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特許7157750薬剤保管用のノズル付きカートリッジとその噴射器、および鼻腔用粉状薬剤施薬装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】薬剤保管用のノズル付きカートリッジとその噴射器、および鼻腔用粉状薬剤施薬装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 13/00 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
A61M13/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019541959
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2018030477
(87)【国際公開番号】W WO2019054121
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2017177261
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】393030626
【氏名又は名称】株式会社新日本科学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】治田 俊志
(72)【発明者】
【氏名】里吉 源二
(72)【発明者】
【氏名】三島 秀晶
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-015954(JP,A)
【文献】特表2004-532717(JP,A)
【文献】特表2016-523647(JP,A)
【文献】特表2002-505981(JP,A)
【文献】特表2014-506495(JP,A)
【文献】特開2006-314627(JP,A)
【文献】米国特許第05328099(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定分量の粉状薬剤が充填される薬剤容器と、
該薬剤容器に形成された、前記粉状薬剤を噴出するノズル部と、
該ノズル部の開口部を閉塞する閉塞部材と、
前記薬剤容器の他の開口部を塞ぐ栓として機能し、薬剤投与時に開弁するバルブ部材と、
前記他の開口部に装着されるノズルベースと、
前記バルブ部材を係止させるように前記ノズルベースの内側に形成された係止用溝部と、
前記係止用溝部に係止するように前記バルブ部材に形成された係止用縁部と、
前記係止用縁部に連なるように前記バルブ部材に形成された軸部と、
前記軸部のうち前記係止用縁部から離間した位置に配置され、前記ノズルベースの所定位置に引っ掛かる形状のストッパー部と、
前記軸部と前記係止用縁部との間に形成された、前記軸部から前記係止用縁部に向けて傾斜しながら径が拡大する形状のテーパー部と、
開弁時に該テーパー部との間に空気が流通可能な環状の隙間を形成し、開弁後の前記バルブ部材が逆戻りした際、前記テーパー部の一部が当接する部位として前記ノズルベースに形成された座部と、
を備え、薬剤投与の際に噴射器に着脱可能である、薬剤保管用のノズル付きカートリッジ。
【請求項2】
前記閉塞部材の開口部に、開封可能なカートリッジシールが貼付されている、請求項1に記載の薬剤保管用のノズル付きカートリッジ。
【請求項3】
前記ストッパー部に、空気の流通を許容する空気流通部が形成されている、請求項1または2に記載の薬剤保管用のノズル付きカートリッジ。
【請求項4】
前記バルブ部材に、前記係止用縁部から前記ノズル部の前記開口部に向けて尖る形状の尖状部が形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤保管用のノズル付きカートリッジ。
【請求項5】
前記座部は、前記バルブ部材またはそのテーパー部に面接触する形状に形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の薬剤保管用のノズル付きカートリッジ。
【請求項6】
前記座部は、前記バルブ部材のテーパー部が面接触する傾斜面を含む、請求項に記載の薬剤保管用のノズル付きカートリッジ。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載のカートリッジが取り付けられた状態で該カートリッジに空気を送り込み前記粉状薬剤を噴射する噴射器であって、
前記カートリッジに空気を送り込む送気装置と、
該送気装置の動きに連動してストロークする部材であって、該ストロークの途中の所定位置にて前記バルブ部材に直接または間接的に当接して該バルブ部材を開弁させる押圧部材と、
を備える、噴射器。
【請求項8】
前記噴射器に、当該噴射器の使用時に使用者が指を掛けることができる指掛け部が設けられている、請求項に記載の噴射器。
【請求項9】
前記押圧部材に通気孔が形成されている、請求項に記載の噴射器。
【請求項10】
前記押圧部材の端面に前記通気孔の開孔端が形成されている、請求項に記載の噴射器。
【請求項11】
前記送気装置が蛇腹状のポンプを含む、請求項から10のいずれか一項に記載の噴射器。
【請求項12】
前記送気装置がシリンダーとプランジャーとを含む、請求項から10のいずれか一項に記載の噴射器。
【請求項13】
請求項1からのいずれか一項に記載のカートリッジが、請求項から12のいずれか一項に記載の噴射器に組み合わされてなる、鼻腔用粉状薬剤施薬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤保管用のノズル付きカートリッジとその噴射器、および鼻腔用粉状薬剤施薬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鼻炎や鼻アレルギー等の疾患を持つ患者に粉状薬剤を鼻腔内に施薬する治療方法が知られている。この治療方法では、専用の施薬装置を用いてカプセル内に充填した粉状の薬剤を鼻腔内に施薬している。また、従来、この治療方法に用いられる施薬装置が案出されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の施薬装置では、円筒部材の空気流入側にはポンプ部が設けられ、この円筒部材の空気流出側にはカプセルが挿入される凹形状部が形成され、この凹形状部に先端部を嵌合することによってカプセル収容部を形成し、このカプセル収容部からポンプ部に向けて、弁機構を持つ空気導入通路が形成されている。また、上記ポンプ部の他側にはもうひとつの弁機構が設けられ、この弁機構と空気導入通路内の弁機構により、ポンプ部の押圧時にはカプセル収容部に空気導入通路を介して空気が供給され、ポンプ部の復帰時には外部から空気をポンプ部内に吸い込むようになっている。さらに、施薬装置は、円筒部材の先端部に嵌合するキャップを有し、このキャップの内側には軸方向に伸びる針を設け、円筒部材の凹形状部と開口部を有する先端部を嵌合させた状態でキャップをはめることにより、カプセルの軸方向両側に孔あけを行う構成となっている。
【0004】
このように構成される装置では、まずカプセルの孔あけには、粉状薬剤が充填されたカプセルを円筒部材の凹形状部に挿入した後に先端部を嵌合してカプセルをカプセル収納部に挿着し、固い樹脂でできた先端部にキャップをはめることにより、先端部にガイドされたキャップの内側に設けられた針により、カプセルの軸方向両側先端部に孔をあける。
【0005】
次に、薬剤を投与するには、円筒部材からキャップを外して先端部を使用者が片方の鼻孔に挿入し、ポンプ部を押圧することによりポンプ部からの空気が空気導入通路を介してカプセル内に流れ、カプセル内の薬剤を使用者の鼻腔内に送達して施薬する。また両鼻腔内への施薬は、先端部の挿入以下の動作を繰返して行うことにより両鼻腔内への施薬が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-34267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の経鼻投与用施薬装置では、(a)毎回の投与量の均一化向上、(b)保存容器の薬物保存性の向上、(c)投与操作の簡便化、且つ、(d)携帯性の向上といった観点から改良されたものは皆無に等しかった。
【0008】
すなわち、粉末薬剤の経鼻投与用施薬装置には、(i)複数回分の薬剤を投与器内の容器に集合して収納し、その容器から投与ごとに1回分の薬剤を分割して投与を行う多回投与器(例えば、WO2001/095962参照)、(ii)1回分の薬剤が収納されたカプセルやカートリッジなどの容器を投与ごとに投与器に装填して投与を行う単回投与器(特許文献1が相当)があり、(ii)の単回投与器の中には、単回使用ごとに投与器ごと廃棄しうる、いわゆる使い捨てのタイプがある。(i)の多回投与器は、1つの投与器の中に、複数回分の薬剤を収納しているため、携帯性や利便性という面で非常に有用である。一方で、投与ごとに、1回分の薬剤を分割する操作が必要であり、その操作を厳密に行わなければ、必要量の薬剤を正確に分割できず、結果として毎回安定して必要量の薬剤を投与できない可能性もあり、治療上、厳密な投与量のコントロールが必要な薬物には不向きである。また、複数回の薬剤が収納された容器は、使用期間中ずっと密封状態にすることは非常に困難であることから、吸湿しやすいあるいは酸化しやすい薬物は使用期間中に粉末薬剤が容器内で変性したり、分解したりしてしまう可能性がある。さらに、同じノズルを繰り返し使用するため、ノズル外部が鼻汁で汚れたり、ノズル内部に投与操作後の薬剤が付着残存したりするため、定期的にノズルを掃除することが必要となる。このように、多回投与器には、必要量の薬剤を毎回分割する操作が厳密であること、薬剤保管容器として密封性が低いこと、ノズル掃除が定期的に必要であることなど、投与量の確実性、薬剤の安定性確保、定期的なメンテナンスの必要性などの課題がある。
【0009】
一方、(ii)の単回投与器は、1回分の薬剤が収納されたカプセルやカートリッジなどの容器を投与ごとに投与器に装填して投与を行うため、必要量の薬剤を毎回確実に投与できるメリットがある。さらに、カプセルやカートリッジなどの容器は個別包装され、使用時まで密封保存できることから、吸湿や酸化しやすい薬物にも応用が比較的容易である。その一方で、特許文献1に開示されている装置のように、薬剤容器としてカプセルを採用し、投与ごとの事前準備として、カプセルを投与器に装填し、投与後に使用済みカプセルを投与器から取り出す操作が必要になる。また、投与ごとの事前準備として、針を使ってカプセルの上下に孔を開ける場合、カプセルの破片が薬剤に混入してしまう可能性や、孔の開き方が毎回安定せず、結果としてノズルからの薬剤の噴射性が安定しない可能性がある。また、例えば特許文献1に開示されている装置では、同じノズルを繰り返し使用するため、ノズル外部が鼻汁で汚れたり、ノズル内部に投与後の薬剤が付着残存したりするため、定期的にノズルを掃除することが必要となる。このように、単回投与器には、1回分の薬剤が収納された容器を投与器に装填および取り外しする操作や薬剤容器への孔あけ作業が投与ごとに必要となること、定期的なメンテナンスの必要性などの課題がある。
【0010】
さらに、従来の装置は、
・投与時の動作によって薬剤の噴出の態様が変わってしまう
・いわゆる使い捨てタイプの場合、噴射器の使い回しができない
・孔あけ時に生じた小さな破片が薬剤に混入するおそれがある
といった問題を含みうるものでもあったが、これらの観点から改良されたものもなかった。
【0011】
そこで、本発明は、毎回の投与量の均一化向上、保存容器の薬物保存性の向上、投与操作の簡便化、且つ携帯性の向上が可能であり、かつ、他の問題の解決にも結びつく構造の薬剤保管用のノズル付きカートリッジとその噴射器、および鼻腔用粉状薬剤施薬装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る薬剤保管用のノズル付きカートリッジは、
所定分量の粉状薬剤が充填される薬剤容器と、
該薬剤容器に形成された、粉状薬剤を噴出するノズル部と、
該ノズル部の開口部を閉塞する閉塞部材と、
薬剤容器の他の開口部を塞ぐ栓として機能し、薬剤投与時に開弁するバルブ部材と、
を備え、薬剤投与の際に噴射器に着脱可能である。
【0013】
上記のごときノズル付きカートリッジは、所定分量の粉状薬剤が充填される薬剤容器を備えていることから、好適には一回投与分の薬剤を充填しておくことで、毎回の投与量の均一化向上を実現しやすく、かつ、携帯性向上を実現しやすい。別言すれば、ノズル自体に、粉状薬剤(一回分の投入量を含む)の容器としての機能を併せ有させたものということもでき、投与量均一化向上と携帯性向上を実現しやすい構造であるといえる。
【0014】
また、上記のごときノズル付きカートリッジは、ノズル自体をカートリッジ化した構造でもあることから、ノズルの使い回しを不要とする。これによれば、ノズルが鼻汁などで汚れた場合には掃除が必要になるといった問題や、ノズル内に残存した薬剤が分解や変性が生じて、それらが生体に投与されてしまうといった問題など、ノズルの使い回しによる衛生面等での問題を克服することができる。
【0015】
また、上記のごときノズル付きカートリッジは、好適には一回投与分の薬剤を充填しておくものとすれば、使用するまで当該カートリッジの一つひとつを密封しておくことで、薬剤容器内での保存安定性に関わる薬効面、毒性面で生じうる問題(湿度や酸素等で分解や変性を起しやすい薬剤には不適だという問題)を解消すること、ひいては保存容器としての薬物保存性を向上させることができる。
【0016】
上記のノズル付きカートリッジにおいて、閉塞部材の開口部に、開封可能なカートリッジシールが貼付されていてもよい。
【0017】
上記のノズル付きカートリッジにおいて、薬剤容器の他の開口部に、バルブ部材を係止させる係止用溝部が形成されていてもよい。
【0018】
上記のノズル付きカートリッジにおいて、バルブ部材に、係止部に係止する係止用縁部が形成されていてもよい。
【0019】
上記のノズル付きカートリッジにおいて、バルブ部材に、係止用縁部に連なる軸部と、該軸部の係止用縁部から離間した位置に配置され、他の開口部の所定位置に引っ掛かる形状のストッパー部と、が形成されていてもよい。
【0020】
上記のノズル付きカートリッジにおいて、ストッパー部に、空気の流通を許容する空気流通部が形成されていてもよい。
【0021】
上記のノズル付きカートリッジにおいて、バルブ部材に、係止用縁部からノズル部の開口部に向けて尖る形状の尖状部が形成されていてもよい。
【0022】
上記のノズル付きカートリッジにおいて、バルブ部材の係止用縁部と軸部との間に、該軸部から係止用縁部に向けて径が拡大するテーパー部が形成されていてもよい。
【0023】
上記のノズル付きカートリッジにおいて、薬剤容器の他の開口部に、開弁後のバルブ部材またはそのテーパー部が当接する座部が形成されていてもよい。
【0024】
上記のノズル付きカートリッジにおいて、座部は、バルブ部材またはそのテーパー部に面接触する形状に形成されていてもよい。
【0025】
本発明の一態様に係る噴射器は、上記のカートリッジが取り付けられた状態で該カートリッジに空気を送り込み粉状薬剤を噴射する噴射器であって、
カートリッジに空気を送り込む送気装置と、
該送気装置の動きに連動してストロークする部材であって、該ストロークの途中の所定位置にてバルブ部材に直接または間接的に当接して該バルブ部材を開弁させる押圧部材と、
を備える。
【0026】
上記の噴射器において、当該噴射器の使用時に使用者が指を掛けることができる指掛け部が設けられていてもよい。
【0027】
上記の噴射器において、押圧部材に通気孔が形成されていてもよい。
【0028】
上記の噴射器において、押圧部材の端面に通気孔の開孔端が形成されていてもよい。
【0029】
上記の噴射器において、送気装置が蛇腹状のポンプを含むものであってもよい。
【0030】
上記の噴射器において、送気装置がシリンダーとプランジャーとを含むものであってもよい。
【0031】
本発明の一態様に係る鼻腔用粉状薬剤施薬装置は、上記いずれかのカートリッジが、上記いずれかの噴射器に組み合わされてなるものである。
【0032】
本発明の一態様に係る鼻腔用粉状薬剤施薬装置は、
所定分量の粉状薬剤が充填される薬剤容器と、該薬剤容器に形成された、粉状薬剤を噴出するノズル部と、該ノズル部の開口部を閉塞する閉塞部材と、薬剤容器の他の開口部を塞ぐ栓として機能し、薬剤投与時に開弁するバルブ部材と、を備える薬剤保管用のノズル付きカートリッジと、
カートリッジに空気を送り込み前記粉状薬剤を噴射する噴射器と、
があらかじめ組み合わされている装置である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、毎回の投与量の均一化向上、保存容器の薬物保存性の向上、投与操作の簡便化、且つ携帯性の向上が可能であり、かつ、他の問題の解決にも結びつく構造の薬剤保管用のノズル付きカートリッジとその噴射器、および鼻腔用粉状薬剤施薬装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態に係る経鼻薬剤投与用デバイス(鼻腔用粉状薬剤施薬装置)の外観を示す斜視図である。
図2】ノズルカバーを外した状態の経鼻薬剤投与用デバイスの斜視図である。
図3】カートリッジと噴射器とを分離した状態の経鼻薬剤投与用デバイスの斜視図である。
図4】経鼻薬剤投与用デバイス(鼻腔用粉状薬剤施薬装置)の分解斜視図である。
図5】カートリッジの構成例を示す分解組立図である。
図6】バルブ部材の構成例を示す正面図である。
図7】バルブ部材の底面図である。
図8】ノズルベースの構成例を示す平面図である。
図9】ノズルベースの正面図である。
図10図8のX-X線におけるノズルベースの断面図である。
図11】閉弁状態のバルブ部材とノズルベースを示す斜視図である。
図12】閉弁状態のバルブ部材とノズルベースの正面図である。
図13】開弁状態のバルブ部材とノズルベースを示す斜視図である。
図14】開弁状態のバルブ部材とノズルベースの正面図である。
図15図14のXV-XV線における開弁状態のバルブ部材とノズルベースの断面図である。
図16】(A)ポンプ圧縮前の経鼻薬剤投与用デバイスの内部構造を示す縦断面図と、(B)バルブ部材等の部分拡大図である。
図17】(A)ポンプ圧縮時の経鼻薬剤投与用デバイスの内部構造を示す縦断面図と、(B)バルブ部材等の部分拡大図である。
図18】(A)圧縮されたポンプが復帰した時の経鼻薬剤投与用デバイスの内部構造を示す縦断面図と、(B)バルブ部材等の部分拡大図である。
図19】使用者の指で経鼻薬剤投与用デバイスを挟み持った状態を示す図である。
図20】シリンダー式ポンプを送気装置として用いた経鼻薬剤投与用デバイスの一例について、(A)シリンダーを押し込む前、(B)シリンダーを押し込む途中、(C)シリンダーでバルブ部材を押し込み開弁させたとき の各状態を示す図である。
図21】ポンプを送気装置として用いた経鼻薬剤投与用デバイスの一例について、(A)ポンプを押し潰す前、(B)ポンプを押し潰したとき の各状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0036】
本実施形態の鼻腔用粉状薬剤施薬装置(以下、「経鼻薬剤投与用デバイス」ともいう)10は、カートリッジ20と、噴射器30とが組み合わされてなる(図3等参照)。
【0037】
<カートリッジ20の構成>
カートリッジ20は、薬剤保管に適したノズル付きのカートリッジであり、薬剤容器21、ノズル部22、ノズルカバー(閉塞部材)24、バルブ部材25、ノズルベース26などを備える(図4図5参照)。
【0038】
薬剤容器21は、その内部に所定分量の粉状薬剤Mが充填される容器である。本実施形態の薬剤容器21は、例えばテーパー状に形成されたノズル部22と、該ノズル部22に連なる筒状基部23とを備えており、ノズルの機能を併せ有するノズル兼薬剤容器として機能する(図5等参照)。
【0039】
薬剤容器21のノズル部22は、患者の鼻腔内に粉状製剤を施薬しやすくする先細形状で、必要に応じて先端付近に適度な丸みが付されている。ノズル部22の先端の中心には粉状薬剤Mを噴出する開口部22aが設けられている(図5等参照)。
【0040】
薬剤容器21の筒状基部23の内側には、ノズルベース26が装着される段付き形状の内部空間が形成されている(図5参照)。また、筒状基部23の内周面(内壁)には、薬剤容器21とノズルカバー24とを螺合させ、着脱可能な状態で一体化する際に用いられるねじ部(あるいは段部でもよい)23bが形成されている(図5参照)。
【0041】
ノズルカバー24は、薬剤容器21を覆うカバー部材である(図4等参照)。本実施形態のノズルカバー24は、その内側に、ノズル部22の開口部22aを閉塞する閉塞用突起24aを備えており(図5参照)、薬剤容器21を閉塞する部材(薬剤容器栓)として機能するように構成されている。ノズルカバー24の開口部24bには、カートリッジシール27が貼り付けられる。
【0042】
カートリッジシール27は、ノズルカバー24の内部空間を密封する部材であり、ノズルカバー24の開口部24bに貼り付けられる。カートリッジシール27の縁部分に、患者ら使用者が使用時に剥がし取りやすいようにつまみ部27aが形成されていてもよい(図5等参照)。
【0043】
バルブ部材25は、薬剤容器21の他の開口部23aを塞ぐ栓として機能し、薬剤投与時に開弁する部材である。本実施形態のバルブ部材25は、係止用縁部25a、軸部25b、ストッパー部25c、空気流通部25d、尖状部25e、空気流通溝25fを備えた構造となっている(図6図7等参照)。
【0044】
係止用縁部25aは、薬剤容器21の他の開口部23aに係止するように外周側に突出する大径部からなる(図6等参照)。本実施形態では、開口部23aに装着されるノズルベース26に係止用溝部26aを形成し、該係止用溝部26aにバルブ部材25の係止用縁部25aを気密もしくは密封の状態で係止させる構成としている(図16等参照)。係止用縁部25aが係止用溝部26aに係止した状態で、薬剤容器21の他の開口部23aは気密もしくは密封された状態となる。
【0045】
バルブ部材25の軸部25bは、係止用縁部25aに連なる軸によって形成される。軸部25bの端部(係止用縁部25aから離間した位置)にはストッパー部25cが形成されている。該ストッパー部25cは、他の開口部23aの所定位置、例えば、他の開口部23aに装着されるノズルベース26の度当たり部26bに当接して引っ掛かる形状・大きさに形成されている(図14等参照)。本実施形態のストッパー部25cおよび軸部25bは十字型に形成されており、ストッパー部25cには空気流通部25dが、また、軸部25bの周囲には、軸方向に沿って空気流通溝25fがそれぞれ形成されている(図6図7等参照)。バルブ部材25が開弁した状態において、上記の空気流通部25dおよび空気流通溝25fを流通して空気が外部からノズル部22の内部へ流れ込むことが可能である(図17参照)。
【0046】
また、バルブ部材25には、尖状部25e、テーパー部25gが形成されている。尖状部25eは、係止用縁部25aからノズル部22の開口部22aに向けて尖る形状(テーパー形状)に形成されており、開弁時に流通する空気が内向きの渦巻き流を形成するのを抑制し、その結果として、渦巻き流によってノズル内に粉末薬剤Mが滞留するのを抑制する(図6図17等参照)。テーパー部25gは、係止用縁部25aと軸部25bとの間に、該軸部25bから係止用縁部25aに向けて径が拡大するように形成されており、開弁時に流通する空気を拡散し、より均一な流れにする。
【0047】
ノズルベース26は、薬剤容器21の他の開口部23aに装着される部材である。本実施形態では、このノズルベース26にバルブ部材25を係止させて閉弁状態とし、開弁時には当該バルブ部材25の動作幅を規制するように構成している。本実施形態のノズルベース26は段付き形状であり、係止用溝部26a、度当たり部26b、透孔26c、座部26d、リブ26eを備えている(図8図15等参照)。
【0048】
係止用溝部26aは、ノズルベース26の中心に形成された透孔26cの途中の内径を部分的に大きくすることで形成されている(図10図15等参照)。係止用溝部26aは、バルブ部材25の係止用縁部25aが気密な状態で係止するとともに(閉弁状態)、開弁時には当該係止用溝部26aから係止用縁部25aが抜けてバルブ部材25が軸方向に動作するように形成されている。係止用溝部26aなどを含むノズルベース26の一部または全部は、圧力が作用した際にある程度の変形が可能な可撓性ないしは弾性を備える材質で形成されていてもよい。
【0049】
度当たり部26bは、バルブ部材25が軸方向に動作する際、当該バルブ部材25の動作幅を規制する。本実施形態では、ノズルベース26のうち、バルブ部材25のストッパー部25cが当接する部分である底面の一部を度当たり部26bとして機能させている(図15等参照)。バルブ部材25のストッパー部25cが度当たり部26bに当接した状態で、ノズルベース26の座部26dとバルブ部材25のテーパー部25gとの間には、空気が流通可能な環状の隙間Sが形成される(図15等参照)。
【0050】
座部26dは、開弁後のバルブ部材25が噴射器30へ向けて逆戻りした際、当該バルブ部材25の一部が当接する部位として形成されている。バルブ部材25の一部を座部26dに当接させることで、薬剤噴射後の空気の逆流時、残った薬剤が薬剤容器21から漏れ出るのを抑止することができる(図18等参照)。このような座部は、薬剤容器21(の他の開口部23a)に直接形成されていてもよいが、本実施形態では、ノズルベース26の一の開口部に皿モミ状の傾斜面を設けることにより、バルブ部材25のテーパー部25gが面接触する座部26dを形成している(図15図18等参照)。面接触とした場合、残った薬剤が漏れ出るのをより抑止しやすい。
【0051】
リブ26eは、薬剤容器21の内部にノズルベース26を固定するために設けられた突起からなる。一例として、本実施形態ではノズルベース26の外周の3箇所にリブ26eが等分配置されている(図8図9参照)。
【0052】
<噴射器30の構成>
噴射器30は、上記のごときカートリッジ20が取り付けられた状態で該カートリッジ20に空気を送り込み粉状薬剤Mを噴射する際に用いられるもので、例えば、ボディー31、蛇腹ポンプ(送気装置)33、ロッド(押圧部材)35などを備える(図4等参照)。
【0053】
送気装置はカートリッジ20に空気を送り込むための装置である。送気装置の一例として本実施形態では、圧縮される際に空気を送り出し、弾性力によって圧縮状態から元の形に復元する際に空気を吸い込む蛇腹ポンプ33を採用する(図4図16等参照)。
【0054】
ロッド35は、その先端部35cが蛇腹ポンプ33の開口部33aから突出した状態で蛇腹ポンプ33の内部に配置され、薬剤投与の際に押し込まれるとともに、蛇腹ポンプ33の復元動作に連動してストロークする部材である。ロッド35は、ストローク動作の途中、所定の位置にてバルブ部材25(のストッパー部25c)に当接し、当該バルブ部材25を押し込んで物理的に開弁させる長さに形成されている(図16図17等参照)。
【0055】
ロッド35には、先端部35cの他、軸部35a、指当て部35e、開孔35d、開孔端35bが形成されている。軸部35aは、先端部35cと指当て部35eとを繋いでおり、その周囲(より具体的には、ボディー31のスリーブ部31eとの隙間)を空気が流通可能な大きさと形状、たとえば横断面が十字である形状に形成されている。
【0056】
ロッド35の指当て部35eは、患者等の使用者(患者に施薬する医師等らも使用者に含まれる)が自らの親指を押し当ててロッド35および蛇腹ポンプ33を押し込みやすい形状(例えば、フランジが形成されて指との接触領域が広げられた形状、指との接触面が緩やかに膨出する形状、等)に形成されている(図4図16等参照)。
【0057】
ロッド35の開孔35dは、指当て部35eの例えば中心に、使用者がロッド35および蛇腹ポンプ33を押す際はその開孔端35bが親指で自然と塞がるように形成されている。なお、使用者がロッド35および蛇腹ポンプ33を押しきった後は親指の力が抜けて開孔端35bから空気流入が可能な状態となる(図18参照)。なお、開孔端35bから流入した空気は、開孔35を通過した後、軸部35aの周囲を通過する。
【0058】
ボディー31は、蛇腹ポンプ33、ロッド35が取り付けられる筐体である。ボディー31には、ボディー開口部31a、筒状部31b、指掛け部31c、ねじ部31d、スリーブ部31eが形成されている(図4等参照)。
【0059】
ボディー開口部31aは蛇腹ポンプ33の開口部33aと連通しており、蛇腹ポンプ33が伸縮するのに伴い空気を出入りさせる。ボディー開口部31aが形成される筒状部31bにはねじ部31dが設けられており、カートリッジ20が、例えば筒状基部23の内周面に形成されたねじ部23bを含む螺合構造を利用して取り付け可能である。
【0060】
指掛け部31cは、親指以外の2本の指(通常、人差し指と中指)を引っ掛け、指当て部35eに宛がった親指とで経鼻薬剤投与用デバイス10を挟み持ち、この状態でロッド35を押し込むことで粉状薬剤Mを噴出させることができる(図19参照)。
【0061】
スリーブ部31eは、筒状部31bから連なりボディー開口部31aとは逆の方向へ伸びる筒状部分である(図4図16等参照)。スリーブ部31eは、その内径が、ロッド35の外径より僅かに大きくなるように形成されており、その内側に配置されるロッド35が軸方向にストロークする際、側方へ偏らずにまっすぐ動作させるガイドとして機能する(図16図17等参照)。
【0062】
<経鼻薬剤投与用デバイス10の使用>
経鼻薬剤投与用デバイス10の使用の仕方、動作等について説明する(図16図18等参照)。
【0063】
ノズルカバー24からカートリッジシール27を剥がし取り、カートリッジ20を噴射器30に取り付け(図1図3参照)、ノズルカバー24を取り外す(図2参照)。カートリッジシール27およびノズルカバー24を外すまで、カートリッジ20は密封容器として機能しており、粉状薬剤Mの保存性に優れる。また、カートリッジシール27が無い状態でも、気密容器としては勿論、短時間であれば密封容器としても機能することから、酸素や湿度の影響を受けやすい粉状薬剤Mにも対応しやすい。
【0064】
蛇腹ポンプ33を圧縮する前の状態において、バルブ部材25はノズルベース26に固定され未開放の状態(閉弁状態)にある(図16参照)。この状態で、使用者は経鼻薬剤投与用デバイス10を指で挟み持ち(図19参照)、ノズル部22を鼻孔に向ける。
【0065】
使用者が親指でロッド35を押し上げると、開孔端35bが親指で塞がれた状態で蛇腹ポンプ33と内部の空気が圧縮される。ロッド35をさらに所定の位置まで押し上げると、その先端部35cがバルブ部材25(のストッパー部25c)に当接し、当該バルブ部材25を物理的に押し込む。
【0066】
ロッド35によって物理的に押し込まれると、バルブ部材25の係止用縁部25aがノズルベース26の係止用溝部26aを抜け出て、バルブ部材25が開放した状態(開弁状態)となる(図15図17参照)。バルブ部材25が開放した直後、ストッパー部25cが度当たり部26bに当接したところでバルブ部材25および該バルブ部材25を押し込むロッド35の動きが規制される。
【0067】
バルブ部材25が開放した状態(開弁状態)になると、蛇腹ポンプ33内の空気は、空気流通部25d→空気流通溝25f→(ノズルベース26の座部26dとバルブ部材25のテーパー部25gとの間の)隙間S を通って薬剤容器21に流れ込み、ノズル部22の開口部22aから粉状薬剤Mを噴出させる(図15図17参照)。このとき、バルブ部材25の尖状部25eが、開弁時に流通する空気が内向きの渦巻き流を形成するのを抑制し、その結果として、渦巻き流によってノズル内に粉末薬剤Mが滞留するのを抑制することから、粉状薬剤Mは効率よくノズル外へと噴出される。また、テーパー部25gが、ノズル内壁に沿う空気も形成することから、より均一で高効率な噴射が可能になる。
【0068】
粉状薬剤Mの噴出後、使用者が親指の力を抜くと、蛇腹ポンプ33はその弾性力によって元の形に復元し、この動きに連動してロッド35は元の位置までストロークする。このとき、薬剤噴出時とは逆となる空気の流れにより、バルブ部材25は引き込まれて逆戻りし、そのテーパー部25gが座部26dに面接触して密着した状態となり、逆止弁として機能する。このため、噴出しきれず薬剤容器21内に残った残余薬剤が蛇腹ポンプ33内に引き込まれることが抑止される(図18参照)。
【0069】
<経鼻薬剤投与用デバイス10の特徴>
ここまで説明した本実施形態の経鼻薬剤投与用デバイス10の特徴を以下に記す。
【0070】
ノズルを使い回しする従来のデバイスには衛生面の課題(ノズルが鼻汁などで汚れた場合には掃除が必要)があったのに対し、本実施形態の経鼻薬剤投与用デバイス10においてはノズル付きのカートリッジ20を採用して(ノズル自体をカートリッジ化して)使い切りとしたことから、使い回しする場合の課題が生じえない。
【0071】
また、ノズルを使い回しする従来のデバイスにはノズル内に残存した薬剤が分解や変性をし、その分解物や変性物が投与されてしまう課題(ノズルの掃除が必要)があったのに対し、本実施形態の経鼻薬剤投与用デバイス10においてはノズル自体をカートリッジ化して使い切りとしたことから、使い回しする場合のこのような課題も生じえない。
【0072】
従来のデバイスにおいては、保存安定性の低い薬物ついては、薬剤容器内での保存安定性確保が課題(湿度や酸素等で分解や変性を起しやすい薬剤には不適)があったのに対し、本実施形態の経鼻薬剤投与用デバイス10においてはノズルカバー24をカートリッジシール27でシールして密封容器として機能させることでこのような課題が生じないようにしている。また、カートリッジ20は、カートリッジシール27が無い状態でも、気密容器としては勿論、短時間であれば密封容器としても機能する。従って、酸素や湿度に弱い薬剤にも応用しやすい。
【0073】
従来のデバイスにおいては、ポンプやデバイス内部へ薬剤が落ち込み、噴射量が低下したり、次回の薬剤投与の際に落ち込んだ薬剤が追加投与されたりして、投与量が安定しない課題があったのに対し、本実施形態の経鼻薬剤投与用デバイス10においては、バルブ部材25を開放するのと同時に、噴射が開始されること、および、蛇腹ポンプ33が復元する時にはバルブ部材25が逆止弁として機能することにより、蛇腹ポンプ33内へ薬剤が引き込まれるおそれが極めて小さい。
【0074】
従来のデバイスにおいては、ニードル等でシールを破ったりカプセルを穿刺したりして薬剤容器の施栓に空気の通路孔を開ける際、容器の破片が生じ、生体に投与されてしまうという課題があったのに対し、本実施形態の経鼻薬剤投与用デバイス10においてはニードル等でシールを破ったりカプセルを穿刺したりはしないのでこのような課題が生じえない。
【0075】
従来のデバイスにおいては、薬剤容器の施栓に空気の通路孔を開ける際、通気孔の開き方にバラつきがあり、結果として薬剤の噴射態様が変化してしまう薬効面での課題があったのに対し、本実施形態の経鼻薬剤投与用デバイス10においては噴射器30のみの使い回しを可能とした構成であり、毎回(薬剤投与の度)同様の空気流路が形成されるため、安定した噴射態様で薬剤を投与することができる。
【0076】
従来のデバイスにおいては、ポンプの押し方次第で噴射態様が変化してしまう課題があったのに対し、本実施形態の経鼻薬剤投与用デバイス10においては一定の空気圧の状況下でバルブ部材25が開放され、かつ、ロッド35のストローク量および蛇腹ポンプ33の伸縮量が定量であり一定の空気圧と空気量で流れるため、噴射態様が安定している。
【0077】
従来のデバイスにおいては、カプセルやカートリッジの取り付け操作を含む投与前の準備が煩雑である場合があったのに対し、本実施形態の経鼻薬剤投与用デバイス10においてはカートリッジ20の噴射器30に対する取り付け操作が、カートリッジ20からカートリッジシール27を剥がして、噴射器30に取り付け、ノズルカバー24を取り外すことで完了するため、簡便である。すなわち、従来デバイスにおいては、例えば特許文献1のように、投与には、(1)PTP包装からカプセルを取り出す→(2)ノズルを取り外す→(3)カプセルを投与器(ノズル内部)内に装填→(4)ノズルを取り付けて→(5)ノズルキャップを取り付けることで、ノズルキャップ内に取り付けられた針でカプセルを貫通させ、孔を開ける→(6)ノズルキャップを取り外す→(7)ポンプを押して投与、とう過程が必要であるのに対し、本願の経鼻薬剤投与用デバイス10においては、(1)カートリッジシール27を剥がす→(2)カートリッジ20を噴射器30に取り付ける→(3)ノズルカバー24を取り外す→(4)蛇腹ポンプ33を押して投与、という操作で済む。
【0078】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態では特に説明はしなかったが、カートリッジ20や噴射器30を構成する各部材の材質は一般的に用いられている樹脂材料などとすることができる。
【0079】
また、上述した実施形態では、噴射器30を構成する送気装置の一例として蛇腹ポンプ33を用いたものを説明したがこれは好適な一例にすぎない。この他、例えば、シリンダー37aとプランジャー37bとを含むシリンダー式ポンプ37を送気装置として用いてもよい(図20参照)。プランジャー37bの先端に、バルブ部材25を物理的に押し込む押込み用突起37cが形成されていてもよい。このようなシリンダー式ポンプ37は、カートリッジ20を付け替えて複数回使用可能である。ただし、使用前にプランジャー37bの位置を戻す必要がある。あるいは、握りながら押し潰して空気を送り込むポンプ38を送気装置として用いてもよい(図21参照)。
【0080】
また、上述した実施形態では、ノズルカバー24からカートリッジシール27を剥がし取る構造のカートリッジ20を例示しながら説明したが、これは使用時に開封可能なカートリッジ20の好適な一例にすぎない。この他、例えば、カートリッジシール27を破って開封するようにすることも、開封可能な構造の一例である。破いて開封する場合、粉状薬剤Mなどの薬剤を十分に噴出できる程度の大きさまで破れていることが望ましい。また、カートリッジ20を噴射器30に取り付ける際の動作、例えば、薬剤容器21の開口部23aを噴射器30の筒状部31bの縁(あるいは図示していないが何かしらの突起状部品または突起状部分、等)に押し当てる動作、あるいは、薬剤容器21の筒状基部23のねじ部(あるいは段部)23bを噴射器30のねじ部31dに螺合させる動作等によってカートリッジシール27が自動的に破れて開封する構造であってもよい。
【0081】
また、上述した実施形態では、使用の際にカートリッジシール27を開封し、カートリッジ20を噴射器30に取り付けて使用できるようにした構造を説明したが、これも経鼻薬剤投与用デバイス10またはこれを構成するカートリッジ20や注射器30の好適な一例にすぎない。この他、例えば、カートリッジ20と注射器30とをあらかじめ組み合わせた状態の経鼻薬剤投与用デバイス10とすることもできる(図1図2等参照)。こうした場合、上述した実施形態におけると同様、毎回の投与量の均一化向上、保存容器としての経鼻薬剤投与用デバイス10における薬物保存性の向上、投与操作の簡便化、携帯性の向上といった、従来のデバイスでは難しかった種々の点を実現することが可能である。
【0082】
上述したごとき経鼻薬剤投与用デバイス10、あるいはこれを構成するカートリッジ20は経鼻薬剤を投与するための装置として好適であるが、用途はとくにこれに限られることはない。例えば、経鼻投与は、これまでは鼻炎治療を主とした局所治療が主であったが、最近は、偏頭痛やがん性疼痛を緩和する薬物など、全身作用を期待する薬物を鼻粘膜から吸収させることを狙った経鼻薬剤についても数多く商品化されており、経鼻薬剤投与用デバイス10の用途にはこのようなものも含まれる。また、薬物を鼻腔内の嗅部から脳へ移行させる研究も行われており、経鼻薬剤投与用デバイス10の用途には鼻腔内の嗅部へと経鼻薬剤を送達すようなものも含まれる。さらに、医薬品開発においては、厳密な投与量のコントロールや厳密な保存管理を必要とする、バイオ医薬品の開発が活発化しており、これらの医薬品を経鼻応用するニーズも高まっており、このような用途も含まれる。
【0083】
経鼻薬剤を投与する以外の具体的な他例として以下のようなものが挙げられる。
・低分子化合物、ペプチド薬、ワクチン、核酸、タンパク、抗体などの生理活性物質を保管するために用いられる、カートリッジ。
・低分子化合物、ペプチド薬、ワクチン、核酸、タンパクなどの生理活性物質を投与するために用いられる、経鼻薬剤投与用デバイス(鼻腔用粉状薬剤施薬装置)。
・鼻炎や副鼻腔炎などに対する局所作用のために用いられる、経鼻薬剤投与用デバイス(鼻腔用粉状薬剤施薬装置)。
・全身作用を期待する薬物を鼻粘膜から吸収させるために用いられる、経鼻薬剤投与用デバイス(鼻腔用粉状薬剤施薬装置)。
・粘膜免疫作用のために用いられる、経鼻薬剤投与用デバイス(鼻腔用粉状薬剤施薬装置)。
・鼻腔内の嗅部を介した薬物の脳移行のために用いられる、経鼻薬剤投与用デバイス(鼻腔用粉状薬剤施薬装置)。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、鼻腔用粉状薬剤施薬装置やその構成部品たるノズル付きカートリッジ、噴射器に適用して好適である。
【符号の説明】
【0085】
10…経鼻薬剤投与用デバイス(鼻腔用粉状薬剤施薬装置)、20…カートリッジ、21…薬剤容器、22…ノズル部、22a…ノズル部の開口部、23…筒状基部、23a…(噴射器側の)他の開口部、23b…ねじ部、24…ノズルカバー(閉塞部材)、24a…閉塞用突起、24b…開口部、25…バルブ部材、25a…係止用縁部、25b…軸部、25c…ストッパー部、25d…(ストッパー部の)空気流通部、25e…尖状部、25f…空気流通溝、25g…テーパー部、26…ノズルベース、26a…係止用溝部、26b…度当たり部、26c…透孔、26d…座部、26e…リブ、27…カートリッジシール、27a…つまみ部、30…噴射器、31…ボディー、31a…ボディー開口部、31b…筒状部、31c…指掛け部、31d…ねじ部、31e…スリーブ部、33…蛇腹ポンプ(送気装置)、33a…開口部、35…ロッド(押圧部材)、35a…軸部、35b…開孔端、35c…先端部、35d…開孔、35e…指当て部、37…シリンダー式ポンプ(送気装置)、37a…シリンダー、37b…プランジャー、37c…押込み用突起、38…ポンプ(送気装置)、M…粉状薬剤、S…隙間
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
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図11
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