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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】尿素製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 273/04 20060101AFI20221013BHJP
   C07C 275/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
C07C273/04
C07C275/00
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019047277
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020147534
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓伍
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043391(WO,A1)
【文献】特開昭60-209555(JP,A)
【文献】特開平10-120643(JP,A)
【文献】特表2015-519327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアと二酸化炭素から尿素を合成し、尿素合成液を生成する合成工程と、
前記合成工程で生成した尿素合成液を加熱することによって、アンモニウムカーバメイトを分解し、かつアンモニアと二酸化炭素を含む混合ガスを前記尿素合成液から分離する高圧分解工程と、
前記高圧分解工程で得られる前記混合ガスの少なくとも一部を吸収媒体に吸収させて凝縮させ、この凝縮の際に生じる熱を用いてスチームコンデンセートから低圧スチームを発生させる凝縮工程と、
を含む尿素製造方法であって、
さらに、
a)90℃より高温のスチームコンデンセートを、別の流体と熱交換して、90℃以下に冷却する工程と、
b)前記工程aからの前記スチームコンデンセートを、前記低圧スチームの温度より低い温度を有する更に別の流体と熱交換することにより、前記工程aからの前記スチームコンデンセートを加熱する工程と、
c)前記工程bからの前記スチームコンデンセートを、前記凝縮工程に前記低圧スチームを発生させるためのスチームコンデンセートとして供給する工程と、
を含むことを特徴とする尿素製造方法。
【請求項2】
前記尿素製造方法が、
前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解工程の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせる工程であって、前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮工程で発生させた前記低圧スチームの一部を使用する、精製工程と、
前記精製工程で処理された後の尿素合成液を、前記精製工程の圧力より低く且つ大気圧以下の圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度がさらに高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせる工程であって、前記精製工程で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮工程で発生させた前記低圧スチームの別の一部を使用する、濃縮工程と、
前記精製工程および前記濃縮工程のうちの一方もしくは両方から得られた低圧スチームコンデンセートの少なくとも一部を、大気圧以上の圧力に減圧することによって、低低圧スチームコンデンセートと低低圧スチームを発生させる低低圧流体発生工程と
を含み、
前記工程aにおいて、前記90℃より高温のスチームコンデンセートとして、前記低低圧スチームコンデンセートを用いる、請求項1に記載の尿素製造方法。
【請求項3】
前記低低圧流体発生工程における前記大気圧以上の圧力が、2バール以上である、請求項2に記載の尿素製造方法。
【請求項4】
前記凝縮工程に供給されるスチームコンデンセートの量が前記凝縮工程で発生する前記低圧スチームの量よりも多く、前記凝縮工程から、前記低圧スチームとスチームコンデンセートとを含む流体が得られ、
d)前記凝縮工程から得られた、前記低圧スチームとスチームコンデンセートとを含む流体を、低圧スチームとスチームコンデンセートとに分離する工程
を含み、
前記工程aにおいて、前記90℃より高温のスチームコンデンセートとして、前記工程dで分離したスチームコンデンセートを用いる、請求項1に記載の尿素製造方法。
【請求項5】
前記高圧分解工程において、中圧スチームを加熱源として用いて、前記合成工程で生成した尿素合成液を加熱するとともに、中圧スチームコンデンセートを得、
前記工程aにおいて、前記90℃より高温のスチームコンデンセートとして、
前記高圧分解工程で得られる前記中圧スチームコンデンセート、または
前記高圧分解工程で得られる前記中圧スチームコンデンセートを熱交換によって冷却した中圧スチームコンデンセート、または、
前記高圧分解工程で得られる前記中圧スチームコンデンセートを中低圧に減圧して中低圧スチームと中低圧スチームコンデンセートを生じさせる中低圧スチーム発生工程で得た、中低圧スチームコンデンセート、または、
前記中低圧スチーム発生工程で得た前記中低圧スチームコンデンセートを熱交換によって冷却した中低圧スチームコンデンセート
を用いる、請求項1に記載の尿素製造方法。
【請求項6】
前記工程aにおいて、前記別の流体として、前記合成工程、高圧分解工程および凝縮工程から選ばれる少なくとも一つの工程に供給される原料アンモニアを用いる、請求項1~5のいずれか一項に記載の尿素製造方法。
【請求項7】
前記尿素製造方法が、
前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解工程の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせる工程であって、前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮工程で発生させた前記低圧スチームの一部を使用する、精製工程と、
前記精製工程で処理された後の尿素合成液を、前記精製工程の圧力より低く且つ大気圧以下の圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度がさらに高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせる工程であって、前記精製工程で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮工程で発生させた前記低圧スチームの別の一部を使用する、濃縮工程と、
前記濃縮工程で処理された尿素合成液から空気を用いて粒状固体尿素を製造する造粒工程と、を含み、
前記工程aにおいて、前記別の流体として、前記造粒工程に供給する空気を用いる、請求項1~6のいずれか一項に記載の尿素製造方法。
【請求項8】
前記尿素製造方法が、
下記のガスIおよびガスII
ガスI)前記凝縮工程で凝縮しなかったガス、
ガスII)前記尿素製造方法が精製工程を含む場合の、精製工程で分離した気相として得られるガス、
のうちの少なくとも一方のガスを吸収媒体中に吸収および凝縮させながら、前記少なくとも一方のガスを吸収した吸収媒体を冷却して、アンモニアおよび二酸化炭素を含む回収液を得る回収工程
を含み、
ここで前記精製工程は、前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解工程の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせる工程であって、前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮工程で発生させた前記低圧スチームの一部を使用する工程であり、
前記工程bにおいて、前記少なくとも一方のガスを吸収した吸収媒体を、前記工程aからのスチームコンデンセートと熱交換することにより、前記工程bの加熱とともに前記回収工程の冷却を行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の尿素製造方法。
【請求項9】
前記尿素製造方法が、
下記のガスIおよびガスII
ガスI)前記凝縮工程で凝縮しなかったガス、
ガスII)前記尿素製造方法が精製工程を含む場合の、精製工程で分離した気相として得られるガス、
のうちの少なくとも一方のガスを吸収媒体中に吸収および凝縮させながら、前記少なくとも一方のガスを吸収した吸収媒体を冷却して、アンモニアおよび二酸化炭素を含む回収液を得る回収工程
を含み、
ここで前記精製工程は、前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解工程の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせる工程であって、前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮工程で発生させた前記低圧スチームの一部を使用する工程であり、
前記回収工程における冷却を、温水との熱交換によって行い、かつ、
前記工程bにおいて、前記回収工程で冷却に使用した後の温水を、前記工程aからのスチームコンデンセートと熱交換することにより、前記工程bの加熱を行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の尿素製造方法。
【請求項10】
前記尿素製造方法が、
前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解工程の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせる工程であって、前記高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮工程で発生させた前記低圧スチームの一部を使用する、精製工程と、
前記精製工程で処理された後の尿素合成液を、前記精製工程の圧力より低く且つ大気圧以下の圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度がさらに高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせる工程であって、前記精製工程で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮工程で発生させた前記低圧スチームの別の一部を使用する、濃縮工程と、
前記精製工程および前記濃縮工程のうちの一方もしくは両方から得られた低圧スチームコンデンセートの少なくとも一部を、大気圧より高い圧力に減圧することによって、低低圧スチームコンデンセートと低低圧スチームを発生させる低低圧流体発生工程と、
e)前記低低圧スチームを冷却することにより凝縮させてスチームコンデンセートを得る工程と
を含み、
前記工程bにおいて、前記低低圧スチームを、前記工程aからのスチームコンデンセートと熱交換することにより、前記工程bの加熱とともに前記工程eの冷却を行う、請求項1~9のいずれか一項に記載の尿素製造方法。
【請求項11】
前記尿素製造方法が、
f)前記工程eから得られるスチームコンデンセートを、前記低低圧流体発生工程に戻す工程
を含み、
前記工程fにおいて、前記工程eから得られるスチームコンデンセートを、このスチームコンデンセートの自重によって、前記低低圧流体発生工程に移送する、請求項10に記載の尿素製造方法。
【請求項12】
前記尿素製造方法が、
g)前記工程bで加熱したスチームコンデンセートを、前記凝縮工程に前記低圧スチームを発生させるためのスチームコンデンセートとして供給する前に、前記凝縮工程で発生させた前記低圧スチームと熱交換して、加熱する工程
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の尿素製造方法。
【請求項13】
アンモニアと二酸化炭素から尿素を合成し、尿素合成液を生成する合成器と、
前記合成器で生成した尿素合成液を加熱することによって、アンモニウムカーバメイトを分解し、かつアンモニアと二酸化炭素を含む混合ガスを前記尿素合成液から分離するよう構成された高圧分解器と、
前記高圧分解器で得られる前記混合ガスの少なくとも一部を吸収媒体に吸収させて凝縮させ、この凝縮の際に生じる熱を用いてスチームコンデンセートから低圧スチームを発生させるよう構成された凝縮器と、
を含む尿素製造装置であって、
さらに、
90℃より高温のスチームコンデンセートを、別の流体と熱交換して、90℃以下に冷却するよう構成された第1の熱交換構造と、
前記第1の熱交換構造からの前記スチームコンデンセートを、前記低圧スチームの温度より低い温度を有する更に別の流体と熱交換することにより、前記第1の熱交換構造からの前記スチームコンデンセートを加熱するよう構成された第2の熱交換構造と、
前記第2の熱交換構造からの前記スチームコンデンセートを、前記凝縮器に前記低圧スチームを発生させるためのスチームコンデンセートとして供給するラインと、
を含むことを特徴とする尿素製造装置。
【請求項14】
前記尿素製造装置が、
前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解器の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせるよう構成された精製装置であって、前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮器で発生させた前記低圧スチームの一部を使用するよう構成された精製装置と、
前記精製装置で処理された後の尿素合成液を、前記精製装置の圧力より低く且つ大気圧以下の圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度がさらに高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせるよう構成された濃縮装置であって、前記精製装置で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮器で発生させた前記低圧スチームの別の一部を使用するよう構成された濃縮装置と、
前記精製装置および前記濃縮装置のうちの一方もしくは両方から得られた低圧スチームコンデンセートの少なくとも一部を、大気圧以上の圧力に減圧することによって、低低圧スチームコンデンセートと低低圧スチームを発生させるよう構成された低低圧流体発生装置と
を含み、
前記第1の熱交換構造が、前記90℃より高温のスチームコンデンセートとして、前記低低圧スチームコンデンセートを用いるよう構成された、請求項13に記載の尿素製造装置。
【請求項15】
前記低低圧流体発生装置における前記大気圧以上の圧力が、2バール以上である、請求項14に記載の尿素製造装置。
【請求項16】
前記凝縮器に供給されるスチームコンデンセートの量が前記凝縮器で発生する前記低圧スチームの量よりも多く、前記凝縮器から、前記低圧スチームとスチームコンデンセートとを含む流体が得られるよう構成され、
前記凝縮器から得られた、前記低圧スチームとスチームコンデンセートとを含む流体を、低圧スチームとスチームコンデンセートとに分離するよう構成された気液分離器を含み、
前記第1の熱交換構造が、前記90℃より高温のスチームコンデンセートとして、前記気液分離器で分離したスチームコンデンセートを用いるよう構成された、請求項13に記載の尿素製造装置。
【請求項17】
前記高圧分解器が、中圧スチームを加熱源として用いて、前記合成器で生成した尿素合成液を加熱するとともに、中圧スチームコンデンセートを得るよう構成され、
前記第1の熱交換構造が、前記90℃より高温のスチームコンデンセートとして、
前記高圧分解器で得られる前記中圧スチームコンデンセート、または
前記高圧分解器で得られる前記中圧スチームコンデンセートを熱交換によって冷却した中圧スチームコンデンセート、または、
前記高圧分解器で得られる前記中圧スチームコンデンセートを中低圧に減圧して中低圧スチームと中低圧スチームコンデンセートを生じさせるよう構成された中低圧スチーム発生装置で得た、中低圧スチームコンデンセート、または、
前記中低圧スチーム発生装置で得た前記中低圧スチームコンデンセートを熱交換によって冷却した中低圧スチームコンデンセート
を用いるよう構成された、請求項13に記載の尿素製造装置。
【請求項18】
前記第1の熱交換構造が、前記別の流体として、前記合成器、高圧分解器および凝縮器から選ばれる少なくとも一つに供給される原料アンモニアを用いるよう構成された、請求項13~17のいずれか一項に記載の尿素製造装置。
【請求項19】
前記尿素製造装置が、
前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解器の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせるよう構成された精製装置であって、前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮器で発生させた前記低圧スチームの一部を使用するよう構成された精製装置と、
前記精製装置で処理された後の尿素合成液を、前記精製装置の圧力より低く且つ大気圧以下の圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度がさらに高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせるよう構成された濃縮装置であって、前記精製装置で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮器で発生させた前記低圧スチームの別の一部を使用するよう構成された濃縮装置と、
前記濃縮装置で処理された尿素合成液から空気を用いて粒状固体尿素を製造するよう構成された造粒装置と、を含み、
前記第1の熱交換構造が、前記別の流体として、前記造粒装置に供給する空気を用いるよう構成された、請求項13~18のいずれか一項に記載の尿素製造装置。
【請求項20】
前記尿素製造装置が、
下記のガスIおよびガスII
ガスI)前記凝縮器で凝縮しなかったガス、
ガスII)前記尿素製造装置が精製装置を含む場合の、精製装置で分離した気相として得られるガス、
のうちの少なくとも一方のガスを吸収媒体中に吸収および凝縮させながら、前記少なくとも一方のガスを吸収した吸収媒体を冷却して、アンモニアおよび二酸化炭素を含む回収液を得るよう構成された回収装置
を含み、
ここで前記精製装置は、前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解器の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせるよう構成された装置であって、前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮器で発生させた前記低圧スチームの一部を使用するよう構成された装置であり、
前記第2の熱交換構造が、前記少なくとも一方のガスを吸収した吸収媒体を、前記第1の熱交換構造からのスチームコンデンセートと熱交換することにより、前記第2の熱交換構造における加熱とともに前記回収装置における冷却を行うよう構成された、請求項13~19のいずれか一項に記載の尿素製造装置。
【請求項21】
前記尿素製造装置が、
下記のガスIおよびガスII
ガスI)前記凝縮器で凝縮しなかったガス、
ガスII)前記尿素製造装置が精製装置を含む場合の、精製装置で分離した気相として得られるガス、
のうちの少なくとも一方のガスを吸収媒体中に吸収および凝縮させながら、前記少なくとも一方のガスを吸収した吸収媒体を冷却して、アンモニアおよび二酸化炭素を含む回収液を得るよう構成された回収装置
を含み、
ここで前記精製装置は、前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解器の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせるよう構成された装置であって、前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮器で発生させた前記低圧スチームの一部を使用するよう構成された装置であり、
前記回収装置が、前記回収装置における冷却を、温水との熱交換によって行うよう構成され、かつ、
前記第2の熱交換構造が、前記回収装置で冷却に使用した後の温水を、前記第1の熱交換構造からのスチームコンデンセートと熱交換することにより、前記第2の熱交換構造における加熱を行うよう構成された、請求項13~20のいずれか一項に記載の尿素製造装置。
【請求項22】
前記尿素製造装置が、
前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を、前記高圧分解器の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせるよう構成された精製装置であって、前記高圧分解器で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮器で発生させた前記低圧スチームの一部を使用するよう構成された精製装置と、
前記精製装置で処理された後の尿素合成液を、前記精製装置の圧力より低く且つ大気圧以下の圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度がさらに高められた尿素合成液を得るとともに低圧スチームコンデンセートを生じさせるよう構成された濃縮装置であって、前記精製装置で処理された後の尿素合成液を加熱するための加熱源として、前記凝縮器で発生させた前記低圧スチームの別の一部を使用するよう構成された濃縮装置と、
前記精製装置および前記濃縮装置のうちの一方もしくは両方から得られた低圧スチームコンデンセートの少なくとも一部を、大気圧より高い圧力に減圧することによって、低低圧スチームコンデンセートと低低圧スチームを発生させるよう構成された低低圧流体発生装置と、
を含み、
前記第2の熱交換構造が、前記低低圧スチームを、前記第1の熱交換構造からのスチームコンデンセートと熱交換することによって、前記第2の熱交換構造における加熱を行うとともに、前記低低圧スチームを冷却することにより凝縮させてスチームコンデンセートを得るよう構成された、請求項13~21のいずれか一項に記載の尿素製造装置。
【請求項23】
前記尿素製造装置が、
前記第2の熱交換構造において低低圧スチームが凝縮して得られた前記スチームコンデンセートを、前記低低圧流体発生装置に戻すライン
を含み、
このラインを通じて、前記第2の熱交換構造において低低圧スチームが凝縮して得られた前記スチームコンデンセートを、このスチームコンデンセートの自重によって、前記低低圧流体発生装置に移送するよう構成された、請求項22に記載の尿素製造装置。
【請求項24】
前記尿素製造装置が、
前記第2の熱交換構造で加熱したスチームコンデンセートを、前記凝縮器に前記低圧スチームを発生させるためのスチームコンデンセートとして供給する前に、前記凝縮器で発生させた前記低圧スチームと熱交換して、加熱するよう構成された熱交換構造
を含む、請求項13~23のいずれか一項に記載の尿素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアと二酸化炭素から尿素を製造する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
尿素製造方法は、典型的には、合成工程、高圧分解工程、凝縮工程を含み、また、精製工程および濃縮工程を含む。合成工程では、アンモニア(NH)と二酸化炭素(CO)とから、尿素を生成させる。詳しくは、式(1)で示すように、アンモニア(NH)と二酸化炭素(CO)との反応により、アンモニウムカーバメイト(NHCOONH)が生成される。さらに、式(2)で示すように、アンモニウムカーバメイトの脱水反応により尿素(NHCONH)と水(HO)とが生成される。
2NH+CO → NHCOONH (1)
NHCOONH → NHCONH+HO (2)
いずれの反応も平衡反応であるが、(1)の反応に比べて、(2)の反応が遅く、律速となる。
【0003】
高圧分解工程では、合成工程で得られた尿素合成液を加熱して、当該尿素合成液に含まれるアンモニウムカーバメイトをアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアと二酸化炭素を含む混合ガスと、より高濃度の尿素合成液を得る。凝縮工程では、高圧分解工程で得られた混合ガスを凝縮させる。
【0004】
精製工程では、高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を、高圧分解工程の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得る。
【0005】
濃縮工程では、精製工程で処理された後の尿素合成液を、精製工程の圧力より低く且つ大気圧以下の圧力において加熱して、気相と液相を生じさせ、この気相を分離することによって、尿素濃度がさらに高められた尿素合成液を得る。
【0006】
特許文献1には、精製工程及び/又は濃縮工程で発生したスチームコンデンセートを、合成工程に供給する原料アンモニアの加熱源として使用する方法が記載されている。
【0007】
非特許文献1では、精製工程や濃縮工程で低圧スチームを加熱源として使用する際に生じるスチームコンデンセートを、ほぼ大気圧(1.2バール)まで減圧した後にフラッシュし、それによって生じるほぼ大気圧のスチームを、アンモニアの加熱に用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/043391号
【非特許文献】
【0009】
【文献】E. Dooyeweerdら、"Comparison of the energy consumptions of low-energy urea technologies", Nitrogen No. 143, May-June 1983, pp 32-38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記文献には、熱回収しようとする流体を原料アンモニアと熱交換させることにより、当該流体から熱回収することが教示される。
【0011】
しかしながら、熱回収の対象となる流体と原料アンモニアとを熱交換することにより熱回収する技術だけでは、原料アンモニアの流量や温度に制約があるため、尿素製造装置を設計する際の自由度が小さく、比較的低温の流体からの熱回収が実用上困難であったり、熱回収のための装置が複雑になったりすることがある。
【0012】
本発明の目的は、比較的低温の流体から熱回収を行うことのできる、新たな尿素製造方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、
アンモニアと二酸化炭素から尿素を合成し、尿素合成液を生成する合成工程と、
前記合成工程で生成した尿素合成液を加熱することによって、アンモニウムカーバメイトを分解し、かつアンモニアと二酸化炭素を含む混合ガスを前記尿素合成液から分離する高圧分解工程と、
前記高圧分解工程で得られる前記混合ガスの少なくとも一部を吸収媒体に吸収させて凝縮させ、この凝縮の際に生じる熱を用いてスチームコンデンセートから低圧スチームを発生させる凝縮工程と、
を含む尿素製造方法であって、
さらに、
a)90℃より高温のスチームコンデンセートを、別の流体と熱交換して、90℃以下に冷却する工程と、
b)前記工程aからの前記スチームコンデンセートを、前記低圧スチームの温度より低い温度を有する更に別の流体と熱交換することにより、前記工程aからの前記スチームコンデンセートを加熱する工程と、
c)前記工程bからの前記スチームコンデンセートを、前記凝縮工程に前記低圧スチームを発生させるためのスチームコンデンセートとして供給する工程と、
を含むことを特徴とする尿素製造方法が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、
アンモニアと二酸化炭素から尿素を合成し、尿素合成液を生成する合成器と、
前記合成器で生成した尿素合成液を加熱することによって、アンモニウムカーバメイトを分解し、かつアンモニアと二酸化炭素を含む混合ガスを前記尿素合成液から分離するよう構成された高圧分解器と、
前記高圧分解器で得られる前記混合ガスの少なくとも一部を吸収媒体に吸収させて凝縮させ、この凝縮の際に生じる熱を用いてスチームコンデンセートから低圧スチームを発生させるよう構成された凝縮器と、
を含む尿素製造装置であって、
さらに、
90℃より高温のスチームコンデンセートを、別の流体と熱交換して、90℃以下に冷却するよう構成された第1の熱交換構造と、
前記第1の熱交換構造からの前記スチームコンデンセートを、前記低圧スチームの温度より低い温度を有する更に別の流体と熱交換することにより、前記第1の熱交換構造からの前記スチームコンデンセートを加熱するよう構成された第2の熱交換構造と、
前記第2の熱交換構造からの前記スチームコンデンセートを、前記凝縮器に前記低圧スチームを発生させるためのスチームコンデンセートとして供給するラインと、
を含むことを特徴とする尿素製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較的低温の流体から熱回収を行うことのできる、新たな尿素製造方法および装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るスチーム/スチームコンデンセート系のプロセス例を説明するための模式図である。
図2】本発明に係るスチーム/スチームコンデンセート系の別のプロセス例を説明するための模式図である。
図3】本発明に係るスチーム/スチームコンデンセート系のさらに別のプロセス例を説明するための模式図である。
図4】本発明に係るスチーム/スチームコンデンセート系のさらに別のプロセス例を説明するための模式図である。
図5】尿素製造装置の概略構成例を示すプロセスフローダイアグラムである。
図6】回収装置の概略構成例を示すプロセスフローダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る尿素製造方法は、合成工程、高圧分解工程および凝縮工程を含む。本発明に係る尿素製造方法は、さらに、精製工程、濃縮工程、低低圧流体発生工程、回収工程、中低圧スチーム発生工程および造粒工程のうちの一つもしくは複数を含むことができる。原料としてのアンモニアおよび二酸化炭素は、合成工程、高圧分解工程、凝縮工程、精製工程、回収工程のうちの一つもしくは複数の工程に、外部から供給することができる。
【0018】
このような尿素製造方法を行うための尿素合成装置は、合成工程、高圧分解工程および凝縮工程をそれぞれ行うための合成器、高圧分解器および凝縮器を含む。尿素合成装置は、さらに、精製工程、濃縮工程、低低圧流体発生工程、回収工程、中低圧スチーム発生工程および造粒工程をそれぞれ行う精製装置、濃縮装置、低低圧流体発生装置、回収装置、中低圧スチーム発生装置および造粒装置のうちの一つもしくは複数を含むことができる。
【0019】
スチームコンデンセートは、尿素製造装置内でスチームが凝縮した水を意味する。ただし、スチームコンデンセートに外部から補給水が添加されていてもよい。また、温水を熱交換において冷却媒体として使用する場合、その温水は、ユーティリティ冷却水よりも高い温度を有する水であり(当該熱交換に供給する段階において)、当該熱交換後も液体のままである(すなわち沸騰しない)。必要に応じて、沸騰防止のために、当該温水を加圧することができる。温水の温度は、回収工程に関して後述する。
【0020】
〔合成工程〕
合成工程において、アンモニアと二酸化炭素から尿素を合成し、尿素合成液を生成する。合成工程において、後述する凝縮工程からの循環液に含まれるアンモニウムカーバメイトからも、尿素が合成される。
【0021】
合成工程の運転圧力は一般的に130バール(絶対圧。以下においても同様)から250バール、好ましくは140バールから200バールであり、温度は一般的に160℃から200℃、好ましくは170℃から190℃である。
【0022】
〔高圧分解工程〕
高圧分解工程では、典型的には中圧スチームを加熱源として使用して、合成工程で生成した尿素合成液を加熱する。これによって、合成工程から得られる尿素合成液に含まれるアンモニウムカーバメイトを分解し、アンモニアと二酸化炭素を含む混合ガスを尿素合成液から分離する。高圧分解工程から得られるこの混合ガスを、以下、「高圧分解出口ガス」と呼ぶことがある。また、加熱源として使用して中圧スチームが凝縮することによって、中圧スチームコンデンセートが生じる。
【0023】
高圧分解工程における加熱には、高温の加熱媒体が必要である。典型的には、当該加熱において、後述する凝縮工程で発生する低圧スチームでは温度が不十分であり、低圧スチームより圧力が高い中圧スチームが利用される。
【0024】
中圧スチームの圧力は一般的に12バールから40バール、好ましくは14バールから25バールである。中圧スチームは、尿素製造装置内でスチームタービンの背圧スチームとして適宜発生させる場合が多く、背圧スチームとして得られた過熱スチームをスチームコンデンセートと適宜接触させることで飽和スチームとしてから加熱に用いる場合も多い。そのため、典型的には、中圧スチームの温度は、その圧力における水の飽和温度である。中圧スチームコンデンセートの圧力および温度は、中圧スチームのものと同程度である。あるいは、尿素製造装置の外部から供給することができる。
【0025】
高圧分解工程の運転温度は一般的に150℃から220℃、好ましくは160℃から200℃である。
【0026】
詳しくは、合成工程で得られた尿素合成液は、尿素、アンモニア、二酸化炭素、アンモニウムカーバメイトおよび水を含む。この尿素合成液は、通常、合成工程の圧力と実質的にほぼ等しい圧力下で加熱され、これにより、アンモニア、二酸化炭素およびアンモニウムカーバメイトが、アンモニア、二酸化炭素および水を含む混合ガスとして分離される。
【0027】
高圧分解工程として、加熱のみによる分解法を採用することができる。しかし、分解を促進するために、加熱に加えて、二酸化炭素ガスを尿素合成液と接触させるストリッピング法を採用することもできる。
【0028】
〔凝縮工程〕
凝縮工程では、高圧分解工程で得られる混合ガス(高圧分解出口ガス)の少なくとも一部を吸収媒体に吸収させて凝縮させる。この凝縮の際に生じる熱を用いて、スチームコンデンセートから低圧スチームを発生させる。なお、低圧スチームを、他の流体を加熱する加熱源として使用したとき、低圧スチームが凝縮することによって、低圧スチームコンデンセートが生じる。
【0029】
この低圧スチームの圧力は、その圧力における水の飽和温度が、凝縮工程におけるプロセス流体の温度より低くなるような圧力である。一方、発生させた低圧スチームを尿素製造方法の別の工程で利用することを考慮すると、その圧力はある程度高い方が良い。このような観点から、低圧スチームの圧力は一般的に3バールから9バール、好ましくは4バールから7バールである。典型的には、低圧スチームの温度は、その圧力における水の飽和温度である。低圧スチームコンデンセートの圧力および温度は、低圧スチームのものと同程度である。
【0030】
凝縮工程で使用する吸収媒体としては、水(尿素、アンモニア、二酸化炭素及びアンモニウムカーバメイトを含んでいてもよい)など、尿素製造方法の分野で公知の吸収媒体を適宜使用できる。
【0031】
凝縮工程で得られる液(プロセス流体)の温度は一般的に100℃から210℃、特に反応と凝縮のバランスを考慮すると、好ましくは160℃から190℃である。なお、尿素製造における高圧プロセス(合成工程、高圧分解工程及び凝縮工程を含む)には、圧力損失以外に圧力を減じるものが無いので(後述する循環のためにエジェクターによる昇圧は行う)、合成工程、高圧分解工程及び凝縮工程は、ほぼ同等の圧力で運転される。
【0032】
詳しくは、高圧分解工程において分離された混合ガス(高圧分解出口ガス)は、凝縮工程に導入されて、水を含む吸収媒体と冷却下に接触し、この混合ガスが凝縮する。凝縮の際に、一部のアンモニアと二酸化炭素はアンモニウムカーバメイトとなり(上記式(1)参照)、凝縮温度を高く保つことによって尿素合成反応(上記式(2)参照)も進む。
【0033】
凝縮工程で混合ガスが凝縮する際には大量の熱を発生するが、この熱を有効活用するために熱回収を行う。この熱回収の方法としては、高圧分解工程で処理された後の尿素合成液と、凝縮器の内部流体(プロセス流体)との熱交換による方法がある。あるいは、凝縮器の内部流体(プロセス流体)と温水(加圧水を用いる場合が多い)とを熱交換して、より高温となった温水を得る方法がある。しかし、多くの場合、凝縮器の内部流体(プロセス流体)とスチームコンデンセート(特には低圧スチームコンデンセート)とを熱交換して、低圧スチームを発生させる方法が採用される。あるいは、この方法に前述の2つの方法の少なくとも一方を組み合わせることもできる。
【0034】
このように、凝縮工程では、熱回収によって低圧スチームを発生させるために、スチームコンデンセートの供給が必要である。例えば、凝縮工程において、凝縮器とは別に、低圧スチームコンデンセートを貯めるためのベッセルを用いる場合、このベッセルに低圧スチームコンデンセートを供給し、そのベッセルから凝縮器に低圧スチームコンデンセートを移送することができる。本明細書では、この低圧スチームを発生させるために、凝縮工程(凝縮器)に供給するスチームコンデンセートを「凝縮工程供給用スチームコンデンセート」ということがある。
【0035】
高圧分解工程で発生する中圧スチームコンデンセートを減圧して、凝縮工程供給用スチームコンデンセートに使うことが多い。この際、中圧スチームコンデンセートが、別の工程の加熱源として使用されて温度が低下した後に、凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして使われることもある。いずれにしても、凝縮工程で発生する低圧スチームの量が多いので、高圧分解工程で発生した中圧スチームコンデンセートだけでは、凝縮工程供給用スチームコンデンセートの必要量を満たせないことが一般的である。そこで、低圧スチームを尿素製造装置内で加熱源として使用した後に発生するスチームコンデンセートを、ポンプで昇圧して、凝縮工程において低圧スチームを発生させるための凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして利用することができる。
【0036】
凝縮器の内部流体(プロセス流体)とスチームコンデンセートとの熱交換のために、縦型もしくは横型のシェル&チューブ型の熱交換器を採用できる。チューブ側で混合ガスを凝縮する方法も採用できるが、凝縮工程の滞留時間を、凝縮と反応のために長くとることができるように、シェル側で混合ガスを凝縮する方法を採用することもできる。
【0037】
なお、凝縮工程(凝縮器のプロセス側)で凝縮しなかったガスを、適宜減圧した後に、吸収媒体(液体)中に吸収および凝縮させながら、このガスを吸収した吸収媒体を冷却して、アンモニアおよび二酸化炭素を含む回収液を得ることができる(回収工程)。
【0038】
〔循環〕
凝縮工程で得られた凝縮液(高圧分解出口ガスの少なくとも一部を吸収した吸収媒体)を再度合成工程に送ることができる。このようにして、尿素に転化しなかった未反応アンモニアと未反応二酸化炭素に、合成工程、高圧分解工程および凝縮工程の間を循環させる方法を採用することができる。凝縮工程で得られた凝縮液を循環させる方法としては下方に合成器(合成工程を行う)を配置し、その上方に凝縮器(凝縮工程を行う)を設置して、重力を用いて凝縮液を循環させる方法がある。また、別の循環方法として、合成器に供給する原料アンモニアを駆動流体として、凝縮工程で得られた凝縮液をエジェクターによって昇圧して循環させる方法がある。また、重力を用いて循環する方法とエジェクターを用いて循環する方法を組み合わせてもよい。
【0039】
〔精製工程および濃縮工程〕
高圧分解工程で処理された後の尿素合成液に対して減圧と加熱の処理を行うことによって、未分離のアンモニア、二酸化炭素およびアンモニウムカーバメイト、ならびに水を、アンモニア、二酸化炭素および水を含む混合ガス(気相)として分離する。これによって尿素濃度が高められた尿素合成液(液相)が得られる。
【0040】
この混合ガスは、吸収媒体(液体)中に吸収および凝縮させながら、このガスを吸収した吸収媒体を冷却することによって、吸収媒体中に回収し、回収液を得ることができる(回収工程)。
【0041】
このような減圧と加熱の処理において、高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を可能な限り減圧したほうが、未分離のアンモニア、二酸化炭素、アンモニウムカーバメイトおよび水を、加熱によって混合ガスとして分離しやすい。一方、分離した混合ガスを吸収媒体に吸収させ、得られた回収液を再度高圧プロセスに返送するためには、減圧と加熱の処理において尿素合成液は可能な限り高圧である方が有利である。そのため、高圧分解工程で処理された後の尿素合成液に対して、減圧と加熱による処理を圧力が相異なる複数段階に分けて行うことにより、アンモニア、二酸化炭素、アンモニウムカーバメイトおよび水を効率的に分離および回収し、高濃度の尿素合成液を得ることができる。そのために、精製工程と、濃縮工程とを行う。
【0042】
精製工程および濃縮工程のいずれにおいても、凝縮工程において発生する低圧スチームを加熱源として使用することができる。この低圧スチームは、高圧分解工程で加熱源として使用される中圧スチームと比べて、低温である。
【0043】
なお、精製工程および濃縮工程のいずれにおいても、加熱源として、低圧スチームに加えて、中圧スチームコンデンセートを併用することができ、且つ/または、中圧スチームコンデンセートを減圧して生じるスチームを併用することができる。中圧スチームコンデンセートは、中圧スチームが加熱源として使用されて生じるスチームコンデンセートである。中圧スチームコンデンセートを減圧することにより、中圧スチームよりも低圧のスチームおよびスチームコンデンセートが得られる。
【0044】
〔精製工程〕
精製工程では、高圧分解工程で処理された後の尿素合成液を、高圧分解工程の圧力より低く且つ大気圧より高い圧力において、凝縮工程で発生させた低圧スチームの一部を加熱源に使用して加熱することによって、気相と液相を生じさせる。このとき、高圧分解工程で処理された後の尿素合成液に含まれるアンモニウムカーバメイトを分解することができる。この気相を液相から分離することによって、尿素濃度が高められた尿素合成液を得る。また、加熱源として使用した低圧スチームから、低圧スチームコンデンセートが生じる。
【0045】
このために、精製工程において、減圧操作を少なくとも一回行い、また、加熱操作を少なくとも一回行う。精製工程を一段階で行うことができ、あるいは複数段階で行うことができる。例えば精製工程を、中圧分解工程と、低圧分解工程の二段階で行うことができる。
【0046】
中圧分解工程は、高圧分解工程で処理された直後の尿素合成液を、大気圧を超える圧力に減圧し、必要に応じて加熱して、気相(混合ガス)と液相を生じさせ、気相を分離する工程である。ただし、前述のように、高圧分解工程で処理された直後の尿素合成液と、凝縮器の内部流体(プロセス流体)との熱交換によって、凝縮工程で熱回収する場合がある。この場合は、当該熱回収によって加熱された後の尿素合成液を、高圧分解工程より低い圧力で加熱して混合ガスを分離する工程が、中圧分解工程に該当する。
【0047】
中圧分解工程では、低圧スチームを加熱源として使用することができる。中圧分解工程では、高圧分解工程で処理された後の尿素合成液に含まれるアンモニウムカーバメイトが分解される。中圧分解工程から、アンモニア及び二酸化炭素を含む混合ガス(以下、「中圧分解出口ガス」ということがある)と、アンモニウムカーバメイト濃度が低下した尿素合成液が得られる。
【0048】
中圧分解工程の運転圧力は、減圧と加熱による処理を何段階行うかにもよるが、例えば、2段階(中圧分解工程と低圧分解工程)の場合、一般的に3バールから130バール、好ましくは6バールから70バール、より好ましくは10バールから20バールである。中圧分解工程の運転温度は運転圧力にもよるが、一般的に100℃から180℃、好ましくは130℃から170℃程度である。
【0049】
低圧分解工程では、中圧分解工程の後に、中圧分解工程より低い圧力(ただし大気圧以上)において、中圧分解工程で処理された後の尿素合成液を減圧および/または加熱することができる。低圧分解工程から、アンモニア及び二酸化炭素を含む混合ガス(以下、「低圧分解出口ガス」ということがある)と、アンモニウムカーバメイト濃度がさらに低下した尿素合成液が得られる。
【0050】
低圧分解工程の運転圧力は、一般的に1.5バールから6バール、好ましくは2バールから4バールである。低圧分解工程の運転温度は運転圧力にもよるが、一般的に90℃から170℃、好ましくは110℃から150℃程度である。
【0051】
精製工程を行う精製装置は、減圧を行うための減圧弁、加熱を行うための熱交換構造、および気液分離構造を含むことができる。例えば、中圧分解工程を行う中圧分解器は、加熱源としてのスチームと、プロセス流体(尿素合成液)との熱交換構造を有することができる。また、プロセス流体(尿素合成液)の流れを基準として、中圧分解器の上流に、減圧を行うための減圧弁を配することができる。
【0052】
〔濃縮工程〕
濃縮工程では、精製工程で処理された後の尿素合成液を、精製工程の圧力(精製工程における最後の減圧操作の後の圧力)より低く且つ大気圧以下の圧力において、凝縮工程で発生させた低圧スチームの別の一部を加熱源に使用して加熱することによって、気相と液相を生じさせる。この気相を液相から分離することによって、尿素濃度がさらに高められた尿素合成液を得る。また、加熱源として使用した低圧スチームから、低圧スチームコンデンセートが生じる。濃縮工程では、大気圧下もしくは真空下で加熱を行うことにより、尿素合成液に含まれる水の含有量を減らす。
【0053】
このために、濃縮工程において、減圧操作を少なくとも一回行い、また、加熱操作を少なくとも一回行う。濃縮工程を一段階で行うことができ、あるいは複数段階で行うことができる。例えば濃縮工程を、二段階で行うことができる。
【0054】
濃縮工程の条件は造粒方法にも依存するが、例えば、二段階の濃縮を以下に示す条件で行い、プリル状個体尿素を製造することができる。
・1段目
尿素濃度:80~98質量%、
圧力:100mmHg(0.13バール)~500mmHg(0.67バール)、好適には150mmHg(0.20バール)~350mmHg(0.47バール)、
温度:125~140℃。
・2段目
尿素濃度:94~99.9質量%、
圧力:10mmHg(0.013バール)~100mmHg(0.13バール)、好適には15mmHg(0.020バール)~50mmHg(0.067バール)、
温度:130~145℃。
【0055】
濃縮工程を行う濃縮装置は、減圧を行うための減圧弁、加熱を行うための熱交換構造、および気液分離構造を含むことができる。濃縮工程から得られる高濃度の尿素合成液を製品尿素とすることができ、あるいは濃縮工程に続いて造粒工程を行い、粒状の製品尿素を得ることもできる。
【0056】
〔低低圧流体発生工程〕
低低圧流体発生工程において、精製工程および濃縮工程のうちの一方もしくは両方から得られた低圧スチームコンデンセートの少なくとも一部を、大気圧以上の圧力に減圧することによって、低低圧スチームコンデンセートと低低圧スチームを発生させる。低低圧スチームコンデンセートおよび低低圧スチームは、大気圧以上で、かつ精製工程および濃縮工程のうちの一方もしくは両方から得られた低圧スチームコンデンセートよりも低い圧力を有する。したがって、低低圧スチームコンデンセートおよび低低圧スチームは、凝縮工程で発生させる低圧スチームよりも低い圧力を有する。大気圧より高い圧力を有する低低圧スチームコンデンセートおよび低低圧スチームは、それぞれ大気圧のスチームコンデンセートおよびスチームと比べて、利用価値が高い。
【0057】
低低圧流体発生工程を行うために用いる低低圧流体発生装置は、減圧弁を含むことができ、さらに気液分離器(ベッセル)を含むことができる。
【0058】
低低圧スチームおよび低低圧スチームコンデンセートの温度を比較的高くする観点から、低低圧スチームおよび低低圧スチームコンデンセートの圧力は2バール以上が好ましく、3バール以上がより好ましい。低低圧スチームおよび低低圧スチームコンデンセートの圧力と、凝縮工程で生じる低圧スチームとの圧力差は1バール以上が好ましく、2バール以上がより好ましい。圧力差がこのような範囲にあると、低圧スチームコンデンセートを低低圧流体発生装置に流入させて、低低圧流体を発生させることが容易である。典型的には、低低圧流体発生工程における低低圧スチームおよび低低圧スチームコンデンセートの温度は、その圧力における水の飽和温度である。低低圧スチームおよび低低圧スチームコンデンセートの温度は、低低圧流体発生工程よりも後に行う熱交換によって、変化しうる。
【0059】
〔回収工程〕
回収工程では、下記のガスIおよびガスIIのうちの少なくとも一方のガスを吸収媒体(液体)中に吸収および凝縮させながら、当該少なくとも一方のガスを吸収した吸収媒体を冷却して、アンモニアおよび二酸化炭素を含む回収液を得る。
ガスI)凝縮工程で凝縮しなかったガス。
ガスII)尿素製造方法が精製工程を含む場合の、精製工程で分離した気相として得られるガス。
【0060】
ガスIは、吸収および凝縮の前に、適宜減圧することができる。また、精製工程を二段階(中圧分解工程と低圧分解工程)で行う場合、特に、中圧分解工程で分離した気相をガスIIとして用いることができる。
【0061】
この回収液を、適宜昇圧した後に、再度高圧プロセス(合成工程、高圧分解工程及び凝縮工程を含む)、通常は凝縮工程に返送することによって、未反応アンモニアおよび未反応二酸化炭素を回収できる。吸収媒体としては、水(尿素、アンモニア、二酸化炭素及びアンモニウムカーバメイトを含んでいてもよい)など、尿素製造方法の分野で公知の吸収媒体を適宜使用できる。
【0062】
ガスIおよび/またはガスIIとして、複数のガスを用いる場合、これらのガスのうちの2以上のガスを適宜混合して回収工程に供給することができる。
【0063】
さらに、ガスIおよび/またはIIの少なくとも一部を回収工程より上流で吸収媒体と気液接触させ、凝縮の際に生じる熱を濃縮工程における尿素合成液の加熱に用いてもよい。この際、熱交換には熱交換器を用いるのが一般的である。また、この際に用いる吸収媒体は、回収工程で用いる上記吸収媒体と同じでよい。
【0064】
回収工程における冷却(ガスIおよびIIの少なくとも一方を吸収した液の冷却)のための冷却媒体として、温水を用いることができる。回収工程に供給する冷却媒体(温水)の温度は、例えば50~110℃、典型的には90~100℃程度である。回収工程から、例えば70~120℃、典型的には90~110℃程度の温水が排出される。回収工程で使用する冷却媒体(温水)の圧力は、例えば2~6バール程度である。
【0065】
回収工程への吸収媒体の供給温度は例えば40~100℃程度、回収工程からの吸収媒体の排出温度は例えば90~120℃程度である。回収工程で使用する吸収媒体の圧力は、回収工程で冷却するガスの圧力と同程度とすることができる。
【0066】
〔中低圧スチーム発生工程〕
高圧分解工程から中圧スチームコンデンセートが得られる場合、その中圧スチームコンデンセートを、中低圧に減圧して、中低圧スチームと中低圧スチームコンデンセートを生じさせることができる(中低圧スチーム発生工程)。このために用いる中低圧スチーム発生装置は、減圧のために、適宜の減圧弁を含むことができ、発生する中低圧スチームと中低圧スチームコンデンセートを分離するために気液分離器を含むことができる。
【0067】
中低圧とは、中圧スチームの圧力より低く、かつ低圧スチームの圧力より高い圧力を意味する。中低圧スチームおよび中低圧スチームコンデンセートの圧力は例えば7バールから18バール、好ましくは8バールから12バールである。典型的には、中低圧スチームおよび中低圧スチームコンデンセートの温度は、その圧力における水の飽和温度である。
【0068】
また、中圧スチームを駆動流体として、低圧スチームをエジェクターによって昇圧することにより、圧力が中圧スチームの圧力より低くかつ低圧スチームの圧力より高い、中低圧スチームを生じさせることもできる。中圧スチームよりも高圧である高圧スチームを駆動流体として、低圧スチームをエジェクターによって昇圧することにより、中低圧スチームを生じさせてもよい。また、中圧スチームを駆動流体とするエジェクターと高圧スチームを駆動流体とするエジェクターを併用してもよい。なお、高圧スチームとは例えばスチームタービンに供給するスチームである。この工程により、低圧スチームを有効活用しながら、低圧スチームより高温の加熱源を増やすことができる。
【0069】
〔造粒工程〕
尿素製造方法は、濃縮工程で処理された尿素合成液から、空気を用いて粒状固体尿素を製造する造粒工程を含むことができる。造粒工程は、空気を加熱する工程を含むことができる。空気の加熱は、例えば、外部からの空気を昇温させ、空気の相対湿度を下げるために行う。上記造粒工程を行うために、尿素製造の分野で公知の造粒装置に、空気を加熱するための適宜の熱交換構造を設けた装置を使用することができる。
【0070】
〔比較的低温の流体からの熱回収(工程a~c)〕
本発明の尿素製造方法は、工程a~cを含む。
a)90℃より高温のスチームコンデンセートを、別の流体と熱交換して、90℃以下に冷却する工程、
b)前記工程aからの前記スチームコンデンセートを、前記低圧スチーム(凝縮工程で発生する低圧スチーム)の温度より低い温度を有する更に別の流体(以下、「熱回収対象流体」ということがある)と熱交換することにより、前記工程aからの前記スチームコンデンセートを加熱する工程、
c)前記工程bからの前記スチームコンデンセートを、前記凝縮工程に前記低圧スチームを発生させるためのスチームコンデンセートとして供給する工程。
【0071】
工程aでは、90℃より高温のスチームコンデンセートの温度を下げる。温度を下げた後のスチームコンデンセートを用いて、工程bにおいて、熱回収対象流体から熱を回収する。熱回収に用いた後のスチームコンデンセート、すなわち工程bで加熱されたスチームコンデンセートを、凝縮工程に供給する。これらの工程によって、比較的低温の流体から容易に熱回収を行うことができる。これは、尿素製造装置で加熱源として使用するスチームの量を減少させるために有効である。
【0072】
工程aで降温したスチームコンデンセートの一部を、尿素製造装置の外部(例えば、ボイラ給水調整装置など)へ排出し、残部を工程bに供給することができる。この場合、外部に排出されるスチームコンデンセートの温度が低いため、外部に排出されるスチームコンデンセートによって尿素製造装置から持ち出される熱が少ない。また、例えばボイラ給水調整装置に供給するスチームコンデンセートの温度が低いと、ボイラ給水調整装置の耐熱温度の観点から有利である場合がある。
【0073】
工程a~cを行うために、熱交換構造、昇圧機、配管などを適宜組み合わせて使用することができる。
【0074】
〔工程a〕
工程aでは、90℃より高温のスチームコンデンセートを、別の流体と熱交換して、90℃以下に冷却する。
【0075】
工程aに供給するスチームコンデンセートとして、尿素合成装置内に存在するスチームコンデンセートのうち、90℃より高い温度を有するものを適宜用いることができる。工程aに供給するスチームコンデンセートの温度は、例えば100~220℃程度、典型的には100~170℃程度である。工程aから排出するスチームコンデンセートの温度は、90℃以下であり、例えば30~70℃程度、典型的には50℃程度である。工程aで使用するスチームコンデンセートの圧力は、例えば大気圧~25バール程度である。
【0076】
工程aで用いる「別の流体」としては、尿素合成装置内に存在する流体のうち、90℃以下の温度、例えば30~50℃程度の温度を有するものを適宜用いることができる。工程aから排出される当該別の流体の温度は、工程aに供給する90℃より高温のスチームコンデンセートの温度よりも低い。
【0077】
工程aを行うために、適宜の熱交換構造(以下「第1の熱交換構造」ということがある)を使用することができる。第1の熱交換構造においては、高温側に90℃より高温のスチームコンデンセートを供給し、低温側に別の流体を供給する。
【0078】
〔工程b〕
工程bでは、工程aからのスチームコンデンセートを熱回収対象流体と熱交換することにより、工程aからのスチームコンデンセートを加熱する。つまり、熱回収対象流体から熱回収する。工程bに、工程aで得られたスチームコンデンセートを供給することができる。工程bを、1段階だけ行うこともできるが、複数段階行うこともできる。例えば工程bを2段階で行う場合、工程aで得られたスチームコンデンセートを1段目の工程bに供給して加熱し、1段目の工程bから得られたスチームコンデンセートを2段目の工程bに供給して更に加熱することができる。
【0079】
工程bに供給するスチームコンデンセートの温度は、例えば30~70℃程度である。工程bから排出されるスチームコンデンセートの温度は、前記低圧スチームの温度より低い。
【0080】
熱回収対象流体としては、尿素合成装置内に存在する流体のうち、前記低圧スチームの温度より低い温度を有するものを適宜用いることができる。
【0081】
工程bを行うために、適宜の熱交換構造(以下「第2の熱交換構造」ということがある)を使用することができる。第2の熱交換構造においては、低温側に工程aからのスチームコンデンセートを供給し、高温側に前記更に別の流体(熱回収対象流体)を供給する。
【0082】
〔工程c〕
工程cでは、工程bからのスチームコンデンセートを、凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして凝縮工程に供給する。工程cを行うために、第2の熱交換構造からのスチームコンデンセートを、凝縮器に、凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして供給するライン、すなわち第2の熱交換器構造の低温側出口と、凝縮器の凝縮工程供給用スチームコンデンセート入口(冷却側入口)とを接続するラインを使用することができる。
【0083】
以下に、工程aに供給するスチームコンデンセート、工程aに供給する別の流体および工程bで熱回収する熱回収対象流体の形態について説明する。以下に説明する形態は、適宜組み合わせて利用することができる。
【0084】
〔形態1.1:工程aに供給するスチームコンデンセートの第1の形態〕
この形態では、尿素製造方法が、精製工程、濃縮工程、低低圧流体発生工程を含む。そして、工程aに供給するスチームコンデンセート(90℃超)として、低低圧流体発生工程で発生させた低低圧スチームコンデンセート(全部でもよいし、一部だけでもよい)を用いる。この形態では、工程aに供給するスチームコンデンセートの圧力が比較的低い。したがって、工程aおよびbを行うための装置の設計圧力を低くすることができる。
【0085】
工程aに供給する低低圧スチームコンデンセートの温度は、典型的には低低圧スチームコンデンセートの前述の圧力(大気圧以上の圧力)における水の沸点である。例えば精製工程および濃縮工程のうちの一方もしくは両方から得られた低圧スチームコンデンセートの少なくとも一部を、大気圧以上、好ましくは2バール以上まで減圧することによって、大気圧以上のスチームコンデンセートと大気圧以上のスチームを発生させることができる。このスチームコンデンセートを、工程aに供給する低低圧スチームコンデンセートとして用いることもできる。大気圧のスチームコンデンセートは約100℃である。2バール以上のスチームコンデンセートの温度は、120℃以上である。
【0086】
〔形態1.2:工程aに供給するスチームコンデンセートの第2の形態〕
この形態では、凝縮工程供給用スチームコンデンセートの量を、凝縮工程で発生する低圧スチームの量よりも多くする。凝縮工程から、低圧スチームとスチームコンデンセートとを含む流体が得られる。つまり、凝縮器の冷却側出口流体が、凝縮工程で発生した低圧スチームと、凝縮工程で蒸発しなかったスチームコンデンセートとを含む。
【0087】
また、工程dを行う。
d)前記凝縮工程から得られた、低圧スチームとスチームコンデンセートとを含む流体(凝縮器の冷却側出口流体)を、低圧スチームとスチームコンデンセートとに分離する工程。
【0088】
工程dを行うために、適宜の気液分離器を使用することができる。そして、工程aに供給する90℃より高温のスチームコンデンセートとして、工程dで分離したスチームコンデンセート(全部でもよいし、一部だけでもよい)を用いる。工程dで分離したスチームコンデンセートを、工程cにおいて凝縮器に凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして戻す前に、工程dで分離したスチームコンデンセートに補給水を添加してもよい。なお、工程dで分離した低圧スチームは、加熱源として適宜利用することができる。
【0089】
工程dで分離した低圧スチームとスチームコンデンセートの温度および圧力は、凝縮工程で発生させる低圧スチームについて前述したものと同じであってよい。したがって、工程aに供給するスチームコンデンセート(工程dで分離したスチームコンデンセート)の温度は、典型的には、凝縮工程で発生させる低圧スチームの前述の圧力における水の飽和温度である。
【0090】
〔形態1.3:90℃より高温のスチームコンデンセートの第3の形態〕
この形態では、高圧分解工程において、中圧スチームを加熱源として使用して、合成工程で生成した尿素合成液を加熱するとともに、中圧スチームコンデンセートを得る。そして、工程aに供給するスチームコンデンセートとして、この中圧スチームコンデンセート(全部でもよいし、一部だけでもよい)を用いる。高圧分解工程で得られた中圧スチームコンデンセートを、例えば精製工程において加熱源として使用した後に、90℃より高温のスチームコンデンセートとして工程aに供給してもよい。
【0091】
あるいは、工程aに供給するスチームコンデンセートとして、中圧スチームコンデンセートに替えて、中低圧スチームコンデンセートを用いることができる。
【0092】
工程aに供給するスチームコンデンセート(中圧スチームコンデンセートもしくは中低圧スチームコンデンセート)の温度は、典型的には、中圧スチームコンデンセートもしくは中低圧スチームコンデンセートの前述の圧力における水の飽和温度である。また、中圧スチームコンデンセートもしくは中低圧スチームコンデンセートは、適宜他の流体との熱交換によって冷却して、例えば160℃程度とした後に、工程aに供給することができる。これによって、中圧スチームコンデンセートもしくは中低圧スチームコンデンセートから熱回収することができる。
【0093】
〔形態2.1:工程aに供給する別の流体の第1の形態〕
この形態では、工程aにおいて90℃より高温のスチームコンデンセートと熱交換する別の流体として、合成工程、高圧分解工程および凝縮工程から選ばれる少なくとも一つの工程に供給される原料アンモニア(全部でもよいし、一部だけでもよい)を用いる。換言すれば、90℃より高温のスチームコンデンセートとの熱交換によって、原料アンモニアを予熱する。原料アンモニアの温度は、例えば約40℃である。
【0094】
〔形態2.2:工程aに供給する別の流体の第2の形態〕
この形態では、精製工程、濃縮工程、造粒工程を行う。そして、工程aにおいて90℃より高温のスチームコンデンセートと熱交換する別の流体として、造粒工程に供給する空気(全部でもよいし、一部だけでもよい)を用いる。換言すれば、90℃より高温のスチームコンデンセートとの熱交換によって、造粒工程に供給する空気(典型的には大気温度)を加熱する。
【0095】
〔形態3.1:熱回収対象流体の第1の形態〕
この形態では、回収工程を行う。そして、工程bにおいて、前記ガスIおよびガスIIのうちの少なくとも一方のガス(全部でもよいし、一部だけでもよい)を吸収した吸収媒体を熱回収対象流体として用い、この熱回収対象流体と工程aからのスチームコンデンセートとを熱交換する。これにより、工程bの加熱(工程bに供給されるスチームコンデンセートの加熱)とともに回収工程の冷却(ガスIおよびガスIIのうちの少なくとも一方の冷却)を行う。
【0096】
〔形態3.2:熱回収対象流体の第2の形態〕
この形態では、回収工程を行う。回収工程における冷却(ガスIおよびガスIIのうちの少なくとも一方のガスを吸収した吸収媒体の冷却)は、温水との熱交換によって行う。そして、工程bにおいて、回収工程で冷却に冷却源として使用した後の温水(全部でもよいし、一部だけでもよい)を熱回収対象流体として用い、この温水と工程aからのスチームコンデンセートと熱交換する。これにより、工程bの加熱(工程bに供給されるスチームコンデンセートの加熱)を行う。また、回収工程で冷却に冷却源として使用した後の温水から、熱回収する。
【0097】
〔形態3.3:熱回収対象流体の第3の形態〕
この形態では、精製工程と、濃縮工程と、低低圧流体発生工程と、工程eを行う。
e)低低圧流体発生工程で発生した低低圧スチーム(全部でもよいし、一部だけでもよい)を冷却することにより凝縮させてスチームコンデンセートを得る工程。
【0098】
そして、工程bにおいて、低低圧流体発生工程で発生した低低圧スチーム(全部でもよいし、一部だけでもよい)を、工程aからのスチームコンデンセートと熱交換することにより、前記工程bの加熱とともに工程eの冷却を行う。
【0099】
このために、第2の熱交換構造において、低低圧スチームを、第1の熱交換構造からのスチームコンデンセートと熱交換することができる。これによって、第2の熱交換構造における加熱(第1の熱交換構造からのスチームコンデンセートの加熱)を行うとともに、低低圧スチームを冷却することにより凝縮させてスチームコンデンセートを得ることができる。
【0100】
例えば、工程eに供給する低低圧スチームの温度は100~150℃程度(その圧力における飽和温度)である。工程eから排出されるスチームコンデンセートの温度は、工程eで過冷却を行わない場合は同様に当該飽和温度であり、工程eで過冷却を行えば当該飽和温度より低くなる。
【0101】
この形態では、次の工程fを行うことが好ましい。
f)工程eから得られるスチームコンデンセートを、低低圧流体発生工程に戻す工程であって、工程eから得られるスチームコンデンセートを、このスチームコンデンセートの自重によって、低低圧流体発生工程に移送する工程。
【0102】
工程fを行うために、第2の熱交換構造において低低圧スチームが凝縮して得られたスチームコンデンセートを、低低圧流体発生装置に戻すライン(すなわち、第2の熱交換構造の高温側出口と、低低圧流体発生装置の入口とを接続するライン)を用いることができる。このラインを通じて、第2の熱交換構造において低低圧スチームが凝縮して得られたスチームコンデンセートを、このスチームコンデンセートの自重によって、低低圧流体発生装置に移送することができる。
【0103】
この移送を、次のようにして行うことができる。すなわち、低低圧流体発生工程において発生させた低低圧スチームコンデンセートを容器もしくは管に受入れ、その中でこの低低圧スチームコンデンセートの液面を形成する。そして、工程eで、この液面より高い位置において低低圧スチームを凝縮させ、凝縮したスチームコンデンセートを、低低圧流体発生工程で用いる容器もしくは管に導く。
【0104】
工程eから得られるスチームコンデンセートの圧力が大気圧よりも高い場合(例えば低低圧流体発生工程の操作圧力が2バール以上である場合)、工程fに替えて、工程eから得られるスチームコンデンセートを、大気圧のスチームコンデンセートを貯蔵するタンクに、圧力差によって送ってもよい。工程eから得られるスチームコンデンセートの圧力が大気圧の場合、工程fに替えて、工程eから得られるスチームコンデンセートを、ポンプで昇圧して低低圧流体発生工程に戻すか、あるいは、尿素製造装置の外部に排出してもよい。
【0105】
〔その他〕
尿素製造方法が、工程gを含むことができる。
g)工程bで加熱したスチームコンデンセートを、凝縮工程に凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして供給する前に、凝縮工程で発生させた低圧スチームと熱交換して、加熱する工程。
【0106】
工程gを行うために、適宜の熱交換構造を使用することができる。第2の熱交換構造の低温側出口と凝縮器の凝縮工程供給用スチームコンデンセート入口(冷却側入口)とを接続するラインに、工程gを行う熱交換構造の低温側を配置し、工程gを行う熱交換構造の高温側に、凝縮工程で発生させた低圧スチームを供給することができる。
【0107】
凝縮工程供給用スチームコンデンセートの温度が低いと、凝縮工程で低圧スチームを発生させるために必要なスチームコンデンセートの量は少なくなる。この場合、工程aで冷却され工程bで加熱されるスチームコンデンセートの量が少なくなり、工程bによる熱回収の熱量が減ることがある。このような熱回収量の減少を避けるために、工程bで加熱したスチームコンデンセートを工程gで加熱した後に、凝縮工程に供給することができる。
【0108】
また、凝縮工程でも尿素合成反応は進行するため、凝縮工程と合成工程を単一の圧力容器の中で行うことができる。つまり、凝縮器と合成器とが一体化された単一の圧力容器を用いることができる。
【0109】
〔プロセス例〕
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されない。図面において、「MP STM」は中圧スチームを、「LP STM」は低圧スチームを、「LLP STM」は低低圧スチームを、「MP SC」は中圧スチームコンデンセートを、「LP SC」は低圧スチームコンデンセートを、「LLP SC」は低低圧スチームコンデンセートを意味する。また、図1~4において、実線はスチームを、破線はスチームコンデンセートを表す。より厳密には、圧力の高いスチームコンデンセートを減圧すると、スチームとスチームコンデンセートの2相流になるが、ここではこのような2相流も破線で示す。
【0110】
〔形態1.1のプロセス例〕
図1を用いて、形態1.1のプロセス(スチーム/スチームコンデンセート系)の例につき説明する。この例では、工程aの90℃より高温のスチームコンデンセートとして、低低圧スチームコンデンセートを用いる。また、この例では、工程aを行う装置(第1の熱交換構造)として、アンモニア予熱器Eを用いている。すなわち、この例は、形態2.1にも従う。
【0111】
ライン1の低圧スチームコンデンセートは、高圧分解器で中圧スチームが凝縮した中圧スチームコンデンセートに由来する。詳しくは、高圧分解器からの中圧スチームコンデンセートは、例えば減圧弁(不図示)によって減圧されて低圧スチームと低圧スチームコンデンセートとなり、これらがベッセル(不図示)で気液分離され、低圧スチームコンデンセートが得られる。
【0112】
ライン1の低圧スチームコンデンセートは、凝縮器Aでプロセス流体によって加熱され(凝縮熱の回収に利用され)、低圧スチームとなる。
【0113】
凝縮器Aからライン2に抜き出された低圧スチームは、一部がライン3を経て精製装置Bに送られ、加熱源として使用される。ライン2の低圧スチームの別の一部が、ライン4を経て濃縮装置Cに送られ、加熱源として使用される。ライン2の低圧スチームの残部は、これら以外の加熱源として適宜使用できるが、図1には示していない。
【0114】
精製装置Bおよび濃縮装置Cから、低圧スチームが凝縮した低圧スチームコンデンセートが、それぞれライン5およびライン6に抜き出される。これら低圧スチームコンデンセートは、合流し、ライン7を経て低低圧流体発生装置Dに送られる。
【0115】
低低圧流体発生装置Dでは、低圧スチームコンデンセートを減圧させて低低圧スチームコンデンセートと低低圧スチームとを発生させ、これらをベッセルで気液分離して、ライン8に低低圧スチームを得、ライン9に低低圧スチームコンデンセート(いずれも例えば140℃)を得る。
【0116】
ライン8の低低圧スチームは、適宜利用される。例えばライン8の低低圧スチームは、アンモニア予熱器(図1には不図示。図5における符号N)に送られて、原料アンモニアを加熱する。
【0117】
ライン9の低低圧スチームコンデンセートは、工程aの「90℃より高温のスチームコンデンセート」としてアンモニア予熱器Eに送られて、原料アンモニアとの熱交換により90℃以下(例えば50℃)に冷却される(工程a)。冷却された低低圧スチームコンデンセートは、ライン10に抜き出される。原料アンモニアの流れを基準として、アンモニア予熱器Nよりも、アンモニア予熱器Eを上流に配することができる。
【0118】
ライン10の低低圧スチームコンデンセートはライン12と13に分岐される。ライン12の低低圧スチームコンデンセートは、尿素製造装置の外部(例えばボイラ給水調整装置に向けて)に排出される。低低圧スチームコンデンセートを尿素製造装置の外部に排出する前に冷却水(ユーティリティ)でさらに冷却してもよい。また、低低圧スチームコンデンセートの圧力が大気圧よりある程度高い場合は、尿素製造装置の外部に排出する前に低低圧スチームコンデンセートをさらに減圧し、大気圧下でタンクに一度貯めてから尿素製造装置の外部に排出することもできる。ライン13の低低圧スチームコンデンセートは、工程bを行う熱交換器F(第2の熱交換構造)に供給される。
【0119】
工程bを行う熱交換器Fで、ライン13からの低低圧スチームコンデンセート(すなわち工程aからのスチームコンデンセート)を、熱回収対象流体との熱交換によって、加熱する。熱回収対象流体は、例えば、形態3.1~3.3のうちの少なくとも一つに従うものである。
【0120】
熱交換器Fで加熱された低低圧スチームコンデンセートは、熱交換器Fからライン11に排出される。ライン11の低低圧スチームコンデンセートは、凝縮器Aに凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして送られる。ただし、ライン11の低低圧スチームコンデンセートは不図示のベッセルに供給され、このベッセルから低低圧スチームコンデンセートが凝縮器Aに送られる。図1においてこのベッセルは凝縮器Aを示すブロックに含まれると理解されたい。図1に示していないが、ライン9、10、13もしくは11にスチームコンデンセートを昇圧するための昇圧機が設けられていると理解されたい。また、当該昇圧機で昇圧されたスチームコンデンセートは低圧スチームコンデンセートと同等の圧力となっても、温度は昇圧機前後で実質的な変化はない。低圧スチームが凝縮して発生した低圧スチームコンデンセートと区別するために、当該昇圧機で昇圧されたスチームコンデンセートも低低圧スチームコンデンセートと表記することとする。例えば、低低圧スチームコンデンセート(ライン11)を、低圧スチームコンデンセート(ライン1)と同じ圧力まで昇圧し、これらのスチームコンデンセート(ライン1および11)を合流させて、凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして凝縮器Aに供給することができる。
【0121】
〔形態1.2のプロセス例〕
図2を用いて、形態1.2のプロセス(スチーム/スチームコンデンセート系)の例を説明する。図1に示した例と共通する点については説明を省略する。この例では、凝縮工程から、凝縮器Aの冷却側出口流体として、低圧スチームとスチームコンデンセートを含む流体を発生させる。そして、凝縮器冷却側出口流体を、低圧スチームとスチームコンデンセートとに分離する(工程d)。工程aの90℃より高温のスチームコンデンセートとして、工程dで分離したスチームコンデンセートを用いる。
【0122】
凝縮器Aの冷却側出口流体を、気液分離器(図2に示されないベッセル)で分離し、低圧スチームをライン2に取り出し、低圧スチームコンデンセートをライン20に取り出す(いずれも例えば160℃)。
【0123】
低低圧流体発生装置Dで発生した低低圧スチームコンデンセートは、ライン29を経て、凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして凝縮器Aに供給される。ライン29には不図示の昇圧機が設けられ、このスチームコンデンセートが昇圧される。
【0124】
ライン20の低圧スチームコンデンセートは、工程aの90℃より高温のスチームコンデンセートとしてアンモニア予熱器Eに送られて、原料アンモニアとの熱交換により90℃以下(例えば50℃)に冷却される(工程a)。冷却された低圧スチームコンデンセートは、ライン24に抜き出される。
【0125】
ライン24の低圧スチームコンデンセートはライン22と23に分岐される。ライン22の低圧スチームコンデンセートは、尿素製造装置の外部(例えばアンモニアプラントに向けて)に排出される。ライン23の低圧スチームコンデンセートは、工程bを行う熱交換器Fに供給される。
【0126】
工程bを行う熱交換器Fで、ライン23からの低圧スチームコンデンセートすなわち工程aからのスチームコンデンセートを、熱回収対象流体との熱交換によって、加熱する。熱回収対象流体は、例えば、形態3.1~3.3のうちの少なくとも一つに従うものである。
【0127】
熱交換器Fで加熱された低圧スチームコンデンセートは、熱交換器Fからライン21に排出される。ライン21の低圧スチームコンデンセートは、凝縮器Aに凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして送られる。図2に示していないが、ライン20、24、23もしくは21にスチームコンデンセートを昇圧するための昇圧機が設けられていると理解されたい。
【0128】
〔形態1.3のプロセス例〕
図3を用いて、形態1.3のプロセス(スチーム/スチームコンデンセート系)の例を説明する。図2に示した例と共通する点については説明を省略する。この例では、高圧分解工程において、中圧スチームを加熱源として使用して、合成工程で生成した尿素合成液を加熱するとともに、中圧スチームコンデンセートを得る。そして、工程aの「90℃より高温のスチームコンデンセート」として、中圧スチームコンデンセートを用いる。
【0129】
高圧分解器からの中圧スチームコンデンセート(ライン35)は、ライン1とライン36に分岐される。ライン1の中圧スチームコンデンセートは、例えば減圧弁(不図示)によって減圧されて低圧スチームと低圧スチームコンデンセートとなり、これらがベッセル(不図示)で気液分離され、低圧スチームコンデンセートが凝縮器Aに供給される。
【0130】
ライン36の中圧スチームコンデンセートは、工程aの90℃より高温のスチームコンデンセートとしてアンモニア予熱器Eに送られて、原料アンモニアとの熱交換により90℃以下(例えば50℃)に冷却される(工程a)。
【0131】
アンモニア予熱器E、熱交換器F、ライン31~34については、これらを流れるスチームコンデンセートが、低圧スチームコンデンセートではなく、中圧スチームコンデンセートであること以外は、図2に示した形態のアンモニア予熱器E、熱交換器F、ライン21~24と同様である。ただし、ライン31の中圧スチームコンデンセートを凝縮器Aに凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして供給する際には、中圧スチームコンデンセートを、必要に応じて減圧および気液分離などの操作に付す。
【0132】
〔形態3.2と形態3.3を組み合わせたプロセス例〕
図4を用いて、別のプロセス(スチーム/スチームコンデンセート系)の例について説明する。この例は、図1に示したプロセス例の、工程bに関する装置(熱交換器Fおよび熱交換器Fに付随する装置)をより詳細にした例である。図1に示した例と共通する点については説明を省略する。この例では、工程bを行う熱交換器(第2の熱交換構造)として、熱交換器F1(上記形態3.2参照)および熱交換器F2(上記形態3.3参照)を用いる。このように、第2の熱交換構造は、複数存在していてもよいし、一つだけ存在していてもよい。第1の熱交換構造も同様である。
【0133】
ライン13の低低圧スチームコンデンセート(例えば50℃)は、熱交換器F1で加熱され、ライン40に排出される(例えば100℃)。一方、回収工程を行う回収装置Gからライン41に、回収工程での冷却源として使用した後の温水(例えば100℃)が排出される。次いで、ライン41の温水は、ライン42とライン43に分岐される。ライン42の温水が、熱回収対象流体として熱交換器F1に供給され、冷却(熱回収)され、ライン44に排出される。このように、ライン13の低低圧スチームコンデンセートと、ライン42の温水とが、熱交換器F1で熱交換される(工程b)。
【0134】
なお、ライン43の温水は、冷却器Hにおいて冷却水(ユーティリティ)との熱交換によって冷却され、ライン45に排出される。この冷却水のラインは図示しない。ライン44の温水とライン45の温水がライン46に合流し、回収装置Gに戻され、回収工程においてプロセス流体を冷却するために用いられる。回収装置Gに戻される温水の温度は例えば90℃、圧力は例えば15バールである。冷却器Hで冷却に使用された後の冷却水(ユーティリティ)は、冷却器Hの外部で適宜再冷却されるのが一般的である。
【0135】
ライン41の温水をライン42と43に分岐することによって、熱交換器F1における熱交換量を調節することができる。
【0136】
ライン40の低低圧スチームコンデンセート(工程aからのスチームコンデンセート)は、熱交換器F2で更に加熱され、ライン11に排出される(例えば120℃)。一方、ライン8の低低圧スチーム(例えば140℃)が、熱回収対象流体として熱交換器F2に供給され、冷却(熱回収)されて凝縮する(工程e)。この凝縮によって得られる低低圧スチームコンデンセートがライン47に排出される。このようにして、ライン40の低低圧スチームコンデンセートと、ライン8の低低圧スチームが熱交換される。
【0137】
ライン11の低低圧スチームコンデンセートは、凝縮器Aに凝縮工程供給用スチームコンデンセートとして戻される。
【0138】
ライン47の低低圧スチームコンデンセートは、低低圧流体発生装置Dに、当該低低圧スチームコンデンセートの自重によって、移送される。このために、熱交換器F2内の工程eにおいてライン8の低低圧スチームが凝縮する位置を、装置D内の液面(ライン7の低圧スチームコンデンセートが減圧されて生じる低低圧スチームコンデンセートの液面)よりも、高く(すなわち鉛直方向において上方に)する。
【0139】
この形態でも、適宜昇圧機を使用することができる。
【0140】
〔尿素製造方法のプロセス例〕
図5に示すように、不図示のポンプにより適宜昇圧された原料アンモニアが、ライン101、102、103及びライン104を経て、合成器Mに供給される。原料二酸化炭素がライン105、106を経て合成器Mに供給される。原料アンモニア(ライン101)を、熱交換器(アンモニア予熱器)Eにおいて、低低圧スチームコンデンセートとの熱交換によって加熱する。次いで、加熱した原料アンモニア(ライン102)を、熱交換器(アンモニア予熱器)Nにおいて低低圧スチームとの熱交換によって加熱する。熱交換器Nで低低圧スチームは凝縮して低低圧スチームコンデンセートとなる。その後、加熱した原料アンモニア(ライン103)を、エジェクターIの駆動流体として利用することができる。図示はしないが、ライン103にさらに熱交換器を追加して、低圧スチームとの熱交換によって原料アンモニアをさらに加熱することもできる。
【0141】
合成器Mから、尿素合成液がライン110を経て、高圧分解器Lに送られる。高圧分解器Lでは、尿素合成液が、中圧スチームによる加熱部(熱交換構造)において加熱される。中圧スチームは、中圧スチームコンデンセートとなって当該加熱部から抜き出される。高圧分解器Lの底部には、ライン105および107を経て二酸化炭素がストリッピングガスとして供給される。
【0142】
高圧分解器Lから、ライン112を経て、高圧分解出口ガスが凝縮器Aに導入される。また、高圧分解出口ガスが分離された尿素合成液が、ライン111を経て精製装置Bに送られる。
【0143】
凝縮器Aに導入された高圧分解出口ガスは、ライン120から導入される吸収液(吸収媒体)によって吸収されて凝縮する。得られた凝縮液はライン121を経て、エジェクターIで昇圧され、ライン104から合成器Mに循環される。凝縮しなかったガス(凝縮器出口ガス)は、ライン122から抜き出され、減圧弁Jで減圧される。凝縮器Aには、冷却源として低圧スチームコンデンセートが導入される。低圧スチームコンデンセートが、凝縮器Aの内部流体(プロセス流体)によって加熱されて、低圧スチームが発生する。
【0144】
精製装置Bは、減圧弁B1、中圧分解器B2、減圧弁B3、および低圧分解器B4を含む。ライン111からの尿素合成液は、減圧弁B1で減圧され、ライン113を経て、中圧分解工程を行う中圧分解器B2に送られる。ライン113から中圧分解器B2に導入された尿素合成液(気液二相流でもよい)は、中圧分解器B2の低圧スチームによる加熱部(熱交換構造)で加熱される。低圧スチームは、低圧スチームコンデンセートとなって当該加熱部から抜き出される。
【0145】
中圧分解出口ガスがライン132から抜き出される。中圧分解出口ガスが分離された尿素合成液がライン131から抜き出され、減圧弁B3で減圧され、ライン134から、低圧分解工程を行う低圧分解器B4に導入される。なお、カーバメートの分解を促進するために、ライン144から低圧分解器B4に二酸化炭素が供給される。
【0146】
ライン134から低圧分解器B4に導入された尿素合成液(気液二相流でもよい)は、低圧分解器B4の低圧スチームによる加熱部(熱交換構造)で加熱される。低圧分解出口ガスがライン142から抜き出される。低圧分解出口ガスが分離された尿素合成液がライン141から抜き出され、濃縮装置Cに送られる。
【0147】
濃縮装置Cは、減圧弁C1、加熱器C2、気液分離器C3、加熱器C4、および気液分離器C5を含む。ライン141からの尿素合成液は減圧弁C1で減圧され、ライン145から、加熱器C2に導入される。この加熱器(特にはその熱交換構造)では、低圧スチームによって尿素合成液が加熱され、低圧スチームコンデンセートが発生する。加熱された尿素合成液は、気液二相流となってライン151から気液分離器C3に導入され、気相がライン153に、液相(さらに尿素が濃縮された尿素合成液)がライン152に抜き出される。
【0148】
ライン152の尿素合成液は、加熱器C4に導入される。この加熱器(特にはその熱交換構造)では、低圧スチームによって尿素合成液が加熱され、低圧スチームコンデンセートが発生する。加熱された尿素合成液は、気液二相流となってライン161から気液分離器C5に導入され、気相がライン163に、液相(さらに尿素が濃縮された尿素合成液)がライン162に抜き出され、造粒工程に送られる。
【0149】
凝縮器Aから抜き出される凝縮器出口ガス(ライン122、減圧後はライン123)が、前述のガスIである。中圧分解器B2および低圧分解器B4からそれぞれ抜き出される中圧分解出口ガス(ライン132)および低圧分解出口ガス(ライン142)が、前述のガスIIである。回収工程において、これらのガスに含まれるアンモニア、二酸化炭素および水を回収することができる。このような回収処理においては、ガスを吸収媒体に吸収および凝縮させながら、ガスを吸収した吸収媒体を冷却することができる。吸収媒体としては、水(尿素、アンモニア、二酸化炭素及びアンモニウムカーバメイトを含んでいてもよい)など、尿素製造方法の分野で公知の吸収媒体を適宜使用できる。なお、気液分離器C3および気液分離器C5から抜き出されるガスに含まれる水を回収することができる。
【0150】
以下、このような処理の例について説明する。図5に示すように、中圧分解出口ガス(ライン132)を、減圧弁Jで減圧された凝縮器出口ガス(ライン123)と混合した混合ガス(ライン133)を得る。図6に示すように、回収装置Gは、中圧吸収器G1、低圧吸収器G2、ならびにポンプG3およびG4を含む。中圧吸収器G1において、この混合ガス(ライン133)をライン173からの液体中に吸収および凝縮させながら、温水を用いてこの液体を冷却して、ライン171に回収液を得る。この回収液をポンプG3で昇圧して、ライン120から凝縮器Aに吸収媒体として供給する。
【0151】
低圧吸収器G2において、低圧分解出口ガス(ライン142)をライン175からの液体中に吸収および凝縮させながら、温水を用いてこの液体を冷却して、ライン172に回収液を得る。この回収液をポンプG4で昇圧して、ライン173から中圧吸収器G1に吸収媒体として送る。
【0152】
気液分離器C3から抜き出されたライン153のガスが、熱交換器K1に送られ、気液分離器C5から抜き出されたライン163のガスが、熱交換器K2に送られ、それぞれのガスが各熱交換器で冷却されて凝縮する。凝縮した水(ライン174)をポンプK3で昇圧して、ライン175から低圧吸収器G2に吸収媒体として送る。熱交換器K1およびK2における冷却のために、冷却水(ユーティリティ)などの適宜の冷却媒体を用いることができる。
【0153】
以下に、図5および6に示す構成を有する尿素製造装置に、前述の各形態を適用した場合について、説明する。
【0154】
・形態1.1の場合
低低圧流体発生工程では、精製装置Bおよび濃縮装置C、具体的には中圧分解装置B2、低圧分解装置B4、加熱器C2および加熱器C4のうちの一以上の装置から得られる低圧スチームコンデンセートの少なくとも一部を、減圧弁(不図示)で減圧し、気液分離器(不図示)で分離して、低低圧スチームコンデンセートと低低圧スチームを発生させる。形態1.1では、工程aの90℃より高温のスチームコンデンセートとして、この低低圧スチームコンデンセートを用いる。
【0155】
・形態1.2の場合
形態1.2では、凝縮器Aで発生する低圧スチームの量(質量流量)よりも、凝縮工程供給用スチームコンデンセートの流量を多くすることによって、凝縮器Aから、凝縮器Aの冷却側出口流体として、低圧スチームと低圧スチームコンデンセートとを含む流体を得る。この流体を、気液分離器(不図示)を用いて、低圧スチームとスチームコンデンセートとに分離する(工程d)。そして、工程aの90℃より高温のスチームコンデンセートとして、工程dで分離したスチームコンデンセートを用いる。
【0156】
・形態1.3の場合
形態1.3では、高圧分解器Lにおいて中圧スチームを加熱源として使用し、この中圧スチームが凝縮した中圧スチームコンデンセートを得る。そして、工程aの90℃より高温のスチームコンデンセートとして、この中圧スチームコンデンセートを用いる。
【0157】
・形態2.1の場合
形態2.1では、工程aにおいて90℃より高温のスチームコンデンセートと熱交換させる流体として、原料アンモニア101を用いる。そして、アンモニア予熱器Eにおいて、工程aの熱交換を行う。
【0158】
・形態2.2の場合
造粒工程では、ライン162の尿素合成液から、加熱した空気を用いて粒状固体尿素を製造する。形態2.2では、工程aにおいて90℃より高温のスチームコンデンセートと熱交換させる流体として、造粒工程に供給する空気を用いる。工程aの熱交換によって、空気が加熱される。造粒装置は、この熱交換に用いる熱交換器(不図示)を含む。
【0159】
・形態3.1の場合
形態3.1では、熱回収対象流体として、回収工程に供給するガス(ライン133および142のガス)を吸収した吸収媒体を用いる。また、中圧吸収器G1および低圧吸収器G2において冷却のために使用する温水として、工程aからのスチームコンデンセートを用いる。このようにして、中圧吸収器G1および低圧吸収器G2においてそれぞれ、ライン133および142のガスを、工程aからのスチームコンデンセートと熱交換する(工程b)。この熱交換により、工程bの加熱(工程aからのスチームコンデンセートの加熱)と同時に、回収工程の冷却(回収工程に供給するガスの冷却)を行う。
【0160】
ライン142のガスが供給される低圧吸収器G2における凝縮温度が低く、工程aからのスチームコンデンセートと熱交換することが容易ではない場合、工程bを中圧吸収器G1では行うが、低圧吸収器G2では行わなくてよい。低圧吸収器G2で工程bを行わない場合、例えば、低圧吸収器G2で冷却に使用する冷却媒体として、温水に替えて冷却水(ユーティリティ)を用いることができる。
【0161】
・形態3.2の場合
形態3.2では、回収工程で冷却に冷却源として使用した後の温水、すなわち中圧吸収器G1および低圧吸収器G2のうちの少なくとも一方から排出される温水を、工程aからのスチームコンデンセートと熱交換する。
【0162】
・工程gについて
工程gにおいて、凝縮器Aに供給するスチームコンデンセートを、凝縮器Aに供給する前に、熱交換器(不図示)において凝縮器Aで発生させた低圧スチームと熱交換して、加熱することができる。
【符号の説明】
【0163】
MP STM :中圧スチーム
LP STM :低圧スチーム
LLP STM:低低圧スチーム
MP SC :中圧スチームコンデンセート
LP SC :低圧スチームコンデンセート
LLP SC :低低圧スチームコンデンセート
A :凝縮器
B :精製装置
B1、B3:減圧弁
B2:中圧分解器
B4:低圧分解器
C :濃縮装置
C1:減圧弁
C2:加熱器
C3:気液分離器
C4:加熱器
C5:気液分離器
D :低低圧流体発生装置
E :工程aを行う熱交換器(アンモニア予熱器)
F :工程bを行う熱交換器
F1:工程bを行う熱交換器(1段目)
F2:工程bを行う熱交換器(2段目)
G :回収装置
G1:中圧吸収器
G2:低圧吸収器
G3、G4:ポンプ
H :冷却器
I :エジェクター
J :減圧弁
K1、K2:熱交換器
K3:ポンプ
L :高圧分解器
M :合成器
N :熱交換器(アンモニア予熱器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6