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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】据付装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20221013BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20221013BHJP
   B66B 7/00 20060101ALN20221013BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B25J19/06
B66B7/00 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019106489
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020199562
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 誠
(72)【発明者】
【氏名】波田野 利昭
(72)【発明者】
【氏名】松家 大介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-12106(JP,A)
【文献】特開2018-118365(JP,A)
【文献】特開平8-57784(JP,A)
【文献】特開2018-126835(JP,A)
【文献】特開平10-124130(JP,A)
【文献】特開2012-24920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
B25J 19/06
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物に対して作業を行う複数台のロボットを備えた据付装置において、
前記ロボットを制御するロボットコントローラと、
前記ロボットに設けられ、前記ロボットに加わる荷重情報を検出する力覚センサと、
前記ロボットを監視する監視用制御装置と、
前記ロボットの関節に配置されたブレーキを解除するブレーキ解除ユニットと、を備え、
前記監視用制御装置は、
前記ロボットコントローラから前記ロボットの関節部の角度情報である関節角度情報及び前記力覚センサが検出した力覚センサ情報を取得する通信部と、
前記ロボットの3次元モデルであるロボット3次元モデルが格納された記憶部と、
前記通信部が取得した前記関節角度情報に基づいて前記記憶部に格納された前記ロボット3次元モデルを可動させて、監視用3次元画像を生成するグラフィック生成部と、
前記力覚センサ情報と前記グラフィック生成部が生成した前記監視用3次元画像を出力する出力部と、
前記ロボットを操作する操作部と、を備え
複数の前記ロボットには、それぞれ手先カメラが設けられ、
前記通信部は、前記手先カメラから手先カメラ情報を取得し、
前記出力部は、前記手先カメラ情報を出力する
前記ロボットコントローラは、前記監視用制御装置から出力されたブレーキ解除指令に基づいて、複数の前記ロボットのうち該当するロボットの前記ブレーキ解除ユニットを制御し、前記ブレーキを解除する
据付装置。
【請求項2】
前記記憶部には、前記ロボットが作業を行う作業環境の3次元モデルである作業環境3次元モデルと、前記作業対象物の3次元モデルである作業対象物3次元モデルが格納されており、
前記グラフィック生成部は、前記ロボット3次元モデル、前記作業環境3次元モデル及び前記作業対象物3次元モデルを組み合わせて前記監視用3次元画像を生成する
請求項に記載の据付装置。
【請求項3】
前記ロボットが作業する領域を撮影する全体カメラをさらに備え、
前記通信部は、前記全体カメラが撮影した全体画像情報を取得し、
前記出力部は、前記全体画像情報を出力する
請求項に記載の据付装置。
【請求項4】
前記手先カメラは、前記ロボットに複数設けられる
請求項に記載の据付装置。
【請求項5】
前記手先カメラは、撮影した画像に対象物までの距離情報を検出することができる距離画像カメラである
請求項に記載の据付装置。
【請求項6】
前記出力部から出力された各種情報を表示する表示部をさらに備えた
請求項に記載の据付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業するロボットを監視及び支援するロボット支援システム、ロボット支援方法及び据付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベーターの昇降路内には、乗りかごや釣合おもりの移動をガイドするガイドレールが設置されている。ガイドレールの据付作業は、作業者が昇降路内に設けられた作業床上で行っていた。近年では、作業効率を向上させるために、ロボットを用いてガイドレールの据付作業を行うことが考えられている。
【0003】
ロボットを用いてガイドレールの据付作業を行う技術としては、たとえば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、芯出し基準検出装置を有するエレベータガイドレール芯出し固定装置の動作を制御する機構制御装置と、監視制御装置と、統括制御装置と、を備えた技術が記載されている。監視制御装置は、エレベータガイドレール芯出し固定装置の動作状態およびガイドレール取付け箇所の状態を、監視手段を用いて監視している。統括制御装置は、機構制御装置と監視制御装置とを統括制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-242379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、ガイドレールの芯出しを行う装置や、レールブラケットを固定する装置等の多数の装置がガイドレールに近接し、かつ密集して配置されているため、監視装置で取得できる画像に死角が多く発生していた。そのため、特許文献1に記載された技術では、ロボットに障害が発生した際に、その障害の状況を正確に確認することができない、という問題を有していた。
【0006】
本目的は、上記の問題点を考慮し、ロボットに発生した障害の状況を正確に確認することができ据付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
また、据付装置は、作業対象物に対して作業を行うロボットを備えた据付装置において、ロボットを制御するロボットコントローラと、ロボットに設けられ、ロボットに加わる荷重情報を検出する力覚センサと、ロボットを監視する監視用制御装置と、を備えている。
監視用制御装置は、通信部と、記憶部と、グラフィック生成部と、出力部と、を備えている。通信部は、ロボットコントローラからロボットの関節部の角度情報である関節角度情報及び力覚センサが検出した力覚センサ情報を取得する。記憶部には、ロボットの3次元モデルであるロボット3次元モデルが格納されている。グラフィック生成部は、通信部が取得した関節角度情報に基づいて記憶部に格納されたロボット3次元モデルを可動させて、監視用3次元画像を生成する。出力部は、力覚センサ情報とグラフィック生成部が生成した監視用3次元画像を出力する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成据付装置によれば、ロボットに発生した障害の状況を正確に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態例にかかる据付装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】第1の実施の形態例にかかる据付装置の作業床の構成を示す斜視図である。
図3】第1の実施の形態例にかかる据付装置に用いられるロボットを示す斜視図である。
図4】第1の実施の形態例にかかる据付装置の制御系を示すブロック図である。
図5】第1の実施の形態例にかかる据付装置における表示部に表示される表示例を示す図である。
図6】第1の実施の形態例にかかる据付装置におけるガイドレールの据付作業例を示すフローチャートである。
図7】第1の実施の形態例にかかる据付装置における障害発生時の動作例を示すフローチャートである。
図8】第1の実施の形態例にかかる据付装置における障害発生時の情報の流れの一例を示す説明図である。
図9】第2の実施の形態例にかかる据付装置における障害発生時の情報の流れの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態例にかか据付装置について、図1図9を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0013】
1.第1の実施の形態例
1-1.据付装置の構成例
まず、第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる据付装置の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本例の据付装置を示す概略構成図である。
【0014】
図1に示す据付装置は、エレベーターのガイドレールの据付作業を行うガイドレール据付装置である。まず、ガイドレール据付装置10によって据え付けられるガイドレール2、2及びおもり側ガイドレール3について説明する。
【0015】
作業対象物の一例を示すガイドレール2は、エレベーターの乗りかごを昇降可能に支持し、おもり側ガイドレール3は、釣合おもりを昇降可能に支持する。そして、ガイドレール2及びもり側ガイドレール3は、昇降路内に立設される。また、ガイドレール2及びおもり側ガイドレール3の下端部は、昇降路の最下部のピット内に固定される。
【0016】
ガイドレール2、2には、レールブラケット5がレールクリップを介して取り付けられる。レールブラケット5は、アンカーボルト6により昇降路の壁面に固定される。これにより、ガイドレール2、2は、昇降路の壁面にレールブラケット5及びアンカーボルト6を介して固定される。
【0017】
おもり側ガイドレール3には、おもり側ブラケット7がレールクリップを介して取り付けられる。おもり側ブラケット7は、アンカーボルト8により昇降路の壁面に固定される。これにより、おもり側ガイドレール3は、昇降路の壁面におもり側ブラケット7及びアンカーボルト8を介して固定される。なお、アンカーボルト6、8を壁面に差し込む作業やレールブラケット5やおもり側ブラケット7にアンカーボルト6、8を固定する作業は、ガイドレール据付装置10により行われる。
【0018】
ガイドレール据付装置10は、作業床11と、全体カメラ12と、第1ロボット13と、第2ロボット14と、制御盤15と、2つのワインダ16、16と、集塵装置21と、監視用制御装置の一例を示す監視用PC100と、を有している。また、ガイドレール据付装置10は、ガイドレール2やおもり側ガイドレール3の芯出しを行う芯出し装置58(図4参照)を有している。
【0019】
作業床11は、昇降路に立設された2つのガイドレール2、2に摺動可能に支持されている。また、昇降路の最上部には、吊りビーム4が設置されている。吊りビーム4には、2つのワインダ16、16が不図示の支持部を介して設置されている。ワインダ16、16を制御する制御盤15は、昇降路の壁面に固定されている。ワインダ16のワイヤは、作業床11に設けられたスリング17に接続される。そして、ワインダ16が動作することにより、作業床11がガイドレール2、2に沿って昇降移動する。
【0020】
図2は、作業床の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、作業床11には、第1ロボット13と、第2ロボット14と、集塵装置21が設置されている。集塵装置21には、エアコンプレッサ22が接続されている。そして、集塵装置21は、作業時に発生する粉塵等を回収する。
【0021】
また、作業床11には、レールブラケット5やおもり側ブラケット7(以下、単にブラケット5と称す)が載置されたブラケット台23や、アンカーボルト6、8やナットが載置されたボルト台24が設置されている。ブラケット台23やボルト台24には、ブラケット5や、アンカーボルト6等の有無を検出する有無検出センサが設けられている。
【0022】
さらに、作業床11の上方には、全体カメラ12が配置されている。そして、全体カメラ12は、作業床11の上方から作業床11全体、すなわち第1ロボット13及び第2ロボット14が作業する領域を撮影する。全体カメラ12は、作業床11に立設された支持台に設置されていてもよく、あるいは昇降路の上方に設置された吊りビーム4から吊り下げてもよい。また、全体カメラ12を設置方法としては、エレベーターが設置される建築構造物の階床から昇降路内に向けて吊り下げて設置してもよく、その他各種の方法が適用されるものである。さらに、全体カメラ12として、ガイドレール2の芯出しを行う芯出し装置58(図4参照)に設けられたカメラを適用してもよい。
【0023】
第1ロボット13及び第2ロボット14は、複数のアーム部31と複数の関節を有するロボットであり、例えば、6軸自由度を有する垂直多関節ロボットである。第2ロボット14は、昇降路にアンカーボルト6、8を差し込むための孔を穿孔すると共に、ナットランナによりアンカーボルト6、8をブラケット5に締結固定する作業を行う。また、第1ロボット13は、ブラケット5を把持し、ブラケット5の孔にアンカーボルト6、8を通す作業を行う。
【0024】
図3は、第1ロボット13を示す斜視図である。
図3に示すように、第1ロボット13のアーム部31の先端部には、第1ロボット13に加わる荷重を検出する力覚センサ34が設けられている。また、アーム部31には、ツールチェンジャ32を介して、ブラケット5を把持可能なグリッパツール33が着脱可能に接続されている。
【0025】
さらに、アーム部31の先端部には、手先カメラ35が設けられている。手先カメラ35は、第1ロボット13におけるアーム部31の先端部を撮影する。なお、手先カメラ35としては、通常のカメラを適用してもよく、あるいは撮影した画像に対象物までの距離情報を検出することができる距離画像カメラを適用してもよい。さらに、手先カメラ35を2台設置し、ゴーグル等を用いてアーム部31の前方を立体視できるようにしてもよい。
【0026】
第2ロボット14にも同様に、力覚センサ34、ツールチェンジャ32及び手先カメラ35が設けられている。なお、第2ロボット14のツールチェンジャ32には、ハンマドリルツール38が着脱可能に取り付けられている。また、第2ロボット14のツールチェンジャ32には、ハンマドリルツール38の他にナットランナを締結するナットランナツール39(図4参照)が着脱可能に接続される。
【0027】
1-2.ガイドレール据付装置の制御系
次に、図4を参照してガイドレール据付装置10の制御系の構成について説明する。
図4は、ガイドレール据付装置10の制御系を示すブロック図である。
【0028】
図4に示すように、ガイドレール据付装置10は、全体カメラ12、第1ロボット13、第2ロボット14、2台のワインダ16、16及び集塵装置21を備えている。また、ガイドレール据付装置10は、作業床11の高さを検出する作業床高さセンサ57や、ガイドレール2やおもり側ガイドレール3の芯出しを行う芯出し装置58を備えている。さらに、ガイドレール据付装置10は、第1ロボット13の動作を制御する第1ロボットコントローラ51、第2ロボット14の動作を制御する第2ロボットコントローラ52を備えている。
【0029】
また、ガイドレール据付装置10は、装置全体を制御する作業制御装置の一例を示すPLC(Programmable Logic Controller)54と、HUB55と、監視用PC100とを有している。PLC54やHUB55は、例えば、制御盤15(図1参照)に収容される。
【0030】
第1ロボット13及び第2ロボット14は、それぞれツールチェンジャ32、力覚センサ34、手先カメラ35、駆動部41及び通信部42を有している。第1ロボット13のツールチェンジャ32には、グリッパツール33が着脱可能に装着される。そして、第2ロボット14のツールチェンジャ32には、ハンマドリルツール38やナットランナツール39が着脱可能に装着される。なお、第1ロボット13及び第2ロボット14に装着されるツールとしては、上述したものに限定されるものではなく、その他各種のツールが装着される。
【0031】
駆動部41は、第1ロボット13及び第2ロボット14におけるアームの軸となる関節部に設けられており、ロボットコントローラ51、52からの制御信号に基づいて駆動する。これにより、第1ロボット13及び第2ロボット14の各関節が可動する。
【0032】
ツールチェンジャ32、力覚センサ34、手先カメラ35及び駆動部41は、通信部42に接続されている。力覚センサ34が検出した力覚センサ情報、手先カメラ35が撮影した画像情報や駆動部41が取得した関節角度情報は、通信部42に出力される。
【0033】
第1ロボット13の通信部42は、シリアル通信61を介して第1ロボットコントローラ51に接続されている。また、第2ロボット14の通信部42は、シリアル通信62を介して第2ロボットコントローラ52に接続されている。そして、通信部42に出力された情報は、第1ロボットコントローラ51や第2ロボットコントローラ52に出力される。また、第1ロボットコントローラ51や第2ロボットコントローラ52からの制御信号は、各ロボット13、14の通信部42に出力される。
【0034】
第1ロボットコントローラ51及び第2ロボットコントローラ52は、PLC54にネットワークを介して及びHUB55にネットワークを介して接続されている。第1ロボットコントローラ51及び第2ロボットコントローラ52は、各ロボット13、14の通信部42を介して取得した情報を、PLC54及びHUB55に出力する。また、第1ロボットコントローラ51及び第2ロボットコントローラ52は、PLC54及びHUB55から制御信号を受信し、各ロボット13、14の通信部42に出力する。
【0035】
PLC54には、集塵装置21、ワインダ16、作業床高さセンサ57や、ブラケット台23及びボルト台24に設けたブラケット5やアンカーボルト6等の有無を検出する有無検出センサと接続されている。PLC54には、作業床高さセンサ57が検出した作業床11の高さ情報や、有無検出センサが検出したブラケット5やアンカーボルト6等の有無情報等が出力される。そして、PLC54は、作業床高さセンサ57から受信した作業床11の高さ情報に基づいて、ワインダ16を制御する。さらに、PLC54は、集塵装置21に制御信号を出力し、昇降路内の粉塵を集塵装置21によって回収させる。
【0036】
また、全体カメラ12や、芯出し装置58を制御する芯出し装置コントローラ59は、HUB55に接続されている。全体カメラ12は、撮影した画像情報をHUB55に出力する。また、芯出し装置コントローラ59は、HUB55から芯出し装置58の駆動情報をHUB55に出力する。
【0037】
また、HUB55は、ネットワークを介して監視用PC100に接続されている。監視用PC100は、制御部101と、記憶部102と、操作部103と、通信部104と、グラフィック生成部105と、表示部106と、出力部107と、を有している。制御部101、記憶部102、操作部103、通信部104、グラフィック生成部105及び表示部106は、それぞれ情報を送受信可能に接続されている。また、通信部104は、HUB55に接続されている。
【0038】
記憶部102には、第1ロボット13及び第2ロボット14の3次元モデルであるロボット3次元モデル13A、14A(図8参照)が格納されている。ロボット3次元モデル13A、14Aは、第1ロボット13及び第2ロボット14の動作に応じて可動する。
【0039】
また、記憶部102には、第1ロボット13及び第2ロボット14の周囲に配置される作業床11、集塵装置21、エアコンプレッサ22、ブラケット台23やボルト台24の3次元モデルである作業環境3次元モデル11Aが格納されている。この作業環境3次元モデル11Aは、各装置の設計図面等から予め作成される。
【0040】
さらに、記憶部102には、第1ロボット13や第2ロボット14によって据え付けられるガイドレール2、おもり側ガイドレール3、レールブラケット5、おもり側ブラケット7やアンカーボルト6、8の3次元モデルである作業対象物3次元モデル2Aも格納されている。作業対象物3次元モデル2Aは、設置されるエレベーターの設計図面から予め作成される。
【0041】
ここで、ガイドレール2やおもり側ガイドレール3は、昇降路に沿って同一の構成で繰り返し設置される。そのため、ガイドレール据付装置10は、昇降路に沿って作業床11が昇降移動することで、同様の作業を繰り返し行う。したがって、作業対象物3次元モデル2Aとしては、作業床11が停止した際に、第1ロボット13及び第2ロボット14が作業する1作業領域分のガイドレール2やおもり側ガイドレール3等の3次元モデルを作成すればよい。
【0042】
なお、作業対象物3次元モデル2Aとして、昇降路に設置される全てのガイドレール2やおもり側ガイドレール3等の3次元モデルを作成し、記憶部102に格納してもよい。
【0043】
グラフィック生成部105は、記憶部102に格納されたロボット3次元モデル14A、14B、作業環境3次元モデル11A及び作業対象物3次元モデル2Aを組み合わせて、監視用3次元画像を生成する。なお、グラフィック生成部105は、通信部104を介して取得された第1ロボット13や第2ロボット14の関節角度情報に基づいてロボット3次元モデル14A、14Bを可動させて、作業環境3次元モデル11A及び作業対象物3次元モデル2Aと組み合わせる。
【0044】
出力部107は、制御部101の制御のもと、各種情報を表示部106に出力し、表示部106に各種情報を表示させる。
【0045】
図5は、表示部106に表示される表示例を示す図である。
図5に示すように、表示部106には、例えば、力覚センサウィンドウ106aと、第1手先カメラウィンドウ106bと、第2手先カメラウィンドウ106cと、全体カメラウィンドウ106dと、グラフィック表示ウィンドウ106eが表示される。
【0046】
力覚センサウィンドウ106aには、第1ロボット13及び第2ロボット14のうち選択したロボットの力覚センサ34から力覚センサ情報が表示される。第1手先カメラウィンドウ106bには、第1ロボット13に設けた手先カメラ35が撮影した画像が表示される。第2手先カメラウィンドウ106cには、第2ロボット14に設けた手先カメラ35が撮影した画像が表示される。
【0047】
また、全体カメラウィンドウ106dには、全体カメラ12が撮影した画像が表示される。そして、グラフィック表示ウィンドウ106eには、グラフィック生成部105によって生成された監視用3次元画像が表示される。なお、グラフィック表示ウィンドウ106eには、監視用3次元画像が視点を変更可能に表示される。
【0048】
また、表示部106には、操作部103が表示される。操作部103は、第1ロボット13や第2ロボット14の手動操作モード時に、作業者によって操作される。これにより、監視用PC100によって第1ロボット13や第2ロボット14を遠隔操作することができる。
【0049】
この監視用PC100、全体カメラ12や、第1ロボット13及び第2ロボット14に設けた手先カメラ35により第1ロボット13及び第2ロボット14の作業を支援するロボット支援システムが構成される。
【0050】
1-3.ガイドレール据付装置の据付作業の一例
次に、上述した構成を有するガイドレール据付装置10におけるガイドレール2及びおもり側ガイドレール3の据付作業例について図6を参照して説明する。
図6は、ガイドレール据付装置10におけるガイドレール2及びおもり側ガイドレール3の据付作業例を示すフローチャートである。なお、図6に示す作業例では、芯出し装置58によるガイドレール2やおもり側ガイドレール3の芯出し作業が完了した例を説明する。
【0051】
図6に示すように、まず、PLC54は、作業床高さセンサ57から受信した作業床11の高さ情報に基づいて、ワインダ16を駆動させる。そして、PLC54は、予め決められたブラケット5の取り付け高さまで作業床11を移動させる(ステップS11)。次に、第2ロボット14に装着されたハンマドリルツール38によって昇降路の壁面にアンカーボルト6、8を差し込むための、穿孔を行う(ステップS12)。
【0052】
次に、第1ロボット13に装着されたグリッパツール33によってアンカーボルト6、8を把持し、ステップS12の処理において第2ロボット14で穿孔した孔にアンカーボルト6、8を設置する(ステップS13)。ステップS13の処理の間、第2ロボット14のハンマドリルツール38には、アンカー打撃ツールが取り付けられる。
【0053】
ステップS13の処理が終了すると、第2ロボット14のアンカー打撃ツールによってアンカーボルト6、8を打撃し、アンカーボルト6、8を昇降路の壁面に打設する(ステップS14)。次に、第1ロボット13のグリッパツール33によってブラケット5を把持し、ブラケット5をアンカーボルト6、8に設置する(ステップS15)。ステップS15の処理では、ブラケット5の穴をアンカーボルト6、8に通す。
【0054】
また、ステップS15の処理で第1ロボット13がブラケット5を設置する間に、第2ロボット14は、ツールチェンジャ32からハンマドリルツール38を取り外す。そして、第2ロボット14は、ツールチェンジャ32にナットランナツール39を装着する。
【0055】
そして、ステップS15の処理が終了すると、第2ロボット14のナットランナツール39により、アンカーボルト6、8にナットを挿入し、締結する。これにより、ブラケット5がナットを介してアンカーボルト6、8に固定される(ステップS16)。次に、レールクリップを用いてブラケット5にガイドレール2を固定する(ステップS17)。
【0056】
次に、PLC54は、同じ取り付け高さの全てのブラケット5の固定作業が終了したか否かを判断する(ステップS18)。ステップS18の処理において、同じ取り付け高さにおいて固定作業が残っているブラケット5があるとPLC54が判断した場合(ステップS18のNO判定)、ステップS12の処理まで戻る。
【0057】
また、ステップS18の処理において、同じ取り付けた高さにおいて全てのブラケット5の固定作業が終了したとPLC54が判断した場合(ステップS18のYES判定)、PLC54は、昇降路内における全てのブラケット5の固定作業が終了したか否かを判断する(ステップS19)。ステップS19の処理において、ブラケット5の固定作業が終了していないとPLC54が判断した場合(ステップS19のNO判定)、ステップS11の処理に戻り、作業床11を所定の高さまで移動させる。
【0058】
これに対して、ステップS19の処理において、全てのブラケット5の固定作業が終了したとPLC54が判断した場合(ステップS19のYES判定)、ガイドレール据付装置10におけるガイドレール2やおもり側ガイドレール3の据付作業が完了する。このように、ガイドレール2やおもり側ガイドレール3の据付作業を、ガイドレール据付装置10によって自動的に行うことができる。
【0059】
上述した据付作業の中で、ハンマドリルツール38による穿孔作業や、ナットランナツール39による締結作業は、作業時の反力が大きく、第2ロボット14のアーム部31に対する負荷が大きい。そのため、第2ロボット14が過負荷により停止する可能性がある。
【0060】
1-4.ロボットの障害発生時におけるガイドレール据付装置10の動作例
次に、第1ロボット13又は第2ロボット14に障害が発生した際のガイドレール据付装置10の動作例について、図5図7及び図8を参照して説明する。
図7は、障害発生時の動作例を示すフローチャートである。図8は、障害発生時の情報の流れの一例を示す説明図である。
【0061】
図7及び図8に示すように、作業時の過負荷により、例えば、第1ロボット13に障害が発生した場合、障害が発生した第1ロボット13を制御する第1ロボットコントローラ51は、PLC54及びHUB55に障害発生信号を出力する(ステップS31)。また、監視用PC100の通信部104は、HUB55から障害発生信号を受信する。
【0062】
次に、PLC54は、ロボットコントローラ51、52に停止信号を出力し、第1ロボット13及び第2ロボット14の動作を停止させる(ステップS32)。さらに、PLC54は、第1ロボット13と第2ロボット14の操作を手動操作モードに切り替える(ステップS33)。
【0063】
監視用PC100の通信部104は、第1ロボットコントローラ51から、障害発生時点での第1ロボット13の力覚センサ34が検出した力覚センサ情報と、第1ロボット13及び第2ロボット14の関節角度情報を取得する(ステップS34)。
【0064】
次に、監視用PC100のグラフィック生成部105は、障害発生時点での監視用3次元画像を生成する(ステップS35)。すなわち、グラフィック生成部105は、記憶部102に予め格納されてロボット3次元モデル、作業環境3次元モデル11A及び作業対象物3次元モデル2Aを取得する。そして、グラフィック生成部105は、ステップS34の処理で取得した関節角度情報に基づいてロボット3次元モデルを可動させる。
【0065】
次に、グラフィック生成部105は、可動させたロボット3次元モデル14A、14B、作業環境3次元モデル11A及び作業対象物3次元モデル2Aを組み合わせて、監視用3次元画像を生成する。そして、グラフィック生成部105は、生成した監視用3次元画像を制御部101に出力する。
【0066】
また、監視用PC100の通信部104は、HUB55を介して全体カメラ12が撮影した全体画像情報を取得する(ステップS36)。さらに、監視用PC100の通信部104は、HUB55を介して、障害が発生していない第2ロボット14の手先カメラ35から手先カメラ情報を取得する(ステップS37)。
【0067】
次に、監視用PC100の制御部101の出力部107は、生成した監視用3次元画像や、取得した力覚センサ情報、全体画像情報、手先カメラ情報を表示部106に出力する。そして、出力部107は、図5に示すように、監視用3次元画像や、取得した力覚センサ情報、全体画像情報、手先カメラ情報を表示部106に表示させる(ステップS38)。次に、作業者は、表示部106に表示された各種情報に基づいて、第1ロボット13に発生した障害解消作業を行う(ステップS39)。上述した工程を行うことで、第1ロボット13に発生した障害を確認し、障害を解消することができる。
【0068】
ステップS39の障害解消作業では、作業者は、力覚センサ情報から第1ロボット13に加わる力の方向を判断することができる。さらに、グラフィック表示ウィンドウ106eに表示された監視用3次元画像のロボット3次元モデル13A、14Aから障害が発生した際の第1ロボット13及び第2ロボット14の姿勢を確認することができる。これにより、第1ロボット13に発生した障害の状況を正確に確認することができる。
【0069】
さらに、力覚センサ情報から第1ロボット13に加わる力の方向を判断することができるため、第1ロボット13に加わり力が小さくなる方向に第1ロボット13を操作することで、第1ロボット13の過負荷の原因を取り除くことができる。この際、全体カメラ12が撮影した全体画像情報や、監視用3次元画像の視点を変えて確認することで、第1ロボット13を操作した場合における、第1ロボット13と周囲との干渉を確認することができる。
【0070】
また、障害が発生していない第2ロボット14を操作することで、第2ロボット14の手先カメラ35によって第1ロボット13に発生した障害箇所の画像を取得することができる。その結果、第1ロボット13に発生した障害の状況を詳細に確認することができる。
【0071】
さらに、第1ロボット13や第2ロボット14に設けられた各種ツールは、ツールチェンジャ32を介して着脱可能に装着されている。そのため、上述した解消作業により第1ロボット13の障害が解消できない場合は、監視用PC100から第1ロボットコントローラ51に対して、ツールチェンジャ32から作業ツールの切り離し指令を出力する。これにより、作業ツールがツールチェンジャ32から切り離すことができ、その後、作業者が作業ツールを回収することで障害を解消することができる。
【0072】
なお、グラフィック生成部105は、障害が発生した時の関節角度情報に基づいて、第1ロボット13や第2ロボット14のロボット3次元モデル13A、14Aを可動させる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、監視用PC100の通信部104は、ロボットコントローラ51、52から作業中の第1ロボット13及び第2ロボット14の関節角度情報を常時取得してもよい。そして、グラフィック生成部105は、ロボット3次元モデル13A、14Aの姿勢を作業中の第1ロボット13及び第2ロボット14の姿勢と常に同期させてもよい。
【0073】
また、監視用PC100と、ロボットコントローラ51、52及びPLC54との情報の送受信は、公衆ネットワークにより行ってもよい。これにより、監視用PC100を作業現場の近くに設ける必要がなくなり、監視用PCを作業現場とは遠隔地に配置することができる。そのため、例えば、サービスセンターのような場所で監視用PC100を管理し、複数の作業現場の各ロボットの作業を集中して監視することができる。
【0074】
上述した動作例では、第1ロボット13に障害が発生した例を説明したが、第2ロボット14に障害が発生した場合でも、その動作は同様であるため、その説明は省略する。
【0075】
2.第2の実施の形態例
次に、図9を参照して第2の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置について説明する。
図9は、第2の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置における障害発生時の情報の流れの一例を示す説明図である。
【0076】
この第2の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置10Bが第1の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置10と異なる点は、第1ロボット13及び第2ロボット14にブレーキ解除ユニット47を設けた点である。そのため、ここではブレーキ解除ユニット47について説明し、第1の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置10と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0077】
一般的に、ロボット13、14のアームの各関節に配置された駆動部41は、ブレーキを有している。そして、ロボットコントローラ51、52は、監視用PC100やPLC54から停止信号を受信した場合、ロボット13、14のブレーキを作動させて、ロボット13、14の動作を停止させている。
【0078】
図9に示すように、第2の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置10Bの第1ロボット13B及び第2ロボット14Bには、ブレーキ解除ユニット47が設けられている。なお、その他の構成は、第1の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置10と同様であるため、第1の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置10と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0079】
第2の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置10Bでは、障害が発生したロボット13B、14Bを制御するロボットコントローラ51、52に、ブレーキ解除指令を監視用PC100が出力する。なお、ブレーキ解除指令は、作業者が監視用PCを操作して行ってもよく、監視用PC100の制御部101が障害の状態を判断して、指令を出力してもよい。
【0080】
ブレーキ解除指令を受信したロボットコントローラ51、52は、第1ロボット13B又は第2ロボット14Bに設けたブレーキ解除ユニット47を制御し、駆動部41に設けたブレーキを解除する。これにより、障害が発生したロボット13B、14Bの各関節が移動可能となる。そして、障害が発生していない他のロボット13B、14Bを操作し、障害が発生したロボット13B、14Bのアーム部を押圧することで、障害を解消することができる。
【0081】
また、障害が発生していない他のロボット13B、14Bを操作する際も、グラフィック生成部105によって生成した監視用3次元画像を確認することで、ロボット13B、14Bと周囲との干渉を確認することができる。さらに、力覚センサ情報を確認することで、障害が発生したロボット13B、14Bのアーム部を押圧する方向を確認することができる。
【0082】
このようなガイドレール据付装置10Bによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるガイドレール据付装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0083】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0084】
なお、上述した実施の形態例では、第1ロボット13と第2ロボット14の2台のロボットを設けた例を説明したが、作業を行うロボットの数は、2台に限定されるものではない。例えば、1台、あるいは3台以上のロボットを設けてもよい。そして、監視用PC100は、1台のロボット、あるいは3台以上のロボットの状態を監視する。
【0085】
さらに、据付装置として、ガイドレールの据付作業を行うガイドレール据付装置を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。据付装置としては、例えば、昇降路内にエレベーターのドアハンガーを据え付けるドアハンガー据付装置等のロボットにより据付作業を行うその他各種の据付装置が適用されるものである。そして、作業対象物としては、ガイドレールに限定されるものではなく、例えば、ドアハンガーや、ドアハンガーを固定するハンガーブラケット等その他各種の部材が適用される。
【0086】
また、上述した実施の形態例では、出力部107から出力された各種情報を表示する表示部106を設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、表示部106を有していなくてもよい。例えば、出力部107は、作業を行う作業者が有する携帯情報端末や、PC等の外部装置に各種情報を出力してもよい。そして、出力部107は、外部装置の表示部に監視用3次元画像、力覚センサ情報、全体画像情報、手先カメラ情報等を表示させてもよい。
【0087】
さらに、ロボット支援システム及び支援方法としては、据付作業を行うロボットに適用される例に限定されるものではなく、例えば、原子炉内等の人が入り込めない場所で作業を行うロボット等その他各種の作業ロボットに適用できるものである。
【符号の説明】
【0088】
2…ガイドレール(作業対象物)、 2A…作業対象物3次元モデル、 3…おもり側ガイドレール(作業対象物)、 4…吊りビーム、 5、7…ブラケット(作業対象物)、 6、8…アンカーボルト(作業対象物)、 10、10B…ガイドレール据付装置、 11…作業床、 11A…作業環境3次元モデル、 12…全体カメラ、 13…第1ロボット、 13A、14A…ロボット3次元モデル、 14…第2ロボット、 16…ワインダ、 21…集塵装置、 31…アーム部、 32…ツールチェンジャ、 33…グリッパツール、 34…力覚センサ、 35…手先カメラ、 38…ハンマドリルツール、 39…ナットランナツール、 41…駆動部、 42…通信部、 47…ブレーキ解除ユニット、 51、52…ロボットコントローラ、 54…PLC(作業制御装置)、 55…HUB、 58…芯出し装置、 100…監視用PC(監視用制御装置)、 101…制御部、 102…記憶部、 103…操作部、 104…通信部、 105…グラフィック生成部、 106…表示部、 106a…力覚センサウィンドウ、 106b…第1手先カメラウィンドウ、 106c…第2手先カメラウィンドウ、 106d…全体カメラウィンドウ、 106e…グラフィック表示ウィンドウ、 107…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9