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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/16 20060101AFI20221013BHJP
   B60B 9/06 20060101ALI20221013BHJP
   B60B 21/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B60C7/16
B60B9/06
B60B21/00 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019100730
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020192930
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】河野 好秀
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0277893(US,A1)
【文献】特開2003-306010(JP,A)
【文献】特開平06-286419(JP,A)
【文献】実開平06-071209(JP,U)
【文献】米国特許第00942097(US,A)
【文献】米国特許第00798225(US,A)
【文献】特開2008-296894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
B60B9/06
9/12
21/00-21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム部材と、前記リム部材に係止された複数の本体スプリングと、前記本体スプリングに組み合わされた複数の連結スプリングと、により構成された骨格部と、
少なくとも、前記骨格部の外周に配置された、トレッド部材と、
を備え
前記トレッド部材は、金属製の不織布を含んで構成されている、タイヤ。
【請求項2】
前記トレッド部材は、前記本体スプリング及び前記連結スプリングにより形成された溝に、少なくとも一部が埋め込まれるようにして装着されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記トレッド部材は、前記骨格部に対して着脱可能に装着されている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部材は、貫通穴を有する棒状に構成されている、請求項1からのいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記トレッド部材は、前記貫通穴に挿通された少なくとも1本のコイルばねを用いて、前記骨格部に固定される、請求項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部材は、前記不織布を巻きつける芯材を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
リム部材と、前記リム部材に係止された複数の本体スプリングと、前記本体スプリングに組み合わされた複数の連結スプリングと、により構成された骨格部と、
少なくとも、前記骨格部の外周に配置された、トレッド部材と、
を備え、
前記トレッド部材は、貫通穴を有する棒状に構成されている、タイヤ。
【請求項8】
前記トレッド部材は、前記貫通穴に挿通された少なくとも1本のコイルばねを用いて、前記骨格部に固定される、請求項7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部材は、前記トレッド部材を前記骨格部に固定するための固定部材をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記トレッド部材の前記骨格部への装着状態を維持させるための係止具をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルばねを用いて構成されたタイヤが知られている。例えば、特許文献1には、複数のコイルばねのそれぞれが、他のコイルばねと組み合わされるとともに、環状リムに固定されることにより、全体としてトロイダル形状に形成されたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/138150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたタイヤは、ホイールがコイルばね等のスプリングにより構成されており、当該スプリング同士の間に多数の空隙が存在することに起因して、走行する環境によっては、適切な走行ができなくなる場合がある。例えば、特許文献1に開示されたタイヤで砂地等を走行する場合には、コイルばねの隙間に砂が入り込むことによってタイヤが地面に埋まることがある。また、砂がコイルばねの隙間からホイールの回転中心側に入り込み、例えばホイールの回転中心側に駆動機構等が存在する場合には、当該駆動機構の異常を発生させる原因になり得る。従って、特許文献1に開示されたタイヤでは、所期した駆動力等の走行性能が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、スプリングを用いて構成されたタイヤにおいて、走行性能が低下しにくいタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のタイヤは、リム部材と、前記リム部材に係止された複数の本体スプリングと、前記本体スプリングに組み合わされた複数の連結スプリングと、により構成された骨格部と、少なくとも、前記骨格部の外周に配置された、トレッド部材と、を備える。本発明に係るタイヤによれば、トレッド部材により、タイヤの内部側に砂等の異物が入ることを抑制することができ、その結果、走行性能が低下しにくくなる。
【0007】
(2)本発明のタイヤでは、前記トレッド部材は、前記本体スプリング及び前記連結スプリングにより形成された溝に、少なくとも一部が埋め込まれるようにして装着されていることが好ましい。この構成によれば、トレッド部材が脱落しにくくなる。
【0008】
(3)本発明のタイヤでは、前記トレッド部材は、前記骨格部に対して着脱可能に装着されていることが好ましい。この構成によれば、トレッド部材を骨格部から外して交換することができる。
【0009】
(4)本発明のタイヤでは、前記トレッド部材は、金属製の不織布を含んで構成されていることが好ましい。この構成によれば、温度変化が大きい環境においてもタイヤを使用可能となる。
【0010】
(5)本発明のタイヤでは、前記トレッド部材は、貫通穴を有する棒状に構成されていることが好ましい。この構成によれば、トレッド部材を容易に製作できる。
【0011】
(6)本発明のタイヤでは、前記トレッド部材は、前記貫通穴に挿通された少なくとも1本のコイルばねを用いて、前記骨格部に固定されることが好ましい。この構成によれば、トレッド部材が骨格部から脱落しにくくなる。
【0012】
(7)本発明のタイヤでは、前記トレッド部材は、前記不織布を巻きつける芯材を備えることが好ましい。この構成によれば、トレッド部材を容易に製作できる。
【0013】
(8)本発明のタイヤでは、前記トレッド部材は、ゴム製であることが好ましい。この構成によれば、トレッド部材におけるグリップ力を向上させることができる。
【0014】
(9)本発明のタイヤでは、前記トレッド部材は、前記トレッド部材を前記骨格部に固定するための固定部材をさらに備えることが好ましい。この構成によれば、トレッド部材が骨格部から脱落しにくくなる。
【0015】
(10)本発明のタイヤは、前記トレッド部材の前記骨格部への装着状態を維持させるための係止具をさらに備えることが好ましい。この構成によれば、トレッド部材が骨格部から脱落しにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スプリングを用いて構成されたタイヤにおいて、走行性能が低下しにくいタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの外観斜視図である。
図2図1のタイヤの骨格部の外観斜視図である。
図3図2のリム部材の外観斜視図である。
図4図2の接地変形部を構成する本体スプリングの一例を示す概略図である。
図5】本体スプリングの、リム部材への係合の態様の一例を示す概略図である。
図6図5のA-A断面図である。
図7図5のB-B断面図である。
図8図2の接地変形部を構成する連結スプリングの一例を示す概略図である。
図9A】本体スプリングに対する連結スプリングの結合方法の一例を説明するための概略図である。
図9B】本体スプリングに対する連結スプリングの結合方法の一例を説明するための概略図である。
図10】制限部の一変形例を示す概略図である。
図11】骨格部の一部にトレッド部材を装着した状態を示す図である。
図12】骨格部の一部にトレッド部材を装着した状態を示す図である。
図13】トレッド部材の骨格部への装着の状態を示す概略図である。
図14A】トレッド部材の一変形例を示す概略図である。
図14B】トレッド部材の一変形例を示す概略図である。
図15A】トレッド部材の他の一変形例を示す概略図である。
図15B】トレッド部材の他の一変形例を示す概略図である。
図16】トレッド部材の固定部材によるリム部材への固定の態様の一例を示す概略図である。
図17A】係止具の一例を示す外観図である。
図17B】係止具の一例を示す外観図である。
図18】係止部の一変形例を示す概略図である。
図19】本体スプリング及び連結スプリングの一変形例を示す概略図である。
図20】ゴム製のトレッドの一例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して例示説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ1の外観斜視図である。本実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ1の構造を規定する骨格部2と、骨格部2に装着されるトレッド部材300とにより構成される。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係るタイヤ1の外観斜視図である。図2に示されているように、本実施形態に係るタイヤ1の骨格部2は、リム部を備えたホイール部10と、接地変形可能な接地変形部20と、により構成されている。
【0021】
図3は、図2のホイール部10の外観斜視図である。ホイール部10は、複数のリム部材を備えている。本実施形態では、図2及び図3に示されているように、ホイール部10は、リム部材として、第1リム部材101と、第2リム部材102と、を備える。なお、ホイール部10が備える複数のリム部材の数量は、必ずしも本実施形態のように2つでなくてもよく、2つ以上であればよい。本実施形態において、ホイール部10は、図3に示されているように、複数の接続部材103をさらに備える。
【0022】
第1リム部材101と第2リム部材102とは、金属製又は樹脂製とされている。第1リム部材101と第2リム部材102とは、同一軸上の異なる位置に配置されている。第1リム部材101と第2リム部材102とは、それぞれ円環形状に形成されている。本実施形態において、第1リム部材101と第2リム部材102とは、同一の大きさ及び形状に構成されている。ただし、タイヤ1としての機能を発揮し得る限り、第1リム部材101と第2リム部材102とは、異なる大きさ又は形状で構成されていてもよい。第1リム部材101と第2リム部材102との外径は、必要とされるタイヤ1のサイズに応じて、適宜決定されてよい。
【0023】
接続部材103は、第1リム部材101と第2リム部材102とを接続する部材である。接続部材103は、金属製又は樹脂製とされている。本実施形態では、図3に示されているように、ホイール部10は6本の接続部材103を備えるが、ホイール部10が備える接続部材103の本数は、これに限られない。複数の接続部材103は、円環形状の第1リム部材101の一面側と、円環形状の第2リム部材102の一面側とに取り付けられている。以下、本明細書において、ホイール部10について、第1リム部材101及び第2リム部材102に対し、接続部材103が取り付けられている側を、タイヤ幅方向内側、接続部材103が取り付けられていない側を、タイヤ幅方向外側と称する。
【0024】
本実施形態では、第1リム部材101及び第2リム部材102は、タイヤ幅方向内側の面において、接地変形部20の本体スプリング201を係合可能な係合受部105(図6参照)を有している。係合受部の詳細、及び係合の態様の詳細については、後述する。なお、本明細書では、「係合」は、嵌め合わされることを言い、「係止」は、嵌め合わされることを含め、広く、留められることを言う。
【0025】
本実施形態では、図3に示されているように、第1リム部材101及び第2リム部材102に、支持部材104が取り付けられている。支持部材104は、係合受部105(図6参照)に係合している接地変形部20の係合状態を維持する部材である。支持部材104は、例えばボルトを用いて第1リム部材101及び第2リム部材102のタイヤ幅方向内側に固定されることができる。
【0026】
本実施形態では、接地変形部20は、弾性変形部を含む部材によって構成されている。本実施形態では、図2に示されているように、接地変形部20は、本体スプリング201と、連結スプリング211との、2種類の部材を含んでいる。本体スプリング201と、連結スプリング211とは、金属により構成されている。
【0027】
図4は、図2の接地変形部20を構成する本体スプリング201の一例を示す概略図である。本体スプリング201は、複数のリム部材の間をつなぐ。本実施形態では、本体スプリング201は、第1リム部材101と第2リム部材102との間をつなぐ。骨格部2がリム部材を3つ以上有する場合は、本体スプリング201は、本明細書で説明する第1リム部材101と第2リム部材102とをつなぐ要領と同様の要領で、隣接するリム部材館のそれぞれをつなぐことが好ましいが、隣接するリム部材の間の少なくとも1つをつないでもよい。図4に示すように、本体スプリング201は、弾性変形部202と、係止部203とを有している。
【0028】
本実施形態では、弾性変形部202は、コイルばねで構成されている。ここで、コイルばねとは、荷重に応じて弾性的に変形するばねであって、所定の軸のまわりにコイル状(螺旋状)に巻回されてなるばねを言う。弾性変形部202は、所期するタイヤ1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部20の性質等に応じて、適宜の材質及び弾性を有する弾性変形部202を使用することができる。
【0029】
係止部203は、弾性変形部202の両端に設けられている。係止部203は、本体スプリング201をホイール部10に係止する。係止部203は、弾性変形部202とは異なる形状を有している。すなわち、本実施形態では、係止部203は、コイル状とは異なる形状を有している。
【0030】
本実施形態では、係止部203は、弾性変形部202と一体の部材により構成されている。すなわち、本実施形態では、例えば図4に示されているように、弾性変形部202の両端から、弾性変形部202を構成する材料が延びて、係止部203を構成している。
【0031】
本実施形態では、例えば図4に示されているように、係止部203は、弾性変形部202の両端に結合された、直線状に形成されたストレート部203aを含む。また、本実施形態では、例えば図4に示されているように、係止部203は、ストレート部203aの先端側に、ストレート部203aに対して屈曲した屈曲部203bを含む。本実施形態では、本体スプリング201の側面視(本体スプリング201の軸を含む面内)で屈曲部203bは、ストレート部203aに対して、直交するように屈曲している。
【0032】
ここで、図5から図7を参照しながら、本実施形態における、本体スプリング201の、ホイール部10への係合の態様の詳細について説明する。本体スプリング201は、両端に設けられた係止部203のうち、一方の係止部203が第1リム部材101に係合され、他方の係止部203が第2リム部材102に係合されている。ここでは、一方の係止部203が第1リム部材101に係合される場合の例について説明するが、他方の係止部203は、同様の要領で、第2リム部材102に係合することができる。
【0033】
図5は、本体スプリング201の、第1リム部材101への係合の態様の一例を示す概略図であり、本体スプリング201の係合状態を、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側から見た場合の概略図である。図5には、本体スプリング201が係合された第1リム部材101の一部のみが図示されているが、実際には、第1リム部材101の全周にわたって、図5に示すように、本体スプリング201が第1リム部材101に係合されている。
【0034】
本実施形態では、図5に示されているように、本体スプリング201は、係止部203が、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側の面に設けられた係合受部105に係合されることにより、第1リム部材101に係合されることができる。本実施形態では、特に、係合受部105が、係止部203の屈曲部203bを挿入可能な孔として構成されており、屈曲部203bを係合受部105の孔に挿入することにより、本体スプリング201が第1リム部材101に係合される。係止部203が係合受部105に係合された状態で、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側に支持部材104を取り付けることにより、係止部203の係合状態を強固に固定することができる。
【0035】
図6は、図5のA-A断面図であり、具体的には、第1リム部材101についての、係合受部を含む箇所の断面図である。図6に示されているように、第1リム部材101は、係合受部105を有している。本実施形態において、係合受部105は、屈曲部203bを挿入可能な孔として構成されている。本実施形態では、係合受部105は、有底の孔として構成されている。係合受部105の孔の延在方向の長さ(孔の深さ)は、屈曲部203bの長さよりも長いことが好ましい。これにより、屈曲部203bの全体が係合受部105に挿入可能となり、係合状態が安定しやすくなる。ただし、係合受部105は、無底の孔(貫通孔)として構成されていてもよい。
【0036】
係合受部105の孔の断面形状は、屈曲部203bが入る限り限定されず、例えば、長円形、楕円形、矩形、多角形等であってもよい。弾性変形部202がより確実に係止(固定)されるためには、孔の断面の形状及び大きさは、屈曲部203bの断面の形状及び大きさとほぼ同じであることが好ましい。
【0037】
本体スプリング201は、屈曲部203bが係合受部105に挿入された状態において、弾性変形部202が、少なくとも一部を除き、円環状の第1リム部材101のタイヤ1の径方向外側(図6及び図7の上側)に位置するように配置されている。この状態で、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側(図6及び図7の左側)において、支持部材104が第1リム部材101に取り付けられている。支持部材104は、例えば図6に示されているように、係合受部105の孔に挿入された屈曲部203bを抑えるような位置に、すなわち屈曲部203bが係合受部105の孔から抜け出さないようにすることが可能な位置に、取り付けられる。好ましくは、支持部材104は、本体スプリング201が挿入されていない状態において係合受部105の孔を塞ぐような位置に取り付けられる。また、例えば図6に示されているように、支持部材104は、係止部203のストレート部203aを、第1リム部材101のタイヤ幅方向内側の面に抑えるように、第1リム部材101に固定される。このようにして、支持部材104により、係止部203の係合状態が安定して固定される。
【0038】
支持部材104は、例えばボルト106を用いて第1リム部材101に取り付けられる。図7は、図5のB-B断面図であり、具体的には、第1リム部材101についての、支持部材104を固定するボルト106を含む箇所の断面図である。図7に示されているように、支持部材104は、ボルト106により第1リム部材101に固定されている。図5に示されているように、支持部材104は、第1リム部材101に係合されている2つの本体スプリング201の間(中央)の位置で、第1リム部材101に固定されてよい。つまり、第1リム部材101において、ボルト106を固定するためのボルト穴107は、円環状の第1リム部材101の周方向において、隣接する2つの係合受部105の間に1つ形成されている。これにより、本体スプリング201の係合位置に干渉することなく、支持部材104を第1リム部材101に固定することができる。
【0039】
ボルト106は、図5から図7に示すように、ボルト106のねじ先が、支持部材104のタイヤ幅方向内側の面よりも、ホイール部10のタイヤ幅方向内側に突出するように、設けられていてよい。支持部材104のタイヤ幅方向内側の面よりも、ホイール部10のタイヤ幅方向内側に突出しているボルト106のねじ先は、後述する固定部材を固定するために用いることができる。固定部材の詳細については、後述する。
【0040】
支持部材104は、1つの円環状の部材として構成されていてもよく、全体として円環状となる、複数に分割された部材として構成されていてもよい。その場合、支持部材104は、互いの周方向端で接するように配置されてもよく、適宜の間隔をあけて配置されてもよい。支持部材104が複数に分割された部材として構成されている場合、各部材は例えば扇形状となる。
【0041】
本実施形態では、第1リム部材101には、全周にわたって、上述した態様で、本体スプリング201の一方の係止部203(より具体的には、屈曲部203b)が第1リム部材101の係合受部105に係合され、支持部材104が第1リム部材101に固定されている。このようにして、係止部203が第1リム部材101に係止されている。また、同様の要領で、第2リム部材102には、全周にわたって、本体スプリング201の他方の係止部203(より具体的には、屈曲部203b)が第2リム部材102の係合受部に係合され、支持部材104が第2リム部材102に固定されている。このようにして、係止部203が第2リム部材102に係止されている。このとき、本実施形態では、1つの本体スプリング201の一方の係止部203と他方の係止部203とは、第1リム部材101及び第2リム部材102に対して、第1リム部材101及び第2リム部材102の軸方向において1つの直線上に位置する係合受部に係合されていてよい。つまり、本実施形態では、1つの本体スプリング201の2つの係止部203は、第1リム部材101と第2リム部材102とに対し、周方向について同じ位置に固定されていてよい。これにより、本体スプリング201は、ホイール部10の軸方向と平行な方向であって、周方向と直交する方向に延在する。ただし、1つの本体スプリング201の2つの係止部203は、第1リム部材101と第2リム部材102とに対し、周方向について、必ずしも同じ位置に固定されていなくてもよい。
【0042】
なお、第1リム部材101及び第2リム部材102に対して係合される本体スプリング201の数量及び間隔は、タイヤ1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部20の性質等に応じて、適宜決定されてよい。第1リム部材101及び第2リム部材102に支持部材104を取り付けるために用いられるボルト106の数量及び間隔についても、適宜決定されてよい。例えば、ボルト106は、必ずしも本実施形態のように、周方向に隣接する2つの係合受部105の間に1つずつ取り付けられなくてもよい。
【0043】
本実施形態に係るタイヤ1の骨格部2では、このようにしてホイール部10に係合された複数の本体スプリング201が、連結スプリング211と連結されることにより、接地変形部20が形成されている。すなわち、本実施形態では、連結スプリング211が、隣接する本体スプリング201を連結する連結部材として機能する。図8は、図2の接地変形部20を構成する連結スプリング211の一例を示す概略図である。本実施形態では、図8に示すように、連結スプリング211は、弾性変形部212と、制限部213とを有している。連結スプリング211は、具体的には、ホイール部10に係合された、周方向に隣接する2本の本体スプリング201の間に配置され、これら2本の本体スプリング201に組み合わされて本体スプリング201と連結される。
【0044】
本実施形態では、弾性変形部212は、コイルばねで構成されている。弾性変形部212は、所期するタイヤ1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部20の性質等に応じて、適宜の材質及び弾性を有する弾性変形部212を使用することができる。弾性変形部212を構成するコイルばねの直径は、本体スプリング201の弾性変形部202を構成するコイルばねの直径に近い方が好ましい。ここで、コイルばねの直径は、コイルばねを軸方向から見たときの、外接円の直径であり、以下同様とする。弾性変形部212を構成するコイルばねの直径が、本体スプリング201の弾性変形部202を構成するコイルばねの直径に近いほど、弾性変形部202を構成するコイルばねと弾性変形部212を構成するコイルばねとを、後述するように連結させて接地変形部20を形成したときに、均等に力がかかりやすくなる。例えば、弾性変形部202を構成するコイルばね及び弾性変形部212を構成するコイルばねの直径は、いずれも15mm~25mm、例えば20mm等とすることができる。
【0045】
本実施形態では、制限部213は、弾性変形部212の一端に設けられている。弾性変形部212において、制限部213が設けられていない他端には、他の機構が構成されておらず、従って、弾性変形部212は、他端側において途切れたような形状となっている。制限部213は、本体スプリング201と連結される連結スプリング211の、本体スプリング201に対する変位を制限する。制限部213は、本体スプリング201に対する連結スプリング211の少なくとも一方向における変位を制限するものであればよい。このように、制限部213により本体スプリング201に対する連結スプリング211の変位が制限されることにより、後述する図9A及び図9Bを参照して説明するように、本体スプリング201に対して連結スプリング211が連結される際に、連結スプリング211の連結位置が定められて固定される。すなわち、本体スプリング201に対する連結スプリング211の連結状態が位置決め固定される。制限部213は、弾性変形部212とは異なる形状を有している。すなわち、本実施形態では、制限部213は、コイル状とは異なる形状を有している。
【0046】
本実施形態では、制限部213は、弾性変形部212と一体の部材により構成されている。すなわち、本実施形態では、例えば図8に示されているように、弾性変形部212の一端から、弾性変形部212を構成する材料が延びて、制限部213を構成している。図8に示されている例では、制限部213は、弾性変形部212を形成するワイヤが、輪形状に曲げられることにより形成された、輪形状の部分を有している。当該輪形状は、弾性変形部212の軸A方向と交差する方向に中心軸を有するように形成されている。制限部213の輪形状の部分は、連結スプリング211の変位を制限可能な任意の大きさであってよい。例えば、制限部213の輪形状の部分は、直径が、弾性変形部212の直径の0.5~1.0倍となるように構成されていてよい。
【0047】
ここで、制限部213の機能について、連結スプリング211の本体スプリング201への連結方法とあわせて説明する。図9A及び図9Bは、本体スプリング201に対する連結スプリング211の連結方法の一例を説明するための概略図である。
【0048】
連結スプリング211は、図9Aに示されているように、弾性変形部212が、ホイール部10に係合された本体スプリング201の弾性変形部202に引っ掛けて、隣接する2本の本体スプリング201と組むようにして、これら2本の本体スプリング201と連結していく。具体的には、連結スプリング211は、周方向に隣接する2本の本体スプリング201の相互間の相対変位を規制するように本体スプリング201に連結される。このとき、連結スプリング211は、制限部213が設けられていない他端側を先頭として、回転しながら前進するように本体スプリング201に差し込まれていくことにより、隣接する2本の本体スプリング201と徐々に組み合わされる。
【0049】
連結スプリング211の弾性変形部212の全体が本体スプリング201と組み合わされていくと、やがて、図9Bに示されているように、制限部213が本体スプリング201と接触する。制限部213は、その形状から、本体スプリング201と組み合わされ得ない。そのため、連結スプリング211は、制限部213が本体スプリング201と接触した位置よりも、差込み方向側に移動しない。特に連結スプリング211は、制限部213の輪形状の部分が本体スプリング201と接触した後は、たとえ回転させながら前進させようとしても前進(差込み方向側に移動)しない。このように、制限部213は、本体スプリング201に対する連結スプリング211の少なくとも一方向における変位を制限する。このようにして、制限部213により、本体スプリング201に対する連結スプリング211の連結状態が位置決め固定される。また、本体スプリング201に連結した連結スプリング211が、本体スプリング201から外れにくくなる。
【0050】
なお、連結スプリング211の両端のうち、少なくとも一方は、ホイール部10に固定されていないことが好ましい。本実施形態では、連結スプリング211は、両端ともホイール部10に固定されていない。つまり、本実施形態では、連結スプリング211は、両端が非固定となっている。ただし、連結スプリング211は、両端のうちの一方の端部のみがホイール部10に固定されていてもよい。この場合、連結スプリング211の両端のうち、制限部213が設けられている一端とは反対側の、他端が、リム部材に固定される。
【0051】
本実施形態では、ホイール部10に係合された全ての本体スプリング201は、隣接する2本の本体スプリング201の間に連結スプリング211が配置されるように、連結スプリング211と連結される。本実施形態では、このようにして、骨格部2が構成されている。すなわち、本実施形態では、骨格部2の接地変形部20の全ての本体スプリング201は、2本の連結スプリング211と連結され、骨格部2の接地変形部20の全ての連結スプリング211は、2本の本体スプリング201と連結されている。このように、隣接する2本の本体スプリング201の間に連結スプリング211が連結されていることにより、骨格部2に対して荷重がかかった場合であっても、本体スプリング201同士の距離が広がりすぎず、タイヤ1としての機能を維持しやすくなる。
【0052】
なお、2本の本体スプリング201を結合する連結スプリング211は、ホイール部10の軸方向(つまりタイヤ1の回転軸方向)について、第1リム部材101の側から挿入されていることも、第2リム部材102の側から挿入されていることも可能である。骨格部2に設けられている複数の連結スプリング211は、その半数が第1リム部材101の側から挿入され、他の半数が第2リム部材102の側から挿入されていることが好ましい。これにより、連結スプリング211の制限部213が、骨格部2の軸方向について両側に均等に配置されることとなり、骨格部2のバランスがとりやすくなるとともに、骨格部2の軸方向について一方向のみに制限部213が密集することを防ぐことができる。特に、複数の連結スプリング211は、接地変形部20の周方向に隣り合う連結スプリング211同士が、異なる方向から挿入されていることが、さらに好ましい。これにより、さらに骨格部2のバランスがとりやすくなる。
【0053】
また、骨格部2は、さらに、複数の連結スプリング211の制限部213の輪形状の部分同士を接続する接続部材を備えていてもよい。接続部材は、例えばワイヤにより構成されている。例えば、複数の連結スプリング211は、その半数が第1リム部材101の側から挿入され、他の半数が第2リム部材102の側から挿入されているとする。この場合、第1リム部材101の側から挿入された連結スプリング211の制限部213は第1リム部材101側に位置し、第2リム部材102の側から挿入された連結スプリング211の制限部213は第2リム部材102側に位置する。この場合、骨格部2は、第1リム部材101側に位置する複数の制限部213の輪形状の部分を接続するワイヤと、第2リム部材102側に位置する複数の制限部213の輪形状の部分を接続するワイヤとの、2本のワイヤを有していてよい。第1リム部材101側に位置する複数の制限部213の輪形状の部分を接続するワイヤは、例えば、第1リム部材101側に位置する複数の制限部213の、全ての輪形状の部分の中央部(輪形状の部分により形成される開口部)を通るように、ホイール部10の周方向に沿って設けられる。同様に、第2リム部材102側に位置する複数の制限部213の輪形状の部分を接続するワイヤは、例えば、第2リム部材102側に位置する複数の制限部213の、全ての輪形状の部分の中央部を通るように、ホイール部10の周方向に沿って設けられる。このようなワイヤは、例えば円形状に形成されることにより、制限部213の輪形状の部分の中央部を通ることによって、制限部213の輪形状の部分同士を接続できる。このように、複数の制限部213の輪形状の部分を通るワイヤが設けられることにより、制限部213同士の相対的な位置関係の変位が、ワイヤによって制限される。そのため、本体スプリング201に結合した連結スプリング211が、本体スプリング201から、さらに外れにくくなる。
【0054】
ただし、複数の連結スプリング211の制限部213の輪形状の部分を接続する接続部材は、必ずしも上述のように複数の制限部213の輪形状の部分を通るように構成されていなくてもよく、任意の形態により制限部213同士が接続されていればよい。この場合、例えば接続部材は、接続する複数の制限部213の輪形状の部分のそれぞれに固定されることにより、これらの複数の制限部213の輪形状の部分を接続してもよい。少なくとも、複数の連結スプリング211の制限部213を接続するワイヤが設けられていることにより、ワイヤで接続された連結スプリング211同士の相対的な位置関係の変位が制限される。
【0055】
なお、上記実施形態では、制限部213の輪形状の部分が、弾性変形部212の軸A方向と交差する方向に中心軸を有する輪形状に形成されていると説明したが、制限部213の形状は、これに限られない。制限部213は、本体スプリング201に対する連結スプリング211の少なくとも一方向における変位を制限可能な、任意の構成を有していてよい。
【0056】
また、上記実施形態では、制限部213が、弾性変形部212と一体の部材により構成されていると説明したが、制限部213は、必ずしも弾性変形部212と一体の部材により構成されていなくてもよい。例えば、図10に概略的に示すように、連結スプリング211とは異なる、独立した部材により構成される制限部213により、本体スプリング201に対する連結スプリング211の変位を制限してもよい。図10に示されている例では、制限部213は、互いに組み合わされた本体スプリング201と連結スプリング211との接触箇所の変位を制限する、連結スプリング211とは別体の独立した部材として構成されている。
【0057】
連結スプリング211の長さは、所期するタイヤ1のサイズ及び重量や、要求される接地変形部20の性質等に応じて、適宜決定されてよい。連結スプリング211は、弾性変形部212の長さが、本体スプリング201の弾性変形部202の長さよりも短く構成されていることが好ましい。連結スプリング211は、弾性変形部212がタイヤの幅方向の全体にわたって延在するような長さを有することが好ましい。これにより、本体スプリング201の弾性変形部202のうち、少なくとも接地する領域が、連結スプリング211の弾性変形部212と連結される。
【0058】
本実施形態に係るタイヤ1は、上述した骨格部2の外周に、トレッド部材が装着されることにより構成されている。トレッド部材は、例えば、図1に示すように、骨格部2のタイヤの幅方向の全体にわたって延在するように、骨格部2に装着される。トレッド部材は、少なくとも、骨格部2の、本体スプリング201及び連結スプリング211により形成される接地領域に装着されている。トレッド部材は、例えば不織布を含んで構成されてよい。不織布は、例えば金属製であってよい。金属製の不織布を使用することにより、温度変化が大きい環境においても、所期されるタイヤ1を使用可能となる。ここでは、トレッド部材が、金属製の不織布を含んで構成されているとして説明する。
【0059】
図11及び図12は、骨格部2の一部にトレッド部材300を装着した状態を示す図である。より具体的には、図11は、一部にトレッド部材300が装着された骨格部2を、骨格部2の接地変形部20の径方向外側から見た図であり、図12は、一部にトレッド部材300が装着された骨格部2の、一部分を拡大して示す図である。
【0060】
図11及び図12に示されているように、骨格部2には、互いに組み合わされた本体スプリング201及び連結スプリング211により、溝230が形成されている。上述したように、本実施形態では、本体スプリング201が、ホイール部10の軸方向と平行な方向であって、周方向と直交する方向に延在している。そのため、本体スプリング201に織り合わされた連結スプリング211も、ホイール部10の軸方向と平行な方向であって、周方向と直交する方向に延在している。このように、本体スプリング201及び連結スプリング211が軸方向と平行な方向に延在している場合、図11及び図12に示されているように、溝230は、ホイール部10の軸方向及び周方向に対して、交差する方向に延在するように形成される。
【0061】
本実施形態では、図11及び図12に示されているように、トレッド部材300は、本体スプリング201及び連結スプリング211により形成された溝230に装着される。このとき、トレッド部材300は、例えば図13に示されているように、少なくとも一部が溝230に埋め込まれるようにして装着される。トレッド部材300の少なくとも一部が溝230に埋め込まれるようにして装着されることにより、トレッド部材300が、溝230から脱落しにくくなる。本実施形態では、トレッド部材300の一部のみ、すなわち、トレッド部材300の径方向内側の下側部分のみが、溝230に埋め込まれるようにして装着されており、トレッド部材300の径方向外側の上側部分は、溝230から露出している。この場合、走行時の振動等が抑制され得る。ただし、トレッド部材300は、その全体が溝230に埋め込まれるようにして装着されていてもよい。この場合、トレッド部材300は、溝230から脱落しにくくなる。本実施形態では、図1に示すように、トレッド部材300は、骨格部2に形成された全ての溝230に埋め込まれ、周方向に互いに接するように形成されている。ただし、トレッド部材300は、全ての溝230に埋め込まれていなくてもよい。例えば、トレッド部材300は、骨格部2に形成された溝230のうち、一部のみに埋め込まれていてもよい。
【0062】
本実施形態において、トレッド部材300は、骨格部2に対して着脱可能に装着されることが好ましい。トレッド部材300が骨格部2に対して着脱可能に装着されることにより、トレッド部材300が摩耗した場合等に、トレッド部材300を骨格部2から外して交換することができる。
【0063】
本実施形態において、トレッド部材300は、例えば図13に模式的に示すように、不織布302により構成されている。トレッド部材300は、延在方向の断面視において、中央部に貫通穴300aを有する棒状に構成することができる。トレッド部材300は、不織布302を、断面がほぼ円形状の、細長い棒状に構成することができる。ここで、ほぼ円形状とは、真円だけでなく、ゆがんだ円形状(例えば図13に模式的に示されているような楕円形状)や、断面の円周部に凹凸を有する形状を含むことをいう。トレッド部材300に設けられた貫通穴300aは、芯材301を通すための穴である。芯材301は、トレッド部材300の延在方向に沿って延在する。芯材301は、例えば、ピッチの密な線径の細いコイルばねにより構成することができる。
【0064】
なお、トレッド部材300は、図13に示した例に限られない。例えば、トレッド部材300は、図14A及び図14Bに示すように、貫通穴300aに、貫通穴300aを補強するための補強部材303を備えていてよい。補強部材303は、円筒形状に形成されている。補強部材303は、例えばピッチの密なコイルばねにより構成されていてよい。円筒形状の補強部材303の内部には、芯材301が配置されている。補強部材303を設けることにより、補強部材303がない場合と比較して、芯材301の不織布302への食い込みを防ぐことができる。また、補強部材303が芯材301を保護することにより、トレッド部材300の耐久性が向上する。また、補強部材303が、ホイール部10等からの伝達熱とトレッド部300が発する熱とを蓄熱保持し、極低温環境下におけるトレッド部300の過冷却を防ぐことができる。
【0065】
また、トレッド部材300は、例えば図15A及び図15Bに示されているように、断面視においてひょうたん型となる形状であってもよい。この場合、トレッド部材300は、溝230に埋め込まれる固定領域A1と、接地する接地領域A2とを有する。固定領域A1に対して、タイヤ1の径方向外側に接地領域A2が設けられている。トレッド部材300には、固定領域A1に貫通穴300aが設けられ、貫通穴300aに補強部材303を備える。補強部材303の内部には、芯材301が配置されている。断面において、接地領域A2の幅は、固定領域A1の幅よりも大きい。また、接地領域A2の、タイヤ1の径方向における長さは、固定領域A1の、タイヤ1の径方向における長さよりも長い。
【0066】
本実施形態において、トレッド部材300は、トレッド部材300を骨格部2に固定するための固定部材をさらに備えることが好ましい。これにより、トレッド部材300が、骨格部2からより脱落しにくくなる。
【0067】
例えば、トレッド部材300は、図13に示す例のように棒状に構成されている場合、当該棒状のトレッド部材300の両端から、当該トレッド部材300の延在方向に延びる固定部材を備えていてよい。例えば、トレッド部材300は、芯材301の延在方向に延びる固定部材を備えていてよい。この場合、芯材301と固定部材とは、一体の部材として構成されていてもよい。具体的には、芯材301と固定部材との機能を有するコイルばねが、貫通穴300aに挿通されるとともに、骨格部2に固定され、これにより、トレッド部材300が骨格部2に固定される。コイルばねは、少なくとも1本用いられていればよく、複数本用いられていてもよい。
【0068】
固定部材は、例えば、ホイール部10に固定可能な機構を有している。具体的な一例として、例えば図16に示されているように、固定部材310は、ホイール部10の内側に突出したボルト106のねじ先に固定することが可能な機構を有し、当該機構をボルト106のねじ先に固定することにより、ホイール部10に固定されることができる。この場合、固定部材310は、図16に示されているように、ボルト106のねじ先に固定される固定部311と、上述の芯材301(図示省略)と固定部311とを結合する結合部312とにより構成される。結合部312は、例えばコイルばねにより構成される。
【0069】
上述の例において、補強部材303は、素線の線径が固定部材310の結合部312よりも細く、ピッチが密なコイルばねにより構成されていることが好ましい。結合部312の素線は、例えば線径が0.5mm以上であることが好ましい。また、結合部312のらせん角は5°から50°であることが好ましい。これにより、固定部311と芯材301との結合状態を維持しつつ、トレッド部材300に対する負荷を適度に吸収しやすくなる。
【0070】
本実施形態に係るタイヤ1は、トレッド部材300の骨格部2への装着状態を維持させるための係止具をさらに備えることが好ましい。これにより、トレッド部材300が、骨格部2からより脱落しにくくなる。
【0071】
係止具400は、例えば図17Aに示されているように細長い帯状に形成され、端部同士を結合して固定することにより、例えば図17Bに示されているように、環状に固定できる部材であってよい。このような係止具400により、例えば図11及び図12に示されているように、トレッド部材300と、本体スプリング201及び/又は連結スプリング211とを、まとめた状態で環状に固定することにより、トレッド部材300を、接地変形部20(本体スプリング201及び/又は連結スプリング211)に固定することができる。1つのトレッド部材300につき、1箇所又は複数箇所を、係止具400で係止することにより、トレッド部材300の骨格部2(本実施形態では、より具体的には、接地変形部20の本体スプリング201及び/又は連結スプリング211)への装着状態を維持させることができる。なお、係止具400の態様は、これに限られず、トレッド部材300の骨格部2への装着状態を維持可能な、任意の態様であってよい。
【0072】
このように、本実施形態に係るタイヤ1は、少なくとも、骨格部2の外周に配置されたトレッド部材300を備える。そのため、本実施形態に係るタイヤ1により、例えば砂地等を走行する場合であっても、トレッド部材300により、タイヤ1の内部側(つまり回転中心側)に砂等の異物が入ることを防ぐことができる。これにより、タイヤ1の走行性能が低下しにくくなる。
【0073】
また、本実施形態に係るタイヤ1によれば、接地変形部20を構成する複数の本体スプリング201のそれぞれは、弾性変形部202と、弾性変形部202の両端に設けられた、弾性変形部202とは異なる形状の係止部203とを有しており、係止部203が第1リム部材101及び第2リム部材102に係止されている。これにより、第1リム部材101及び第2リム部材102に本体スプリング201を確実に結合可能である。このような効果により、例えば、タイヤ1の使用環境が特殊な場合であっても、本体スプリング201が第1リム部材101及び第2リム部材102から外れにくい。また、例えば、仮に本体スプリング201の弾性変形部202が直接第1リム部材101及び第2リム部材102に結合されている場合には、結合の方法によっては、弾性変形部202が第1リム部材101及び第2リム部材102から脱落しやすかったり、弾性変形部202が摩耗することにより、弾性変形部202が第1リム部材101及び第2リム部材102から脱落しやすくなったりするのに対し、本実施形態では、弾性変形部202とは異なる形状の係止部203が係止されるため、このような恐れが少ない。さらに、例えば温度変化が大きい月面で本実施形態に係るタイヤ1を使用する場合であっても、本体スプリング201を第1リム部材101及び第2リム部材102の係合受部105に係合させているため、第1リム部材101及び第2リム部材102や本体スプリング201に熱膨張や熱収縮が発生しても、本体スプリング201が第1リム部材101及び第2リム部材102から外れにくく、タイヤ1としての形態及び機能を維持しやすくなる。
【0074】
また、本実施形態のように、第1リム部材101及び第2リム部材102が係合受部105を有し、本体スプリング201の係止部203が係合受部105に係止されている場合、本体スプリング201を、第1リム部材101及び第2リム部材102に、より確実に結合可能である。
【0075】
また、本実施形態のように、支持部材104を用いて係止部203の係止状態を維持した場合、本体スプリング201が、より第1リム部材101及び第2リム部材102から外れにくくなる。そのため、複数の本体スプリング201を、第1リム部材101及び第2リム部材102の係合受部105に、より確実に係合させることができる。
【0076】
上記実施形態において、本体スプリング201の係止部203は、ストレート部203aと、ストレート部203aの先端側に配置された屈曲部203bとを含んで構成されていると説明した。しかしながら、係止部203の構成は、必ずしもこれに限られない。係止部203は、弾性変形部202とは形状が異なり、第1リム部材101及び第2リム部材102に係止されることが可能な任意の形状を有していてよい。また、第1リム部材101及び第2リム部材102の係合受部105も、係止部203の構成に対応する、任意の構成を有していてよい。例えば、係止部203は、直線状に形成されていてもよい。この場合、第1リム部材101及び第2リム部材102には、直線状の係止部203を係合可能な係合受部が設けられていてもよく、単に支持部材104により係止部203が固定されていてもよい。
【0077】
係止部203は、本明細書で説明した例に限られず、本体スプリング201を第1リム部材101及び第2リム部材102に係止可能な任意の構成を有していてよい。例えば、係止部203は、フック形状に形成されていてもよい。
【0078】
また、例えば、上記実施形態において、本体スプリング201の係止部203の屈曲部203bは、ストレート部203aに対して、直交するように屈曲していると説明した。しかしながら、屈曲部203bは、必ずしもストレート部203aに対して直交していなくてもよい。屈曲部203bは、ストレート部203aに対して所定の角度で屈曲していてよい。この場合、係合受部105は、屈曲部203bの屈曲の角度に合わせた方向に設けられた孔として形成されていてよい。
【0079】
また、本体スプリング201の係止部203は、例えば、図18に示されているように、ストレート部203aと、ストレート部203aの先端側に配置されたリング部203cとを含んで構成されていてよい。リング部203cは、中央に貫通孔203dを有する円環形状に形成されている。この場合、係合受部105は、例えば、貫通孔203dを貫通可能な突起により構成されていてよい。この場合、係止部203のリング部203cの貫通孔203dに、係合受部105の突起を貫通させることにより、係止部203を係合受部105に係止することができる。
【0080】
また、上記実施形態では、本体スプリング201の弾性変形部202及び連結スプリング211の弾性変形部212が、それぞれコイルばねで構成されていると説明した。しかしながら、本体スプリング201の弾性変形部202及び連結スプリング211の弾性変形部212は、必ずしもコイルばねで構成されていなくてもよい。例えば、本体スプリング201の弾性変形部202及び/又は連結スプリング211の弾性変形部212は、コイルばねに代えて、例えば図19に示されているように、2次元の(すなわち、ほぼ同一平面に沿って延在する)波形状の金属部材を含んで構成されていてもよい。図19に示されている例は、弾性変形部202及び弾性変形部212が、2次元の波形状に形成されている場合の例である。波形状の金属部材は、例えば、半円を連結した形状であってもよく、正弦波形状であってもよい。この場合であっても、波形状の金属部材を組み合わせることにより、本体スプリング201と、連結スプリング211とを連結することができる。
【0081】
上記実施形態において、トレッド部材300は、金属製の不織布を含んで構成されていると説明したが、トレッド部材300の材質は、金属製の不織布に限られない。例えば、トレッド部材300は、シリコンゴムにより構成されていてもよい。この場合、トレッド部材300のクッション性及び耐摩耗性が向上する。また、タイヤ1により砂地等を走行する場合におけるトラクション性能が向上する。
【0082】
また、例えば、トレッド部材300は、ゴム製であってもよい。例えば、トレッド部材300は、天然ゴム(NR)及び合成ゴムにより構成されていてよい。合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。ゴムは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
ゴム製のトレッド部材300は、上述した実施形態のような棒状に形成されていてもよく、別の形態に成形されていてもよい。図20は、ゴム製のトレッド320の一例を示す外観斜視図であり、棒状ではない、別の形態により成形されたトレッド320の一例を示す図である。ゴム製のトレッド320は、例えば図20に示されているように、平板形状の本体321と、本体321から突出する突起部322とを有する。例えば、接地変形部20の外周に、図20に示されているようなゴム製のトレッド320が複数取り付けられ、接地変形部20の外周の全体が複数のゴム製のトレッド320により覆われる。突起部322は、本体スプリング201及び連結スプリング211により形成される溝230に埋め込むことが可能な形状に構成されている。突起部322を溝230に埋め込むことにより、ゴム製のトレッド320を接地変形部20の外周に取り付けることができる。各突起部322には、上述した芯材301と同様の機能を有する芯材を貫通させるための貫通穴322aが設けられている。ゴム製のトレッド320により、トレッド部材300におけるグリップ力を向上させることができる。
【0084】
上記実施形態において、本体スプリング201及び連結スプリング211が軸方向と平行な方向に延在し、溝230は、ホイール部10の軸方向及び周方向に対して、交差する方向に延在するように形成されていると説明した。しかしながら、本体スプリング201及び連結スプリング211は、必ずしも、軸方向と平行な方向に延在していなくてもよい。例えば、本体スプリング201及び連結スプリング211は、軸方向に対して交差する方向に延在していてもよい。この場合、溝230は、接地変形部20の周方向に沿った方向、又は接地変形部20の周方向に直交する方向に延在する場合がある。トレッド部材300は、溝230が延在する方向にかかわらず、少なくとも一部が溝230に埋め込まれるようにして、接地変形部20に装着されることができる。
【0085】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
1:タイヤ、 2:骨格部、 10:ホイール部、 20:接地変形部、 101:第1リム部材、 102:第2リム部材、 103:接続部材、 104:支持部材、 105:係合受部、 106:ボルト、 107:ボルト穴、 201:本体スプリング、 202,212:弾性変形部、 203:係止部、 203a:ストレート部、 203b:屈曲部、 203c:リング部、 203d:貫通孔、 211:連結スプリング、 213:制限部、 230:溝、 300:トレッド部材、 300a、322a:貫通穴、 301:芯材、 302:不織布、 303:補強部材、 310:固定部材、 311:固定部、 312:結合部、 320:ゴム製のトレッド、 321:本体、 322:突起部、 400:係止具、 A:軸、 A1:固定領域、 A2:接地領域
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