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  • 特許-エレベータ装置及びその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】エレベータ装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20221013BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B66B11/02 F
B66B5/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019100769
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020193096
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康司
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 勇来
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-043802(JP,A)
【文献】特開平11-079586(JP,A)
【文献】特開2015-003793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0009638(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00-11/08;
5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごに通気口としての換気用開口部が設けられたエレベータ装置において、
前記乗りかごに設けられ、前記換気用開口部を閉塞又は開放する換気窓開閉扉を有する換気窓装置と、
前記換気窓装置の健全性を確認するために、前記換気窓開閉扉を開閉させるよう前記換気窓装置を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記乗りかごのドアが閉じている所定状態のときに、前記換気窓装置に前記換気窓開閉扉を開閉させるようにして、前記換気窓装置の健全性を確認し、
前記所定状態は、
最後に前記換気窓装置の健全性を確認してから所定時間が超過した場合であって、前記乗りかごがいずれかのフロアに着床する直前の状態である
ことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
後に前記換気窓装置の健全性を確認してから前記所定時間が経過するタイミングを、前記換気窓装置の健全性を確認すべきタイミングとして検出する健全性確認タイミング発生部と、
前記健全性確認タイミング発生部により、最後に前記換気窓装置の健全性を確認してから前記所定時間だけ経過するタイミングが検出された場合に、前記乗りかごが次のフロアに着床する直前のタイミングを検出する状態検出部と、
記状態検出部により検出された前記乗りかごが次のいずれかのフロアに着床する直前のタイミングで、前記換気窓開閉扉を開閉するよう前記換気窓装置を制御する換気窓開閉動作部と、
前記換気窓開閉扉の開閉が正常に行われたか否かを確認する動作確認部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
乗りかごに通気口としての換気用開口部が設けられたエレベータ装置の制御方法であって、
前記エレベータ装置は、
前記乗りかごに設けられ、前記換気用開口部を閉塞又は開放する換気窓開閉扉を有する換気窓装置と、
前記換気窓装置の健全性を確認するために、前記換気窓開閉扉を開閉させるよう前記換気窓装置を制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置が、前記乗りかごのドアが閉じている所定状態を検出する第1のステップと、
前記制御装置が前記所定状態のときに、前記換気窓装置に前記換気窓開閉扉を開閉させるようにして、前記換気窓装置の健全性を確認する第2のステップと
を備え
前記所定状態は、
最後に前記換気窓装置の健全性を確認してから所定時間が超過した場合であって、前記乗りかごがいずれかのフロアに着床する直前の状態である
ことを特徴とするエレベータ装置の制御方法。
【請求項4】
前記第1のステップにおいて、前記制御装置は、
後に前記換気窓装置の健全性を確認してから前記所定時間が経過した状態を、前記所定状態として検出し、
前記第2のステップにおいて、前記制御装置は、
後に前記換気窓装置の健全性を確認してから前記所定時間が経過し、かつ前記乗りかごが次のフロアに着床する直前のタイミングを検出した場合に、前記換気窓開閉扉を開閉するよう前記換気窓装置を制御すると共に、前記換気窓開閉扉の開閉が正常に行われたか否かを確認する
ことを特徴とする請求項に記載のエレベータ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータ装置及びその制御方法に関し、例えば、超高速エレベータ装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の高層化に伴い、エレベータ装置の超高速化が進められている。このような高速化されたエレベータ装置(以下、これを超高速エレベータ装置と呼ぶ)では、単位時間での気圧変化や、トータルでの気圧変化量が大きく、大きな気圧変動によって乗客が耳閉感を感じる場合が多い。
【0003】
このため超高速エレベータ装置に対して、このような耳閉感を軽減すべく、乗りかごの外部の気圧に応じて乗りかごの内部気圧を制御する気圧制御装置を搭載することが従来から提案されている。ここで、乗りかごの内部気圧を最適な状態に保つためには、乗りかご内の機密性を高める必要がある。
【0004】
しかしながら、乗りかごの機密性を高めた場合、停電などの非常時に乗りかご内の換気ができなくなり、乗りかごに閉じ込められた乗客が酸欠となるおそれがある。そこで、従来、超高速エレベータ装置には、通常時は閉状態にあるものの、非常時に自動開放する換気窓が設けられている。
【0005】
なお特許文献1には、かかる換気窓に関連して、停電時及び電気復帰時(通常の正規電源供給時)に自動的に換気窓開閉部材を開閉動作させるための構造が開示されている。また特許文献2には、予め設定した換気窓故障チェック周期を超えても換気窓装置の開放動作がないときに換気窓装置に開放指令を与え、この開放指令によって換気窓装置の開放が行われたかどうかによって換気窓装置の故障又は正常を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-57414号公報
【文献】特開2018-43802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的に高層ビルでは、温度差や気圧差に起因してエレベータ装置の乗りかごが昇降する昇降路内に上昇気流が発生するいわゆるドラフト現象が発生する。このため特許文献2のように換気窓装置の健全性確認を周期的に無作為のタイミングで行うと、ドラフト現象の影響を受けて換気窓の扉が開閉し難くなる場合があり、かかる健全性確認を正しく行うことができないことがあった。
【0008】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、換気窓装置の健全性確認を正しく行い得る信頼性の高いエレベータ装置及びその制御方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため本発明においては、乗りかごに通気口としての換気用開口部が設けられたエレベータ装置において、前記乗りかごに設けられ、前記換気用開口部を閉塞又は開放する換気窓開閉扉を有する換気窓装置と、前記換気窓装置の健全性を確認するために、前記換気窓開閉扉を開閉させるよう前記換気窓装置を制御する制御装置とを設け、前記制御装置が、前記乗りかごのドアが閉じている所定状態のときに、前記換気窓装置に前記換気窓開閉扉を開閉させるようにして、前記換気窓装置の健全性を確認し、前記所定状態は、最後に前記換気窓装置の健全性を確認してから所定時間が超過した場合であって、前記乗りかごがいずれかのフロアに着床する直前の状態である、ようにした。
【0010】
また本発明においては、乗りかごに通気口としての換気用開口部が設けられたエレベータ装置の制御方法であって、前記エレベータ装置は、前記乗りかごに設けられ、前記換気用開口部を閉塞又は開放する換気窓開閉扉を有する換気窓装置と、前記換気窓装置の健全性を確認するために、前記換気窓開閉扉を開閉させるよう前記換気窓装置を制御する制御装置とを有し、前記制御装置が、前記乗りかごのドアが閉じている所定状態を検出する第1のステップと、前記制御装置が前記所定状態のときに、前記換気窓装置に前記換気窓開閉扉を開閉させるようにして、前記換気窓装置の健全性を確認する第2のステップとを設け、前記所定状態は、最後に前記換気窓装置の健全性を確認してから所定時間が超過した場合であって、前記乗りかごがいずれかのフロアに着床する直前の状態である、ようにした。
【0011】
本発明のエレベータ装置及びその制御方法によれば、換気窓装置の換気窓開閉扉の開閉動作に対するドラフト現象による外乱を低減しながら、定期的にかつ計画的に換気窓装置の健全性の確認を正しく行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、信頼性の高いエレベータ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態によるエレベータ装置の要部の構成を示す概念図である。
図2】制御装置の論理構成を示すブロック図である。
図3】換気窓装置の詳細構成を示す断面図である。
図4】換気窓装置健全性確認処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0015】
(1)本実施の形態によるエレベータ装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態によるエレベータ装置を示す。このエレベータ装置1は、高層ビルに設置される超高速エレベータ装置であり、乗りかご2、制御盤3及び制御装置4を備えて構成される。
【0016】
乗りかご2は、4方向の各側面をそれぞれ形成する側面パネル10Aと、天井部を構成する天井パネル10Bと、床部を構成する床パネル10Cとを備えた箱状形状を有し、例えば、昇降路の最上部に設置された図示しない巻上機と主ロープを介して係合し、巻上機が主ロープを巻き上げ又は巻き下げることにより昇降路内を昇降する。
【0017】
乗りかご2には、前面側の側面パネル10Aに、矢印γ1方向に開閉自在に配設されたドア11が取り付けられている。またドア11と、乗りかご2の前面側の側面パネル10Aとの間には隙間を塞ぐための密封シールが配置されており、これによりドア11が閉じた状態で乗りかご2内の機密性を保つことができるようになされている。このため乗りかご2の上側にはブロワ12が設置されており、このブロワ12によって乗りかご2の外部の空気を乗りかご2内部に圧送することで乗りかご2内部の気圧を制御できるようになされている。
【0018】
また乗りかご2の側面側には、給電が断たれた非常時に乗りかご2内の換気を行うための換気窓装置13が設けられている。換気窓装置13は、外側が機密性の高い外ケース14により覆われており、乗りかご2の側面側の側面パネル10Aに通風口として設けられた後述の換気用開口部k(図3)を開放又は閉塞する換気窓開閉扉15を備えて構成される。これにより非常時にブロワ12への給電が断たれた場合においても換気窓開閉扉15を開扉することにより乗りかご2内に外部の空気を取り込むことができ、かくして乗りかご2内に閉じ込められた乗客が酸欠等になることを未然に防止し得るようになされている。
【0019】
制御盤3は、エレベータ装置1の運行を制御する制御装置であり、例えば、昇降路の上側に設けられた機械室に設置される。制御盤3は、乗りかご2や昇降路内に設置されたセンサにより乗りかご2の位置を常に認識しており、各フロアのエレベータホールに設置された操作盤や乗りかご2内に設置された操作盤に対する乗客の操作等に応じて乗りかご2を必要なフロアに着床させるよう巻上機を制御する。
【0020】
また制御装置4は、乗りかご2に設けられた換気窓装置13の換気窓開閉扉15の開閉を制御する制御装置であり、CPU20及びメモリ21と、第1及び第2のタイマ22,23とを備えたコンピュータ構成を有する。メモリ21には、換気窓装置制御プログラム24が格納されており、CPU20がこの換気窓装置制御プログラム24を実行することにより必要時に換気窓開閉扉15を開閉させるよう換気窓装置13を制御する。
【0021】
図2は、制御装置4の論理構成を示す。この図2に示すように、制御装置4は、制御部30、通常構成部31及び健全性確認部32を備えて構成される。これら制御部30、通常構成部31及び健全性確認部32は、すべてCPU20(図1)が換気窓装置制御プログラム24(図1)を実行することにより具現化される機能部である。
【0022】
制御部30は、乗りかご2(図1)の現在位置や、乗りかご2のドア11の開閉状態、及び、非常事態の有無などの情報を制御盤3から適宜取得し、取得したこれらの情報に基づいて、通常構成部31及び健全性確認部32を制御する機能部である。制御部30は、例えば、非常時に制御盤3からその旨の情報が与えられた場合には、換気窓装置13の換気窓開閉扉15(図1)を開扉するよう通常構成部31に指示を与える。
【0023】
通常構成部31は、通常時や非常時における換気窓装置13の動作を制御する機能部である。通常構成部31は、通常時には換気窓開閉扉15が閉扉状態を維持するよう換気窓装置13を制御する一方、非常時には上述のように制御部30から与えられる指示に従って換気窓開閉扉15を開扉するよう換気窓装置13を動作させる。
【0024】
健全性確認部32は、換気窓装置13の健全性を適宜確認する機能(以下、これを換気窓装置健全性確認機能と呼ぶ)を有する機能部である。実際上、健全性確認部32は、例えば、乗りかご2がドア11を閉じたままいずれかのフロアに長時間着床したままの待機状態が所定の第1の時間を超過したときや、最後に換気窓装置13の健全性を確認してから第1の時間よりも十分に長い所定の第2の時間だけ経過した場合であって、乗りかご2がいずれかのフロアに着床する直前のタイミングで、換気窓開閉扉15を開閉させるよう換気窓装置13を動作させることにより換気窓装置13の健全性を確認する。
【0025】
このような換気窓装置健全性確認機能を実現するための手段として、健全性確認部32には、健全性確認タイミング発生部33、エレベータ状態検出部34、換気窓開閉動作部35、動作確認部36及び異常監視部37が設けられている。
【0026】
健全性確認タイミング発生部33は、換気窓装置13の健全性の確認をするタイミングを発生させる機能を有する。具体的に、健全性確認タイミング発生部33は、乗りかご2がいずれかのフロアに着床してからの経過時間を第1のタイマ22(図1)を用いて計測し、乗りかご2がドア11を閉じたままいずれかのフロアに着床した待機状態が所定の第1の時間T1(例えば10分)だけ継続した場合に、これを換気窓開閉動作部35に通知する。また健全性確認タイミング発生部33は、最後に換気窓装置13の健全性を確認してからの経過時間を第2のタイマ23(図1)を用いて計測し、当該経過時間が第1の時間T1よりも十分に長い所定の第2の時間T2(例えば1時間)以上となった場合に、これをエレベータ状態検出部34に通知する。
【0027】
エレベータ状態検出部34は、最後に換気窓装置13の健全性を確認してから第2の時間T2だけ経過したことが健全性確認タイミング発生部33から通知された場合に、制御部30を介して制御盤3から現在のエレベータ装置1の状態を取得する。そしてエレベータ状態検出部34は、取得したエレベータ装置1の現在の状態に基づいて、乗りかご2が次にいずれかのフロアに着床する直前のタイミングを算出し、そのタイミングで換気窓装置13の換気窓開閉扉15を開閉動作させるよう換気窓開閉動作部35に指示を与える。
【0028】
換気窓開閉動作部35は、乗りかご2の待機時間が第1の時間T1だけ継続したことが健全性確認タイミング発生部33から通知され、又は、換気窓装置13の換気窓開閉扉15を所定タイミングで開閉動作させるようエレベータ状態検出部34から指示が与えられると、換気窓装置13を制御して換気窓開閉扉15を指示されたタイミングで開閉させる。
【0029】
動作確認部36は、換気窓開閉動作部35の制御のもとに行われた換気窓装置13の換気窓開閉扉15の開閉動作を監視し、当該開閉動作が正常に行われたか否かを判定する。そして動作確認部36は、換気窓開閉扉15の開閉動作の異常を検出した場合には、その旨の異常検出通知を異常監視部37に出力する。
【0030】
異常監視部37は、動作確認部36から異常検出通知が与えられると、例えば、制御部30を介して制御盤3に対して換気窓開閉扉15の開閉動作に異常が生じた旨の異常検出通知を送信する。この結果、制御盤3は、この異常検出通知に基づいて、乗りかご2を直近のフロアに緊急着床させるなどの所定の異常検出時の制御処理を実行する。
【0031】
(2)換気窓装置の具体的構成例
図3は、図1の矢印A方向から見た換気窓装置13の具体的構成例を示す断面図である。換気窓装置13は、給電が断たれた非常時に換気用開口部kを開放又は閉塞する構成として、軸40を中心として回転自在に配設された換気窓開閉扉15と、換気窓開閉扉15を閉動作させるための閉用ソレノイド41と、閉用ソレノイド41を乗りかご2の側面パネル10Aに固定する筐体42と、閉用ソレノイド41の開閉軸43の一端部及び換気窓開閉扉15間を連結するリンク機構44と、筐体42及び開閉軸43間に設けられ、開閉軸43の他端部に設けられた係合部43Aを矢印α2で示す筐体42から離隔する方向に付勢する圧縮ばね45とを備えている。
【0032】
リンク機構44は、閉用ソレノイド41の開閉軸43の直線運動を長穴等を用いて換気窓開閉扉15の回転運動に変換する。また閉用ソレノイド41の開閉軸43は、図3において実線で示したように、閉用ソレノイド41のオン時には、電磁誘導の磁力によって矢印α3方向に移動することにより換気窓開閉扉15を矢印β2で示す閉じる方向に回転させる一方、閉用ソレノイド41のオフ時には、圧縮ばね45の弾性力によって矢印α2の方向に移動することにより、図3において二点鎖線で示したように、換気窓開閉扉15を矢印β1で示す開く方向に回転させる。
【0033】
また換気窓装置13は、換気窓開閉扉15による換気用開口部kの開扉状態をロックするための機構として、ロック軸46の一端部を換気窓開閉扉15と係合させるようにして換気窓開閉扉15を閉扉状態にロックするロック用ソレノイド47と、ロック用ソレノイド47を側面パネル10Aに固定する筐体48と、ロック用ソレノイド47のロック軸46及び筐体48間に設けられ、ロック軸46の他端側に設けられた係合部46Aを矢印α1で示す筐体48から離隔する方向に付勢する圧縮ばね49とを備えている。
【0034】
ロック用ソレノイド47のロック軸46は、図3において実線で示したように、ロック用ソレノイド47のオン時には電磁誘導の磁力によって矢印α4方向に移動することにより閉扉状態にある換気窓開閉扉15をその状態にロックする一方、ロック用ソレノイド47のオフ時には、圧縮ばね49の弾性力によって矢印α1の方向に移動することにより、図3において二点鎖線で示したように、換気窓開閉扉15のロックを解除した非ロック位置に復帰する。
【0035】
加えて、換気窓装置13は、換気窓開閉扉15の開閉状態に応じてロック用ソレノイド47及び閉用ソレノイド41の電源をオン/オフするための作動スイッチ50を備えている。実際上、作動スイッチ50は、矢印ω1の方向及びω2の方向に移動自在に設けられ、矢印ω1で示す方向に付勢された可動端子50Aと、換気窓開閉扉15が閉扉状態のときに当該換気窓開閉扉15により押されて矢印ω1の方向に移動した可動端子50Aと接触するように配置された第1の端子50Bと、換気窓開閉扉15が開扉状態のときに付勢力により矢印ω1の方向に移動した可動端子50Aと接触するように配置された第2の端子50Cとから構成される。
【0036】
そして、閉用ソレノイド41をオン動作させて換気窓開閉扉15を閉扉した通常時には、この作動スイッチ50の可動端子50Aが第1の端子50Bと接触することで可動端子50A及び第1の端子を50B経由してロック用ソレノイド47に駆動電流Iが供給される。この結果、ロック用ソレノイド47がオンとなってロック軸46が矢印α4方向に移動するため換気窓開閉扉15が閉扉状態にロックされる。
【0037】
なお、このとき可動端子50Aが第2の端子50Cと離隔した状態となるため、閉用ソレノイド41への給電が行われず、閉用ソレノイド41はオフとなって、省電力化が図られる。このように閉用ソレノイド41がオフとなった場合においてもロック用ソレノイド47のロック軸46により換気窓開閉扉15が閉扉状態にロックされているため、換気窓開閉扉15が開扉することはない。
【0038】
一方、非常時(断電時)には、ロック用ソレノイド47への給電が断たれるため、ロック用ソレノイド47のロック軸46が圧縮ばね49の付勢力により図3において二点鎖線の位置にまで後退し、それまでロック用ソレノイド47により閉扉状態にロックされていた換気窓開閉扉15が非ロック状態となる。この結果、そのときオフ状態にある閉用ソレノイド41の開閉軸43が圧縮ばね45の弾性力によって二点鎖線の位置にまで後退し、これに伴うリンク機構44の挙動により換気窓開閉扉15が矢印β1で示す回転方向に回転して二点鎖線で示す位置まで開扉する。これにより乗りかご2の換気用開口部kが開放されて乗りかご2内部の換気が行われる。
【0039】
なお本実施の形態の場合、換気窓装置13には、換気窓開閉扉15の閉扉時に換気窓開閉扉15及び側面パネル10A間にパッキン51が設けられている。このパッキン51は、閉扉した換気窓開閉扉15及び側面パネル10A間の隙間を閉塞するように、側面パネル10Aの換気用開口部kの周囲に設けられている。これにより換気窓開閉扉15の閉扉時にパッキン51が換気窓開閉扉15の周端縁部に接し、換気窓開閉扉15と、換気用開口部kの周囲の側面パネル10Aとの間において乗りかご2の機密状態を保持し得るようになされている。
【0040】
(3)健全性確認部の具体的な処理内容
次に、換気窓装置13の健全性の確認に関して制御装置4の健全性確認部32(図2)により実行される一連の処理(以下、これを換気窓装置健全性確認処理と呼ぶ)の流れについて説明する。
【0041】
図4は、かかる換気窓装置健全性確認処理の具体的な処理の流れを示す。この換気窓装置健全性確認処理は、エレベータ装置1の運行が開始されると開始され、まず、健全性確認タイミング発生部33が、第1のタイマ22(図1)のカウント値に基づいて、乗りかご2がいずれかのフロアに着床してからの経過時間が第1の時間T1を超過したか否かを判断する(S1)。
【0042】
また健全性確認タイミング発生部33は、この判断で否定結果を得ると第2のタイマ23(図1)のカウント値に基づいて、最後に換気窓装置13の健全性を確認してからの経過時間が第2の時間T2を超過したか否かを判断する(S2)。
【0043】
そして健全性確認タイミング発生部33は、この判断で否定結果を得るとステップS1に戻り、この後、ステップS1又はステップS2で肯定結果を得るまでステップS1-ステップS2-ステップS1のループを繰り返す。
【0044】
そして健全性確認タイミング発生部33は、やがてステップS2で肯定結果を得た場合には、その旨をエレベータ状態検出部34に通知し、ステップS1で肯定結果を得た場合には、その旨を換気窓開閉動作部35に通知する。
【0045】
エレベータ状態検出部34は、かかる通知が健全性確認タイミング発生部33から与えられると、制御部30(図2)を介して制御盤3(図2)からエレベータ装置1の現在の状態を取得し、取得したエレベータ装置1の現在の状態に基づいて、換気窓装置13の健全性を確認するために換気窓開閉扉15を開閉させるべきタイミングを算出する(S3)。
【0046】
具体的に、エレベータ状態検出部34は、乗りかご2が次にいずれかのフロアに着床するまでの時間などの情報を制御部30を介して制御盤3から取得し、取得した情報に基づいて、乗りかご2がそのフロアに着床するまでの間に換気窓装置13の健全性を確認するための換気窓開閉扉15の開閉動作を完了させるために当該開閉動作を開始させるべき現時点からの最も遅い時間(以下、これを最終タイミング時間と呼ぶ)を算出する。
【0047】
また、エレベータ状態検出部34は、乗りかご2が次にいずれかのフロアに着床するまでの間に換気窓開閉扉15の開閉動作を完了させることができないと判断した場合には、その次のフロアに着床するまでの間に換気窓装置13の健全性を確認するための換気窓開閉扉15の開閉動作を完了させるために当該開閉動作を開始させるべき現時点からの最終タイミング時間を算出する。
【0048】
そしてエレベータ状態検出部34は、このようにして算出した最終タイミング時間を換気窓開閉動作部35に通知する。
【0049】
換気窓開閉動作部35は、健全性確認タイミング発生部33から乗りかご2がいずれかのフロアに着床してからの経過時間が第1の時間T1を超過した旨の通知が与えられ、又は、エレベータ状態検出部34から最終タイミング時間が通知されると、乗りかご2がいずれかのフロアに着床する直前のタイミングで換気窓装置13の換気窓開閉扉15を開閉動作させる(S4)。
【0050】
具体的に、換気窓開閉動作部35は、例えば、健全性確認タイミング発生部33から乗りかご2がいずれかのフロアに着床してからの経過時間が第1の時間T1を超過した旨の通知が与えられた場合には、図3について上述したロック用ソレノイド47への駆動電流の供給を直ちに停止することによりロック用ソレノイド47による換気窓開閉扉15のロックを解除して換気窓開閉扉15を開扉させ、その後、閉用ソレノイド41に駆動電流を供給することにより換気窓開閉扉15を閉扉させる。
【0051】
また換気窓開閉動作部35は、エレベータ状態検出部34から最終タイミング時間が通知された場合には、その最終タイミング時間が経過するタイミングでロック用ソレノイド47への駆動電流の供給を停止することによりロック用ソレノイド47による換気窓開閉扉15のロックを解除して換気窓開閉扉15を開扉させ、その後、閉用ソレノイド41に駆動電流を供給することにより換気窓開閉扉15を閉扉させる。
【0052】
この際、換気窓開閉動作部35は、図3について上述した作動スイッチ50における可動端子50Aの第1の端子50Bや第2の端子50Cへの接触を監視しており、その後、換気窓開閉扉15が正常に開閉したか否かを判断する(S5)。
【0053】
そして換気窓開閉動作部35は、この判断で肯定結果を得るとその旨を健全性確認タイミング発生部33に通知する。かくして、このとき健全性確認タイミング発生部33は、ステップS1以降の処理を実行する。これにより、これ以降、ステップS1~ステップS5の処理が繰り返されることになる。
【0054】
これに対して、換気窓開閉動作部35は、ステップSの判断で否定結果を得ると、換気窓開閉扉15の開閉に異常が発生したことを異常監視部37に通知する。そして異常監視部37は、かかる通知が与えられると、所定の異常検出処理を実行する。具体的に、異常監視部37は、換気窓開閉扉15の開閉に異常が発生したことを動作確認部36から通知されると、その旨の異常検出通知を制御部30を介して制御盤3に送信する。この結果、制御盤3は、上述のように乗りかご2を直近のフロアに緊急着床させるなどの所定の異常検出時の制御処理を実行する。
【0055】
また、このとき健全性確認部32は、この後、この換気窓装置健全性確認処理を終了する。これにより、この後、換気窓装置13のメンテナンスが行われるまでは、換気窓装置13の健全性の確認が行われず、またエレベータ装置1自体も運行が停止される。
【0056】
(4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態のエレベータ装置1では、乗りかご2がドア11を閉じた状態でいずれかのフロアに長時間着床したままの待機状態が第1の時間T1を超過し、又は、そのような長時間の待機状態が第1の時間T1よりも十分に長い第2の時間T2を超過した場合であって、乗りかご2がいずれかのフロアに着床する直前のタイミングで換気窓開閉扉15を開閉させるよう換気窓装置13を動作させることにより、換気窓装置13の健全性を確認する。
【0057】
この場合において、超高速エレベータ装置では、かかる換気窓装置13の健全性確認を無作為なタイミングで行うドラフト現象の影響を受けて換気窓開閉扉が開閉し難くなり、換気窓装置13の健全性を正しく確認できない場合がある。特に、乗りかご2のドア11(図1)が開いているときに換気窓装置13の換気窓開閉扉15を開けると、エレベータホール、乗りかご2の出入口、乗りかご2内部、換気用開口部k及び昇降路という経路で風が流れてしまうため、換気窓開閉扉15が閉じられなくなることがある。
【0058】
この点について、本実施の形態のエレベータ装置1では、上述のように乗りかご2のドア11が閉じているタイミングで換気窓装置13の健全性を確認するため、ドラフト現象の影響を受けることなく、換気窓装置13の健全性を正しく確認することができる。また本エレベータ装置1では、乗りかご2が着床中又は着床前の低速走行中に換気窓開閉扉15を開閉動作させるため、乗りかご2が高速で昇降しているときに比べてドラフトの影響を格段的に低減した状態で換気窓装置13の健全性を確認することができる。
【0059】
加えて、本エレベータ装置1では、かかるタイミングで換気窓装置13の健全性を確認するため、長時間待機が発生しない稼動頻度の高い日中でも乗りかご2の昇降時の着床間際にかかる確認を行うことができ、定期的に又は計画性をもって換気窓装置13の健全性を確認することができる。
【0060】
さらに、例えば乗りかご2の出発間際に換気窓装置13の健全性の確認を行うものとした場合、ちょっとした不備でも乗りかご2の出発が抑止される可能性があるのに対して、本実施の形態のように乗りかご2が長時間待機中又は走行時の着床間際のタイミングであればエレベータ装置1の運転効率を低下させることなく、換気窓装置13の異常チェックを行うことができる。
【0061】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、本発明を超高速エレベータ装置に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、乗りかごに通気口としての換気用開口部が設けられた種々のエレベータ装置に広く適用することができる。
【0062】
また上述の実施の形態においては、換気窓装置13を図3のように構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成を広く適用することができる。
【0063】
さらに上述の実施の形態においては、制御装置4の健全性確認部32(図2)をソフトウェア構成とする場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その一部又は全部を専用のハードウェア構成とするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、乗りかごに通気口としての換気用開口部が設けられたエレベータ装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1……エレベータ装置、2……乗りかご、3……制御盤、4……制御装置、13……換気窓装置、15……換気窓開閉扉、20……CPU、22,23……タイマ、24……換気窓装置制御プログラム、30……制御部、32……健全性確認部、33……健全性確認タイミング発生部、34……エレベータ状態検出部、35……換気窓開閉動作部、36……動作確認部、37……異常監視部、k……換気用開口部。
図1
図2
図3
図4