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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】波除鋼材、及びケーソンの補修方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
E02B3/06 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019039093
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020143455
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】辻本 真一
(72)【発明者】
【氏名】伊東 孝起
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】福田 典紀
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111964(JP,A)
【文献】特開2016-148197(JP,A)
【文献】特開平07-054371(JP,A)
【文献】特開2010-275757(JP,A)
【文献】特開2019-052431(JP,A)
【文献】特開2013-007221(JP,A)
【文献】実開昭60-040756(JP,U)
【文献】特開2006-219851(JP,A)
【文献】実開昭48-022432(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソンの損傷部の補修に用いる波除鋼材であって、
H形鋼により側面視略コの字状に構成され、前記ケーソンの前記損傷部を有する側壁に掛けられる本体と、
前記本体の前記側面視略コの字状部の内側に対向して各々接合され、前記側壁に沿って港内側及び港外側で前記損傷部をそれぞれ塞ぐ二枚の鋼板と、
を備えることを特徴とする波除鋼材。
【請求項2】
前記本体は、前記H形鋼により形成された一対の正面視梯子状部材の上端部を前記H形鋼で結合して前記側面視略コの字状に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の波除鋼材。
【請求項3】
ケーソンの損傷部の補修に、請求項1又は2に記載の波除鋼材を用いて行うケーソンの補修方法であって、
クレーンにより前記波除鋼材を吊り上げてから前記ケーソンの前記損傷部を有する側壁の位置で吊り下すことで、
前記損傷部を有する前記側壁に前記本体を掛けると同時に、
前記側壁に沿って前記損傷部を港内側及び港外側で対向する二枚の前記鋼板によりそれぞれ塞ぐことを特徴とするケーソンの補修方法。
【請求項4】
前記損傷部を港内側及び港外側でそれぞれ塞ぐ二枚の前記鋼板を貫通ボルトで固定することを特徴とする請求項3に記載のケーソンの補修方法。
【請求項5】
前記クレーンにより前記波除鋼材を前記ケーソンの前記損傷部を有する前記側壁に設置した後の工程において、
前記損傷部を有する前記ケーソン内に特殊大型袋を設置してから、
前記特殊大型袋内に中詰めコンクリートを打設することを特徴とする請求項3又は4に記載のケーソンの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷したケーソンの補修に用いる波除鋼材と、その波除鋼材を用いて行うケーソンの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーソンを利用して構築される防波堤では、台風の襲来等の荒天時の大波による消波ブロックの移動や揺動によって、ケーソンの外洋に面する側壁が突き破られて損傷し、中詰の砂が流出消滅して、ケーソンが堤体としての機能を失う恐れがある。
【0003】
このような損傷したケーソンの補修方法としては、袋詰コンクリート工法や鋼製外型枠工法が知られている(非特許文献1参照)。
袋詰コンクリート工法は、ケーソン隔室内部にコンクリートバックを挿入して内部にコンクリートを充填することで、損傷部を塞ぎ、隔室内に中詰コンクリートを打設する工法である。
鋼製外型枠工法は、損傷した海側の側壁に鋼製型枠をアンカーボルトなどで固定して、隔室内に中詰コンクリートを打設する工法である。
【0004】
また、特許文献1において、ケーソンの補修方法が提案されている。
そのケーソンの補修方法は、先ず、予めケーソンの損傷部を覆うように側壁の外側に防波板をアンカー等で固定し、ケーソンの上面から隔室に貫通穴を穿設する。そして、この貫通穴から隔室内に、土木シートを複数搬入・壁面に張設し、端部同士を連結させて損傷部を塞いだ後、中詰コンクリートを打設する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】『防波堤ケーソン損傷に関する補修マニュアル (2007年1月) 11.4MB』<http://www.pa.thr.mlit.go.jp/sendaigicho/technology/technology01.html>
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-219851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1のように、従来の袋詰コンクリート工法は、隔室内の流速が大きい場合に、コンクリートバックの形状が維持できないこと、アンカー固定が外れる可能性があること、隔室内での水中作業となることから潜水士の安全性などに課題があった。
【0008】
次に、非特許文献1のように、従来の鋼製外型枠工法は、中詰コンクリートの側圧、波圧に対して十分な強度が必要とされ、中詰コンクリートが漏れないような止水性、ケーソン側壁に固定するアンカーボルトにも十分な定着性能が必要とされている。
また、外洋に面した側壁部で鋼製型枠を強固に固定するため、水中作業に時間を要し、潜水士の安全性確保にも課題があった。
【0009】
次に、特許文献1のケーソンの補修方法は、外洋に面した側壁外側の水中下で、波浪により容易に動いてしまう防波板をアンカー等で強固に固定する作業が必要であり、潜水士の安全性確保や防波板が落下する危険性に課題が残る。
【0010】
本発明の課題は、損傷したケーソンの損傷部を、港内側及び港外側で塞いで、中詰コンクリートの側圧及び波圧の負担を可能とし、しかも、潜水士による水中作業を極力減らして、安全に短期間でのケーソンの補修を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
ケーソンの損傷部の補修に用いる波除鋼材であって、
H形鋼により側面視略コの字状に構成され、前記ケーソンの前記損傷部を有する側壁に掛けられる本体と、
前記本体の前記側面視略コの字状部の内側に対向して各々接合され、前記側壁に沿って港内側及び港外側で前記損傷部をそれぞれ塞ぐ二枚の鋼板と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の波除鋼材であって、
前記本体は、前記H形鋼により形成された一対の正面視梯子状部材の上端部を前記H形鋼で結合して前記側面視略コの字状に構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、
ケーソンの損傷部の補修に、請求項1又は2に記載の波除鋼材を用いて行うケーソンの補修方法であって、
クレーンにより前記波除鋼材を吊り上げてから前記ケーソンの前記損傷部を有する側壁の位置で吊り下すことで、
前記損傷部を有する前記側壁に前記本体を掛けると同時に、
前記側壁に沿って前記損傷部を港内側及び港外側で対向する二枚の前記鋼板によりそれぞれ塞ぐことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載のケーソンの補修方法であって、
前記損傷部を港内側及び港外側でそれぞれ塞ぐ二枚の前記鋼板を貫通ボルトで固定することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、
請求項3又は4に記載のケーソンの補修方法であって、
前記クレーンにより前記波除鋼材を前記ケーソンの前記損傷部を有する前記側壁に設置した後の工程において、
前記損傷部を有する前記ケーソン内に特殊大型袋を設置してから、
前記特殊大型袋内に中詰めコンクリートを打設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、H形鋼により側面視略コの字状に構成された本体による波除鋼材を、損傷したケーソン側壁に掛け、本体の側面視略コの字状部の内側に対向して各々接合された二枚の鋼板により、ケーソン側壁の損傷部を港内側、港外側で塞ぐことができる。
したがって、中詰コンクリートの側圧、波圧をそれぞれの鋼板で負担することができ、さらに、鋼板が落下する危険がなく、潜水士による水中作業を極力減らし、安全に短期間でケーソンを補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用した波除鋼材の一実施形態の構成を示すもので、損傷したケーソン側壁に波除鋼材を掛けた状態の縦断側面図である。
図2図1の波除鋼材を港内側から見た正面図である。
図3図1の波除鋼材を港外側から見た透視図である。
図4】損傷したケーソン側壁に波除鋼材を掛ける状態を示す概略斜視図である。
図5図4の損傷したケーソン内への特殊大型袋の設置状態を示した図である。
図6図5の特殊大型袋内への中詰コンクリート打設完了状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(概要)
H形鋼により側面視略コの字状に構成された本体による波除鋼材を、損傷したケーソン側壁に掛け、本体の側面視略コの字状部の内側に対向して各々接合された二枚鋼板により、ケーソン側壁の損傷部を港内側及び港外側でそれぞれ塞ぐ。
これにより、中詰コンクリートの側圧、波圧をそれぞれの鋼板で負担することができ、さらに、鋼板が落下する危険がなく、潜水士による水中作業を極力減らし、安全に短期間でケーソンを補修する。
【0019】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1から図3は本発明を適用した波除鋼材1の一実施形態の構成として防波堤の一部を構成するケーソン100の損傷した側壁101に掛けた状態を示すもので、103は他の側壁、105は隔壁、107は蓋コンクリートである。
【0020】
図示のように、波除鋼材1は、H形鋼により側面視略コの字状に構成される本体2と、その本体2の側面視略コの字状部の内側に対向して各々接合される二枚の同形状による鋼板6・7と、からなる。
すなわち、波除鋼材1は、側面視略コの字状に構成された本体2が、ケーソン100の損傷部102を有する側壁101に掛けられて、本体2の側面視略コの字状部の内側に対向して各々接合された二枚の鋼板6・7が、側壁101に沿って港内側及び港外側で太い点線で輪郭を及び点線斜線で領域を示した貫通穴による損傷部102をそれぞれ塞ぐ。
【0021】
本体2は、H形鋼を溶接した港内側及び港外側の略同形状による正面視梯子状部材3・4の上端部を、H形鋼をボルトナット結合した上端部結合部材5でボルトナット結合したものである。
【0022】
港内側の正面視梯子状部材3は、H形鋼による左右一対の縦枠31・31を、これより小さいH形鋼による上下五本の横枠32・・・で溶接したもので、左右の縦枠31・31の外側面には、山形鋼による上下三本の補強材33・・・が溶接されている。
図示例では、上側二本の横枠32・32と下側三本の横枠32・・・との間が比較的大きく離間して、上側二本の横枠32・32の間に一本の補強材33が配置されて、上側二本の横枠32と下側三本の横枠32との間に上下二本の補強材33・33が配置されている。
【0023】
港外側の正面視梯子状部材4は、H形鋼による左右一対の縦枠41・41を、これより小さいH形鋼による上下六本の横枠42・・・で溶接したもので、左右の縦枠41・41の外側面には、山形鋼による上下三本の補強材43・・・が溶接されている。
図示例では、上側二本の横枠42・42と下側四本の横枠42・・・との間が比較的大きく離間して、上側二本の横枠42・42の間に一本の補強材43が配置されて、上側二本の横枠42と下側四本の横枠42との間に上下二本の補強材43・43が配置されている。
なお、港外側の正面視梯子状部材4は、縦枠41が港内側の正面視梯子状部材3の縦枠31と同じ長さで、上側二本の横枠42・42の間隔に対し下側四本の横枠42・・・の間隔が小さくなっている。
【0024】
上端部結合部材5は、H形鋼による左右一対の連結枠51・51の上面中央に上部連結枠53をボルトナット結合して構成されている。
先ず、H形鋼による左右一対の連結枠51・51は、港内側の正面視梯子状部材3の縦枠31の上端部に溶接したエンドプレート35と、港外側の正面視梯子状部材4の縦枠41の上端部に溶接したエンドプレート45にそれぞれボルトナット結合されている。
【0025】
ここで、H形鋼による連結枠51は、図1に示すように、港内側が長くなっており、そのフランジ下面に予備のボルト孔が空いている。この予備のボルト孔は、損傷した側壁101の厚みに応じて、港内側の正面視梯子状部材3の取付位置を変更可能とするものである。
【0026】
また、港外側の正面視梯子状部材4の左右の縦枠41の上端部側面と、その上の左右の連結枠51・51の端部に各々溶接したエンドプレート55とが、ジョイントプレート46でそれぞれボルトナット結合されている。
さらに、上部連結枠53の端部上に左右一対の吊金物57・57がそれぞれボルトナット結合されている。
【0027】
そして、港内側の正面視梯子状部材3には、その左右の縦枠31・31及び下側二本の横枠32・32における港外側正面視梯子状部材4側の内側面に鋼板6が溶接されている。
この鋼板6は、下端が縦枠31・31よりも下方に突出している。
【0028】
また、港外側の正面視梯子状部材4には、その左右の縦枠41・41及び下側四本の横枠42・・・における港内側正面視梯子状部材3側の内側面に鋼板7が溶接されている。
この鋼板7は、下端が縦枠41・41よりも下方に突出している。
【0029】
さらに、図3に示すように、港外側の正面視梯子状部材4には、その左右の縦枠41・41における上半部の三箇所に、上側二本の横枠32・32及び一番下の補強材43の位置に対応して各々側方に突出する横方向のアンカープレート47・・・がそれぞれ溶接されている。
また、鋼板7における左右の上下四箇所に、各々側方に突出する縦方向のアンカープレート48・・・がそれぞれ溶接されている。
【0030】
そして、図1及び図2に示すように、上端部結合部材5には、その連結枠51・51の下部外側中央に、各々側方に突出するアンカープレート59・59がそれぞれ溶接されている。
【0031】
「施工手順」
以上の構成による波除鋼材1を使ったケーソン100の補修手順は以下のとおりである。
【0032】
手順1.消波ブロック(図略)の撤去
ケーソン100の損傷部102を含む周辺部の消波ブロックをクレーンにより吊り上げて順次撤去する。
【0033】
手順2.ケーソン100の損傷部102上方の蓋コンクリート107の撤去
ケーソン100の損傷部102上方の蓋コンクリート107を、コアドリルを使用して削孔して切断・縁切りし、その切断されたコンクリート塊をクレーンにより吊り上げて撤去する。
【0034】
手順3.波除鋼材1の設置(図4参照)
【0035】
手順4.特殊大型袋121の設置(図5参照)、次いで中詰コンクリート122の打設(図6参照)
【0036】
手順5.ケーソン100より上部の鋼材の撤去
ケーソン100より上部の鋼材の撤去に際しては、上部コンクリート施工に支障となる上端部結合部材5の連結枠51及び上部連結枠53を、ボルトナット結合解除により撤去する。
そして、その下の正面視梯子状部材4は、損傷部102の側壁欠損部補強を兼ねて存置する。
【0037】
手順6.ケーソン100の補修部上方の蓋コンクリート107の復旧(再設置)
ケーソン100の補修部上方に、新たにコンクリートを打設して、上部工を施工する。
【0038】
手順7.消波ブロックの復旧(再設置)
仮置きしていた消波ブロックをクレーンによりケーソン100の補修部を含む周辺部に順次再設置する。
【0039】
図4は損傷したケーソン100の側壁に波除鋼材1を掛ける状態を示すもので、図示しないクレーンの吊り上げワイヤ111を吊金物57・57に掛けて波除鋼材1を吊り上げてから、図示のように、ケーソン100の損傷部102を有する側壁101の位置で吊り下す。
これにより、図1から図3に示したように、側面略コの字状の本体2が側壁101の天端に掛けられると同時に、側壁101に沿って損傷部(貫通穴)102が港内側及び港外側で対向する二枚の鋼板6・7によりそれぞれ塞がれる。
【0040】
そして、港外側の正面視梯子状部材4を側壁101に対し、アンカープレート47・・・、及びアンカープレート48・・・において、水中ケミカルアンカーでそれぞれ固定する。
また、上端部結合部材5を側壁101の天端に対し、アンカープレート59・59において、ケミカルアンカーでそれぞれ固定する。
なお、アンカープレート47・48には、各々四個の孔が空いており、そのうちの一個の孔で仮固定用のオールアンカーを設置し、残る三個のうちの一個の孔で直径φ22mmの水中ケミカルアンカーを施工する。
【0041】
そして、損傷部(貫通穴)102を港内側及び港外側でそれぞれ塞ぐ二枚の鋼板6・7を、図1から図3に示したように、略中央部の三点において、貫通ボルト8及びナット9で固定する。
【0042】
図5図4の損傷したケーソン100内への特殊大型袋121の設置状態を示したもので、図示のように、隔室の寸法に合わせた高強度土木シートによる特殊大型袋121を設置する。
そして、この特殊大型袋121内に中詰コンクリート122を打設する。
【0043】
図6図5の特殊大型袋121内への中詰コンクリート122の打設完了状態を示したもので、図示のように、中詰コンクリート122の打設完了した後、ケーソン100の補修部上方に、新たにコンクリートを打設して、上部工を施工する。
【0044】
「原理・特徴」
次に、本発明の原理・特徴は以下のとおりである。
【0045】
1)損傷部(貫通穴)102を港内側、港外側の二枚の鋼板6・7で塞ぐことから、中詰コンクリート122の側圧、波圧をそれぞれの鋼板6・7で負担することができる。
【0046】
2)波除鋼材1を側面視略コの字状としてケーソン側壁101に掛けることで、落下する危険がなく、簡易な固定で容易に設置が可能となる。
実施工では、港外側鋼材(正面視梯子状部材4)の外周部を、直径φ22mmの水中ケミカルアンカーを使用して固定する。
【0047】
3)側面視略コの字状の先端部が開かないよう、損傷部102で内外二枚の鋼板6・7を直径φ22mmの貫通ボルト8及びナット9により固定する。
【0048】
4)上端部結合部材5の連結枠51及び上部連結枠53は上部コンクリート施工に支障となるため撤去する。
港外側鋼材(正面視梯子状部材4)は、損傷部102の側壁欠損部補強を兼ね、波圧への補強材として存置する。
隔室側鋼材(正面視梯子状部材3)は存置する。
【0049】
5)鋼板6・7を22mmの厚板とすることで、その強度と重量により損傷部102の直径16mmの鉄筋などの支障物に対抗して押し退けて設置する。
【0050】
6)波除鋼材1への止水対策(止水ゴムなど)は行わない。
したがって、港外側ケーソン側壁101のケレン等、水中作業が不要となる。
【0051】
7)中詰コンクリート122の漏洩対策として特殊大型袋121内へ中詰コンクリート122を打設する。
【0052】
8)波除鋼材1の設置後の水中作業は、港外側鋼材(正面視梯子状部材4)の外周部の水中ケミカルアンカー固定(アンカープレート47・48の部位参照)と、隔室内及び港外側での貫通ボルト8及びナット9による三点止めのみとなる。
【0053】
以上、実施形態の波除鋼材1を用いて行うケーソン100の補修によれば、H形鋼により側面視略コの字状に構成された波除鋼材本体2を、損傷したケーソン側壁101に掛け、その本体2の側面視略コの字状部の内側に対向して各々接合された二枚の鋼板6・7により、ケーソン側壁101の損傷部(貫通穴)102を港内側及び港外側でそれぞれ塞ぐことができる。
したがって、中詰コンクリート122の側圧、波圧をそれぞれの鋼板6・7で負担することができ、さらに、鋼板6・7が落下する危険がなく、潜水士による水中作業を極力減らし、安全に短期間でケーソン100を補修することができる。
【0054】
(変形例)
以上の実施形態の他、損傷部の形状、波除鋼材の形状、鋼板の形状、具体的な細部構造等について適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 波除鋼材
2 本体
3 港内側の正面視梯子状部材
31 縦枠
32 横枠
33 補強材
35 エンドプレート
4 港外側の正面視梯子状部材
41 縦枠
42 横枠
43 補強材
45 エンドプレート
46 ジョイントプレート
47 アンカープレート
48 アンカープレート
5 上端部結合部材
51 連結枠
53 連結枠
55 エンドプレート
57 吊金物
59 アンカープレート
6 鋼板
7 鋼板
8 貫通ボルト
9 ナット
100 ケーソン
101 損傷した側壁
102 損傷部
103 他の側壁
105 隔壁
107 蓋コンクリート
111 吊り上げワイヤ
121 特殊大型袋
122 中詰めコンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6