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特許7157600導光板、導光板製造方法及びそれを用いた映像表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】導光板、導光板製造方法及びそれを用いた映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20221013BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20221013BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/32
G02B5/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018165878
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020038316
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 健
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/060665(WO,A1)
【文献】特表2003-504659(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151284(WO,A1)
【文献】特開2015-102613(JP,A)
【文献】特開2018-077330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
G02B 5/18,5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重記録したホログラムにより入射光を回折する光回折部を有する導光板であって、
前記光回折部は、少なくとも2つの空間的に分割された第1の領域と第2の領域を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は、ある平行光線を前記光回折部に入射したときに前記第1の領域で回折する波長と、前記第1の領域を透過した光が前記第2の領域に入射し該第2の領域で回折する波長が異なるように構成されており、
前記第1の領域と前記第2の領域によって回折される波長が、波長選択性の半値幅以上ずれており、
前記光回折部は、前記導光板の内部を伝搬する光を前記導光板の外に出射する光に変換する出射カプラーとして用いられ
前記導光板の内部を伝搬する光線を複製して前記出射カプラーに出射するアイボックス拡大部を備えることを特徴とする導光板。
【請求項2】
請求項1に記載の導光板において、
前記アイボックス拡大部が、ミラー面とビームスプリッター面を含む構成であることを特徴とする導光板。
【請求項3】
導光板を有する映像表示装置であって、
前記導光板は、多重記録したホログラムにより入射光を回折する光回折部を有し、
前記光回折部は、少なくとも2つの空間的に分割された第1の領域と第2の領域を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域は、ある平行光線を前記光回折部に入射したときに前記第1の領域で回折する波長と、前記第1の領域を透過した光が前記第2の領域に入射し該第2の領域で回折する波長が異なるように構成されており、
表示する映像の画質を補正する画質補正部を備え、
前記画質補正部は、前記導光板の有する前記光回折部により生じる映像の色ムラや輝度ムラ、色ずれを均一化することを特徴とする映像表示装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイなどの映像表示装置に用いる導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)などの映像表示装置では、プロジェクター(映像投影部)から出射された映像光をユーザの目まで伝搬させるための光学系として導光板が用いられる。HMDに用いられる導光板は、薄型でかつ映像を見ることができる視野(FoV:Field of View)が広いことが望ましい。この導光板としてハーフミラーを用いることができるが、広い視野を確保するためには薄型化が困難であった。
【0003】
これに関する背景技術として特許文献1や特許文献2には、ホログラム技術を用いて反射軸が表面法線に対して傾きを持っているような特殊なミラーまたはハーフミラー(該文献では、「スキューミラー」と呼んでいる)が記載されている。スキューミラーを導光板に採用すれば、導光板の表面に対して傾いたハーフミラーと同様の機能を実現し、導光板の薄型化とFoVの向上を図る上で有効となる。
【0004】
これについて特許文献1では、スキューミラーは反射軸が表面法線と一致しているという制約がなく、比較的広い波長範囲にわたって、ある一定の反射軸に対して光を反射すること、また、比較的広い範囲の入射角にわたって一定の反射軸を有することが述べられている。また特許文献2では、スキューミラーはその表面法線に対して傾けられ得る反射軸すなわちSkew軸を有し、これによる反射光線がある特定の「出射瞳部」に向けて出射されることが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2017/0059759号明細書
【文献】国際公開第2017/176393号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光回折機能を有する体積型ホログラムは、薄型でかつ波長選択性や角度選択性などの特性を有するために、選択的に光を回折させることができ、これをHMDの導光板に採用することで、薄型でかつ広いFoVを有する導光板を実現できる。また、体積型ホログラムの多重記録を有効に利用することで、色ムラや輝度ムラ等の少ない高画質かつ高分解能な映像表示が可能であり、製造コストや安定的な量産性をも実現可能である。しかしながら、体積型ホログラムを用いたHMDの導光板には、映像表示装置として光学効率についての課題がある。以下ではこの課題について説明する。
【0007】
まず、特許文献1、2に記載のスキューミラーと導光板の関係を説明する。スキューミラーを含む導光板の表面に、光線を入射した場合、導光板の表面からある角度θだけ傾きを持ったスキューミラー面により光線の一部が反射される。ここで、全反射角θTIR(TIR:Total Internal Reflection)以上の入射角で導光板内を伝搬している光線をこのスキューミラーに入射させると、この光線の一部は、スキューミラー面によって反射され、導光板の外に出射させることができる(出射カプラー機能)。また、導光板の外から光線を入射させて、導光板内を全反射により伝搬させることもできる(入射カプラー機能)。このように、スキューミラーは導光板において、入射および出射カプラー機能を有する。このスキューミラーを体積型ホログラムによって実現した導光板を体積型ホログラム導光板と呼ぶ。
【0008】
ここで、体積型ホログラム導光板の光学効率の考え方について説明する。ここでは、導光板の光学効率を「導光板を導光させる光の波長スペクトル強度の積分値の入出力比」と定める。つまり、導光板に入力(入射)した光すべての波長スペクトル強度の積分値を分母とし、導光板から出力(出射)される光すべての波長スペクトル強度の積分値を分子として、導光板の光学効率を計算する。ここで、波長スペクトル強度の積分は、可視光の波長域であるおよそ400nm~700nmの範囲で行うこととする。また、出射カプラーから出射される光が広範囲に渡っている場合は出射カプラー内でも光量を積分する。
【0009】
上記の光学効率を例えば、1枚のハーフミラーに適用すると、可視光の波長域で反射率がほぼ一定であるハーフミラーでは、出力される波長スペクトル強度を求めるには、入力する波長スペクトル強度に、すべての波長域でハーフミラーの反射率を乗算すればよい。そのため、積分値の入出力比もハーフミラーの反射率に一致する。よって、ハーフミラーの光学効率はハーフミラーの反射率そのものとなる。
【0010】
一方、ホログラムでは、ホログラムの回折効率がハーフミラーの反射率に対応する。しかしながら、ハーフミラーの場合とは異なり、体積型ホログラム導光板の光学効率は、ホログラムの回折効率とは一致しない。なぜなら、体積型ホログラム導光板は、入力する光のうち、一部の波長のみを回折する「波長選択性」を有するからである。この波長選択性により、出力される光は、入力された光の波長の一部に限られる。そのため、光学効率は、波長の積分範囲における出力(回折)される波長の占める割合(波長使用率)とホログラムの実質的な回折効率(実質回折効率)の積となる。つまり、「体積型ホログラム導光板の光学効率=実質回折効率×波長使用率」となる。これにより、上記のハーフミラーの反射率と同等の回折効率のホログラムを用いたとしても、光学効率は波長使用率分だけ低下してしまう。よって、体積型ホログラム導光板の光学効率を向上させるためには、実質回折効率と波長使用率を向上させる必要がある。
【0011】
しかし、回折効率を向上させると、導光している光のうち体積型ホログラムを透過する光の割合が少なくなるため、導光板内の光が導光中に減衰し、出射カプラーから出射する光強度が不均一になるという課題がある。HMD向けの導光板では、出射カプラーが広く、出射カプラーの全面で光が略均一に出射されることが望ましい。なぜなら、HMDにおいてユーザが映像(虚像)を視認できる領域(アイボックス)が広くなり、ユーザはアイボックスの縁部分を視認しにくくなることでストレスが軽減されると共に、装着具合やユーザの目の位置の個人差の影響を軽減して、高い臨場感を得ることができるためである。そのため、回折効率は、出射カプラーから出射する光強度が不均一とならない程度に抑える必要があり、例えば15%程度となる。このとき、出射光全体の実質的な回折効率は、およそ68%程度となる。
【0012】
また、波長使用率を向上させるためには、多重記録数を増加させる必要がある。しかし、多重記録数を増加させると、記録ホログラムの角度間隔が狭まり、クロストークやノイズグレーティング、ホログラフィック散乱等の発生による表示映像の画質劣化の課題がある。そのため、多重記録数を増加させるにも限度があり、波長使用率は例えば10%程度となる。
【0013】
以上のように、体積型ホログラム導光板の光学効率を向上させるためには、ホログラムの回折効率か波長使用率を向上させる必要があるが、どちらも限度があり、光学効率はその積となるため、上記の条件では光学効率が6.8%程度となり、これ以上の光学効率を実現することが困難である。光学効率が低いと表示する映像が暗くなるので、例えばHMDのアプリケーションの一つである、外界に対して映像を重畳表示させてユーザに見せる拡張現実(AR:Augmented Reality)を実行した場合の臨場感が低下してしまう。これを補うため、映像を出射するプロジェクターの出力光量を大きくする必要があり、HMDの消費電力の増大、発熱、大型化などの課題を生じる。
【0014】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたものであり、上記の課題を克服して光学効率の高い導光板、導光板製造方法及びそれを用いた映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、多重記録したホログラムにより入射光を回折する光回折部を有する導光板であって、光回折部では、少なくとも2つ以上の領域を有し、ある平行光線を入射したときに各領域によって異なる波長を回折する構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学効率を向上させる導光板、導光板製造方法及びそれを用いた映像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】実施例1における映像表示装置の外観図である。
図1B】実施例1における映像表示装置の使用例を示す外観図である。
図2】実施例1における映像表示装置のブロック構成を示す図である。
図3】実施例1における導光板の全体構成を示す概略図である。
図4】実施例1における導光板の導光面内の断面図である。
図5A】実施例1における体積型ホログラムの製造方法の概略図である。
図5B】実施例1における体積型ホログラムを再生する場合の光学配置を示す図である。
図6A】実施例1における体積型ホログラム導光板の光学効率の考え方を示す図である。
図6B】実施例1における体積型ホログラムの多重記録数Mと記録角度θw、再生波長λp、再生入射角度θinの関係を示す図である。
図7A】実施例1における再生光の波長選択性を示す図である。
図7B】実施例1における再生入射光をある角度に固定した場合の多重記録されたホログラムの波長選択性を示す図である。
図8A】実施例1における再生光の角度選択性を示す図である。
図8B】実施例1における再生入射光をある波長に固定した場合の多重記録されたホログラムの角度選択性を示す図である。
図9】実施例1における波長使用率を増加させるためホログラムの多重記録間隔を詰めて記録する場合の問題点を説明する図である。
図10】実施例1における導光板のホログラム記録領域を空間的に領域分割し、各領域で再生される波長の組が異なるようにして多重記録を行う構成を示す概略図である。
図11】実施例1における導光板の具体的な設計例である。
図12】実施例2おける導光板の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。以下の実施例では、映像表示装置がメガネ型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)の場合について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1Aは、本実施例における映像表示装置の外観図である。また図1Bは、映像表示装置の使用例を示す外観図である。
【0020】
図1Aにおいて、メガネ型の映像表示装置(HMD)100は、メガネのツルに相当する部分に、ユーザ1の右目に表示する映像を投影する映像投影部103a、およびユーザ1の左目に表示する映像を投影する映像投影部103bを有する。また、メガネのレンズに相当する部分に、映像投影部103a、bで投影した映像をユーザ1の目に届ける出射カプラー203a、bを備えている。出射カプラー203a、bは、映像を表示するだけでなく、外界からの光を透過できるようになっており、外界に対して映像を重畳表示させてユーザに見せる拡張現実(AR:Augmented Reality)を表示することができる。図1Bに示すように、ユーザ1は、映像表示装置100を頭部に装着することで、映像を両目で見ることができる。
【0021】
図2は、映像表示装置100のブロック構成を示す図である。映像表示装置100は、ユーザの右目に映像を表示する右目用映像表示部104a、およびユーザの左目に映像を表示する左目用映像表示部104bによって構成されている。図2では右目用と左目用で符号a、bを各構成ブロックに付しているが、2つ映像表示部は同様の構成となっているため、以下では、右目用aと左目用bの符号を省略して右目用と左目用を特に区別せずに説明する。
【0022】
図2において、映像表示部104では、まず映像入力部101から送られてきた映像データをもとに、画質補正部102および映像投影部103によって表示する映像を生成する。画質補正部102は、表示する映像の色や輝度の補正を行う。ここで、色ムラや輝度ムラ、色ずれ等が均一化し最小になるように調整を行う。映像投影部103は光源を含む小型プロジェクターを用いて構成されており、映像の虚像を投影する光学系となっている。つまり、映像投影部103を直接覗き込むと、ある距離の位置に2次元の映像を見ることができる。ここで、映像(虚像)が投影される距離は、ある有限の距離であってもよく、無限遠方であってもよい。
【0023】
映像投影部103で生成された映像は、ある距離に虚像を投影するような光線群として出射される。この光線群は、少なくとも赤(R)、緑(G)、青(B)の3色に対応する波長を有しており、ユーザはカラー映像を見ることができる。また、この光線群は、水平方向に略60度、垂直方向に略30度の広がりを有しており、投影される虚像の視野(FoV:Field of View)が広い映像を見ることができる。
【0024】
映像投影部103から出射した光線群は、入射カプラー201を介して導光板200に入射する。入射カプラー201は、導光板に入射した光線群の方向を、導光板200内を全反射によって伝搬できる方向に変換する。このとき、光線群の各光線方向の相対関係を保ったまま変換することで、映像の歪みやぼけのない高精細な映像を表示できる。
【0025】
導光板200内に入射した光線群は、全反射を繰り返すことで伝搬され、アイボックス拡大部202に入射する。アイボックス拡大部202は、ユーザが映像を見ることのできるアイボックス(虚像が視認できる領域)を拡大する機能を有する。アイボックスが広ければ、ユーザはアイボックスの縁部分を視認しにくくなることでストレスが軽減され、また装着具合やユーザの目の位置の個人差の影響を軽減して、高い臨場感を得ることができる。
【0026】
アイボックス拡大部202では、入射した光線群を、光線方向の相対関係を保ったまま複製して出射カプラー203に出射する。つまり、映像投影部103から出射した光線群は、光線方向(角度)の相対関係を保ったまま空間的に広げられる。
【0027】
出射カプラー203では、入射した光線群を導光板200の外に出射してユーザ1の目に届ける。つまり、出射カプラー203は入射カプラー201とは反対に、入射した光線群の方向を導光板200の外に出射できる方向に変換する。
【0028】
また、出射カプラー203では、アイボックス拡大部202によって広げられた方向とは異なる方向にアイボックスを拡大する機能も同時に有する。つまり、出射カプラー203に入射した光線群は、光線方向の相対関係を保ったまま複製され、空間的に広げられて導光板200の外に出射される。
【0029】
上記した構成は、右目映像表示部104aと左目映像表示部104bとで略共通である。以上の構成によって、ユーザ1は、これら2つの映像表示部104a,104bで表示された映像(虚像)を見ることができる。
【0030】
前記した図1Aの映像表示装置100では、導光板200の一部である出射カプラー203の部分しか見えていないが、導光板200のその他の部分は、黒いフレーム部分に隠れて外からは見えないようにしている。これは、導光板200に意図せぬ角度から外界の光(外光)が入射すると、迷光となって表示映像の画質を劣化させる可能性があるためである。よって、出射カプラー203以外の部分は極力外界から見えないようにして、外光が導光板200内に入射しないようにしている。
図3は、導光板200の全体構成を示す概略図である。導光板200は、入射カプラー201、アイボックス拡大部202、出射カプラー203を含んで構成され、これらはガラスまたはプラスティックなどの合成樹脂製の基板に収納され、厚みはおよそ1~2mm程度である。映像投影部103から出射した光線群は、前述のようにRGB光に対応する広い波長範囲と、水平方向60度、垂直方向30度のFoVに対応する広い角度範囲を有しており、この光線群は、入射カプラー201に入射する。図3では、光線群内の中心光線350について導光板200内の経路を示している。この中心光線350は、表示される映像の略中心のピクセルに対応し、実際には数mm径の有限の太さを持った光束である。
【0031】
入射カプラー201は、プリズムによって構成され、入射光線群320の方向を、導光板200を全反射によって導光する方向へと変換する。入射カプラー201から出射した光線群は、導光板200内の内面反射によって、アイボックス拡大部202に伝搬していく。
【0032】
アイボックス拡大部202は、導光板200を伝搬してきた光線群を、ミラー面330およびビームスプリッター面340によって反射し、出射カプラー203に伝搬する。その際、ビームスプリッター面340により光線群が光線方向の相対関係を保ったまま複製されることで、ユーザが映像を見るアイボックスが縦方向に拡大される。ここで、アイボックス拡大部202は、ミラー面330およびビームスプリッター面340に挟まれた構造となっており、ミラー面330は略100%の反射率のミラーで構成され、ビームスプリッター面340は略70%程度の反射率の部分透過ミラーにより構成されている。これらのミラー面330やビームスプリッター面340は、誘電体多層膜や金属蒸着によって作成され、RGB光に対応する広い波長範囲と水平60度×垂直30度でのFoVに対応する広い角度範囲を有する光線群220に適用できるよう設計されている。
【0033】
出射カプラー203は、光回折部である体積型ホログラムによって構成されており、入射した光線群の方向を変換し、導光板200の外に出射させる。体積型ホログラムは、導光している光の一部を回折するため、残りの光はそのまま導光する。これを繰り返すことで、出射カプラー203から多数の出射光線群310が面内で複製されて出射しユーザ1の目に届けられる。これにより、アイボックスが横方向に拡大される。
【0034】
ここで、ビームスプリッター面340の反射率および出射カプラー203を構成する体積型ホログラムの回折効率は、出射カプラー203で出射する光量(アイボックス内の光量)が略均一になるように設計する必要がある。そのため、ミラー面330とビームスプリッター面340の反射率分布は、均一でもよいし、不均一な分布を持たせてもよい。また、出射カプラー203を構成する体積型ホログラムの回折効率も図の縦方向に不均一な分布であるグラデーションを持たせることにより、アイボックス内の光量が略均一になるように設計することができる。
【0035】
図4は、図3の導光板を下から見た、導光面内の断面図である。図4に示すように、映像投影部103から出射した光線群は、入射カプラー201によってアイボックス拡大部202に伝搬し、さらに、出射カプラー203に伝搬して、出射カプラー203から多数の出射光線群310が面内で複製されて出射しユーザ1の目に届けられる。入射カプラー201はプリズムにより構成されており、出射カプラー203を構成する体積型ホログラムは反射型ホログラムで構成している。以下、この体積型ホログラムの製造方法について示す。
【0036】
図5Aは、体積型ホログラムの製造方法の概略図を示している。体積型ホログラムは、感光性材料であるフォトポリマー等の記録媒体510にレーザ光等の可干渉性(コヒーレンス)の高い光源から出射される記録光520A,Bによって作られる干渉縞をホログラムとして記録することにより製作できる。ここで、図5に示すようにx軸、y軸を、紙面垂直方向にz軸を定義する。記録光520A,Bはともにy軸からθw(記録角度)だけx軸に対して線対称に傾いた平行光であり、平面波記録ビームである。これにより、干渉縞面は、x-z面に平行に形成される。また、記録媒体510をx軸からθgだけ傾かせる。干渉縞面が導光板における反射面(スキューミラー面)となるため、θgは反射面の記録媒体面からの傾きとなる。また、記録媒体の表面反射による記録時の光利用効率低下および記録媒体510での屈折の影響を避けるためプリズム500を用いている。
【0037】
矢印530に示すように、z軸を回転中心として記録光520A、Bを回転させ記録光同士のなす角度を変えて多重記録を行う。ここで、x軸に対して常に記録光が線対称になるようにすることで、干渉縞面を常にx-z面と平行にすることができる。これにより、干渉縞面(反射面)を記録媒体面からθgだけ傾いたまま固定して、干渉縞ピッチ(グレーティング間隔)の異なるホログラムを多重記録することができる。
【0038】
なお、体積型ホログラムを光回折部とし、該光回折部の両側を基板で挟むことで導光板を製造できる。
【0039】
図5Bは、上記の方法で多重記録した体積型ホログラム(スキューミラー)を、再生する場合の光学配置を示している。ここで、「再生」とは、ホログラムに入射光を照射して光を回折させることを意味し、今後この意味で用いる。
【0040】
体積型ホログラムにy軸方向からθp(再生角度)だけ傾いた再生光線550を入射する(媒体に対する入射角度は、θin=θp+θgとなり、これを再生入射角度と呼ぶ)と、Bragg選択性を満たす場合は、回折光560がy軸からθdだけ傾いた角度で出射する。再生光線がRGB光に対応する広い波長範囲と、(空気中で)水平方向60度、垂直方向30度のFoVに対応する広い角度範囲を有している場合に、体積ホログラムが回折することができれば、体積型ホログラムは導光板の出射カプラーとして用いることができる。また、光線の波長は、観察者の目で等色関数により積分されて認識されるため、体積型ホログラムからの出射光線の波長分布は、入射光線と同様の波長分布である必要はなく、少なくともRGBの3色に対応する波長がバランスよく含まれていればよい。また、本図で入射光線のパワー密度に対する出射光線のパワー密度を回折効率と呼ぶ。ここで、上記のθg、θw、θp、θdおよびθinはすべて記録媒体510内の角度で記載されている。
【0041】
図6Aは、体積型ホログラム導光板の光学効率の考え方を示している。まず、導光板の光学効率Hを、下記式(1)により定義する。
【0042】
【数1】
【0043】
ここで、Sin(λ)およびSout(λ)は、入射光および出射光の波長スペクトル分布であり、図6Aにおける、横軸は波長、縦軸はスペクトル強度であるようなグラフ600a、600bによって示される。また、積分範囲は、可視光の波長域で行うこととする。つまり、光学効率Hは、入射光と出射光のエネルギーの総和(積分値)の比率で計算される。ここで扱う光学効率は、すべてある単一の角度の光線について考えている。ただし、導光するすべての角度の光線について考える場合も同様の考え方を用いることができる。
【0044】
体積型ホログラム導光板では、出射光が複数発生する。そのため、ここではN本の光線が出射するとする。また、アイボックス拡大部202による縦方向の複製については説明を簡単にするために省略するが、同様の考え方により拡張可能である。
【0045】
このとき、体積型ホログラム導光板の光学効率HAllは、下記式(2)にて表せる。
【0046】
【数2】
【0047】
ここで、hはm番目の出射光線の光学効率であり、下記式(3)によって表せる。
【0048】
【数3】
【0049】
ここで、Mは多重記録数、Mmaxは後述する最大多重記録数である。ηはm番目の出射光線の回折効率である。したがって、体積型ホログラム導光板の光学効率HAllは、下記式(4)となる。
【0050】
【数4】
【0051】
体積型ホログラム導光板の光学効率HAllを向上させるためには、H=M/MmaxかHη=ΣηΠ(1-ηi)のどちらかまたは両方を向上させればよい。ここで、H=M/Mmaxを「波長使用率」、Hη=ΣηΠ(1-ηi)を「実質回折効率」と呼ぶ。以下、この2つの項目について説明する。
【0052】
実質回折効率Hηは、ある1波長において、入射光が出射する効率を表している。実質回折効率を向上させることで光学効率を向上させることができるが、これは出射光線の強度の均一性とトレードオフの関係がある。
【0053】
たとえば、N=7として、ホログラムの回折効率を100%(η=1)としてしまうと、実質回折効率は100%となるが、η=100%、η=0%、η=0%・・・となり、導光方向への出射光線の複製が困難となる。また、ホログラムの回折効率を30%とすると、実質回折効率は92%と低下するが、η=30%、η=21%、η=15%・・・となり不均一ではあるが、導光方向への出射光線の複製が可能となる。また、ホログラムの回折効率を2%とすると、実質回折効率は13%まで低下するが、均一性を高く保つことができる。このように、実質回折効率と出射光線強度の均一性とはトレードオフの関係がある。
【0054】
上記の関係を解決するために、ホログラムの回折効率を導光方向へ不均一にする方法が考えられる。但し、これを行うと、外光透過率も不均一となる課題がある。
【0055】
そのため、出射光線強度の均一性を維持したまま実質回折効率を高くすることは困難であり、実用上例えばN=7のときに、15%程度とするのが限度となる。このとき、実質回折効率は68%程度となる(Hη=68%)。
【0056】
波長使用率Hは、体積型ホログラムによって利用(再生)される波長の割合を表している。これは、体積型ホログラムの波長選択性に起因しており、例えば適切なコーティングを施したハーフミラー等は波長選択性がほとんどないため、波長使用率はほぼ100%となる。体積型ホログラムでは、波長使用率を向上させることで光学効率を向上させることができるが、そのためには多重記録数を増加させる必要がある。
【0057】
波長使用率Hは、H=M/Mmaxにより決定される。ここで、Mはホログラムの多重記録数、Mmaxは最大多重記録数である。最大多重記録数Mmaxは、多重記録時の記録角度θを詰めて多重記録を行ったときに、波長選択性がなくなる、つまり入射するすべての波長を回折するようになるときの多重記録数と定義する。
【0058】
図6Bに、体積型ホログラムの多重記録数Mと記録角度θw、空気中での再生波長λp、再生入射角度θinの関係を示している。図5Aの光学配置によりホログラムの多重記録を行い、図5Bの光学配置によりホログラムの再生を行う場合を考える。空気中での記録波長λ、再生波長λとすると、Braggマッチにより再生入射光が回折する(回折光が発生する)再生波長λの条件は、ある記録角度θにて記録したホログラムに対して、下記式(5)
【0059】
【数5】
【0060】
となる。ここで、θは干渉縞面の記録媒体表面からの傾き角度であり、記録時に決定される定数である。また、θinは、再生時の記録媒体表面に対する入射角度、θは多重記録時の図5Bのy軸からの角度であり、多重記録数分だけ値を持つ。また、記録媒体表面に対する入射角度θinの条件として書き直すと、下記式(6)
【0061】
【数6】
【0062】
となる。記録波長λと再生波長λが決まると、再生入射角度θinは、記録時の角度θによって決定される。またこのとき、再生される光の回折方向θは、下記式(7)
【0063】
【数7】
となる。以上の関係式により、記録条件(θw、λw)から再生時の入射角度(θin)、出射光の角度(θd)を計算することができる。
【0064】
図6Bでは以上の関係を図示している。多重記録数Mが大きくなると、それに伴って、再生される条件も増えていく。そして、波長選択性がなく可視域のすべての波長を回折するようになる多重記録数をMmaxとしている。
【0065】
図7は、Bragg波長選択性を示している。図7Aは、再生光の波長選択性である。再生入射光をある角度に固定した場合、一つの平面波ホログラムにより再生可能な波長は、図のようにSinc関数の形をしており、再生可能な(空気中の)波長幅は、およそ波長選択性の半値幅となるので、下記式(8)
【0066】
【数8】
【0067】
と表せる。ここで、n(n=1,2,3,・・・)は多重記録番号の添え字である。また、nmediaとLはそれぞれ記録媒体510の屈折率と厚みである。記録波長λw、再生波長λp、θg、屈折率nmedia、Lは記録中変化しないとしている。図7Bは再生入射光をある角度に固定した場合の多重記録されたホログラムの波長選択性である。多重記録を行う角度θから、式(5)によって再生される波長間隔λp_intervalを計算することができ、下記式(9)
【0068】
【数9】
となる。
【0069】
また、図8は、Bragg角度選択性を示している。図8Aは、再生光の角度選択性である。再生入射光をある波長に固定した場合、一つの平面波ホログラムにより再生可能な角度は、図のようにSinc関数の形をしており、再生可能な(記録媒体内の)角度幅は、下記式(10)
【0070】
【数10】
【0071】
と表せる。図8Bは再生入射光をある波長に固定した場合の多重記録されたホログラムの角度選択性である。多重記録を行う角度θから、式(6)によって再生される角度間隔θin_intervalを計算することができ、下記式(11)
【0072】
【数11】
となる。θin_intervalは、記録角度θの間隔が小さくなると、それに伴って小さくなる。
【0073】
以上の関係式を用いることで、ある条件で記録した場合の波長使用率を計算することができる。
波長使用率は、最大多重記録数Mmaxを用いて、下記式(12)
【0074】
【数12】
【0075】
によって計算される。ここで、<>は、すべての多重記録(番号n)での平均値を意味する。よって、Mmaxは波長選択性の隙間がなくなるように記録を行った場合の多重記録数に対応する。また、角度選択性の隙間がなくなるように記録を行った場合の多重記録数とも一致する。
【0076】
式(12)から、ホログラムの多重記録角度θの間隔を詰めて記録することで、つまりθin_intervalを小さくすることで、波長選択性の隙間を埋めて、波長使用率Hを向上できることが分かる。これはつまり、多重記録数Mを増加させることと同じである。しかし多重記録数Mを増加させると、例えば以下に示す課題がある。
【0077】
図9は、波長使用率を増加させるためホログラムの多重記録間隔を詰めて記録する場合の問題点を説明する図である。図9の上図は多重記録間隔を十分に空けて記録している場合の模式図である。これに対して、下図は記録角度間隔を詰めて記録した場合の模式図であり、このように記録角度間隔が詰まってくると、隣接ホログラム同士のクロストークが発生する。これは、Sinc関数のサイドローブが干渉してその位相差によって再生強度を強めあったり弱めあったりする現象であり、画質劣化を引き起こす。通常、多重記録ホログラムの隣接ホログラムの位相差の制御は困難なので、本課題は本質的な問題であり、均一な回折効率を維持することが難しくなる。よって、隣接ホログラムの間隔は十分に空ける必要があり、例えば、θin_interval=r△θ1st_med(rは正の実数値)としたとき、r=7~10程度かそれ以上とする必要がある。またさらに、記録角度間隔を詰めて多くの多重記録を行うと、記録工程前半に記録したホログラムの再生や媒体内の散乱光によって書き込まれたホログラムの再生が記録工程後半に影響をあたえて、意図せぬホログラムが書き込まれるノイズグレーティングやホログラフィック散乱の発生といった課題もあり、これによりHMDとしての画質劣化が起こる。従って、rは十分大きい必要があり、例えばr=10のとき、波長使用率Hは10%(H=1/rより)となる。これが、波長使用率の限度である(H=10%)。
【0078】
以上より、導光板の光学効率はHAll=Hη×H=68%×10%=6.8%程度が限度となる。以下では、本制約を超えて光学効率を向上する方法について説明する。
【0079】
図10は上記の課題を解決するための本実施例における領域分割記録法を説明する図である。本手法では、記録媒体のホログラム記録領域を空間的に領域分割する。そして、各領域で、再生される波長の組が異なるようにして多重記録を行う。つまり、記録角度θwの組を領域毎に変化させる。これにより、各領域では、多重記録数が少なくても、全体としての波長使用率を向上させることができる。また、一つの領域の回折効率が高すぎると、後方の回折光量が低下するが、本手法では、領域の異なる部分では、異なる波長が再生されるため、前方のホログラムが高回折効率であっても、後方のホログラムで別の波長でまた高回折効率にすることができる。そのため、各領域の回折効率を上げてもよく、回折効率の上限を向上させることができる。なお、図10では、瞳の1次元の複製系となっているが、2次元の複製系でも用いることができる。
【0080】
図10では、入射カプラー1000から入射波長スペクトル強度Sinを有する光源からの光線を入射している。本入射光は、入射カプラー1000によって、導光板200に入射し、全反射によって導光板内を導光する。そして、最初の出射カプラー領域1010に入射すると、一部の光は導光板200の外に出射される。ここで、出射されるある角度の光線の波長スペクトル強度Sout 1を見ると、Bragg波長選択性によって、歯抜けの状態になっており、多重記録数M個以下のピークが立っている。また、出射カプラー領域1010を透過した光は、出射カプラー領域1020に入射すると、一部の光が導光板200の外に出射される。このとき、出射される上記角度の光線の波長スペクトル強度Sout 2を見ると、出射カプラー領域1010から出射されているその光線と平行な光線の波長スペクトル強度Sout 1と比較して、すべてのピーク位置が波長選択性の半値幅である△λ1st_med以上ずれている。これにより、領域1010で出射した波長以外の波長の光が領域1020から出射される。領域1030、1040でも同様に、出射される(回折される)波長の組をずらすことで、前方の領域で回折された波長とは異なる波長を回折させる。なお、各領域で回折される波長の組は等間隔でも等間隔でなくてもよく、複数でなくてもよい。
【0081】
ここで、出射スペクトル強度のピーク位置は、光線の角度によって異なるが、ピークの数や歯抜けになっている割合である波長使用率はほとんど変わらず、すべての角度の光線において、上記の関係を成立させることができる。また、各分割領域の境界は重なり部分1070、1080、1090を作ることで、領域境界の影響を低減させてもよい。また、各分割領域での多重記録数(再生波長スペクトル強度のピークの数)は必ずしも一致している必要はない。またさらに、各分割領域において記録角度のオフセット量(全体的なシフト量)を変えることで、各分割領域によって必要最低限の角度範囲にのみ再生させて、記録媒体のダイナミックレンジ(たとえばM#と呼ばれる指標等)を有効に活用してもよい。
【0082】
次に、領域分割記録を行った場合の光学効率について説明する。図10に示す各領域での回折する波長スペクトル強度すべての和1060が、隙間がなくなるようにするように領域分割を行えば波長使用率Hを100%に近づけることも原理的には可能である。この場合、領域の数は、およそ波長使用率Hの逆数となる。また、領域数を増やせば各領域の回折効率も増やすことができるので、実質回折効率Hηを100%に近づけることも原理的には可能である。従って、ある角度の光線における光学効率HAllは、従来よりも飛躍的に向上することができる可能性がある。
【0083】
図11に具体的な設計例を示す。導光板の厚みは1.5mmとし、0.5mmの記録媒体の層を有している。導光板内の中心光線の入射角度は55度で、このとき横方向のFoVはおよそ39度となる。また、このときMmaxは1000程度になる。中心光線の出射光線数Nが8本(m=1~8)となるような出射カプラーのサイズとし、領域分割数Kを5(k=1~5)とする。また、各領域での回折効率をおよそη=30%とし、50多重記録を行う(M=50)。このとき、中心光線の実質回折効率Hηは50%程度、波長使用率Hは、領域分割記録によってK倍されるので、H=K×M/Mmax=5×50/1000=25%程度となるので、光学効率HALLはおよそ12.5%となる。これは、従来の限度であった6.8%に対して2倍程度の効率向上を実現している。また、領域分割数Kと多重記録数M、回折効率ηはより大きい値にすることが可能であり、これ以上の光学効率向上も望める。
【0084】
本手法の特徴は、シースルー性(外界透過性)を保ちつつ光学効率を向上させることが可能な点である。ハーフミラー等の波長選択性のほとんどない素子のアレイを用いて光学効率を向上させるためには、外界透過率を一部犠牲にしなければならない。例えば、100%の光学効率を実現するためには、導光板の最後は100%反射のミラーにする必要がある。しかし、その部分での外界透過率は0%となってしまう。一方、体積型ホログラム導光板では、領域分割を行うことで、各領域にて波長選択性を有するため、例えば回折効率100%のホログラムを各領域に記録し、領域分割数Kと波長使用率Hの関係が、K=1/Hであれば、光学効率HAllは100%となるが、導光板のどの領域も外界透過率は0%とはなっておらず、1-Hとなる。各領域の波長使用率Hを十分小さくして(領域分割数Kを十分大きくして)、回折効率100%のホログラムを記録することができれば、外界透過率の低下はほとんどなく、光学効率100%を達成できる可能性があり、少なくともそれに近づけることは可能である。
【0085】
以上のように、本実施例によれば、高いシースルー性を保ったまま光学効率を向上させる導光板、導光板製造方法及びそれを用いた映像表示装置を提供できる。
【実施例2】
【0086】
図12は、本実施例における導光板の構成を示している。本実施例では、領域分割ではなく、多層構造とすることで光学効率を向上させている。図12において、導光板200は4層の構造となっており、各層に、ある角度の光線に対して異なる波長の組を回折する体積型ホログラムが記録されている。各層には、入射カプラー1200および出射カプラー1210が含まれており、各層内で、入射・出射カプラーの組は同じ角度で記録された体積型ホログラムを対称に並べた構成となっている。これにより、入射カプラーによって回折して導光板の中に入り導光する光線の角度と波長の組合せと出射カプラーによって回折して導光板の外に出射する光線の角度と波長の組合せが一致し、光の損失が最小となる。また、導光中に導光板の歪み等の影響で意図しない方向に光線角度がずれた場合は、出射カプラーにてBragg条件を満たさなくなるため、意図しない方向の光線が出射されることを抑制できる。これにより、導光による映像のボケ(光線の角度ずれ)を抑制することが可能となる。
【0087】
図12において、各層の入射・出射カプラーに記録されている体積型ホログラムは、実施例1の時と同様に、回折する波長(の分布)が異なっており、波長のピーク位置が△θ1st以上ずれている。これにより、各層で回折される波長1250(Sout ~Sout 4)が異なり、その和1260の波長使用率を向上させることができる。
【0088】
なお、本実施例における多層構造と、実施例1の領域分割記録を併用することも可能であり、これにより、光学効率を向上させることもできる。
【0089】
以上、実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。すなわち、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0090】
100:映像表示装置(HMD)、101:映像入力部、102:画質補正部、103:映像投影部(光源を含む)、104:映像表示部、200:導光板、201、1000、1200:入射カプラー、202:アイボックス拡大部、203、1210:出射カプラー、1010、1020、1030、1040:出射カプラー領域
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12