(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】ユーザ位置情報検知追跡システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20221013BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20221013BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G06Q50/10
G08B25/04 G
G08B21/24
(21)【出願番号】P 2019060646
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 求紀
(72)【発明者】
【氏名】守岡 太郎
(72)【発明者】
【氏名】新井 朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 博之
【審査官】岡北 有平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-327180(JP,A)
【文献】特開2005-003627(JP,A)
【文献】特開2018-037887(JP,A)
【文献】特開2006-293707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G08B 25/04
G08B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが携行可能なタグと、
前記タグから出力される識別情報を受信可能なユーザ端末と、
所定範囲に磁界を形成する磁界装置と、
前記ユーザ端末と通信可能に接続された管理装置と、を備え、
前記タグは、
所定のタイミングで、前記識別情報として、当該タグを特定可能なタグ識別情報を出力するとともに、
前記磁界装置で形成される前記磁界を検知すると、前記識別情報として、当該磁界を特定可能な磁界識別情報を出力し、
前記ユーザ端末は、
前記タグから
前記タグ識別情報及び前記磁界識別情報を受信すると、
これらを前記管理装置に送信する
とともに、
当該ユーザ端末の位置情報を取得可能であり、前記位置情報が取得されると、前記タグ識別情報及び前記磁界識別情報とともに前記管理装置に送信する
ことを特徴とするユーザ位置情報検知追跡システム。
【請求項2】
前記管理装置と通信可能に接続されたクライアント装置を備え、
前記管理装置は、
前記ユーザ端末から前記
前記タグ識別情報及び前記磁界識別情報を受信すると、当該ユーザ端末に対応付けられた所定のユーザ情報を、前記クライアント装置に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のユーザ位置情報検知追跡システム。
【請求項3】
前記管理装置は、
前記
前記タグ識別情報及び前記磁界識別情報を、これらと対応付けられたユーザ端末と異なる他のユーザ端末から受信すると、これらと対応付けられたユーザ端末に、所定の落とし物情報を送信する
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載のユーザ位置情報検知追跡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスマートフォンやICタグを携行するユーザの位置や移動などを検知・追跡するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ユーザの位置や移動を検知することにより、ユーザの動向を分析したり、ユーザへのサービス提供に役立てることが行われている。
この種のユーザの位置や移動の検知は、例えばユーザが携行するスマートフォンやICタグなどの電子機器から位置情報を取得することで実現することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、高周波磁界を発生させる複数のアンテナを配置し、RFIDを携行したユーザが磁界内を移動することにより、RFIDの位置や移動方向を検知するタグ検知システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は改善の余地があった。
【0006】
本発明は、以上のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、ユーザが屋内にいても屋外にいても、ユーザの位置情報を確実に取得してユーザの位置や移動を検知・追跡することができるとともに、ユーザから離脱した落とし物なども検知・発見することができる、利便性・信頼性の高いユーザ位置情報検知追跡システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のユーザ位置情報検知追跡システムは、ユーザが携行可能なタグと、前記タグから出力される識別情報を受信可能なユーザ端末と、所定範囲に磁界を形成する磁界装置と、前記ユーザ端末と通信可能に接続された管理装置と、を備え、前記タグは、所定のタイミングで、前記識別情報として、当該タグを特定可能なタグ識別情報を出力するとともに、前記磁界装置で形成される前記磁界を検知すると、前記識別情報として、当該磁界を特定可能な磁界識別情報を出力し、前記ユーザ端末は、前記タグから前記識別情報前記タグから前記タグ識別情報及び前記磁界識別情報を受信すると、これらを前記管理装置に送信するとともに、当該ユーザ端末の位置情報を取得可能であり、前記位置情報が取得されると、前記タグ識別情報及び前記磁界識別情報とともに前記管理装置に送信する構成としてある。
【0008】
また、本発明は、上記のような本発明に係るユーザ位置情報検知追跡システムを構成する情報処理装置で実行されるユーザ位置情報検知追跡プログラムとして構成することができる。
さらに、本発明は、上記のような本発明に係るユーザ位置情報検知追跡システム及びプログラムによって実施可能なユーザ位置情報検知追跡方法として構成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザが屋内にいても屋外にいても、ユーザの位置情報を確実に取得してユーザの位置や移動を検知・追跡することができ、ユーザから離脱した落とし物なども検知・発見することも可能となる。
これによって、利便性・信頼性の高いユーザ位置情報検知追跡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るユーザ位置情報検知追跡システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本システムのICタグ及びユーザ端末の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本システムにおいて屋外にいるユーザの位置情報を取得・検知する場合の説明図である。
【
図4】本システムにおいて屋内にいるユーザの位置情報を取得・検知する場合の説明図である。
【
図5】本システムにおいてユーザの位置情報を検知して所定のユーザ情報をクライアント装置に提供する場合の処理動作を示すフローチャートである。
【
図6】本システムにおいてユーザから離脱したICタグの位置情報を検知して、持ち主であるユーザ端末に通知する場合の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るユーザ位置情報検知追跡システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここで、以下に示す本発明のユーザ位置情報検知追跡システムは、プログラム(ソフトウェア)の命令によりコンピュータで実行される処理,手段,機能によって実現される。プログラムは、コンピュータの各構成要素に指令を送り、以下に示す本発明に係る所定の処理や機能等を行わせることができる。すなわち、本発明における各処理や手段,機能は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段によって実現される。
【0012】
なお、プログラムの全部又は一部は、例えば、磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ,その他任意のコンピュータで読取り可能な記録媒体により提供され、記録媒体から読み出されたプログラムがコンピュータにインストールされて実行される。また、プログラムは、記録媒体を介さず、通信回線を通じて直接にコンピュータにロードし実行することもできる。また、本発明に係るユーザ位置情報検知追跡システムを構成する各装置は、単一の情報処理装置(例えば1台のパーソナルコンピュータ,スマートフォン等)で構成することもでき、複数の情報処理装置(例えば複数台のサーバコンピュータ群等)で構成することもできる。
【0013】
[システム構成]
図1に、本発明の一実施形態に係るユーザ位置情報検知追跡システム10(以下「本システム10」という)の全体構成を示す。
同図に示す本システム10は、一又は二以上のユーザA,B・・・Nがそれぞれ携行可能なタグであるICタグ20(20a,20b・・・20n)と、ICタグ20から出力される識別情報を受信可能なユーザ端末30(30a,30b・・・30n)と、所定範囲に磁界41(41a,41b・・・41n)を形成する一又は二以上の磁界装置40(40a,40b・・・40n)と、ユーザ端末30と通信可能に接続される管理装置50を備えている。
また、管理装置50には、一又は二以上のクライアント装置60(60a,60b・・・60n)が通信可能に接続されるようになっている。
【0014】
[ICタグ20]
ICタグ20は、ユーザが携行可能な小型の信号発信機であり、所定のタイミングで、識別情報として、そのICタグを特定可能なタグ識別情報となるタグIDを出力する。
また、ICタグ20は、磁界装置40で形成される磁界41を検知すると、識別情報として、検知した磁界を特定可能な磁界識別情報となる磁界IDを出力する。
具体的には、ICタグ20は、
図2に示すように、識別情報となるタグIDを記憶している記憶部21と、磁界を検知するための磁界検知部22と、識別情報となるタグIDと磁界IDを外部に出力・発信する出力部23を備えている。
【0015】
このような構成からなるICタグ20は、所定のタイミング(例えば数秒ごとに1回)で、記憶部21に記憶された識別情報となるタグIDを、出力部23から外部に出力・発信する。
ここで、タグIDは、ICタグ20を特定可能な情報であり、例えば各ICタグ20に固有に振られた識別番号等があり、ICタグ20の持ち主(使用者)であるユーザを特定するためのユーザ名やユーザIDなどを含めることもできる。
【0016】
また、ICタグ20は、磁界検知部22において磁界を検知すると、磁界に含まれている当該磁界を特定する磁界IDを受信し、その磁界IDを所定のタイミング(例えば磁界IDを受信している間の数秒ごとに1回)で、上述したタグIDとともに、出力部23から外部に出力・発信する。
ここで、磁界IDは、磁界装置40や磁界41を特定可能な情報であり、例えば各磁界装置40や磁界41に固有に振られた識別番号や、磁界装置40が設置される場所の位置情報等がある。このような磁界IDは、磁界装置40で生成される磁界41の磁気信号によって構成することができる。
【0017】
以上のようなICタグ20から出力される信号(識別情報)は、所定範囲(例えば半径数十メートル)で受信が可能であり、本実施形態では、各ユーザが携行しているユーザ端末30の受信機能によって受信されるようになっている。
これによって、ICタグ20を携行しているユーザ端末30において、ICタグ20から出力される識別情報(タグID・磁界ID)が常時受信されるとともに、ICタグ20が持ち主のユーザから離脱して、例えば落とし物のカバンや財布などに入っている場合には、その近くにいる他のユーザが携行するユーザ端末30において、識別情報が受信されることになり、後述するように、管理装置50を介したユーザの位置情報の検知・追跡や、ICタグ20を落としてしまった持ち主のユーザへの、所定の落とし物情報の通知などを行うことが可能となる。
なお、本実施形態では特に図示していないが、ICタグ20が出力情報を受信可能な受信装置(例えばアンテナなど)を所定の屋内・屋外に設置することによって、ユーザ端末30に加えて、受信装置においてもICタグ20が発する識別情報を受信させることができ、ユーザの位置情報の検知や落とし物の検知をより確実に行うことができるようになる。
【0018】
以上のようなICタグ20としては、公知のタグを採用することができ、本実施形態では、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)のビーコン信号を発信するBLEタグを用いることができる。BLEタグは、小型のBLEの発信機が内蔵された1辺が数センチメートル程度の大きさのタグによって構成され、ユーザが直接保持したり、ユーザの上着のポケットやカバンや財布の中などに入れたり装着したりすることができ、携行に便利な構成・形状となっている。
【0019】
なお、ICタグ20は、ユーザの携行が可能であって、BLEの発信機が内蔵されている限り、外形の形状等は特に限定されるものではなく、タグ(荷札)状のものや、カード形状のもの、携帯ストラップ状のものなど、様々な形状やデザインのものを採用することができる。
また、このようなICタグ20は、例えば本システム10を運用して顧客サービス等を提供しようとする企業や団体などが、顧客や会員となるユーザに対して有償・無償で配布することができる。
このような顧客向けに配布されるICタグ20には、記憶部21に記憶される情報として、ICタグ20を受け取るユーザの識別情報(例えばユーザID,会員番号など)をタグIDと対応付けて記憶させておくこともできる。
【0020】
[ユーザ端末30]
ユーザ端末30は、本システム10を利用するユーザ(例えば顧客・従業員・スタッフ・学生など)が操作可能な無線通信機能を備えた情報処理装置であり、例えばスマートフォン,タブレット端末,携帯電話機などで構成され、ICタグ20から出力される識別情報を受信するとともに、管理装置50との間で、例えば公衆通信網やWiFiなどを介した無線通信が行われるようになっている。
具体的には、ユーザ端末30は、
図2に示すように、ICタグ20から出力される識別情報(タグID・磁界ID)を受信可能な受信手段となる受信部31を備えるとともに、ICタグ20から識別情報を受信すると、当該識別情報を管理装置50に送信する送信手段となる送信部33を備えている。
また、ユーザ端末30は、そのユーザ端末30の位置情報をGPS(Global Positioning System:
図1に示すGPS100参照)から取得可能な位置情報取得手段となる位置情報取得部32を備えており、屋外においてGPSから位置情報が取得されると、その位置情報を識別情報とともに送信部33から管理装置50に送信するようになっている。
【0021】
ユーザ端末30の受信部31・位置情報取得部32・送信部33の各機能は、例えばユーザ端末30を構成するスマートフォンに所定のアプリケーションプログラム(アプリ)がインストールされ、当該アプリを介して、管理装置50のAPI(Application Programming Interface)から提供される機能として使用・実行できるようになる。また、例えば管理装置50とユーザ端末30との間で、単純なサーバ・クライアントモデルを構築して、ユーザ端末30に受信部31・位置情報取得部32・送信部33の各機能を実装することもできる。
【0022】
以上のようなユーザ端末30では、受信部31においてICタグ20からの識別情報が受信されると、アプリの制御により、ユーザが特定の入力操作等を行うことなく、受信されたICタグ20の識別情報が、所定のタイミングで(例えばICタグ20からの識別情報が受信される都度)、送信部33から管理装置50に向けて自動送信される。
また、ICタグ20からの識別情報に磁気装置40の磁界IDが含まれていない場合には、位置情報取得部32で取得されるGPSの位置情報が読み出されて、同様にユーザが入力操作等を行うことなく、ICタグ20の識別情報(タグID)とともに、所定のタイミングで管理装置50側に自動送信される。これによって、ユーザ端末30のユーザが特に意識することなく、ICタグ20で取得される識別情報とGPSからの位置情報が、管理装置50側に自動的に送信・提供されるようになり、ユーザを煩わすことのない利便性の高いシステムとすることができる。
【0023】
そして、以上のような機能を有するユーザ端末30が、複数のユーザによってそれぞれ携行されることにより、ICタグ20から出力される識別情報が、当該ICタグ20の持ち主を含めた本システム10の全ユーザが保持する各ユーザ端末30において受信・検知されることになる。
これによって、上述のように、ICタグ20が持ち主のユーザから離脱した場合でも、他のユーザ端末30がそのICタグ20の識別情報を受信することにより、管理装置50を介した落とし物情報の通知を行うことが可能となる。
【0024】
[磁界装置40]
磁界装置40は、所定範囲に磁界を形成する磁界形成手段として機能する装置であり、例えば公知の磁界発生装置・磁界発生器などによって構成することができる。
磁界装置40は、数センチメートルから数十メートルの範囲で、任意の空間に所望の大きさの磁界41を発生させることができ、例えば
図1,
図2に示すように、磁界装置40を設置した設置面上に卵形(球形)の磁界41を形成することができる。
このような磁界41を形成する磁界装置40を、屋内・屋外の所定箇所に複数設置することによって、各磁界41の範囲内に入ったユーザが携行するICタグ20が磁界を検知することで、磁界に含まれている当該磁界を特定する磁界IDが受信され、ICタグ20からユーザ端末30を介して、磁界IDが管理装置50に送信されることになる。これによって、ICタグ20(ユーザ端末30)を携行するユーザの位置情報や、ユーザから離脱したICタグ20の位置情報が、磁界IDとして捕捉・監視されるようになる。
【0025】
このような磁界装置40を備えることで、ユーザやICタグ20が屋内(建物・地下道・トンネル内など)に存在しており、ユーザ端末30においてGPSからの位置情報を取得できない場合でも、その建物内に配置された磁界装置40の磁界IDがICタグ20によって検知され管理装置50に送信され、ICタグ20(ユーザ端末30)が建物内のどこに位置しているかを、建物内の高さ方向の位置(フロア位置)を含めた三次元位置情報として把握できるようになる(
図4参照)。
したがって、本システム10においては、ICタグ20を携行するユーザは、屋内・屋外を問わず、位置情報を管理装置50に送信することができ、信頼性の高いユーザの位置情報の監視や、ユーザから離脱した落とし物の早期発見などが可能となる。
【0026】
[管理装置50]
管理装置50は、ユーザ端末30との間で無線通信を行うことにより、ユーザ端末30に本システム10に係る機能を提供するための情報処理装置である。
具体的には、管理装置50は、例えば1又は2以上のサーバコンピュータや、クラウドコンピューティングサービス上に構築された1又は2以上の仮想サーバからなるサーバシステム等の情報処理装置によって構成することができる。
この管理装置50には、図示しないOS(Operating System)や、記憶部としてい機能するDBMS(DataBase Management System)などが備えられ、サーバコンピュータとして運用されるようになっている。
【0027】
そして、管理装置50には、例えばWebサーバプログラムなどのミドルウェア上で稼働するソフトウェアとして実装されるAPIが備えられ、APIが、1又は2以上のユーザ端末30に対して、イントラネットやインターネット等のネットワークを介して、APIという形で利用可能なアプリケーションを公開,提供することができる。
また、管理装置50は、ユーザ端末30との間でサーバ・クライアントモデルを構築して、ユーザ端末30に本システム10を利用可能な受信部31・位置情報取得部32・送信部33の各機能を実行させることもできる。
これにより、各ユーザ端末30では、本システム10のユーザ位置情報検知追跡を受けるためのアプリケーションプログラムを使用して、ICタグ20の識別情報の送信や、落とし物情報の受信などを実行できるようになる。
【0028】
このような管理装置50を備えることにより、まずユーザやICタグ20が屋外に存在している場合には、
図3に示すように、ICタグ20の識別情報が受信されたユーザ端末30(
図3ではユーザ端末30n)では、GPS100から自らの位置情報が取得され、その位置情報とICタグ20の識別情報が管理装置50に送信される。
これによって、管理装置50では、ICタグ20(ユーザ端末30)が屋外のどこに位置しているかを、GPS100の位置情報に基づいて把握することができる。
【0029】
また、ユーザやICタグ20が建物内に存在しており、ユーザ端末30においてGPSからの位置情報を取得できない場合には、
図4に示すように、建物内に設置されている磁界装置40が形成する磁界A~Hのいずれかの磁界IDがICタグ20によって検知され、そのICタグ20から磁界IDを受信したユーザ端末30(
図4ではユーザ端末30n)から、磁界の位置を示す磁界IDを含む識別情報が管理装置50に送信される。
これによって、管理装置50では、ICタグ20(ユーザ端末30)が建物内のどこに位置しているかを、建物内の高さ方向の位置(フロア位置)を含めた三次元位置情報として把握することができる。
【0030】
このように管理装置50でICタグ20の位置情報が把握・管理されることによって、
図4及び
図5に示すように、例えばICタグ20aが持ち主のユーザAから離脱してしまった場合(落とし物・置き忘れなど)でも、ICタグ20aの位置情報が、他のユーザが携行するユーザ端末30b~30nによって取得され管理装置50に送信されることによって、ICタグ20aの所在地が管理装置50で把握できるようになる。
【0031】
そして、管理装置50からは、ICタグ20aを落としてしまった持ち主のユーザAのユーザ端末30aに対して、発見されたICタグ20の位置情報を含む所定の落とし物情報が通知されるようになる。
ここで、ユーザ端末30に通知される落とし物情報としては、例えば、ICタグ20を含む落とし物が発見された旨の通知や、発見された場所の位置情報などがある。
このような落とし物情報の通知は、管理装置50から電子メールによって送信することができ、また、ユーザ端末30のアプリ上にプッシュ通知を送信することもできる。
【0032】
[ユーザ情報]
さらに、管理装置50は、
図1に示すように、一又は二以上のクライアント装置60(60a・・・60n)と通信可能に接続されており、管理装置50が、ユーザ端末30からICタグ20の識別情報を受信すると、そのユーザ端末30に対応付けられた所定のユーザ情報を、該当するクライアント装置60に送信することができるようになっている。
まず、管理装置50には、本システム10を利用するユーザに関する所定のユーザ情報が、ICタグ20やユーザ端末30の識別情報と対応付けて記憶部(図示せず)に記憶・管理されるようになっている。
ここで、ユーザ情報としては、例えば本システム10を運用して顧客サービス等を提供しようとする企業や団体などがターゲットとする顧客や会員となるユーザについての識別情報や属性情報などで構成することができる。
【0033】
例えば、ユーザ情報としては、該当ユーザを特定する識別情報(氏名,住所,電話番号,ユーザID,パスワード,会員番号,メールアドレスなど)と、ユーザの属性を示す属性情報(購入履歴情報,来店実績情報,顧客ランク情報など)が含まれる。
そして、管理装置50では、このようなユーザ情報が、ICタグ20の識別情報(タグID)と対応付けて記録されるようになっている。
これによって、管理装置50は、ユーザ端末30からICタグ20の識別情報・位置情報を受信することにより、そのICタグ20と対応付けて記憶されているユーザ情報を抽出し、それらのユーザ情報を所定のクライアント装置60に送信することができる。
【0034】
[クライアント装置60]
クライアント装置60は、本システム10を運用して顧客サービス等を提供しようとする企業や団体などが運営する店舗などに設置される、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末,スマートフォンなどの情報処理装置によって構成され、店舗などに来店・来場したユーザに対して、必要なサービス提供や商品等の販売などに使用されるようになっている。
そして、このようなクライアント装置60は、管理装置50から送信される所定のユーザ情報を受信して、ユーザへのサービスや接客,販売に際して、受信されたユーザ情報を活用できるようになる。
【0035】
管理装置50は、ユーザ端末30からICタグ20の識別情報・位置情報を受信すると、ICタグ20が現在存在している位置(住所)やその近くの位置にある建物・店舗・施設などに設置されているクライアント装置60に対して、そのICタグ20と対応付けて記憶されているユーザ情報の一部又は全部を送信することができる。
これによって、ユーザ情報を受信したクライアント装置60では、ユーザ情報に対応するICタグ20を携行しているユーザを特定することができ、そのユーザに対して、ユーザ情報に基づいたサービス提供や接客などを行うことができるようになる。
例えば、ユーザ情報が示す識別情報・属性情報に基づいて、優良顧客などに対して優先的な接客や声掛け,優遇割引,おすすめ商品の提案,クーポンの発行など、そのユーザに特化したサービスの提供(所謂おもてなしサービスなど)等が可能となる。
【0036】
[動作]
次に、以上のような構成からなる本システム10の具体的な動作(ユーザ位置情報検知追跡方法)について、
図5及び
図6のフローチャートを参照しつつ説明する。
図5では、本システム10においてユーザの位置情報を検知して所定のユーザ情報をクライアント装置60に提供する場合の処理動作を示す。
【0037】
まず、本システム10を利用する各ユーザに携行されているICタグ20及びユーザ端末30では、ICタグ20から所定のタイミング(例えば数秒ごとに1回)で識別情報となるタグIDが出力され、ユーザ端末30において常時検知される(ステップ501)。
また、ICタグ20は、ユーザが歩行などにより移動して磁界装置40で形成される磁界41の範囲内に入ると、磁界41を検知して磁界IDを受信し、受信した磁界IDが所定のタイミング(例えば磁界IDを受信している間の数秒ごとに1回)で出力され、ユーザ端末30において受信・検知される(ステップ502:Yes)。
ユーザ端末30は、ICタグ20からタグIDと磁界IDが受信されると、そのタグIDと磁界IDを、無線通信網を介して管理装置50に送信する(ステップ503)。
【0038】
一方、ユーザが屋外にいるなどして、磁界装置40で形成される磁界41がICタグ20によって検知されない場合には(ステップ502:No)、ユーザ端末30は、GPSから位置情報を取得し(ステップ504)、その位置情報とICタグ20から受信されたタグIDを、無線通信網を介して管理装置50に送信する(ステップ505)。
ユーザ端末30から管理装置50へのICタグ20の識別情報とGPSの位置情報の送信は、ユーザ端末30に実装されたアプリの制御により、ユーザが特定の入力操作等を行うことなく、管理装置50に自動送信される。
以上の処理動作が繰り返されることによって、ICタグ20とユーザ端末30を携行するユーザの位置情報が、常時管理装置50側に送信され、ユーザの位置や移動が監視できるようになる。
【0039】
さらに、管理装置50は、ユーザ端末30からICタグ20の識別情報・位置情報を受信すると、受信したタグIDのICタグ20と対応付けて記憶されている所定のユーザ情報を記憶部から抽出し、必要な情報を所定のクライアント装置60に送信する(ステップ506)。
例えば、管理装置50は、タグIDを受信したICタグ20が位置している場所やその近くにある店舗や施設などに設置されているクライアント装置60に対して、そのICタグ20と対応付けて記憶されているユーザ情報を送信することができる。
【0040】
このように管理装置50からユーザ情報が送信されることで、ユーザ情報を受信したクライアント装置60では、ユーザ情報に対応するICタグ20を携行しているユーザを特定し、該当するユーザに対して、ユーザ情報に基づいたサービス提供や接客などを行うことができるようになる。
そして、以上の処理動作を繰り返すことによって、ICタグ20とユーザ端末30を携行したユーザが移動しても、管理装置50側では、そのユーザの移動先の位置を把握することで、移動先の他のクライアント装置60に対して、適切なユーザ情報を提供できるようになる。
【0041】
図6では、本システム10においてユーザから離脱したICタグ20の位置情報を検知して、持ち主であるユーザ端末30に通知する場合の処理動作を示す。
まず、
図4又は
図5に示すように、あるユーザAが、自分が所有するICタグ20aをどこかに落としてしまい、その落とし場所が分からない状態であるとする。
この場合、ユーザAが落としたICタグ20aからは、所定のタイミング(例えば数秒ごとに1回)でタグIDが出力されているため、そのICタグ20aの近くにいる他のユーザが携行しているユーザ端末30b~30nのいずれかにおいて、ICタグ20aが出力するタグIDが検知される(ステップ601)。
【0042】
また、ICタグ20aが、磁界装置40で形成される磁界41の範囲内に落ちている場合には、ICタグ20aは磁界41を検知して磁界IDを受信して、その磁界IDが所定のタイミング(例えば磁界IDを受信している間の数秒ごとに1回)で出力されることになる。このため、ICタグ20aの近くにいる他のユーザが携行しているユーザ端末30b~30nのいずれかにおいて、ICタグ20aが出力する磁界IDが検知される(ステップ602:Yes)。
タグIDと磁界IDが受信された他のユーザが携行するユーザ端末30nは、受信されたタグIDと磁界IDを、無線通信網を介して管理装置50に送信する(ステップ603)。
【0043】
一方、ICタグ20aが屋外に落ちているなどして、磁界装置40で形成される磁界41がICタグ20aによって検知されない場合には(ステップ602:No)、ICタグ20aからのタグIDを検知した他のユーザのユーザ端末30nは、GPSから位置情報を取得し(ステップ604)、その位置情報とICタグ20aから受信されたタグIDを、無線通信網を介して管理装置50に送信する(ステップ605)。
ユーザ端末30nから管理装置50へのICタグ20の識別情報とGPSの位置情報の送信は、ユーザ端末30nで実行されるアプリの制御によって、ユーザが入力操作等を行うことなく管理装置50に自動送信される。
以上の処理動作によって、持ち主であるユーザAから離脱したICタグ20aの識別情報と位置情報が、本システム10を利用するいずれかのユーザが携行するユーザ端末30によって検知され、発見されたICタグ20aの位置情報が管理装置50側に送信されるようになる。
【0044】
そして、ICタグ20aの識別情報と位置情報を受信した管理装置50からは、ICタグ20aを落としてしまった持ち主のユーザAのユーザ端末30aに対して、発見されたICタグ20の位置情報を含む所定の落とし物情報が通知される(ステップ606)。
これによって、持ち主のユーザAが、落としてしまったICタグ20aや、ICタグaを入れていたカバンや財布等を自ら探し回ることなく、本システム10の全ユーザが携行するユーザ端末30によって検知・発見されるようになり、本システム10の全ユーザにとって、非常に利便性の高い落とし物捜索探知システムとして提供されるようになる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る本システム10によれば、ユーザが携行可能なICタグ20から発信される識別情報をユーザ端末30で所定のタイミングで自動的に管理装置50に送信することにより、管理装置50において、ICタグ20・ユーザ端末30を携行するユーザの位置や移動を、常に監視して把握・管理することが可能となる。
また、ICタグ20は、磁界装置40によって形成される磁界41を検知すると、当該磁界41を特定する識別情報(磁界ID)を管理装置50側に送信することができるので、ユーザ端末30がGPSからの位置情報を取得できない屋内や地下道,トンネルなどに位置している場合でも、磁界41を検知することができる限り、ICタグ20の位置情報として監視・把握することができる。
【0046】
さらに、ICタグ20の識別情報は、当該ICタグ20の持ち主のみならず、本システム10を利用する全ユーザのユーザ端末30において受信・検知することが可能であり、例えば持ち主のユーザから離脱したICタグ20を、他のユーザが保持するユーザ端末30によって検知して、管理装置50を介して持ち主のユーザのユーザ端末30に対して位置情報を含む所定の落とし物情報を通知できるようになる。
これによって、本システム10によれば、ユーザが屋内にいても屋外にいても、ユーザの位置情報を確実に取得してユーザの位置や移動を検知・追跡することが可能となり、ユーザから離脱した落とし物なども早期に検知・発見することが可能となる。
したがって、本発明によれば、利便性・信頼性の高いユーザ位置情報検知追跡システムを提供することができる。
【0047】
これに対して、例えば上述した特許文献1に開示されているようなシステムでは、単にRFIDを保持した特定の人物を検知するというのみであり、屋内外を問わず複数のユーザの位置情報を検知することや、特定のユーザの落とし物の位置情報を他の全ユーザによって検知するようなことは一切行えず、上記のような本システム10における顕著な作用効果を奏することは不可能である。
【0048】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明に係るユーザ位置情報検知追跡システムが導入・運用される対象としては、例えば大型の商業施設から小売りの店舗,ホテル,デパート,学校,駅,飛行場など、施設や店舗を訪れるユーザの位置情報を監視・把握することが要請される限り、どのような施設等であっても適用することが可能である。
【0049】
また、本システムを構成する管理装置は、本システムの導入する店舗や施設が所有・運用する情報処理装置によって構成することもできるが、管理装置によるユーザの位置情報やユーザ情報の管理・運用のみを行う、例えば本システムをBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスとして提供するシステムインテグレータ企業に設置される情報処理装置等によって構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、例えばユーザの消費動向を分析したり、ユーザに対してきめの細かいサービス提供や優良顧客に対するおもてなしサービスなどを行うことを支援するシステムや、ユーザの落とし物の捜索を支援するシステム等に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 ユーザ位置情報検知追跡システム
20 ICタグ
21 記憶部
22 磁界検知部
23 出力部
30 ユーザ端末
31 受信部
32 位置情報取得部
33 送信部
40 磁界装置
41 磁界
50 管理装置
60 クライアント装置
100 GPS