(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】鉄道車両の防振支持構造体
(51)【国際特許分類】
B61C 17/12 20060101AFI20221013BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20221013BHJP
B61D 17/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B61C17/12 A
F16F15/08 F
B61D17/00 B
(21)【出願番号】P 2019006442
(22)【出願日】2019-01-17
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川下 道宏
(72)【発明者】
【氏名】堀野 正也
(72)【発明者】
【氏名】塚本 乾
(72)【発明者】
【氏名】中井川 修
(72)【発明者】
【氏名】青山 博
(72)【発明者】
【氏名】山崎 美稀
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-052354(JP,A)
【文献】特開2010-111197(JP,A)
【文献】実開昭59-003039(JP,U)
【文献】米国特許第05366200(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 17/12
F16F 15/08
B61D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の締結体のうちの少なくとも1つが鉄道車両用の電気機器に締結されて前記電気機器を弾性支持する鉄道車両の防振支持構造体であって、
第1の前記締結体と、
前記第1の締結体の第1面の側に、前記第1の締結体と略平行に配置された第2の前記締結体と、
前記第1の締結体の前記第1面とは逆側の第2面の側に、前記第1の締結体と略平行に配置された第1のプレートと、
前記第1の締結体の前記第1面と前記第2の締結体との間に積層された第1の防振ゴムと、
前記第1の締結体の前記第2面と前記第1のプレートとの間に積層された第2の防振ゴムと、
前記第1及び第2の締結体、前記第1及び第2の防振ゴム、及び前記第1のプレートを貫いて形成された第1の穴を、前記第1のプレートの側から貫通するボルトと、
前記ボルトと同心軸の外側に、前記第2の締結体と前記第1のプレートとに挟み込まれて配置され、前記第1及び第2の防振ゴムの潰し量を規定する前記ボルトのソケットと、
を備え、
前記第1の穴は、前記第1の締結体が前記ソケットに接触しない程度に大きく、
前記第1の締結体における前記第1の穴の近傍に、前記第1及び第2の防振ゴムの位置合わせ用の凹凸が形成され、
前記第1の締結体及び前記第1のプレートを貫いて、位置合わせ用の第2の穴が形成される
ことを特徴とする鉄道車両の防振支持構造体。
【請求項2】
前記第2の締結体の板厚が所定の閾値未満である場合に、前記第2の締結体と前記第1の防振ゴムとの間に、前記第1の穴を有する第2のプレートが配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の防振支持構造体。
【請求項3】
前記第1のプレートに代えて、前記第1及び第2の穴を有する第3の前記締結体が配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の防振支持構造体。
【請求項4】
前記第3の締結体の板厚が所定の閾値未満である場合には、前記第3の締結体と前記第2の防振ゴムとの間に前記第1のプレートが配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両の防振支持構造体。
【請求項5】
前記ボルトは、前記第1の穴を前記第2の締結体の側から貫通する
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の防振支持構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の防振支持構造体に関し、特に、鉄道車両用の電気機器を防振ゴムによって弾性支持する防振支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両用の電気機器の防振支持構造体として、防振ゴムによって弾性支持するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、鉄道車両の電気機器に取付けられた支持部材(締結体)が上側弾性体及び下側弾性体に挟まれて弾性支持される防振支持構造が開示されている。特許文献1では、このような防振支持構造により、電気機器が運転中に発する振動が鉄道車両に伝達されることを防止し、鉄道車両の乗り心地を向上させる効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された防振支持構造の場合、電気機器に取付けられた支持部材が、上側弾性体及び下側弾性体がボルトのソケットに接触した状態で締結される状況が想定される。このような状況において、電気機器が運転を開始すると、支持部材とソケットとの間に摩擦力が発生することにより、支持部材がソケットに接触していない状態よりも剛な締結状態となり、その結果、十分な弾性支持とならず、設計上の防振効果が得られない可能性があった。また、上記状態で電気機器の発する振動が継続すると、支持部材とソケットとの間でフレッティング摩耗が発生し、短時間で疲労破壊に至る可能性もあった。さらに、フレッティング摩耗が継続している間は、摩耗による騒音の発生も予想された。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、弾性支持による本来の防振効果を確実に発揮するとともに、フレッティング摩耗及び騒音の発生を防止可能な鉄道車両の防振支持構造体を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、複数の締結体のうちの少なくとも1つが鉄道車両用の電気機器に締結されて電気機器を弾性支持する、以下の鉄道車両の防振支持構造体が提供される。本防振支持構造体は、第1の前記締結体と、前記第1の締結体の第1面の側に、前記第1の締結体と略平行に配置された第2の前記締結体と、前記第1の締結体の前記第1面とは逆側の第2面の側に、前記第1の締結体と略平行に配置された第1のプレートと、前記第1の締結体の前記第1面と前記第2の締結体との間に積層された第1の防振ゴムと、前記第1の締結体の前記第2面と前記第1のプレートとの間に積層された第2の防振ゴムと、前記第1及び第2の締結体、前記第1及び第2の防振ゴム、及び前記第1のプレートを貫いて形成された第1の穴を、前記第1のプレートの側から貫通するボルトと、前記ボルトと同心軸の外側に、前記第2の締結体と前記第1のプレートとに挟み込まれて配置され、前記第1及び第2の防振ゴムの潰し量を規定する前記ボルトのソケットと、を備える。さらに、本防振支持構造体では、前記第1の穴は、前記第1の締結体が前記ソケットに接触しない程度に大きく、前記第1の締結体における前記第1の穴の近傍に、前記第1及び第2の防振ゴムの位置合わせ用の凹凸が形成され、前記第1の締結体及び前記第1のプレートを貫いて、位置合わせ用の第2の穴が形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弾性支持による本来の防振効果を確実に発揮するとともに、フレッティング摩耗及び騒音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る防振支持構造体の配置例を示す図(その1)である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る防振支持構造体の配置例を示す図(その2)である。
【
図3】
図1,
図2に示した防振支持構造体の詳細な構造を示す断面図である。
【
図4】
図3に示した防振支持構造体における位置合わせ方法を説明する図である。
【
図5】防振ゴムの特性値の計測結果の一例を示す図(その1)である。
【
図6】防振ゴムの特性値の計測結果の一例を示す図(その2)である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係る防振支持構造体の詳細な構造を示す断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態に係る防振支持構造体の詳細な構造を示す断面図である。
【
図9】本発明の第4の実施の形態に係る防振支持構造体の構造を説明するための図である。
【
図10】本発明の第5の実施の形態に係る防振支持構造体の詳細な構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明のいくつかの実施の形態を詳述する。なお、各実施の形態に示す図面において、同一のまたは同様の構造を有する構成要素については、同一の番号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0011】
(1)第1の実施の形態
図1,
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る防振支持構造体の配置例を示す図(その1,その2)である。
図1(A),
図2(A)は断面図であり、
図1(B),
図2(B)は斜視図である。第1の実施の形態に係る防振支持構造体1は、例えば
図1に示したように、鉄道車両用の電気機器9の両側に配置された複数の支持点10で電気機器9を弾性支持する。なお、本実施の形態に係る防振支持構造体1は側方からの弾性支持に限定されるものではなく、
図2に示したように、電気機器9の上方に配置された複数の支持点10で弾性支持するようにしてもよいし、その他の位置(例えば下方等)に配置された複数の支持点10(不図示)で弾性支持するようにしてもよい。
【0012】
図3は、
図1,
図2に示した防振支持構造体の詳細な構造を示す断面図である。
図3に示したように、防振支持構造体1は、第1の締結体11、第2の締結体12、第1の防振ゴム13、第2の防振ゴム14、第1のプレート15、第2のプレート16、ソケット17、ボルト18、及びナット19を備えて構成される。また、
図3の下側から順に、第1のプレート15、第2の防振ゴム14、第1の締結体11、第1の防振ゴム13、第2のプレート16、そして第2の締結体12には、中心部にボルト18が貫通する穴20が形成されている。
【0013】
第1の締結体11は、例えば電気機器9に取り付け可能な締結体であって、第1面(
図3では上面)側の第1の防振ゴムと、第2面(
図3では下面)側の第2の防振ゴム14とに挟まれて弾性支持される。また、
図3に示したように、第1の締結体11では、穴20に沿って、第1の防振ゴム13の位置合わせ用の凸部11aと第2の防振ゴム14の位置合わせ用の凹部11bが形成されており、これらの凹凸部により、各防振ゴム13,14がソケット17側に動かないように位置合わせされる。また、穴20は、ボルト18の径に対して十分大きく、第1の締結体11(より細かく言えば凸部11a)がソケット17に接触しない程度の大きさが確保されている。
【0014】
第2の締結体12は、例えば電気機器9が格納される鉄道車両の箱体等に取り付け可能な締結体であって、第1の締結体の第1面の側に、第1の締結体と略平行に配置される。第2の締結体12の下面には、第2のプレート16が当接して設けられ、第2のプレートと第1の締結体との間に第1の防振ゴム13が所定量の圧力を受けて挟まれる。詳しくは第3の実施の形態で説明するが、第2のプレート16は、第2の締結体12の板厚が薄い場合(具体的には例えば5mm未満)である場合に、第2の締結体12が局所的に変形を起こしてしまい防振効果に悪影響が生じ得ることを考慮して、第2の締結体12の耐荷重を補強するために配置される板状部材である。そこで、第2の締結体12の板厚が所定値(例えば5mm)以上であれば、第2のプレート16を設けずに、第2の締結体12と第1の締結体11との間に第1の防振ゴム13を挟む構成としてもよく、このような場合を考慮すると、以下の説明では、第2のプレート16を第2の締結体12に読み替えることもできる。
【0015】
第1の防振ゴム13及び第2の防振ゴム14は、第1の締結体11を弾性支持するために用いられる弾性体である。第1及び第2の防振ゴム13,14に用いられる弾性体の種類は限定されず、一般的な防振支持構造体で採用される弾性体を用いることができる。なお、本実施の形態において、第1及び第2の防振ゴム13,14の形状は、中心に穴20が形成されたドーナツ形状とすればよい。
【0016】
第1のプレート15は、第1の締結体11との間で第2の防振ゴム14を挟むよう配置される板状部材である。また、第1のプレート15及び第2のプレート16は、ボルト18の締結時に、上下方向から当接するようにソケット17を挟み込むことで、第1及び第2の防振ゴム13,14に所定の圧縮量を加えた状態を維持することができる。
【0017】
ソケット17は、ボルト18と同心軸の外側に、第1のプレート15と第2のプレート16(第2の締結体12と読み替えてもよい)とに挟み込まれて配置される。このように配置されるソケット17は、第1及び第2の防振ゴム13,14の潰し量を規定するため、第1及び第2の防振ゴム13,14は所定の圧縮量が加えられた状態となり、第1の締結体11は、これらの防振ゴム13,14に挟まれて弾性支持される。
【0018】
ボルト18は、穴20を貫通し、ナット19によって締結される。
図3に示したように、第1の実施の形態では、ボルト18が第1のプレート15の側から穴20を貫通し、ナット19で締結されることにより、第1のプレート15、第2のプレート16、第2の締結体12、及びソケット17が固定支持されるとともに、第1の防振ゴム13及び第2の防振ゴム14を介して第1の締結体11が弾性支持される。
【0019】
また、
図3に示したように、第1の実施の形態に係る防振支持構造体1では、第1の締結体11及び第1のプレート15を貫いて、位置合わせ用の穴21が形成されている。防振支持構造体1においてボルト18を締結する際、所定の位置合わせ冶具22(
図4参照)を穴21に挿入することにより、第1の締結体11及び第1のプレート15を正確に位置合わせすることができる。
【0020】
図4は、
図3に示した防振支持構造体における位置合わせ方法を説明する図である。
図4に示したように、ボルト18を仮止めした状態で、位置合わせ冶具22を穴21に差し込むことにより、第1の締結体11及び第1のプレート15を精度良く位置合わせすることができる。そして、この状態を維持しながら(例えば、位置合わせ冶具22を穴21に差し込んだまま)、ボルト18を本止めしてナット19で締結することにより、第1の締結体11がソケット17に接触しない程度に、穴20において第1の締結体11とソケット17との間に所定の間隔が確保された位置関係(非接触位置)で、防振支持構造体1を締結することができる。なお、上記非接触位置は、第1の締結体11が取付けられた電気機器9で振動が発生したとしても第1の締結体11がソケット17に接触しない位置であることが、より好ましい。
【0021】
ここで、第1の締結体11がソケット17に接触しない非接触位置で締結されることで得られる防振ゴム13,14の特性について、計測結果を参照しながら説明する。
【0022】
図5,
図6は、防振ゴムの特性値の計測結果の一例を示す図(その1,その2)である。具体的には、
図5,
図6には、弾性支持体(第1の締結体11)がソケット17に接触している場合(接触)と接触していない場合(非接触)とについて、振動体(電気機器9)の振動周波数によって防振ゴム13,14の特性値(
図5は動ばね定数、
図6は損失係数)がどのように変化するかがグラフに示されている。このうち、
図5のP1及び
図6のQ1は、防振ゴム13,14の基本特性値の変化を示し、
図5のP2及び
図6のQ2は、非接触状態における個体特性値(個体差)の変化を示し、
図5のP3及び
図6のQ3は、接触状態における個体特性値(個体差)の変化を示している。
【0023】
図5によれば、仮に第1の締結体11がソケット17に接触した状態(接触状態)で電気機器9に締結された場合には、P3に示されたように、防振ゴム13,14の見かけ上の動ばね定数が高くなる傾向がある。すなわち、接触状態では、電気機器9で振動が発生したとき、防振ゴム13,14の動ばね定数はP1-P3間で大きくばらつくことが分かる。一方、本実施の形態のように第1の締結体11がソケット17に接触しない状態(非接触状態)で電気機器9に締結された場合には、P2に示されたように、防振ゴム13,14の見かけ上の動ばね定数は、非接触状態のとき(P3)よりも低く安定する傾向が見られる。すなわち、本実施の形態のように、第1の締結体11がソケット17に接触しない非接触位置で締結されることにより、電気機器9で振動が発生しても、防振ゴム13,14の動ばね定数はP1-P2の間でしかばらつかず、安定した特性を得られることが分かる。
【0024】
また、
図6の損失係数の変化についても、接触状態でのばらつき(Q1-Q3間)と非接触状態でのばらつき(Q1-Q2間)とを比較することにより、
図5と同様のことが言える。すなわち、本実施の形態のように、第1の締結体11がソケット17に接触しない非接触位置で締結されることにより、電気機器9で振動が発生しても、防振ゴム13,14の損失係数は、安定した特性を得られることが分かる。なお、
図5及び
図6に示した防振ゴム13,14の特性変化は、後述する第2~第5の実施の形態にも適用可能である。
【0025】
以上に説明してきたように、本実施の形態に係る防振支持構造体1は、ボルト18の締結用の穴20をボルト径に対して十分に大きくすることで、ソケット17と第1の締結体11との接触を防止する。そして、穴21を利用した
図4の位置合わせ方法によって、第1の締結体11とソケット17を適切な非接触位置で確実に締結できるようにしている。さらに、第1の締結体11に、位置合わせ用の凸部11a及び凹部11bが設けられることにより、第1及び第2の防振ゴム13,14の確実な位置合わせを実現するとともに、位置ずれを防止することができる。かくして、本実施の形態に係る防振支持構造体1は、電気機器9が運転を開始した際に、第1の締結体11とソケット17が接触し、両者の間に摩擦力が発生して設計上の防振効果が得られないという状況を防止することができ、設計通りの防振効果を得ることに期待できる。また、第1の締結体11とソケット17とが接触しないことにより、電気機器9の発する振動が継続した場合でも、第1の締結体11とソケット17との間でフレッティング摩耗が発生せず、摩耗による騒音の発生も防止することができる。かくして、本実施の形態に係る防振支持構造体1は、弾性支持によって設計通りに安定した防振効果を得ることができ、電気機器9の発する振動が鉄道車両に伝達されることを防止して、鉄道車両の乗り心地を向上させることができる。
【0026】
(2)第2の実施の形態
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る防振支持構造体の詳細な構造を示す断面図である。
図7に示された第2の実施の形態に係る防振支持構造体2の構造は、
図3に示された第1の実施の形態に係る防振支持構造体1と比較すると、ボルト18の貫通方向が逆転し、ナット19の配置が第1のプレート15の下側とされている点で異なる。
【0027】
すなわち、
図7に示された防振支持構造体2において、ボルト18は、第2の締結体12の側(
図7の上側)から穴20を貫通し、第1のプレート15の下側に配置されるナット19によって締結される。この結果、ボルト18の締結方向に対する第1の締結体11の凸部11a及び凹部11bの向きが、第1の実施の形態に係る防振支持構造体1(
図3参照)とは逆方向になる。
【0028】
第2の実施の形態に係る防振支持構造体2は、上記のような構造上の相違点はあるものの、第1の締結体11がソケット17に接触しない程度に穴20が大きく形成され、かつ、穴20の近傍の第1の締結体11に、第1の防振ゴム13の位置合わせ用の凸部11a及び第2の防振ゴム14の位置合わせ用の凹部11bが形成され、かつ、第1の締結体11及び第1のプレート15を貫いて位置合わせ用の穴21が形成されるという特徴を備えている点で、第1の実施の形態に係る防振支持構造体1と共通している。したがって、第2の実施の形態に係る防振支持構造体2は、弾性支持による本来の防振効果を安定的に発揮することができるとともに、第1の締結体11とソケット17との間でフレッティング摩耗の発生を防止し、電気機器9の振動に基づく騒音の発生を防止することができる、などの第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0029】
(3)第3の実施の形態
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る防振支持構造体の詳細な構造を示す断面図である。
図8に示された第3の実施の形態に係る防振支持構造体3の構造は、
図3に示された第1の実施の形態に係る防振支持構造体1と比較すると、第2のプレート16が設けられていない点で異なる。但し、第3の実施の形態は、第2の締結体12の板厚が所定値(具体的には例えば5mm)以上である場合を前提条件とする。
【0030】
一般に、弾性支持による防振支持構造体において、弾性体(防振支持構造体3では、第1の防振ゴム13及び第2の防振ゴム14)を挟む「板状部材(防振支持構造体3では、第2の締結体12及び第1のプレート15)」は、その板厚が薄い場合には、弾性力や振動を受けたときに局所的に変形を起こし得ることが知られている。そして、板状部材においてこのような局所的な変形が生じると、弾性体に均等な力を加えることができず、安定した防振効果を得ることができなくなってしまう。したがって、上記板状部材の板厚が所定の基準値を下回る場合には、プレートを追加する等して、耐荷重(全体の板厚)を補強する必要がある。逆に言えば、上記板状部材の板厚が所定の基準値以上であれば、特段の補強を行わなくても安定した防振効果に期待できる。なお、所定の基準値は、板状部材の素材や弾性体の圧縮量等を考慮して、計算・測定・経験則等に基づいて決定することができる。
【0031】
ここで、上記の事情を鑑みると、第3の実施の形態に係る防振支持構造体3では、前述したように、第2の締結体12の板厚が、上記基準値に相当する所定値(具体的には例えば5mm)以上である場合を前提条件としていることから、第2のプレート16が設けられていなくても、第2の締結体12は局所的な変形を生じることはない。したがって、防振支持構造体3は、第2の締結体12及び第1のプレート15によって、第1の実施の形態と同様に、第1の防振ゴム13及び第2の防振ゴム14に所定の圧縮量を加えた状態を維持することができる。
【0032】
以上のように、第3の実施の形態に係る防振支持構造体3は、上記のような構造上の相違点はあるものの、第1の締結体11がソケット17に接触しない程度に穴20が大きく形成され、かつ、穴20の近傍の第1の締結体11に、第1の防振ゴム13の位置合わせ用の凸部11a及び第2の防振ゴム14の位置合わせ用の凹部11bが形成され、かつ、第1の締結体11及び第1のプレート15を貫いて位置合わせ用の穴21が形成されるという特徴を備えている点で、第1の実施の形態に係る防振支持構造体1と共通している。したがって、第3の実施の形態に係る防振支持構造体3は、弾性支持による本来の防振効果を安定的に発揮することができるとともに、第1の締結体11とソケット17との間でフレッティング摩耗の発生を防止し、電気機器9の振動に基づく騒音の発生を防止することができる、などの第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0033】
さらに、第3の実施の形態に係る防振支持構造体3は、第2のプレート16を設けないことから、第1の実施の形態に比べて、全体重量や製造コストを低減することができる。
【0034】
(4)第4の実施の形態
図9は、本発明の第4の実施の形態に係る防振支持構造体の構造を説明するための図である。
図9(A)には、第4の実施の形態に係る防振支持構造体4の断面図が示され、
図9(B)には、防振支持構造体4の配置例が示されている。
図9(A)に示された第4の実施の形態に係る防振支持構造体4の構造は、
図3に示された第1の実施の形態に係る防振支持構造体1と比較すると、第3の締結体23が設けられている点で異なる。
【0035】
第3の締結体23は、例えば電気機器9が格納される鉄道車両の箱体等に取り付け可能な締結体であって、第1のプレート15の下側(第1の締結体11とは逆側)に当接して、第1の締結体と略平行に配置される。また、第3の締結体23には、第1の締結体11及び第1のプレート15と同様に、位置合わせ用の穴21が形成されている。したがって、防振支持構造体4においてボルト18を締結する際、所定の位置合わせ冶具22(
図4参照)を穴21に挿入することにより、第1の締結体11、第1のプレート15及び第3の締結体23を正確に位置合わせすることができる。
【0036】
以上のことから、第4の実施の形態に係る防振支持構造体4によれば、3つの締結体(第1の締結体11、第2の締結体12、第3の締結体23)を備えたことにより、第1~第3の実施の形態よりも締結箇所を増やすことができるため(
図9(B)参照)、より安定した締結状態を実現することができる。
【0037】
また、第4の実施の形態に係る防振支持構造体4は、上記のような構造上の相違点はあるものの、第1の締結体11がソケット17に接触しない程度に穴20が大きく形成され、かつ、穴20の近傍の第1の締結体11に、第1の防振ゴム13の位置合わせ用の凸部11a及び第2の防振ゴム14の位置合わせ用の凹部11bが形成されるという特徴を備えている点で、第1の実施の形態に係る防振支持構造体1と共通している。さらに、第4の実施の形態に係る防振支持構造体4では、第1の締結体11、第1のプレート15及び第3の締結体23を貫いて位置合わせ用の穴21が形成されることから、穴21を用いた位置合わせによって、これらの各部材を精度よく位置合わせすることができ、穴20において第1の締結体11とソケット17との間に所定の間隔が確保された位置関係(非接触位置)で、防振支持構造体4を締結することができる。したがって、第4の実施の形態に係る防振支持構造体4は、弾性支持による本来の防振効果を安定的に発揮することができるとともに、第1の締結体11とソケット17との間でフレッティング摩耗の発生を防止し、電気機器9の振動に基づく騒音の発生を防止することができる、などの第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
(5)第5の実施の形態
図10は、本発明の第5の実施の形態に係る防振支持構造体の詳細な構造を示す断面図である。
図10に示された第5の実施の形態に係る防振支持構造体5の構造は、
図9に示された第4の実施の形態に係る防振支持構造体4と比較すると、第1のプレート15が設けられていない点で異なる。但し、第5の実施の形態は、第3の締結体23の板厚が所定値(具体的には例えば5mm)以上である場合を前提条件とする。
【0039】
第5の実施の形態に係る防振支持構造体5では、第3の締結体23の板厚が、弾性力や振動を受けたときに局所的に変形しない程度の基準値(本例では5mm)以上であることから、第4の実施の形態に係る防振支持構造体4のように第1のプレート15が設けられていなくても、第3の締結体23は十分な耐荷重を有しており、安定した防振効果の発揮に期待できる。
【0040】
そして、第5の実施の形態に係る防振支持構造体5は、上記のような構造上の相違点はあるものの、第1の締結体11がソケット17に接触しない程度に穴20が大きく形成され、かつ、穴20の近傍の第1の締結体11に、第1の防振ゴム13の位置合わせ用の凸部11a及び第2の防振ゴム14の位置合わせ用の凹部11bが形成されるという特徴を備えている点で、第4の実施の形態に係る防振支持構造体4と共通している。さらに、第5の実施の形態に係る防振支持構造体5では、第1のプレート15が設けられていないものの、第1の締結体11及び第3の締結体23を貫いて位置合わせ用の穴21が形成されることから、穴21を用いた位置合わせによって、これらの各部材を精度よく位置合わせすることができ、穴20において第1の締結体11とソケット17との間に所定の間隔が確保された位置関係(非接触位置)で、防振支持構造体4を締結することができる。したがって、第5の実施の形態に係る防振支持構造体5は、弾性支持による本来の防振効果を安定的に発揮することができるとともに、第1の締結体11とソケット17との間でフレッティング摩耗の発生を防止し、電気機器9の振動に基づく騒音の発生を防止することができる、などの第4の実施の形態と同様の効果(ひいては、第1の実施の形態と同様の効果)を得ることができる。
【0041】
また、第5の実施の形態に係る防振支持構造体5は、第4の実施の形態と同様に、3つの締結体(第1の締結体11、第2の締結体12、第3の締結体23)を備えたことにより、第1~第3の実施の形態よりも締結箇所を増やすことができるため(
図9(B)参照)、より安定した締結状態を実現することができる。
【0042】
さらに、第5の実施の形態に係る防振支持構造体5は、第1のプレート15を設けないことから、第4の実施の形態に比べて、全体重量や製造コストを低減することができる。
【0043】
以上、上述した各実施の形態では、第1の締結体が電気機器9に取付けられる場合を中心に説明したが、本発明において、各締結体(第1の締結体11、第2の締結体12、第3の締結体23)の取付け先は限定されるものではなく、1つが電気機器9に取付けられるとき、他の少なくとも1つが鉄道車両の箱体等に取付けられればよい。
【0044】
また、本発明は、上記した第1~第5の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。そして、これらの何れの場合にも、各実施の形態で述べたように、安定した防振効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1,2,3,4,5 防振支持構造体
9 電気機器
11 第1の締結体
11a 凸部
11b 凹部
12 第2の締結体
13 第1の防振ゴム
14 第2の防振ゴム
15 第1のプレート
16 第2のプレート
17 ソケット
18 ボルト
19 ナット
20,21 穴
22 位置合わせ冶具
23 第3の締結体