第1操作量を含む前記所定範囲内においては、前記外側となるクローラ走行装置が一定の速度に保持されるように前記目標外側旋回走行速度を設定するように構成されることが好ましい。
【0008】
上記構成の走行車両において、前記車体の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器を備え、前記走行制御装置は、前記傾斜角度検出器により検出された前記車体の傾斜角度および前記旋回操作装置の操作量に応じて、前記所定範囲を変更させるように構成されることが好ましい。
【0009】
上記構成の走行車両において、前記旋回操作装置の操作量が前記第1操作量を含む前記所定範囲内であるときに、旋回方向において内側となる前記クローラ走行装置を強制的に停止保持する停止保持装置を備えることが好ましい。
【0010】
上記課題を解決するため、第2の本発明に係る走行車両は、車体の左右に設けられた左側および右側クローラ走行装置と、操作方向および操作量に応じて走行方向および目標走行速度を示す走行指令信号を出力する走行操作装置(例えば、実施形態における走行操作レバー47)と、操作方向および操作量に応じて旋回方向および目標旋回量を示す旋回量指令信号を出力する旋回操作装置(例えば、実施形態における旋回量操作ダイヤル48)と、前記走行操作装置から出力される走行指令信号および前記旋回操作装置から出力される旋回量指令信号に基づき、前記左側および右側クローラ走行装置の駆動を制御する走行制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ60の走行制御部)とを備える。その上で、前記走行制御装置は、前記走行操作装置から出力される走行指令信号を受けてこの走行指令信号に基づく走行方向および目標走行速度で前記左側および右側クローラ走行装置を駆動させる制御を行っている状態で、前記旋回操作装置が操作されてこの操作に対応する旋回量指令信号を受けたときに、前記左側および右側クローラ走行装置のうち、前記旋回量指令信号に基づく旋回方向において内側となるクローラ走行装置について、前記旋回量指令信号に基づく目標旋回量が増加するのに応じて前記目標走行速度よりも速度を低下させた目標内側旋回走行速度を設定し、当該目標内側旋回走行速度となるように前記内側となるクローラ走行装置を駆動する制御を行うように構成され、前記旋回操作装置の操作量が大きくなるのに応じて前記目標内側旋回走行速度を低下させるとともに、前記旋回操作装置の操作量が所定の第1操作量となるまでは前記目標内側旋回走行速度を低下させるように設定し、前記旋回操作装置の操作量が、前記第1操作量を越えたときから前記内側となるクローラ走行装置を逆方向に駆動させるように前記目標内側旋回走行速度を変更設定するように構成される。
【0011】
第1および第2の本発明に係る走行車両において、前記左側クローラ走行装置を駆動する左側電気モータおよび前記右側クローラ走行装置を駆動する右側電気モータを備え、前記走行制御装置は、前記走行操作装置から出力される走行指令信号および前記旋回操作装置から出力される旋回量指令信号に基づき、前記左側および右側電気モータの駆動を制御して前記左側および右側クローラ走行装置の駆動を制御するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
第1の本発明に係る走行車両によれば、走行制御装置は、走行操作装置から出力される走行指令信号を受けてこの走行指令信号に基づく走行方向および目標走行速度で左側および右側クローラ走行装置を駆動させる制御を行っている状態で、旋回操作装置が操作されてこの操作に対応する旋回量指令信号を受けたときに、左側および右側クローラ走行装置のうち、旋回量指令信号に基づく旋回方向において内側となるクローラ走行装置について、旋回量指令信号に基づく目標旋回量が増加するのに応じて目標走行速度よりも速度を低下させた目標内側旋回走行速度を設定し、当該目標内側旋回走行速度となるように内側となるクローラ走行装置を駆動する制御を行う。そして、旋回操作装置の操作量が大きくなるのに応じて目標内側旋回走行速度を低下させるとともに、旋回操作装置の操作量が、内側となるクローラ走行装置が停止状態となるピボット走行となる目標旋回量にする第1操作量となったときに、内側となるクローラ走行装置が停止するように設定し、旋回操作装置の操作量が、第1操作量を含む所定範囲内においては、内側となるクローラ走行装置が停止保持されるように目標内側旋回走行速度に設定する。このように第1の本発明によれば、例えば、スラローム旋回走行からピボット旋回走行に移行する直前のスラローム旋回領域等、内側のクローラ走行装置への出力指令が小さい領域においては、スラローム旋回走行ではなくピボット旋回走行を行うようになっている。そのため、従来のように内側のクローラ走行装置がトルクを確保することができずに外側のクローラ走行装置に負けて車両が直進走行するような不具合を防ぐことができる。従って、運転者(操作者)に違和感のない操作感を提供することができ、旋回走行時における車両の走行操作性を向上させることができる。
【0013】
上記構成の走行車両において、好ましくは、走行制御装置は、左側および右側クローラ走行装置のうち、旋回量指令信号に基づく旋回方向において外側となるクローラ走行装置について、旋回量指令信号に基づく目標旋回量が増加するのに応じて目標走行速度を低下させて目標内側旋回走行速度より大きな目標外側旋回走行速度を設定し、目標外側旋回走行速度となるように外側となるクローラ走行装置を駆動する制御を行うように構成され、旋回操作装置の操作量が第1操作量を含む所定範囲内においては、外側となるクローラ走行装置が一定の速度に保持されるように目標外側旋回走行速度を設定する。これにより、旋回操作装置の操作量を上述した所定範囲内において変化させてもピボット旋回走行時の速度が変化することなく、一定速度でピボット旋回走行が行われる。そのため、ピボット旋回走行中に速度が遅くなり、運転者に違和感を与えるような不具合を防ぐことができる。
【0014】
第2の本発明に係る走行車両によれば、走行制御装置は、走行操作装置から出力される走行指令信号を受けてこの走行指令信号に基づく走行方向および目標走行速度で左側および右側クローラ走行装置を駆動させる制御を行っている状態で、旋回操作装置が操作されてこの操作に対応する旋回量指令信号を受けたときに、左側および右側クローラ走行装置のうち、旋回量指令信号に基づく旋回方向において内側となるクローラ走行装置について、旋回量指令信号に基づく目標旋回量が増加するのに応じて目標走行速度よりも速度を低下させた目標内側旋回走行速度を設定し、当該目標内側旋回走行速度となるように内側となるクローラ走行装置を駆動する制御を行う。そして、旋回操作装置の操作量が大きくなるのに応じて目標内側旋回走行速度を低下させるとともに、旋回操作装置の操作量が所定の第1操作量となるまでは目標内側旋回走行速度を低下させるように設定し、旋回操作装置の操作量が、第1操作量を越えたときから内側となるクローラ走行装置を逆方向に駆動させるように目標内側旋回走行速度を変更設定する。このように第2の本発明によれば、スラローム旋回走行において内側のクローラ走行装置への出力指令が小さい領域になると、スラローム旋回走行およびピボット旋回走行ではなく、スピン旋回走行を行うようになっている。そのため、従来のように内側のクローラ走行装置がトルクを確保することができずに外側のクローラ走行装置に負けて車両が直進走行するような不具合を防ぐことができる。従って、運転者(操作者)に違和感のない操作感を提供することができ、旋回走行時における車両の走行操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る走行車両の一例である高所作業車の側面図である。
【
図2】上記高所作業車の作動制御構成を示すブロック図である。
【
図3】上記高所作業車における左右のクローラ走行装置の制御系統図である。
【
図4】左右のクローラ走行装置の直進走行速度係数が100%の場合の旋回量操作ダイヤルの操作量との関係を示したグラフである(第1実施形態)。
【
図6】左右のクローラ走行装置の直進走行速度係数が50%の場合の旋回量操作ダイヤルの操作量との関係を示したグラフである(第1実施形態)。
【
図7】左右のクローラ走行装置の直進走行速度係数が100%の場合の旋回量操作ダイヤルの操作量との関係を示したグラフである(第2実施形態)。
【
図8】左右のクローラ走行装置の直進走行速度係数が100%の場合の旋回量操作ダイヤルの操作量との関係を示したグラフである(第3実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る作業用車両の一例である自走式の高所作業車1を
図1に示している。高所作業車1は、走行体10と、走行体10の前方側上部に設けられた垂直に延びるマスト20と、マスト20の上部に設けられた作業台30とを有して構成されている。
【0017】
走行体10は、走行体フレーム11の左右両側部に設けられた左側クローラ装置12aおよび右側クローラ装置12bを有している。左右のクローラ走行装置12a,12bはそれぞれ、走行体フレーム11の前側部に設けられた駆動輪13と、走行体フレーム11の後側部に従動輪14と、駆動輪13と従動輪14の間に設けられた複数のローラ15と、駆動輪13、従動輪14および複数のローラ15に掛け回されたクローラベルト16(履帯)と、駆動輪13を回転駆動する走行モータ51,52(
図3を参照)と、駆動輪13の回転を制動するブレーキ装置56,57(
図2を参照)とを有している。左右のブレーキ装置56,57はそれぞれ、後述するコントローラ60からの指令信号により駆動する電磁ブレーキである。
【0018】
左右の走行モータ51,52の出力がそれぞれ減速機(図示せず)を介して左右の駆動輪13,13に伝達され、左右の駆動輪13,13が回転駆動されるようになっている。左右の走行モータ51,52は、
図2に示すように、走行体10に設けられたバッテリ90から左側および右側走行用インバータ53,54をそれぞれ介して供給される電力により駆動されて左右の駆動輪13,13を回転駆動させる。また、左右の走行モータ51,52は、減速走行時等に左右の駆動輪13,13により回転されて回生発電を行う機能を有している。左右の走行モータ51,52は、後述する操作ボックス40内に設けられた走行操作レバー47および旋回量操作ダイヤル48の操作方向および操作量に応じて回転方向および回転速度が制御されるようになっている。
【0019】
マスト20は、
図1に示すように、走行体10の前方側上部に取り付けられた基端マスト部材21と、下側中間マスト22と、上側中間マスト23と、先端マスト24とを入れ子式に組み合わせて上下方向に伸縮自在に構成されている。マスト20は、内部に伸縮シリンダ25(
図2を参照)が設けられており、この伸縮シリンダ25を伸縮作動させることによりマスト20全体を上下方向に伸縮可能に構成されている。先端マスト24には、マスト20の伸縮に応じて昇降移動する作業台30が設けられている。
【0020】
伸縮シリンダ25は、
図2に示すように、走行体10に設けられた油圧ポンプ70から吐出される作動油が伸縮制御バルブ71を介して供給されることにより駆動されてマスト20を伸縮作動させる。油圧ポンプ70はポンプ駆動モータ75により駆動される。ポンプ駆動モータ75は、バッテリ90からマスト作動用インバータ76を介して供給される電力により回転駆動される。伸縮シリンダ25は、後述する操作ボックス40内に設けられたマスト操作レバー41の操作方向および操作量に応じて作動方向および作動速度が制御されるようになっている。
【0021】
図1および
図2に示すように、作業台30上(もしくは先端マスト24の上部)には、各種操作手段を備えた操作ボックス40が設けられている。操作ボックス40には、マスト20の伸縮操作(作業台30の昇降操作)を行うマスト操作レバー41が設けられている。マスト操作レバー41は、垂直に延びる中立位置から前後方向にそれぞれ傾倒操作可能であり、傾倒操作された状態から手を放したときには内蔵スプリングの力によって自動的に中立位置に復帰する構成となっている。マスト操作レバー41が傾倒操作されると、中立位置を基準とした傾倒操作方向および操作量に対応して電圧信号が出力され、マスト操作信号としてコントローラ60のマスト作動制御部60aに入力される。
【0022】
マスト作動制御部60aは、入力されたマスト操作信号に応じた方向および量で伸縮制御バルブ71のスプールを電磁駆動して油圧ポンプ70から伸縮シリンダ25に供給される作動油の量を制御して、伸縮シリンダ25の作動方向および作動速度を制御する。また、ブーム作動制御部60aは、入力されたマスト操作信号に応じてマスト作動用インバータ76を介してバッテリ90からポンプ駆動モータ75に供給される電力を制御し、油圧ポンプ70から吐出される作動油の量を制御する。従って、作業台30に搭乗した作業者は、マスト操作レバー41を操作することにより、マスト20を伸縮作動させて作業台30を所望の高所位置に昇降移動させることができるようになっている。
【0023】
操作ボックス40には、左右のクローラ走行装置12a,12bの走行操作を行う走行操作レバー47および旋回量操作ダイヤル48が設けられている。走行操作レバー47は、
図3に示すように、垂直に延びる中立位置から前後方向にそれぞれ傾倒操作可能であり、傾倒操作された状態から手を放したときには内蔵スプリングの力によって自動的に中立位置に復帰する構成となっている。走行操作レバー47が傾倒操作されると、中立位置を基準とした傾倒操作方向および操作量に対応した電圧信号が出力され、走行指令信号としてコントローラ60の走行制御部60bに入力される。走行操作レバー47の中立位置から前方への傾倒操作は、左右のクローラ走行装置12a,12bの前進走行指令に相当し、その傾倒操作量が大きいときほど走行制御部60bにおいて前進走行時における目標走行速度が大きい値に設定される。走行操作レバー47の中立位置から後方への傾倒操作は、左右のクローラ走行装置12a,12bの後進走行指令に相当し、その傾倒操作量が大きいときほど走行制御部60bにおいて後進走行時における目標走行速度が大きい値に設定される。走行操作レバー47を中立位置に復帰させる操作は、左右のクローラ走行装置12a,12bの停止指令に相当する。
【0024】
旋回量操作ダイヤル48は、中立位置(
図3に示す位置)から左右方向にそれぞれ捻り操作可能であり、捻り操作された状態から手を放したときには内蔵スプリングの力によって自動的に中立位置に復帰する構成となっている。旋回量操作ダイヤル48が捻り操作されると、中立位置を基準とした捻り操作方向および操作量に対応した電圧信号が出力され、旋回量指令信号として走行制御部60bに入力される。旋回量操作ダイヤル48の中立位置よりも右方への捻り操作は、左右のクローラ走行装置12a,12bの右方への旋回走行指令に相当し、中立位置からの右方への捻り操作量が大きいときほど走行制御部60bにおいて右方への目標旋回量が大きい値に設定される。旋回量操作ダイヤル48の中立位置よりも左方への捻り操作は、左右のクローラ走行装置12a,12bの左方への旋回走行指令に相当し、中立位置からの左方への捻り操作量が大きいときほど走行制御部60bにおいて左方への目標旋回量が大きい値に設定される。旋回量操作ダイヤル48を中立位置に復帰させる操作は、左右のクローラ走行装置12a、12bの旋回量を零の状態にする指令(直進走行指令)に相当する。
【0025】
走行体10には、水平面に対する走行体10の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器81が設けられている。傾斜角度検出器81により検出された走行体10の傾斜角度情報は、コントローラ60の走行制御部60bに入力される。
【0026】
コントローラ60の走行制御部60bは、走行操作レバー47から走行指令信号(中立位置を基準とした傾倒操作方向および操作量に対応した信号)が入力されると、その走行指令信号に対応した左右のクローラ走行装置12a,12bの目標直進走行速度を設定し、左右のクローラ走行装置12a,12bの走行速度がともにその目標直進走行速度に追従するように左右の走行モータ51,52に供給される電力を制御して左右の走行モータ51,52の回転速度を制御する。
【0027】
走行制御部60bは、旋回量操作ダイヤル48から旋回量指令信号(中立位置を基準と
した捻り操作方向および操作量に対応した信号)が入力されると、その旋回量指令信号に対応した左右のクローラ走行装置12a,12bのそれぞれの目標旋回走行速度を設定し、左右のクローラ走行装置12a,12bの走行速度がそれぞれの目標旋回走行速度に追従するように左右の走行モータ51,52に供給される電力を制御して左右の走行モータ51,52の回転速度を制御する。具体的には、左右のクローラ走行装置12a,12bの走行速度を、走行操作レバー47により設定された目標直進走行速度から旋回量操作ダイヤル48から入力された旋回量指令信号に対応して予め定められた同一速度分だけ減速させるとともに、旋回方向において内側となるクローラ走行装置の走行速度をさらに減速させて、左右のクローラ走行装置12a,12bが旋回量指令信号に対応した旋回走行を行うように左右の走行モータ51,52の回転速度を制御する。
【0028】
図4は、走行操作レバー47を中立位置から前方へ傾倒操作して、左右のクローラ走行装置12a,12bの直進走行速度係数が100%(最大)の場合に、旋回量操作ダイヤル48を捻り操作したときの左右のクローラ走行装置12a,12bの走行制御について示すグラフである。左右のクローラ走行装置12a,12bの速度係数は、傾斜角度検出器81により検出された走行体10の傾斜角度によって決まる値である。
図4に示す直進走行速度係数が100%の場合とは、高所作業車1において設定されている最大下り傾斜地(定格下り傾斜角度)を走行する場合である。
【0029】
図4において、旋回量操作ダイヤル48の捻り操作量が0度のとき(中立位置のとき)には、左右のクローラ走行装置12a,12bの走行速度がともに、走行操作レバー47の操作量により設定された目標走行速度V×100%に追従するように左右の走行モータ51,52の回転速度を制御して、走行体10を前進走行させる。そして、走行体10(左右のクローラ走行装置12a,12b)が走行速度V×100%で直進走行しているときに、例えば、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に30度捻り操作すると、旋回方向において外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度を△V
1(=V×50%)だけ減速させ、内側となる右側クローラ走行装置12bの走行速度を△V
1+△V
2(=V×80%)だけ減速させる。
【0030】
言い換えると、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が走行速度V×100%-△V1(=V×50%)に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御するとともに、内側となる右側クローラ走行装置12bの走行速度が走行速度V×100%-(△V1+△V2)(=V×20%)に追従するように右側走行モータ52の回転速度を制御して、走行体10を旋回量操作ダイヤル48の捻り操作量30度に対応した右方へ旋回走行(スラローム旋回走行)させる。すなわち、左右のクローラ走行装置12a,12bの両方を△V1だけ減速させて旋回安定性の向上を図り、この減速させた速度において旋回量操作ダイヤル48の操作量に対応した旋回を行うように内側となる右側クローラ走行装置12bをさらに△V2だけ減速させる。
【0031】
走行体10(左右のクローラ走行装置12a,12b)が走行速度V×100%で直進走行しているときに、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に45度捻り操作すると、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が走行速度V×100%-△V3(△V3>△V1)に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御するとともに、内側となる右側クローラ走行装置12bが逆方向に目標走行速度v3で走行するように右側走行モータ52を制御して、走行体10を右方へスピン旋回走行させる。
【0032】
走行体10(左右のクローラ走行装置12a,12b)が走行速度V×100%で直進走行しているときに、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に55度以上捻り操作すると、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が走行速度V×100%-△V4(△V4>△V3)に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御するとと
もに、内側となる右側クローラ走行装置12bが逆方向に走行速度V×100%-△V4で走行するように右側走行モータ52を制御して、走行体10を右方へスピン旋回走行(走行体10の中心を旋回中心とした旋回走行)させる。
【0033】
上記のように、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に45度捻り操作すると、走行体10を右方へスピン旋回走行させる制御を行うようになっているが、走行制御部60bでは、40度から45度未満までの範囲内(40度≦捻り操作角度θ<45度)の捻り操作においてはピボット旋回走行(右側クローラ走行装置12bの中心を旋回中心とした旋回走行)させるようになっている。
図4の要部を拡大した
図5に示すように、走行体10(左右のクローラ走行装置12a,12b)が走行速度V×100%で直進走行しているときに、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に40度から45度未満までの範囲(
図5に示す領域A)内の捻り操作を行うと、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が走行速度V×100%-△V
3に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御するとともに、内側となる右側クローラ走行装置12bが停止するように右側ブレーキ装置57および右側走行モータ52を制御して、走行体10を右方へピボット旋回走行させる。このとき、旋回量操作ダイヤル48の捻り操作角度を40度から45度未満の範囲内で変化させても、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が一定の走行速度V×100%-△V
3に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御して、走行体10を右方へ一定速度でピボット旋回走行させるようになっている。
【0034】
このように、走行制御部60bによれば、スラローム旋回走行において内側となる右側クローラ走行装置12bへの出力指令が小さい領域においては、スラローム旋回走行ではなくピボット旋回走行を行うようになっている。そのため、従来のように内側となる右側クローラ走行装置12bがトルクを確保することができずに外側となる左側クローラ走行装置12aに負けて車両が直進走行するような不具合を防ぐことができる。従って、運転者(操作者)に違和感のない操作感を提供することができ、旋回走行時における車両の走行操作性を向上させることができる。また、ピボット旋回走行を行う領域(
図5に示す領域A)においては、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度を一定速度に保ってピボット旋回走行を行うようになっている。そのため、ピボット旋回走行中に速度が遅くなり、運転者に違和感を与えるような不具合を防ぐことができる。
【0035】
図4では、旋回量操作ダイヤル48を40度から45度未満の範囲内で操作したときに、ピボット旋回走行を行うようになっているが、このピボット旋回走行を行う領域A(範囲)は、左右のクローラ走行装置12a,12bの速度係数に、走行操作レバー47の操作量により設定される目標走行速度をかけた、左右のクローラ走行装置12a,12bの走行速度によって変化するようになっている。上記速度係数は、上述したように、傾斜角度検出器81により検出された走行体10の傾斜角度によって決まる値である。そのため、言い換えると、ピボット旋回走行を行う領域Aは、走行体10の傾斜角度および走行操作レバー47の操作量によって変化するようになっている。
【0036】
図6は、走行操作レバー47を中立位置から前方へ傾倒操作して、左右のクローラ走行装置12a,12bの直進走行速度係数が50%の場合に、旋回量操作ダイヤル48を捻り操作したときの左右のクローラ走行装置12a、2bの走行制御について示すグラフである。走行体10(左右のクローラ走行装置12a,12b)が走行速度V×50%で直進走行しているときに、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に35度から45度未満の範囲(
図6に示す領域A′(A′>A))内で捻り操作を行うと、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が走行速度V×50%-△V
6に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御するとともに、内側となる右側クローラ走行装置12bが停止するように右側ブレーキ装置57および右側走行モータ52を制御して、走行体10を右方へピボット旋回走行させる。このとき、旋回量操作ダイヤル48の捻り操作角度
を35度から45度未満の範囲内で変化させても、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が一定の走行速度V×50%-△V
6に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御して、走行体10を右方へ一定速度でピボット旋回走行させるようになっている。
【0037】
なお、ピボット旋回走行を行う領域は、上述したように、左右のクローラ走行装置12a,12bの速度係数、すなわち傾斜角度検出器81により検出された走行体10の傾斜角度によって変更するようになっているが、その他に、内側のクローラ走行装置のトルクに対する影響、例えば、モータ温度の上昇や、バッテリ電圧の低下等によって変更するように構成してもよい。
【0038】
上記のように、スラローム旋回走行、ピボット旋回走行およびスピン旋回走行しているときにおいて、外側となる左側クローラ走行装置12aにより内側となる右側クローラ走行装置12bが駆動されるときがあり(例えば、緩やかなスラローム旋回走行においてこの現象が生じる場合がある)、このときの駆動力を用いて右側走行モータ52により回生発電を行い、その発電電力を右側走行用インバータ54を介してバッテリ90に充電させるようになっている。
【0039】
なお、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から左方に捻り操作したときの制御は、旋回方向における内側および外側となるクローラ走行装置12a,12bが逆になるだけで上述の走行制御と同様である。
図4および
図6では、左右のクローラ走行装置12a,12bの直進走行速度係数が100%と50%の旋回量操作ダイヤル48の操作量に対する走行制御テーブル(グラフ)を示しているが、走行制御部60bには、左右のクローラ走行装置12a,12bの直進走行速度係数(走行体10の傾斜角度)ごとに、旋回量操作ダイヤル48の操作量に対する走行制御テーブルが記憶されている。他の速度係数の場合でも、それぞれの減速速度が異なるだけで上述の走行制御と同様である。
【0040】
次に、本発明に係る作業用車両の他の実施形態について説明する。後述する第2および第3実施形態では、上記実施形態において説明した高所作業車1と同様の構成を有して構築されており、コントローラ60における走行制御の制御形態が異なるものである。
【0041】
第2実施形態に係る走行制御部160bは、上記走行制御部60bと同様に、左右のクローラ走行装置12a,12bの走行速度を、走行操作レバー47により設定された目標直進走行速度(正確には、上述したように、走行体10の傾斜角度によって決まる速度係数をかけた値)から旋回量操作ダイヤル48から入力された旋回量指令信号に対応して予め定められた同一速度分だけ減速させるとともに、旋回方向において内側となるクローラ走行装置の走行速度をさらに減速させて、左右のクローラ走行装置12a,12bが旋回量指令信号に対応した旋回走行を行うように左右の走行モータ51,52の回転速度を制御する。
【0042】
図7は、走行操作レバー47を中立位置から前方へ傾倒操作して、左右のクローラ走行装置12a,12bの直進走行速度係数が100%(最大)の場合に、旋回量操作ダイヤル48を捻り操作したときの左右のクローラ走行装置12a,12bの走行制御について示すグラフである。旋回量操作ダイヤル48の捻り操作量が0度のとき(中立位置のとき)、40度未満のとき、および55度以上のときについては、上記走行制御部60bと同様の走行制御を行う。走行体10(左右のクローラ走行装置12a,12b)が走行速度V×100%で直進走行しているときに、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に40度捻り操作すると、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が走行速度V×100%-△V
3(△V
3>△V
1)に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御するとともに、内側となる右側クローラ走行装置12bが逆方向に目標走行速度v
3で走行するように右側走行モータ52を制御して、走行体10を右方へスピン旋回走行させる。
【0043】
また、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に45度捻り操作すると、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が走行速度V×100%-△V7(△V3<△V7<△V4)に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御するとともに、内側となる右側クローラ走行装置12bが逆方向に目標走行速度v7(v7>v3)で走行するように右側走行モータ52を制御して、走行体10を右方へスピン旋回走行させる。このように、走行制御部160bでは、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に40度以上捻り操作すると、走行体10を右方へスピン旋回走行させる制御を行うようになっている。なお、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から左方に捻り操作したときの制御は、旋回方向における内側および外側となるクローラ走行装置12a,12bが逆になるだけで上述の走行制御と同様である。
【0044】
上記のように、走行制御部160bによれば、スラローム旋回走行において内側となる右側クローラ走行装置12bへの出力指令が小さい領域になると、スラローム旋回走行およびピボット旋回走行ではなく、スピン旋回走行を行うようになっている。そのため、従来のように内側となる右側クローラ走行装置12bがトルクを確保することができずに外側となる左側クローラ走行装置12aに負けて車両が直進走行するような不具合を防ぐことができる。従って、運転者(操作者)に違和感のない操作感を提供することができ、旋回走行時における車両の走行操作性を向上させることができる。
【0045】
なお、スラローム旋回走行からスピン旋回走行に移行するタイミング(本実施形態では、旋回量操作ダイヤル48を40度捻り操作したとき)は、上記実施形態と同様に、左右のクローラ走行装置12a,12bの走行速度、すなわち走行体10の傾斜角度(左右のクローラ走行装置12a,12bの速度係数)および走行操作レバー47の操作量によって変化するようになっている。さらに、内側のクローラ走行装置のトルクに対する影響、例えば、モータ温度の上昇や、バッテリ電圧の低下等によって変更するように構成してもよい。
【0046】
第3実施形態に係る走行制御部260bは、上記走行制御部60bと同様に、左右のクローラ走行装置12a,12bの走行速度を、走行操作レバー47により設定された目標直進走行速度(正確には、上述したように、走行体10の傾斜角度によって決まる速度係数をかけた値)から旋回量操作ダイヤル48から入力された旋回量指令信号に対応して予め定められた同一速度分だけ減速させるとともに、旋回方向において内側となるクローラ走行装置の走行速度をさらに減速させて、左右のクローラ走行装置12a,12bが旋回量指令信号に対応した旋回走行を行うように左右の走行モータ51,52の回転速度を制御する。
【0047】
図8は、走行操作レバー47を中立位置から前方へ傾倒操作して、左右のクローラ走行装置12a,12bの直進走行速度係数が100%(最大)の場合に、旋回量操作ダイヤル48を捻り操作したときの左右のクローラ走行装置12a,12bの走行制御について示すグラフである。旋回量操作ダイヤル48の捻り操作量が0度(中立位置)から45度のとき、および50度を超えるときについては、上記走行制御部60bと同様の走行制御を行う。走行体10(左右のクローラ走行装置12a,12b)が走行速度V×100%で直進走行しているときに、旋回量操作ダイヤル48を中立位置から右方に40度から50度の範囲内で捻り操作すると、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が走行速度V×100%-△V
3に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御するとともに、内側となる右側クローラ走行装置12bが停止するように右側ブレーキ装置57および右側走行モータ52を制御して、走行体10を右方へピボット旋回走行させる。
このとき、旋回量操作ダイヤル48の捻り操作角度を40度から50度の範囲内で変化させても、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度が一定の走行速度V×100%-△V
3に追従するように左側走行モータ51の回転速度を制御して、走行体10を右方へ一定速度でピボット旋回走行させるようになっている。
【0048】
上記のように、走行制御部260bによれば、スラローム旋回走行およびスピン旋回走行において内側となる右側クローラ走行装置12bへの出力指令が小さい領域になると、スラローム旋回走行およびスピン旋回走行ではなく、ピボット旋回走行を行うようになっている。そのため、従来のように内側となる右側クローラ走行装置12bがトルクを確保することができずに外側となる左側クローラ走行装置12aに負けて車両が直進走行するような不具合を防ぐことができる。従って、運転者(操作者)に違和感のない操作感を提供することができ、旋回走行時における車両の走行操作性を向上させることができる。また、ピボット旋回走行を行う領域においては、外側となる左側クローラ走行装置12aの走行速度を一定速度に保ってピボット旋回走行を行うようになっている。そのため、ピボット旋回走行中に速度が遅くなり、運転者に違和感を与えるような不具合を防ぐことができる。
【0049】
これまで本発明に係る実施形態を説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態においては、左右のクローラ走行装置12a,12bがそれぞれ電動モータ(走行モータ51,52)により駆動される構成について説明したが、左右のクローラ走行装置をそれぞれ油圧モータにより駆動する構成としてもよい。油圧モータにより構成される場合には、例えば、
図2において、走行用インバータ53,54をそれぞれ走行用比例電磁弁に変更し、この走行用比例電磁弁のスプール移動量(開口量)をそれぞれ制御することにより各油圧モータの回転数を制御するように構成される。
【0050】
また、上述の実施形態においては、走行操作装置として走行操作レバー47と旋回量操作ダイヤル48を備える構成について説明したが、走行操作装置は、走行速度を設定するアクセルペダルと旋回方向および旋回量を設定するハンドルとを備える走行操作装置や、一本の走行操作レバーにより前進、後進、走行速度、旋回方向および旋回量を設定可能なジョイスティック型の走行操作装置であってもよい。また、上述の実施形態においては、走行体10上にマスト20および作業台30を備える高所作業車について説明したが、走行体上にブーム式やシザースリンク式の高所作業装置を備える高所作業車や、走行体上にクレーン装置等を備える走行車両においても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 高所作業車(走行車両)
10 走行体
11 走行体フレーム(車体)
12a 左側クローラ走行装置
12b 右側クローラ走行装置
40 操作ボックス
47 走行操作レバー(走行操作装置)
48 旋回量操作ダイヤル(旋回操作装置)
60 コントローラ
60b,160b,260b 走行制御部(走行制御装置)