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特許7157609金属-セラミックス接合基板およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】金属-セラミックス接合基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20221013BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20221013BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20221013BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20221013BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20221013BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221013BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20221013BHJP
   B22D 19/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
C04B37/02 Z
H01L23/12 C
H01L23/36 C
H05K1/02 F
H05K3/10 Z
H05K7/20 C
H01L23/12 J
B22D19/00 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018182237
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020050548
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】井手口 悟
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228551(JP,A)
【文献】特開2009-026957(JP,A)
【文献】特開2005-093965(JP,A)
【文献】特開2011-189354(JP,A)
【文献】特開2005-317890(JP,A)
【文献】特開2002-076551(JP,A)
【文献】特開2001-105124(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093809(WO,A1)
【文献】特開2005-271009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/02
H01L 23/13
B22D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型内に略水平方向に延びるようにセラミックス基板を配置し、このセラミックス基板の表面に接触するようにアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を注湯した後に溶湯を冷却して固化させることにより、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板をセラミックス基板の上面の周縁部と側面および底面の略全面に形成してセラミックス基板に直接接合させるとともに、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板をベース板から離間してセラミックス基板の上面に形成してセラミックス基板に直接接合させることを特徴とする、金属-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項2】
前記鋳型が上側鋳型部材と下側鋳型部材とからなり、上側鋳型部材に前記ベース板の上側部の外形と略同一の形状および大きさのベース板形成用凹部と前記回路パターン用金属板と略同一の形状および大きさの回路パターン形成用凹部が形成され、下側鋳型部材に前記ベース板の下側部の外形と略同一の形状および大きさのベース板形成用凹部が形成され、このベース板形成用凹部の底面の周縁部に互いに離間して複数のセラミックス基板支持部が突設され、これらのセラミックス基板支持部に前記セラミックス基板の底面の周縁部が支持されることを特徴とする、請求項1に記載の金属-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項3】
前記上側鋳型部材のベース板形成用凹部と回路パターン形成用凹部との間にベース板形成用凹部および回路パターン形成用凹部より浅い凹部が溶湯流路として形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の金属-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項4】
前記回路パターン形成用凹部が複数形成され、これらの回路パターン形成用凹部が互いに離間して配置され、前記溶湯流路が、前記回路パターン形成用凹部の全周にわたって、前記ベース板形成用凹部と前記回路パターン形成用凹部との間と前記回路パターン形成用凹部同士の間に延びるように形成されていることを特徴とする、請求項に記載の金属-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項5】
前記上側鋳型部材の前記溶湯流路に対応する部分に、前記鋳型内に配置されたセラミックス基板を保持する保持ピンが突設されていることを特徴とする、請求項に記載の金属-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項6】
前記ベース板を形成して前記セラミックス基板に直接接合させる際に、前記ベース板の底面に、互いに離間して突出する多数の柱状突起部を前記ベース板と一体に形成することを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の金属-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項7】
セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面の周縁部と側面および他方の面の略全面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板と、このベース板から離間してセラミックス基板の一方の面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板とを備え、セラミックス基板の他方の面の周縁部の一部が外部に露出していることを特徴とする、金属-セラミックス接合基板。
【請求項8】
前記セラミックス基板の側面の一部が外部に露出していることを特徴とする、請求項7に記載の金属-セラミックス接合基板。
【請求項9】
前記ベース板の前記セラミックス基板の他方の面に直接接合した部分の前記セラミックス基板と反対側の面に、互いに離間して突出する複数の柱状突起部が、前記ベース板と一体に形成されていることを特徴とする、請求項7または8に記載の金属-セラミックス接合基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属-セラミックス接合基板およびその製造方法に関し、特に、金属部材がセラミックス基板に接合した金属-セラミックス接合基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、電車、工作機械などの大電流を制御するために使用される従来のパワーモジュールでは、ベース板と呼ばれる金属板または複合材の一方の面に金属-セラミックス絶縁基板が半田付けにより固定されるとともに、この金属-セラミックス絶縁基板上に半導体チップが半田付けにより固定され、ベース板の他方の面(裏面)に熱伝導グリースを介してねじ止めなどにより金属製の放熱フィンや冷却ジャケットが取り付けられている。
【0003】
この金属-セラミックス絶縁基板へのベース板や半導体チップの半田付けは加熱により行われるため、半田付けの際に接合部材間の熱膨張係数の差によりベース板の反りが生じ易い。また、半導体チップから発生した熱は、金属-セラミックス絶縁基板と半田とベース板を介して放熱フィンや冷却ジャケットにより空気や冷却水に逃がされるため、半田付けの際にベース板の反りが生じると、放熱フィンや冷却ジャケットをベース板に取り付けたときのクリアランスが大きくなり、放熱性が極端に低下する。
【0004】
このような問題を解消して、金属-セラミックス絶縁基板の信頼性を高めるため、降伏応力が非常に低いアルミニウムをベース板に使用した金属-セラミックス回路基板、例えば、耐力が320MPa以下であり且つ厚さが1mm以上のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板を溶湯法によってセラミックス基板に直接接合した金属-セラミックス回路基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、アルミニウムの降伏応力を小さくするためにはアルミニウムの純度を高くする必要があるが、溶湯法ではアルミニウムの結晶粒径を制御し難く、10mm以上の大きな結晶粒径しか得ることができない。このように結晶粒径が大きいと、結晶粒度分布にばらつきが起こり、半導体チップなどを半田付けする際などの加熱によるアルミニウムベース板の反りにばらつきがある。
【0006】
このような問題を解消するため、鋳型内にセラミックス基板を配置し、このセラミックス基板の両面の所定の部分に接触するようにアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を注湯した後に溶湯を冷却して固化させることにより、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板をセラミックス基板の一方の面の周縁部と側面および他方の面の略全面に形成してセラミックス基板に直接接合させるとともに、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板をベース板から離間してセラミックス基板の一方の面に形成してセラミックス基板に直接接合させることにより、セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面の周縁部と側面および他方の面の略全面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板と、このベース板から離間してセラミックス基板の一方の面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板とを備えた金属-セラミックス接合基板を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-76551号公報(段落番号0015-0017)
【文献】特開2017-228551号公報(段落番号0009-0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の方法により製造された金属-セラミックス接合基板では、パワーモジュールに組み込むときに、回路パターン用金属板側のベース板のセラミックス基板に対応する部分の外側(内部にセラミックス基板が配置されていない部分)にケースを取り付ける必要があるため、金属-セラミックス接合基板のベース板を小型化するのが困難になるとともに、回路パターン用金属板と反対側のベース板のセラミックス基板に対応する部分の外側(内部にセラミックス基板が配置されていない部分)に水冷ジャケットを取り付ける必要があるため、水冷ジャケットを取り付けるベース板の強度が不足するという問題がある。
【0009】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、セラミックス基板の一方の面の周縁部と側面および他方の面の略全面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板から離間してアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板がセラミックス基板の一方の面に直接接合した金属-セラミックス接合基板のベース板を小型化することができる、金属-セラミックス接合基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、鋳型内に略水平方向に延びるようにセラミックス基板を配置し、このセラミックス基板の表面に接触するようにアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を注湯した後に溶湯を冷却して固化させることにより、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板をセラミックス基板の上面の周縁部と側面および底面の略全面に形成してセラミックス基板に直接接合させるとともに、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板をベース板から離間してセラミックス基板の上面に形成してセラミックス基板に直接接合させるにより、セラミックス基板の一方の面の周縁部と側面および他方の面の略全面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板から離間してアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板がセラミックス基板の一方の面に直接接合した金属-セラミックス接合基板のベース板を小型化することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明による金属-セラミックス接合基板の製造方法は、鋳型内に略水平方向に延びるようにセラミックス基板を配置し、このセラミックス基板の表面に接触するようにアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を注湯した後に溶湯を冷却して固化させることにより、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板をセラミックス基板の上面の周縁部と側面および底面の略全面に形成してセラミックス基板に直接接合させるとともに、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板をベース板から離間してセラミックス基板の上面に形成してセラミックス基板に直接接合させることを特徴とする。
【0012】
この金属-セラミックス接合基板の製造方法において、鋳型が上側鋳型部材と下側鋳型部材とからなり、上側鋳型部材にベース板の上側部の外形と略同一の形状および大きさのベース板形成用凹部と回路パターン用金属板と略同一の形状および大きさの回路パターン形成用凹部が形成され、下側鋳型部材にベース板の下側部の外形と略同一の形状および大きさのベース板形成用凹部が形成され、このベース板形成用凹部の底面の周縁部に互いに離間して複数のセラミックス基板支持部が突設され、これらのセラミックス基板支持部にセラミックス基板の底面の周縁部が支持されるようにするのが好ましい。また、ベース板を形成してセラミックス基板に直接接合させる際に、ベース板の底面に、互いに離間して突出する多数の柱状突起部をベース板と一体に形成してもよい。また、上側鋳型部材のベース板形成用凹部と回路パターン形成用凹部との間にベース板形成用凹部および回路パターン形成用凹部より浅い凹部が溶湯流路として形成されているのが好ましい。また、回路パターン形成用凹部を複数形成し、これらの回路パターン形成用凹部を互いに離間して配置し、上記の溶湯流路を、回路パターン形成用凹部の全周にわたって、ベース板形成用凹部と回路パターン形成用凹部との間と回路パターン形成用凹部同士の間に延びるように形成してもよい。この場合、上側鋳型部材の溶湯流路に対応する部分に、鋳型内に配置されたセラミックス基板を保持する保持ピンを突設させるのが好ましい。
【0013】
また、本発明による金属-セラミックス接合基板は、セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面の周縁部と側面および他方の面の略全面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板と、このベース板から離間してセラミックス基板の一方の面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板とを備え、セラミックス基板の他方の面の周縁部の一部が外部に露出していることを特徴とする。
【0014】
この金属-セラミックス接合基板において、セラミックス基板の側面の一部が外部に露出してもよい。また、ベース板のセラミックス基板の他方の面に直接接合した部分のセラミックス基板と反対側の面に、互いに離間して突出する複数の柱状突起部を、ベース板と一体に形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、セラミックス基板の一方の面の周縁部と側面および他方の面の略全面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板から離間してアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる回路パターン用金属板がセラミックス基板の一方の面に直接接合した金属-セラミックス接合基板のベース板を小型化することができる、金属-セラミックス接合基板およびその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本発明による金属-セラミックス接合基板の実施の形態の平面図である。
図1B図1Aの金属-セラミックス接合基板の底面図である。
図1C図1Bの金属-セラミックス接合基板のIC-IC線断面図である。
図2A図1Aの金属-セラミックス接合基板を製造するために使用する鋳型の断面図である。
図2B図2Aの鋳型の下側鋳型部材の平面図である。
図2C図2Aの鋳型の上側鋳型部材の底面図である。
図3A図2Aの鋳型の変形例を示す断面図である。
図3B図3Aの鋳型の下側鋳型部材の平面図である。
図3C図3Aの鋳型の上側鋳型部材の底面図である。
図3D図3Aの鋳型の上側鋳型部材の保持ピンを拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明による金属-セラミックス接合基板およびその製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1A図1Cは、本発明による金属-セラミックス接合基板の実施の形態を示し、図2A図2Cは、その金属-セラミックス接合基板を製造するために使用する鋳型を示している。
【0019】
図1A図1Cに示すように、本発明による金属-セラミックス接合基板の実施の形態は、平面形状が略矩形のセラミックス基板10と、このセラミックス基板10の上面(回路パターン側の面)の周縁部と側面および底面(裏面)の略全面に直接接合した平面形状が略矩形のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるベース板(アルミニウムベース板)12と、セラミックス基板10の上面の周縁部に直接接合したベース板12から離間してセラミックス基板10の上面に直接接合したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる1以上(図示した実施の形態では2つ)の回路パターン用金属板(回路パターン用アルミニウム板)14とを備えている。
【0020】
また、ベース板12の底面には、(放熱フィンとしての)多数の柱状突起部12aが突出するように一体に形成されている。各々の柱状突起部12aは、略円柱形状または略円錐台形状(略円錐の上端を底面と略平行に切断した形状)を有し、ベース板12の底面に対して略垂直方向に延びている。また、柱状突起部12aは、それぞれ所定の間隔で離間して一列に配置された柱状突起部12aの複数列が互いに平行に且つ隣接する柱状突起部12aの列と互いに半ピッチ(隣接する柱状突起部12aの中心線(柱状突起部12aが延びる軸線)間の距離の半分)ずれるように配置され、隣接する柱状突起部12aの間隔を確保しながらより多くの柱状突起部12aが配置されるようにしているが、隣接する柱状突起部12aの間隔を確保しながら多数の柱状突起部12aを配置することができれば、他の配置でもよい。
【0021】
この金属-セラミックス接合基板の実施の形態は、図2A図2Cに示すような鋳型20内にセラミックス基板10を配置し、セラックス基板10の両面のベース板12と回路パターン用金属板14に対応する部分に接触するように、アルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を流し込んで冷却することによって製造することができる。
【0022】
図2Aに示すように、鋳型20は、(多孔質の)カーボンまたは多孔質金属などの(溶湯不透過の)通気性材料からなり、それぞれ平面形状が略矩形の下側鋳型部材22と上側鋳型部材24とから構成されている。
【0023】
図2Aおよび図2Bに示すように、下側鋳型部材22の上面には、ベース板12(のセラミックス基板10の側面側の部分の下側部と底面(裏面)側の部分)を形成するための(ベース板形成用)凹部(ベース板形成部)22aが形成されている。このベース板形成部22aの底面には、多数の柱状突起部12aを形成するための(柱状突起形成用)凹部(柱状突起形成部)22bが形成されている。また、ベース板形成部22aの底面には、セラミックス基板10の長手方向両端部を支持する平面形状が略矩形の複数(図示した実施の形態では2対)の基板支持部(長手方向基板支持部)22cと、セラミックス基板10の幅方向両端部を支持する平面形状が略矩形の複数(図示した実施の形態では2対)の基板支持部(幅方向基板支持部)22dが、その底面から略垂直方向に突出して形成されている。これらの基板支持部22cおよび22dは、セラミックス基板10の底面の周縁部と側面に当接してセラミックス基板10を所定の位置で支持するために、それぞれ略L字型の断面を有するように段差が設けられている。なお、これらの基板支持部22cおよび22d上にセラミックス基板10を載置しても、セラミックス基板10の上面(回路パターン側の面)の周縁部と側面および底面(裏面)の略全面の周囲にベース板形成部22aが確保されるようになっている。
【0024】
図2Aおよび図2Cに示すように、上側鋳型部材24の底面には、ベース板12(のセラミックス基板10の側面側の部分の上側部と上面(回路パターン側の面)の周縁部側の部分)を形成するための(ベース板形成用)凹部(ベース板形成部)24aと、回路パターン用金属板14を形成するための(回路パターン形成用)凹部(回路パターン用金属板形成部)24bが形成されている。この回路パターン用金属板形成部24bは、ベース板形成部24aから離間しており、ベース板12(の回路パターン側の部分)と回路パターン用金属板14との間の絶縁を確保するようになっている。
【0025】
なお、上側鋳型部材24には、(図示しない)注湯ノズルから上側鋳型部材24のベース板形成部24aおよび回路パターン用金属板形成部24bと下側鋳型部材22のベース板形成部22a(および柱状突起形成部22b)内に溶湯を注湯するための(図示しない)注湯口が形成されている。また、上側鋳型部材24には、ベース板形成部24aと回路パターン用金属板形成部24bとの間と回路パターン用金属板形成部24b同士の間に延びる溶湯流路24cが(ベース板形成部24aおよび回路パターン用金属板形成部24bより浅く)形成されている。なお、図1Aおよび図1Cでは、溶湯流路24cに対応する部分を除去した後の金属-セラミックス接合基板を示している。
【0026】
このような鋳型20を使用して図1A図1Cに示す実施の形態の金属-セラミックス接合基板を製造するためには、まず、下側鋳型部材22の基板支持部22cおよび22d上にセラミックス基板10を配置した後、上側鋳型部材24を下側鋳型部材22に被せる。この状態で鋳型20内にアルミニウムまたはアルミニウム合金の溶湯を流し込んで冷却すると、セラミックス基板10の上面(回路パターン側の面)の周縁部と側面および底面(裏面)の略全面にベース板12が直接接合するとともに、そのベース板12(の回路パターン側の部分)から離間してセラミックス基板10に回路パターン用金属板14が直接接合した金属-セラミックス接合基板を製造することができる。なお、ベース板12には、基板支持部22cおよび22dに対応する複数の凹部12bが形成されてセラミックス基板10の周縁部の一部が露出しているが、これらの凹部12bは小さいため、金属-セラミックス接合基板の信頼性や熱伝導率に殆ど影響しない。
【0027】
また、図3A図3Dに示す鋳型30を使用して金属-セラミックス接合基板を製造してもよい。この鋳型30の上側鋳型部材34には、鋳型20の溶湯流路24cに代えて、回路パターン用金属板形成部34bの全周にわたって、ベース板形成部34aと回路パターン用金属板形成部34bとの間と回路パターン用金属板形成部34b同士の間に延びる溶湯流路34cが形成されている。このように溶湯流路34cを形成すると、鋳型30内に溶湯を流し込んだときにセラミックス基板10が浮き上がるおそれがあるので、そのようなセラミックス基板10の浮き上がりを防止するために、鋳型30の上側鋳型部材34の溶湯流路34cに対応する部分に少なくとも1つ(図示した実施の形態では5つ)の(略円筒形の)保持ピン34dが、上側鋳型部材34から(鋳型30内に配置された)セラミックス基板10の方に突設して、セラミックス基板10に当接(またはセラミックス基板10から0.3mm以下(好ましくは0.1mm以下)の距離で離間して近接)するようになっている。その他の構成は、上述した図2A図2Cの鋳型20と略同一であるので、図3A図3Dにおいて、参照符号に10を加えてその説明を省略する。
【0028】
なお、上記の金属-セラミックス接合基板およびその製造方法の実施の形態において、セラミックス基板として、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化珪素などを主成分とするセラミックス基板を使用することができる。
【0029】
また、上記の金属-セラミックス接合基板の製造方法の実施の形態により製造した金属-セラミックス接合基板を鋳型から取り出した後、機械加工や薬液によるエッチングなどにより、鋳型の溶湯流路に対応する部分を除去する。エッチングにより溶湯流路に対応する部分を除去する場合には、回路パターン用金属板とベース板の表面にエッチングレジストを形成してエッチングしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 セラミックス基板
12 ベース板
12a 柱状突起部
12b 凹部
14 回路パターン用金属板
20、30 鋳型
22、32 下側鋳型部材
22a、32a ベース板形成用凹部(ベース板形成部)
22b、32b 柱状突起形成用凹部(柱状突起形成部)
22c、32c 長手方向基板支持部
22d、32d 幅方向基板支持部
24、34 上側鋳型部材
24a、34a ベース板形成用凹部(ベース板形成部)
24b、34b 回路パターン形成用凹部(回路パターン用金属板形成部)
24c、34c 溶湯流路
34d 保持ピン
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D