(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20221013BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
F25B1/00 361D
F25B1/00 101E
F25B1/00 311D
F25B43/00 B
(21)【出願番号】P 2019199401
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2020-06-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018206183
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596034931
【氏名又は名称】エタックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 久行
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】松下 聡
【審判官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/080436(WO,A1)
【文献】特開2010-112655(JP,A)
【文献】特開昭58-16164(JP,A)
【文献】特開平6-50877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B1/00
F25B43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮器と、凝縮器と、膨張機器と、蒸発器とを順に接続して地球温暖化係数が1500以下の低GWP冷媒を循環させる冷凍サイクルを構成し、庫内を冷却する環境試験器の冷却装置において、
前記圧縮器の吸い込み側通路に設けられた吸入温度センサーと、
前記凝縮器の出口側通路に一端部が接続され、吸入温度センサーより上流側に他端部が接続され、前記吸入温度センサーにより開閉されて所定の高温の冷媒を圧縮器に供給しないように迂回しうるバイパス回路と、
圧縮器と凝縮器との間の通路に設けられた吐出温度センサーと、
凝縮器と膨張機器との間に設けられた冷媒を充満させる受液器と、
該受液器と膨張機器の間の通路に一端部が接続され、他端部が圧縮器に接続されて、前記吐出温度センサーにより所定の温度で開閉されて低温の冷媒を圧縮器に供給可能なインジェクション回路とからなっており、
前記バイパス回路が、吸入温度センサーによって作動する第1電磁弁と、該第1電磁弁より下流に設けられた迂回用キャピラリチューブとからなっており、
前記インジェクション回路が、凝縮器の下流と一端が接続され、他端が圧縮器に接続され、間に主キャピラリチューブが設けられた第1回路部と、該主キャピラリチューブと並列に設けられた補助キャピラリチューブと、該補助キャピラリチューブの上流側に設けられた第2電磁弁とからなる第2回路部とからなっており、
前記吐出温度センサーは、圧縮機から吐出される冷媒の検出温度が70℃以上の場合には第2電磁弁がONされて第2回路部が開き、68℃以下になると第2電磁弁がOFFとなり第2回路部が閉じてなり、
前記圧縮器がインバータタイプからなっていることを特徴とする環境試験器の冷却装置。
【請求項2】
バイパス回路の上流がインジェクション回路の上流と同一の通路からなっていることを特徴とする請求項1に記載の環境試験器の冷却装置。
【請求項3】
圧縮器の上流にガスと液体を分離してガスだけを圧縮器に供給させる液分離器を設けていることを特徴とする請求項1または2に記載の環境試験器の冷却装置。
【請求項4】
吸入温度センサーの検出温度が38℃以上の場合には、第1電磁弁がONされてバイパス回路が開き、冷媒を直接に蒸発器に通さずにバイパスさせ、36℃以下になると第1電磁弁がOFFとなりバイパス回路が閉じそのまま冷媒を蒸発器に通してなることを特徴とする請求項2または3に記載の環境試験器の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は低GWP、地球温暖化係数が1500以下の低GWP冷媒を用いた冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却装置にバイパス回路を設けて高温の冷媒を圧縮機に供給せず、凝縮器の上流に迂回させる構成が知られているが、これは省エネのための構成であった。
即ち、従来は、例えば特許文献1に示すように、圧縮機、凝縮器、電子膨張弁、および蒸発器を順に接続して冷凍サイクルを構成し、庫内を冷却する冷却装置において、前記凝縮器の出口側通路に一端部が、前記圧縮機の吸い込み側通路に他端部が接続されているバイパス通路と、該バイパス通路に設けられ前記圧縮機の吸い込み側通路の冷媒圧力が負圧になると開く定圧膨張弁と、前記バイパス通路の前記定圧膨張弁の下流側通路に設けられ該下流側通路を流れる冷媒と前記圧縮機の吐出側通路を流れる冷媒との間で熱交換を行う熱交換器とを備えた構造が提案されており、冷却能力を、最大冷却能力に対して0~100%の範囲で調節可能とし、省エネを実現している。
このような従来の 圧縮機、凝縮器、電子膨張弁、および蒸発器を順に接続した冷凍サイクルで低GWP冷媒を用いる場合には、-40℃時の圧力が従来の冷媒より低くなるため、圧縮機の駆動力を大きくする必要があり、また、蒸発器の蒸発圧力を上げる必要があり、従来構造では安定した運行ができなかった。
なお、従来の冷却装置の模式図を
図2に示す。
ここで、本件発明と共通の冷凍サイクルの構成は共通する符号に「’」を付しており、その説明を省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする問題点は、低GWP冷媒を用いた冷却サイクルに最適な冷却装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために請求項1の発明では、
圧縮器と、凝縮器と、膨張機器と、蒸発器とを順に接続して地球温暖化係数が1500以下の低GWP冷媒を循環させる冷凍サイクルを構成し、庫内を冷却する環境試験器の冷却装置において、
前記圧縮器の吸い込み側通路に設けられた吸入温度センサーと、
前記凝縮器の出口側通路に一端部が接続され、吸入温度センサーより上流側に他端部が接続され、前記吸入温度センサーにより開閉されて所定の高温の冷媒を圧縮器に供給しないように迂回しうるバイパス回路と、
圧縮器と凝縮器との間の通路に設けられた吐出温度センサーと、
凝縮器と膨張機器との間に設けられた冷媒を充満させる受液器と、
該受液器と膨張機器の間の通路に一端部が接続され、他端部が圧縮器に接続されて、前記吐出温度センサーにより所定の温度で開閉されて低温の冷媒を圧縮器に供給可能なインジェクション回路とからなっており、
前記バイパス回路が、吸入温度センサーによって作動する第1電磁弁と、該第1電磁弁より下流に設けられた迂回用キャピラリチューブとからなっており、
前記インジェクション回路が、凝縮器の下流と一端が接続され、他端が圧縮器に接続され、間に主キャピラリチューブが設けられた第1回路部と、該主キャピラリチューブと並列に設けられた補助キャピラリチューブと、該補助キャピラリチューブの上流側に設けられた第2電磁弁とからなる第2回路部とからなっており、
前記吐出温度センサーは、圧縮機から吐出される冷媒の検出温度が70℃以上の場合には第2電磁弁がONされて第2回路部が開き、68℃以下になると第2電磁弁がOFFとなり第2回路部が閉じてなり、
前記圧縮器がインバータタイプからなっていることを特徴とする環境試験器の冷却装置である。
【0006】
請求項2の発明では、
前記バイパス回路の上流がインジェクション回路の上流と同一の通路からなっていることを特徴とする。
請求項3の発明では、
前記圧縮器の上流にガスと液体を分離してガスだけを圧縮器に供給させる液分離器を設けていることを特徴とする。
請求項4の発明では、
前記吸入温度センサーの検出温度が38℃以上の場合には、第1電磁弁がONされてバイパス回路が開き、冷媒を直接に蒸発器に通さずにバイパスさせ、36℃以下になると第1電磁弁がOFFとなりバイパス回路が閉じそのまま冷媒を蒸発器に通してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の冷却装置では、冷凍サイクルに吸入温度センサーと吐出温度センサーとを設けて、蒸発器から導入される冷媒の温度が一定温度より高い場合には、直接に圧縮器を通さずにバイパスさせる回路を設け、また圧縮器から吐出される冷媒が一定温度より高い場合には、冷媒の温度を低下させて圧縮器の温度を下げる液インジェクション回路を設けることで、低GWP冷媒の圧力を高める。
またそのために低GWP冷媒は、受液器を設けて充満させておき、膨張機器の導入口まで満たしておく。
また、圧縮器をインバータ構造とすることで、圧縮器の大型化を避けることができる。
このようにして、低GWP冷媒を用いても、従来同様の冷却能力を有する冷却サイクルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、この発明の好適実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は実施例1の冷却装置10を備えた装置、図示例では環境試験器1を示す。
この冷却装置10は、圧縮器2と、凝縮器3(図示例では空冷凝縮器)と、膨張機器4と、蒸発器5とを順に接続しており、低GWPの冷媒を循環させる冷凍サイクルを構成し、環境試験器1の試験室1a内を冷却する構造からなっている。
なお、従来技術を除き、本明細書で単に「冷媒」という場合も低GWP冷媒のことをいう。
【0011】
前記圧縮器2の吸い込み側通路に吸入温度センサーS1が設けられる。
また、前記凝縮器3の出口側通路に一端部が接続され、吸入温度センサーS1より上流側に他端部が接続され、前記吸入温度センサーS1の検知温度により開閉されて所定以上の高温の冷媒を圧縮器2に供給しないように迂回させるバイパス回路C1が設けられている。
【0012】
また、圧縮器2と凝縮器3との間の通路には吐出温度センサーS2が設けられ通過する冷媒の温度が検知される。
更に、凝縮器3と膨張機器4との間に、循環する冷媒を充満させる受液器6が設けられる。
本実施例では、受液器6と膨張機器4の間の通路に一端部が接続され、他端部が圧縮器2に接続されて、前記吐出温度センサーS2により所定の温度で開閉されて低温の冷媒を圧縮器2に供給可能なインジェクション回路C2が設けられている。
【0013】
前記バイパス回路C1は、吸入温度センサーS1によって作動する第1電磁弁V1と、該第1電磁弁V1より下流に設けられた迂回用キャピラリチューブbとからなっている。
前記インジェクション回路C2は、凝縮器3の下流と一端が接続されて分岐され、他端が圧縮器2に接続される回路で、通路間に常開されて低温の冷媒を圧縮器2に供給する主キャピラリチューブaが設けられた第1回路部C21と、該キャピラリチューブaと並列に設けられた補助キャピラリチューブcと、該補助キャピラリチューブcの上流側に設けられた第2電磁弁V2とからなる第2回路部C22とからなっている。
【0014】
そして、本実施例では、バイパス回路C1の上流がインジェクション回路C2の上流と同一の通路からなっている。
また、前記圧縮器2の上流には冷媒のガスに混入している液体を分離してガスだけを圧縮器2に供給させる液分離器7が設けられている。
なお、環境試験器1内で、符号11は加湿ヒーター、12は加温ヒーター、13は試験室循環用送風器、14は乾球センサー、15は湿球センサーである。
【0015】
本実施例は、上記構成からなっているので、冷凍サイクルに吸入温度センサーS1と吐出温度センサーS2とを設けてそれぞれの場所で冷媒の温度を検知する。
そして、吸入温度センサーS1は、蒸発器5から導入される冷媒の温度が所定の温度である場合に第1電磁弁V1をON/OFF制御してバイパス回路C1を開閉する。
例えば、吸入温度センサーS1の検出温度が、38℃以上の場合には第1電磁弁V1がONされてバイパス回路C1が開き冷媒を直接に蒸発器5に通さずにバイパスさせる。
次に、36℃以下になると第1電磁弁V1がOFFとなってバイパス回路C1が閉じ、そのまま冷媒を蒸発器5に通す。
(蒸発器5に冷媒が流れないのは圧縮器2が起動していない場合)
【0016】
同様に、吐出温度センサーS2は、圧縮器2から吐出される冷媒の温度が所定の温度である場合に第2電磁弁V2をON/OFF制御して第2回路部C22が開閉される。
例えば、吐出温度センサーS2の検出温度が、70℃以上の場合には第2電磁弁V2がONされて第2回路部C22が開き、68℃以下になると第2電磁弁V2がOFFとなり第2回路部C22が閉じる。
【0017】
これにより、インジェクション回路C2は、第1回路部C21は常時開いているが、70℃を超えると、第2回路部C22が開いて、主キャピラリチューブaと補助キャピラリチューブcとを通る冷却された冷媒が圧縮器2に導入されて圧縮器2を冷却することができ、68℃以下になると第2回路部C22が閉じて、主キャピラリチューブaだけを通る冷却された冷媒が圧縮器2に導入される。
また、前記第1電磁弁V1がONになっている場合には、バイパスされた冷媒がインジェクション回路C2と同時に圧縮器2を冷却することができる。
【0018】
また、本実施例では、低GWP冷媒は、受液器6を設けて通路内に充満させておき、膨張機器4の導入口まで隙間無く満たしているので、冷媒を効率的に騒音や振動を生じさせることなく循環させることができる。
更に、圧縮器2は本実施例でインバータ構造としている。
これにより、低GWP冷媒では従来に比べて冷却時に大きな圧力を必要とするが、圧縮器2の大型化を避けてインバータ方式で適切な圧力を供給させることができて好ましい。
【0019】
上記実施例では低GWP冷媒の一例としてASHRAE番号R-448Aを用いた場合を例示したが、この発明では低GWP冷媒であれば上記冷媒に限定されない。
この発明は上記構成に限定されるものではなく、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 環境試験器
1a 試験室
2 圧縮器
3 凝縮器
4 膨張機器
5 蒸発器
6 受液器
7 液分離器
10 冷却装置
C1 バイパス回路
C2 インジェクション回路
S1 吸入温度センサー
S2 吐出温度センサー
V1 第1電磁弁
V2 第2電磁弁
a 主キャピラリチューブ
b 迂回用キャピラリチューブ
c 補助キャピラリチューブ