(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】非常止め装置及びエレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 5/22 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
B66B5/22 Z
(21)【出願番号】P 2019163046
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 智久
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】座間 秀隆
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227353(JP,A)
【文献】特表2012-520810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0326544(US,A1)
【文献】国際公開第2010/058453(WO,A1)
【文献】特開平11-005675(JP,A)
【文献】米国特許第05377786(US,A)
【文献】特開2002-068634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降体に設けられ、かつ前記昇降体が摺動するガイドレールを挟持する制動子を有し、前記昇降体の移動を停止させる制動機構と、
前記制動機構の前記制動子に接続し、前記制動子を引き上げる駆動機構と、
前記駆動機構に接続され、前記駆動機構を作動させる電磁石を有する作動機構と、
前記作動機構の前記電磁石に流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記電流検出部が検出した電流値情報に基づいて、前記作動機構が作動状態から待機状態に復帰する復帰動作を制御する制御部と、
を備
え、
前記作動機構は、
前記駆動機構に接続部材を介して接続される可動鉄心と、
前記可動鉄心を吸着及び離間させる電磁コアと、を有し、
前記制御部は、復帰動作時に、前記電流値情報に基づいて、前記可動鉄心と前記電磁コアが吸着したか否かを判断する
非常止め装置。
【請求項2】
前記作動機構は、前記電磁コアを前記可動鉄心に対して接近及び離間する方向に移動させる保持復帰機構を有し、
前記制御部は、復帰動作時に、前記電流値情報に基づいて、前記保持復帰機構の駆動を制御する
請求項
1に記載の非常止め装置。
【請求項3】
前記電磁コアが前記待機状態である待機位置に移動したことを検出する待機位置検出部を備えた
請求項
2に記載の非常止め装置。
【請求項4】
前記保持復帰機構は、前記電磁コアと共に移動する連結部材を有し、
前記待機位置検出部は、前記電磁コアが前記待機位置に移動した際に前記連結部材と当接する検出スイッチである
請求項
3に記載の非常止め装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記電流値情報に基づいて、前記電磁コアが制動状態の位置から前記待機位置に移動したことを検出する
請求項
3に記載の非常止め装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、
前記制動子に接続される引き上げ棒と、
前記引き上げ棒に接続され、前記昇降体に設けた作動軸に回動可能に支持されるリンク部材と、
前記リンク部材の一端部に接続される駆動軸と、
前記駆動軸に設けられ、前記リンク部材及び前記引き上げ棒を介して前記駆動軸が前記制動子を引き上げる方向に前記駆動軸を付勢する駆動ばねと、
を備えた請求項
3に記載の非常止め装置。
【請求項7】
前記駆動機構は、前記リンク部材の回動位置を検出するリンク検出部を備え、
前記制御部は、復帰動作時に、前記電流値情報と、前記リンク検出部が検出した検出情報に基づいて、前記保持復帰機構の駆動を制御する
請求項
6に記載の非常止め装置。
【請求項8】
昇降路内を昇降移動する昇降体を備えたエレベーターにおいて、
前記昇降路内に立設されて前記昇降体を摺動可能に支持するガイドレールと、
前記昇降体の昇降移動の状態に基づいて前記昇降体の移動を停止させる非常止め装置と、を備え、
前記非常止め装置は、
前記昇降体に設けられ、かつ前記ガイドレールを挟持する制動子を有し、前記昇降体の移動を停止させる制動機構と、
前記制動機構の前記制動子に接続し、前記制動子を引き上げる駆動機構と、
前記駆動機構に接続され、前記駆動機構を作動させる電磁石を有する作動機構と、
前記作動機構の前記電磁石に流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記電流検出部が検出した電流値情報に基づいて、前記作動機構が作動状態から待機状態に復帰する復帰動作を制御する制御部と、
を備
え、
前記作動機構は、
前記駆動機構に接続部材を介して接続される可動鉄心と、
前記可動鉄心を吸着及び離間させる電磁コアと、を有し、
前記制御部は、復帰動作時に、前記電流値情報に基づいて、前記可動鉄心と前記電磁コアが吸着したか否かを判断する
エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常時に乗りかごを停止させる非常止め装置及びこの非常止め装置を備えたエレベーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ロープ式のエレベーターは、乗りかごと釣合おもりを連結する主ロープ及びコンペンロープや、乗りかご又は釣合おもりの速度を検出するために用いられる調速機ロープ等の長尺物を有している。また、エレベーターには、安全装置として、ガイドレールに沿って昇降する乗りかごの速度が規定された値を超えたときに、乗りかごの運転を自動的に停止する非常止め装置を設けることが規定されている。
【0003】
近年では、調速機を用いずに電気的に非常止め装置の制動機構を作動させる非常止め装置が提案されている。従来の、この種の非常止め装置としては、例えば、特許文献1に記載されている技術がある。この特許文献1には、駆動バネと電磁石装置とによりレールに離接する楔形摩擦部材を持ち、駆動バネに蓄勢しながら電磁石装置を復帰させる復帰モータを備えた技術が記載されている。
【0004】
そして、特許文献1には、復帰モータは、電磁石装置を押して保持位置に復帰させる復帰部材を駆動し、復帰部材は保持位置の電磁石装置の解放位置への移動を許容することが記載されている。さらに、特許文献1には、駆動バネは復帰バネとともに復帰モータによって蓄勢され、復帰モータは復帰バネにより回転され、復帰部材は待機位置に偏倚されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、電磁石装置の可動子と固定子の接触を検出していないため、復帰動作時に復帰モータを反転、停止させるタイミングが分からなかった。そのため、特許文献1に記載された技術では、復帰動作時に電磁石装置の可動子とコイル及び固定子が吸着されず、復帰動作を確実に行うことができない、という問題を有していた。
【0007】
本目的は、上記の問題点を考慮し、復帰動作を確実に行うことができる非常止め装置及びエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するため、非常止め装置は、昇降体に設けられ、かつ昇降体が摺動するガイドレールを挟持する制動子を有し、昇降体の移動を停止させる制動機構と、駆動機構と、作動機構と、電流検出部と、制御部と、を備えている。
駆動機構は、制動機構の制動子に接続し、制動子を引き上げる。作動機構は、駆動機構に接続され、駆動機構を作動させる電磁石を有する。電流検出部は、作動機構の電磁石に流れる電流値を検出する。制御部は、電流検出部が検出した電流値情報に基づいて、作動機構が作動状態から待機状態に復帰する復帰動作を制御する。
【0009】
また、エレベーターは、昇降路内を昇降移動する昇降体を備えたエレベーターにおいて、
昇降路内に立設されて昇降体を摺動可能に支持するガイドレールと、昇降体の昇降移動の状態に基づいて昇降体の移動を停止させる非常止め装置と、を備えている。また、非常止め装置としては、上述した非常止め装置が用いられる。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の非常止め装置及びエレベーターによれば、復帰動作を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態例にかかるエレベーターを示す概略構成図である。
【
図2】第1の実施の形態例にかかる非常止め装置を示す正面図である。
【
図3】第1の実施の形態例にかかる非常止め装置の制動機構を示す斜視図である。
【
図4】第1の実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構を示す上面図である。
【
図5】第1の実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構を示す正面図である。
【
図6】第1の実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構が動作した状態を示す説明図である。
【
図7】第1の実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構における復帰動作を示す説明図である。
【
図8】第1の実施の形態例にかかる非常止め装置の復帰動作での電流検出部が検出した電流値を示す図である。
【
図9】第1の実施の形態例にかかる非常止め装置の復帰動作を示すフローチャートである。
【
図10】第2の実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構及び駆動機構を示す正面図である。
【
図11】第2の実施の形態例にかかる非常止め装置の復帰動作を示すフローチャートである。
【
図12】第3の実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態例にかかる非常止め装置及びエレベーターについて、
図1~
図12を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0013】
1.第1の実施の形態例
1-1.エレベーターの構成例
まず、第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるエレベーターの構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本例のエレベーターの構成例を示す概略構成図である。
【0014】
図1に示すように、本例のエレベーター1は、建築構造物内に形成された昇降路110内を昇降動作する。エレベーター1は、人や荷物を載せる昇降体の一例を示す乗りかご120と、主ロープ130と、昇降体の他の例を示す釣合おもり140と、を備えている。また、エレベーター1は、巻上機100と、非常止め装置5とを備えている。
【0015】
また、エレベーター1は、制御部170と、反らせ車150と、を備えている。なお、昇降路110は、建築構造物内に形成され、その頂部には機械室160が設けられている。
【0016】
機械室160には、巻上機100と、反らせ車150が配置されている。巻上機100における付図の綱車には、主ロープ130が巻き掛けられている。また、巻上機100の近傍には、主ロープ130が装架される反らせ車150が設けられている。
【0017】
主ロープ130の一端には、乗りかご120の上部が接続され、主ロープ130の他端には、釣合おもり140の上部が接続されている。巻上機100が駆動することで、乗りかご120及び釣合おもり140が昇降路110を昇降する。以下、乗りかご120及び釣合おもり140が昇降移動する方向を昇降方向Zとする。
【0018】
乗りかご120は、不図示のスライダを介して2つのガイドレール201A、201Bに摺動可能に支持されている。同様に、釣合おもり140は、おもり側ガイドレール201Cに不図示のスライダを介して摺動可能に支持されている。2つのガイドレール201A、201Bと、おもり側ガイドレール201Cは、昇降路110内において昇降方向Zに沿って延在する。
【0019】
また、乗りかご120には、乗りかご120の昇降移動を非常停止させる非常止め装置5が設けられている。非常止め装置5の詳細な構成については、後述する。
【0020】
さらに、機械室160には、制御部170が設置されている。制御部170は、不図示の接続配線を介して乗りかご120に接続されている。そして、制御部170は、乗りかご120に制御信号を出力する。また、制御部170は、昇降路110内に設置されて、乗りかご120の状態を検出する不図示の状態検出センサが接続されている。
【0021】
状態検出センサが検出する情報としては、昇降路110内を昇降移動する乗りかご120の位置情報、乗りかご120の速度情報や、乗りかご120の加速度情報等である。乗りかご120の位置情報としては、例えば、同一の昇降路110内に複数の乗りかご120が昇降移動するマルチカーエレベーターにおいて、上下に隣接する2つの乗りかご120の間隔が所定の間隔よりも接近した際に検出される異常接近情報である。
【0022】
また、乗りかご120の速度情報としては、例えば、乗りかご120の下降速度が定格速度を超えて所定の速度(例えば、定格速度の1.3倍)に達した際に検出される異常下降速度情報である。そして、乗りかご120の加速度情報としては、例えば、乗りかご120の加速度が予め設定されたパターンから逸脱した際に検出される異常加速度情報である。状態検出センサは、検出した情報を制御装置に出力する。
【0023】
制御部170は、状態検出センサで検出された情報に基づいて乗りかご120の状態が異常か正常であるかを判断する。そして、制御部170は、乗りかご120の状態が異常であると判断した場合、非常止め装置5に動作指令信号を出力する。これにより、非常止め装置5は、制御部170からの動作指令信号に基づいて、作動して、乗りかご120を停止させる。
【0024】
なお、本例では、状態検出センサが、位置情報、速度情報及び加速度情報を検出する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、位置情報、速度情報及び加速度情報をそれぞれ異なるセンサで検出してもよい。さらに、制御部170は、位置情報、速度情報、加速度情報を選択して単独で取得してもよく、あるいは複数の情報を組み合わせて取得してもよい。
【0025】
なお、制御部170と乗りかご120は、有線により接続される例に限定されるものではなく、無線により信号が送受信可能に接続されていてもよい。
【0026】
以下、乗りかご120が昇降移動する方向を昇降方向Zとし、昇降方向Zと直交し、乗りかご120とガイドレール201Aと対向する方向を第1の方向Xとする。そして、第1の方向Xと直交し、かつ昇降方向Zとも直交する方向を第2の方向Yとする。
【0027】
1-2.非常止め装置の構成
次に、非常止め装置5の詳細な構成について
図2~
図4を参照して説明する。
図2は、非常止め装置5を示す正面図である。
【0028】
図2に示すように、非常止め装置5は、2つの制動機構10A、10Bと、作動機構11と、駆動機構12と、第1引き上げ棒13と、第2引き上げ棒14と、を有している。作動機構11は、乗りかご120の上部に設けられたクロスヘッド121に配置されている。また、非常止め装置5は、後述する作動機構11の電磁コア43のコイルに電流を流す電源57と、コイルの電流値を検出する電流検出部59(
図4参照)と、を備えている。
【0029】
[駆動機構]
駆動機構12は、駆動軸15と、第1リンク部材16と、第2リンク部材17と、第1作動軸18と、第2作動軸19と、駆動ばね20とを有している。
【0030】
第1作動軸18及び第2作動軸19は、乗りかご120の上部に設置されたクロスヘッド121に設けられている。第1作動軸18は、クロスヘッド121における第1の方向Xの一端部に設けられ、第2作動軸19は、クロスヘッド121における第1の方向Xの他端部に設けられている。第1作動軸18には、第1リンク部材16が回動可能に支持されており、第2作動軸19には、第2リンク部材17が回動可能に支持されている。
【0031】
第1リンク部材16及び第2リンク部材17は、略T字状に形成されている。第1リンク部材16は、作動片16aと、接続片16bとを有している。作動片16aは、接続片16bから略垂直に突出している。また、作動片16aは、接続片16bの長手方向における中間部よりも一端部側に接続されている。そして、作動片16aは、乗りかご120の第1の方向Xのマイナス側(図中の左側をいう。以下、図中のXYZ軸における紙面の左側及び紙面の下側をマイナス側とし、XYZ軸にける紙面の右側及び紙面の上側をプラス側とする。)に配置されたガイドレール201Aに向けて突出している。作動片16aにおける接続片16bとは反対側の端部には、接続部26を介して第1引き上げ棒13が接続されている。
【0032】
第1リンク部材16は、作動片16aと接続片16bが接続する箇所において第1作動軸18に回動可能に支持される。接続片16bにおける長手方向の一端部には、接続部25を介して駆動軸15が接続されている。また、接続片16bにおける駆動軸15と接続する端部とは反対側の端部、すなわち長手方向の他端部には、後述する作動機構11の接続部材41が接続されている。
【0033】
第1リンク部材16は、接続片16bにおける長手方向の一端部を昇降方向Zの上方に向け、接続片16bにおける長手方向の他端部を昇降方向Zの下方に向けて配置される。
【0034】
第2リンク部材17は、作動片17aと、接続片17bとを有している。作動片17aは、接続片17bから略垂直に突出している。また、作動片17aは、接続片17bにおける長手方向の中間部に接続されている。そして、作動片17aは、乗りかご120の第1の方向Xのプラス側に配置されたガイドレール201Bに向けて突出している。作動片17aにおける接続片17bとは反対側の端部には、接続部27を介して第2引き上げ棒14が接続されている。
【0035】
接続片17bにおける長手方向の他端部には、駆動軸15が接続されている。そして、第2リンク部材17は、作動片17aと接続片17bの接続箇所において第2作動軸19に回動可能に支持される。また、第2リンク部材17は、接続片17bにおける長手方向の一端部を昇降方向Zの上方に向け、接続片17bにおける長手方向の他端部を昇降方向Zの下方に向けて配置される。
【0036】
駆動軸15における第1の方向Xの一端部は、第1リンク部材16の接続片16bに接続されており、駆動軸15における第1の方向Xの他端部は、第2リンク部材17の接続片17bに接続されている。また、駆動軸15の軸方向の中間部には、駆動ばね20が設けられている。
【0037】
駆動ばね20は、例えば、圧縮コイルばねにより構成されている。駆動ばね20の一端部は、固定部21を介してクロスヘッド121に固定されており、駆動ばね20の他端部は、押圧部材22を介して駆動軸15に固定されている。そして、駆動ばね20は、押圧部材22を介して駆動軸15を第1の方向Xのプラス側に向けて付勢している。
【0038】
作動機構11が作動すると、駆動軸15は、駆動ばね20によって付勢されて、第1の方向Xのプラス側に向けて移動する。これにより、第1リンク部材16は、作動片16aにおける第1引き上げ棒13が接続された端部が昇降方向Zの上方を向くように第1作動軸18を中心に回動する。また、第2リンク部材17は、作動片17aにおける第2引き上げ棒14が接続された端部が昇降方向Zの上方を向くように第2作動軸19を中心に回動する。その結果、第1引き上げ棒13と第2引き上げ棒14が連動して、昇降方向Zの上方に向けて引き上げられる。
【0039】
また、第1引き上げ棒13における作動片16aが接続された端部とは反対側の端部には、第1制動機構10Aが接続されている。第2引き上げ棒14における作動片17aが接続された端部とは反対側の端部には、第2制動機構10Bが接続されている。そして、第1引き上げ棒13は、後述する第1制動機構10Aの一対の制動子31(
図3参照)を昇降方向Zの上方に向けて引き上げる。また、第2引き上げ棒14は、後述する第2制動機構10B(
図3参照)の一対の制動子31を昇降方向Zの上方に向けて引き上げる。
【0040】
[制動機構]
第1制動機構10A及び第2制動機構10Bは、乗りかご120の昇降方向Zの下端部に配置されている。第1制動機構10Aは、乗りかご120の第1の方向Xの一端部において、ガイドレール201Aと対向して配置されている。また、第2制動機構10Bは、乗りかご120の第1の方向Xの他端部においてガイドレール201Bと対向して配置されている。
【0041】
図3は、非常止め装置5の制動機構10A、10Bを示す斜視図である。なお、第1制動機構10Aと第2制動機構10Bは、同一の構成を有しているため、ここでは第1制動機構10Aについて説明する。以下、第1制動機構10Aを単に制動機構10Aと称す。また、昇降方向Zと直交し、かつ第1の方向Xとも直交する方向を第2の方向Yとする。
【0042】
図3に示すように、制動機構10Aは、一対の制動子31(
図3では、片側のみを図示)と、一対のガイド部材32、32と、連結部材33と、付勢部材34とを有している。
【0043】
一対の制動子31は、ガイドレール201Aを間に挟んで第1の方向Xで互いに対向して配置される。そして、非常止め装置5が作動する前の状態では、一対の制動子31とガイドレール201Aとの間には、所定の間隔が形成されている。
【0044】
制動子31におけるガイドレール201Aと対向する一面は、ガイドレール201Aの一面と平行、すなわち昇降方向Zと平行に形成されている。また、制動子31におけるガイドレール201Aと対向する一面とは反対側の他面は、昇降方向Zの下方から上方に向かうにつれてガイドレール201Aに接近するように傾斜している。したがって、制動子31は、くさび状に形成されている。
【0045】
一対の制動子31は、連結部材33によって第1の方向Xに移動可能に支持されている。また、一対の制動子31は、連結部材33によって連結されている。連結部材33には、第1引き上げ棒13が接続される。そして、第1引き上げ棒13が昇降方向Zの上方に引き上げられることで、一対の制動子31及び連結部材33は、昇降方向Zの上方に向けて移動する。
【0046】
また、一対の制動子31は、一対のガイド部材32、32によって移動可能に支持されている。一対のガイド部材32、32は、不図示の枠体を介して乗りかご120(
図2参照)に固定されている。また、一対のガイド部材32、32は、ガイドレール201Aと一対の制動子31を間に挟んで第1の方向Xに所定の間隔を空けて対向する。
【0047】
ガイド部材32における制動子31と対向する一面は、昇降方向Zの上方に向かうにつれてガイドレール201Aに接近するように傾斜している。そのため、一対のガイド部材32、32における制動子31と対向する一面の間隔は、昇降方向Zの上方に向かうにつれて狭まっている。
【0048】
また、ガイド部材32における制動子31と対向する一面とは反対側の他面には、付勢部材34が配置されている。付勢部材34は、例えば、昇降方向Zと直交する水平方向で切断した断面形状がU字状の板ばねにより構成されている。付勢部材34における両端部は、ガイドレール201Aを間に挟んで第1の方向Xに所定の間隔を空けて対向する。そして、付勢部材34の両端部における互いに対向する一面には、ガイド部材32が固定される。
【0049】
なお、付勢部材34としては、U字状の板ばねに限定されるものではなく、例えば、圧縮コイルばねを用いて、ガイド部材32と不図示の枠体との間に介在させてもよい。
【0050】
一対の制動子31がガイド部材32に対して相対的に昇降方向Zの上方に移動すると、一対の制動子31は、ガイド部材32により互いに接近する方向、すなわちガイドレール201Aに接近する方向へ移動する。さらに、一対の制動子31が昇降方向Zの上方に移動すると、一対の制動子31は、ガイド部材32を介して付勢部材34の付勢力によりガイドレール201Aに押し付けられる。これにより、乗りかご120の昇降移動が制動される。
【0051】
[作動機構]
次に、
図4及び
図5を参照して作動機構11について説明する。
図4及び
図5は、作動機構11を示す説明図である。
【0052】
図4及び
図5に示すように、作動機構11は、第1リンク部材16に接続される接続部材41と、保持駆動部の一例を示す電磁コア43と、可動鉄心44と、固定部材45と、保持復帰駆動部の一例を示す保持復帰モータ46と、を備えている。また、作動機構11は、保持復帰モータ46に設けられた送りねじ軸47と、送りナット48と、連結部材49と、一対のガイド部材51、51と、検出スイッチ55と、を備えている。そして、作動機構11は、駆動機構12を作動させる。
【0053】
固定部材45は、平板状の部材により形成されている。固定部材45は、クロスヘッド121に固定されている。固定部材45には、保持復帰モータ46が固定ブラケット53を介して固定されている。また、固定部材45には、一対のガイド部材51が支持ブラケット52を介して固定されている。さらに、固定部材45には、検出スイッチ55が配置されている。
【0054】
保持復帰モータ46は、固定部材45における第1の方向Xの他端部に配置されている。保持復帰モータ46の回転軸には、送りねじ軸47が取り付けられている。送りねじ軸47は、保持復帰モータ46から第1の方向Xの一端部に向けて突出している。送りねじ軸47は、その軸方向が第1の方向Xと平行に配置される。この送りねじ軸47には、後述する送りナット48が螺合する。
【0055】
一対のガイド部材51、51は、固定部材45における第2の方向Yの両端部に配置されている。一対のガイド部材51、51は、支持ブラケット52に支持されて、そのガイド方向が第1の方向Xと平行に配置される。一対のガイド部材51、51の間には、保持復帰モータ46に取り付けられた送りねじ軸47が配置される。一対のガイド部材51、51には、後述する連結部材49がスライド部49aを介して摺動可能に支持される。
【0056】
保持復帰モータ46は、制御部170により駆動が制御されている。保持復帰モータ46が正回転(正転)すると、後述する連結部材49は第1の方向Xの一端部、すなわち第1の方向Xのマイナス側へ移動する。そして、保持復帰モータ46が逆回転(逆転)すると、連結部材49は第1の方向Xの他端部、すなわち第1の方向Xのプラス側へ移動する。
【0057】
待機位置検出部を示す検出スイッチ55は、ガイド部材51における第1の方向Xの他端部に配置される。この検出スイッチ55は、連結部材49がガイド部材51に沿って摺動した際に、連結部材49と当接する。検出スイッチ55は、制御部170に検出信号を出力する。
【0058】
接続部材41は、昇降方向Zに延在する長孔41aが形成されている。長孔41aには、接続ピン42が摺動可能に挿入されている。接続ピン42は、第1リンク部材16の接続片16bにおける長手方向の他端部に取り付けられている。そして、接続部材41は、接続ピン42を介して接続片16bに揺動可能に接続されている。
【0059】
接続部材41における接続片16bと接続する側の端部とは反対側の端部には可動鉄心44が固定されている。可動鉄心44の対向面44aには、電磁コア43が対向する。また、電磁コア43は、一対のガイド部材51、51の間に配置される。
【0060】
電磁コア43には、コイルが設けられている。電源57からコイルに電力が供給されて、コイルが通電されると、電磁コア43とコイルにより電磁石が構成される。また、電源57とコイルの間には、コイルに流れる電流値を検出する電流検出部59が設けられている。電流検出部59は、検出した電流値情報を制御部170に出力する。
【0061】
電磁コア43における可動鉄心44の対向面44aと対向する対向面43aが、可動鉄心44を吸着する吸着面となる。また、電磁コア43には、挿入孔43bが形成されている。挿入孔43bは、電磁コア43における第1の方向Xに沿って形成されている。この挿入孔43bには、送りねじ軸47が挿入される。
【0062】
電磁コア43における対向面43aとは反対側の端部には、連結部材49が固定されている。連結部材49には、スライド部49aと、送りナット48が設けられている。スライド部49aは、連結部材49における第2の方向Yの両端部に形成されている。スライド部49aは、ガイド部材51に摺動可能に支持されている。そのため、連結部材49及びこの連結部材49に固定された電磁コア43は、一対のガイド部材51により第1の方向Xに沿って移動可能に支持される。また、連結部材49は、一対のガイド部材51により第1の方向X以外への移動が規制されている。
【0063】
また、送りナット48は、連結部材49における第2の方向Yの中間部に固定されている。この連結部材49には、送りねじ軸47が第1の方向Xに沿って貫通している。連結部材49に設けた送りナット48は、送りねじ軸47に螺合する。
【0064】
上述したように、送りナット48が固定された連結部材49は、一対のガイド部材51により第1の方向X以外への移動が規制されている。そのため、送りねじ軸47が回転すると、送りナット48及び連結部材49は、送りねじ軸47及びガイド部材51の軸方向、すなわち第1の方向Xに沿って移動する。これにより、連結部材49に固定された電磁コア43も第1の方向Xに沿って移動する。
【0065】
また、保持復帰モータ46、送りねじ軸47、送りナット48、連結部材49及び一対のガイド部材51、51により電磁コア43を可動鉄心44に対して接近及び離間する方向(本例では、第1の方向X)に移動させる保持復帰機構が構成される。
【0066】
連結部材49が第1の方向Xのプラス側へ移動した際に、連結部材49は、検出スイッチ55に当接する。この検出スイッチ55により、連結部材49及び電磁コア43が待機位置に移動したことを検出することができる。
【0067】
1-3.非常止め装置の動作例
次に、上述した構成を有する非常止め装置5の動作例について
図4~
図7を参照して説明する。なお、ここでは、非常止め装置5における作動機構11の動作について説明する。
図6は、作動機構11が動作した状態を示す説明図である。以下、
図6に示す状態を制動状態という。また、
図7は、作動機構11の復帰動作を示す説明図である。
【0068】
[待機状態での動作]
まず、
図4及び
図5を参照して非常止め装置5の待機状態について説明する。
図4及び
図5に示すように、非常止め装置5の待機状態では、連結部材49及び電磁コア43は、一対のガイド部材51、51における第1の方向Xの他端部側に配置される。このとき、連結部材49は、検出スイッチ55に当接している。この検出スイッチ55により電磁コア43が待機状態の位置(待機位置)にいることを検出することができる。
【0069】
また、電磁コア43のコイルが通電されており、電磁コア43が励磁されている。これにより、電磁コア43とコイルによる電磁石が構成される。そして、電磁コア43の対向面43aに可動鉄心44が吸着される。そのため、可動鉄心44が固定された接続部材41を介して、第1リンク部材16の接続片16bの一端部を第1の方向Xのプラス側に向けて保持する。その結果、接続片16bの他端部に接続された駆動軸15は、駆動ばね20の付勢力に抗して、第1の方向Xのマイナス側に付勢される。
【0070】
なお、電磁コア43には、駆動ばね20により第1の方向Xのマイナス側への力が作用する。そのため、保持復帰モータ46には、通電が行われている。そして、保持復帰モータ46は、送りねじ軸47を、送りナット48が第1の方向Xのプラス側に移動させる向きに回転させている。これにより、電磁コア43及び連結部材49が駆動ばね20の付勢力により第1の方向Xのマイナス側へ移動することを規制している。
【0071】
[制動状態への動作]
次に、
図6を参照して待機状態から制動状態への動作について説明する。
乗りかご120(
図1及び
図2参照)が下降移動時において、乗りかご120の下降速度が所定の速度を超過したことを制御部170が判断すると、制御部170は、非常止め装置5に動作指令信号を出力する。これにより、電磁コア43及び保持復帰モータ46への通電が遮断される。
【0072】
電磁コア43での通電が遮断されることで、電磁コア43の磁性が消去される。これにより、駆動軸15は、駆動ばね20の付勢力により第1の方向Xのプラス側へ移動し、第1リンク部材16の一端部も駆動軸15と共に第1の方向Xのプラス側へ移動する。その結果、第1リンク部材16が第1作動軸18を中心に回動し、第2リンク部材17が第2作動軸19を中心に回動する。このように、作動機構11により駆動機構12が作動する。
【0073】
また、第1リンク部材16が回動することで、可動鉄心44が電磁コア43から離間する。第1リンク部材16及び第2リンク部材17が回動することで、第1引き上げ棒13と第2引き上げ棒14が連動して、昇降方向Zの上方に向けて引き上げられる。そして、第1引き上げ棒13に接続された第1制動機構10Aと、第2引き上げ棒14に接続された第2制動機構10B(
図2参照)が作動する。その結果、第1制動機構10A及び第2制動機構10Bの一対の制動子31(
図3参照)が昇降方向Zの上方に移動し、第2引き上げ棒14に連結する第2制動機構10Bの一対の制動子31がガイドレール201A、201Bを挟持することで、乗りかご120の昇降移動が機械的に停止される。
【0074】
[復帰動作]
次に、
図7から
図8を参照して作動機構11における制動状態から待機状態に復帰する復帰動作について説明する。
図7は、作動機構11の復帰動作を示す説明図である。
図8は、電流検出部59が検出したコイルの電流値を示す図である。また、
図9は、復帰動作を示すフローチャートである。
【0075】
まず、
図9に示すように、制御部170は、電源57を制御し、電磁コア43のコイルに通電する(ステップS11)。これにより、コイルが通電されることで、電磁コア43は、励磁する。
【0076】
次に、制御部170は、保持復帰モータ46を正回転で駆動し、贈りねじ軸47を回転させる(ステップS12)。これにより、
図7に示すように、送りねじ軸47に螺合する送りナット48が第1の方向Xのマイナス側に向けて移動する。そのため、送りナット48が固定された連結部材49が一対のガイド部材51、51に沿って第1の方向Xのマイナス側に移動する。そして、連結部材49に固定された電磁コア43も可動鉄心44に接近する向き、すなわち第1の方向Xのマイナス側に移動する。
【0077】
図7に示す状態からさらに保持復帰モータ46を正回転で駆動させると、電磁コア43の対向面43aが可動鉄心44の対向面44aに接近する。このとき、電流検出部59は、電磁コア43のコイルに流れる電流値を検出し、検出した電流値情報を制御部170に出力する。
【0078】
制御部170は、電流検出部59が検出した電流値Iが閾値I
thresholdを超えたか否かを判断する(ステップS13)。ここで、励磁した電磁コア43が可動鉄心44に接触すると、電磁コア43の対向面43aに可動鉄心44が吸着される。このとき、
図8に示すように、電磁コア43のコイルの周りの磁束が変化し、コイルに流れる電流値が一時的に増加する。
【0079】
ステップS13の処理において、電流値Iが閾値Ithresholdを超えていないと制御部170が判断した場合(ステップS13のNO判定)、ステップS12の処理に戻り、保持復帰モータ46の正回転での駆動を継続させる。また、ステップS13の処理において、電流値Iが閾値Ithresholdを超えた(I>Ithreshold)と制御部170が判断した場合(ステップS13のYES判定)、制御部170は、電磁コア43の対向面43aに可動鉄心44が吸着したと判断する。
【0080】
次に、制御部170は、保持復帰モータ46を、逆回転で駆動させる(ステップS14)。これにより、送りねじ軸47が回転し、送りねじ軸47に螺合する送りナット48が第1の方向Xのプラス側に向けて移動する。そのため、連結部材49、電磁コア43、電磁コア43に吸着された可動鉄心44及び接続部材41が第1の方向Xのプラス側に向けて移動する。
【0081】
接続部材41が第1の方向Xのプラス側に移動することで、第1リンク部材16は、駆動ばね20の付勢力に抗して、回動する。また、第1リンク部材16と接続部材41と接続させる接続ピン42は、接続部材41に設けた長孔41aに摺動可能に挿入されている。そのため、接続ピン42が長孔41a内を摺動することで、接続部材41が第1の方向Xに沿って直線的に移動しても、第1リンク部材16を、第1作動軸18を中心に回動させることができる。
【0082】
次に、制御部170は、検出スイッチ55がONとなったか否かを判断する(ステップS15)。ステップS15の処理において、検出スイッチ55がONではないと制御部170が判断した場合(ステップS15のNO判定)、制御部170は、保持復帰モータ46の逆回転での駆動を継続させる。
【0083】
また、連結部材49が検出スイッチ55押圧し、検出スイッチ55がONであると制御部170が判断した場合(ステップS15のYES判定)、制御部170は、接続部材41、可動鉄心44及び電磁コア43が
図4及び
図5に示す待機位置まで移動したことを検出することができる。そして、制御部170は、保持復帰モータ46の駆動を停止する(ステップS16)。これにより、作動機構11の復帰動作が完了する。
【0084】
なお、本例の非常止め装置5によれば、電磁コア43のコイルの電流値から電磁コア43の対向面43aに可動鉄心44が吸着されたことを検出することができる。これにより、制動機構11の復帰動作を確実に行うことができる。さらに、電磁コア43と可動鉄心44との吸着を検出するスイッチ等を設ける必要がなく、部品点数を削減することができ、スイッチの位置を調整する作業が不要となる。これにより、非常止め装置5の組み立て作業の簡易化を図ることができる。
【0085】
2.第2の実施の形態例
次に、非常止め装置の第2の実施の形態例について
図10及び
図11を参照して説明する。
図10は、第2の実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構及び駆動機構を示す説明図、
図11は、第2の実施の形態例にかかる非常止め装置の復帰動作を示すフローチャートである。
【0086】
この第2の実施の形態例にかかる非常止め装置が、第1の実施の形態例にかかる非常止め装置と異なる点は、駆動機構に第2検出センサを設けた点である。そのため、ここでは第2検出センサについて説明し、第1の実施の形態例にかかる非常止め装置5と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0087】
図10に示すように、駆動機構12Bは、第1リンク部材16の位置を検出する第2検出スイッチ56を有している。リンク検出部を示す第2検出スイッチ56は、例えば、クロスヘッド121に固定されている。第2検出スイッチ56は、第1リンク部材16の作動片16aの位置を検出する。そして、第2検出スイッチ56は、検出情報を制御部170に出力する。
【0088】
非常止め装置5が待機状態では、第2検出スイッチ56は、作動片16aにより押圧され、ONの状態となる。また、非常止め装置5の制動状態では、
図10に示すように、第1リンク部材16は、作動片16aが第2検出スイッチ56から離反する向きに回動する。そのため、第2検出スイッチ56は、OFFの状態となる。なお、作動機構11に設けられた検出スイッチ55を第1検出スイッチ55と称す。
【0089】
次に、第2の実施の形態例にかかる非常止め装置の復帰動作について
図11を参照して説明する。
図11に示すように、制御部170は、電源57を制御し、電磁コア43のコイルに通電する(ステップS21)。次に、制御部170は、保持復帰モータ46を正回転で駆動し、贈りねじ軸47を回転させ、電磁コア43を可動鉄心44に接近させる(ステップS22)。
【0090】
制御部170は、電流検出部59が検出した電流値Iが閾値Ithresholdを超えたか否かを判断する(ステップS23)。ステップS23の処理において、電流値Iが閾値Ithresholdを超えていないと制御部170が判断した場合(ステップS23のNO判定)、ステップS22の処理に戻り、保持復帰モータ46の正回転での駆動を継続させる。また、ステップS23の処理において、電流値Iが閾値Ithresholdを超えた(I>Ithreshold)と制御部170が判断した場合(ステップS23のYES判定)、制御部170は、電磁コア43の対向面43aに可動鉄心44が吸着したと判断する。
【0091】
次に、制御部170は、保持復帰モータ46を、逆回転で駆動させ、送りナット48を第1の方向Xのプラス側に向けて移動させる(ステップS24)。制御部170は、第1検出スイッチ55がONとなったか否かを判断する(ステップS25)。ステップS25の処理において、第1検出スイッチ55がONではないと制御部170が判断した場合(ステップS25のNO判定)、制御部170は、保持復帰モータ46の逆回転での駆動を継続させる。
【0092】
また、連結部材49が検出スイッチ55押圧し、第1検出スイッチ55がONであると制御部170が判断した場合(ステップS25のYES判定)、制御部170は、第2検出スイッチ56がONとなったか否かを判断する(ステップS26)。
【0093】
ステップS26の処理において、第2検出スイッチ56がOFFである場合(ステップS26のNO判定)、電磁コア43及び可動鉄心44が第1の方向Xのプラス側に向けて移動する際に、電磁コア43と可動鉄心44の吸着が外れたと考えられる。そのため、制御部170は、ステップS22の処理に戻り、保持復帰モータ46を正回転で駆動させて、再び電磁コア43を可動鉄心44に接近させる。
【0094】
また、ステップS26の処理において、第2検出スイッチ56がONであると制御部170が判断した場合(ステップS26のYES判定)、可動鉄心44が電磁コア43に吸着された状態で、待機位置まで移動したと判断する。そして、制御部170は、保持復帰モータ46の駆動を停止する(ステップS27)。これにより、作動機構11の復帰動作が完了する。
【0095】
この第2の実施の形態例にかかる非常止め装置によれば、復帰動作の中で、可動鉄心44と電磁コア43との吸着が外れたことを第2検出スイッチ56で検出することができる。これにより、復帰動作を確実に行うことができ、信頼性の高い非常止め装置を提供することができる。
【0096】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる非常止め装置5と同様であるため、それらの説明は省略する。この第2の実施の形態例にかかる非常止め装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる非常止め装置5と同様の作用効果を得ることができる。
【0097】
3.第3の実施の形態例
次に、非常止め装置の第3の実施の形態例について
図12を参照して説明する。
図12は、第3の実施の形態例にかかる非常止め装置の作動機構を示す説明図である。
【0098】
この第3の実施の形態例にかかる非常止め装置が、第1の実施の形態例にかかる非常止め装置と異なる点は、作動機構の構成である。そのため、ここでは、作動機構について説明し、第1の実施の形態例にかかる非常止め装置5の作動機構11と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0099】
図12に示すように、作動機構60は、接続部材61と、電磁コア63と、可動鉄心64と、固定部材65と、保持復帰モータ66と、送りねじ軸67と、送りナット68と、連結部材69と、ガイド部材71と、を備えている。
【0100】
接続部材61は、接続ピン62を介して第1リンク部材16の接続片16b(
図2参照)に接続される。なお、接続部材61、電磁コア63及び可動鉄心64は、第1の実施の形態例にかかる接続部材41、電磁コア43及び可動鉄心44と同一の構成を有しているため、ここではその説明を省略する。
【0101】
電磁コア63における第1の方向Xの他端部には、連結部材69が固定されている。連結部材69には、送りナット68と、スライド部69aが設けられている。スライド部69aは、連結部材69における第2の方向Yの一端部に配置され、送りナット68は、連結部材69における第2の方向Yの他端部に配置される。
【0102】
スライド部69aは、ガイド部材71によって第1の方向Xに摺動可能に支持される。また、送りナット68は、保持復帰モータ66に取り付けられた送りねじ軸67に螺合する。
【0103】
ガイド部材71は、固定部材65における第2の方向Yの一端部に配置される。そして、ガイド部材71は、そのガイド方向が第1の方向Xと平行に配置される。
【0104】
保持復帰モータ66は、固定部材65における第1の方向Xの一端部において、第2の方向Yの他端部に配置される。送りねじ軸67は、保持復帰モータ66の回転軸に取り付けられ、保持復帰モータ66から第1の方向Xの他端部に向けて突出する。そして、送りねじ軸67は、支持部材74、74に支持されて、ガイド部材71及び第1の方向Xと平行に配置される。
【0105】
保持復帰モータ66及び送りねじ軸67は、電磁コア63の側面部、具体的には、第2の方向Yのプラス側に配置される。これにより、第3の実施の形態例にかかる作動機構60によれば、第1の実施の形態例にかかる作動機構11よりも第1の方向Xの長さを短くすることができる。その結果、作動機構60の小型化を図ることができる。
【0106】
また、電磁コア63は、第1コイル76と、第2コイル77とを有している。第1コイル76は、電磁コア63における第1の方向Xの一端部、すなわち対向面63a側の端部に配置されている。第2コイル77は、電磁コア63における第1の方向Xの他端部、すなわち対向面63aとは反対側の保持面63c側の端部に配置されている。
【0107】
第1コイル76及び第2コイル77は、電源57から電力が供給される。また、第1コイル76と電源57の間には、第1コイル76に流れる電流値を検出する第1電流検出部59aが設けられている。第2コイル77と電源57の間には、第2コイル77に流れる電流値を検出する第2電流検出部59bが設けられている。そして、第1電流検出部59a及び第2電流検出部59bは、検出した電流値情報を制御部170に出力する。
【0108】
さらに、作動機構60は、固定鉄心79を有している。固定鉄心79は、固定部材65に固定されている。また、固定鉄心79は、電磁コア63の保持面63cと対向する位置に配置されている。
【0109】
待機状態では、第1コイル76に通電することで、電磁コア63の対向面63aに可動鉄心44が吸着される。また、第2コイル77に通電することで電磁コア63の保持面63cが固定鉄心79に吸着される。これにより、待機状態のときに、保持復帰モータ66への通電を行わなくても、電磁コア63を固定鉄心79に保持させることができる。
【0110】
非常止め装置を作動させる際には、少なくとも第1コイル76への通電を遮断する。なお、第2コイル77への通電を遮断させてもよい。そして、復帰動作の際、まず第2コイル77への通電を遮断し、第1コイル76に通電する。これにより、保持復帰モータ66を駆動させた際に、電磁コア63Cを第1の方向Xのマイナス側に向けて移動させることができる。
【0111】
電磁コア63が可動鉄心64に当接すると、
図8に示すように、第1コイル76に流れる電流値が一時的に変化(増加)する。この電流値の変化を第1電流検出部59aにより検出する。これにより、制御部170によって可動鉄心64が電磁コア63に吸着されたことを検出することができる。
【0112】
そして、可動鉄心64と電磁コア63の吸着を検出すると制御部170は、第2コイル77に通電する。次に、制御部170は、保持復帰モータ66を逆回転で駆動させ、可動鉄心64及び電磁コア63を第1の方向Xにプラス側に向けて移動させる。電磁コア63の保持面63cが固定鉄心79に当接すると、第2コイル77に流れる電流値が一時的に変化(増加)する。この第2コイル77に流れる電流値の変化を第2電流検出部59bにより検出する。そして、第2電流検出部59bが検出した電流値が閾値を超えたと制御部170が判断すると、制御部170は、電磁コア63が固定鉄心79に吸着されたことを検出する。すなわち、制御部170は、接続部材61、可動鉄心64及び電磁コア63が待機位置まで移動したことを検出する。この第3の実施の形態例にかかる作動機構60では、制御部170が電磁コア63の待機位置を検出する待機位置検出部を構成する。
【0113】
このように、第3の実施の形態例にかかる作動機構60によれば、検出スイッチ55を用いることなく、接続部材61、可動鉄心64及び電磁コア63が待機位置まで移動したことを検出するができ、部品点数の削減を図ることができる。さらに、検出スイッチ55の位置を調整する作業が不要となり、非常止め装置の組み立て作業の簡易化を図ることができる。
【0114】
なお、第2コイル77に通電するタイミングは、上述した例に限定されるものではない。例えば、第1コイル76の通電に合わせて、第2コイル77にも通電を行ってもよい。これにより、第1コイル76及び第2コイル77が接続する電源及び切り替えスイッチ等を共通にすることができる。
【0115】
また、固定鉄心79としては、永久磁石を適用してもよい。これにより、固定鉄心79に電磁コア63を保持するための磁力を持たせることができ、第2コイル77の巻数を低減することができる。
【0116】
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる非常止め装置5と同様であるため、それらの説明は省略する。このような作動機構60を有する非常止め装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる非常止め装置5と同様の作用効果を得ることができる。
【0117】
また、この第3の実施の形態例にかかる非常止め装置においても、第2の実施の形態例にかかる非常止め装置と同様に、第1リンク部材16の位置を検出するリンク検出部である第2検出スイッチ56を設けてもよい。
【0118】
さらに、第3の実施の形態例いかかる非常止め装置では、電流検出部を2つ設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、1つの電流検出部で第1コイル76と第2コイル77に流れる電流値を検出してもよい。
【0119】
また、電磁コア63に、第1コイル76と第2コイル77の2つのコイルを設けた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電磁コア63にコイルを1つ設け、制御部170は、可動鉄心64と吸着したときの電流値の変化と、固定鉄心79と吸着したときの電流値の変化から、復帰動作を制御してもよい。
【0120】
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0121】
上述した実施の形態例では、作動機構11の電磁コアが移動する方向を第1の方向Xと略平行に設定した例を説明したが、これに限定されるものではない。作動機構11の電磁コアの移動方向は、昇降方向Zや第2の方向Yと略平行に設定してもよく、あるいは第1の方向X、第2の方向Yや昇降方向Zに対して傾斜した方向であってもよい。また、第1リンク部材16及び第2リンク部材17を乗りかご120における第2の方向Yの両端部に配置し、駆動軸15を第2の方向Yに沿って配置してもよい。
【0122】
また、昇降体としては乗りかご120に限定されるものではなく、釣合おもり140を適用してもよい。そして、非常止め装置を釣合おもり140に設け、釣合おもり140の昇降移動を非常停止させてもよい。
【0123】
また、待機位置検出部を示す第1検出スイッチ56及びリンク検出部を示す第2検出スイッチ57は、機械式のスイッチに限定されるものではなく、受光部と発光部からなる高光学式の検出部を適用してもよく、その他各種の検出部が適用される。
【0124】
また、上述した実施の形態例では、非常止め装置の制御する制御部として、エレベーター1全体を制御する制御部170を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。制御部としては、乗りかご120に設けられて乗りかご120のみを制御する制御部や非常止め装置のみを制御する制御部等その他各種の制御部を適用できるものである。
【0125】
さらに、エレベーターとして一つ昇降路内を複数の乗りかごが昇降移動するマルチカーエレベーターにも適用できるものである。
【0126】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0127】
1…エレベーター、 5…非常止め装置、 10A、10…第1制動機構、 11、11B、60、60B、60C、60D…作動機構、 12…駆動機構、 13、14…引き上げ棒、 15…駆動軸、 16…第1リンク部材、 17…第2リンク部材、 16a、17b…作動片、 16b、17b…接続片、 18…第1作動軸、 19…第2作動軸、 20…駆動ばね、 41…接続部材、 41a…長孔、 42…接続ピン、 43…電磁コア、 43a…対向面、 43b…挿入孔、 44…可動鉄心、 44a…対向面、 45…固定部材、 46…保持復帰モータ、 47…送りねじ軸、 48…送りナット、 49…連結部材、 49a…スライド部、 51…ガイド部材、 55…検出スイッチ(待機位置検出部)、 56…第2検出スイッチ(リンク検出部)、 57…電源、 59…電流検出部、 59a…第1電流検出部、 59b…第2電流検出部、 76…第1コイル、 77…第2コイル、 79…固定鉄心、 100…巻上機、 110…昇降路、 120…乗りかご(昇降体)、 121…クロスヘッド、 130…主ロープ、 140…釣合おもり(昇降体) 150…反らせ車、 160…機械室、 170…制御部、 201A、201B…ガイドレール