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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20221013BHJP
   B62D 1/18 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
B62D1/16
B62D1/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019509752
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2018011960
(87)【国際公開番号】W WO2018181082
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2017063300
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】石川 智也
(72)【発明者】
【氏名】池田 智明
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03747427(US,A)
【文献】特開2006-015982(JP,A)
【文献】特開2000-142426(JP,A)
【文献】特開2005-014832(JP,A)
【文献】実開昭62-083782(JP,U)
【文献】実開昭61-106481(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00- 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムと、
このステアリングコラムを幅方向両側から支持する左右の側板と、この左右の側板の上端からそれぞれ幅方向外方へ向かって延びる左右のフランジと、を有するブラケットと、
前記左右のフランジを車体の取り付け面に締結する左右のボルトと、
を含むステアリング装置において、
前記左右のフランジは、前記車体の取り付け面に対向する左右のフランジ面から、前記取り付け面へ向かって突出した、左右の内側の凸部を有し、
この左右の内側の凸部は、前記左右のボルトの締結位置よりも車体前方に、且つ、前記左右のフランジの幅方向の内縁の近傍に位置しており、
前記左右のフランジの表裏面を挟み込む略U字状断面の左右のカプセルを、更に有し、
この左右のカプセルは、前記車体の取り付け面と前記左右のフランジとの間に介在する左右の車体側カプセル部を含み、
前記左右の内側の凸部は、前記左右の車体側カプセル部に接しており、
前記左右のカプセルは、前記左右のフランジと共に前記車体の取り付け面に前記左右のボルトによって締結されている、ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記左右のフランジから前記車体の取り付け面に向かって突出した、左右の外側の凸部を、更に有し、
この左右の外側の凸部は、前記左右のボルトの締結位置よりも車体前方に、且つ、前記左右のフランジの幅方向の外縁の近傍に位置している、請求項1記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記左右の内側の凸部と前記左右の外側の凸部は、前記左右のフランジから膨出した膨出部、前記左右のフランジに肉盛りされた肉盛り部、又は前記左右のフランジに取り付け可能な別部材のいずれかによって構成されている、請求項1又は請求項2記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置において、ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムを、車体に取り付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ステアリングコラムはブラケットによって支持されている。このブラケットのフランジは、車体の取り付け面にボルトによって締結されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で知られているステアリング装置では、ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムが、ブラケットによって車体に取り付けられる。このブラケットは、ステアリングコラムを幅方向両側から支持する左右の側板と、車体に取り付け可能な取付板とからなる。取付板は、車幅方向へ延びた細長い平板によって構成されている。左右の側板の上端は、取付板の下面に接合されている。取付板のなかの、左右の側板よりも車幅方向の外側の部分が、車体の取り付け面にボルトによって締結される取付部分となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-132308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で知られているステアリング装置は、車体の取り付け面に対して、単なる平板状の取付板をボルトによって締結する構成である。このため、取付板の曲げ剛性は比較的小さい。車体に対してステアリング装置を強固に取り付けるには、改良の余地がある。
【0006】
本発明は、車体に対して、ステアリング装置を強固に取り付けることができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
ステアリングシャフトを回転可能に支持するステアリングコラムと、
このステアリングコラムを幅方向両側から支持する左右の側板と、この左右の側板の上端からそれぞれ幅方向外方へ向かって延びる左右のフランジと、を有するブラケットと、
前記左右のフランジを車体の取り付け面に締結する左右のボルトと、
を含むステアリング装置において、
前記左右のフランジは、前記車体の取り付け面に対向する左右のフランジ面から、前記取り付け面へ向かって突出した、左右の内側の凸部を有し、
この左右の内側の凸部は、前記左右のボルトの締結位置よりも車体前方に、且つ、前記左右のフランジの幅方向の内縁の近傍に位置しており、
前記左右のフランジの表裏面を挟み込む略U字状断面の左右のカプセルを、更に有し、
この左右のカプセルは、前記車体の取り付け面と前記左右のフランジとの間に介在する左右の車体側カプセル部を含み、
前記左右の内側の凸部は、前記左右の車体側カプセル部に接しており、
前記左右のカプセルは、前記左右のフランジと共に前記車体の取り付け面に前記左右のボルトによって締結されている、ことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記左右のフランジから前記車体の取り付け面に向かって突出した、左右の外側の凸部を、更に有し、
この左右の外側の凸部は、前記左右のボルトの締結位置よりも車体前方に、且つ、前記左右のフランジの幅方向の外縁の近傍に位置している。
【0010】
より好ましくは、前記左右の内側の凸部と前記左右の外側の凸部は、前記左右のフランジから膨出した膨出部、前記左右のフランジに肉盛りされた肉盛り部、又は前記左右のフランジに取り付け可能な別部材のいずれかによって構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ステアリングコラムを支持するためのブラケットの左右のフランジは、車体の取り付け面に対向する左右のフランジ面から、取り付け面へ向かって突出した左右の内側の凸部を有している。この左右の内側の凸部は、左右のボルトの締結位置よりも車体前方に、且つ、左右のフランジの幅方向の内縁の近傍に位置している。左右のフランジは、左右の側板の上端からそれぞれ幅方向外方へ向かって延びている。このため、左右のフランジの幅方向の内縁の近傍は、板厚方向の曲げ剛性が最も大きく、撓みの小さい箇所である。この最も曲げ剛性の大きい箇所に、左右の内側の凸部を有することにより、左右のフランジは、ボルト位置と内側の凸部の位置との、両方を、車体の取り付け面へ確実に強く押し付けることができる。従って、車体の取り付け面に対する左右のフランジの締め付け力を高めることができる。この結果、車体に対してステアリング装置を強固に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1によるステアリング装置の斜視図である。
図2図1に示される右のフランジを車体の取り付け面に締結した構成の断面図である。
図3図1に示される右のフランジの平面図である。
図4図2に示される右の凸部の拡大した断面図である。
図5】本発明の実施例1の変形例によるステアリング装置の斜視図である。
図6】本発明の実施例2によるステアリング装置の斜視図である。
図7図6に示される右のフランジとカプセルとを車体の取り付け面に締結した構成の断面図である。
図8図6に示される右のフランジの平面図である。
図9図7に示される右のフランジとカプセルとの分解図である。
図10図7に示される右の凸部の拡大した断面図である。
図11】本発明の実施例2の変形例によるステアリング装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を、添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【実施例
【0014】
<実施例1>
実施例1に係るステアリング装置について図1乃至図4に基づき説明する。図1及び図2に示されるように、ステアリング装置10は、乗用車等の車両Veの車体Bdの取り付け面Faに取り付け可能である。このステアリング装置10は、ステアリングシャフト11と、このステアリングシャフト11を回転可能に支持する円筒状のインナパイプ12と、このインナパイプ12を保持するステアリングコラム13と、このステアリングコラム13を支持するブラケット14とを含む。
【0015】
より詳しく述べると、ステアリングコラム13(アウタコラム13)には、インナパイプ12が車両前後方向へ移動可能に保持されている。このインナパイプ12の中には、ステアリングシャフト11が挿通されている。このステアリングシャフト11は、インナパイプ12とステアリングコラム13とに回転可能に支持されている。ステアリングシャフト11の後端には、ステアリングホイール15が取り付けられている。
【0016】
ブラケット14は、ステアリングコラム13を幅方向両側から支持する左右の側板16,16と、各側板16,16の上端からそれぞれ幅方向外方へ向かって延びる左右のフランジ20,20と、を有する。
【0017】
詳しく述べると、ブラケット14は、ステアリングコラム13の径方向両側に形成されてなる左右の側板16,16と、各側板16,16同士を連結している連結部17と、左右のフランジ20,20とによって構成されている。各フランジ20,20は、車体Bdの取り付け面Faに対し平行な略矩形状の平板であって、各側板16,16の上端から幅方向外方へ延びている。
【0018】
各フランジ20,20同士は、連結部17によって一体的構造となるように互いに連結されている。左右のフランジ20,20の幅方向の内縁20a,20a(ステアリングコラム13寄りの左右の固定側部20a,20a)は、側板16,16の上端に位置するとともに、各側板16,16の上端に対して一体に形成又は一体に接合されてなる。各フランジ20,20において、幅方向の内縁20a,20aに対し、幅方向の反対側の縁20b,20bのことを、「幅方向の外縁20b,20b」という。
【0019】
ここで、各フランジ20,20において、車体Bdの取り付け面Faに対向する(取り付け面Faに重ね合わせられる)平坦な表面21,21のことを「フランジ面21,21」といい、このフランジ面21,21とは反対側の裏面22,22のことを「フランジ裏面22,22」ということにする。
【0020】
図3も参照すると、各フランジ20,20の縁の少なくとも一部には、このフランジ20,20の表裏面方向へ延びた縁折れ部25,25が設けられている。好ましくは、この縁折れ部25,25は、フランジ面21,21に対して垂直方向(より好ましくは下方)へ折れ曲がっている。より具体的には、この縁折れ部25,25は、ステアリングホイール15とは反対側の縁(前縁)に設けられている。
【0021】
さらに、この左右のフランジ20,20は、左右の座面21a,21aと左右の貫通孔27,27とを有している。各座面21a,21aは、フランジ面21,21から車体Bdの取り付け面Faへ向かって僅かに一段高くなっている平坦面であって、フランジ面21,21に対して平行である。各座面21a,21aは、フランジ20,20のなかの、貫通孔27,27が位置している部位とその周辺のみの範囲に形成されてなる。
【0022】
ステアリング装置10は、左右のボルト40,40を含む。各ボルト40,40は、各フランジ20,20を車体Bdの取り付け面Faに締結する締結部材の一種である。車体Bdの取り付け面Faには、ボルト40,40をねじ込むためのネジ孔Ha(一方のみを示す)が形成されてなる。
【0023】
各フランジ20,20を車体Bdの取り付け面Faに重ね、ボルト40,40をフランジ20,20の貫通孔27,27を貫通して、ネジ孔Haにねじ込むことにより、フランジ20,20を取り付け面Faに締結することができる。
【0024】
左右のフランジ20,20は、それぞれのフランジ面21,21に少なくとも1つずつの左右の内側の凸部28,28(左右の第1凸部28,28)を有する。各内側の凸部28,28は、各フランジ面21,21から、取り付け面Faへ向かって突出している。フランジ面21,21に対する内側の凸部28,28の突出量は、フランジ面21,21に対する座面21a,21aの段差の高さに対して同一(略同一を含む)である。凸部28,28の押圧力を、車体Bdの取り付け面Faに作用させることができる。
【0025】
各内側の凸部28,28は、ボルト40,40の締結位置、すなわち各貫通孔27,27よりも車体前方に、且つ、フランジ20,20の幅方向の内縁20a,20aの近傍に位置している。言い換えると、各内側の凸部28,28は、各フランジ20,20の縁折れ部25,25の近傍に、且つ、各フランジ20,20の幅方向の内縁20a,20aの近傍(ステアリングコラム13寄りの部位)に、位置している。
【0026】
内側の凸部28,28の輪郭は、特に限定されるものではなく、ステアリング装置10をフランジ面21,21方向から見て、例えば丸形(円形を含む)、三角形や四角形などの多角形、長円形の形状とすることができる。
【0027】
図4も参照すると、内側の凸部28,28の断面形状は、フランジ面21,21に対して先細り状であればよく、例えば半円形、三角形、台形とすることができる。内側の凸部28,28の頂部28a,28aの大きさは、車体Bdの取り付け面Faに対して実質的にピンポイントに接触可能な大きさに設定されている。この頂部28a,28aの大きさが大きすぎると、取り付け面Faに対して当たる位置を正確に設定しにくいからである。
【0028】
このように、内側の凸部28,28は、取り付け面Faに対し頂部28a,28a(一方のみを示す。)のみを接触している。取り付け面Faに対して、内側の凸部28,28は実質的に頂部28a,28aのみをピンポイントに接触可能である。このため、取り付け面Faに対する内側の凸部28,28の接触位置を、より正確に設定することができる。
【0029】
左右の内側の凸部28,28は、左右のフランジ20,20から膨出した膨出部、左右のフランジ20,20に肉盛りされた肉盛り部、又は左右のフランジ20,20に取り付け可能な別部材のいずれかによって構成されている。このため、各内側の凸部28,28を簡単な構成とすることができる。
【0030】
以上の説明をまとめると、次の通りである。図1及び図2に示されるように、ステアリングコラム13を支持するためのブラケット14の左右のフランジ20,20は、車体Bdの取り付け面Faに対向する左右のフランジ面21,21から、取り付け面Faへ向かって突出した、左右の内側の凸部28,28を有している。この左右の内側の凸部28,28は、左右のボルト40,40の締結位置よりも車体Bd前方に、且つ、左右のフランジ20,20の幅方向の内縁20a,20aの近傍に位置している。左右のフランジ20,20は、左右の側板16,16の上端からそれぞれ幅方向外方へ向かって延びている。
【0031】
このため、フランジ20,20における幅方向内側付近は板厚方向の曲げ剛性が最も大きく、撓みの小さい箇所である。この最も曲げ剛性の大きい箇所に、内側の凸部28,28を形成することにより、フランジ20,20は、ボルト40,40の位置と内側の凸部の位置28,28との、両方を、車体Bdの取り付け面Faへ確実に強く押し付けることができる。従って、取り付け面Faに対するフランジ20,20の締め付け力を高めることができる。この結果、車体Bdに対してステアリング装置10を強固に取り付けることができる。
【0032】
ステアリング装置10の変形例を説明する。図3及び図5に示されるように、変形例では、左右のフランジ20,20は、それぞれのフランジ面21,21に、左右の内側の凸部28,28の他に更に少なくとも1つずつの左右の外側の凸部29,29(左右の第2凸部29,29)を、更に有する。左右の外側の凸部29,29は、左右のフランジ面21,21から取り付け面Faへ向かって突出している。この左右の外側の凸部29,29は、左右のボルト40,40の締結位置よりも車体前方に、且つ、左右のフランジ20,20の幅方向の外縁20b,20bの近傍に位置している。左右の外側の凸部29,29の押圧力を車体Bdの取り付け面Faに作用させることができる。
【0033】
各外側の凸部29,29の断面形状は、内側の凸部28,28の断面形状(図4参照)と同じである。また、各外側の凸部29,29の頂部29a,29a(一方のみを示す。)の大きさは、内側の凸部28,28の頂部28a,28aの大きさと同じである。外側の凸部29,29は、取り付け面Faに対し頂部29a,29a(一方のみを示す。)のみを接触している。取り付け面Faに対して、外側の凸部29,29は実質的に頂部29a,29aのみをピンポイントに接触可能である。このため、取り付け面Faに対する外側の凸部29,29の接触位置を、より正確に設定することができる。
【0034】
さらに、左右の外側の凸部29,29は、左右の内側の凸部28,28と同じように、左右のフランジ20,20から膨出した膨出部、左右のフランジ20,20に肉盛りされた肉盛り部、又は左右のフランジ20,20に取り付け可能な別部材のいずれかによって構成されている。このため、外側の凸部29,29を簡単な構成とすることができる。
【0035】
このように、幅方向両側の各フランジ20,20に対して凸部28,29はそれぞれ2つ形成されてなる。左右2つずつの凸部28,28,29,29は、ボルト40,40に対し車両前方に位置し、且つ、ステアリングシャフト11の軸方向に対して垂直方向に配列されている。従って、車体Bdの取り付け面Faに対してフランジ20,20を、より安定して締め付けることができる。
【0036】
さらに、各フランジ20,20に対して、2つずつ有している凸部28,28,29,29は、ボルト40,40に対し車両前方に位置している。このため、フランジ20,20を表裏方向から見て、左右それぞれ2つの凸部28,28,29,29とボルト40,40とを、三角形の各頂点に配置することができる。従って、車体Bdの取り付け面Faに対してフランジ20,20を、より一層安定して締め付けることができる。
【0037】
<実施例2>
実施例2に係るステアリング装置について図6乃至図10に基づき説明する。実施例2のステアリング装置100は、上記図1乃至図4に示される実施例1のステアリング装置10に対して、次の2つの点を変更したことを特徴とし、他の構成については実施例1と同じなので、説明を省略する。第1の変更点は、実施例1のブラケット14を、図6乃至図10に示されるブラケット114に変更したことである。第2の変更点は、左右のカプセル130,130を追加したことである。
【0038】
図6及び図7に示されるように、実施例2のブラケット114は、ステアリングコラム13を幅方向両側から支持する左右の側板116,116と、この側板116,116の上端からそれぞれ幅方向外方へ向かって延びる左右のフランジ120,120と、を有する。
【0039】
詳しく述べると、ブラケット114は、ステアリングコラム13の径方向両側に形成されてなる側板116,116と、この側板116,116同士を連結している連結部117と、フランジ120,120とによって構成されている。このフランジ120,120は、車体Bdの取り付け面Faに対し平行な略矩形状の平板であって、側板116,116の上端から幅方向外方へ延びている。
【0040】
左右のフランジ120,120同士は、連結部117によって一体的構造となるように互いに連結されている。
【0041】
ここで、各フランジ120,120において、車体Bdの取り付け面Faに対向する(取り付け面Faに重ね合わせられる)平坦な表面121,121のことを「フランジ面121,121」といい、このフランジ面121,121とは反対側の裏面122,122のことを「フランジ裏面122,122」ということにする。
【0042】
図8も参照すると、左右のフランジ120,120の縁123,123のなかの、幅方向の内縁123a,123a(ステアリングコラム13寄りの左右の固定側部123a,123a)は、各側板116,116の上端に位置するとともに、各側板116,116の上端に対して一体に形成又は一体に接合されてなる。各フランジ120,120の縁123,123のなかの、幅方向の内縁123a,123aに対し、幅方向の反対側の縁123b,123bのことを、「幅方向の外縁123b,123b」という。
【0043】
各フランジ120,120の縁123,123の少なくとも一部には、このフランジ120,120の表裏面方向へ延びた縁折れ部124,124が設けられている。好ましくは、この縁折れ部124,124は、フランジ面121,121に対して垂直方向(より好ましくは下方)へ折れ曲がっている。より具体的には、この縁折れ部124,124は、前側の縁折れ部125,125と幅側の縁折れ部126,126とからなり、互いに連続している。前側の縁折れ部125,125は、ステアリングホイール15とは反対側の縁(前縁)に設けられている。幅側の縁折れ部126,126は、ステアリングコラム13とは反対側の縁(側縁)に設けられている。
【0044】
さらに、この各フランジ120,120には切り欠き孔127,127が形成されてなる。この各切り欠き孔127,127は、それぞれステアリングシャフト11の軸方向へ長く、且つ、各フランジ120,120の後端(ステアリングホイール15側)に切り欠かれている。
【0045】
ステアリング装置100は、左右のカプセル130,130と左右のボルト140,140とを含む。
【0046】
図9も参照すると、左右のカプセル130,130(スライディングプレート130,130)は、各フランジ120,120の表裏面を挟み込んだ状態で、車体Bdの取り付け面Faに重ね合わせ可能な、略U字状断面の部材である。各カプセル130,130は、例えば樹脂成型品や金属片のプレス成型品によって構成される。各カプセル130,130は、平板状の車体側カプセル部131,131と、平板状のコラム側カプセル部132,132と、略U字状の屈曲部133,133とからなる一体成型品である。
【0047】
各車体側カプセル部131,131は、取り付け面Faとフランジ120,120との間に介在して重なり合うことが可能な平板である。各コラム側カプセル部132,132は、フランジ裏面122,122に重なり合うことが可能な平板である。各屈曲部133,133は、車体側カプセル部131,131とコラム側カプセル部132,132とを繋いでおり、各フランジ120,120の後端近傍に位置している。各フランジ120,120における板厚方向の曲げ剛性は、カプセル130,130(特に、車体側カプセル部131,131)の曲げ剛性に比べて大きい。
【0048】
各車体側カプセル部131,131と各コラム側カプセル部132,132とには、それぞれ板面方向に貫通した長孔134,134が形成されてなる。これらの長孔134,134は、それぞれステアリングシャフト11の軸方向へ長く形成されるとともに、カプセル130,130によってフランジ120,120を挟み込んだ状態において、切り欠き孔127,127の位置に合致する。
【0049】
ボルト140,140は、フランジ120,120とカプセル130,130とを車体Bdの取り付け面Faに締結する締結部材の一種である。車体Bdの取り付け面Faには、ボルト140,140をねじ込むためのネジ孔Ha(一方のみを示す)が形成されている。
【0050】
カプセル130,130によってフランジ120,120の表裏面を挟み込んだ状態で、車体Bdの取り付け面Faに重ねて、ボルト140,140を、コラム側カプセル部132,132の長孔134,134と、フランジ120,120の切り欠き孔127,127と、車体側カプセル部131,131の長孔134,134とを貫通して、ネジ孔Haにねじ込むことにより、フランジ120,120とカプセル130,130とを取り付け面Faに締結することができる。
【0051】
各フランジ120,120は、それぞれのフランジ面121,121に少なくとも1つずつの左右の内側の凸部128,128(左右の第1凸部128,128)を有する。例えば、各内側の凸部128,128は、各フランジ120,120に1つずつ有する。各カプセル130,130によって各フランジ120,120の表裏面を挟み込んだ状態では、内側の凸部128,128は、車体側カプセル部131,131へ向かって突出し且つこの車体側カプセル部131,131に接することが可能である。内側の凸部128,128の押圧力をカプセル130,130を介して車体Bdの取り付け面Faに作用させることができる。
【0052】
内側の凸部128,128は、ボルト140,140の締結位置、すなわち各切り欠き孔127,127よりも車体前方に、且つ、フランジ20,20の幅方向の内縁123a,123aの近傍に位置している。言い換えると、内側の凸部128,128は、各フランジ120,20の前側の縁折れ部125,125の近傍に、且つ、各フランジ120,120の幅方向の内縁123a,123aの近傍(ステアリングコラム13寄りの部位)に、位置している。
【0053】
車体側カプセル部131,131は、車体Bdの取り付け面Faに対して実質的に全面にわたって重ね合わされる。ボルト140,140によって、フランジ120,120とカプセル130,130とを車体Bdの取り付け面Faに締め付けることにより、凸部128,128は車体側カプセル部131,131を取り付け面Faに押し付ける。
【0054】
すなわち、ボルト140,140を締め付けることにより、フランジ120,120とカプセル130,130とは、ボルト位置で車体Bdの取り付け面Faに押し付けられるほかに、内側の凸部128,128の位置でも前記取り付け面Faに押し付けられる。これにより、内側の凸部128,128の押圧力をカプセル130,130を介して車体Bdの取り付け面Faに作用させることができ、ステアリング装置100を車体Bdに強固に取り付けることができる。
【0055】
しかも、内側の凸部128,128は、車体Bdの取り付け面Faと車体側カプセル部131,131との間ではなく、この車体側カプセル部131,131とフランジ120,120との間に位置している。このため、二次衝突が発生していない通常時において、車体Bdの取り付け面Faに対し、フランジ120,120及びカプセル130,130を安定した状態で固定しておくことができる。この結果、車体Bdの取り付け面Faに対するフランジ120,120及びカプセル130,130の適切な締め付け力を、十分に確保することができる。
【0056】
車両Veが前突(前方の物体に衝突)したときには、二次衝突に伴う衝撃力が、ステアリングホイール15からステアリングコラム13へ作用する。二次衝突時において、フランジ120,120がカプセル130,130から車両前方へ円滑に抜け出ることができる。この結果、前記衝撃力を受けたステアリングコラム13を、車体Bdに対して前方へ円滑に移動させて、離脱させることができる。
【0057】
さらには、上述のように、フランジ120,120における板厚方向の曲げ剛性は、車体側カプセル部の曲げ剛性よりも大きい。このため、ボルト140,140の締め付け力により、また、凸部128,128を介して車体側カプセル部131,131を車体Bdの取り付け面Faに押し付けているため、二次衝突時に、カプセル130,130に対するフランジ120,120の相対移動を開始する初期荷重を、比較的大きく設定することができる。
【0058】
さらに上述のように、内側の凸部128,128と車体Bdの取り付け面Faとが直接当接しない構造であるため、内側の凸部128,128の寸法管理が容易となる。すなわち、寸法精度の管理工数は増加しない。さらには、内側の凸部128,128はカプセル130,130の車体側カプセル部131,131に接する位置に形成されているため、内側の凸部128,128とカプセル130,130との位置合わせを行う必要がなく、フランジ120,120に対してカプセル130,130を組み付けるための組み付け管理工数を増加させることはない。
【0059】
ところで、一般的なカプセルを用いる技術には、特許第4062187号公報で知られているステアリング装置がある。この一般的なステアリング装置の概要を説明すると、カプセルは、車体の取り付け面へ向かって凸となる一対の弾接部を有している。この一対の弾接部は、板状のカプセルから切り起こされたアーチ状の部分であり、ボルトの両側に位置した板バネとして機能する。すなわち、弾接部は板厚方向にバネ性を有している。ボルトは、車体の取り付け面に対してフランジとカプセルとを締め付ける。ボルトを締め付けたときに、弾接部は車体の取り付け面に弾性力を有して接触する。このようにステアリング装置は、カプセルに弾接部を有することによって、ボルトによる締め付け力を安定させることができる。
【0060】
しかし、ボルトの締め付け力を安定させるには、一対の弾接部が所定のバネ特性(弾性特性)を有しているという条件を、満足する必要がある。このバネ特性が過小、すなわち、ボルトの締め付け力に対する弾接部の弾性変形量が、過小な場合には、弾接部は小さい締め付け力によって、簡単に潰れてしまう。これでは、締め付け力を安定させることができない。弾接部が所定のバネ特性を有するためには、カプセルの板厚を一定以上にする必要がある。しかしながら、カプセルの板厚を厚くするには限界があり、改良の余地がある。しかも、フランジに対してカプセルを正確に組み付けないと、フランジに対する一対の弾接部の位置が、正確に定まらない。このため、組み付け工数が嵩む心配がある。
【0061】
これに対し、上記実施例2のステアリング装置100では、フランジ120,120に対してカプセル130,130を組み付けるための組み付け管理工数を増加させることはない。
【0062】
さらには、内側の凸部128,128は、フランジ120,120の幅方向内側に設けられている。フランジ120,120における幅方向内側付近は板厚方向の曲げ剛性が最も大きく、撓みの小さい箇所である。この最も曲げ剛性の大きい箇所に内側の凸部128,128を形成することで、ボルト140,140の位置の他に確実に内側の凸部128,128の位置で車体側カプセル部131,131を取り付け面Faへ強く押し付けることができる。
【0063】
内側の凸部128,128の輪郭は、特に限定されるものではなく、ステアリング装置100をフランジ面121,121方向から見て、例えば丸形(円形を含む)、三角形や四角形などの多角形、長円形の形状とすることができる。内側の凸部128,128の輪郭を、車幅方向へ細長い長円形とした場合には、フランジ面121,121に対するカプセル130,130の挟み込み位置が、車幅方向へ多少ずれた場合であっても、内側の凸部128,128を車体側カプセル部131,131に対して、より確実に接触させることができる。
【0064】
図10も参照すると、各内側の凸部128,128の断面形状は、フランジ面121,121に対して先細り状であればよく、例えば半円形、三角形、台形とすることができる。各内側の凸部128,128の頂部128a,128aの大きさは、車体側カプセル部131,131に対して実質的にピンポイントに接触可能な大きさに設定されている。この頂部128a,128aの大きさが大きすぎると、車体側カプセル部131,131に対して当たる位置を正確に設定しにくいからである。
【0065】
このように、内側の凸部128,128は、車体側カプセル部131,131に対し頂部128a,128aのみを接触している。車体側カプセル部131,131に対して、内側の凸部128,128は実質的に頂部128a,128aのみをピンポイントに接触可能である。このため、車体側カプセル部131,131に対する内側の凸部128,128の接触位置を、より正確に設定することができる。
【0066】
左右の凸部128,128は、左右のフランジ120,120から膨出した膨出部、左右のフランジ120,120に肉盛りされた肉盛り部、又は左右のフランジ120,120に取り付け可能な別部材のいずれかによって構成されている。このため、左右の内側の凸部128,128を簡単な構成とすることができる。
【0067】
以上の説明をまとめると、次の通りである。図6及び図7に示されるように、ステアリングコラム13を支持するためのブラケット114の左右のフランジ120,120は、車体Bdの取り付け面Faに対向する左右のフランジ面121,121から、取り付け面Faへ向かって突出した、左右の内側の凸部128,128を有している。この左右の内側の凸部128,128は、左右のボルト140,140の締結位置よりも車体Bd前方に、且つ、左右のフランジ120,120の幅方向の内縁123a,123aの近傍に位置している。左右のフランジ120,120は、左右の側板116,116の上端からそれぞれ幅方向外方へ向かって延びている。
【0068】
このため、フランジ120,120における幅方向内側付近は板厚方向の曲げ剛性が最も大きく、撓みの小さい箇所である。この最も曲げ剛性の大きい箇所に、内側の凸部128,128を形成することにより、フランジ120,120は、ボルト140,140の位置と内側の凸部の位置128,128との、両方を、車体Bdの取り付け面Faへ確実に強く押し付けることができる。従って、取り付け面Faに対するフランジ120,120の締め付け力を高めることができる。この結果、車体Bdに対してステアリング装置100を強固に取り付けることができる。
【0069】
ステアリング装置100の変形例を説明する。図8及び図11に示されるように、変形例では、幅方向両側の各フランジ120,120は、それぞれのフランジ面121,121に、左右の内側の凸部128,128の他に更に少なくとも1つずつの左右の外側の凸部129,129(左右の第2凸部129,129)を、更に有する。左右の外側の凸部129,129は、左右のフランジ面121,121から取り付け面Faへ向かって突出している。この左右の外側の凸部129,129は、左右のボルト140,140の締結位置よりも車体前方に、且つ、左右のフランジ120,120の幅方向の外縁123b,123bの近傍に位置している。外側の凸部129,129の押圧力を車体Bdの取り付け面Faに作用させることができる。
【0070】
つまり、これらの凸部128,128,129,129は、ボルト140,140に対し車両前方に位置し、且つ、ステアリングシャフト11の軸方向に対して垂直方向に配列されている。従って、車体Bdの取り付け面Faに対してフランジ120,120とカプセル130,130とを、より安定して締め付けることができる。
【0071】
さらに、各フランジ120,120に対して、それぞれ2つずつ有している凸部128,129は、ボルト140,140に対し車両前方に位置している。このため、フランジ120,120を表裏方向から見て、それぞれ2つずつ有している凸部128,129とボルト140,140とを、三角形の各頂点に配置することができる。従って、車体Bdの取り付け面Faに対してフランジ120,120とカプセル130,130とを、より一層安定して締め付けることができる。
【0072】
各外側の凸部129,129の断面形状は、内側の凸部128,128の断面形状(図10参照)と同じである。また、各外側の凸部129,129の頂部129a,129aの大きさは、内側の凸部128,128の頂部128a,128aの大きさと同じである。さらに、外側の凸部129,129は、内側の凸部128,128と同じように、フランジ120,120から膨出した膨出部、フランジ120,120に肉盛りされた肉盛り部、又はフランジ120,120に取り付け可能な別部材のいずれかによって構成されている。このため、外側の凸部129,129を簡単な構成とすることができる。
【0073】
さらに、左右の外側の凸部129,129は、左右の内側の凸部128,128と同じように、左右のフランジ120,120から膨出した膨出部、左右のフランジ120,120に肉盛りされた肉盛り部、又は左右のフランジ120,120に取り付け可能な別部材のいずれかによって構成されている。このため、外側の凸部129,129を簡単な構成とすることができる。
【0074】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のステアリング装置10,100は、乗用車のステアリング系に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0076】
Bd 車体
Fa 取り付け面
10,100 ステアリング装置
11 ステアリングシャフト
13 ステアリングコラム
14,114 ブラケット
16,116 側板
20,120 フランジ
21,121 フランジ面
123 フランジの縁
28,128 内側の凸部
28a,128a 頂部
29,129 外側の凸部
29a,129a 頂部
40,140 ボルト
130 カプセル
131 車体側カプセル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11