(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】活性成分の制御放出のための多糖類マトリックスを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20221013BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221013BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221013BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20221013BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20221013BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20221013BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20221013BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K47/36
A61K9/10
A61K31/573
A61K31/196
A61K31/5415
A61K31/407
A61P19/02
(21)【出願番号】P 2019503349
(86)(22)【出願日】2017-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2017068085
(87)【国際公開番号】W WO2018015364
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】102016000075246
(32)【優先日】2016-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519015771
【氏名又は名称】ジョインセラピュイティクス エッセ.エッレ.エッレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モルプルゴ,マルゲリータ
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキニ,ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】カレガロ,ロンフランコ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-537597(JP,A)
【文献】特表2013-504570(JP,A)
【文献】特開平07-252144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0272877(US,A1)
【文献】特表2013-537219(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104971039(CN,A)
【文献】特表2013-543843(JP,A)
【文献】HYUN CHOI KYU,HYALURONIC ACID GEL FORMULATION CONTAINING PIROXICAM : HYDROXYPROPYL-β-CYCLODEXTRIN 以下備考,BIOMATERIALS RESEARCH,2008年11月26日,VOL:13, NR;1,PAGE(S):1 - 6,http://www.ksbm.or.kr/pub/13-1(1).pdf,INCLUSION COMPLEX FOR INTRA-ARTICULAR DELIVERY
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリンと活性成分とからなる包接化合物を含む組成物であって、
シクロデキストリンと活性成分とからなる包接化合物が、ヒアルロン酸及び/又はその塩とキトサンオリゴ糖のラクトース誘導体とで形成された多糖類ポリマーマトリックスの水溶液中に均質に分散しており、該キトサンオリゴ糖のラクトース誘導体が、キトサンD-グルコサミンの還元的アミノ化反応で得られ、且つ、アミン基のラクトース置換度が少なくとも40%である、組成物。
【請求項2】
シクロデキストリンが、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンエーテル誘導体並びにそれらの混合物から選択され、その1つ以上のヒドロキシル基が、C
1-6-アルキル基、ヒドロキシ‐C
1-6-アルキル基、カルボキシ‐C
1-6-アルキル基、C
1-6-アルキルオキシカルボニル基又はC
1-4-スルホアルキル基で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
シクロデキストリンが、2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン,2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン,2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン,(2-カルボキシメトキシ)プロピル-β-シクロデキストリン,2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル(7)-β-シクロデキストリンから選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
シクロデキストリンが、スルホブチルエーテル(7)-β-シクロデキストリン,2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及び2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ヒアルロン酸及び/又はその塩の平均分子量が500~10,000kDaである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ヒアルロン酸及び/又はその塩の平均分子量が500~2,000kDaである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
キトサンオリゴ糖のラクトース誘導体の平均分子量が500~1,000kDaであり、残留アセチル化度が10~20%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
キトサンオリゴ糖のラクトース誘導体の置換度が50~70%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
シクロデキストリンが1~30w/v%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ヒアルロン酸及び/又はその塩とキトサンオリゴ糖のラクトース誘導体とで形成された多糖類ポリマーマトリックスが0.5~4w/v%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ヒアルロン酸及び/又はその塩、および、キトサンオリゴ糖のラクトース誘導体、の各々が0.25~2w/v%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
キトサンオリゴ糖のラクトース誘導体に対するヒアルロン酸及び/又はその塩の重量比が1:3~10:1(ヒアルロン酸:キトサンオリゴ糖のラクトース誘導体)である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
キトサンオリゴ糖のラクトース誘導体に対するヒアルロン酸及び/又はその塩の重量比が1:1~5:1(ヒアルロン酸:キトサンオリゴ糖のラクトース誘導体)である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
活性成分が、抗感染薬、コルチコステロイド及び非ステロイド系抗炎症薬から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
活性成分が、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、ジクロフェナク、ピロキシカム、ケトロラク及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
急性及び慢性の炎症状態を特徴とする筋骨格系疾患の局所領域的治療に使用される、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
筋骨格系疾患が急性及び慢性の骨関節疾患である、請求項
16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロデキストリンからなる包接化合物と多糖類ポリマーマトリックスの水溶液中に均質に分散された活性成分とを含む新規組成物、及び、薬理学的作用と関節内補充療法的作用の組み合わせを必要とする炎症状態を特徴とする筋肉骨格障害等の疾患におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、変形性関節症は、軟骨、骨、靭帯、半月板、関節包、滑膜、筋肉及び神経組織等のその全組織を含む関節全体の病理として認識されている。そして、一般的に疼痛、しびれ、硬直、柔軟性の喪失、刺激、及び骨棘形成を含む症状によって特徴付けられる(非特許文献1;非特許文献2)。
【0003】
この疾患に関連する様々な危険因子の中には、性別、年齢、肥満、遺伝的素因、関節力学、代謝因子、及び急性関節外傷がある。多くの場合、様々な種類の変形性関節症は、疾患の発症と進行に関与する様々な危険因子に関連している(非特許文献3;非特許文献4)。
【0004】
例えば、約12%の変形性関節症の原因となる急性の外傷性事象の場合、滑液中の炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)のレベルが上昇し、その結果、タンパク質分解を引き起こし、軟骨基質の損失を引き起こす可能性がある潜在的な拡散が軟骨内に生じる(非特許文献5;非特許文献6)。
【0005】
今日まで多くの活性成分がリウマチ性疾患(DMARD)の進行を緩和するために利用可能となっているが、それらは変形性関節症(DMOAD)の進行を阻止又は逆行させるためには同等に利用することができない(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。
【0006】
この点において、グルココルチコイド等の抗異化作用と同化促進作用を有するいくつかの活性成分が同定されていることを忘れてはならず、それらは心的外傷後変形性関節症(PTOA)に関連する軟骨基質損失の予防と治療に有用であることが判明している(非特許文献8;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。
【0007】
しかしながら、いずれの候補も安全性/有効性の基準を満たしておらず、特に全身性副作用の発生率と重症度が多数の臨床試験の失敗の決め手となったことが証明されている(非特許文献9)。
【0008】
現在、変形性関節症治療は、病気の進行を阻止することができ、逆行させる可能性のある薬理学的療法がないにも関わらず、症状の改善を目標としている。そして、一般的に処方されている治療法は、パラセタモール、ステロイド(コルチコステロイド)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの鎮痛薬、及びオピオイドの投与である。NSAIDを用いた薬理学的治療は最も一般的に使用されているものの1つであり、統計的に有意な鎮痛効果を得ることができる。しかし、この種の薬物の使用は、消化管合併症、心血管リスク、腎毒性などのいくつかの副作用と関連している(非特許文献13)。
【0009】
抗炎症薬と免疫抑制ステロイド薬の使用は当然に別の主な治療法であり、そして関節内におけるオンサイト送達は、良好な短期間(1~2週間)の痛みの軽減をもたらす。しかしながら、この薬理学的治療もまた知られているように、炎症、関節血症、関節感染症、結晶性関節症、関節骨萎縮症、及びステロイド関節症などの副作用に関連している。
【0010】
変形性関節症を治療する別の戦略は、滑液の粘弾性と生来の恒常性を回復することができる、ヒアルロン酸又はその誘導体をベースにした医療装置の使用である。関節に直接注入される水性製剤の形態で、そのレオロジー粘度及び粘弾性の特性を実現するヒアルロン酸とその架橋誘導体によって、下記のようないくつかの利点を変形性関節症の治療において得ることができた:関節痛の軽減と抑制、関節潤滑、関節症関連機能障害の改善、及び関節機能の正常化(非特許文献13、非特許文献14)。
【0011】
架橋ヒアルロン酸の使用は、直鎖ヒアルロン酸の使用と比較してより高い副作用の発生と関連するとはいえ、ヒアルロン酸及び/又はその誘導体を用いた治療の利点の1つは、副作用を注射部位で起こり得る炎症に限定する高い安全性プロファイルである(非特許文献13、非特許文献15、非特許文献16)。
【0012】
これらの全ての特徴の結果、今日では関節内補充療法は薬理学的療法に代わるものと考えられており、特に軽度の変形性関節症の治療に適している(非特許文献13)。また最近の研究は、ヒアルロン酸と非ステロイド系抗炎症薬を併用した関節内投与は、ヒアルロン酸単独よりも優れた効果を得ることを可能にすると報告している(非特許文献17)。
【0013】
そのため、特に変形性関節症の重症度の具体的な程度に応じて、特定の活性成分の抗炎症作用や免疫抑制作用と、ヒアルロン酸やその誘導体等のバイオポリマーをベースとする処方物の周知の潤滑性や粘弾性特性を結び付けることを可能にする治療ができるという観点から、関節内補充療法と薬理学的治療の組み合わせがますます注目を集めている。
【0014】
この点に関して、トリアムシノロンアセトニド等のコルチコステロイドの存在下、ポリマーマトリックスからの薬物放出が制御されて起こる架橋ヒアルロン酸誘導体をベースとする水性組成物が記載されている(特許文献1)。それに続き、トリアムシノロンヘキサセトニド等のコルチコステロイドを添加した架橋ヒアルロン酸の水性製剤も報告されている(特許文献2)。
【0015】
同様に、ポリマー微粒子からトリアムシノロンアセトニドを放出する水性系が記載されている。ここではポリマーはヒアルロン酸ではなく、乳酸とグリコール酸のコポリマーである(特許文献3)。上記の系では、活性成分は水に不溶であり、ポリマーマトリックスと賦形剤(例えば、PEG、ポリソルベート及びその他のもの)の使用との組み合わせによって均質に分散される。これらの系からの薬物放出は、賦形剤の種類や量、及びポリマーマトリックスの分解によって決定される。
【0016】
水性非経口製剤における活性成分の使用に関連する主な問題の1つは、それ自体が本質的に水溶性に乏しいことである。この問題は、シクロデキストリン等の可溶化剤の使用を含む多くの方法で対処されてきた。シクロデキストリンは様々な医薬製剤において賦形剤として広く使用されている。例えば、ジクロフェナク、ポリソルベート及びシクロデキストリンの注射用水性医薬製剤は、特許文献4に記載されている。
【0017】
より一般的には、シクロデキストリンを用いたトリアムシノロン等の他の活性成分の水可溶化はいくつかの刊行物に記載されている(非特許文献18、非特許文献19)。シクロデキストリン-活性成分の組み合わせは、活性成分への有意な効果だけではなく、活性成分自体の生体膜透過性への有意な効果も示すことが報告されている(非特許文献20)。
【0018】
シクロデキストリンとグリコサミノグリカンファミリーに属する多糖類との組み合わせは文献に記載されており、特にそれらの組み合わせは、特許文献5に報告されるように、変形性関節症治療用の関節内製剤の製造に有用であることが示されている。注射用組成物を製造するために、シクロデキストリンを医薬活性成分とヒアルロン酸等のバイオポリマーの組み合わせに使用することは、いくつかの報告に記載されている。特許文献6は、PEGやポリソルベート等の賦形剤によって安定化されたヒアルロン酸、シクロデキストリン及びピロキシカムの水性組成物を記載している。この組成物は変形性関節症の動物モデルにおいても試験され、その結果、ヒアルロン酸単独の使用に対して有意な改善がみられた(特許文献7、非特許文献21)。
【0019】
ヒアルロン酸、シクロデキストリン及び活性成分がベースの製剤の主な利点の1つは、薬物がマトリックス中に完全に又は部分的に可溶化されるので、析出物及び/又は結晶の存在に関連する結晶性関節症等の問題の発生が制限されることである。さらにシクロデキストリンの添加によって得られる様々な医薬形態は、活性成分のより有効な使用を可能にでき、従って治療効果の達成に必要な薬物の量を低減できるので、ステロイド関節症や軟骨萎縮等の他の副作用の発生が制限され得る。一方、この戦略の主な制限の1つは、シクロデキストリンや別の賦形剤の存在下又は非存在下において、架橋バイオポリマーと活性成分からなる系で観察されるものとは対照的に、マトリックスからの薬物放出を制御する能力が低いことである(非特許文献22)。
【0020】
他方、先に報告されたように、変形性関節症の治療に使用する関節内補充療法用の薬剤の製造に架橋ポリマーマトリックスを使用することは、副作用のより高い発生率のために不利である。これらを考察すると、均質に分散された活性成分をその中に有し、その放出が制御された直鎖バイオポリマーからなる液体注射用組成物の獲得は、変形性関節症の治療に改善をもたらし得ることが分かる。
【0021】
これまでに明らかにされた技術的課題は、水性マトリックス中の活性成分の完全かつ均一な可溶化又は分散、その安定化、及びそれからのその制御放出に関する。
【0022】
この課題に対する解決方法は、少なくとも2つのポリマー、又は共有結合を形成することなく可逆的に相互作用することができる2つの異なるポリマードメインの存在に本質的に基づく新しいタイプの組成物であろう。それは直鎖バイオポリマーの典型的な安全性プロファイルを維持し、同時にポリマーマトリックスからの活性成分の拡散、すなわち放出を調節できる動的マトリックスを提供することができる。シクロデキストリン及び他の賦形剤/分散剤を系に添加することにより、最終的に活性成分を均質に分布させ、その物理的形態を安定化させて、ポリマーマトリックスからのその拡散を確実にし、調節する。特許文献8には、ヒアルロン酸等のポリアニオン、及び還元糖を用いた還元的アミノ化反応によって得られるキチンやキトサン誘導体等のポリカチオンからなる多糖類混合物が記載されている。
【0023】
異なる電荷を有する高分子電解質であり、原則として水溶液中では互いに相溶しない2種の多糖類が、高い粘度と粘弾性を特徴とするコアセルベートを形成することなく、均質に分散した水溶液を生じることが示されているため、記載された組成物は特に興味深い。実際、キトサンの誘導体化は、キトサンとポリアニオンバイオポリマー、例えばアルギン酸やヒアルロン酸との水溶液中での相溶性を改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】米国特許出願公開第2011/0033540号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0059918号明細書
【文献】国際公開第2014/153384号
【文献】欧州特許出願公開第1609481号明細書
【文献】国際公開第2015/092516号
【文献】国際公開第2013/133647号
【文献】国際公開第2014/200211号
【文献】欧州特許出願公開第2021408号明細書
【非特許文献】
【0025】
【文献】Le Graverand-Gastineau M-PH et al.,Curr Drug Targets,2010,5,528-35
【文献】Felson DT et al.,Arthritis Reum 2004,50(2),341-4
【文献】Wieland HA et al,Nat Rev Drug Discov 2005,4(4),331-44
【文献】Bay-Jensen A-C et al.,Rheumatol Int 2010,30(4),435-42
【文献】Irie K et al.,Knee 2003,10(1),93-6
【文献】Kapoor M et al.,Nat Rev Rheumatol 2011,7,33-42
【文献】Le Graverand-Gastineau M-PH et al.,Curr Drug Targets 2010,5,528-35
【文献】Hunter DJ,Nat Rev Rheumatol 2011,7,13-22
【文献】Matthews GL et al.,Expert Opin Emerg Drugs 2011,16(3),479-91
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【文献】Park CW et al,Biomol Ther 2014,22(3),260-66
【文献】Quaglia F et al.,J Control Rel 2001,71,329-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従って、本発明の目的は、筋骨格疾患の慢性及び急性疾患であって、薬理学的効果に加えて関節内補充療法効果の提供が望まれる炎症疾患であることを特徴とする疾患の治療に使用する、非架橋水性ポリマーマトリックスからの活性成分の放出を調節できる組成物を提供することである。
【0027】
従って、本発明の第1の態様における対象は、シクロデキストリンと活性成分からなる包接化合物を含む組成物であって、シクロデキストリンと活性成分の包接化合物が、ヒアルロン酸とキトサンオリゴ糖のラクトース誘導体で形成された多糖類ポリマーマトリックスの水溶液中に均質に分散しており、該キトサンオリゴ糖のラクトース誘導体が、アミン基のラクトース置換度が少なくとも40%であり、キトサンD‐グルコサミンの還元的アミノ化反応で得られる組成物である。
【0028】
シクロデキストリンの寄与により、多糖類ポリマー混合物は活性成分が均質に分散されたマトリックスを形成し、そこから多糖類組成物自体とシクロデキストリンの種類の働きで放出される。
【0029】
本発明の組成物は、活性成分が水に不溶である場合、活性成分の物理化学的安定化、水性環境におけるその完全又は部分的可溶化、及びその放出の制御を可能にする。水溶液中の多糖類ポリマーマトリックスであり、当該組成物は粘度及び/又は粘弾性を特徴とする水性組成物である。この特性により、薬理学的作用と関節内補充作用の組合せが必要とされる筋骨格疾患の様々な段階の治療におけるこれらの組成物の優先的な使用が可能になる。
【0030】
従って、本発明の第2の態様における対象は、炎症状態を特徴とする筋骨格系疾患、好ましくは急性又は慢性の骨関節疾患の局所領域的治療において使用される組成物である。
【0031】
本発明によって達成可能な利点は、以下の詳細な説明から、また以下の図面を参照して、当業者により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、0.75%(w/v)のキトラック(CTL)水溶液を含む又は含まない0.75%(w/v)のヒアルロン酸水溶液(HA)のマトリックスに分散したシクロデキストリン SBECD+トリアムシノロンアセトニド(TA)包接化合物の30%(w/v)水溶液の放出動態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の薬理学的活性成分(APIと略す)を放出するための組成物は、多糖類ポリマーマトリックスからなり、該多糖類ポリマーマトリックスでは、APIと、錯体形成によって活性成分を含むシクロデキストリンによって形成される包接化合物が均質に分散されている。該ポリマーマトリックスは、粘度及び粘弾性のレオロジー特性を有する多糖類混合物の水溶液からなり、それはヒアルロン酸とキトサンのラクトース誘導体(以下、略して「キトラック」と称する)からなるので、当該組成物は本質的にヒドロゲルである。またそれは、他の賦形剤及び/又は分散剤、ポリソルベート等の界面活性剤、ポリエチレングリコール、及びポロキサマーを含むことができる。
【0034】
特別の定めのない限り、本発明において、ヒアルロン酸(HA)、キトラック(CTL)、シクロデキストリン(CD)、ポリソルベート、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、及び薬理学的活性成分は、以下の意味を意図する:
【0035】
「ヒアルロン酸」は、ヒアルロン酸及びその薬学的に許容される塩の形態を意味する。換言すると、本明細書において「ヒアルロン酸」とは、ヒアルロン酸、薬学的に許容されるヒアルロン酸塩、及びヒアルロン酸とヒアルロン酸塩との混合物をいう。ヒアルロン酸塩は、好ましくは、ナトリウム及びカリウム等のアルカリカチオンを有する無機塩を含む。必要に応じて、上記化合物を2種以上用いてもよい。本発明において、ヒアルロン酸の分子量(以下、MWと称する)は特に制限されないが、500~10,000KDa、好ましくは500~2,000KDaの範囲が推奨される。MWは固有粘度測定とMark-Hawking方程式における補外法を用いて決定する。本明細書で使用する用語「分子量」は、重量平均分子量をいう。通常、重量(平均)分子量を算出するための測定方法はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)である。
【0036】
最後に、ヒアルロン酸は、様々な天然源から、又は組換え技術による発酵法によって得ることができる。
【0037】
「キトラック」は、キトサンD-グルコサミンのアミン基の置換によりラクトースで適切に官能化されたキトサン誘導体を意味する。この誘導体を得るために使用可能なキトサンは、いくつかの天然源から(例えば、キチン脱アセチル化によって)、又は組換え技術の方法によって得ることができ、平均分子量(MW)が、1,000KDaまで、好ましくは500~600kDa、より好ましくは200~400kDaである。MWはゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定する。当該キトサンは、好ましくは90%までの脱アセチル化度を有し、残留アセチル化度が10~20%のものが好ましい。さらに、本発明の目的のためには、キトサンD-グルコサミンのアミノ基のラクトース置換度は少なくとも40%である。当該オリゴ糖によるキトサンのアミノ基の置換度は、好ましくは50%~70%の範囲であり、より好ましくは60%である。
【0038】
本発明の目的のために、シクロデキストリン及びそれらの誘導体は、包接錯体(包接化合物とも呼ばれる)を活性成分と共に形成してそれを取り込み、ビヒクル及びその放出を制御する手段として作用する機能を有する。
【0039】
本発明において、用語「シクロデキストリン」は、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンエーテル誘導体を意味する。通常、これらのエーテル又はエーテルの混合物には、β‐シクロデキストリン及びγ‐シクロデキストリンが含まれ、1つ以上のヒドロキシル基が、C1-6-アルキル基、ヒドロキシ‐C1-6-アルキル基、カルボキシ‐C1-6-アルキル基、又はC1-6-アルキルオキシカルボニル基で置換されている。好ましくは、これらの化合物には、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンが含まれ、1つ以上のヒドロキシル基が、C1-3-アルキル基、ヒドロキシ-C2-4-アルキル基、カルボキシ-C1-2-アルキル基で置換され、より好ましくはメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、カルボキシメチル基、又はカルボキシメチル基で置換されている。本発明において言及される「シクロデキストリン」は、またβ-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンを含むエーテルで構成されてもよく、1つ以上のヒドロキシル基が、スルホアルキル-C1-4-エーテル基で置換されている。この場合、スルホプロピルエーテル β-シクロデキストリン及びスルホブチルエーテル β-シクロデキストリンの両方が適切である。
【0040】
上記の「シクロデキストリン」は、0.125~3、より好ましくは0.3~2の範囲を含む置換度(DS、グルコース1単位当たりのヒドロキシル官能基の置換度)を有する。さらに、1つ以上のヒドロキシル基が、マルトース、グルコース、及びマルトトリオース等の糖類基で置換されていてもよい。
【0041】
本発明における「シクロデキストリン」の例として以下が挙げられる:2,6-ジメチル-β-シクロデキストリン,2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン,2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン,(2-カルボキシメトキシ)プロピル-β-シクロデキストリン,2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン,スルホブチルエーテル(7)-β-シクロデキストリン。またこれらの中で好ましいものはスルホブチルエーテル(7)-β-シクロデキストリン(以下、SBECDと称す),2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(以下、ΗΡβCDと称す),及び2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(以下、HPγCDと称す)である。
【0042】
「ポリソルベート」とは、実質的に、ポリソルベート20、ポリソルベート60、及びポリソルベート80等の市販品を意味する。
【0043】
本発明において、「ポリエチレングリコール」は、200~100,000Daの範囲に含まれる平均分子量を有し、その構造がヒドロキシル末端基と、例えば、アミン、カルボキシ及びヒドロキシル基から選択される開始基(initiator group)の存在を意図するポリエチレングリコールを意味する。分子量は任意とすることができ、好ましくは、400~10,000の範囲の平均分子量を有する。直鎖ポリマーと分岐ポリマーの両方を使用することができる。本発明において、ポロキサマーは、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンのコポリマー、又は商品名プルロニック(商標)F‐68、プルロニック F‐127又はポロキサマー(商標)、ポロキサマー 188として公知のブロックポリマーを意味する。
【0044】
本発明における「薬理学的活性成分」(以下、APIと称す)は、それらの水溶液中での可溶性又は不溶性とは無関係に、例えば抗生物質等の抗感染薬、抗関節炎薬、コルチコステロイド及び非ステロイド系抗炎症薬から選択される。本発明における活性成分の例は、コルチコステロイドとしてはトリアムシノロンアセトニド及びトリアムシノロンヘキサセトニドから選択され、また非ステロイド系抗炎症剤としてはジクロフェナク、ピロキシカム、ケトロラク及びイブプロフェンの薬学的に許容される形態から選択される。
【0045】
有利には、本発明の目的については、放出制御はシクロデキストリン、ヒアルロン酸、及びキトラックの特定の組み合わせに依存する。事実、一方では、溶液中の化学種の拡散は、媒体の粘度-従って、ヒアルロン酸とキトラックの量及び比率-の影響を受けることが知られている。本発明者らは、ポリマーマトリックスと包接化合物との相互作用に基づいて、同じキトラック/HYACの組み合わせから、様々なシクロデキストリンに同じAPIが含まれる包接化合物を様々な手法で放出する方法で、さらなる程度の制御の導入が可能であることを見出した。
【0046】
ヒアルロン酸及びキトラックからなる多糖類マトリックスは、0.5%~4%の間に含まれる。そして各々の多糖類成分は、それぞれ0.25%~2%の間に含まれる。ヒアルロン酸とキトラックとの比は、1:3~10:1、より好ましくは1:1~5:1である。
【0047】
シクロデキストリンは1%~30%の間に含まれる。具体的な量は、可溶化される薬理学的活性成分の実際の量に依存する。一般的に、活性成分に対するシクロデキストリンの比は、3~100の範囲である。製剤中に均質に分散された活性成分は、0.05重量%~2.50重量%の間に含まれる量で存在する。具体的な量は、活性成分の種類とその治療投薬量により異なる。
【0048】
最後に、ポリマーマトリックスとシクロデキストリンによって決定される薬物放出制御を妨害することなく、ポリソルベート、ポロキサマー、及びプロピレングリコールを使用して組成物を安定化させることができる。通常、それらの量は、ポリソルベート及びポロキサマーの場合には0.02重量%~0.10重量%の間であり、一方ポリエチレングリコールの場合には0.5重量%~10重量%の間である。
【0049】
本発明はさらに、非架橋多糖類及びシクロデキストリンを使用する、活性成分の制御放出のための新規マトリックスを調製する方法を提供する。簡潔には、シクロデキストリン、活性成分及び任意の賦形剤を水性溶媒中で混合し、使用するシクロデキストリン及び賦形剤の量に応じて、活性成分の可溶化に十分な時間、系を撹拌する。次いで、キトラックの水溶液を添加し、撹拌しながら、ヒアルロン酸を固体で添加する。得られた配合物を均質な調製物が得られるまで撹拌する。本発明において通常使用される溶媒は、食塩水又はリン酸緩衝食塩水である。
【0050】
シクロデキストリン及び賦形剤の存在下、本発明における活性成分を放出するための非架橋多糖類マトリックスの使用は、活性成分を含有する注射用粘弾性組成物を得ることを可能にする。シクロデキストリンとAPIの大きさ及び電荷の具体的な組み合わせに基づき、シクロデキストリンAPI包接化合物と高分子電解質マトリックスとの間の超分子相互作用の前例のない調整によって、その放出は、架橋ポリマーマトリックスを使用することなく、ポリマーの相対量とシクロデキストリンの種類に従って調節することができる。
【0051】
包接化合物の電荷及び大きさは、高分子電解質マトリックスを通過する拡散において重要な役割を果たす。驚くべきことに本発明者らは、同じAPIと異なるシクロデキストリンから得られる異なる包接化合物は、ポリマーマトリックスが存在しなくても異なる放出速度により特徴付けられることを見出した。また高分子電解質マトリックスの添加は、包接化合物とポリマーマトリックスとの間の特異的相互作用に関連する放出動態のさらなる調整を可能にすることも見出した。
【0052】
本発明の本質を説明するために、以下に具体的な実施例を参照しながら本発明を詳細に説明する。しかしながら、報告された実施例は様々な変形や修正を受けることを前提としている。またこれは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者に明らかなように、以下の実施例は、本発明を十分に説明することを意図している。
【0053】
以下の実施例から明らかなように、シクロデキストリンとヒアルロン酸の配合物を組み合わせることによって活性成分の溶解度が変化することが見出された。キトラック、又はキトラック及びヒアルロン酸のいずれかを添加したシクロデキストリン-活性成分系についても同様のことが観察されるであろう。
【0054】
見出された溶解度の変化は、シクロデキストリン-活性成分包接化合物に対するポリマーマトリックスの様々な影響に起因し得る。同じ濃度及び同じ種類のシクロデキストリン及び活性成分における可溶化力の相違は、使用される多糖類の種類、他の多糖類の共存、及び2つの多糖類間の具体的な比率に依存することが見出された。いかなる理論にも束縛されるものではないが、考えられる説明は、様々な多糖類の比率が異なる様々な特性の可溶性高分子電解質を含有する溶液を生成し得るということであろう。
【0055】
これらの様々な超分子マクロ構造が、シクロデキストリン-活性成分包接化合物を様々に安定化できると推測することが可能である。従って結局のところ、様々な可溶化度を可能にし、それによりマトリックスを介して包接化合物の安定化及び拡散に影響を与える。シクロデキストリンの可溶化能力に対するポリマー成分の影響は、文献において議論されている(Loftsson et al,Journal of Pharmaceutical Sciences 2012,101,3019-32)。しかしながら、マトリックスを介してのシクロデキストリン-薬物包接錯体の溶解度と拡散に対するポリカチオン及びポリアニオン多糖類成分の相乗効果に関する示唆はない。
【0056】
賦形剤としてポリソルベート及び/又はPEGなど他のポリマー又は界面活性剤を添加しても、CD+API包接錯体の分散/可溶化に有意な影響を及ぼさないようである。従って、多糖類マトリックスと組み合わせてそれらを使用することを妨げるものではない。
【0057】
しかしながら、系に多糖類マトリックスを与えないと、活性成分の放出はますます急速になり、一方、系にヒアルロン酸等の単一ポリマー成分を導入すると放出速度を遅くできることに留意すべきである。さらに両方のポリマーが系中に存在する場合、活性成分放出のさらなる減速が観察される。また驚くべきことに、ひとつのシクロデキストリンを別のシクロデキストリンに交換すると、より速い又はより遅い放出系の設計が可能になる。
【実施例】
【0058】
活性医薬成分の制御放出のための、シクロデキストリンとAPI包接化合物がポリアニオン及びポリカチオンの多糖類マトリックス中に分散されている本発明の組成物の調製は、個々の組成物成分の効果を毎回調査することにより行われた。以下の実施例に記載される実験は、以下の多糖類を用いて行われた。
【0059】
ヒアルロン酸(HA):ヒト投与に適した医薬グレード;1~1.6MDa(1000~1600kDa);バイオ発酵によって得られた。
【0060】
塩酸キトラック(CTL):キトラック水溶液に塩酸水溶液pH2.5に達するまで添加することにより、塩酸キトラックを得た。次いで、メタノールを用いてポリマー塩を沈殿させ、焼結ガラスフィルター(グーチ)で濾過し、回収した固体をメタノール(3×)で洗浄し、乾燥した。塩の調製に使用するキトラックは、50~70%のラクトース置換度を特徴とし、約15%の残留アセチル化度を有する200~400kDaのキトサンから得られた。
【0061】
既知濃度の多糖類貯蔵液を、注射用溶液に水を用いて下記のように調製した。
【0062】
2%キトラックのPBS溶液(1×):1.6gの塩酸キトラックを66.08mLの注射用水に溶解し、次いで得られた溶液に5.92mLの0.5M NaOHを滴下して加えた。次に該溶液に8mLの10×リン酸緩衝食塩水(PBS 10×:1370mM NaCl、27mM KCl、81mM Na2HPO4、17.6mM NaH2PO4)を加え、さらに15分間撹拌した。
【0063】
実施例1:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、30%)を含むヒアルロン酸(HA、0.25%)とキトラック(CTL、0.75%)のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む水性組成物
【0064】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリンを3.125mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、次いで22mgのトリアムシノロンアセトニドを加え、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。次に、リン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に2%(w/v)のキトラック溶液1.875mLを加え、系を15分間攪拌し、次に37.5mgのヒアルロン酸を加えた。こうして得られた混合物を60℃で2時間撹拌し、次いで室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0065】
【0066】
実施例2~8:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、15及び30%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%及び0.27%)を含む水性組成物
【0067】
実施例1に説明した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例2~8の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0068】
【0069】
実施例9:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、30%)とポリソルベート(0.05%)を含むヒアルロン酸(HA、0.75%)とキトラック(CTL、0.50%)のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、1.2%)を含む水性組成物
【0070】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリンを3.75mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、次いで2.5mgのポリソルベート20と60mgのトリアムシノロンアセトニドを続けて加え、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。次に、リン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に2%(w/v)のキトラック溶液1.25mLを加え、系を15分間攪拌し、次に37.5mgのヒアルロン酸を加えた。こうして得られた混合物を60℃で2時間撹拌し、次いで室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0071】
【0072】
実施例10~11:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、15%)とポリソルベート(0.05%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、1.2%)を含む水性組成物
【0073】
実施例9に説明した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例10~11の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0074】
【0075】
実施例12:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、15%)、ポリソルベート(0.05%)及びPEG5000(9%)を含むヒアルロン酸(HA、0.75%)とキトラック(CTL、0.50%)のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、1.2%)を含む水性組成物
【0076】
0.75gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリンを3.125mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、次いで2.5mgのポリソルベート20と、0.45gのポリエチレングリコール(PEG5000)と、60mgのトリアムシノロンアセトニドを続けて加え、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。次に、リン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に2%(w/v)のキトラックを含む溶液1.875mLを加え、系を15分間攪拌し、次に60mgのヒアルロン酸を加えた。こうして得られた混合物を60℃で2時間撹拌し、次いで室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0077】
【0078】
実施例13~20:ヒドロキシプロピル-β―シクロデキストリン(HPβCD、30%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む水性組成物
【0079】
ヒドロキシプロピル-β―シクロデキストリンを使用して実施例1に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例13~20の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0080】
【0081】
【0082】
実施例21~23:ヒドロキシプロピル-β―シクロデキストリン(HPβCD)及びポリソルベート(0.05%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、1.2%)を含む水性組成物
【0083】
実施例9に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例21~23の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0084】
【0085】
実施例24:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、15%)、ポリソルベート(0.05%)及びPEG5000(9%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA、1.25%)とキトラック(CTL、0.75%)のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、1.2%)を含む水性組成物
【0086】
実施例12に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例24の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0087】
【0088】
実施例25~32:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、15%及び30%)含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)のマトリックス中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.60%及び0.16%)を含む水性組成物
【0089】
実施例1に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例25~32の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0090】
【0091】
【0092】
実施例33~36:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、15%及び30%)とポリソルベート(0.05%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)のマトリックス中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.60%及び1.2%)を含む水性組成物
【0093】
実施例9に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例33~36の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0094】
【0095】
実施例37:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、15%)、ポリソルベート(0.05%)及びPEG5000(9%)を含むヒアルロン酸(HA、1.25%)とキトラック(CTL、0.75%)のマトリックス中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、1.2%)を含む水性組成物
【0096】
実施例12に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例37の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0097】
【0098】
実施例38~45:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、15%及び30%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)のマトリックス中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.70%及び0.17%)を含む水性組成物
【0099】
実施例1に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例38~45の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0100】
【0101】
【0102】
実施例46~48:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、15%及び30%)とポリソルベート(0.05%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)のマトリックス中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、1.2%)を含む水性組成物
【0103】
実施例9に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例46~48の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0104】
【0105】
実施例49:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、15%)、ポリソルベート(0.05%)及びPEG5000(9%)を含むヒアルロン酸(HA、1.25%)とキトラック(CTL、0.75%)のマトリックス中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、1.2%)を含む水性組成物
【0106】
実施例12に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例49の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0107】
【0108】
実施例50~51:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、5%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)のマトリックス中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物
【0109】
実施例1に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例50~51の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0110】
【0111】
実施例52:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、5%)とポリソルベート(0.05%)を含むヒアルロン酸(HA、1.25%)とキトラック(CTL、0.75%)のマトリックス中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物
【0112】
実施例9に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例52の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0113】
【0114】
実施例53:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、5%)を含むヒアルロン酸(HA、0.75%)とキトラック(CTL、0.50%)のマトリックス中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物
【0115】
実施例1に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例53の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0116】
【0117】
実施例54:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、5%)を含むヒアルロン酸(HA、1.25%)とキトラック(CTL、0.75%)のマトリックス中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物
【0118】
実施例1に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例54の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0119】
【0120】
実施例55:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、5%)とポリソルベート(0.05%)を含むヒアルロン酸(HA、1.25%)とキトラック(CTL、0.75%)のマトリックス中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物
【0121】
実施例9に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例55の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0122】
【0123】
実施例56:ヒドロキシプロピル‐γ‐シクロデキストリン(HPγCD、5%)を含むヒアルロン酸(HA、0.75%)とキトラック(CTL、0.50%)のマトリックス中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物
【0124】
実施例1に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例56の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0125】
【0126】
実施例57:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、30%)を含むキトラックマトリックス(CTL、0.75%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む水性組成物の比較例
【0127】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリンを3.125mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、続けて22mgのトリアムシノロンアセトニドを加え、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。次に、2%(w/v)のキトラックを含むリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)の溶液1.875mLを加え、系をさらに30分間攪拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0128】
【0129】
実施例58:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%)を含むキトラックマトリックス(CTL、0.75%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む水性組成物の比較例
【0130】
実施例57に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例58の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0131】
【0132】
実施例59:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、30%)を含むキトラックマトリックス(CTL、0.75%)中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.7%)を含む水性組成物の比較例
【0133】
実施例57に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例59の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0134】
【0135】
実施例60:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%)を含むキトラックマトリックス(CTL、0.75%)中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.7%)を含む水性組成物の比較例
【0136】
実施例57に示したものと同じ手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例60の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0137】
【0138】
実施例61~63:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、30%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)単独のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む水性組成物の比較例
【0139】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリンを5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、続けて22mgのトリアムシノロンアセトニドを加え、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。次いで、37.5、50、及び62.5mgのヒアルロン酸をそれぞれ撹拌しながら加え、こうして得られた混合物を60℃で2時間撹拌し、次いで室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0140】
【0141】
実施例64:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、30%)とポリソルベート(0.05%)を含むヒアルロン酸単独のマトリックス(HA、0.75%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、1.2%)を含む水性組成物の比較例
【0142】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン及び2.5mgのポリソルベート20を5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、続けて22mgのトリアムシノロンアセトニドを加え、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。次いで、37.5mgのヒアルロン酸を撹拌しながら加え、こうして得られた混合物を60℃で2時間撹拌し、次いで室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0143】
【0144】
実施例65~67:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)単独のマトリックス中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む水性組成物の比較例
【0145】
実施例61に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例65~67の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0146】
【0147】
実施例68:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%)及びポリソルベート(0.05%)を含むヒアルロン酸単独のマトリックス(HA、0.75%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、1.2%)を含む水性組成物の比較例
【0148】
実施例64に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例68の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0149】
【0150】
実施例69~71:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、30%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)単独のマトリックス中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.60%)を含む水性組成物の比較例
【0151】
実施例61に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例69~71の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0152】
【0153】
実施例72~73:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、30%)及びポリソルベート(0.05%)を含むヒアルロン酸単独のマトリックス(HA、0.75%)中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.60%及び1.2%)を含む水性組成物の比較例
【0154】
実施例64に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例72~73の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0155】
【0156】
実施例74~76:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%)を含む様々な濃度のヒアルロン酸(HA)単独のマトリックス中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.70%)を含む水性組成物の比較例
【0157】
実施例61に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例74~76の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0158】
【0159】
実施例77:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%)及びポリソルベート(0.05%)を含むヒアルロン酸単独のマトリックス(HA、0.75%)中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、1.2%)を含む水性組成物の比較例
【0160】
実施例64に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例77の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0161】
【0162】
実施例78~79:
スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、5%)を含むヒアルロン酸単独のマトリックス(HA、0.75%及び1.25%)中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物の比較例
【0163】
実施例61に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例78~79の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0164】
【0165】
実施例80:スルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン(SBECD、5%)及びポリソルベート(0.05%)を含むヒアルロン酸単独のマトリックス(HA、0.75%)中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.2%)を含む水性組成物の比較例
【0166】
実施例64に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例80の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0167】
【0168】
実施例81~82:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、5%)を含むヒアルロン酸単独(HA、0.75%及び1.25%)のマトリックス中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物の比較例
【0169】
実施例61に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例81~82の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0170】
【0171】
実施例83:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、5%)及びポリソルベート(0.05%)を含むヒアルロン酸単独(HA、1.25%)のマトリックス中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物の比較例
【0172】
実施例64に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例83の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0173】
【0174】
実施例84:ヒドロキシプロピル‐γ‐シクロデキストリン(HPγCD、5%)を含むヒアルロン酸単独(HA、0.75%)のマトリックス中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む水性組成物の比較例
【0175】
実施例61に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例84の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0176】
【0177】
実施例85~86:スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBECD、30%及び15%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%及び0.27%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0178】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリンを5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、22mgと13.5mgのトリアムシノロンアセトニドを別々に添加し、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0179】
【0180】
実施例87:
スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBECD、30%及び15%)及びポリソルベート(0.05%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0181】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリン及び2.5mgのポリソルベート20を5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、続いて22mgのトリアムシノロンアセトニドを添加し、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0182】
【0183】
実施例88~89:
ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%及び15%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%及び0.27%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0184】
実施例85及び86に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例88~89の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0185】
【0186】
実施例90:
ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%)及びポリソルベート(0.05%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、1.2%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0187】
実施例87に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例90の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0188】
【0189】
実施例91~92:スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBECD、30%)及びポリソルベート(0.06%及び0.04%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0190】
実施例87に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例91~92の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0191】
【0192】
実施例93~94:スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBECD、30%及び15%)、ポリソルベート(0.04%及び0.06%)及びPEG5000(9%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0193】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリンと、2.0mg及び3.0mgの各々のポリソルベート20と、0.45gのプロピレングリコールを、5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、続いて22mgのトリアムシノロンアセトニドを添加し、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0194】
【0195】
実施例95~96:スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBECD、30%及び15%)及びPluronic(商品名)F68(0.04%及び0.06%)中にトリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0196】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリンと、2.0mg及び3.0mgの各々のPluronic F68を、5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、続いて22mgのトリアムシノロンアセトニドを添加し、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0197】
【0198】
実施例97~98:スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBECD、30%及び15%)と、Pluronic F68(0.04%及び0.06%)と、PEG5000(9%)中に、トリアムシノロンアセトニド(TA、0.44%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0199】
1.5gのスルホブチルエーテル‐7‐β‐シクロデキストリンと、2.0mg及び3.0mgの各々のPluronic F68と、0.45gのプロピレングリコールを、5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に溶解し、続いて22mgのトリアムシノロンアセトニドを添加し、こうして得られた系を室温で16時間撹拌した。溶液のpHは7.4であった。
【0200】
【0201】
実施例99~100:スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBECD、30%)中に、トリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.60%及び0.16%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0202】
実施例85に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例99~100の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0203】
【0204】
実施例101~102:スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBECD、30%)及びポリソルベート(0.05%)中に、トリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.60%及び1.2%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0205】
実施例87に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例101~102の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0206】
【0207】
実施例103:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%)中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、0.70%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0208】
実施例85に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例103の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0209】
【0210】
実施例104:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、30%)及びポリソルベート(0.05%)中にトリアムシノロンヘキサセトニド(THA、1.2%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0211】
実施例87に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例104の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0212】
【0213】
実施例105:スルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリン(SBECD、5%)中に、ジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0214】
実施例85に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例105の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0215】
【0216】
実施例106:ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HPβCD、5%)中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0217】
実施例85に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例106の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0218】
【0219】
実施例107:ヒドロキシプロピル‐γ‐シクロデキストリン(HPγCD、5%)中にジクロフェナクナトリウム塩(DCNa、1.5%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0220】
実施例85に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例107の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0221】
【0222】
実施例108~110:様々なシクロデキストリン(5%)を含むヒアルロン酸とキトラック(それぞれ、0.75%と0.5%)のマトリックス中にピロキシカム(PYR、0.05%)を含む水性組成物
【0223】
実施例1に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例108~110の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0224】
【0225】
実施例111~113:様々なシクロデキストリン(5%)を含むヒアルロン酸とキトラック(それぞれ、0.75%と0.5%)のマトリックス中にケトロラク(KET、0.25%)を含む水性組成物
【0226】
実施例1に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例111~113の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0227】
【0228】
実施例114~116:様々なシクロデキストリン(5%)を含むヒアルロン酸(0.75%)のマトリックス中にピロキシカム(PYR、0.05%)を含む水性組成物の比較例
【0229】
実施例61に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例114~117の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0230】
【0231】
実施例117~119:様々なシクロデキストリン(5%)を含むヒアルロン酸(0.75%)のマトリックス中にケトロラク(KET、0.25%)を含む水性組成物の比較例
【0232】
実施例61に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例117~119の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0233】
【0234】
実施例120~122:様々なシクロデキストリン(5%)中にピロキシカム(PYR、0.05%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0235】
実施例85に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例120~122の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0236】
【0237】
実施例123~125:様々なシクロデキストリン(5%)中にケトロラク(KET、0.25%)を含む、ポリマーマトリックスを含まない水性組成物の比較例
【0238】
実施例85に記載した手順に従い、以下の表に示す量を用いて実施例123~125の配合物を得た。溶液のpHは7.4であった。
【0239】
【0240】
実施例1~125に従って得られた組成物を以下について試験した:
- シクロデキストリンに含まれる活性成分の可溶化に対する多糖類ポリマーマトリックスの効果;
- シクロデキストリンに含まれる活性成分の可溶化に対する添加成分の効果;
- 活性成分の放出動態に対する多糖類ポリマーマトリックスの効果。
【0241】
実施例126:水不溶性活性成分[トリアムシノロンアセトニド(TA)及びトリアムシノロンヘキサセトニド(THA)]を有する様々なシクロデキストリンの可溶化能に対する多糖類ポリマーマトリックスの効果
【0242】
表1は、多糖類成分とシクロデキストリンの存在下におけるトリアムシノロン溶解度の選択されたデータを示す(a=100*(API@CD@POLY/API@CD)で算出したポリマー不存在下でのAPI@CD系に基づく百分率値)
【0243】
【0244】
【0245】
上記の結果から理解できるように、シクロデキストリンとヒアルロン酸をベースとする組成物については活性成分の溶解度の変動が観察された。シクロデキストリン-活性成分系にキトラック又はキトラック及びヒアルロン酸のいずれかが添加される場合にも同様のことが観察され得る。
【0246】
実施例127:ポリソルベート、ポリエチレングリコール及びポロキサマーと組み合わせたトリアムシノロンアセトニド(TA)を有するシクロデキストリンSBECDの可溶化能に対する効果
【0247】
比較の目的で、医薬組成物に一般的に使用される他の賦形剤(ポリソルベート、ポリエチレングリコール及びポロキサマー等)のシクロデキストリン-活性成分の溶解度に対する効果を調査した。
組成物は実施例に記載のように調製した。
【0248】
ほとんどのケースにおいて変動は観察されなかった(表2)、別のケースではわずかであり、どのケースにおいても常に正の変動であった。従って、包接錯体の溶解度を増大させるので、これらの賦形剤は何ら除外することなく使用できることが確認できた。
【0249】
【0250】
(a=100*(API@CD@ECCIP/API@CD)で算出したポリマー不存在下でのAPI@CD系に基づく百分率値)
【0251】
実施例128:ヒアルロン酸(HA)とシトラック(CTL)によって形成された多糖類ポリマーマトリックスからのSBECD、HPβCD及びHPγCDシクロデキストリンに含まれるトリアムシノロンアセトニド(TA)、トリアムシノロンヘキサセトニド(THA)、ジクロフェナク、ピロキシカム及びケトロラクの放出動態
【0252】
0.500gの組成物を、予め30分間脱イオン水で処理した透析膜(カットオフ10KDa)を底部に備えたウェル(Slide-A-Lyzer mini dialysis device,10k-MWCO;製品コード:69570;Thermo Fisher Scientific)に移した。次にウェルを密封し、2.5mgのポリソルベート20(0.05%)を添加した5mLのリン酸緩衝食塩水(PBS 1×:137mM NaCl、2.7mM KCl、8.1mM Na2HPO4、1.76mM NaH2PO4)に浸した。所定の時間の後、ウェルに保持されている活性成分の濃度をUV-Visを用いて定量した。
【0253】
24時間後に得られた結果を以下の表3に示す。同時に、
図1には対象となっている系の典型的な放出プロファイルを一例として示す。
【0254】
【0255】
【0256】
表3に列挙されたデータの解析は、多糖マトリックスを系に与えない場合は活性成分の放出がますます急速になること、系内にヒアルロン酸等の単一ポリマー成分を導入すると放出速度を遅くできることを示す。またキトラックが多糖類マトリックス中に存在すると、活性成分の放出がさらに遅くなる。
【0257】
結論として、特定の製剤においては、シクロデキストリンの種類を選択すると放出の程度を決定することができる。より具体的には、放出されたAPIの総量に関して、SBECDはHPβCDよりも高い放出値をより速く達成できることが認められた。
【0258】
実施例129
ヒアルロン酸(HA)とキトラック(CTL)により形成された多糖類ポリマーマトリックスからの、SBECD、HPβCD及びHPγCDシクロデキストリンに含まれるトリアムシノロンアセトニド(TA)、トリアムシノロンヘキサセトニド(THA)、ジクロフェナク、ピロキシカム及びケトロラクの24時間後の放出パーセントを、比較例であるポリマーマトリックスを有さないSBECD、HPβCD及びHPγCDシクロデキストリンに含まれるトリアムシノロンアセトニド(TA)、トリアムシノロンヘキサセトニド(THA)、ジクロフェナク、ピロキシカム及びケトロラクの24時間後の放出パーセントに対して正規化した。
【0259】