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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】ケーブル支持装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 1/10 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
F16C1/10 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018174555
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020045965
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 篤彦
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-3561(JP,A)
【文献】特開2000-240635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを支持するケーブル支持装置であって、
前記ケーブルが挿入される、第1の方向に延びている貫通孔が形成された管状部を含む本体であって、前記管状部の外周面の一部に雄ねじが形成されている、本体と、
前記管状部に形成された前記雄ねじに螺合する雌ねじが内周面に形成された環状のナット部材と、
前記管状部に形成された前記雄ねじに対して前記第1の方向の一方側に配置され、前記第1の方向において前記ナット部材と対向するストッパと、
内周側に前記管状部を収容するように配置され、前記ナット部材に対して前記ストッパに接近する方向の回転力を付与するコイルスプリングと、
を備え、
前記ナット部材には、前記コイルスプリングにおける第1の端部を係止する係止部が形成されており、
前記管状部の前記外周面には、前記コイルスプリングにおける前記第1の端部とは反対側の第2の端部が挿入される螺旋状の溝が形成され、
前記溝は、前記管状部の円周方向に交差する当接面であって、前記管状部に螺合された前記ナット部材が前記ストッパから離間する方向に回動される際に前記コイルスプリングの前記第2の端部に当接する当接面を有する
ケーブル支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル支持装置であって、
前記溝は、前記管状部における前記第1の方向の他方側に連続的に延びており、かつ、前記他方側に開口している、
ケーブル支持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のケーブル支持装置であって、
記溝の巻き方向は、前記管状部の前記外周面に形成された前記雄ねじの巻き方向とは逆である、
ケーブル支持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のケーブル支持装置であって、
前記の形状は、前記第1の方向に垂直な第2の方向の一方側から見たときに前記の一部分の底面全体が視認され、かつ、前記第2の方向の他方側から見たときに前記の残り部分の底面全体が視認される形状である、
ケーブル支持装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のケーブル支持装置であって、
前記本体と前記ストッパとは一体形成されている、
ケーブル支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、ケーブルを支持するケーブル支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両用コントロールケーブルなどのケーブルを支持するケーブル支持装置が知られている(特許文献1,2参照)。このケーブル支持装置は、本体と、環状のナット部材と、ストッパと、コイルスプリングと、を備える。本体には、ケーブルが挿入される貫通孔が形成されており、本体の外周面には、雄ねじが形成されている。ナット部材は、本体に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが内周面に形成されている。ストッパは、本体に形成された雄ねじに対して上記貫通孔の軸方向の一方側に配置され、該軸方向においてナット部材と対向する。コイルスプリングは、コイルスプリングの内周側に本体を収容するように配置され、ナット部材に対してストッパに接近する方向の回転力を付与する。コイルスプリングの一端部は、ナット部材に形成された切り欠きに係止されており、コイルスプリングの他端部は、本体において、貫通孔に連通するように形成された切り欠きに係止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-133020号公報
【文献】特開2004-3561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のケーブル支持装置では、コイルスプリングの一部が、本体において、貫通孔に連通するように形成された切り欠きに係止されている。このため、コイルスプリングの一部が、本体の内周側(貫通孔内)に突出している。コイルスプリングの一部が貫通孔内に突出すると、例えば、そのコイルスプリングの一部が、貫通孔に挿入される挿入部材(例えばケーブルや、該ケーブルを覆うスリーブなど)と干渉し、挿入部材が損傷したり、貫通孔への挿入部材の挿入ができなくなったりする、といった不具合が生じることがある。
【0005】
本明細書では、上述した課題の少なくとも一部を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示されるケーブル支持装置は、ケーブルを支持するケーブル支持装置であって、前記ケーブルが挿入される、第1の方向に延びている貫通孔が形成された管状部を含む本体であって、前記管状部の外周面の一部に雄ねじが形成されている、本体と、前記管状部に形成された前記雄ねじに螺合する雌ねじが内周面に形成された環状のナット部材と、前記管状部に形成された前記雄ねじに対して前記第1の方向の一方側に配置され、前記第1の方向において前記ナット部材と対向するストッパと、内周側に前記管状部を収容するように配置され、前記ナット部材に対して前記ストッパに接近する方向の回転力を付与するコイルスプリングと、を備え、前記ナット部材には、前記コイルスプリングにおける第1の端部を係止する係止部が形成されており、前記管状部の前記外周面のうち、前記雄ねじに対して前記第1の方向の他方側には、前記コイルスプリングにおける前記第1の端部とは反対側の第2の端部が挿入される挿入溝であって、少なくとも、前記管状部に螺合された前記ナット部材が前記ストッパから離間する方向に回動される際に前記コイルスプリングの前記第2の端部に当接する当接面を有する挿入溝が形成されている。
【0008】
本ケーブル支持装置では、コイルスプリングにおける第1の端部は、ナット部材に形成された係止部に係止され、コイルスプリングにおける第2の端部は、本体の管状部の外周面に形成された挿入溝に挿入される。すなわち、コイルスプリングは、管状部の内周側に突出しない。管状部に螺合されたナット部材がストッパから離間する方向に回動される際、コイルスプリングにおける第2の端部は、挿入溝に形成された当接面に当接する。これにより、コイルスプリングが捩り変形し、その反発力によって、ナット部材に対してストッパに接近する方向の回転力が付与される。このように、本ケーブル支持装置によれば、コイルスプリングが本体の管状部の内周側に突出することを抑制しつつ、ナット部材に対してストッパに接近する方向の回転力を付与することができる。
【0009】
(2)上記ケーブル支持装置において、前記管状部の前記外周面には、さらに、前記挿入溝から前記管状部における前記第1の方向の前記他方側に連続的に延びており、かつ、前記他方側に開口しているガイド溝が形成されている構成としてもよい。本ケーブル支持装置では、管状部の外表面には、管状部における端から挿入溝まで連続的に延びているガイド溝が形成されている。これにより、本体にコイルスプリングとナット部材とを組み付ける際、コイルスプリングの第2の端部を、ガイド溝を介して、管状部の端から挿入溝に円滑に導くことができる。
【0010】
(3)上記ケーブル支持装置において、前記ガイド溝の形状は、螺旋状である構成としてもよい。これにより、本ケーブル支持装置によれば、例えば、ガイド溝の形状が第1の方向に沿った直線状である構成に比べて、コイルスプリングの第2の端部が、挿入溝やガイド溝から第1の方向に抜けることを抑制することができる。
【0011】
(4)上記ケーブル支持装置において、前記ガイド溝の巻き方向は、前記管状部の前記外周面に形成された前記雄ねじの巻き方向とは逆である構成としてもよい。これにより、本ケーブル支持装置によれば、例えば、ガイド溝の巻き方向が雄ねじの巻き方向と同じである構成に比べて、ナット部材がストッパから離間する方向に回動される際にコイルスプリングの第2の端部が挿入溝に挿入された状態が解除されることを抑制することができる。
【0012】
(5)上記ケーブル支持装置において、前記挿入溝の形状は、前記第1の方向に垂直な第2の方向の一方側から見たときに前記挿入溝の一部分の底面全体が視認され、かつ、前記第2の方向の他方側から見たときに前記挿入溝の残り部分の底面全体が視認される形状である構成としてもよい。本ケーブル支持装置によれば、アンダーカット部分が無いため、本体を型抜きにより容易に作製することができる。
【0013】
(6)上記ケーブル支持装置において、前記本体と前記ストッパとは一体形成されている構成としてもよい。本ケーブル支持装置によれば、本体とストッパとが別体である構成に比べて、ケーブル支持装置の部品点数を低減することができる。
【0014】
本明細書によって開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、ケーブル支持装置や、ケーブル支持方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態におけるケーブル支持装置100の外観構成を示す斜視図である。
図2図1におけるケーブル支持装置100のXZ平面構成を示す説明図である。
図3図1におけるケーブル支持装置100のYZ平面構成を示す説明図である。
図4】ケーブル支持装置100を分解した状態を示す斜視図である。
図5】カバー部102の一部分(管状部110、ハブ130)とナット部材104とコイルスプリング106との組み付け構成を示す斜視図である。
図6】カバー部102の管状部110の構成を示す説明図である。
図7】ケーブル支持装置100の外観構成を示す斜視図である。
図8図7におけるケーブル支持装置100のXZ平面構成を示す説明図である。
図9】変形例における管状部110aの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A-1.ケーブル支持装置100の構成:
図1は、本実施形態におけるケーブル支持装置100の外観構成を示す斜視図であり、図1には、ケーブル支持装置100がブラケット600に装着される前の状態が示されている。図2は、図1におけるケーブル支持装置100のXZ平面構成を示す説明図であり、図3は、図1におけるケーブル支持装置100のYZ平面構成を示す説明図であり、図3には、後述のコイルスプリング106等の一部分が仮想線で示されている。図4は、ケーブル支持装置100を分解した状態を示す斜視図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、ケーブル支持装置100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図5以降についても同様である。
【0017】
ケーブル支持装置100は、ケーブル1を支持しつつ、ブラケット600に装着される装置である。具体的には、ケーブル1は、例えば、車両用のトランスミッションケーブルである。ブラケット600は、シフトレバーを備えるシフトレバー装置(図示しない)に設けられている。ブラケット600の上端には、ケーブル支持装置100が装着される略U字状の凹部610が開口形成されている。凹部610は、所定の方向(X軸方向 以下、「ケーブル挿入方向」ともいう)視で略円形状の装着凹部612と、ブラケット600の上端から装着凹部612まで上下方向(Z軸方向)に延びているガイド凹部614と、を含んでいる。凹部610のうち、互いに対向し、ガイド凹部614を構成する一対の対向部620同士の幅(凹部610のY軸方向の開口幅)は、装着凹部612の直径より小さい。ケーブル1の一方の端末側は、トランスミッション(図示しない)に接続されており、ケーブル1の他方の端末側は、ブラケット600に装着されたケーブル支持装置100に支持されつつ、シフトレバーに接続される。このような構成により、トランスミッションとシフトレバーとがケーブル1によって連動可能に連結されている。
【0018】
図1から図4に示すように、ケーブル支持装置100は、カバー部102と、ナット部材104と、コイルスプリング106と、ロック部材108と、スリーブ109と、を備えている。
【0019】
(カバー部102の構成)
カバー部102は、管状部110とストッパ120とハブ130とを含んでいる。図4に示すように、管状部110は、ケーブル挿入方向(X軸方向)に直線状に延びる貫通孔112が形成された管状の部分である。管状部110の外周面には、雄ねじ114が形成されている。ストッパ120は、環状の部分であり、管状部110に形成された雄ねじ114に対してケーブル挿入方向の一方側(X軸負方向側 以下、「後方側」という)に配置されている。ストッパ120の外径は、管状部110の外径より大きく、ケーブル挿入方向視で、ストッパ120の外形線が、全周にわたって、管状部110の外形線の外側に位置している。換言すれば、ケーブル挿入方向視で、ストッパ120は、全周にわたって、管状部110の外側に張り出している。また、ストッパ120における貫通孔112の中心軸に垂直な一の方向(Y軸方向)の両側には、上下方向(Z軸方向)に延びている一対のロックガイド溝122が形成されている。なお、各ロックガイド溝122内には、突起(図示しない)が形成されている。
【0020】
(ハブ130の構成)
ハブ130は、筒状であり、管状部110に形成された雄ねじ114に対してケーブル挿入方向の他方側(X軸正方向側 以下、「前方側」という)に配置されている。ハブ130と管状部110とは、ハブ130の中心軸と、管状部110の貫通孔112の中心軸とが、略同一の仮想直線L(図4参照)上に位置するように配置されている。また、ハブ130の外径は、管状部110の外径より小さい。ハブ130における後方側の端部が、管状部110の貫通孔112に一体成型されている。なお、管状部110とストッパ120とは、例えば樹脂(例えばガラスを含む樹脂)により形成されており、ハブ130は、例えば金属により形成されている。
【0021】
(ナット部材104の構成)
ナット部材104は、環状の部材であり、ナット部材104の内周面に雌ねじ140が形成されている(図4参照)。ナット部材104の雌ねじ140に、カバー部102の管状部110に形成された雄ねじ114が螺合されている。また、図2に示すように、ナット部材104における後方側の端面(以下、「ナット側対向面146」という)は、ケーブル挿入方向において、ストッパ120における前方側の端面(以下、「ストッパ側対向面124」という)と対向している。これにより、ナット部材104が回転すると、ナット側対向面146とストッパ側対向面124との間の距離が変化する。なお、ナット部材104の外周面には、ローレット144が形成されている。ナット部材104は、例えば樹脂(例えばガラスを含む樹脂)により形成されている。
【0022】
(コイルスプリング106の構成)
図1図3および図4に示すように、コイルスプリング106は、該コイルスプリング106の内周側にカバー部102における管状部110を収容するように配置されている。具体的には、コイルスプリング106は、ケーブル挿入方向(X軸方向)視で、管状部110とナット部材104との間に介在するように配置されている。コイルスプリング106により、ナット部材104に対してストッパ120に接近する方向(X軸負方向)の回転力が付与されている。
【0023】
(ロック部材108の構成)
図4に示すように、ロック部材108は、上下方向(Z軸方向)に延びる一対のアーム部180と、一対のアーム部180の上端部同士を連結する連結部182と、を含んでいる。ロック部材108は、例えば樹脂により形成されており、弾性変形可能である。一対のアーム部180は、それぞれ、ストッパ120に形成された一対のロックガイド溝122に上下方向に沿って挿入可能とされている。これにより、ロック部材108は、連結部182の下面がストッパ120に接触するロック位置(図1および図2参照)と、連結部182の下面がストッパ120から上方に離間するロック解除位置(後述の図7および図8参照)との間で移動可能とされている。
【0024】
図4に示すように、ロック部材108の各アーム部180のうち、他方のアーム部180と対向する面には、係合凹部184が形成されている。ロック部材108がロック解除位置にあるときに、各アーム部180に形成された係合凹部184が、ロックガイド溝122に形成された上述の突起に係合し、これにより、ロック部材108は、ロック解除位置に仮保持される。連結部182は、アーム部180からナット部材104側(前方側)に突出するように形成されている。また、連結部182には、カバー部102の周方向の両側のそれぞれに突出する一対の突出部186が形成されている。
【0025】
(スリーブ109の構成)
スリーブ109は、筒状の部材であり、例えば樹脂により形成されている。スリーブ109は、カバー部102の貫通孔112の後方側(ハブ130とは反対側)に配置されている。図4に示すように、スリーブ109の一端には、球状部109Aが形成されており、この球状部109Aがカバー部102の貫通孔112に挿入されている。これにより、スリーブ109は、球状部109Aを中心として傾動可能にカバー部102に支持されている。
【0026】
A-2.コイルスプリング106を係止するための構成:
図5は、カバー部102の一部分(管状部110、ハブ130)とナット部材104とコイルスプリング106との組み付け構成を示す斜視図である。図5では、管状部110およびコイルスプリング106の一部分が、点線で示されており、ナット部材104およびコイルスプリング106の一部分が省略されている。図6は、カバー部102の管状部110の構成を示す説明図である。図6の中央下段には、管状部110の斜視図が示されており、右側には、管状部110のYZ平面構成(正面図)が示されており、左側には、管状部110のXZ平面構成(左側面図)が示されており、中央上段には、管状部110のXY平面構成(上面図)が示されている。
【0027】
(コイルスプリング106をナット部材104に係止するための構成)
図3から図5に示すように、コイルスプリング106における第1の端部160は、ケーブル挿入方向(X軸方向)視で、コイルスプリング106の外周側に突出するように折り曲げられている。一方、ナット部材104における前方側(ストッパ120とは反対側)の端部には、切り欠き142が形成されている。コイルスプリング106における第1の端部160は、このナット部材104に形成された切り欠き142に係止されている。
【0028】
(コイルスプリング106をカバー部102に係止するための構成)
コイルスプリング106における第2の端部162は、ケーブル挿入方向(X軸方向)視で、コイルスプリング106の内周側に突出するように折り曲げられている。一方、図4から図6に示すように、カバー部102の管状部110には、挿入溝116とガイド溝118とが形成されている。挿入溝116は、コイルスプリング106における第2の端部162を係止する。ガイド溝118は、コイルスプリング106における第2の端部162を挿入溝116に導く。以下、具体的に説明する。
【0029】
カバー部102において、雄ねじ114は、管状部110の外周面の一部に形成されており、挿入溝116は、管状部110の外周面のうち、雄ねじ114の前方側(ストッパ120とは反対側)に形成されている。挿入溝116は、当接面119を有しており、当接面119は、管状部110に螺合されたナット部材104がストッパ120から離間する方向に回動される際にコイルスプリング106の第2の端部162に当接する。具体的には、当接面119は、ナット部材104を緩める方向において、コイルスプリング106の第2の端部162と対向して当接する面である。なお、挿入溝116は、さらに、管状部110の周方向において、当接面119と対向する係止対向面117を有している(図6の左図参照)。これにより、コイルスプリング106の第2の端部162は、管状部110の周方向において、係止対向面117と当接面119との間に配置されることにより、周方向の移動が規制されている。
【0030】
ガイド溝118は、管状部110の外周面のうち、挿入溝116の前方側(ストッパ120とは反対側)に形成されている。ガイド溝118は、挿入溝116から、管状部110の前方側の端まで連続的に延びており、かつ、管状部110の前方側に開口している。ガイド溝118の形状は、螺旋状であり、かつ、ガイド溝118の巻き方向は、管状部110の外周面に形成された雄ねじ114の巻き方向とは逆である。また、ケーブル挿入方向(X軸方向)に垂直な方向(例えばY軸方向)視で、ガイド溝118の仮想直線L(貫通孔112の軸)に対する傾斜角度は、雄ねじ114(雌ねじ140)の仮想直線Lに対する傾斜角度に比べて、小さい。また、ガイド溝118の巻き数は、雄ねじ114の巻き数より少ない。例えば、ガイド溝118の巻き数は、雄ねじ114の巻き数の1/4倍以下である。これにより、ガイド溝118の巻き数が雄ねじ114の巻き数の1/4倍より多い場合に比べて、コイルスプリング106の第2の端部162を挿入溝116にガイドする際に、ナット部材104の回転数を低減することができる。また、ガイド溝118の巻き数は、管状部110の1/4周以上、管状部110の1/2周以下であることが好ましい。これにより、コイルスプリング106の第2の端部162を、円滑かつ効率的に挿入溝116にガイドすることができる。
【0031】
また、図6の中央上段および左側に示すように、挿入溝116およびガイド溝118の形状は、上下方向(Z軸方向)の一方側(上方側)から見たときに挿入溝116およびガイド溝118の一部分(具体的にはガイド溝118の一部分)の底面全体が視認される形状である。また、挿入溝116およびガイド溝118の形状は、上下方向(Z軸方向)の他方側(下方側)から見たときに挿入溝116およびガイド溝118の残り部分(具体的には挿入溝116とガイド溝118の一部分)の底面全体が視認される形状である。
【0032】
A-3.管状部110とストッパ120との関係:
ケーブル支持装置100では、管状部110とストッパ120とは、同一材料により一体形成されている。
【0033】
なお、ケーブル挿入方向(X軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当し、管状部110とハブ130との組み合わせの構成は、特許請求の範囲における本体に相当する。切り欠き142は、特許請求の範囲における係止部に相当する。上下方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第2の方向に相当する。
【0034】
A-4.ケーブル支持装置100の組み付け工程および装着工程:
図7は、本実施形態におけるケーブル支持装置100の外観構成を示す斜視図であり、図7には、ケーブル支持装置100がブラケット600に装着された状態が示されている。図8は、図7におけるケーブル支持装置100のXZ平面構成を示す説明図である。
【0035】
ケーブル支持装置100において、カバー部102に、ナット部材104とコイルスプリング106とロック部材108とを組み付ける工程は、次の通りである。例えば、ナット部材104を、カバー部102における管状部110に螺合させる。また、ロック部材108を、カバー部102におけるストッパ120において、ロック解除位置に位置するように配置する。
【0036】
次に、コイルスプリング106を、そのナット部材104と管状部110との間に配置する。具体的には、コイルスプリング106の第1の端部160を、ナット部材104の切り欠き142に係止させずに、コイルスプリング106の第2の端部162を、管状部110に形成されたガイド溝118から挿入する。コイルスプリング106の第2の端部162は、ガイド溝118に沿って挿入溝116にガイドされ、係止対向面117と当接面119との間に係止される。次に、コイルスプリング106の第1の端部160を、ナット部材104の切り欠き142に係止させる。これにより、コイルスプリング106により、ナット部材104に対してストッパ120に接近する方向(X軸負方向)の回転力が付与されている。ナット部材104を回転力に抗してストッパ120から離間する方向に移動させ、ロック部材108を下方向(Z軸負方向)に下げて、連結部182をナット側対向面146とストッパ120の間に介在させる。以上により、ケーブル支持装置100の組み付け工程は完了する。
【0037】
ケーブル1を支持するケーブル支持装置100を、ブラケット600に装着するための作業工程は、次の通りである。まず、ケーブル支持装置100に備えられたカバー部102の貫通孔112に、ケーブル1を挿入する。次に、ナット部材104を、コイルスプリング106の付勢力に抗して、ストッパ120から離間する方向に回転させて、ナット部材104のナット側対向面146とストッパ120のストッパ側対向面124との間の離間距離を、ロック部材108の連結部182の前後方向(X軸方向)の幅寸法より長くする。ナット側対向面146とストッパ側対向面124との離間距離が連結部182の幅寸法より長い状態で、ロック部材108をロック解除位置からロック位置に移動させる。次に、ナット部材104から手を離すことにより、ナット部材104が、コイルスプリング106の付勢力によって、ストッパ120に接近する方向に回転する。その結果、図1および図2に示すように、ロック部材108の連結部182が、ナット部材104のナット側対向面146とストッパ120のストッパ側対向面124との間に挟み込まれる。このとき、ナット側対向面146とストッパ側対向面124との離間距離は、ブラケット600の厚さ寸法より長い。
【0038】
次に、ケーブル支持装置100におけるナット側対向面146とストッパ側対向面124との間の部分を、ブラケット600の凹部610内に挿入する。この過程で、ロック部材108の突出部186の下面が、ブラケット600における一対の対向部620のそれぞれの上面に当接して押し上げられることによって、ロック部材108がロック位置からロック解除位置に移動する。これにより、ナット側対向面146とストッパ側対向面124との間にロック部材108が介在しなくなる。その結果、ナット部材104が、コイルスプリング106の付勢力によって、ストッパ120に接近する方向に回転し、ナット側対向面146とストッパ側対向面124との間にブラケット600が挟み込まれる。以上により、ケーブル支持装置100がブラケット600に装着される。
【0039】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態にかかるケーブル支持装置100では、コイルスプリング106における第1の端部160は、ナット部材104に形成された切り欠き142に係止され、コイルスプリング106における第2の端部162は、カバー部102の管状部110の外周面に形成された挿入溝116に挿入される。すなわち、コイルスプリング106は、管状部110の内周側に突出しない。管状部110に螺合されたナット部材104がストッパ120から離間する方向に回動される際、コイルスプリング106における第2の端部162は、挿入溝116に形成された当接面119に当接する。これにより、コイルスプリング106が捩り変形し、その反発力によって、ナット部材104に対してストッパ120に接近する方向の回転力が付与される。このように、本実施形態によれば、コイルスプリング106が管状部110の内周側に突出することを抑制しつつ、ナット部材104に対してストッパ120に接近する方向の回転力を付与することができる。
【0040】
また、本実施形態では、管状部110の外表面には、管状部110における前方側の端部から挿入溝116まで連続的に延びているガイド溝118が形成されている。これにより、カバー部102にコイルスプリング106とナット部材104とを組み付ける際、コイルスプリング106の第2の端部162を、ガイド溝118を介して、管状部110の前方側の端部から挿入溝116に円滑に導くことができる。
【0041】
また、本実施形態では、ガイド溝118の形状は、螺旋状である。このため、例えばガイド溝118の形状が前後方向(X軸方向)に沿った直線状である場合に比べて、コイルスプリング106の第2の端部162が、挿入溝116やガイド溝118から前後方向に抜けることを抑制することができる。また、コイルスプリング106の第2の端部162をガイド溝118にセットした状態からコイルスプリング106を回転させるだけで、コイルスプリング106の第2の端部162を、ガイド溝118に沿って挿入溝116まで円滑に移動させることができる。このため、ナット部材104と管状部110との間であって、外部から見えにくく作業し辛いスペース内において、コイルスプリング106の第2の端部162をカバー部102に係止するための作業性を向上させることができる。
【0042】
また、ケーブル挿入方向に垂直な方向(例えばY軸方向)視で、ガイド溝118の仮想直線Lに対する傾斜角度は、雄ねじ114(雌ねじ140)の仮想直線Lに対する傾斜角度に比べて、小さい。このため、例えば、ガイド溝118の傾斜角度が雄ねじ114(雌ねじ140)の傾斜角度以上である構成に比べて、コイルスプリング106を少ない回転数で効率良く、第2の端部162を挿入溝116に配置させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、ガイド溝118の巻き方向は、管状部110の外周面に形成された雄ねじ114の巻き方向とは逆である。これにより、本実施形態によれば、例えば、ガイド溝118の巻き方向が雄ねじ114の巻き方向と同じである構成に比べて、ナット部材104がストッパ120から離間する方向に回動される際にコイルスプリング106の第2の端部162が挿入溝116に挿入された状態が解除されることを抑制することができる。
【0044】
図9は、変形例における管状部110aの構成を示す説明図である。図9の中央下段には、管状部110aの斜視図が示されており、右側には、管状部110aのYZ平面構成(正面図)が示されており、左側には、管状部110aのXZ平面構成(左側面図)が示されており、中央上段には、管状部110aのXY平面構成(上面図)が示されている。変形例における管状部110aの外周面には、当接面119aを有する挿入溝116aと、ガイド溝118aとが形成されている。ガイド溝118aの形状は、螺旋状であるが、ガイド溝118aは、ガイド溝118aの幅が全長にわたって略均等な溝とされている。また、挿入溝116aは、そのガイド溝118aに連続的につながった面により構成されている。このため、変形例における管状部110aでは、図9の中央上段に示すように、上方側から見たときに、ガイド溝118aのうち、管状部110aの外周面に現れる溝部分の底面の一部分が、ガイド溝118aを構成する側壁C1,C2に隠れて視認できない。また、下方側から見たときに、ガイド溝118aのうち、管状部110aの外周面に現れる溝部分の底面の一部分が、ガイド溝118aを構成する側壁C3に隠れて視認できない。すなわち、変形例における管状部110aには、アンダーカット部分が存在する。したがって、分割線Bを境に上下に分割された一対の金型(図示せず)を用いて、変形例における管状部110を成形することは非常に困難である。
【0045】
これに対して、本実施形態では、図6の中央上段に示すように、上方側から見たときに、ガイド溝118のうち、管状部110の外周面に現れる溝部分の底面全体が視認可能である。すなわち、変形例における管状部110aの側壁C1,C2が削られている。また、下方側から見たときに、ガイド溝118のうち、管状部110の外周面に現れる溝部分の底面全体が視認可能である。すなわち、変形例における管状部110aの側壁C3が削られている。すなわち、本実施形態の管状部110には、アンダーカット部分が存在しない。したがって、分割線Bを境に上下に分割された一対の金型(図示せず)を用いて、本実施形態の管状部110(カバー部102)を成形することができる。これにより、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0046】
また、本実施形態では、管状部110とストッパ120とは、同一材料により一体形成されている。このため、管状部110とストッパ120とが別体である構成に比べて、ケーブル支持装置100の部品点数を低減することができる。
【0047】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
上記実施形態におけるケーブル支持装置100の構成は、あくまで例示であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、カバー部102は、ハブ130を備えない構成であってもよい。
【0049】
上記実施形態において、ガイド溝118の巻き方向は、管状部110の外周面に形成された雄ねじ114の巻き方向とは同じであってもよい。また、ガイド溝118の形状は、螺旋状に限らず、例えば、ケーブル挿入方向(X軸方向)に沿った直線状であってもよい。また、管状部110は、ガイド溝118が形成されていない構成であってもよい。
【0050】
上記実施形態において、ケーブル挿入方向(X軸方向)に垂直な方向(例えばY軸方向)視で、ガイド溝118の仮想直線L(貫通孔112の軸)に対する傾斜角度は、雄ねじ114(雌ねじ140)の仮想直線Lに対する傾斜角度以上であってもよい。また、ガイド溝118の巻き数は、雄ねじ114の巻き数以上であってもよい。
【0051】
上記実施形態において、ナット部材104の係止部として、切り欠き142を例示したが、これに限らず、例えば係止用凸部など、他の係止手段によってコイルスプリング106の第1の端部160を係止する構成であってもよい。また、ナット部材104とストッパ120とは、互いの少なくとも一部が前後方向(X軸方向)において対向すればよい。
【0052】
上記実施形態において、管状部110とストッパ120とは、別体であり、例えば互いに螺合されている構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態におけるケーブル支持装置100を構成する各部材の形成材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0054】
上記実施形態では、ケーブル支持装置100が支持するケーブルとして、車両用のトランスミッションケーブル(ケーブル1)を例示したが、これに限らず、ケーブルは、例えば、その他の遠隔操作用のケーブル(パーキングブレーキケーブル、フードケーブル、フューエルリッドケーブル、ラゲージケーブルなど)でもよい。また、上記実施形態では、ケーブル支持装置100が装着されるブラケット600の凹部610の形状は、装着凹部612とガイド凹部614とを含む形状であったが、これに限らず、他の形状でもよく、例えば、ガイド凹部614を構成する一対の対向部620同士の幅(凹部610のY軸方向の開口幅)が装着凹部612の直径と略同一である形状であってもよい。
【0055】
また、本明細書において、「垂直」には、厳密な意味での垂直(90度)であることだけではなく、90度に対して±5度程度の誤差を有することも含まれる。また、「対向」には、他の部材を介さずに直接に互いに向き合うことだけでなく、他の部材を介して、互いに向き合うことも含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1:ケーブル 100:ケーブル支持装置 102:カバー部 104:ナット部材 106:コイルスプリング 108:ロック部材 109:スリーブ 109A:球状部 110,110a:管状部 112:貫通孔 114:雄ねじ 116,116a:挿入溝 117:係止対向面 118,118a:ガイド溝 119,119a:当接面 120:ストッパ 122:ロックガイド溝 124:ストッパ側対向面 130:ハブ 140:雌ねじ 142:切り欠き 144:ローレット 146:ナット側対向面 160:第1の端部 162:第2の端部 180:アーム部 182:連結部 184:係合凹部 186:突出部 600:ブラケット 610:凹部 612:装着凹部 614:ガイド凹部 620:対向部 B:分割線 C1,C2,C3:側壁 L:仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9