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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】サスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/58 20060101AFI20221013BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
F16F9/58 B
F16F9/32 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018235808
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020097976
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗原 健太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀謙
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特公昭57-10294(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/102861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/58
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと前記シリンダから突出するロッドとを有し、車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバと、
前記ロッドの先端に取り付けられるアッパーマウントと、
前記シリンダの外周面に取り付けられるスプリングガイドと、
前記スプリングガイドと前記アッパーマウントとの間に設けられ、前記車体を弾性支持するコイルスプリングと、
前記シリンダの端部に取り付けられるバンプキャップと、
前記ロッドに取り付けられ、前記ショックアブソーバが所定量だけ収縮したときに前記バンプキャップに当たることにより前記ショックアブソーバの縮み側のストロークを規制するバンプストッパと、を備え、
前記スプリングガイドは、前記ショックアブソーバが挿通する挿通孔を有し、
前記バンプキャップは、前記スプリングガイドに当接し前記スプリングガイドの軸方向の移動を規制する規制部を有し、
前記シリンダの外周には、前記スプリングガイドを支持する支持リングが固定され、
前記スプリングガイドは、前記支持リングと前記バンプキャップとによって軸方向に挟持される
ことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサスペンション装置において、
前記バンプキャップは、前記シリンダと前記挿通孔との間の隙間を閉塞する
ことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のサスペンション装置において、
前記規制部は、前記スプリングガイドの径方向の移動を規制する
ことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項4】
請求項3に記載のサスペンション装置において、
前記規制部における前記スプリングガイドに当接する面、及び、前記スプリングガイドにおける前記規制部に当接する面の少なくとも一方は、軸方向に直交する平面に対して傾斜する傾斜面である
ことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のサスペンション装置において、
前記スプリングガイドは、内周が前記挿通孔とされた筒状の筒部を有し、
前記規制部は、筒状であり、
前記規制部の端部が前記筒部の端部に当接することにより、前記スプリングガイドの軸方向の移動が規制される
ことを特徴とするサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ショックアブソーバのまわりに同心円状に配設されるコイルスプリングを備えたストラット型のダンパ(サスペンション装置)が知られている(特許文献1参照)。コイルスプリングは、ダンパのアッパースプリングシートとロアスプリングシートとの間に配置される。ロアスプリングシート(スプリングガイド)は、コイルスプリングを支持する環状部材と、環状部材から延在する管状部材と、を備える。管状部材は、ショックアブソーバのアウターチューブの周囲に配置される。管状部材の端部は、アウターチューブに溶接された支持リングに当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0023529
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のサスペンション装置は、スプリングガイドがコイルスプリングと支持リングとの間で挟まれた状態で使用される。このため、サスペンション装置の使用中に、スプリングガイドがショックアブソーバのシリンダから外れてしまうことはない。
【0005】
しかしながら、サスペンション装置を組み立てる際、ショックアブソーバのシリンダにスプリングガイドを嵌合させた状態であって、コイルスプリングが取り付けられる前の状態では、スプリングガイドに外力が作用することにより、スプリングガイドがショックアブソーバから外れてしまうおそれがある。その結果、サスペンション装置の組み立て作業の効率が悪化するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、サスペンション装置の組み立て作業の効率を向上すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サスペンション装置であって、車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバと、ロッドの先端に取り付けられるアッパーマウントと、シリンダの外周面に取り付けられるスプリングガイドと、スプリングガイドとアッパーマウントとの間に設けられ、車体を弾性支持するコイルスプリングと、シリンダの端部に取り付けられるバンプキャップと、ロッドに取り付けられ、ショックアブソーバが所定量だけ収縮したときにバンプキャップに当たることによりショックアブソーバの縮み側のストロークを規制するバンプストッパと、を備え、スプリングガイドは、ショックアブソーバが挿通する挿通孔を有し、バンプキャップは、スプリングガイドに当接しスプリングガイドの軸方向の移動を規制する規制部を有し、シリンダの外周には、スプリングガイドを支持する支持リングが固定され、スプリングガイドは、支持リングとバンプキャップとによって軸方向に挟持されることを特徴とする。
【0008】
この発明では、シリンダの端部に取り付けられるバンプキャップによって、スプリングガイドの軸方向の移動が規制される。このため、バンプキャップとは別に、スプリングガイドの移動を規制する部材を設けることなく、スプリングガイドに外力が作用したときに、スプリングガイドがショックアブソーバから外れてしまうことを防止することができる。
【0009】
本発明は、バンプキャップが、シリンダと挿通孔との間の隙間を閉塞することを特徴とする。
【0010】
この発明では、バンプキャップによって、シリンダと挿通孔との間の隙間に、砂、水等の異物が侵入することを防止することができる。
【0011】
本発明は、規制部が、スプリングガイドの径方向の移動を規制することを特徴とする。
【0012】
この発明では、バンプキャップの規制部によってスプリングガイドの径方向の移動が規制されるので、スプリングガイドの径方向の移動を規制するための専用の部材を設ける必要がない。
【0013】
本発明は、規制部におけるスプリングガイドに当接する面、及び、スプリングガイドにおける規制部に当接する面の少なくとも一方が、軸方向に直交する平面に対して傾斜する傾斜面であることを特徴とする。
【0014】
この発明では、シリンダに対するスプリングガイドの位置決め精度を向上することができる。
【0015】
本発明は、スプリングガイドが、内周が挿通孔とされた筒状の筒部を有し、規制部が、筒状であり、規制部の端部が筒部の端部に当接することにより、スプリングガイドの軸方向の移動が規制されることを特徴とする。
【0016】
この発明では、スプリングガイドの筒部と、バンプキャップの筒状の規制部とが当接するため、スプリングガイドの筒部に作用する荷重を均等にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、サスペンション装置の組み立て作業の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るサスペンション装置の部分断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るスプリングガイドの斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るスプリングガイドとバンプキャップとの当接部を拡大して示す拡大断面模式図である。
図4】中間組立体を運搬する様子を説明する図である。
図5A】本発明の実施形態の変形例1-1に係るスプリングガイドとバンプキャップとの当接部を拡大して示す拡大断面模式図である。
図5B】本発明の実施形態の変形例1-2に係るスプリングガイドとバンプキャップとの当接部を拡大して示す拡大断面模式図である。
図6A】本発明の実施形態の変形例1-3に係るスプリングガイドとバンプキャップとの当接部を拡大して示す拡大断面模式図である。
図6B】本発明の実施形態の変形例1-4に係るスプリングガイドとバンプキャップとの当接部を拡大して示す拡大断面模式図である。
図7A】本発明の実施形態の変形例2-1に係るスプリングガイドの筒部を上方から見た平面模式図である。
図7B】本発明の実施形態の変形例2-2に係るバンプキャップを下方から見た平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るサスペンション装置10について説明する。
【0020】
図1は、サスペンション装置10の部分断面図である。図1に示すように、サスペンション装置10は、自動車(図示せず)に取り付けられ、車輪(図示せず)を位置決めするとともに減衰力を発生させて車両走行中に路面から受ける衝撃や振動を吸収して車体を安定的に懸架する装置である。
【0021】
サスペンション装置10は、車体と車輪との間に設けられるストラット式のショックアブソーバ1と、ショックアブソーバ1のピストンロッド(以下、ロッドと記す)1aの先端に取り付けられるアッパーマウント2と、ショックアブソーバ1のシリンダ1bの外周面に取り付けられるスプリングガイド100と、スプリングガイド100とアッパーマウント2との間に設けられ、車体を弾性支持するコイルスプリング4と、ロッド1aに嵌装されショックアブソーバ1の縮み側のストロークを規制するバンプストッパ5と、シリンダ1bのロッド1a側の端部に嵌装されるキャップ部材としてのバンプキャップ160と、ロッド1aを保護する筒状のカバー部材としてのダストブーツ7と、を備える。
【0022】
ショックアブソーバ1は、シリンダ1bと、シリンダ1bの開口部142(図3参照)から突出する円柱状のロッド1aと、を有する。ショックアブソーバ1は、複筒型のショックアブソーバであり、シリンダ1bは、シリンダ1bの外郭を構成する有底円筒状のアウターチューブ11oと、アウターチューブ11oの内側に設けられるインナーチューブ11i(図3参照)と、を有する。ロッド1aの下端部には、インナーチューブ11i内を伸側室と圧側室とに区画するピストン(不図示)が連結されている。
【0023】
ロッド1aは、アウターチューブ11oの開口端部に設けられるロッド保持部145(図3参照)により、摺動自在に支持される。ロッド保持部145は、ダストシール、オイルシール、軸受等が積層された積層構造とされる。ロッド保持部145及びインナーチューブ11iは、アウターチューブ11oの上端部を内側にかしめることにより形成されるかしめ部141(図3参照)と、アウターチューブ11oの底部とによって軸方向に挟持される。
【0024】
図1に示すように、シリンダ1bのロッド1a側とは反対側の端部には、車輪を保持するハブキャリア(図示せず)とショックアブソーバ1とを連結するためのブラケット1cが設けられる。説明の便宜上、アッパーマウント2側をサスペンション装置10の上側、ブラケット1c側をサスペンション装置10の下側として上下方向を図示するように規定する。なお、サスペンション装置10の上下方向は、サスペンション装置10の軸方向(中心軸方向)であり、ショックアブソーバ1の伸縮方向である。また、サスペンション装置10の径方向(ショックアブソーバ1の径方向)は、サスペンション装置10の軸方向に直交する。
【0025】
ショックアブソーバ1は、アッパーマウント2を介して車体に連結されるとともに、ブラケット1cによりハブキャリアに連結されて車両に組み付けられる。このように構成されたショックアブソーバ1は、ロッド1aがシリンダ1bに対して軸方向(図1の上下方向)に移動したときに、減衰力が発生するように構成されている。サスペンション装置10は、このショックアブソーバ1の減衰力によって車体の振動を素早く減衰させる。
【0026】
コイルスプリング4は、アッパーマウント2とスプリングガイド100との間に圧縮状態で挟持され、ショックアブソーバ1を伸長方向に付勢する。アッパーマウント2とコイルスプリング4との間にはラバーシート8が設けられる。これにより、アッパーマウント2とコイルスプリング4とが直接当接しないようになっている。スプリングガイド100とコイルスプリング4との間には円弧状のラバーシート40が設けられる。これにより、スプリングガイド100とコイルスプリング4とが直接当接しないようになっている。
【0027】
図2は、スプリングガイド100の斜視図である。図1及び図2に示すように、スプリングガイド100は、シリンダ1bの外周に固定される樹脂製の皿状の部材である。スプリングガイド100は、コイルスプリング4を支持する円板状のベース部110と、ベース部110の外縁から上側(アッパーマウント2側)に延在する側壁111と、ベース部110をサスペンション装置10の軸方向(上下方向)に貫通するように設けられ、ショックアブソーバ1のシリンダ1bが挿通する開口部である挿通孔120と、ベース部110から上方及び下方に突出し挿通孔120を囲むように形成される円筒状の筒部112と、有底円筒形状のハブ113と、を備える。
【0028】
ベース部110におけるハブ113の周囲は、ラバーシート40が取り付けられる取付領域とされる。ベース部110には、ラバーシート40の位置を規制する位置規制部(不図示)が設けられる。ラバーシート40は、ゴムなどの弾性を有する材料によって形成される。ラバーシート40には、その断面がコイルスプリング4の断面形状に沿うように湾曲して形成される着座部40a(図1参照)が設けられる。スプリングガイド100には、軽量化、及びベース部110に溜まった水を抜くために複数の貫通孔(不図示)が形成される。
【0029】
ベース部110から軸方向に突出する筒部112は、その内周が円形状の挿通孔120とされている。図1に示すように、挿通孔120は、スプリングガイド100をシリンダ1bの外周に固定したときに、スプリングガイド100の中心から車体側に偏心した位置になるように形成される。
【0030】
シリンダ1bの外周には、金属製の支持リング3が溶接により固定されている。スプリングガイド100は、挿通孔120がシリンダ1bの外周に嵌合され、スプリングガイド100の筒部112の下端部が支持リング3によって支持されることで、シリンダ1bの外周に固定される。
【0031】
なお、シリンダ1bと挿通孔120のはめあい、具体的にはシリンダ1bと挿通孔120に形成されるリブ122(図2参照)とのはめあいは、「すきまばめ」であってもよいし、「しまりばめ」であってもよい。「しまりばめ」を採用する場合、挿通孔120とシリンダ1bとの間のガタがなくなり、ガタによる異音の発生を防止することができる。また、サスペンション装置10の動作の応答性を向上することもできる。
【0032】
スプリングガイド100は、上方からシリンダ1bに嵌め込まれ、支持リング3に当接することで、シリンダ1bに取り付けられる。換言すれば、シリンダ1bは、スプリングガイド100の挿通孔120の下部開口端125Lから挿入される。つまり、下部開口端125Lは、シリンダ1bが挿入される入口であり、下部開口端125Lの反対側の開口端である上部開口端125Uからシリンダ1bの上端部が突出する。
【0033】
図2に示すように、挿通孔120には、その内周面121から径方向内側に向かって突出する凸部としてのリブ122が設けられる。リブ122は、ショックアブソーバ1のシリンダ1bの外周面を支持する支持部として機能する。各リブ122は、挿通孔120の軸方向(すなわち、サスペンション装置10の軸方向)に沿って直線状に設けられる。
【0034】
リブ122は、例えば、その断面形状が丸みを帯びた台形状あるいは半円形状となるように形成され、シリンダ1bの外周面に線接触する。リブ122は、挿通孔120の周方向に沿って等間隔で複数配置される。このため、スプリングガイド100は、挿通孔120の中心軸がシリンダ1bの中心軸に一致するように位置決めされる。
【0035】
バンプストッパ5は、弾性を有するゴム、樹脂等の弾性材によって形成される。バンプストッパ5は、ロッド1aに取り付けられ、ショックアブソーバ1が所定量だけ収縮したときにバンプキャップ160に当たることによりショックアブソーバ1の縮み側のストロークを規制する。ショックアブソーバ1の最収縮時には、バンプストッパ5がバンプキャップ160に接触して弾性変形するため、最収縮時の衝撃が緩和される。
【0036】
図3は、スプリングガイド100とバンプキャップ160との当接部を拡大して示す拡大断面模式図である。図1及び図3に示すように、バンプキャップ160は、アウターチューブ11oの開口部142を覆うように、シリンダ1bのロッド1a側の端部(上端部)に取り付けられる。バンプキャップ160は、樹脂により形成される。
【0037】
なお、本実施形態では、バンプキャップ160は、スプリングガイド100よりも柔軟性を有する材料により形成される。バンプキャップ160の材料の弾性率(ヤング率)は、スプリングガイド100の材料の弾性率(ヤング率)よりも低い。
【0038】
バンプキャップ160は、円筒状の嵌合部161と、嵌合部161の上端部から径方向内側に向かって延在する円環状の環状部164と、を有する。
【0039】
シリンダ1bの上端部は、嵌合部161の内周に圧入される。バンプキャップ160は、嵌合部161の下端部がスプリングガイド100の筒部112の上端部に当接した状態で、シリンダ1bの上端部に取り付けられる。
【0040】
このため、スプリングガイド100は、支持リング3(図1参照)とバンプキャップ160とによって軸方向に挟持される。つまり、嵌合部161は、スプリングガイド100の筒部112の上端部に当接し、シリンダ1bに対するスプリングガイド100の軸方向の移動を規制する規制部として機能する。
【0041】
図4に示すように、サスペンション装置10を組み立てる工程において、ショックアブソーバ1のシリンダ1bにスプリングガイド100を嵌合させた状態の中間組立体90を吊り具91により吊り上げ、所定の場所まで運搬することがある。中間組立体90には、コイルスプリング4、アッパーマウント2、バンプストッパ5等が取り付けられていない。
【0042】
吊り具91は、スプリングガイド100のベース部110を下方から持ち上げるように支持し、中間組立体90を吊り上げる。本実施形態では、スプリングガイド100の筒部112の上端部が、バンプキャップ160の嵌合部161の下端部に当接している。このため、吊り具91からスプリングガイド100に上向きの外力が作用した場合であっても、スプリングガイド100がシリンダ1bから外れてしまうことを防止することができる。
【0043】
車両は様々な環境で使用される。例えば、降雪の多い地域において車両が走行する場合、サスペンション装置10は、融雪剤を含んだ水と接触することがある。融雪剤は塩化カルシウムを含んでいる。このため、シリンダ1bの外周と挿通孔120の内周との間に塩化カルシウムを含んだ水が侵入してしまうと、挿通孔120の内周が劣化し、損傷してしまうおそれがある。
【0044】
本実施形態では、図3に示すように、バンプキャップ160の嵌合部161の下端面が、挿通孔120の上部開口縁部(筒部112の端面)の全周に亘って当接している。バンプキャップ160は、スプリングガイド100の挿通孔120の上部開口縁部に密着し、シリンダ1bの外周と挿通孔120との間の隙間を閉塞する。
【0045】
このため、バンプキャップ160によって、シリンダ1bと挿通孔120との間の隙間に、砂、水等の異物が侵入することを防止することができる。したがって、シリンダ1bの外周と挿通孔120の内周との間の隙間に異物が侵入することに起因した劣化、損傷を防止することができる。
【0046】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0047】
(1)バンプキャップ160の嵌合部161の下端部が、スプリングガイド100の筒部112の上端部に当接することにより、シリンダ1bに対するスプリングガイド100の軸方向の移動が規制される。この構成によれば、サスペンション装置10の組み立て作業において、シリンダ1bの上端部に取り付けられるバンプキャップ160によって、スプリングガイド100の軸方向の移動を規制することができる。
【0048】
このため、バンプキャップ160とは別に、スプリングガイド100の移動を規制する部材を設ける必要がない。つまり、部品点数を増加させることなく、スプリングガイド100に外力が作用したときに、スプリングガイド100がショックアブソーバ1から外れてしまうことを防止することができる。サスペンション装置10の組み立て作業において、スプリングガイド100がショックアブソーバ1から外れてしまうことを防止できるので、サスペンション装置10の組み立て作業の効率を向上することができる。
【0049】
また、サスペンション装置10の組み立て作業において、吊り具91によってスプリングガイド100を支持し、中間組立体90を吊り上げ、所定の場所まで運搬するという工程を採用することもできるので、サスペンション装置10の組み立て作業の自由度が高い。
【0050】
(2)本実施形態では、スプリングガイド100の筒部112と、バンプキャップ160の筒状の嵌合部161とが当接している。このため、スプリングガイド100に対して、下側から上方に向かう外力が作用したときに、スプリングガイド100の筒部112に作用する荷重を周方向に均等にすることができる。
【0051】
このため、スプリングガイド100とバンプキャップ160とを局所的に当接させる場合に比べて、スプリングガイド100がシリンダ1bから外れてしまうことを、効果的に防止することができる。
【0052】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0053】
<変形例1>
上記実施形態では、バンプキャップ160が、スプリングガイド100の軸方向の移動のみを規制する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。以下で説明するように、バンプキャップ260,360が、スプリングガイド200,300の径方向の移動を規制するようにしてもよい。
【0054】
<変形例1-1>
図5Aに示すように、バンプキャップ260の嵌合部261の下端面261a、及び、スプリングガイド200の筒部212の上端面212aは、サスペンション装置10の軸方向に直交する平面に対して傾斜する傾斜面としてもよい。
【0055】
本変形例では、嵌合部261の下端面261aが、嵌合部261の内径が下方に向かって徐々に大きくなるように、傾斜している。また、筒部212の上端面212aが、筒部212の外径が上方に向かって徐々に小さくなるように傾斜している。つまり、互いに当接する嵌合部261及び筒部212の傾斜面は、下方に向かって径方向外側に傾斜している。
【0056】
嵌合部261の下端面261aと筒部212の上端面212aとは、軸方向に直交する平面に対する傾斜角度が同じであり、下端面261aと上端面212aとは面接触している。
【0057】
つまり、本変形例では、バンプキャップ260の嵌合部261におけるスプリングガイド200に当接する面である下端面261a、及び、スプリングガイド200の筒部212における嵌合部261に当接する面である上端面212aの双方が、軸方向に直交する平面に対して傾斜する傾斜面とされている。したがって、本変形例では、バンプキャップ260によって、スプリングガイド200の軸方向及び径方向の移動が規制される。
【0058】
スプリングガイド200は、シリンダ1bに嵌合され、支持リング3上に載置される。その後、バンプキャップ260をシリンダ1bの上端部に圧入する。このとき、嵌合部261の下端面261aと筒部212の上端面212aとが接触することにより、スプリングガイド200の挿通孔120の中心軸がシリンダ1bの中心軸に一致するように、スプリングガイド200が移動し、適切な位置決めがなされる。つまり、本変形例によれば、シリンダ1bに対するスプリングガイド200の位置決め精度を向上することができる。
【0059】
本変形例では、バンプキャップ260をシリンダ1bの上端部に装着することにより、スプリングガイド200の筒部212が精度良くセンタリングされる。このため、コイルスプリング4を介して上方からスプリングガイド100に荷重が作用したときに、スプリングガイド200の筒部212に偏荷重が作用することを防止することができる。
【0060】
また、本変形例では、バンプキャップ260の嵌合部261によってスプリングガイド200の径方向の移動が規制されるので、スプリングガイド200の径方向の移動を規制するための専用の部材を設ける必要がない。
【0061】
<変形例1-2>
上記変形例1-1では、嵌合部261及び筒部212の傾斜面が、下方に向かって径方向外側に傾斜する例について説明したが、図5Bに示すように、下方に向かって径方向内側に傾斜するようにしてもよい。このような構成であっても、バンプキャップ260をシリンダ1bの上端部に装着することにより、シリンダ1bに対し、スプリングガイド200を精度良く位置決めすることができる。
【0062】
<変形例1-3>
上記変形例1-1及び変形例1-2では、嵌合部261及び筒部212の双方に、傾斜面が設けられる例について説明したが、嵌合部261及び筒部212の少なくとも一方に、傾斜面を設けることもできる。
【0063】
図6Aに示すように、本変形例では、バンプキャップ260の嵌合部261の下端面261aは傾斜面であるのに対し、スプリングガイド300の筒部312の上端面312aは、上側に凸の湾曲面とされる。
【0064】
<変形例1-4>
図6Bに示すように、本変形例では、スプリングガイド200の筒部212の上端面212aは傾斜面であるのに対し、バンプキャップ360の嵌合部361の下端面361aは、下側に凸の湾曲面とされる。
【0065】
変形例1-3及び変形例1-4では、嵌合部261及び筒部212の少なくとも一方に、傾斜面を設けることにより、上記変形例1-1及び変形例1-2と同様の作用効果を得ることができる。なお、上記変形例1-1及び変形例1-2では、筒部212と嵌合部261とが面接触するため、変形例1-3及び変形例1-4に比べて、シリンダ1bの外周と挿通孔120の内周との間の隙間に異物が侵入することを、より効果的に防止することができる。
【0066】
<変形例2>
上記実施形態では、バンプキャップ160の嵌合部161の下端部が、挿通孔120の上部開口縁部(筒部112の端面)の全周に亘って当接する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0067】
<変形例2-1>
例えば、図7Aに示すように、スプリングガイド400の筒部412に、挿通孔120の上部開口縁部から上方に突出する突出部412bを複数設け、突出部412bをバンプキャップ160に当接させるようにしてもよい。
【0068】
<変形例2-2>
図7Bに示すように、バンプキャップ460に、嵌合部161の下端面から下方に突出する突出部461bを複数設け、突出部461bを筒部112に当接させるようにしてもよい。この場合、突出部461bが、スプリングガイド100に当接しスプリングガイド100の軸方向の移動を規制する規制部として機能する。
【0069】
<変形例3>
上記実施形態では、スプリングガイド100が樹脂製である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、スプリングガイド100は、金属により形成してもよい。
【0070】
<変形例4>
リブ122の断面形状は、上記実施形態に限定されない。リブ122の断面形状は、種々の形状を採用することができる。例えば、リブ122の断面形状は、丸みを帯びた三角形状であってもよい。
【0071】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、および効果をまとめて説明する。
【0072】
サスペンション装置10は、シリンダ1bとシリンダ1bから突出するロッド1aとを有し、車体と車輪との間に設けられるショックアブソーバ1と、ロッド1aの先端に取り付けられるアッパーマウント2と、シリンダ1bの外周面に取り付けられるスプリングガイド100,200,300,400と、スプリングガイド100,200,300,400とアッパーマウント2との間に設けられ、車体を弾性支持するコイルスプリング4と、シリンダ1bの端部に取り付けられるバンプキャップ160,260,360,460と、ロッド1aに取り付けられ、ショックアブソーバ1が所定量だけ収縮したときにバンプキャップ160,260,360,460に当たることによりショックアブソーバ1の縮み側のストロークを規制するバンプストッパ5と、を備え、スプリングガイド100,200,300,400は、ショックアブソーバ1が挿通する挿通孔120を有し、バンプキャップ160,260,360,460は、スプリングガイド100,200,300,400に当接しスプリングガイド100,200,300,400の軸方向の移動を規制する規制部(嵌合部161,261,361、突出部461b)を有する。
【0073】
この構成では、シリンダ1bの端部に取り付けられるバンプキャップ160,260,360,460によって、スプリングガイド100,200,300,400の軸方向の移動が規制される。このため、バンプキャップ160,260,360,460とは別に、スプリングガイド100,200,300,400の移動を規制する部材を設けることなく、スプリングガイド100,200,300,400に外力が作用したときに、スプリングガイド100,200,300,400がショックアブソーバ1から外れてしまうことを防止することができる。これにより、サスペンション装置10の組み立て作業において、スプリングガイド100,200,300,400がショックアブソーバ1から外れてしまうことを防止できるので、サスペンション装置10の組み立て作業の効率を向上することができる。
【0074】
サスペンション装置10は、バンプキャップ160,260,360が、シリンダ1bと挿通孔120との間の隙間を閉塞する。
【0075】
この構成では、バンプキャップ160,260,360によって、シリンダ1bと挿通孔120との間の隙間に、砂、水等の異物が侵入することを防止することができる。
【0076】
サスペンション装置10は、規制部(嵌合部261,361)が、スプリングガイド200,300の径方向の移動を規制する。
【0077】
この構成では、バンプキャップ260,360の規制部(嵌合部261,361)によってスプリングガイド200,300の径方向の移動が規制されるので、スプリングガイド200,300の径方向の移動を規制するための専用の部材を設ける必要がない。
【0078】
サスペンション装置10は、規制部(嵌合部261)におけるスプリングガイド200,300に当接する面、及び、スプリングガイド200における規制部(嵌合部261,361)に当接する面の少なくとも一方が、軸方向に直交する平面に対して傾斜する傾斜面である。
【0079】
この構成では、シリンダ1bに対するスプリングガイド200,300の位置決め精度を向上することができる。
【0080】
サスペンション装置10は、スプリングガイド100,200,300が、内周が挿通孔120とされた筒状の筒部112,212,312を有し、規制部(嵌合部161,261,361)が、筒状であり、規制部(嵌合部161,261,361)の端部が筒部112,212,312の端部に当接することにより、スプリングガイド100,200,300の軸方向の移動が規制される。
【0081】
この構成では、スプリングガイド100,200,300の筒部112,212,312と、バンプキャップ160,260,360の筒状の規制部(嵌合部161,261,361)とが当接するため、スプリングガイド100,200,300の筒部112,212,312に作用する荷重を均等にすることができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0083】
1・・・ショックアブソーバ、1a・・・ロッド、1b・・・シリンダ、2・・・アッパーマウント、4・・・コイルスプリング、5・・・バンプストッパ、10・・・サスペンション装置、100,200,300,400・・・スプリングガイド、112,212,312・・・筒部、120・・・挿通孔、160,260,360,460・・・バンプキャップ、161,261,361・・・嵌合部(規制部)、461b・・・突出部(規制部)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B