(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 7/16 20060101AFI20221013BHJP
B60B 21/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B60C7/16
B60B21/00 P
(21)【出願番号】P 2019100714
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】河野 好秀
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0277893(US,A1)
【文献】米国特許第00798225(US,A)
【文献】米国特許第00942097(US,A)
【文献】米国特許第01039427(US,A)
【文献】特開2000-052708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/16
B60B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一軸上の異なる位置に配置された複数のリム部材と、前記複数のリム部材のそれぞれの間をつなぐ複数の本体スプリングと、隣接する本体スプリングを連結する連結部材と、により構成されているタイヤであって、
前記複数の本体スプリングのそれぞれは、
弾性変形部と、
前記弾性変形部の両端に設けられ、前記弾性変形部とは異なる形状の係止部と、を有しており、
前記係止部は、
直線状に形成されたストレート部と、
前記ストレート部の先端側に、前記ストレート部に対して屈曲した屈曲部と、を含み、
前記複数のリム部材の各リム部材は、タイヤ幅方向内側の面に、前記屈曲部が挿入されている孔を有しており、
前記屈曲部が前記孔に挿入されている係合状態で、前記屈曲部が前記孔から抜け出さないように、前記ストレート部を前記各リム部材のタイヤ幅方向内側の面に抑えて前記各リム部材に固定されることで、前記係合状態を維持する支持部材を更に備える、タイヤ。
【請求項2】
前記弾性変形部と前記係止部とは、一体の部材により構成されている、請求項
1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記支持部材は、隣接する前記本体スプリングの別々の前記係止部を一緒に、前記屈曲部が前記孔から抜け出さないように、前記ストレート部を前記各リム部材のタイヤ幅方向内側の面に抑えて、前記各リム部材に固定されている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記連結部材は、弾性変形部と、当該弾性変形部の一端に設けられている制限部と、を有する連結スプリングとして構成されており、
前記連結スプリングの両端は、前記複数のリム部材に固定されておらず、
前記制限部は、前記本体スプリングに対する前記連結スプリングの一方向における変位を制限する、
請求項
1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルばねを用いて構成されたタイヤが知られている。例えば、特許文献1には、複数のコイルばねのそれぞれが、他のコイルばねと組み合わされるとともに、環状リムに固定されることにより、全体としてトロイダル形状に形成されたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたようなタイヤにおいて、コイルばね等の弾性変形部が環状リムから外れた場合、タイヤが形状を維持できなくなり、タイヤとして機能しなくなり得る。
【0005】
本発明は、リム部材に弾性変形部を確実に結合可能なタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のタイヤは、同一軸上の異なる位置に配置された複数のリム部材と、前記複数のリム部材のそれぞれの間をつなぐ複数の本体スプリングと、隣接する本体スプリングを連結する連結部材と、により構成されているタイヤであって、前記複数の本体スプリングのそれぞれは、弾性変形部と、前記弾性変形部の両端に設けられ、前記弾性変形部とは異なる形状の係止部と、を有しており、前記係止部が、前記リム部材に係止されている。本発明に係るタイヤによれば、リム部材に弾性変形部を確実に結合可能である。
【0007】
(2)本発明のタイヤでは、前記複数のリム部材は、前記係止部を係合可能な係合受部を有しており、前記係止部は、前記係合受部に係合されていることが好ましい。この構成によれば、リム部材に弾性変形部をより確実に結合可能である。
【0008】
(3)本発明のタイヤは、前記係合受部に係合されている前記係止部の係合状態を維持する支持部材をさらに備えることが好ましい。この構成によれば、リム部材にスプリングをより確実に結合可能である。
【0009】
(4)本発明のタイヤでは、前記弾性変形部と前記係止部とは、一体の部材により構成されていることが好ましい。この構成によれば、本体スプリングの製造が容易である。
【0010】
(5)本発明のタイヤでは、前記係止部は、直線状に形成されたストレート部を含むことが好ましい。この構成によれば、係止部において係止される位置と、弾性変形部との距離を変えることができ、多様な設計を選択できるようになる。
【0011】
(6)本発明のタイヤでは、前記係止部は、前記ストレート部の先端側に、前記ストレート部に対して屈曲した屈曲部を含むことが好ましい。この構成によれば、係止部をより確実にリム部材に係合させやすくなる。
【0012】
(7)本発明のタイヤでは、前記係合受部は、前記屈曲部を挿入可能な孔を含んで構成されていることが好ましい。この構成によれば、係止部をより確実にリム部材に係合させやすくなる。
【0013】
(8)本発明のタイヤでは、前記連結部材は、弾性変形部と、当該弾性変形部の一端に設けられている制限部と、を有する連結スプリングとして構成されており、前記連結スプリングの両端は、前記複数のリム部材に固定されておらず、前記制限部は、前記本体スプリングに対する前記連結スプリングの一方向における変位を制限することが好ましい。この構成によれば、本体スプリングに対する連結スプリングの連結状態が位置決め固定される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リム部材に弾性変形部を確実に結合可能なタイヤ及び本体スプリングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの外観斜視図である。
【
図3】
図1の接地変形部を構成する本体スプリングの一例を示す概略図である。
【
図4】本体スプリングの、リム部材への係合の態様の一例を示す概略図である。
【
図7】
図1の接地変形部を構成する連結スプリングの一例を示す概略図である。
【
図8A】本体スプリングに対する連結スプリングの結合方法の一例を説明するための概略図である。
【
図8B】本体スプリングに対する連結スプリングの結合方法の一例を説明するための概略図である。
【
図11】本体スプリング及び連結スプリングの一変形例を示す概略図である。
【
図13】
図12の連結部材を用いた、本体スプリング同士の結合の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して例示説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの外観斜視図である。
図1に示されているように、本実施形態に係るタイヤ1は、リム部を備えたホイール部10と、接地変形可能な接地変形部20と、により構成されている。
【0018】
図2は、
図1のホイール部10の外観斜視図である。ホイール部10は、複数のリム部材を備えている。本実施形態では、
図1及び
図2に示されているように、ホイール部10は、リム部材として、第1リム部材101と、第2リム部材102と、を備える。なお、ホイール部10が備える複数のリム部材の数量は、必ずしも本実施形態のように2つでなくてもよく、2つ以上であればよい。本実施形態において、ホイール部10は、
図2に示されているように、複数の接続部材103をさらに備える。
【0019】
第1リム部材101と第2リム部材102とは、金属製又は樹脂製とされている。第1リム部材101と第2リム部材102とは、同一軸上の異なる位置に配置されている。第1リム部材101と第2リム部材102とは、それぞれ円環形状に形成されている。本実施形態において、第1リム部材101と第2リム部材102とは、同一の大きさ及び形状に構成されている。ただし、タイヤ1がタイヤとしての機能を発揮し得る限り、第1リム部材101と第2リム部材102とは、異なる大きさ又は形状で構成されていてもよい。第1リム部材101と第2リム部材102との外径は、必要とされるタイヤ1のサイズに応じて、適宜決定されてよい。
【0020】
接続部材103は、第1リム部材101と第2リム部材102とを接続する部材である。接続部材103は、金属製又は樹脂製とされている。本実施形態では、
図2に示されているように、ホイール部10は6本の接続部材103を備えるが、ホイール部10が備える接続部材103の本数は、これに限られない。複数の接続部材103は、円環形状の第1リム部材101の一面側と、円環形状の第2リム部材102の一面側とに取り付けられている。以下、本明細書において、ホイール部10について、第1リム部材101及び第2リム部材102に対し、接続部材103が取り付けられている側を、タイヤ幅方向内側、接続部材103が取り付けられていない側を、タイヤ幅方向外側と称する。
【0021】
本実施形態では、第1リム部材101及び第2リム部材102は、タイヤ幅方向内側の面において、接地変形部20の本体スプリング201を係合可能な係合受部105(
図5参照)を有している。係合受部の詳細、及び係合の態様の詳細については、後述する。なお、本明細書では、「係合」は、嵌め合わされることを言い、「係止」は、嵌め合わされることを含め、広く、留められることを言う。
【0022】
本実施形態では、
図2に示されているように、第1リム部材101及び第2リム部材102に、支持部材104が取り付けられている。支持部材104は、係合受部105(
図5参照)に係合している接地変形部20の係合状態を維持する部材である。支持部材104は、例えばボルトを用いて第1リム部材101及び第2リム部材102のタイヤ幅方向内側に固定されることができる。
【0023】
本実施形態では、接地変形部20は、弾性変形部を含む部材によって構成されている。本実施形態では、
図1に示されているように、接地変形部20は、本体スプリング201と、連結スプリング211との、2種類の部材を含んでいる。本体スプリング201と、連結スプリング211とは、金属により構成されている。
【0024】
図3は、
図1の接地変形部20を構成する本体スプリング201の一例を示す概略図である。本体スプリング201は、複数のリム部材の間をつなぐ。本実施形態では、本体スプリング201は、第1リム部材101と第2リム部材102との間をつなぐ。タイヤ1がリム部材を3つ以上有する場合は、本体スプリング201は、本明細書で説明する第1リム部材101と第2リム部材102とをつなぐ要領と同様の要領で、隣接するリム部材館のそれぞれをつなぐことが好ましいが、隣接するリム部材の間の少なくとも1つをつないでもよい。
図3に示すように、本体スプリング201は、弾性変形部202と、係止部203とを有している。
【0025】
本実施形態では、弾性変形部202は、コイルばねで構成されている。ここで、コイルばねとは、荷重に応じて弾性的に変形するばねであって、所定の軸のまわりにコイル状(螺旋状)に巻回されてなるばねを言う。弾性変形部202は、タイヤ1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部20の性質等に応じて、適宜の材質及び弾性を有する弾性変形部202を使用することができる。
【0026】
係止部203は、弾性変形部202の両端に設けられている。係止部203は、本体スプリング201をホイール部10に係止する。係止部203は、弾性変形部202とは異なる形状を有している。すなわち、本実施形態では、係止部203は、コイル状とは異なる形状を有している。
【0027】
本実施形態では、係止部203は、弾性変形部202と一体の部材により構成されている。すなわち、本実施形態では、例えば
図3に示されているように、弾性変形部202の両端から、弾性変形部202を構成する材料が延びて、係止部203を構成している。
【0028】
本実施形態では、例えば
図3に示されているように、係止部203は、弾性変形部202の両端に結合された、直線状に形成されたストレート部203aを含む。また、本実施形態では、例えば
図3に示されているように、係止部203は、ストレート部203aの先端側に、ストレート部203aに対して屈曲した屈曲部203bを含む。本実施形態では、本体スプリング201の側面視(本体スプリング201の軸を含む面内)で屈曲部203bは、ストレート部203aに対して、直交するように屈曲している。
【0029】
ここで、
図4から
図6を参照しながら、本実施形態における、本体スプリング201の、ホイール部10への係合の態様の詳細について説明する。本体スプリング201は、両端に設けられた係止部203のうち、一方の係止部203が第1リム部材101に係合され、他方の係止部203が第2リム部材102に係合されている。ここでは、一方の係止部203が第1リム部材101に係合される場合の例について説明するが、他方の係止部203は、同様の要領で、第2リム部材102に係合することができる。
【0030】
図4は、本体スプリング201の、第1リム部材101への係合の態様の一例を示す概略図であり、本体スプリング201の係合状態を、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側から見た場合の概略図である。
図4には、本体スプリング201が係合された第1リム部材101の一部のみが図示されているが、実際には、第1リム部材101の全周にわたって、
図4に示すように、本体スプリング201が第1リム部材101に係合されている。
【0031】
本実施形態では、
図4に示されているように、本体スプリング201は、係止部203が、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側の面に設けられた係合受部105に係合されることにより、第1リム部材101に係合されることができる。本実施形態では、特に、係合受部105が、係止部203の屈曲部203bを挿入可能な孔として構成されており、屈曲部203bを係合受部105の孔に挿入することにより、本体スプリング201が第1リム部材101に係合される。係止部203が係合受部105に係合された状態で、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側に支持部材104を取り付けることにより、係止部203の係合状態を強固に固定することができる。
【0032】
図5は、
図4のA-A断面図であり、具体的には、第1リム部材101についての、係合受部を含む箇所の断面図である。
図5に示されているように、第1リム部材101は、係合受部105を有している。本実施形態において、係合受部105は、屈曲部203bを挿入可能な孔として構成されている。本実施形態では、係合受部105は、有底の孔として構成されている。係合受部105の孔の延在方向の長さ(孔の深さ)は、屈曲部203bの長さよりも長いことが好ましい。これにより、屈曲部203bの全体が係合受部105に挿入可能となり、係合状態が安定しやすくなる。ただし、係合受部105は、無底の孔(貫通孔)として構成されていてもよい。
【0033】
係合受部105の孔の断面形状は、屈曲部203bが入る限り限定されず、例えば、長円形、楕円形、矩形、多角形等であってもよい。弾性変形部202がより確実に係止(固定)されるためには、孔の断面の形状及び大きさは、屈曲部203bの断面の形状及び大きさとほぼ同じであることが好ましい。
【0034】
本体スプリング201は、屈曲部203bが係合受部105に挿入された状態において、弾性変形部202が、少なくとも一部を除き、円環状の第1リム部材101のタイヤの径方向外側(
図5及び
図6の上側)に位置するように配置されている。この状態で、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側(
図5及び
図6の左側)において、支持部材104が第1リム部材101に取り付けられている。支持部材104は、例えば
図5に示されているように、係合受部105の孔に挿入された屈曲部203bを抑えるような位置に、すなわち屈曲部203bが係合受部105の孔から抜け出さないようにすることが可能な位置に、取り付けられる。好ましくは、支持部材104は、本体スプリング201が挿入されていない状態において係合受部105の孔を塞ぐような位置に取り付けられる。また、例えば
図5に示されているように、支持部材104は、係止部203のストレート部203aを、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側の面に抑えるように、第1リム部材101に固定される。このようにして、支持部材104により、係止部203の係合状態が安定して固定される。
【0035】
支持部材104は、例えばボルト106を用いて第1リム部材101に取り付けられる。
図6は、
図4のB-B断面図であり、具体的には、第1リム部材101についての、支持部材104を固定するボルト106を含む箇所の断面図である。
図6に示されているように、支持部材104は、ボルト106により第1リム部材101に固定されている。
図4に示されているように、支持部材104は、第1リム部材101に係合されている2つの本体スプリング201の間(中央)の位置で、第1リム部材101に固定されてよい。つまり、第1リム部材101において、ボルト106を固定するためのボルト穴107は、円環状の第1リム部材101の周方向において、隣接する2つの係合受部105の間に1つ形成されている。これにより、本体スプリング201の係合位置に干渉することなく、支持部材104を第1リム部材101に固定することができる。
【0036】
支持部材104は、1つの円環状の部材として構成されていてもよく、全体として円環状となる、複数に分割された部材として構成されていてもよい。その場合、支持部材104は、互いの周方向端で接するように配置されてもよく、適宜の間隔をあけて配置されてもよい。支持部材104が複数に分割された部材として構成されている場合、各部材は例えば扇形状となる。
【0037】
本実施形態では、第1リム部材101には、全周にわたって、上述した態様で、本体スプリング201の一方の係止部203(より具体的には、屈曲部203b)が第1リム部材101の係合受部105に係合され、支持部材104が第1リム部材101に固定されている。このようにして、係止部203が第1リム部材101に係止されている。また、同様の要領で、第2リム部材102には、全周にわたって、本体スプリング201の他方の係止部203(より具体的には、屈曲部203b)が第2リム部材102の係合受部に係合され、支持部材104が第2リム部材102に固定されている。このようにして、係止部203が第2リム部材102に係止されている。このとき、本実施形態では、1つの本体スプリング201の一方の係止部203と他方の係止部203とは、第1リム部材101及び第2リム部材102に対して、第1リム部材101及び第2リム部材102の軸方向において1つの直線上に位置する係合受部に係合されていてよい。つまり、本実施形態では、1つの本体スプリング201の2つの係止部203は、第1リム部材101と第2リム部材102とに対し、周方向について同じ位置に固定されていてよい。ただし、1つの本体スプリング201の2つの係止部203は、第1リム部材101と第2リム部材102とに対し、周方向について、必ずしも同じ位置に固定されていなくてもよい。
【0038】
なお、第1リム部材101及び第2リム部材102に対して係合される本体スプリング201の数量及び間隔は、タイヤ1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部20の性質等に応じて、適宜決定されてよい。第1リム部材101及び第2リム部材102に支持部材104を取り付けるために用いられるボルト106の数量及び間隔についても、適宜決定されてよい。例えば、ボルト106は、必ずしも本実施形態のように、周方向に隣接する2つの係合受部105の間に1つずつ取り付けられなくてもよい。
【0039】
本実施形態に係るタイヤ1では、このようにしてホイール部10に係合された複数の本体スプリング201が、連結スプリング211と連結されることにより、接地変形部20が形成されている。すなわち、本実施形態では、連結スプリング211が、隣接する本体スプリング201を連結する連結部材として機能する。
図7は、
図1の接地変形部20を構成する連結スプリング211の一例を示す概略図である。本実施形態では、
図7に示すように、連結スプリング211は、弾性変形部212と、制限部213とを有している。連結スプリング211は、具体的には、ホイール部10に係合された、周方向に隣接する2本の本体スプリング201の間に配置され、これら2本の本体スプリング201に組み合わされて本体スプリング201と連結される。
【0040】
本実施形態では、弾性変形部212は、コイルばねで構成されている。弾性変形部212は、タイヤ1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部20の性質等に応じて、適宜の材質及び弾性を有する弾性変形部212を使用することができる。弾性変形部212を構成するコイルばねの直径は、本体スプリング201の弾性変形部202を構成するコイルばねの直径に近い方が好ましい。ここで、コイルばねの直径は、コイルばねを軸方向から見たときの、外接円の直径であり、以下同様とする。弾性変形部212を構成するコイルばねの直径が、本体スプリング201の弾性変形部202を構成するコイルばねの直径に近いほど、弾性変形部202を構成するコイルばねと弾性変形部212を構成するコイルばねとを、後述するように連結させて接地変形部20を形成したときに、均等に力がかかりやすくなる。例えば、弾性変形部202を構成するコイルばね及び弾性変形部212を構成するコイルばねの直径は、いずれも15mm~25mm、例えば20mm等とすることができる。
【0041】
本実施形態では、制限部213は、弾性変形部212の一端に設けられている。弾性変形部212において、制限部213が設けられていない他端には、他の機構が構成されておらず、従って、弾性変形部212は、他端側において途切れたような形状となっている。制限部213は、本体スプリング201と連結される連結スプリング211の、本体スプリング201に対する変位を制限する。制限部213は、本体スプリング201に対する連結スプリング211の少なくとも一方向における変位を制限するものであればよい。このように、制限部213により本体スプリング201に対する連結スプリング211の変位が制限されることにより、後述する
図8A及び
図8Bを参照して説明するように、本体スプリング201に対して連結スプリング211が連結される際に、連結スプリング211の連結位置が定められて固定される。すなわち、本体スプリング201に対する連結スプリング211の連結状態が位置決め固定される。制限部213は、弾性変形部212とは異なる形状を有している。すなわち、本実施形態では、制限部213は、コイル状とは異なる形状を有している。
【0042】
本実施形態では、制限部213は、弾性変形部212と一体の部材により構成されている。すなわち、本実施形態では、例えば
図7に示されているように、弾性変形部212の一端から、弾性変形部212を構成する材料が延びて、制限部213を構成している。
図7に示されている例では、制限部213は、弾性変形部212を形成するワイヤが、輪形状に曲げられることにより形成された、輪形状の部分を有している。当該輪形状は、弾性変形部212の軸A方向と交差する方向に中心軸を有するように形成されている。制限部213の輪形状の部分は、連結スプリング211の変位を制限可能な任意の大きさであってよい。例えば、制限部213の輪形状の部分は、直径が、弾性変形部212の直径の0.5~1.0倍となるように構成されていてよい。
【0043】
ここで、制限部213の機能について、連結スプリング211の本体スプリング201への連結方法とあわせて説明する。
図8A及び
図8Bは、本体スプリング201に対する連結スプリング211の連結方法の一例を説明するための概略図である。
【0044】
連結スプリング211は、
図8Aに示されているように、弾性変形部212が、ホイール部10に係合された本体スプリング201の弾性変形部202に引っ掛けて、隣接する2本の本体スプリング201と組むようにして、これら2本の本体スプリング201と連結していく。具体的には、連結スプリング211は、周方向に隣接する2本の本体スプリング201の相互間の相対変位を規制するように本体スプリング201に連結される。このとき、連結スプリング211は、制限部213が設けられていない他端側を先頭として、回転しながら前進するように本体スプリング201に差し込まれていくことにより、隣接する2本の本体スプリング201と徐々に組み合わされる。
【0045】
連結スプリング211の弾性変形部212の全体が本体スプリング201と組み合わされていくと、やがて、
図8Bに示されているように、制限部213が本体スプリング201と接触する。制限部213は、その形状から、本体スプリング201と組み合わされ得ない。そのため、連結スプリング211は、制限部213が本体スプリング201と接触した位置よりも、差込み方向側に移動しない。特に連結スプリング211は、制限部213の輪形状の部分が本体スプリング201と接触した後は、たとえ回転させながら前進させようとしても前進(差込み方向側に移動)しない。このように、制限部213は、本体スプリング201に対する連結スプリング211の少なくとも一方向における変位を制限する。このようにして、制限部213により、本体スプリング201に対する連結スプリング211の連結状態が位置決め固定される。また、本体スプリング201に連結した連結スプリング211が、本体スプリング201から外れにくくなる。
【0046】
本実施形態では、ホイール部10に係合された全ての本体スプリング201は、隣接する2本の本体スプリング201の間に連結スプリング211が配置されるように、連結スプリング211と連結される。本実施形態では、このようにして、タイヤ1が構成されている。すなわち、本実施形態では、タイヤ1の接地変形部20の全ての本体スプリング201は、2本の連結スプリング211と連結され、タイヤ1の接地変形部20の全ての連結スプリング211は、2本の本体スプリング201と連結されている。このように、隣接する2本の本体スプリング201の間に連結スプリング211が連結されていることにより、タイヤ1に対して荷重がかかった場合であっても、本体スプリング201同士の距離が広がりすぎず、タイヤ1がタイヤとしての機能を維持しやすくなる。
【0047】
なお、上記実施形態では、制限部213が、弾性変形部212の軸A方向と交差する方向に中心軸を有する輪形状に形成されていると説明したが、制限部213の形状は、これに限られない。制限部213は、本体スプリング201に対する連結スプリング211の少なくとも一方向における変位を制限可能な、任意の構成を有していてよい。
【0048】
また、上記実施形態では、制限部213が、弾性変形部212と一体の部材により構成されていると説明したが、制限部213は、必ずしも弾性変形部212と一体の部材により構成されていなくてもよい。例えば、
図9に概略的に示すように、連結スプリング211とは異なる、独立した部材により構成される制限部213により、本体スプリング201に対する連結スプリング211の変位を制限してもよい。
図9に示されている例では、制限部213は、互いに組み合わされた本体スプリング201と連結スプリング211との接触箇所の変位を制限する、連結スプリング211とは別体の独立した部材として構成されている。
【0049】
連結スプリング211の長さは、タイヤ1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部20の性質等に応じて、適宜決定されてよい。連結スプリング211は、弾性変形部212の長さが、本体スプリング201の弾性変形部202の長さよりも短く構成されていることが好ましい。連結スプリング211は、弾性変形部212がタイヤの幅方向の全体にわたって延在するような長さを有することが好ましい。これにより、本体スプリング201の弾性変形部202のうち、少なくとも接地する領域が、連結スプリング211の弾性変形部212と連結される。
【0050】
このように、本実施形態に係るタイヤ1によれば、接地変形部20を構成する複数の本体スプリング201のそれぞれは、弾性変形部202と、弾性変形部202の両端に設けられた、弾性変形部202とは異なる形状の係止部203とを有しており、係止部203が第1リム部材101及び第2リム部材102に係止されている。これにより、第1リム部材101及び第2リム部材102に本体スプリング201を確実に結合可能である。このような効果により、例えば、タイヤ1の使用環境が特殊な場合であっても、本体スプリング201が第1リム部材101及び第2リム部材102から外れにくい。また、例えば、仮に本体スプリング201の弾性変形部202が直接第1リム部材101及び第2リム部材102に結合されている場合には、結合の方法によっては、弾性変形部202が第1リム部材101及び第2リム部材102から脱落しやすかったり、弾性変形部202が摩耗することにより、弾性変形部202が第1リム部材101及び第2リム部材102から脱落しやすくなったりするのに対し、本実施形態では、弾性変形部202とは異なる形状の係止部203が係止されるため、このような恐れが少ない。さらに、例えば温度変化が大きい月面で本実施形態に係るタイヤ1を使用する場合であっても、本体スプリング201を第1リム部材101及び第2リム部材102の係合受部105に係合させているため、第1リム部材101及び第2リム部材102や本体スプリング201に熱膨張や熱収縮が発生しても、本体スプリング201が第1リム部材101及び第2リム部材102から外れにくく、タイヤ1としての形態及び機能を維持しやすくなる。
【0051】
また、本実施形態のように、第1リム部材101及び第2リム部材102が係合受部105を有し、本体スプリング201の係止部203が係合受部105に係止されている場合、本体スプリング201を、第1リム部材101及び第2リム部材102に、より確実に結合可能である。
【0052】
また、本実施形態のように、支持部材104を用いて係止部203の係止状態を維持した場合、本体スプリング201が、より第1リム部材101及び第2リム部材102から外れにくくなる。そのため、複数の本体スプリング201を、第1リム部材101及び第2リム部材102の係合受部105に、より確実に係合させることができる。
【0053】
上記実施形態において、本体スプリング201の係止部203は、ストレート部203aと、ストレート部203aの先端側に配置された屈曲部203bとを含んで構成されていると説明した。しかしながら、係止部203の構成は、必ずしもこれに限られない。係止部203は、弾性変形部202とは形状が異なり、第1リム部材101及び第2リム部材102に係止されることが可能な任意の形状を有していてよい。また、第1リム部材101及び第2リム部材102の係合受部105も、係止部203の構成に対応する、任意の構成を有していてよい。例えば、係止部203は、直線状に形成されていてもよい。この場合、第1リム部材101及び第2リム部材102には、直線状の係止部203を係合可能な係合受部が設けられていてもよく、単に支持部材104により係止部203が固定されていてもよい。
【0054】
係止部203は、本明細書で説明した例に限られず、本体スプリング201を第1リム部材101及び第2リム部材102に係止可能な任意の構成を有していてよい。例えば、係止部203は、フック形状に形成されていてもよい。
【0055】
また、例えば、上記実施形態において、本体スプリング201の係止部203の屈曲部203bは、ストレート部203aに対して、直交するように屈曲していると説明した。しかしながら、屈曲部203bは、必ずしもストレート部203aに対して直交していなくてもよい。屈曲部203bは、ストレート部203aに対して所定の角度で屈曲していてよい。この場合、係合受部105は、屈曲部203bの屈曲の角度に合わせた方向に設けられた孔として形成されていてよい。
【0056】
また、本体スプリング201の係止部203は、例えば、
図10に示されているように、ストレート部203aと、ストレート部203aの先端側に配置されたリング部203cとを含んで構成されていてよい。リング部203cは、中央に貫通孔203dを有する円環形状に形成されている。この場合、係合受部105は、例えば、貫通孔203dを貫通可能な突起により構成されていてよい。この場合、係止部203のリング部203cの貫通孔203dに、係合受部105の突起を貫通させることにより、係止部203を係合受部105に係止することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、本体スプリング201の弾性変形部202及び連結スプリング211の弾性変形部212が、それぞれコイルばねで構成されていると説明した。しかしながら、本体スプリング201の弾性変形部202及び連結スプリング211の弾性変形部212は、必ずしもコイルばねで構成されていなくてもよい。例えば、本体スプリング201の弾性変形部202及び/又は連結スプリング211の弾性変形部212は、コイルばねに代えて、例えば
図11に示されているように、2次元の(すなわち、ほぼ同一平面に沿って延在する)波形状の金属部材を含んで構成されていてもよい。
図11に示されている例は、弾性変形部202及び弾性変形部212が、2次元の波形状に形成されている場合の例である。波形状の金属部材は、例えば、半円を連結した形状であってもよく、正弦波形状であってもよい。この場合であっても、波形状の金属部材を組み合わせることにより、本体スプリング201と、連結スプリング211とを連結することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、連結スプリング211を、隣接する2本の本体スプリング201と組み合わせると説明したが、タイヤ1は、必ずしも連結スプリング211を有していなくてもよい。例えば、タイヤ1は、
図12に示されているような、2つの貫通穴220aを有する連結部材220を有し、当該連結部材220により、隣接する2本の本体スプリング201を連結してもよい。連結部材220の2つの貫通穴220aは、本体スプリング201を通すことができる大きさである。この場合、連結部材220が有する2つの貫通穴220aのうち、一方に、1本の本体スプリング201を通し、他方に、当該1本の本体スプリング201に隣接する1本の本体スプリング201を通す。
図13に示されているように、本体スプリング201の複数の箇所に、連結部材220を通すことにより、隣接する2本の本体スプリング201を、タイヤ幅方向に離隔した複数箇所の連結部材220で連結することができる。なお、
図13では、2本の本体スプリング201を連結する連結部材220について、貫通穴220aへの本体スプリング201の貫通の様子が分かるように、一部を断面として示している。このように、連結スプリング211に代えて、連結部材220を用いることによっても、タイヤ1を構成することができる。
【0059】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:タイヤ、 10:ホイール部、 20:接地変形部、 101:第1リム部材、 102:第2リム部材、 103:接続部材、 104:支持部材、 105:係合受部、 106:ボルト、 107:ボルト穴、 201:本体スプリング、 202,212:弾性変形部、 203:係止部、 203a:ストレート部、 203b:屈曲部、 203c:リング部、 203d:貫通孔、 211:連結スプリング、 213:制限部、 220:連結部材、 220a:貫通穴、 A:軸