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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】α-ENaC発現のRNAi阻害
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20221013BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 3/12 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61P9/12
A61P13/12
A61P3/12
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020046007
(22)【出願日】2020-03-17
(62)【分割の表示】P 2017149211の分割
【原出願日】2008-06-13
(65)【公開番号】P2020094063
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】07110376.6
(32)【優先日】2007-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】07114265.7
(32)【優先日】2007-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515162958
【氏名又は名称】アローヘッド ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ヒノ・ファン・ヘーケ
(72)【発明者】
【氏名】エマ・ヒックマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー・ルーク・ダナヘイ
(72)【発明者】
【氏名】パメラ・タン
(72)【発明者】
【氏名】アンケ・ガイック
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ペーター・フォルンロッハー
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-320327(JP,A)
【文献】国際公開第2006/071410(WO,A2)
【文献】国際公開第2006/081546(WO,A2)
【文献】国際公開第2006/066158(WO,A2)
【文献】特表2001-514521(JP,A)
【文献】特表2002-502610(JP,A)
【文献】特表2006-520587(JP,A)
【文献】国際公開第2004/089423(WO,A2)
【文献】Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol., 2006, Vol.290, L649-L660
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号193のヌクレオチド1~19を含むセンス鎖と、配列番号194のヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖とを含む、iRNA剤。
【請求項2】
前記センス鎖が配列番号193からなり、そして前記アンチセンス鎖が配列番号194からなる、請求項1に記載のiRNA剤。
【請求項3】
前記アンチセンスRNA鎖が30以下のヌクレオチド長であり、iRNA剤の二本鎖領域が15~30ヌクレオチド対の長さである、請求項1又は2に記載のiRNA剤。
【請求項4】
iRNA剤に生体サンプルにおいて高い安定性を持たせる修飾を含む、請求項1又は2に記載のiRNA剤。
【請求項5】
ホスホロチオエートまたは2'-修飾ヌクレオチドを含む、請求項1又は2に記載のiRNA剤。
【請求項6】
少なくとも1つの5'-ウリジン-アデニン-3'(5'-ua-3')ジヌクレオチド(ここで、ウリジンは2'-修飾ヌクレオチドである);少なくとも1つの5'-ウリジン-グアニン-3'(5'-ug-3')ジヌクレオチド(ここで、5'-ウリジンは2'-修飾ヌクレオチドである);少なくとも1つの5'-シチジン-アデニン-3'(5'-ca-3')ジヌクレオチド(ここで、5'-シチジンは2'-修飾ヌクレオチドである);または少なくとも1つの5'-ウリジン-ウリジン-3'(5'-uu-3')ジヌクレオチド(ここで、5'-ウリジンは2'-修飾ヌクレオチドである)を含む、請求項1又は2に記載のiRNA剤。
【請求項7】
前記2'-修飾が、2'-デオキシ、2'-デオキシ-2'-フルオロ、2'-O-メチル、2'-O-メトキシエチル(2'-O-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAOE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)および2'-O-N-メチルアセトアミド(2'-O-NMA)からなる群から選択される、請求項5又は6に記載のiRNA剤。
【請求項8】
1~4個の不対ヌクレオチドを有するヌクレオチドオーバーハングを含む、請求項1又は2に記載のiRNA剤。
【請求項9】
前記ヌクレオチドオーバーハングが2個または3個の不対ヌクレオチドを有する、請求項8に記載のiRNA剤。
【請求項10】
前記ヌクレオチドオーバーハングがiRNA剤のアンチセンス鎖の3'末端にある、請求項8に記載のiRNA剤。
【請求項11】
上皮受容体リガンドを含む、請求項1~10のいずれかに記載のiRNA剤。
【請求項12】
肺の細胞による取り込みに関して標的化される、請求項1~11のいずれかに記載のiRNA剤。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のiRNA剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
iRNA剤が対象の細胞または組織におけるα-ENaC発現のレベルを低下させるのに十分な量で投与される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
a)請求項1~12のいずれか一項に記載のiRNA剤と、
b)薬学上許容される担体
を含む、医薬組成物。
【請求項16】
嚢胞性繊維症に罹患しているヒト対象の治療において使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載のiRNA剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
リドル症候群に罹患しているヒト対象の治療において使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載のiRNA剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
ヒト対象において高血圧症および/または腎不全の治療および/または予防において使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載のiRNA剤を含む、医薬組成物。
【請求項19】
ヒト対象において電解質平衡異常の治療および/または予防において使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載のiRNA剤を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ENaC媒介気道イオン輸送の分野ならびにα-ENaC発現を調節するための組成物および方法に関し、より具体的には、吸入/鼻腔内投与によって肺および鼻道に局所投与されるか、または例えば静注により全身投与される、RNA干渉を介したオリゴヌクレオチドによるα-ENaCのダウンレギュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
RNA干渉または「RNAi」は、二本鎖RNA(dsRNA)を蠕虫に導入した際に遺伝子発現を遮断することができるという発見を表現するためにFireと共同研究者らが最初に造り出した言葉である(Fire et al., Nature 391:806-811, 1998)。短いdsRNAは、脊椎動物を含む多くの生物において遺伝子特異的な転写後サイレンシングを導き、遺伝子機能を研究するための新たなツールを提供している。この技術は最近度々、総説されている(例えば、出典明示により本明細書の一部とされるNovina, C.D:, and Sharp, P., Nature 2004, 430:161、およびSandy, P., et al., Biotechniques 2005, 39:215参照)。
【0003】
環境と身体の境界にある粘膜表面は多くの防御機構を進化させてきた。このような先天的防御の基本型は、これらの表面を液体で洗うことである。一般に、粘膜表面上の液層の量は、しばしば水(および対陽イオン)と結びついた陰イオン(Clおよび/またはHCO )分泌を反映する上皮の液体分泌と、しばしば水と対陰イオン(Clおよび/またはHCO )と結びついたNa吸収を反映する上皮液体吸収との間のバランスを反映する。粘膜表面の多くの疾病は、分泌(少なすぎる)と吸収(相対的に多すぎる)との間のアンバランスによって作り出される粘膜表面の保護液が少なすぎることによって引き起こされる。これらの粘膜の機能不全の特徴である塩輸送プロセスの欠陥は、粘膜表面の上皮層に帰する。粘膜表面の保護液層を補充する1つのアプローチは、Naチャネルにより媒介される液体吸収を遮断することにより、この系の「バランスを取り戻す」ことである。Naおよび液体の吸収の律速段階を媒介する上皮タンパク質は上皮Naチャネル(ENaC)である。α-ENaCは、上皮の表層側、すなわち、粘膜表面と環境の境界に位置する。α-ENaCにより媒介されるNa媒介液体吸収の阻害は、治療的有用性を達成する可能性がある。よって、ヒトおよび動物において、α-ENaCが関連する疾病または障害(例えば嚢胞性繊維症)の治療または予防のために有効な治療、特に効率の高い治療を開発する必要がある。高い有効性のための1つの必要条件は、有効成分の生理学的環境での分解が速すぎないことである。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、薬剤の吸入、鼻腔内投与または気管内投与により、対象、例えばヒトなどの哺乳類においてα-ENaCレベルを低下させるのに有用な特定の組成物および方法を提供する。
【0005】
本発明は具体的には、α-ENaCの少なくとも15個以上の連続するヌクレオチドからなる、またはそれらから本質的になる、またはそれらを含むiRNA剤、より具体的には、表1A~1Dに示される配列の1つに由来する少なくとも15個以上の連続するヌクレオチドを含む薬剤を提供する。該iRNA剤は好ましくは、一鎖当たり30個未満のヌクレオチド、例えば、表1A~1Dに示されるものなどの21~23個のヌクレオチドを含む。二本鎖iRNA剤は平滑末端か、またはより好ましくは、該薬剤の一方または双方の3'末端から1~4個のヌクレオチドのオーバーハングを有し得る。
【0006】
さらに、iRNA剤は天然に存在するリボヌクレオチドサブユニットのみを含んでもよいし、あるいは該薬剤に含まれる1個以上のリボヌクレオチドサブユニットの糖、リン酸基または塩基に1以上の修飾を含むように合成することもできる。iRNA剤は、例えばコレステロールなどの薬剤の安定性、分布または細胞取り込みを改良するよう選択されたリガンドと結合するようにさらに修飾することもできる。iRNA剤はさらに単離形態であってもよいし、あるいは本明細書に記載されている方法に用いる、特に、肺もしくは鼻道送達用に製剤された、または非経腸投与(parental administration)用に製剤された医薬組成物としての医薬組成物の一部であってもよい。該医薬組成物は1種以上のiRNA剤を含んでよく、いくつかの態様では、それぞれα-ENaC遺伝子の異なるセグメントに向けられた2種以上のiRNA剤を含む。
【0007】
本発明の一局面は、少なくとも1個の非天然核酸塩基を含む二本鎖オリゴヌクレオチドに関する。特定の態様では、該非天然核酸塩基はジフルオロトリル、ニトロインドリル、ニトロピロリルまたはニトロイミダゾリルである。好ましい態様では、該非天然核酸塩基はジフルオロトリルである。特定の態様では、二本鎖オリゴヌクレオチドを含む2本のオリゴヌクレオチド鎖の一方だけが非天然核酸塩基を含む。特定の態様では、二本鎖オリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド鎖の双方が独立して非天然核酸塩基を含む。
【0008】
本発明はさらに、細胞においてα-ENaC mRNAのレベルを低下させる方法を提供する。このような方法は、以下にさらに記載される通り、対象に本発明のiRNA剤の1種を投与するステップを含む。本方法は、細胞において標的RNAを選択的に分解するために、RNA干渉に関わる細胞機構を利用し、細胞を本発明のiRNA剤の1種と接触させる工程からなる。このような方法は細胞に直接行うこともできるし、あるいは本発明のiRNA剤/医薬組成物の1種を対象に投与することにより、哺乳類対象に行うこともできる。細胞における標的RNAの減少は、産生されるコードタンパク質の量の減少をもたらし、そして、生物においては、上皮電位差の低下、液体吸収の減少および粘膜絨毛クリアランスの増加をもたらす。
【0009】
本発明の方法および組成物は、例えば、前記方法およびiRNA剤組成物は本明細書に記載のいずれの用量および/または製剤でも、ならびに本明細書に記載のいずれの投与経路でも使用可能である。
【0010】
本発明の1以上の態様の詳細を、添付の図面および以下の説明で示す。本発明の他の特徴、目的および利点は本明細書、図面および特許請求の範囲から明らかとなる。本願は、引用されている参照文献、特許および特許出願の全体を、全ての目的のために、出典明示により包含する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】クローニングされたカニクイザルα-EnaCのpXoon構築物の制限消化マップ
図2-1】カニクイザルα-EnaCのタンパク質およびDNA配列
図2-2】カニクイザルα-EnaCのタンパク質およびDNA配列
図2-3】カニクイザルα-EnaCのタンパク質およびDNA配列
図3】推定オフ標的およびオン標的認識部位のAY535007デュアルルシフェラーゼリポーター構築物へのクローニング。フラグメントは19ntの推定標的部位および5'末端と3'末端の双方の10ntのフランキング配列からなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の特定の好ましい態様の詳細な説明
説明を容易にするため、「ヌクレオチド」または「リボヌクレオチド」とは、本明細書では、RNA剤の1個以上のモノマーサブユニットを指して用いられる場合がある。本明細書において用語「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」の使用は、修飾RNAまたはヌクレオチドサロゲートの場合、以下にさらに記載される通り、修飾ヌクレオチド、または、1個以上の位置のサロゲート置換部分も指す。
【0013】
本明細書において「RNA剤」は、非修飾RNA、修飾RNAまたはヌクレオシドサロゲートであり、これらはそれぞれ本明細書に記載されているか、またはRNA合成分野において周知のものである。多くの修飾RNAおよびヌクレオシドサロゲートが記載されているが、好ましい例は、非修飾RNAよりも大きなヌクレアーゼ分解耐性を有するものを含む。好ましい例は、2'糖修飾、一本鎖オーバーハング、好ましくは3'一本鎖オーバーハングにおける修飾、または特に一本鎖であるならば、1個以上のリン酸基またはリン酸基1個以上の類似体を含む5'修飾を有するものが挙げられる。
【0014】
本明細書において「iRNA剤」(「干渉RNA剤」の省略形)とは、標的遺伝子、例えば、ENaC遺伝子SCNN1Aの発現をダウンレギュレーションし得るRNA剤である。理論に縛られるものではないが、iRNA剤は、当技術分野でRNAiと呼ばれる場合がある標的mRNAの転写後切断、または転写前もしくは翻訳前機構を含むいくつかの機構の1個以上によって作用し得る。
【0015】
本明細書において「ds iRNA剤」(「二本鎖iRNA剤」の省略形)とは、鎖内ハイブリダイゼーションが二本鎖構造の領域を形成できる、1個を超える、好ましくは2個の鎖を含むiRNA剤である。本明細書において「鎖」とは、ヌクレオチド(天然に存在しないまたは修飾ヌクレオチドを含む)の連続配列を指す。これらの2個以上の鎖は別個の分子であってもよいし、またはそれぞれ別個の分子の一部を形成していてもよく、あるいはそれらは例えばリンカー、例えばポリエチレングリコールリンカーと共有結合的に相互接続して1個の分子を形成してもよい。少なくとも1個の鎖は、標的RNAに十分相補的な領域を含み得る。このような鎖は「アンチセンス鎖」と呼ばれる。dsRNA剤の第二の鎖は、アンチセンス鎖と相補的な領域を含み、「センス鎖」と呼ばれる。しかしながら、ds iRNA剤はまた、少なくとも部分的に自己相補的であり、二本鎖領域を含む、例えばヘアピンまたはパンハンドル構造を形成する一RNA分子からも形成できる。後者は本明細書では、短鎖ヘアピンRNAまたはshRNAと呼ばれる。このような場合、「鎖」とは、同じRNA分子の別の領域に相補的なRNA分子の領域の1個を指す。
【0016】
哺乳類細胞では、長鎖ds iRNA剤は多くの場合有害なインターフェロン応答を誘発し得るが、短鎖ds iRNA剤は、少なくとも細胞および/または宿主に有害な程度までにはインターフェロン応答を誘発しない(Manche et al., Mol. Cell. Biol. 12:5238, 1992; Lee et al., Virology 199:491, 1994; Castelli et al., J. Exp. Med. 186:967, 1997; Zheng et al., RNA 10:1934, 2004; Heidel et al., Nature Biotechnol. 22 1579)。本発明のiRNA剤は、正常な哺乳類細胞において有害な非特異的インターフェロン応答を誘発しないよう十分短い分子を含む。よって、iRNA剤を含む組成物(例えば、本明細書に記載されている通りに製剤されたもの)の対象への投与を用いて、インターフェロン応答を回避しつつ、対象においてα-ENaCの発現を低下させることができる。有害なインターフェロン応答を誘発しないよう十分に短い分子は本明細書ではsiRNA剤またはsiRNAと呼ばれる。本明細書において「siRNA剤」または「siRNA」とは、哺乳類、特にヒト細胞において有害なインターフェロン応答を誘発しないよう十分に短いiRNA剤、例えばds iRNA剤を指し、例えば、それは60個未満、好ましくは、50個、40個または30個未満のヌクレオチド対の二本鎖領域を有する。
【0017】
ds iRNA剤およびsiRNA剤を含む、本明細書に記載されている単離されたiRNA剤は、例えばRNA分解によりα-ENaC発現の低下を媒介する。便宜上、このようなRNAはまた、本明細書においてサイレンシングされるRNAとも呼ばれる。このような核酸はまた、「標的RNA」、場合によっては「標的RNA分子」または場合によっては「標的遺伝子」とも呼ばれる。
【0018】
本明細書において「RNAiを媒介する」とは、配列特異的に標的遺伝子をサイレンシングする薬剤の能力を指す。「標的遺伝子をサイレンシングする」とは、該薬剤と接触していないときに標的遺伝子の特定の産物を含有および/または発現する細胞が、該薬剤と接触していない同等の細胞と比べて、該薬剤と接触したときはこのような遺伝子産物を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%少なくしか含まないおよび/または発現しないプロセスを意味する。このような標的遺伝子の産物は例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、タンパク質または調節エレメントであり得る。
【0019】
本明細書において「相補的」とは、本発明の化合物と標的RNA分子、例えばα-ENaC mRNAの間で安定かつ特異的な結合が生じるような十分な相補性の程度を示すために使用される。特異的結合には、特異的結合が望まれる条件下、すなわち、in vivoアッセイもしくは治療的処置の場合には生理学的条件下、またはin vitroアッセイの場合にはアッセイが行われる条件下で、オリゴマー化合物と非標的配列との非特異的結合を回避するのに十分な相補性程度が必要である。非標的配列は一般に、少なくとも2個、3個または4個のヌクレオチドで標的配列と異なる。
【0020】
本明細書において、iRNA剤は、そのiRNA剤が細胞において標的RNAによりコードされるタンパク質の生産を低下させるならば、標的RNA、例えば標的mRNA(例えば、α-ENaC mRNA)と「十分相補的」である。iRNA剤はまた標的RNAと「厳密に相補的」であってもよく、例えば、標的RNAとiRNA剤はアニーリングして、好ましくは、厳密に相補的な領域においてもっぱらワトソン-クリック塩基対からなるハイブリッドを形成する。「十分相補的」なiRNA剤は、標的α-ENaC RNAと厳密に相補的な内部領域(例えば、少なくとも10個のヌクレオチド)を含み得る。さらに、いくつかの態様では、iRNA剤は、一ヌクレオチドの違いを特異的に識別する。この場合、iRNA剤は、一ヌクレオチドの違い(例えば、7ヌクレオチド以内)の領域に厳密な相補性が見られる場合にのみRNAiを媒介する。好ましいiRNA剤は表1A~1Dに示されるセンス配列およびアンチセンス配列に基づくか、またはそれらからなるか、またはそれらを含む。
【0021】
本明細書において第一のヌクレオチド配列を第二のヌクレオチド配列と比較して表す際に用いる「本質的に同一」とは、第一のヌクレオチド配列が、1個、2個または3個までのヌクレオチド置換(例えば、アデノシンがウラシルで置換)を除き、第二のヌクレオチド配列と同一であることを意味する。本明細書において、表1A~1DのiRNA剤の1個に由来するが、ヌクレオチドの欠失、付加または置換によりそれとは同一でないiRNA剤を指して用いる「培養ヒト細胞においてα-ENaC発現を阻害する能力を本質的に保持する」とは、誘導されたiRNA剤が、それが由来する表1A~1DのiRNA剤の阻害活性より20%以上低くない阻害活性を有することを意味する。例えば、培養ヒト細胞中に存在するα-ENaC mRNAの量を70%低下させる表1A~1DのiRNA剤に由来するiRNA剤はそれ自体、培養ヒト細胞においてα-ENaC複製を阻害する能力を本質的に保持するとみなされるためには、培養ヒト細胞中に存在するmRNAの量を少なくとも50%低下させ得る。所望により、本発明のiRNA剤は培養ヒト細胞中に存在するα-ENaC mRNAの量を少なくとも50%低下させ得る。
【0022】
本明細書において「対象」とは、α-ENaCにより媒介される障害に対する処置を受ける哺乳類生物を指す。対象は、ウシ、ウマ、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ヤギまたは霊長類などのいずれの哺乳類であってもよい。好ましい態様において、対象はヒトである。
【0023】
iRNA剤の設計および選択
本明細書において「α-ENaC発現に関連する障害」とは、(1)α-ENaCの存在により少なくとも部分的に媒介され、また、(2)その転帰がα-ENaC存在のレベルを低下させることにより影響を受け得る何らかの生物学的または病理学的状態を指す。α-ENaC発現に関連する特定の障害を以下に示す。
【0024】
本発明は、α-ENaCを標的とするiRNA剤の設計、合成および生成、ならびにin vitroにおけるiRNA剤と共にインキュベートした後の培養細胞におけるα-ENaC遺伝子のサイレンシングの証明、およびその結果としてのα-ENaC媒介障害に対する保護効果に基づくものである。
【0025】
iRNA剤は、配列情報および所望の特徴に基づいて合理的に設計することができる。
例えば、iRNA剤は候補二本鎖の相対的融解温度に従って設計することができる。一般に、二本鎖は、アンチセンス鎖の3'末端よりもアンチセンス鎖の5'末端の融解温度が低くなければならない。
【0026】
本発明は、1種以上のα-ENaC転写物を標的とするsiRNAおよび/またはshRNAを含有する組成物を提供する。
【0027】
選択される特定の遺伝子標的に関して、本発明に従って用いるためのsiRNAまたはshRNAの設計は、好ましくはある特定の指針に従う。また、多くの場合では、本発明に従って細胞へ送達される該薬剤は、有効な抑制剤となる前に1個以上のプロセシング工程を受けてもよく(さらなる考察は下記を参照);このような場合、当業者ならば、関連薬剤が好ましくは、そのプロセシングに必要とされ得る配列を含むように設計されることが分かるであろう。
【0028】
上皮ナトリウムチャネルの機能不全により媒介される疾病には、上皮膜を通過する液体容積の調節に関連する疾病が含まれる。例えば、気道表面液の容積は粘膜絨毛クリアランスおよび肺の健康の維持の鍵となるレギュレーターである。上皮ナトリウムチャネルの遮断は、気道上皮の粘膜側における液体蓄積を促進し、それにより、粘液クリアランスを促進し、呼吸器系組織(肺気道を含む)における粘液および痰の蓄積を防ぐ。このような疾病としては、嚢胞性繊維症、原発性腺毛ジスキネジア、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、気道感染(急性および慢性;ウイルスおよび細菌)および肺癌などの呼吸器系疾病が含まれる。上皮ナトリウムチャネルの遮断により媒介される疾病はまた、上皮を通過する異常な液体調節に関連する、おそらく、それらの表面での保護表面液の異常な生理学を含む呼吸器系疾患以外の疾病、例えば、口内乾燥症(口渇)または乾性角結膜炎(keratoconjunctivitis sire)(ドライアイ)を含む。さらに、腎臓における上皮ナトリウムチャネルの遮断は、利尿を促進し、それにより降圧効果を誘発するために使用可能であろう。
本発明の処置は対症的または予防的であり得る。
【0029】
喘息には、内因性(非アレルギー性)喘息と外因性(アレルギー性)の双方の喘息、軽度喘息、中度喘息、重度喘息、気管支炎性喘息、運動誘発喘息、職業性喘息および細菌感染後に誘発される喘息が含まれる。喘息の処置はまた、喘鳴症状を示し、大きな医学的懸念の確立された患者カテゴリーである「喘鳴小児」と診断された、または診断可能な、また、現在では初期または早期喘息患者と同定されることが多い、例えば4歳または5歳未満の対象の処置を含むとも理解すべきである。(便宜上、この特定の喘息症状は「喘鳴小児症候群」と呼ばれる。)
【0030】
喘息の処置における予防有効性は、例えば急性喘息性発作もしくは気管支収縮性発作などの症候性発作の頻度もしくは重篤度の軽減、肺機能の改善または気道過敏性の改善により証明される。それはまたさらに、例えば抗炎症治療(例えばコルチコステロイド)または気管支拡張治療などの対症療法、すなわち症候性発作が起こった際にそれを制限もしくは阻止するため、またはその制限もしくは阻止を意図した治療の必要性の低減によって証明され得る。喘息における予防的利益は特に「モーニング・ディッピング(Morning dipping)」を受けやすい対象において明白となろう。「モーニング・ディッピング」は、喘息患者のかなりの割合で共通の、例えば午前4~6時頃、すなわち前に投与された対症的喘息治療から通常相当離れた時点での喘息発作を特徴とする認知された喘息症状である。
【0031】
慢性閉塞性肺疾患には、慢性気管支炎またはそれに関連する呼吸困難、気腫ならびにその他の薬物治療、特に、その他の吸入薬物治療の結果である気道過敏性の増悪が含まれる。本発明はまた、例えば、急性、アラキジン酸性、カタル性、クループ性、慢性または結核性気管支炎を含むいずれのタイプまたは起源の気管支炎の処置にも適用可能である。
【0032】
本明細書に示される結果に基づけば、本発明は、培養細胞において、また、対象、例えば哺乳類、例えばヒトにおいて、α-ENaC発現を低下させるiRNA剤を提供する。
表1A~1Dは、表Aに示される標準的な命名省略形に基づき、α-ENaCを標的とする例示的iRNA剤を示す。
【0033】
表1Aの配列番号305~608、表1Bおよび表1Dの配列番号1519~1644は、3'末端と末端から2番目のチミジン間の1つのホスホロチオエート結合の他には、ヌクレオチド修飾を含まないsiRNAを挙げたものである。表1A~1Dの残りの配列番号は、センス鎖では、ピリミジン塩基を含む全ヌクレオチドが2'-O-メチル修飾ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖では、5'-ua-3'の配列構成の全ウリジンならびに5'-ca-3'の配列構成の全シチジンが2'-O-メチル修飾ヌクレオチドであるsiRNAを挙げたものである。
【0034】
これらの結果に基づき、本発明は特に、表1A~1Dに示される薬剤のセンス鎖配列の少なくとも15個の連続するヌクレオチドを有するセンス鎖と、表1A~1Dに示される薬剤のアンチセンス配列の少なくとも15個の連続するヌクレオチドを有するアンチセンス鎖を含むiRNA剤を提供する。
【0035】
表1A~1Dに示されるiRNA剤は、標的配列と相補的または同一の、19ヌクレオチド長の二鎖および3'-Tオーバーハングからなる。本発明は、これらの配列に由来する少なくとも15個または少なくとも16個、17個もしくは18個もしくは19個の連続するヌクレオチドを含む薬剤を提供する。しかしながら、これらの長さは最適である可能性があるが、iRNA剤はこれらの長さに限定されるものではない。当業者ならば、ある長さの範囲内で、有効性は鎖長よりもむしろヌクレオチド配列に関わるので、より長い、またはより短いiRNA剤も同様に有効であり得ることを十分に知っている。例えば、Yang, et al., PNAS 99:9942-9947 (2002)は、21~30塩基対の長さのiRNA剤では同等の有効性であることを証明している。他にも、およそ15塩基対の長さにまで減らしたiRNA剤により遺伝子の有効なサイレンシングが示されている(Byrom, et al., “Inducing RNAi with siRNA Cocktails Generated by RNase III” Tech Notes 10(1), Ambion, Inc., Austin, TX)。
【0036】
よって、表1A~1Dに示される配列の1つに由来するiRNA剤の作製のために、表1A~1Dに示される配列から15~19個の間のヌクレオチドの部分配列を選択することが可能であり、本発明により意図される。あるいは、表1A~1Dに示される配列の1つ、またはこれらの薬剤の1つに由来する15個の連続するヌクレオチドを含む薬剤に、必ずしも必要ではないが好ましくは、付加されるヌクレオチドが例えばα-ENaCなどの標的遺伝子の個々の配列と相同となるように、1個または数個のヌクレオチドを付加することもできる。例えば、これらの薬剤の1つに由来する最初の15ヌクレオチドを、α-ENaC mRNAにおいてこれらの配列の5'側に見られる8ヌクレオチドと組み合わせて、センス鎖およびアンチセンス鎖に23ヌクレオチドを有する薬剤を得ることができる。このような誘導iRNA剤は全て、それらが培養ヒト細胞においてα-ENaC複製阻害能を本質的に保持している限り、本発明のiRNA剤に含まれる。
【0037】
iRNA剤のアンチセンス鎖は、14、15、16、17、18、19、25、29、40または50ヌクレオチド長以上でなければならない。それは60、50、40または30ヌクレオチド長以下でなければならない。好ましい範囲は15~30、17~25、19~23および19~21ヌクレオチド長である。
【0038】
iRNA剤のセンス鎖は、14、15、16、17、18、19、25、29、40または50ヌクレオチド長以上でなければならない。それは60、50、40または30ヌクレオチド長以下でなければならない。好ましい範囲は15~30、17~25、19~23および19~21ヌクレオチド長である。
【0039】
iRNA剤の二本鎖部分は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、29、40または50ヌクレオチド対以上の長さでなければならない。それは60、50、40または30ヌクレオチド対以下の長さでなければならない。好ましい範囲は15~30、17~25、19~23および19~21ヌクレオチド対の長さである。
【0040】
一般に、本発明のiRNA剤は、そのiRNA剤またはそのフラグメントがα-ENaC遺伝子のダウンレギュレーションを媒介し得るに十分α-ENaC mRNAと相同であり、そしてヌクレオチドの観点で十分な長さの領域を含む。iRNA剤と標的遺伝子の間に完全な相補性がある必要はないが、その一致は、iRNA剤またはその切断産物が例えばα-ENaC mRNAのRNAi切断により配列特異的サイレンシングを指令できるよう十分なものでなければならない。
【0041】
よって、本発明のiRNA剤は、培養ヒト細胞におけるα-ENaC発現を阻害する能力を本質的に保持しながら、一鎖当たりにそれぞれ1個、2個または3個を超えないヌクレオチドが他のヌクレオチドにより置換(例えば、アデノシンがウラシルで置換)されていること以外は表1A~1Dの配列の1つと、以下に定義されるように本質的に同一である少なくとも16個、17個または18個のヌクレオチドの配列をそれぞれ含むセンス鎖とアンチセンス鎖を含む。よって、これらの薬剤は、標的α-ENaC配列に対して、またはセンス鎖とアンチセンス鎖の間に1個、2個または3個の塩基のミスマッチが導入されていること以外は、表1A~1Dの配列の1つと同一である少なくとも15個のヌクレオチドを有する。特にアンチセンス鎖においては、標的α-ENaC RNA配列に対するミスマッチは、その末端領域において最も許容性が高く、存在する場合には、末端領域、例えば、5'および/または3'末端の6、5、4または3ヌクレオチド以内に存在するのが好ましく、センス鎖の5'末端またはアンチセンス鎖の3'末端の6、5、4または3ヌクレオチド以内に存在するのが最も好ましい。センス鎖は、分子の全体的二本鎖特徴を維持するのに十分アンチセンス鎖と相補的でありさえすればよい。
【0042】
センス鎖およびアンチセンス鎖は、iRNA剤が分子の一方または双方の末端に一本鎖または不対領域を含むように選択されることが好ましい。よって、iRNA剤は、好ましくは、オーバーハング、例えば1または2個の5'または3'オーバーハング、好ましくは、2~3ヌクレオチドの3'オーバーハングを含むように対合したセンス鎖とアンチセンス鎖を含む。ほとんどの態様は3'オーバーハングを有する。好ましいiRNA剤は、iRNA剤の一方または双方の末端に、1~4または好ましくは2もしくは3ヌクレオチド長の一本鎖オーバーハング、好ましくは3'オーバーハングを有する。これらのオーバーハングは、一方の鎖が他方よりも長いためか、または同じ長さの2本の鎖が互い違いになっているためであり得る。オーバーハングを形成する不対ヌクレオチドはリボヌクレオチドであり得るか、またはデオキシリボヌクレオチド、好ましくはチミジンであり得る。5'末端は好ましくはリン酸化され、またはリン酸化されていなくてもよい。
【0043】
この二本鎖領域に好ましい長さは、15~30ヌクレオチド長の間、最も好ましくは、18、19、20、21、22および23ヌクレオチド長、例えば上述のsiRNA剤の範囲である。siRNA剤は長鎖dsRNA由来の天然ダイサープロセシング産物(Dicer processed products)と長さおよび構造を模倣できる。siRNA剤の二鎖が連結、例えば、共有結合している態様も含まれる。必要な二本鎖領域をもたらすヘアピンまたはその他の一本鎖構造および好ましくは3'オーバーハングも本発明の範囲内である。
【0044】
候補iRNA剤の評価
上述の通り、本発明は、α-ENaCの阻害剤として有用なsiRNAを同定するための系を提供する。上述の通り、shRNAは細胞内でプロセシングされてshRNAの基幹構造と同じ配列を有する二本鎖部分を有するsiRNAをもたらすため、この系はα-ENaCの阻害剤として有用なshRNAを同定するのにも等しく有用である。説明のために、この章ではsiRNAについて述べるが、この系は対応するshRNAも包含する。具体的には、本発明は、α-ENaC活性の阻害を標的とするsiRNAの作製の成功を示す。本明細書に記載されている技術および試薬は、他の遺伝子または遺伝子領域を標的とする可能性のある新規なsiRNAを設計するために容易に適用し、本明細書に記載の通りα-ENaCの阻害におけるそれらの活性を試験することができる。
【0045】
本発明の種々の態様では、可能性のあるα-ENaC阻害剤を、候補siRNAを細胞に(例えば、外的投与によるか、またはsiRNAの内的合成を指令するベクターもしくは構築物を細胞に導入することによる)、または肺もしくは鼻腔投与により実験動物に導入することによって、内的α-ENaC発現の抑制に関して試験することができる。あるいは、可能性のあるα-ENaC阻害剤は、α-ENaC-発現プラスミドとともに候補siRNAの一時的同時トランスフェクションによりin vitroで試験することもできる。
その後、候補siRNAの、標的転写物レベルを低下させる、および/または上皮電位差または気道表面液体吸収などのα-ENaC活性の1個以上の側面または特徴を阻害または抑制する能力を評価する。
【0046】
発明のsiRNA組成物が送達された細胞または実験動物(試験細胞/動物)を、本発明の組成物を受容していない類似のまたは同等な細胞または実験動物(対照細胞/動物、例えば、siRNAを受容していないか、または緑色蛍光タンパク質(GFP)などの非内因性転写物を標的とするsiRNAのような対照siRNAを受容した細胞/動物)と比較することができる。本発明のsiRNAが試験細胞タイプ/種との配列交差反応性を有するならば、試験細胞/動物のイオン輸送表現型を対照細胞/動物の表現型と比較できる。
α-ENaCタンパク質および短絡電流(in vitroまたはex vivo)の生産を、試験細胞/動物と対照細胞/動物とで比較してもよい。ex vivo上皮電位差またはin vivo粘膜絨毛(mucocilliary)クリアランスまたは全身磁気共鳴画像法(MRI)を含むα-ENaC活性の他の特徴も同様に比較することができる。一般に、試験細胞/動物および対照細胞/動物は同種のものであり、細胞では、類似または同一の細胞タイプのものである。例えば、同じ細胞系統に由来する細胞を比較することができる。試験細胞が一次細胞である場合には、一般に、対照細胞も一次細胞である。
【0047】
例えば、候補siRNAのα-ENaC活性阻害能は好都合には、(i)候補siRNAを細胞に送達すること、(ii)α-ENaC mRNAの発現レベルを内的に発現される対照遺伝子に対して評価すること、(iii)siRNAの存在下で生じたin vitro細胞モデルのアミロライド感受性電流をsiRNAの不在下で生じた量と比較することによって決定することができる。このアッセイは、α-ENaC活性に間接的に影響を及ぼし得るすべての標的転写物を標的とするsiRNAの試験にも使用可能であり、ENaCチャネルサブユニットをコードする転写物を標的とするsiRNAに限定されない。
【0048】
候補siRNAの、標的転写物のレベルを低下させる能力は、例えば、ノーザンブロット、ヌクレアーゼ保護アッセイ、プローブハイブリダイゼーション、逆転写(RT)-PCR、リアルタイムRT-PCR、マイクロアレイ分析などを用いて標的転写物の量を測定することにより評価することができる。候補siRNAの、標的転写物によりコードされるポリペプチドの産生を阻害する(転写レベルまたは転写後レベルのいずれかにおいて)能力は、限定されるものではないが、ウエスタンブロット、イムノアッセイ、ELISA、フローサイトメトリー、タンパク質マイクロアレイなどを含む種々の抗体に基づくアプローチを用いて測定することができる。一般に、標的転写物または標的転写物によりコードされるポリペプチドのいずれかの量を測定する方法が使用可能である。
【0049】
一般に、特定の好ましいα-ENaC iRNA阻害剤は、標的転写物レベルを、その阻害剤の不在下で(例えば、その阻害因子を欠く同等な対照細胞において)呈されるレベルに対し、少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約4倍、より好ましくは少なくとも約8倍、少なくとも約16倍、少なくとも約64倍またはそれ以上の程度まで低下させる。
一般に、特定の好ましいα-ENaC iRNA阻害剤は、阻害剤を含まない対照細胞よりも阻害剤を含む細胞で活性が少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約4倍、より好ましくは少なくとも約8倍、少なくとも約16倍、少なくとも約64倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍またはいっそう高い程度で低くなるほどENaCチャネル活性を阻害する。
【0050】
特定の好ましいα-ENaC iRNA阻害剤は、ENaCチャネル活性をsiRNAの投与および細胞の感染後、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、少なくとも144時間または少なくとも168時間阻害する。特定の好ましいα-ENaC阻害剤は、α-ENaC活性を、siRNAの投与後少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間または少なくとも60時間阻止する(すなわち、検出不能なレベルにまで低下させる)または有意に低下させる。本発明の種々の態様によれば、α-ENaC活性の有意な低下は、siRNAの不在下で生じるレベルのおよそ90%未満への低下、siRNAの不在下で生じるレベルのおよそ75%未満への低下、siRNAの不在下で生じるレベルのおよそ50%未満への低下、siRNAの不在下で生じるレベルのおよそ25%未満への低下、またはsiRNAの不在下で生じるレベルのおよそ10%未満への低下である。α-ENaC活性の低下は、限定されるものではないが、in vitroにおけるアミロライド感受性の短絡電流測定、ex vivoにおける上皮電位差またはin vivoにおける粘膜絨毛(mucocilliary)クリアランスまたは全身/肺MRIを含む好適ないずれの方法を用いて測定してもよい。
【0051】
iRNA剤の安定性試験、修飾および再試験
候補iRNA剤は、安定性、例えば、そのiRNA剤が対象の体内に導入されたときなどのエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼによる切断に対するその感受性に関して評価することができる。修飾、特に切断、例えば対象の体内に見られる成分による切断に対して感受性のある部位を同定するための方法を使用することができる。このような方法は、例えば血清、血漿、痰、脳脊髄液または細胞もしくは組織ホモジネートなどの単離されたin vitro生物媒体とともにインキュベートした後に、またはin vivoにおいて対象を候補iRNA剤と接触させた後に候補iRNA剤の分解により形成される最も豊富なフラグメントの単離および同定、それによる切断を受けやすい部位の同定を含む。このような方法は例えば、限定されるものではないが、2005年5月27日出願の国際特許出願公報WO2005115481の中にある。
【0052】
切断感受性のある部位が同定されれば、例えば、切断部位への2'-修飾、例えば2'-O-メチル基の導入により、その可能性のある切断部位が切断耐性となる、さらなるiRNA剤を設計および/または合成することができる。このさらなるiRNA剤を安定性に関して再試験することができ、iRNA剤が所望の安定性を示すことが判明するまでこのプロセスを繰り返せばよい。
【0053】
in vivo試験
α-ENaC遺伝子発現を阻害し得ることが確認されたiRNA剤を動物モデル(例えば、マウス、ラット、モルモットまたは霊長類などの哺乳類)でin vivo機能性に関して試験することができる。例えば、iRNA剤を動物に投与し、そのiRNA剤をその生体分布、安定性およびそのα-ENaC発現阻害能またはα-ENaCにより少なくとも部分的に媒介される生物プロセスまたは病理プロセスを調節する能力に関して評価することができる。
【0054】
iRNA剤は注射によるなど、標的組織に直接投与することもできるし、またはiRNA剤はヒトに投与する場合と同様にして動物モデルに投与することができる。好ましくは、iRNA剤は、鼻腔内投与、吸入または気管内投与などにより、対象の気道に送達される。
【0055】
iRNA剤はまたその細胞内分布に関して評価することもできる。この評価は、iRNA剤が細胞に取り込まれたどうかを判定することを含み得る。この評価はまた、iRNA剤の安定性(例えば半減期)を判定することも含み得る。in vivoにおけるiRNA剤の評価は、追跡可能なマーカー(例えば、フルオレセインなどの蛍光マーカー;35S、32P、33PまたはHなどの放射性標識;金粒子;または免疫組織化学用の抗原粒子)とコンジュゲートしたiRNA剤を用いることで容易にすることができる。
【0056】
iRNA剤は、α-α-ENaC発現をダウンレギュレーションするその能力に関して評価することができる。in vivoにおけるα-ENaC遺伝子発現のレベルは例えばin situハイブリダイゼーションにより、またはiRNA剤曝露前後の組織からのRNAの単離により測定することができる。組織を採取するために動物を犠牲にする必要がある場合には、非処置対照動物を比較に用いる。α-ENaC RNAは、限定されるものではないが、RT-PCR、ノーザンブロット、分岐DNAアッセイまたはRNAアーゼ保護アッセイを含むいずれの所望の方法によっても検出可能である。その代わりに、またはその上に、α-ENaC遺伝子発現を、ウエスタンブロット分析またはiRNA剤で処理した組織抽出物に対する免疫染色を行うことでモニタリングすることができる。
【0057】
可能性のあるα-ENaC阻害剤は、開発された種々の動物モデルのいずれを用いても試験可能である。候補siRNA、宿主細胞内でこのようなsiRNAの合成を指令することができる構築物もしくはベクター、または候補siRNAを含むように加工もしくは操作された細胞を含む組成物を動物に投与することができる。この組成物の、α-ENaC発現を抑制する、および/またはENaC依存性表現型を改変する、および/または可能性のあるα-ENaC阻害剤を受容してない動物に比べてそれらの重篤度を緩和する能力を評価する。このような方法には、限定されるものではないが、ENaC依存性表現型についてマウス、ラット、モルモット、ヒツジおよび非ヒト霊長類モデルが含まれ、これらは全て当技術分野で公知であり、可能性のあるα-ENaC治療薬の有効性を試験するために用いられる。
【0058】
候補となる治療用siRNA剤を同定するために発明された系を用い、好適な治療薬がDuplex識別名ND-8302、ND-8332、ND-8348、ND-8356、ND-8357、ND-8373、ND-8381、ND-8396、ND-8450およびND-8453から、より好適にはND-8356、ND-8357およびND-8396から選択される。
【0059】
iRNAの化学
本明細書では、単離されたiRNA剤、例えば、α-ENaC遺伝子の発現を阻害するためのRNAiを媒介するds RNA剤を記載する。
【0060】
本明細書で述べられるRNA剤には、それ以外の点では修飾されていないRNAならびに例えば有効性を改良するために修飾されたRNAおよびヌクレオシドサロゲートのポリマーが含まれる。非修飾RNAは、核酸の成分、すなわち、糖、塩基およびリン酸部分が天然に見られるものと、好ましくは、ヒト体内に天然に見られるものと同じまたは本質的に同じである分子を指す。この用語は、稀なまたは通常ではないが、天然に存在する修飾RNAとしてのRNAを指している(例えば、Limbach et al. Nucleic Acids Res. 22: 2183-2196, 1994参照)。しばしば修飾RNAと呼ばれる(明らかに、それらは一般に転写後修飾の結果であるため)このような稀なまたは通常でないRNAは、本明細書で用いる非修飾RNAという用語の範囲内にある。本明細書において修飾RNAは、核酸の1個以上の成分、すなわち、糖、塩基およびリン酸部分が天然に見られるものとは異なる、好ましくはヒト体内に見られるものとは異なる分子を指す。それらは修飾「RNA」と呼ばれるが、もちろん修飾のためにRNAではない分子も含む。ヌクレオシドサロゲートは、リボリン酸主鎖が、塩基を適正な空間関係で提供可能とする非リボリン酸構築物で置換され、その結果、ハイブリダイゼーションがリボリン酸主鎖で見られるものと実質的に同様となった分子(例えば、リボリン酸主鎖の非電荷ミミックス)である。上記の例を本明細書で述べる。
【0061】
本明細書に記載されている修飾は、本明細書に記載されている二本鎖RNAおよびRNA様分子、例えばiRNA剤のいずれに組み込むこともできる。iRNA剤のアンチセンスおよびセンス鎖の一方または双方を修飾することが望まれることがある。核酸はサブユニットまたはモノマーのポリマーであるので、下記の修飾の多くは核酸内で繰り返される部分に存在する(例えば、塩基またはリン酸部分またはリン酸部分の非連結酸素の修飾)。
いくつか場合には、修飾は核酸の全ての対象位置に存在するが、多くの場合、実際にはほとんどの場合には、そうでない。例として、修飾は3'または5'末端の位置にのみ存在してもよいし、末端領域、例えば、末端ヌクレオチドまたは鎖の最後の2、3、4、5もしくは10ヌクレオチドの位置のみに存在してもよい。修飾は二本鎖領域に存在しても、一本鎖領域に存在しても、またはその双方であってもよい。例えば、非連結O位におけるホスホロチオエート修飾は一方または双方の末端のみに存在してもよく、末端領域、例えば、末端ヌクレオチドまたは鎖の最後の2、3、4、5もしくは10ヌクレオチドの位置のみに存在してもよく、あるいは二本鎖および一本鎖領域、特に末端に存在してもよい。同様に、修飾はセンス鎖、アンチセンス鎖または双方に存在し得る。いくつかの場合では、センス鎖とアンチセンス鎖は同じ修飾または同じ種類の修飾を有するが、他の場合では、センス鎖とアンチセンス鎖は異なる修飾を有し、例えばいくつかの場合では、一方の鎖、例えばセンス鎖のみを修飾することが望まれる場合がある。
【0062】
iRNA剤への修飾の導入のための2つの主要な目的は、生体環境における分解に対するそれらの安定化と薬理学的特性、例えば、薬力学的特性の改良(以下で詳しく述べる)である。iRNA剤の糖、塩基または主鎖に対する他の好適な修飾は、2004年1月16日出願のPCT出願番号PCT/US2004/01193に記載されている。iRNA剤は、2004年4月16日出願のPCT出願番号PCT/US2004/011822に記載されている塩基などの非天然塩基を含み得る。iRNA剤は、非炭水化物環式担体分子などの非天然糖も含み得る。iRNA剤で用いるための非天然糖の特徴の例は、2003年4月16日出願のPCT出願番号PCT/US2004/11829に記載されている。
【0063】
iRNA剤は、ヌクレアーゼ耐性を増強するのに有用なヌクレオチド間結合(例えば、キラルホスホロチオエート結合)を含み得る。それに加えて、またはその代わりに、iRNA剤は、ヌクレアーゼ耐性の増強するためのリボースミミックを含み得る。ヌクレアーゼ耐性を増強するためのヌクレオチド間結合およびリボースミミックの例は、2004年3月8日出願のPCT出願番号PCT/US2004/07070に記載されている。
【0064】
iRNA剤は、オリゴヌクレオチド合成のためにリガンドコンジュゲートモノマーサブユニットおよびモノマーを含み得る。モノマーの例は2004年8月10日出願の米国出願番号10/916,185に記載されている。
【0065】
iRNA剤は、2004年3月8日出願のPCT出願番号PCT/US2004/07070に記載されているものなどのZXY構造を有し得る。
【0066】
iRNA剤は、両親媒性部分と複合体を形成させることができる。iRNA剤とともに用いるための両親媒性部分の例は、2004年3月8日出願のPCT出願番号PCT/US2004/07070に記載されている。
【0067】
別の態様では、iRNA剤はモジュール複合体(modular complex)を特徴とする送達剤と複合体を形成することができる。この複合体は、(a)縮合剤(例えば、イオン的または静電気的相互作用を介して核酸を誘引し得る、例えば結合し得る薬剤);(b)融合誘導因子(例えば、融合および/または細胞膜を経た輸送が可能な薬剤);および(c)標的基、例えば、細胞または組織標的化薬剤、例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質または特殊な細胞種と結合するタンパク質、例えば抗体のうち1個以上(好ましくは2個以上、より好ましくは3個全て)と連結された担体剤を含み得る。送達剤と複合体を形成したiRNA剤は、2004年3月8日出願のPCT出願番号PCT/US2004/07070に記載されている。
【0068】
iRNA剤は、iRNA二本鎖のセンス配列とアンチセンス配列の間などに非標準対合を有し得る。非標準iRNA剤の特徴の例は、2004年3月8日出願のPCT出願番号PCT/US2004/07070に記載されている。
【0069】
ヌクレアーゼ耐性の増強
iRNA剤、例えば、α-ENaCを標的とするiRNA剤は、増強されたヌクレアーゼ耐性を有し得る。
【0070】
耐性を増強する1つの方法は、2004年5月4日出願の米国出願番号60/559,917に記載されている通り、切断部位を同定し、そのような部位を切断を阻害するように改変することである。例えば、ジヌクレオチド5'-ua-3'、5'-ca-3'、5'-ug-3'、5'-uu-3'または5'-cc-3'は切断部位として使用され得る。特定の態様では、iRNA剤の全てのピリミジンはセンス鎖、アンチセンス鎖または両鎖において2'-修飾を有し、従って、このiRNA剤は増強されたエンドヌクレアーゼ耐性を有する。ヌクレアーゼ耐性の増強はまた、2005年5月27日出願の国際出願番号PCT/US2005/01893に記載されている通り、5'ヌクレオチドを修飾して、例えば、少なくとも1つの5'-ウリジン-アデニン-3'(5'-ua-3')ジヌクレオチド(ここで、ウリジンは2'-修飾ヌクレオチドである);少なくとも1つの5'-シチジン-アデニン-3'(5'-ca-3')ジヌクレオチド(ここで、5'-シチジンは2'-修飾ヌクレオチドである);少なくとも1つの5'-ウリジン-グアニン-3'(5'-ug-3')ジヌクレオチド(ここで、5'-ウリジンは2'-修飾ヌクレオチドである);少なくとも1つの5'-ウリジン-ウリジン-3'(5'-uu-3')ジヌクレオチド(ここで、5'-ウリジンは2'-修飾ヌクレオチドである);または少なくとも1つの5'-シチジン-シチジン-3'(5'-cc-3')ジヌクレオチド(ここで、5'-シチジンは2'-修飾ヌクレオチドである)を得ることにより達成することができる。iRNA剤は、このようなジヌクレオチドを少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つ含み得る。特に好ましい態様では、センス鎖、アンチセンス鎖または両鎖における配列モチーフ5'-ua-3'および5'-ca-3'の全ての場合において5'ヌクレオチドは修飾ヌクレオチドである。好ましくは、センス鎖、アンチセンス鎖または両鎖における配列モチーフ5'-ua-3'、5'-ca-3'および5'-ug-3'の全ての場合において5'ヌクレオチドは修飾ヌクレオチドである。より好ましくは、センス鎖における全てのピリミジンヌクレオチドは修飾ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖における配列モチーフ5'-ua-3'および5'-ca-3'の全ての場合において5'ヌクレオチドは修飾ヌクレオチドであり、または配列モチーフ5'-ug-3'の全ての場合においてアンチセンス鎖は5'-ua-3'および5'-ca-3'モチーフのいずれも含まない。
【0071】
好ましくは、2'-修飾ヌクレオチドは、例えば、2'-修飾リボースユニットを含み、例えば、2'-ヒドロキシル基(OH)はいくつかの異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾または置換することができる。
【0072】
「オキシ」-2'ヒドロキシル基修飾の例としては、アルコキシまたはアリールオキシ(OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖);ポリエチレングリコール(PEG)、O(CHCHO)CHCHOR;2'ヒドロキシルが、例えばメチレン橋により同じリボース糖の4'炭素に接続されている「ロック」核酸(LNA);O-アミンおよびアミノアルコキシ、O(CH)アミン、(例えば、アミン=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノまたはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)が挙げられる。メトキシエチル基(MOE)のみを含有するオリゴヌクレオチド(OCHCHOCH、PEG誘導体)は強固なホスホロチオエート修飾で修飾されたものに匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すことが注目される。
【0073】
「デオキシ」修飾は水素(すなわち、部分的ds RNAのオーバーハング部分に特に関連するものであるデオキシリボース糖);ハロ(例えば、フルオロ);アミノ(例えば、NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノまたはアミノ酸);NH(CHCHNH)CHCH-アミン(アミン=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノまたはジヘテロアリールアミノ)、-NHC(O)R(R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、シアノ;メルカプト;アルキル-チオ-アルキル;チオアルコキシ;およびアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニルおよびアルキニル(所望によりアミノ官能基で置換されていてもよい)を含む。
【0074】
好ましい置換基は2'-メトキシエチル、2'-OCH、2'-O-アリル、2'-C-アリルおよび2'-フルオロである。
【0075】
オリゴヌクレオチド主鎖にフラノース糖を含めることも、エンドヌクレアーゼによる切断を低下させ得る。iRNA剤は3'陽イオン基を含ませることにより、または3'末端において3'-3'結合を用いてヌクレオシドを逆転させることによりさらに修飾することができる。もう1つの選択肢において、3'末端をアミノアルキル基で遮断することができる(例えば、3' C5-アミノアルキルdT)。その他の3'コンジュゲートは3'-5'エキソヌクレアーゼによる切断を阻害することができる。特定の理論に縛られるものではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの3'コンジュゲートは、エキソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの3'末端に結合することを立体的に遮断することによりエキソヌクレアーゼによる切断を阻害することができる。短いアルキル鎖、アリール基または複素環式コンジュゲートまたは修飾糖(D-リボース、デオキシリボース、グルコースなど)であっても3'-5'-エキソヌクレアーゼを遮断することができる。
【0076】
ヌクレアーゼによる切断はまたリン酸リンカー修飾、例えば、ホスホロチオエート結合の導入によっても阻害することができる。よって、好ましいiRNA剤は、通常は酸素によって占められている非架橋位にヘテロ原子を含む修飾リン酸基の特定のキラル形態に関して富化された、または純粋なヌクレオチドダイマーを含む。ヘテロ原子はS、Se、NrまたはBrであり得る。ヘテロ原子がSである場合、富化されたまたはキラル的に純粋なSp結合が好ましい。富化されたとは、少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の好ましい形態を意味する。修飾リン酸結合は、iRNA剤の5'または3'末端位付近、好ましくは5'末端位に導入される場合、エキソヌクレアーゼによる切断の阻害に特に有効である。
【0077】
5'コンジュゲートもまた、5'-3'エキソヌクレアーゼによる切断を阻害することができる。特定の理論に縛られるものではないが、ナプロキセンまたはイブプロフェンなどの5'コンジュゲートは、エキソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの5'末端に結合することを立体的に遮断することによりエキソヌクレアーゼによる切断を阻害し得る。短いアルキル鎖、アリール基または複素環式コンジュゲートまたは修飾糖(D-リボース、デオキシリボース、グルコースなど)であっても3'-5'-エキソヌクレアーゼを遮断することができる。
【0078】
iRNA剤は、二本鎖iRNA剤が少なくとも一方の末端に一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを含むとき増強されたヌクレアーゼ耐性を持ち得る。好ましい態様では、ヌクレオチドオーバーハングは1~4個、好ましくは2~3個の不対ヌクレオチドを含む。好ましい態様では、末端ヌクレオチド対のすぐ隣にあるこの一本鎖オーバーハングの不対ヌクレオチドはプリン塩基を含み、この末端ヌクレオチド対はG-C対であるか、最後の4つの相補的ヌクレオチド対のうち少なくとも2つはG-C対である。さらなる態様では、ヌクレオチドオーバーハングは1または2個の不対ヌクレオチドを有してよく、例示的態様では、ヌクレオチドオーバーハングは5'-gc-3'である。好ましい態様では、ヌクレオチドオーバーハングはアンチセンス鎖の3'末端にある。一態様では、iRNA剤はアンチセンス鎖の3'末端にモチーフ5'-cgc-3'を含み、その結果、2-ntオーバーハング5'-gc-3'が形成される。
【0079】
よって、iRNA剤は、例えば、対象の体内に見られるヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼによる分解を阻害するための修飾を含み得る。これらのモノマーを本明細書ではNRM、すなわち、ヌクレアーゼ耐性促進モノマー(Nuclease Resistance promoting Monomers)と呼び、対応する修飾をNRM修飾と呼ぶ。多くの場合では、これらの修飾は、例えば、タンパク質、例えば輸送タンパク質、例えば血清アルブミンまたはRISCのメンバーと相互作用する能力、または第一の配列と第二の配列の、互いに二本鎖を形成する能力もしくは別の配列、例えば標的分子と二本鎖を形成する能力など、iRNA剤のその他の特性も同様に調節する。
【0080】
1種以上の異なるNRM修飾をiRNA剤に、またはiRNA剤の配列に導入することができる。NRM修飾は配列中、またはiRNA剤において1回を超えて使用することができる。
【0081】
NRM修飾には、末端にのみ置くことができるものと任意の位置で機能できるものが含まれる。NRM修飾にはハイブリダイゼーションを阻害できるものがあり、従って、末端領域でのみ使用することが好ましく、特にアンチセンス鎖では、それらを切断部位で、または対象配列または遺伝子を標的とする配列の切断領域内で使用しないことが好ましい。
それらは、センス鎖では、ds iRNA剤の二鎖間で十分なハイブリダイゼーションが維持される限り、どこに使用してもよい。いくつかの態様では、標的外サイレンシングを最小限にすることができるので、NRMをセンス鎖の切断部位または切断領域に置くことが望ましい。
【0082】
ほとんどの場合、NRM修飾は、それらがセンス鎖に含まれるかアンチセンス鎖に含まれるかによって違った分布がなされる。アンチセンス鎖上にある場合、エンドヌクレアーゼ切断と干渉する、または阻害する修飾は、RISC媒介切断を受ける領域、例えば、切断部位または切断領域に挿入すべきでない(出典明示により本明細書の一部とされるElbashir et al., 2001, Genes and Dev. 15: 188に記載の通り)。標的の切断は20または21ntのアンチセンス鎖の中程、またはアンチセンス鎖と相補的な標的mRNA上の最初のヌクレオチドの約10もしくは11ヌクレオチド上流で起こる。本明細書において切断部位とは、標的上、またはそれとハイブリダイズするiRNA剤鎖上の切断部位のいずれかの側にあるヌクレオチドを指す。切断領域とは、いずれかの配向の、切断部位(cleavagee site)の1、2または3ヌクレオチド内のヌクレオチドを意味する。
【0083】
このような修飾は、センス鎖またはアンチセンス鎖の末端領域、例えば、末端位または末端の2、3、4または5箇所に導入することができる。
【0084】
テザードリガンド(tethered ligands)
iRNA剤の特性(その薬理学的特性を含む)は、例えば、リガンド、例えばテザードリガンドの導入により影響を与え、調整することができる。さらに、iRNA剤の薬理学的特性は、iRNA剤の薬理学的特性は、iRNA剤がテザードリガンドを有するか、テザードリガンドをまさに有する(does have)かのいずれかの場合にiRNA剤の製剤にリガンドを組み込むことによって改善することができる。
【0085】
広範な物(entities)、例えばリガンドをiRNA剤につなぎ、あるいは例えばリガンドコンジュゲートモノマーサブユニットの担体に対する製剤コンジュゲートまたは添加剤として使用することができる。例はリガンドコンジュゲートモノマーサブユニットに関して以下に記載され、好ましいものに過ぎず、物はiRNA剤の他の位置にも結合させることができる。
【0086】
好ましい部分は、介在テザーを介して直接または間接的に担体に、好ましくは共有結合的に結合されるリガンドである。好ましい態様では、該リガンドは介在テザーを介して担体に結合される。リガンドまたはテザーリガンドは、そのリガンドコンジュゲートモノマーが成長中の鎖に組み込まれるときには、リガンドコンジュゲートモノマー上に存在してもよい。いくつかの態様では、該リガンドは、「前駆体」リガンドコンジュゲートモノマーサブユニットが成長中の鎖に組み込まれた後に、「前駆体」リガンドコンジュゲートモノマーサブユニットに組み込まれ得る。例えば、アミノ末端化テザー、例えばTAP-(CH)NHを有するモノマーを成長中のセンスまたはアンチセンス鎖に組み込むことができる。次に、その後の操作において、すなわち、前駆体モノマーサブユニットを鎖に組み込んだ後に、親電子基、例えばペンタフルオロフェニルエステルまたはアルデヒド基を有するリガンドを、そのリガンドの親電子基を前駆体リガンドコンジュゲートモノマーサブユニットテザーの末端求核基と結合させることにより、前駆体リガンドコンジュゲートモノマーと結合させることができる。
【0087】
好ましい態様では、リガンドは、それが組み込まれるiRNA剤の分布、標的化または寿命を変化させる。好ましい態様では、リガンドは、例えばこのようなリガンドが存在しない種に比べて、選択される標的、例えば、分子、細胞もしくは細胞種、コンパートメント(例えば細胞もしくはまたは器官コンパートメント)、組織、器官または身体の領域に対する親和性の増強をもたらす。
【0088】
好ましいリガンドは、輸送、ハイブリダイゼーションおよび特異性特性を改善することができ、また、結果として生じた天然もしくは修飾オリゴリボヌクレオチドまたは本明細書に記載されているモノマーのいずれかの組合せを含むポリマー分子、および/または天然もしくは修飾リボヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を改善することもできる。
【0089】
リガンドは一般に、例えば取り込みの増進のための治療薬改質剤;例えば分布をモニタリングするための診断用化合物またはリポーター基;架橋剤;ヌクレアーゼ耐性付与部分;および天然または非通常核酸塩基を含み得る。一般例としては、親油性分子、脂質、レクチン、ステロイド(例えば、ウバオール、ヘシゲニン、ジゴスゲニン)、テルペン(例えば、トリテルペン、例えば、サルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール誘導化リトコール酸)、ビタミン、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、合成ポリマー(例えば、オリゴラクテート15マー)および天然ポリマー(例えば、低分子量および中分子量)ポリマー、イヌリン、シクロデキストリンまたはヒアルロン酸)、タンパク質、タンパク質結合剤、インテグリン標的分子、ポリカチオン、ペプチド、ポリアミンおよびペプチドミミックスが挙げられる。他の例としては、葉酸、またはトランスフェリンなどの上皮細胞受容体リガンドが挙げられる。
【0090】
リガンドは、天然または組換えまたは合成分子、例えば合成ポリマー、例えば合成ポリアミノ酸であり得る。ポリアミノ酸の例としては、ポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-マレイン酸無水コポリマー、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー、ジビニルエーテル-マレイン酸無水コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマーまたはポリホスファジンが挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬似ペプチド-ポリアミン、ペプチドミメティックポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、陽イオン部分、例えば陽イオン脂質、陽イオンポルフィリン、ポリアミンの第四級塩またはαヘリックスペプチドが挙げられる。
【0091】
リガンドとしては、標的化基、例えば、細胞または組織を標的とする薬剤、例えば、チロトロピン、メラノトロピン、界面活性剤Aタンパク質、ムチン炭水化物、グリコシル化ポリアミノ酸、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸またはArg-Gly-Asp(RGD)ペプチドまたはRGDペプチドミメティックも含み得る。
【0092】
リガンドは、タンパク質、例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、例えば、低密度リポタンパク質(LDL)、またはアルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはペプチド、例えば、共リガンドに対して特異的親和性を有する分子、または抗体、例えば、癌細胞、内皮細胞もしくは骨細胞などの特定の細胞種に結合する抗体であり得る。リガンドはまた、ホルモンおよびホルモン受容体を含んでもよい。それらは非ペプチド種、例えば、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン、多価マンノースまたは多価フコースも含み得る。
【0093】
リガンドは、例えば、細胞の細胞骨格を崩壊させることにより、例えば、細胞の微小管、マイクロフィラメントおよび/または中間径フィラメントを崩壊させることにより、細胞へのiRNA剤の取り込みを高めることのできる薬剤などの物質であり得る。この薬剤は例えば、タキソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリン(latrunculin)A、ファロイジン(phalloidin)、スウィンホライド(swinholide)A、インダノシン(indanocine)、ミオセルビン(myoservin)、テトラサイクリンであり得る。
【0094】
一態様において、リガンドは脂質または脂質系分子である。このような脂質または脂質系分子は血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)に結合することが好ましい。HSA結合リガンドは、標的組織、例えば、肝臓の実質細胞を含む肝臓組織へのコンジュゲートの分布を可能とする。HSAと結合し得る他の分子もリガンドとして使用することができる。例えば、ネプロキシンまたはアスピリンが使用可能である。脂質または脂質系リガンドは、(a)コンジュゲートの分解耐性を高め、(b)標的細胞または細胞膜への標的化または輸送を増大させ、かつ/または(c)血清タンパク質、例えばHSAへの結合を調節するために使用することができる。
【0095】
脂質系リガンドは、標的組織に対するコンジュゲートの結合を調節、例えば制御するために使用することができる。例えば、HSAに比較的強く結合する脂質または脂質系リガンドは腎臓を標的としにくく、従って、体内から排除されにくい。
【0096】
好ましい態様では、脂質系リガンドはHSAと結合する。好ましくは、それは、そのコンジュゲートが好ましくは非腎臓組織に分布するよう十分な親和性でHSAと結合する。
しかしながら、その親和性は、HSA-リガンド結合が逆転できないほど強いものではないことが好ましい。
【0097】
別の局面において、リガンドは、標的細胞、例えば増殖中の細胞によって取り込まれる部分、例えばビタミンまたは栄養素である。これらは、例えば悪性または非悪性型(例えば癌細胞)の望ましくない細胞増殖を特徴とする障害を処置するために特に有用である。
ビタミンの例としては、ビタミンA、EおよびKが挙げられる。ビタミンの他の例としては、ビタミンB、例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサールまたは癌細胞により取り込まれる他のビタミンまたは栄養素が挙げられる。
【0098】
別の局面において、リガンドは細胞浸透剤、好ましくはヘリックス細胞浸透剤である。
好ましくは、この薬剤は両親媒性である。薬剤の例としては、tatまたはアンテナペディア(antennapedia)などのペプチドがある。薬剤がペプチドである場合、それは、ペプチジルミメティック、インバートマー(invertoma)、非ペプチドまたは擬似ペプチド結合、およびD-アミノ酸の使用を含め、修飾することができる。ヘリックス剤は好ましくは、親油相と疎油相を有するα-ヘリックス剤であるのが好ましい。細胞浸透剤はiRNA剤と共有結合させることもできるし、あるいはiRNA-ペプチド複合体の一部とすることもできる。
【0099】
5'-リン酸修飾
好ましい態様において、iRNA剤は5'リン酸化されているか、または5'プライム末端にホスホリル類似体を含む。アンチセンス鎖の5'-リン酸修飾は、RISC媒介遺伝子サイレンシングに適合するものを含む。好適な修飾としては、5'-一リン酸((HO)(O)P-O-5');5'-二リン酸((HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5');5'-三リン酸((HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5');5'-グアノシンキャップ(7-メチル化または非メチル化)(7m-G-O-5'-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5');5'-アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5'-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5');5'-一チオリン酸(ホスホロチオエート;(HO)(S)P-O-5');5'-一ジチオリン酸(ホスホロジチオエート;(HO)(HS)(S)P-O-5')、5'-ホスホロチオレート((HO)(O)P-S-5');酸素/硫黄置換一リン酸、二リン酸および三リン酸の任意のさらなる組合せ(例えば、5'-α-チオ三リン酸、5'-γ-チオ三リン酸など)、5'-ホスホルアミデート((HO)(O)P-NH-5'、(HO)(NH)(O)P-O-5')、5'-アルキルホスホネート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)-O-5'-、(OH)(O)P-5'-CH2-)、5'-アルキルエーテルホスホネート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2-)、エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)-O-5'-)が含まれる。
【0100】
センス鎖は、センス鎖を不活性化し、活性なRISCの形成を妨げ、それにより標的外効果を潜在的に軽減するようを修飾することができる。これは、例えば、5'-O-メチルリボヌクレオチドによる修飾など、センス鎖の5'-リン酸化を妨げる修飾により達成することができる(Nykanen et al., (2001) ATP requirements and small interfering RNA structure in the RNA interference pathway. Cell 107, 309-321参照)。例えば、単に5'-OHをO-MeではなくHで置換することによるなど、リン酸化を妨げる他の修飾も使用可能である。あるいは、5'リン酸に大きな嵩高の基を付加し、それを回転させてホスホジエステル結合としてもよい。
【0101】
非天然核酸塩基
ニトロピロリルおよびニトロインドリルは、ユニバーサル塩基として知られる化合物種のメンバーである非天然核酸塩基である。ユニバーサル塩基は、オリゴヌクレオチド二本鎖の融解挙動または活性に実質的に影響を及ぼさずに4つの天然塩基のいずれかを置換することができる化合物である。天然核酸塩基に関連する安定化、水素結合相互作用とは対照的に、3-ニトロピロリル核酸塩基を含むオリゴヌクレオチド二本鎖が積層相互作用によって安定化されているに過ぎないと仮定される。ニトロピロリル核酸塩基との有意な水素結合相互作用が存在しないことで、特異的相補塩基に対する特異性が回避される。さらに、種々の報告から、4-、5-および6-ニトロインドリルが4つの天然塩基に対して極めて小さな特異性しか示さないことが確認される。興味深いことに、5-ニトロインドリルを含むオリゴヌクレオチド二本鎖は、4-ニトロインドリルおよび6-ニトロインドリルを含む対応するオリゴヌクレオチドよりも安定であった。1-(2'-O-メチル-β-D-リボフラノシル)-5-ニトロインドールの製造手順はGaubert, G.; Wengel, J. Tetrahedron Letters 2004, 45, 5629に記載されている。本発明に従う他のユニバーサル塩基としては、ヒポキサンチニル、イソイノシニル、2-アザ-イノシニル、7-デアザ-イノシニル、ニトロイミダゾリル、ニトロピラゾリル、ニトロベンズイミダゾリル、ニトロインダゾリル、アミノインドリル、ピロロピリミジニルおよびその構造的誘導体が挙げられる。合成手順を含め、ニトロピロリル、ニトロインドリルおよび上述のその他のユニバーサル塩基のより詳細な考察については、Vallone et al., Nucleic Acids Research, 27(17):3589-3596 (1999); Loakes et al., J. Mol. Bio., 270:426-436 (1997); Loakes et al., Nucleic Acids Research, 22(20):4039-4043 (1994); Oliver et al., Organic Letters, Vol. 3(13):1977-1980 (2001); Amosova et al., Nucleic Acids Research, 25(10):1930-1934 (1997); Loakes et al., Nucleic Acids Research, 29(12):2437-2447 (2001); Bergstrom et al., J. Am. Chem. Soc., 117:1201-1209 (1995); Franchetti et al., Biorg. Med. Chem. Lett. 11:67-69 (2001);およびNair et al., Nucelosides, Nucleotides & Nucleic Acids, 20(4-7):735-738 (2001)を参照。
【0102】
ジフルオロトリルは、ユニバーサル塩基として機能する非天然核酸塩基である。ジフルオロトリルは、天然核酸塩基チミンの同配体である。チミンとは違い、ジフルオロトリルはいずれの天然塩基に対しても検知できる選択性を示さない。ユニバーサル塩基として機能し、かつ、本発明に従う他の芳香族化合物としては、4-フルオロ-6-メチルベンズイミダゾールおよび4-メチルベンズイミダゾールがある。さらに、比較的疎水性のイソカルボスチリリル誘導体3-メチルイソカルボスチリリル、5-メチルイソカルボスチリリルおよび3-メチル-7-プロピニルイソカルボスチリリルは、天然塩基だけを含むオリゴヌクレオチド配列に比べてオリゴヌクレオチド二本鎖のわずかな脱安定化を引き起こすだけのユニバーサル塩基である。本発明で意図される他の非天然核酸塩基としては、7-アザインドリル、6-メチル-7-アザインドリル、イミジゾピリジニル、9-メチル-イミジゾピリジニル、ピロロピリジニル、イソカルボスチリリル、7-プロピニルイソカルボスチリリル、プロピニル-7-アザインドリル、2,4,5-トリメチルフェニル、4-メチルインドリル、4,6-ジメチルインドリル、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントラセニル、ピレニル、スチルベニル、テトラセニル、パンタセニルおよびその構造的誘導体が挙げられる。合成手順を含め、ジフルオロトリル、4-フルオロ-6-メチルベンズイミダゾール、4-メチルベンズイミダゾールおよび上述のその他の非天然塩基のより詳細な考察については、Schweitzer et al., J. Org. Chem., 59:7238-7242 (1994); Berger et al., Nucleic Acids Research, 28(15):2911-2914 (2000); Moran et al., J. Am. Chem. Soc., 119:2056-2057 (1997); Morales et al., J. Am. Chem. Soc., 121:2323-2324 (1999); Guckian et al., J. Am. Chem. Soc., 118:8182-8183 (1996); Morales et al., J. Am. Chem. Soc., 122(6):1001-1007 (2000); McMinn et al., J. Am. Chem. Soc., 121:11585-11586 (1999); Guckian et al., J. Org. Chem., 63:9652-9656 (1998); Moran et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 94:10506-10511 (1997); Das et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans., 1:197-206 (2002); Shibata et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans., 1:1605-1611 (2001); Wu et al., J. Am. Chem. Soc., 122(32):7621-7632 (2000); O'Neill et al., J. Org. Chem., 67:5869-5875 (2002); Chaudhuri et al., J. Am. Chem. Soc., 117:10434-10442 (1995);および米国特許第6,218,108号参照。
【0103】
iRNA剤の細胞への輸送
特定の理論に縛られるものではないが、コレステロールコンジュゲートiRNA剤とリポタンパク質の特定の構成要素(例えば、コレステロール、コレステロールエステル、リン脂質)の化学的類似性は、iRNA剤と血中のリポタンパク質(例えば、LDL、HDL)との会合および/またはiRNA剤と、コレステロールに対する親和性を有する細胞成分、例えば、コレステロール輸送経路の成分との相互作用をもたらし得る。リポタンパク質ならびにそれらの構成要素は細胞により、種々の能動的および受動的輸送機構、例えば、限定されるものではないが、LDL受容体結合LDLのエンドサイトーシス、スカベンジャー受容体Aとの相互作用を介した酸化またはそれ以外の修飾を受けたLDLエンドサイトーシス、肝臓におけるスカベンジャー受容体B1により媒介されるHDLコレステロールの取り込み、飲細胞作用またはABC(ATP結合カセット)輸送体タンパク質、例えば、ABC-A1、ABC-G1もしくはABC-G4による膜を介したコレステロール輸送によって処理される。従って、コレステロールコンジュゲートiRNA剤は、例えば肝臓細胞など、このような輸送機構を有する細胞によって助長される取り込みを享受し得る。本発明はそれ自体、iRNA剤を、例えば受容体などの特定の細胞表面成分を発現する細胞に標的化するための(このような成分(例えばコレステロール)の天然リガンドをiRNA剤にコンジュゲートさせるか、または化学部分(例えばコレステロール)を該成分(例えば、LDL、HDL)の天然リガンドと会合もしくは結合するiRNA剤にコンジュゲートさせることによる)根拠および一般法を提供する。
【0104】
他の態様
iRNA剤は、in vivoにおいて細胞で、例えば、細胞に送達された外因性DNA鋳型から産生させることができる。例えば、DNA鋳型はベクターに導入し、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静注、局所投与(米国特許第5,328,470号)または定位注射(例えば、Chen et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054-3057, 1994参照)により対象に送達することができる。遺伝子治療ベクター医薬製剤は許容される希釈液中の遺伝子治療ベクターを含むことができ、あるいは遺伝子送達ビヒクルが包埋された徐放性マトリックスを含むことができる。例えばDNA鋳型は、iRNA剤のトップストランドを含む転写物を産生するものとiRNA剤のボトムストランドを含む転写物を産生スルものの2つの転写ユニットを含み得る。これらの鋳型が転写されると、iRNA剤は産生され、遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA剤フラグメントへとプロセシングされる。
【0105】
製剤
本発明はまた、本発明のdsRNA化合物を含む医薬組成物および製剤も含む。本発明の医薬組成物は、局所処置が望まれるか全身処置が望まれるか、および処置される領域によっていくつかの方法で投与することができる。投与は局所投与、肺投与(例えばネブライザーによるものを含む、例えば粉末またはエアゾールの吸入または吹送による)、気管内投与、鼻腔内投与、上皮および経皮投与、経口投与または非経腸投与であり得る。非経腸投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射もしくは注入;または頭蓋内、例えば、くも膜下腔内または脳室内投与が含まれる。
【0106】
局所投与用の医薬組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴剤、坐剤、噴霧剤、液体および粉末を含み得る。従来の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤などが必要または望まれる場合がある。被覆されたコンドーム、手袋なども有用であり得る。好ましい局所用製剤としては、本発明のdsRNAが脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤および界面活性剤などの局所送達剤と混合されているものが含まれる。好ましい脂質およびリポソームとしては、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン=DOPE、ジミリストリルホスファチジルコリン=DMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストリルホスファチジルグリセロール=DMPG)および陽性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピル=DOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン=DOTMA)、例えば、(+/-)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド=GAP-DLRIE)が含まれる。本発明のdsRNAはリポソーム内に封入してもよいし、あるいはそれらと、特に陽イオン性リポソームと複合体を形成させてもよい。あるいは、dsRNAは脂質、特に陽イオン性脂質と複合体を形成させてもよい。好ましい脂肪酸およびエステルとしては、限定されるものではないが、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプリン酸、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリンまたはC1-10アルキルエステル(例えば、イソプロピルミリステートIPM)、モノグリセリド、ジグリセリドまたはその薬学上許容される塩が挙げられる。局所用製剤は、1999年5月20日出願の米国特許出願第09/315,298号に詳細に記載されており、これを出典明示によりそのまま本明細書に包含させる。
【0107】
経口投与用の組成物および製剤としては、粉末または顆粒、マイクロ粒子、ナノ粒子、水もしくは非水性媒体中の懸濁液もしくは溶液、カプセル剤、ゲル、カプセル剤、サシェ剤、錠剤またはミニタブレットが含まれる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤または結合剤が望まれる場合がある。好ましい経口製剤は、本発明のdsRNAが1以上の浸透促進剤、界面活性剤およびキレート剤と組み合わせて投与されるものである。好ましい界面活性剤としては、脂肪酸および/またはエステルまたはその塩、胆汁酸および/またはその塩が挙げられる。好ましい胆汁酸/塩としては、ケノデオキシコール酸(CDCA)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、ナトリウムタウロ-24,25-ジヒドロ-フシデートおよびナトリウムグリコジヒドロフシデートが挙げられる。好ましい脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1-モノカプリン酸、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリンまたはモノグリセリド、ジグリセリドまたはその薬学上許容される塩(例えば、ナトリウム)が挙げられる。また、浸透促進剤の組合せ、例えば、脂肪酸/塩と胆汁酸/塩の組合せも好ましい。特に好ましい組合せは、ラウリン酸のナトリウム塩とカプリン酸およびUDCAである。さらなる浸透促進剤としては、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテルが挙げられる。本発明のdsRNAは、噴霧乾燥粒子を含む顆粒形態で経口送達してもよいし、あるいは複合体を形成させてミクロ粒子またはナノ粒子としてもよい。dsRNA複合体形成剤としては、ポリアミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;ポリアルキルアクリレート、ポリオキシエタン、ポリアルキルシアノアクリレート;陽イオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリレート;DEAE誘導化ポリイミン、ポルラン、セルロースおよびデンプンが挙げられる。特に好ましい複合体形成剤としては、キトサン、N-トリメチルキトサン、ポリ-L-リシン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p-アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、DEAE-メタクリレート、DEAE-ヘキシルアクリレート、DEAE-アクリルアミド、DEAE-アルブミンおよびDEAE-デキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、アルギネート、およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNAの経口製剤およびそれらの製法は、米国出願第08/886,829号(1997年7月1日出願)、第09/108,673号(1998年7月1日出願)、第09/256,515号(1999年2月23日出願)、第09/082,624号(1998年5月21日出願)および第09/315,298号(1999年5月20日出願)に記載されており、これらはそれぞれ引用することによりそのまま本明細書の一部とされる。
【0108】
非経腸、くも膜下腔内または脳室内投与用の組成物および製剤は無菌水溶液を含んでよく、また、バッファー、希釈剤およびその他の好適な添加剤、例えば、限定されるものではないが、浸透促進剤、担体化合物およびその他の薬学上許容される担体または賦形剤も含み得る。
【0109】
本発明の医薬組成物としては、限定されるものではないが、溶液、エマルションおよびリポソーム含有製剤を含む。これらの組成物は、限定されるものではないが、既製の液体、自己乳化固体および自己乳化半固体を含む種々の成分から作製することができる。
【0110】
本発明の医薬製剤は、好都合には単位投与形で提供してもよく、製薬業界で周知の通常の技術に従って製造することができる。このような技術としては、有効成分を医薬担体または賦形剤と会合させるステップを含む。一般に、これらの製剤は、有効成分を液体担体または微粉固体担体またはその双方と均一かつ緊密に会合させた後、必要に応じて生成物を成形することにより製造される。
【0111】
本発明の組成物は、限定されるものではないが、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液体シロップ、ソフトゲル、坐剤および浣腸などの、可能性のある多くの投与形のいずれにも調剤することができる。本発明の組成物はまた、水性、非水性または混合媒体中の懸濁液として調剤することもできる。水性懸濁液はさらに、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランをはじめとする、懸濁液の粘度を増す物質を含んでもよい。懸濁液はまた安定剤を含んでもよい。
【0112】
本発明の一態様では、医薬組成物は泡沫として調剤し、使用してもよい。医薬泡沫としては、限定されるものではないが、エマルション、マイクロエマルション、クリーム、ゼリーおよびリポソームなどの製剤を含む。性質は基本的に類似するが、これらの製剤は最終産物の成分および粘稠度が異なる。このような組成物および製剤の製法は一般に製薬および調剤分野の当業者に知られており、本発明の組成物の製剤に適用することができる。
【0113】
エマルション
本発明の組成物はエマルションとして製造および調剤することができる。エマルションは一般に、一方の液体が他方の液体中に、通常は0.1μm径を超える液滴の形態で分散している不均一系である(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199; Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Volume 1, p. 245; Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p. 335; Higuchi et al., in Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 301)。エマルションは多くの場合、緊密に混合し、互いに分散した2つの不混和液体相を含む二相系である。一般に、エマルションは、油中水(w/o)または水中油(o/w)型のいずれかであり得る。水相が多量の油性相中に微粉となり、微細な液滴として分散している場合には、得られる組成物は油中水(w/o)エマルションと呼ばれる。あるいは、油相が多量の水相中に微粉となり、微細な液体として分散している場合には、得られる組成物は水中油(o/w)エマルションと呼ばれる。エマルションは、分散相の他、付加的成分および薬剤(水相もしくは油相中の溶液として、またはそれ自体別個の相として提供することができる)を含んでもよい。必要に応じて、乳化剤、安定剤、色素および抗酸化剤などの医薬賦形剤がエマルション中に存在してもよい。医薬エマルションはまた、例えば、油中水中油(o/w/o)および水中油中水(w/o/w)エマルションなどの2相を超える相からなる多重エマルションであってもよい。このような複合体製剤は多くの場合、単純な二相エマルションが提供できない特定の利点を提供する。o/wエマルションの個々の油滴が小さな水滴を封入している多重エマルションはw/o/wエマルションをなす。同様に、油性の連続相中で安定化された水の小球に封入された油滴の系は、o/w/oエマルションとなる。
【0114】
エマルションは熱力学的安定性がほとんど、または全く無いことを特徴とする。多くの場合、エマルションの分散相または不連続相は、外部相または連続相に良好に分散し、乳化剤の手段またはその製剤の粘度によってこの形態に維持される。エマルション型軟膏基剤およびクリームの場合のように、これらのエマルション相のいずれかは半固体または固体であってよい。エマルションを安定化する他の手段は乳化剤の使用を必要とし、これらの乳化剤はエマルションのいずれかの相に組み込むことができる。乳化剤は広く、合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤および微細分散固体の4つのカテゴリーに分類することができる(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0115】
界面活性剤としても知られる合成界面活性剤はエマルションの製剤に広く適用可能であることが分かっており、文献に総説されている(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, volume 1, p. 199)。
界面活性剤は一般に両親媒性であり、親水性部分と疎水性部分を含む。界面活性剤の親水性と疎水性の比率は親水性/親油性バランス(HLB)、製剤の製造において界面活性剤を分類および選択する際の有用なツールとなる。界面活性剤は親水基の性質に基づいて、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性および両性の異なる種類に分類することができる(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285)。
【0116】
エマルション製剤に用いられる天然に存在する乳化剤としては、ラノリン、蜜蝋、ホスファチド、レシチンおよびアラビアガムが挙げられる。吸収基剤は親水性の特性を有し、従って、無水ラノリンおよび親水性ワセリンなどのように、水を吸収してw/oエマルションを形成してなお半固体粘稠度を保持することができる。微粉固体は、特に界面活性剤との組合せにおいて、また、粘稠な製剤において良好な乳化剤として使用されている。これらには、重金属水酸化物などの極性無機固体、ベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイドケイ酸アルミニウムおよびコロイドケイ酸マグネシウムアルミニウムなどの非膨潤性粘土、顔料、ならびに炭素または三ステアリン酸グリセリルなどの非極性固体が含まれる。
【0117】
また、多様な非乳化材料もエマルション製剤に含まれ、エマルションの特性に寄与する。これらには脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、保湿剤、親水性コロイド、保存剤および抗酸化剤が含まれる(Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0118】
親水性のコロイドまたはヒドロコロイドとしては、多糖類(例えば、アラビアガム、寒天、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、カラヤガムおよびトラガカントガム)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)などの天然ガムおよび合成ポリマー、ならびに合成ポリマー(例えば、カルボマー、セルロースエーテルおよびカルボキシビニルポリマー)が含まれる。これらは水に分散するか、または水中で膨潤し、分散相の液滴の周囲に強固な界面フィルムを形成することにより、また、外部相の粘度を増すことによりエマルションを安定化するコロイド溶液を形成する。
【0119】
エマルションは多くの場合、微生物の増殖を容易に支持し得る炭水化物、タンパク質、ステロールおよびホスファチドなどのいくつかの成分を含むことから、これらの製剤には多くの場合、保存剤が配合されている。エマルション製剤に含まれる慣用保存剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン、第四級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p-ヒドロキシ安息香酸エステルおよびホウ酸が挙げられる。エマルション製剤には、製剤の劣化を防ぐために一般に抗酸化剤も加えられる。用いられる抗酸化剤は、トコフェロール、アルキル没食子酸塩、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカルスカベンジャー、またはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤、ならびにクエン酸、酒石酸およびレシチンなどの抗酸化剤共力剤であり得る。
【0120】
皮膚、経口および非経腸経路によるエマルション製剤の適用およびそれらの製造方法は文献に総説されている(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
経口送達用のエマルション製剤は、製剤が容易なこと、ならびに吸収およびバイオアベイラビリティの観点からの有効性のために極めて広く用いられている(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245; Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。o/wエマルションとして一般に経口投与されているものとしては、鉱油系緩下薬、脂溶性ビタミンおよび高脂栄養調製物がある。
【0121】
本発明の一態様では、dsRNAおよび核酸の組成物がマイクロエマルションとして製剤される。マイクロエマルションは、単一の光学的に等方性で熱力学的に安定な液体溶液である水、油および両親媒性化合物の系として定義することができる(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245)。一般にマイクロエマルションは、まず、界面活性剤水溶液に油を分散させ、次に、十分量の第四の成分、一般に中間的な鎖長のアルコールを加えて透明な系を形成させることにより作製される系である。よって、マイクロエマルションはまた、表面活性分子の界面フィルムにより安定化された2種類の不混和性の液体の熱力学的に安定で、等方性的に透明な分散物としても記載されている(Leung and Shah, in: Controlled Release of Drugs: Polymers and Aggregate Systems, Rosoff, M., Ed., 1989, VCH Publishers, New York, pages 185-215)。マイクロエマルションは一般に、油、水、界面活性剤、補助界面活性剤および電解質を含む3~5種類の成分の組合せによって製造される。マイクロエマルションが油中水(w/o)であるか水中油(o/w)型であるかは、用いる油および界面活性剤の特性および界面活性剤分子の極性ヘッドと炭化水素テールの構造および幾何学的充填によって異なる(Schott, in Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 271)。
【0122】
位相図を用いる現象学的アプローチが広範に研究され、当業者にマイクロエマルションをいかに調製すればよいかという包括的知識をもたらしている(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245; Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335)。通常のエマルションに比べて、マイクロエマルションは自発的に形成される熱力学的に安定な液滴の製剤において水に不溶な薬剤を可溶化するという利点を与える。
【0123】
マイクロエマルションの製造に用いられる界面活性剤としては、限定されるものではないが、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセキオレエート(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DAO750)の単独または補助界面活性剤との組合せを含む。補助界面活性剤、通常にはエタノール、1-プロパノールおよび1-ブタノールなどの短鎖アルコールは、界面活性剤フィルムに浸透し、その結果、界面活性剤分子の周囲に生じる空隙のために不良フィルムを作り出すことにより界面の流動性を増すのに役立つ。しかしながら、マイクロエマルションは補助界面活性剤を用いずに製造してもよく、アルコール不含自己乳化マイクロエマルション系は当技術分野で公知である。水相は一般に、限定されるものではないが、水、薬剤水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコールおよびエチレングリコール誘導体であり得る。油相は、限定されるものではないが、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C-C12)モノ、ジおよびトリグリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C-C10グリセリド、植物油およびシリコーンオイルなどの物質を含む。
【0124】
マイクロエマルションは薬剤の可溶化および薬剤の吸収の増強の観点から特に注目される。脂質系マイクロエマルション(o/wおよびw/oの双方)は、ペプチドを含む薬剤の経口バイオアベイラビリティを高めることが提示されている(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385-1390; Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol., 1993, 13, 205)。マイクロエマルションは、薬剤可溶化の向上、酵素的加水分解からの薬剤の保護、界面活性剤により誘発される膜の流動性と浸透性の変化による薬剤吸収の増強の可能性、製造の容易さ、固体投与形に優る経口投与の容易さ、臨床効力の向上および毒性の軽減という利点を与える(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385-1390; Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol., 1993, 13, 205)。多くの場合、マイクロエマルションは、それらの成分を周囲温度で一緒にした際に自発的に形成され得る。これは熱不安定性の薬剤、ペプチドまたはdsRNAを調剤する際に特に有利であり得る。また、マイクロエマルションは、化粧適用および医薬適用の双方の有効生物の経皮送達にも有効となっている。本発明のマイクロエマルション組成物および製剤は消化管からのdsRNAおよび核酸の全身吸収を容易にし、ならびに消化管、膣、口腔およびその他の投与領域内でのdsRNAおよび核酸の局部的細胞取り込みを向上させる。
【0125】
本発明のマイクロエマルションはまた、製剤の特性を改良するため、また、本発明のdsRNAおよび核酸の吸収を促進するために、モノステアリン酸ソルビタン(Grill 3)、らブラゾールおよび浸透促進剤などの付加的成分および添加剤を含んでもよい。本発明のマイクロエマルションに用いられる浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤および非キレート非界面活性剤の5つの広いカテゴリーの1つに属するものとして分類することができる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92)。これらの各種は上記に述べられている。
【0126】
リポソーム
研究され、薬剤の調剤に用いられているマイクロエマルションの他にも多くの組織化された界面活性剤構造がある。これらには、単層、ミセル、二層および小胞が含まれる。リポソームなどの小胞は、薬剤送達の観点からそれらが与える特異性および作用期間のために多大な関心が寄せられている。本発明において「リポソーム」とは、球状二層または二層に配置された両親媒性脂質からなる小胞を意味する。
【0127】
リポソームは、親油性物質から形成された膜と水性の内部を有する単層または多層の小胞である。この水性部分に送達される組成物が含まれる。陽イオン性リポソームは細胞壁と融合し得るという利点を有する。非陽イオン性リポソームは、細胞膜と効率的には融合できないが、in vivoにおいてマクロファージにより取り込まれる。
【0128】
無傷な哺乳類の皮膚を通過するために、脂質小胞は、好適な経皮勾配の影響下で、各50nm未満の径の一連の微細な孔を通過しなければならない。従って、変形性が高く、このような微細な孔を通過し得るリポソームを使用することが望ましい。
【0129】
リポソームのさらなる利点としては、天然リン脂質から得られたリポソームは生体適合性および生分解性があること;リポソームは広範な水溶性および脂溶性薬剤を組み込むことができること;リポソームはそれらの内部コンパートメントに封入された薬剤を代謝および分解から保護することが含まれる(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245)。リポソーム製剤の製造において重要な観点は、脂質表面電荷、小胞サイズおよびリポソームの水性容積である。
【0130】
リポソームは、作用部位へ有効成分を輸送および送達するのに有用である。リポソーム膜は生体膜と構造的に類似しているので、リポソームを組織に適用すると、リポソームが細胞膜と合体し始め、リポソームと細胞の合体が進行するにつれ、リポソームの内容物が細胞へ移り、そこで有効剤が作用し得る。
【0131】
リポソーム製剤は、多くの薬剤の送達様式として集中的な研究の対象となっている。局所投与では、リポソームは他の製剤に優るいくつかの利点をもたらすという証拠が増えている。このような利点としては、投与された薬剤の高い全身吸収に関連する副作用の軽減、投与された薬剤の所望の標的における蓄積の増大、ならびに親水性および疎水性双方の多様な薬剤を皮膚に投与することができることが挙げられる。
【0132】
いくつかの報告で、リポソームは高分子量DNAを含む薬剤を皮膚へ送達できることが詳説されている。鎮痛薬、抗体、ホルモンおよび高分子量DNAを含む化合物が皮膚へ投与されてきた。大多数の適用で、上面表皮の標的化という結果が得られている。
【0133】
リポソームは2つの大きな種類に属する。陽イオン性リポソームは正電荷を有するリポソームであり、負電荷を有するDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成する。正電荷を有するDNA/リポソーム複合体は負電荷を有する細胞表面に結合し、エンドソームにおいてインターナライズされる。このエンドソーム内の酸性pHにより、リポソームは崩壊し、それらの内容物を細胞の細胞質へと放出する(Wang et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987, 147, 980-985)。
【0134】
pH感受性または負電荷を有するリポソームは、DNAと複合体を形成するというよりそれを捕捉する。DNAと脂質はどちらも同じ電荷を有するので、複合体形成ではなく反発が生じる。それにも関わらず、いくらかのDNAはこれらのリポソームの水性内部に捕捉される。pH感受性リポソームは、チミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを培養細胞単層に送達するために使用されてきた。標的細胞において外来遺伝子の発現が検出された(Zhou et al., Journal of Controlled Release, 1992, 19, 269-274)。
【0135】
リポソーム組成物の1つの主要なタイプとしては、天然由来のホスファチジルコリン以外のリン脂質を含む。中性リポソーム組成物は、例えば、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成可能である。陰イオン性リポソーム組成物は一般にジミリストリルホスファチジルグリセロールから形成され、陰イオン性膜融合リポソームは主としてジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。別のタイプのリポソーム組成物は、例えば、大豆PCおよび卵PCなどのホスファチジルコリン(PC)から形成される。また別のタイプはリン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成される。
【0136】
いくつかの研究で、リポソーム薬製剤の皮膚への局所送達が評価されている。インターフェロンを含有するリポソームをモルモットの皮膚に塗布したところ、他の手段による(例えば、溶液またはエマルションとしての)インターフェロンの送達が有効でなかったにもかかわらず、皮膚ヘルペス潰瘍の軽減がもたらされた(Weiner et al., Journal of Drug Targeting, 1992, 2, 405-410)。さらに、付加的研究で、水性系を用いたインターフェロンの投与に対して、リポソーム製剤の一部として投与されるインターフェロンの有効性を検討し、リポソーム製剤が水性投与よりも優れていたとの結論が得られている(du Plessis et al., Antiviral Research, 1992, 18, 259-265)。
【0137】
また、非イオン性リポソームを、皮膚への薬剤の送達におけるそれらの有用性を決定するために、特に、非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系において試験した。Novasome.TM.I(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome.TM.II(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を用いて、シクロスポリンAをマウス皮膚の真皮へ送達した。結果は、このような非イオン性リポソーム系が皮膚の種々の層へのシクロスポリンAの沈着の促進に有効であったことを示した(Hu et al. S.T.P.Pharma. Sci., 1994, 4, 6, 466)。
【0138】
リポソームはまた、「立体的に安定化された」リポソームを含み、この用語は本明細書において、リポソームに組み込んだ際に、このような特殊な脂質を欠いたリポソームよりも循環寿命の延長をもたらす、1以上の特殊な脂質を含むリポソームを指す。立体的に安定化されたリポソームの例として、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が、(A)モノシアロガングリオシドG1などの1以上の糖脂質を含むもの、または(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1以上の親水性ポリマーで誘導体化されたものがある。特定の理論に縛られるものではないが、当技術分野では、少なくとも、ガングリオシド、スフィンゴミエリンまたはPEG誘導体化脂質を含有する立体的に安定化されたリポソームでは、これらの立体的に安定化されたリポソームの延長された循環半減期が網内皮系(RES)の細胞への取り込みの低下に由来していると考えられる(Allen et al., FEBS Letters, 1987, 223, 42; Wu et al., Cancer Research, 1993, 53, 3765)。
【0139】
1個以上の糖脂質を含む種々のリポソームが当技術分野で公知である。Papahadjopoulos et al. (Ann. N.Y. Acad. Sci., 1987, 507, 64)は、モノシアロガングリオシドG1、ガラクトセレブロシド硫酸およびホスファチジルイノシトールがリポソームの血中半減期を改善可能であることを報告している。これらの知見はGabizon et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1988, 85, 6949)によって解説されている。米国特許第4,837,028号およびWO88/04924(双方ともAllen et al.)は、(1)スフィンゴミエリン、および(2)ガングリオシドG1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルを含むリポソームを開示している。米国特許第5,543,152号(Webb et al.)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示している。1,2-sn-ジミリストリルホスファチジルコリンを含むリポソームはWO97/13499(Lim et al)に開示されている。
【0140】
1個以上の親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含む多くのリポソームおよびその製造方法が当技術分野で公知である。Sunamoto et al. (Bull. Chem. Soc. Jpn., 1980, 53, 2778)は、PEG部分を含む非イオン性洗剤2C1215Gを含むリポソームを記載している。Illum et al. (FEBS Lett., 1984, 167, 79)は、ポリスチレン粒子をポリマーグリコールで親水性コーティングすると、血中半減期が有意に延長されたと述べている。ポリアルキレングリコール(例えばPEG)のカルボキシル基の付加により修飾された合成リン脂質がSears(米国特許第4,426,330号および同第4,534,899号)により記載されている。Klibanov et al. (FEBS Lett., 1990, 268, 235)は、PEGまたはステアリン酸PEGで誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームが血中循環半減期に有意な延長をもたらすことを証明する実験を記載している。Blume et al.(Biochimica et Biophysica Acta, 1990, 1029, 91)は、このような知見を例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)とPEGの組合せから形成されたDSPE-PEGなどの他のPEG誘導体化リン脂質に拡張した。外表に共有結合PEG部分を有するリポソームが、Fisherの欧州特許第EP0445131B1号およびWO90/04384に記載されている。1~20モル%のPEG誘導体化PEを含有するリポソーム組成物およびその使用方法がWoodle et al.(米国特許第5,013,556号および同第5,356,633号)およびMartin et al.(米国特許第5,213,804号および欧州特許第EP0496813B1号)により記載されている。いくつかの他の脂質ポリマーコンジュゲートを含むリポソームがWO91/05545および米国特許第5,225,212号(双方ともMartin et al.)およびWO94/20073(Zalipsky et al.)に開示されている。PEG修飾セラミド脂質を含むリポソームがWO96/10391(Choi et al)に記載されている。米国特許第5,540,935号(Miyazaki et al.)および米国特許第5,556,948号(Tagawa et al.)は、それらの表面において官能性部分でさらに誘導体化可能なPEG含有リポソームを記載している。
【0141】
当技術分野で知られている核酸を含むリポソームの数は限られている。Thierry et al.のWO96/40062は、リポソームに高分子量核酸を封入する方法を開示している。
Tagawa et al.の米国特許第5,264,221号はタンパク質結合リポソームを開示し、このようなリポソームの内容物がdsRNAを含み得ると断定している。Rahman et al.の米国特許第5,665,710号は、リポソームにオリゴデオキシヌクレオチドを封入する特定の方法を記載している。Love et al.のWO97/04787は、raf遺伝子を標的とするdsRNAを含むリポソームを開示している。
【0142】
トランスファーソームは、さらに別のタイプのリポソームであり、変形性の高い脂質凝集物であり、薬剤送達ビヒクルの魅力ある候補である。トランスファーソームは、その液滴よりも小さい孔へ容易に浸透することができるような変形性の高い脂質液滴ということができる。トランスファーソームは、それらが用いられる環境に適合可能であり、例えば、それらは自己至適化性(皮膚の孔の形状に適合)、自己修復性であり、多くの場合、断片化することなくそれらの標的に到達し、多くの場合自己装填性である。トランスファーソームを作製するには、標準的なリポソーム組成物に表面エッジアクチベーター、通常には界面活性剤を添加することができる。トランスファーソームは皮膚に血清アルブミンを送達するために用いられてきた。トランスファーソームにより媒介される血清アルブミンの送達は、血清アルブミンを含有する溶液の皮下注射と同様に有効であることが示されている。
【0143】
界面活性剤は、エマルション(マイクロエマルションを含む)およびリポソームなどの製剤における広い適用が見出されている。天然および合成双方の多くの異なるタイプの界面活性剤の特性を分類およびランク付けする最も一般的な方法は、親水性/親油性バランス(HLB)に使用によるものである。親水基(「ヘッド」としても知られる)の性質は、製剤に用いられる種々の界面活性剤を分類するのに最も有用な手段を提供する(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p. 285)。
【0144】
界面活性剤分子がイオン化されていなければ、それは非イオン性界面活性剤として分類される。非イオン性界面活性剤は、医薬品および化粧品に広く適用が見出され、広範なpH値で使用可能である。一般に、それらのHLB値は、それらの構造に応じて2~約18の範囲である。非イオン性界面活性剤としては、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステルおよびエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが挙げられる。脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコールおよびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーなどの非イオン性アルカノールアミドおよびエーテルもこの種類に含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤がこの非イオン性界面活性剤種の最も一般的なメンバーである。
【0145】
界面活性剤分子が水に溶解または分散したときに負電荷を有するならば、その界面活性剤は陰イオン性として分類される。陰イオン性界面活性剤としては、石鹸などのカルボン酸塩、ラクチル酸アシル、アミノ酸のアシルアミド、硫酸エステル(硫酸アルキルおよびエトキシル化硫酸アルキルなど)、スルホン酸塩(スルホン酸アルキルベンゼンなど)、イセチオン酸アシル、タウリン酸およびスルホコハク酸アシル、およびリン酸塩が挙げられる。陰イオン性界面活性剤種の最も重要なメンバーは硫酸アルキルおよび石鹸である。
【0146】
界面活性剤分子が水に溶解または分散したときに正電荷を有するならば、その界面活性剤は陽イオン性として分類される。陽イオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが挙げられる。第四級アンモニウム塩が最も用いられているこの種のメンバーである。
【0147】
界面活性剤分子が正電荷または負電荷のいずれかを有する能力を持つならば、その界面活性剤は両性として分類される。両性界面活性剤としては、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタインおよびホスファチドが挙げられる。
【0148】
薬品、製剤およびエマルションにおける界面活性剤の使用についての総説がある(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p. 285)。
【0149】
浸透促進剤
一態様では、本発明は、核酸、特に、dsRNAの、動物の皮膚への効率的な送達を果たすために種々の浸透促進剤を用いる。ほとんどの薬剤はイオン化形態と非イオン化形態の双方で溶液中に存在する。しかしながら、通常、脂質可溶性または親油性の薬剤だけが細胞膜を容易に通過する。非親油性薬剤であっても、通過させる膜を浸透促進剤で処置すると、細胞膜を通過し得ることが発見された。非親油性薬剤の細胞膜を経た拡散を補助する他、浸透促進剤はまた親油性薬剤の浸透性も高める。
【0150】
浸透促進剤は5つの広いカテゴリー、すなわち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤および非キレート非界面活性剤の1つに属するものとして分類することができる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92)。上述の各浸透促進剤種を以下にさらに詳細に記載する。
【0151】
界面活性剤:本発明に関して、界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水溶液に溶解した際に、その溶液の表面張力またはその水溶液と別の液体との間の界面張力を低減する化学物質であり、その結果、粘膜を介したdsRNAの吸収が高まる。胆汁酸塩および脂肪酸の他、これらの浸透促進剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン-20-セチルエーテル(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92)、およびFC-43などの過フッ化化学エマルション(Takahashi et al., J. Pharm. Pharmacol., 1988, 40, 252)が含まれる。
【0152】
脂肪酸:浸透促進剤として働く種々の脂肪酸およびそれらの誘導体としては、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n-デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプリン酸、トリカプリン酸、モノオレイン(1-モノオレオイル-rac-グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、それらのC-C10アルキルエステル(例えば、メチル、イソプロピルおよびt-ブチル)、ならびにそれらのモノ-およびジ-グリセリド(すなわち、オレエート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノレートなど)が挙げられる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carryier Systems, 1991, p.92; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33; El Hariri et al., J. Pharm. Pharmacol., 1992, 44, 651-654)。
【0153】
胆汁酸塩:胆汁の生理学的役割は脂質および脂溶性ビタミンの分散および吸収を促進することである(Brunton, Chapter 38 in: Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Ed., Hardman et al. Eds., McGraw-Hill, New York, 1996, pp. 934-935)。種々の天然胆汁酸塩およびそれらの合成誘導体が浸透促進剤として働く。よって、「胆汁酸塩」とは、胆汁の天然成分ならびにそれらの合成誘導体のいずれをも含む。本発明の胆汁酸塩としては、例えば、コール酸(またはその薬学上許容されるナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリココール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウム(STDHF)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(POE)が挙げられる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92; Swinyard, Chapter 39 In: Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990, pages 782-783; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33; Yamamoto et al., J. Pharm. Exp. Ther., 1992, 263, 25; Yamashita et al., J. Pharm. Sci., 1990, 79, 579-583)。
【0154】
キレート剤:本発明に関して用いられるキレート剤は、それと複合体を形成することにより溶液から金属イオンを取り除く化合物と定義することができ、その結果、粘膜を介したdsRNAの吸収が高まる。それらの本発明の浸透促進剤としての使用に関しては、最もよく特徴付けられたDNAヌクレアーゼは触媒作用に二価の金属イオンを必要とし、従って、キレート剤によって阻害されることから、キレート剤はDNアーゼ阻害剤としても働くという付加的利点を有する(Jarrett, J. Chromatogr., 1993, 618, 315-339)。本発明のキレート剤としては、限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩(例えば、サリチル酸ナトリウム、5-メトキシサリチレートおよびホモバニレート)、コラーゲンのN-アシル誘導体、β-ジケトンのラウレス-9およびN-アミノアシル誘導体(エナミン)が挙げられる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33; Buur et al., J. Control Rel., 1990, 14, 43-51)。
【0155】
非キレート非界面活性剤:本明細書において、非キレート非界面活性型浸透促進化合物は、キレート剤または界面活性剤として有意な活性は示さないが、消化系粘膜を介したdsRNAの吸収を促進する化合物として定義することができる(Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33)。この種の浸透促進剤としては、例えば、不飽和環状尿素、1-アルキル-および1-アルケニルアザシクロ-アルカノン誘導体(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92);ならびにジクロフェナクナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾンなどの非ステロイド系抗炎症薬(Yamashita et al., J. Pharm. Pharmacol., 1987, 39, 621-626)が挙げられる。
【0156】
また、細胞レベルでdsRNAの取り込みを促進する薬剤も、本発明の医薬およびその他の組成物に加えることができる。例えば、リポフェクチン(Junichi et al, 米国特許第5,705,188号)などの陽イオン性脂質、陽イオン性グリセロール誘導体、ならびにポリリジン(Lollo et al., PCT出願WO97/30731)およびその他のペプチドなどのポリ陽イオン分子もdsRNAの細胞取り込みを促進することが知られている。
【0157】
エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール類、2-ピロールなどのピロール類、アゾン類、ならびにリモネンおよびメントンなどのテルペン類を含む他の薬剤も投与する核酸の浸透を促進するために使用可能である。
【0158】
担体
本発明のある特定の組成物はまた、製剤に担体化合物も含む。本明細書において「担体化合物」または「担体」とは、不活性である(すなわち、それ自体生物活性を持たない)が、生物活性を有する核酸のバイオアベイラビリティを、例えば、生物学的に活性な核酸を分解するか、または循環からのその除去を促進することで低下させるin vivoプロセスによって核酸と認識される核酸、またはその類似体を指し得る。核酸と担体化合物を、一般には後者の物質を過剰にして同時投与すると、おそらくは担体化合物と核酸間の共通の受容体をめぐる競合のために、肝臓、腎臓またはその他の循環外貯蔵庫に回収される核酸量の実質的減少がもたらされ得る。例えば、肝臓組織における部分的ホスホロチオエートdsRNAの回収は、それがポリイノシン酸、デキストラン硫酸、ポリシチジン酸または4-アセトアミド-4'イソチオシアノ-スチルベン-2,2'-ジスルホン酸と同時投与される場合には減少され得る(Miyao et al., Antisense Res. Dev., 1995, 5, 115-121; Takakura et al., Antisense & Nucl. Acid Drug Dev., 1996, 6, 177-183)。
【0159】
賦形剤
担体化合物とは対照的に、「医薬担体」または「賦形剤」は、1以上の核酸を動物に送達するための薬学上許容される溶媒、沈殿防止剤または他の任意の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は液体または固体であってよく、計画された投与様式を念頭に置いて、所定の医薬組成物の核酸およびその他の成分と組み合わせた際に、所望の嵩、粘稠度などをもたらすように選択される。典型的な医薬としては、限定されるものではないが、結合剤(例えば、アルファー化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);増量剤(例えば、ラクトースおよびその他の糖、微晶質セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素ナトリウムなど);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、硬化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えば、デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプンなど);および湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)が挙げられる。
【0160】
核酸と有害な反応をしない非非経腸投与(non-parenteral administration)に好適な薬学上許容される有機または無機賦形剤が本発明の組成物を調剤するにために使用可能である。好適な薬学上許容される担体としては、限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘稠パラフィン、ヒドロキシメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0161】
核酸の局所投与用製剤は、無菌および非無菌水溶液、アルコールなどの一般溶媒中の非水溶液、液体もしくは固体油性基剤中の核酸の溶液を含み得る。これらの溶液はまたバッファー、希釈剤およびその他の好適な添加剤を含み得る。核酸と有害な反応をしない非非経腸投与(non-parenteral administration)に好適な薬学上許容される有機または無機賦形剤が使用可能である。
【0162】
好適な薬学上許容される賦形剤としては、限定されるものではないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘稠パラフィン、ヒドロキシメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0163】
気道送達のための医薬組成物
本発明の別の局面は、特に、嚢胞性繊維症の処置のための、iRNA剤の気道送達を提供する。気道には、中咽頭および喉頭を含む上気道と、それに続く、気管とそれに続く気管支および細気管支への分岐を含む下気道が含まれる。上下気道は導管気道と呼ばれる。
その後、気管支末端は呼吸細気管支に分岐し、これは次に最終の呼吸器系領域である肺胞または肺深部に至る。導管気道の上皮は、α-ENaC iRNA剤などのiRNA剤の送達のための吸入用治療エアゾールの主な標的である。
【0164】
肺送達組成物は、分散物内の組成物、好ましくはiRNA剤が肺に到達し得るように患者による分散物の吸入により送達することができ、肺でそれは例えば肺胞領域から血液循環中へ容易に吸収され得る。肺送達は全身送達と肺の疾病を処置するための局所送達の双方に有効であり得る。
【0165】
肺送達は、霧状、エアゾール状、ミセルおよび乾燥粉末系製剤の使用を含む種々のアプローチにより達成することができ、吸入による投与は経口および/または経鼻であり得る。送達は液体ネブライザー、エアゾール系吸入器、および乾燥粉末分散デバイスを用いて達成することができる。定量デバイスが好ましい。アトマイザーまたは吸入器を用いる利点の1つは、これらのデバイスが自己完結型であるので、コンタミネーションの可能性が最小となることである。乾燥粉末分散デバイス、例えば、乾燥粉末として容易に調剤可能な薬剤を送達する。iRNA組成物はそれ自体凍結乾燥粉末または噴霧乾燥粉末として、または好適な粉末担体と組み合わせて安定に保存可能である。吸入用組成物の送達は、タイマー、用量カウンター、時間計測デバイス、またはデバイスに組み込んだ際、エアゾール薬剤の投与中に患者に対する用量輸送、コンプライアンスモニタリングおよび/または投与誘発(dose trigerring)を可能とするタイムインジケーターを含み得る投与調時エレメントにより媒介され得る。
【0166】
エアゾール送達のための医薬デバイスの例としては、定量噴霧式吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)およびエアージェットネブライザーが挙げられる。対象iRNA剤の送達に容易に適合させることができる吸入による送達系は、例えば、米国特許第5,756,353号、同第5,858,784号;およびPCT出願WO98/31346、WO98/10796、WO00/27359、WO01/54664、WO02/060412に記載されている。iRNA剤の送達に使用可能な他のエアゾール製剤は、米国特許第6,294,153号、同第6,344,194号、同第6,071,497号およびPCT出願WO02/066078、WO02/053190、WO01/60420、WO00/66206に記載されている。さらに、iRNA剤を送達する方法は、Templin et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 2000, 10:359-68; Sandrasagra et al., Expert Opin Biol Ther, 2001, 1:979-83; Sandrasagra et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 2002, 12:177-81に記載されているものなど、吸入により他のオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)を送達するのに用いられるものから採用することもできる。
【0167】
本発明の薬剤の送達はまた、いわゆる「プロドラッグ」、すなわち、好ましくはその作用が望まれる部位で治療物質を放出するために対象生物に先天的な系によるいくつかの形態のプロセシングまたは輸送を必要とする治療物質の製剤または化学修飾の投与を含んでもよく、この後者の態様は気道送達と組み合わせて、また、本発明の他の態様とともに使用することができる。例えば、ヒト肺は、数分から数時間の範囲の期間で加水分解により切断可能な沈着したエアゾール剤を除去またはすぐに分解することができる。上気道では、繊毛のある上皮が「粘膜絨毛除去」に寄与し、これにより粒子が気道から口腔へ掃き出される(Pavia, D., “Lung Mucociliary Clearance,” in Aerosols and the Lung: Clinical and Experimental Aspects, Clarke, S. W. and Pavia, D., Eds., Butterworths,
London, 1984)。肺の深部では、肺胞マクロファージがそれらの沈着後すぐに粒子に食作用を及ぼすことができる(Warheit et al. Microscopy Res. Tech., 26: 412-422 (1993); and Brain, J. D., “Physiology and Pathophysiology of Pulmonary Macrophages,” in The Reticuloendothelial System, S. M. Reichard and J. Filkins, Eds., Plenum,
New. York., pp. 315-327, 1985)。
【0168】
特に、iRNA剤の全身投与が望まれる好ましい態様では、エアゾール化iRNA剤が微粒子として調剤される。0.5~10ミクロンの間の径を有する微粒子は、ほとんどの天然関門を通過して肺へ浸透することができる。咽喉を迂回するには10ミクロン未満の径が必要であり、吐き出しを避けるには0.5ミクロン以上の径が必要である。
【0169】
その他の成分
本発明の組成物は、医薬組成物に通常見られるその他の補助成分を、それらの分野で確立された使用レベルでさらに含んでもよい。よって、例えば、これらの組成物は、例えば、鎮痒薬、収斂薬、局所麻酔または抗炎症薬などの付加的な、適合性の、薬学的に活性な物質を含んでもよく、または色素、香味剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、増粘剤および安定剤など、本発明の組成物の種々の投与形を物理的に調剤するのに有用な付加的物質を含んでもよい。しかしながら、このような物質は、付加した場合、本発明の組成物の成分の生物活性を過度に妨げてはならない。これらの製剤は安定化させることができ、所望により、例えば、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、バッファー、着色剤、香味剤および/または芳香族物質など、その製剤の核酸と有害な相互作用をしない補助剤と混合することができる。
【0170】
水性懸濁液は懸濁液の粘度を増す物質を含んでもよく、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランが含まれる。懸濁液はまた安定剤を含んでもよい。
【0171】
本発明の特定の態様は、(a)1以上のdsRNA薬剤と、(b)非RNA干渉機構によって機能する1以上の他の治療薬を含有する医薬組合せおよび組成物を提供する。
【0172】
よって、本発明は、本発明のiRNAと抗炎症薬、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、沈咳薬、抗生物質またはDNアーゼ薬剤物質との組合せを含み、前記上皮ナトリウムチャネル遮断薬および前記薬剤物質は、同じまたは異なる医薬組成物中にある。
【0173】
好適な抗生物質としては、マクロライド抗生物質、例えば、トブラマイシン(TOBI(商標))が挙げられる。
【0174】
好適なDNアーゼ薬剤物質としては、DNAを選択的に切断する組換えヒトデオキシリボヌクレアーゼI(rhDNアーゼ)の高精製溶液であるドルナーゼα(Pulmozyme(商標))が挙げられる。ドルナーゼαは嚢胞性繊維症の治療に用いられる。
【0175】
上皮ナトリウムチャネル遮断薬と抗炎症薬の他の有用な組合せとしては、ケモカイン受容体、例えば、CCR-1、CCR-2、CCR-3、CCR-4、CCR-5、CCR-6、CCR-7、CCR-8、CCR-9およびCCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5のアンタゴニスト、特に、Schering-PloughアンタゴニストSC-351125、SCH-55700およびSCH-DなどのCCR-5アンタゴニスト;N-[[4-[[[6,7-ジヒドロ-2-(4-メチル-フェニル)-5H-ベンゾ-シクロヘプテン-8-イル]カルボニル]アミノ]フェニル]-メチル]テトラヒドロ-N,N-ジメチル-2H-ピラン-4-アミニウムクロリド(TAK-770)などのtakedaアンタゴニスト;および米国特許第6,166,037号(特に、請求項18および19)、WO00/66558(特に、請求項8)、WO00/66559(特に、請求項9)、WO04/018425およびWO04/026873に記載されているCCR-5アンタゴニストとの組合せがある。
【0176】
好適な抗炎症薬としては、ステロイド、特に、グルココルチコステロイド、例えば、ブデソニド、二プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、シクレソニドまたはフロ酸モメタゾンまたはWO02/88167、WO02/12266、WO02/100879、WO02/00679(特に、実施例3、11、14、17、19、26、34、37、39、51、60、67、72、73、90、99および101のもの)、WO03/35668、WO03/48181、WO03/62259、WO03/64445、WO03/72592、WO04/39827およびWO04/66920に記載されているステロイド;非ステロイド系グルココルチコイド受容体アゴニスト、例えば、DE10261874、WO00/00531、WO02/10143、WO03/82280、WO03/82787、WO03/86294、WO03/104195、WO03/101932、WO04/05229、WO04/18429、WO04/19935およびWO04/26248に記載されているもの;LTD4アンタゴニスト、例えば、モンテルカストおよびザフィルルカスト;PDE4阻害剤、例えば、シロミラスト(Ariflo(登録商標)GlaxoSmithKline)、ロフルミラスト(Byk Gulden)、V-11294A(Napp)、BAY19-8004(Bayer)、SCH-351591(Schering-Plough)、アロフィリン(Almirall Prodesfarma)、PD189659/PD168787(Parke-Davis)、AWD-12-281(Asta Medica)、CDC-801(Celgene)、SelCID(商標)CC-10004(Celgene)、VM554/UM565(Vernalis)、T-440(Tanabe)、KW-4490(Kyowa Hakko Kogyo)、およびWO92/19594、WO93/19749、WO93/19750、WO93/19751、WO98/18796、WO99/16766、WO01/13953、WO03/104204、WO03/104205、WO03/39544、WO04/000814、WO04/000839、WO04/005258、WO04/018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/018431、WO04/018449、WO04/018450、WO04/018451、WO04/018457、WO04/018465、WO04/019944、WO04/019945、WO04/045607およびWO04/037805に開示されているもの;アデノシンA2B受容体アンタゴニスト、例えば、WO02/42298に記載されているもの;およびβ2アドレナリン受容体アゴニスト、例えば、アルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール、フェノテロール、プロカテロール、および特に、フォルモテロール、カルモテロールおよびその薬学上許容される塩、および出典明示により本明細書の一部とされるWO0075114の式(I)の化合物(遊離形または塩または溶媒和形)、好ましくはその実施例の化合物、特に、インダカテロールおよびその薬学上許容される塩、ならびにWO04/16601の式(I)の化合物(遊離形または塩または溶媒和形)、およびまた、EP1440966、JP05025045、WO93/18007、WO99/64035、USP2002/0055651、WO01/42193、WO01/83462、WO02/66422、WO02/70490、WO02/76933、WO03/24439、WO03/42160、WO03/42164、WO03/72539、WO03/91204、WO03/99764、WO04/16578、WO04/22547、WO04/32921、WO04/33412、WO04/37768、WO04/37773、WO04/37807、WO04/39762、WO04/39766、WO04/45618、WO04/46083、WO04/80964、WO04/108765およびWO04/108676の化合物が挙げられる。
【0177】
好適な気管支拡張薬としては、抗コリン作用薬または抗ムスカリン作用薬、特に、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、チオトロピウム塩およびCHF 4226(Chiesi)、およびグリコピロレートを含み、EP424021、米国特許第3,714,357号、米国特許第5,171,744号、WO01/04118、WO02/00652、WO02/51841、WO02/53564、WO03/00840、WO03/33495、WO03/53966、WO03/87094、WO04/018422およびWO04/05285に記載されているものも含む。
【0178】
好適なデュアル抗炎症および気管支拡張薬としては、USP2004/0167167号、WO04/74246およびWO04/74812に開示されているものなどのデュアルβ2アドレナリン受容体アゴニスト/ムスカリンアンタゴニストが挙げられる。
【0179】
好適な抗ヒスタミン薬物質としては、塩酸セチリジン、アセトアミノフェン、フマル酸クレマスチン、プロメタジン、ロラチジン、デスロラチジン、ジフェンヒドラミンおよび塩酸フェキソフェナジン、アクチバスチン、アステミゾール、アゼラスチン、エバスチン、エピナスチン、ミゾラスチンおよびテフェナジン、ならびにJP2004107299、WO03/099807およびWO04/026841に開示されているものが挙げられる。
【0180】
本発明の薬剤と抗炎症薬との他の有用な組合せとしては、ケモカイン受容体、例えば、CCR-1、CCR-2、CCR-3、CCR-4、CCR-5、CCR-6、CCR-7、CCR-8、CCR-9およびCCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5のアンタゴニスト、特に、CCR-5アンタゴニスト、例えば、Schering-PloughアンタゴニストSC-351125、SCH-55700およびSCH-D;N-[[4-[[[6,7-ジヒドロ-2-(4-メチルフェニル)-5H-ベンゾ-シクロヘプテン-8-イル]カルボニル]アミノ]フェニル]-メチル]テトラヒドロ-N,N-ジメチル-2H-ピラン-4-アミニウムクロリド(TAK-770)などのTakedaアンタゴニスト、および米国特許第6,166,037号(特に、請求項18および19)、WO00/66558(特に、請求項8)、WO00/66559(特に、請求項9)、WO04/018425およびWO04/026873に記載されているCCR-5アンタゴニストとの組合せがある。
【0181】
他の有用な付加的治療薬はまた、サイトカイン結合分子、特に、他のサイトカインの抗体、特に、PCT/EP2005/00836に記載されているような抗IL4抗体、Xolair(登録商標)などの抗IgE抗体、抗IL31抗体、抗IL31R抗体、抗TSLP抗体、抗TSLP受容体抗体、抗エンドグリン抗体、抗IL1b抗体、または抗IL13抗体、WO05/007699に記載されているような抗IL13抗体との組合せからなる群から選択され得る。
【0182】
2種類以上の組合せ化合物は、単一の製剤として、個別に、同時にまたは連続的に併用可能である。
【0183】
このような化合物の毒性および治療効力は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するための、培養細胞または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果の間の比が治療係数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療係数を示す化合物が好ましい。
【0184】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータを用いて、ヒトで用いるための用量範囲を策定することができる。本発明の組成物の用量は、一般に、毒性がほとんどまたは全く無いED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、用いる投与形および利用する投与経路に応じてこの範囲内で変えることができる。本発明の方法で用いられる任意の化合物において、治療上有効な用量は、まず細胞培養アッセイから評価することができる。用量は動物モデルにおいて、細胞培養物において決定されるIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む、化合物または適当であれば標的配列のポリペプチド産物の循環血漿中濃度範囲を達成する(例えば、ポリペプチド濃度の低下を達成する)ように計算してよい。このような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0185】
上述のように個別または複数として投与することに加えて、本発明のdsRNAは、ENaC関連障害の処置に有効な他の既知の薬剤と組み合わせて投与することもできる。いずれの場合も、投与を行う医師は、当該技術分野において公知であるかまたは本明細書に記載される、有効性の標準的な評価を用いて認められる結果に基づいて、dsRNA投与の量およびタイミングを調整することができる。
【0186】
処置方法および送達経路
iRNA剤、例えば、α-ENaCを標的とするiRNA剤を含む組成物は、作用部位への局所送達または対象への全身送達のいずれかを達成するための種々の経路によって、対象に送達することができる。経路の例としては、肺および鼻道などの治療部位への直接的局所投与、ならびに静脈内、鼻腔、経口および眼への送達が挙げられる。本発明のiRNA剤を投与する好ましい手段は、液体、エアゾールまたは霧状溶液としての、肺および鼻道への直接投与によるものである。
【0187】
吸入または非経腸投与用の製剤は当技術分野で周知である。このような製剤としては無菌水溶液が挙げられ、これにはまたバッファー、希釈剤およびその他の好適な添加剤を含んでもよい。静脈用としては、溶質の全濃度は、その製剤が等張となるように制御すべきである。
【0188】
本明細書に開示されている有効化合物は任意の好適な手段によって対象の肺または鼻道に投与するのが好ましい。有効化合物は、対象が吸入する、1種類の有効化合物または複数の有効化合物からなる吸入可能な粒子のエアゾール懸濁液を投与することによって投与することができる。有効化合物は、限定されるものではないが、乾燥粉末吸入薬、定量吸入薬または液体/液体懸濁液などの種々の形態でエアゾール化することができる。吸入可能な粒子は液体または固体であり得る。これらの粒子は所望により、アミロライド、ベンザミルまたはフェナミルなどの他の治療成分を、米国特許第4,501,729号に記載されているような気道粘液分泌からの水分の再吸収を阻害するのに有効な量で含まれる選択化合物とともに含み得る。
【0189】
粒子状医薬組成物は所望により、分散または輸送を補助するための担体と組み合わせることができる。糖(すなわち、ラクトース、スクロース、トレハロース、マンニトール)などの好適な担体を1種類の有効化合物または複数の化合物と任意の好適な比率(例えば、1対1の重量比)で混合することができる。
【0190】
本発明を実施するための有効化合物からなる粒子は、吸入可能な粒径の粒子、すなわち、吸入した際に口または鼻および喉頭から気管支および肺の肺胞へ通り抜けるのに十分小さな粒径の粒子を含まなければならない。一般に、約1~10ミクロンの範囲の粒径(より詳しくは、約5ミクロン未満の粒径)の粒子は吸入可能である。エアゾールに含まれる吸入可能でない粒子は喉に付着して飲み込まれる傾向にあり、エアゾール中の吸入可能でない粒子の量は最小限とすることが好ましい。鼻腔投与では、10~500μMの範囲の粒径が、鼻腔内における保持を確保するのに好ましい。
【0191】
エアゾールを生成するための有効化合物の液体医薬組成物は、有効化合物を無菌パイロジェンフリー水などの好適なビヒクルと合わせることにより調製することができる。本発明の実施に用いる高張生理食塩水は好ましくは、1~15%(重量)の生理学上許容される塩、より好ましくは3~7重量%の生理学上許容される塩を含む、無菌パイロジェンフリー溶液である。
【0192】
有効化合物を含む液体粒子のエアゾールは圧力駆動ジェットネブライザーまたは超音波ネブライザーなどの任意の好適な手段によって生成することができる。例えば、米国特許第4,501,729号参照。ネブライザーは、圧縮ガス、一般には空気または酸素を細いベンチュリオリフィスから加速する手段または超音波振盪の手段いずれかによって、有効成分の溶液または懸濁液を治療用エアゾールミストへ変換する市販のデバイスである。
【0193】
ネブライザーで用いるのに好適な製剤は液体担体中の有効成分からなり、この有効成分は40%w/wまで、好ましくは20%w/w未満の製剤を含む。担体は一般に水(最も好ましくは、無菌パイロジェンフリー水)または希釈アルコール水溶液であり、好ましくは等張とされるが、例えば塩化ナトリウムの添加により体液よりも高張としてもよい。任意の添加剤として、製剤が無菌とされない場合にはヒドロキシ安息香酸メチルなどの保存剤、抗酸化剤、香味剤、揮発油、緩衝剤および界面活性剤が含まれる。
【0194】
有効化合物を含む固体粒子のエアゾールも同様に、任意の固体粒子状治療用エアゾール発生装置で生成することができる。固体粒子状治療薬を対象に投与するためのエアゾール発生装置は、吸入可能な粒子を生成し、ヒト投与に好適な速度で、所定の定量治療薬を含有する一定容量のエアゾールを作り出す。固体粒子状エアゾール発生装置の1つの例示的なタイプが吹送器(insufflator)である。吹送による投与に好適な製剤は、吹送器の手段により送達可能な、または鼻から吸い込む方法で鼻腔に取り込まれ得る微粉砕粉末を含む。吹送器では、粉末(例えば、本明細書に記載されている処置を行うのに有効なその定量)が、その場で孔を開けるか、または開封する、一般にゼラチンまたはプラスチック製のカプセル剤またはカートリッジに入っており、吸入時にデバイスから吸い取られる空気によるか、または手でポンプを開けることによって粉末が送達される。吹送器で用いられる粉末は有効成分単独か、または有効成分、ラクトースなどの好適な粉末希釈剤および任意の界面活性剤を含む粉末混合物からなる。有効成分は一般に、製剤の0.1~100w/w含まれる。
【0195】
例示的エアゾール発生装置のもう1つのタイプは、定量吸入器(inhaler)を含む。定量吸入器は、一般に、液化噴射剤中に有効成分の懸濁液または溶液製剤を含有する加圧式エアゾールディスペンサーである。使用中、これらのデバイスは、定量、一般に、10~200μlを送達するのに適したバルブから製剤を排出し、有効成分を含有する微粒子スプレーを生成する。好適な噴射剤としては、クロロフルオロカーボン化合物、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンおよびその混合物が挙げられる。製剤はさらに1以上の補助溶媒(例えばエタノール)、界面活性剤(オレイン酸またはトリオレイン酸ソルビタンなど)、抗酸化剤および好適な香味剤を含んでもよい。
【0196】
iRNA剤は投与に好適な医薬組成物に配合することができる。例えば、組成物は、1種類以上のiRNA剤および薬学上許容される担体を含み得る。本明細書において「薬学上許容される担体」とは、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などのいずれかまたは全てを含むものとする。薬学上有効な物質に関するこのような媒体および薬剤の使用は当技術分野で周知である。通常の媒体または薬剤が有効化合物と不適合である場合以外、組成物におけるその使用が考えられる。これらの組成物にはまた、補助的有効化合物も配合することができる。
【0197】
投与は対象者または介護者などの他者によって行うことができる。介護者は、例えば、病院、ホスピス、医院、外来診療所;医師、看護士または他の施術者などの医療従事者;または配偶者もしくは親などの保護者など、そのヒトの世話に関与するいずれの存在であってもよい。
【0198】
「治療上有効な量」とは、期待される生理応答を得るために被処置対象に所望のレベルの薬剤を与えるのに必要な、組成物中の存在量である。
【0199】
「生理学上有効な量」とは、所望の苦痛軽減的または治癒的効果を得るために対象に送達される量である。
【0200】
「薬学上許容される担体」とは、その担体が肺に有意な有害毒物作用を持たずに、肺へ取り込むことができることを意味する。
【0201】
「同時投与」とは、2種以上の薬剤、特に2種以上のiRNA剤を対象に投与することを指す。これらの薬剤は単一の医薬組成物中に含まれて同時に投与することもできるし、別の製剤に含まれて対象に順次投与することもできる。2種類の薬剤が対象において同時に検出できる限り、この2種類の薬剤は同時投与されると言われる。
【0202】
担体として有用な医薬賦形剤のタイプには、ヒト血清アルブミン(HSA)などの安定剤;炭水化物、アミノ酸およびポリペプチドなどの増量剤;pH調整剤またはバッファー;および塩化ナトリウムなどの塩などが含まれる。これらの担体は結晶形態もしくは非晶質形態であってもよいし、その2者の混合物であってもよい。
【0203】
特に有効な増量剤としては、適合性のある炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸またはその組合せが挙げられる。好適な炭水化物としては、ガラクトース、D-マンノースおよびソルボースなどの単糖類;ラクトースおよびトレハロースなどの二糖類;2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン;ならびにラフィノース、マルトデキストリンおよびデキストランなどの多糖類;マンニトールおよびキシリトールなどのアルジトールが挙げられる。好ましい炭水化物群としては、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリンおよびマンニトールが挙げられる。好適なポリペプチドとしては、アスパルテームが挙げられる。アミノ酸としては、アラニンおよびグリシンが挙げられ、グリシンが好ましい。
【0204】
好適なpH調整剤またはバッファーとしては、クエン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸ナトリウムなど、有機酸および塩基から製造される有機塩が挙げられ、クエン酸ナトリウムが好ましい。
【0205】
用量
iRNA剤は、約75mg/kg体重未満、約70、60、50、40、30、20、10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001もしくは0.0005mg/kg体重未満、または200nmol未満のiRNA剤(例えば、約4.4×1016コピー)/kg体重、または1500、750、300、150、75、15、7.5、1.5、0.75、0.15、0.075、0.015、0.0075、0.0015、0.00075、0.00015nmol未満のiRNA剤/kg体重の単位用量で投与することができる。この単位用量は例えば、注射(例えば、静脈内または筋肉内、くも膜下腔内または臓器へ直接)、吸入投与または局所適用により投与することができる。
【0206】
この用量は疾病または障害の治療または予防に有効な量であり得る。それは予防的に、または一次治療として、または治療プロトコールの一部として投与することができる。
【0207】
一態様では、単位用量は、1日1回より少ない頻度、例えば、2日、4日、8日または30日おきより少ない頻度で投与される。別の態様では、単位用量は、一定頻度では投与されない(例えば、規則的な頻度ではない)。例えば、単位用量は1回投与することができる。iRNA剤により媒介されるサイレンシングは多くの場合、iRNA剤組成物を投与後数日間持続可能であるので、組成物は1日1回より少ない頻度で、または場合によっては、治療計画全体で1回のみ投与することができる。
【0208】
一態様では、対象に初期用量と、持続用量のiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤またはsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤にプロセシング可能なより大きなiRNA剤、またはiRNA剤、例えば、二本鎖iRNA剤もしくはsiRNA剤もしくはその前駆体をコードするDNA)を投与する。維持用量は一般に初期用量よりも低く、例えば、初期用量の2分の1である。維持計画は対象を0.01~75mg/kg体重/日、例えば、70、60、50、40、30、20、10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001または0.0005mg/kg体重/日の用量で処置することを含み得る。維持用量は5日、10日または30日おきに1回を超えないように投与するのが好ましい。さらに、この処置計画は、特定の疾病の性質、その重篤度および患者の全体的な状態に応じて異なる期間持続させればよい。好ましい態様では、この用量を、1日1回を超えないように、例えば、24時間、36時間、48時間またはそれを超える時間おきに1回を超えないように、例えば、5日または8日おきに1回を超えないように送達すればよい。処置後、症状の変化および病態の徴候の緩和に関して患者をモニタリングすることができる。この化合物の用量は、患者が現行の用量レベルに有意に応答しない場合には増やし、あるいは、病態の徴候の緩和が見られるか、病態が取り除かれるか、または望ましくない副作用が見られる場合には減らすことができる。
【0209】
所望により、または特定の状況下で適当であると考えられれば、有効量を1回または2回以上で投与することができる。繰り返しの、または頻繁な注入を容易にすることが望まれれば、送達デバイス、例えば、ポンプ、半永久的ステント(例えば、静脈内、腹腔内、大槽内または関節包内)またはリザーバーの移植が望ましい場合がある。
【0210】
処置の成功後、その病態の再発を防ぐため、患者に維持療法を受けさせることが望ましい場合があり、その場合、本発明の化合物は0.001g~100g/kg体重の範囲の維持用量で投与される(米国特許第6,107,094号参照)。
【0211】
iRNA剤組成物の濃度は、障害の治療または予防に有効である、またはヒトにおいて生理状態を調節するに十分な量である。投与されるiRNA剤の濃度または量は、薬剤および例えば鼻腔、口内または肺などの投与方法に関して決定されたパラメーターに応じる。例えば、鼻腔製剤は、鼻道の刺激または炎症を避けるために数種の成分では相当低い濃度を必要とする傾向がある。好適な鼻腔製剤を提供するために、経口製剤を最大10~100倍に希釈することが望ましい場合がある。
【0212】
限定されるものではないが、疾病または障害の重篤度、以前の処置、健康状態および/または対象の齢および存在する他の疾病を含む特定の因子が、対象を有効に処置するのに必要な用量に影響を与え得る。また、処置に用いられるsiRNAなどのiRNA剤の有効用量は特定の処置の過程で増加または減少させることができる。用量の変化は、診断アッセイの結果から得られ、明らかとなり得る。例えば、iRNA剤組成物を投与した後、対象をモニタリングすることができる。このモニタリングからの情報に基づき、さらなる量のiRNA剤組成物を投与することができる。
【0213】
投与は処置する疾病症状の重篤度および応答性によって異なり、処置期間は数日~数ヶ月、または治癒が果たされるか、もしくは病態の軽減が達成されるまで継続する。最適な投与計画は患者の体内の薬剤蓄積の測定から計算することができる。当業者であれば、最適な用量、投与方法および反復率を容易に決定することができる。最適用量は個々の化合物の相対的有効性によって異なり、一般に、上記のようなin vitroおよびin vivo動物モデルにおいて有効であることが分かるEC50に基づいて評価することができる。
【0214】
本明細書に記載されているような本発明のiRNA剤は、以下の疾病/障害;嚢胞性繊維症、リドル症候群、腎不全、高血圧症、電解質平衡異常のいずれか1つの治療および(適当であれば)予防に有用であり得る。
【0215】
特に、いくつかの態様では、本発明のiRNA剤は、これらの疾病/障害の有害な臨床徴候の治療および/または予防に使用することができる。
【0216】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例は限定として解釈すべきではない。
【実施例
【0217】
試薬の供給源
本明細書において試薬の供給源が特に示されていない場合には、そのような試薬は分子生物学用試薬のいずれかの供給者から、分子生物学における適用に標準的な品質/純度でから得ることができる。
【0218】
実施例1:配列の選択
上皮ナトリウムチャネルENaC(α-ENaC)のαサブユニットの発現をダウンレギュレーションするための治療用siRNAを同定するために、バイオインフォマティクス分析に基づいてスクリーニングセットを定義した。スクリーニングセットの設計のキードライバーは、関連のある種のトランスクリプトームに対するsiRNAの、推定される特異性であった。α-ENaC siRNAおよび効率的な送達系の同定のため、三部構成のアプローチを用いた:気管内送達後のin vivoサイレンシングの有効性に取り組むための試験種としてラットを選択し、α-ENaC mRNAの減少が測定可能な機能的効果をもたらすことを証明するための疾病モデル生物としてモルモットを選択した。治療用siRNA分子は、ヒトα-ENaCならびに少なくとも1種類の毒性学関連種、この場合にはアカゲザルのα-ENaC配列を標的としなければならない。
【0219】
関連のα-ENaC mRNA配列の最初の分析により、特異性要件を満たすとともに全ての関連種においてα-ENaC mRNAを標的とする配列はほとんど特定できないことが明らかになった。従って、関連の疾患モデルで試験される治療用siRNAに関する、またサロゲート分子に関する独立したスクリーニングを設計することにした(表1A、1B、1Cおよび1D)。
【0220】
in vitro活性のためにヒト細胞培養系を選択したので(H441、下記参照)、siRNAは全てヒトα-ENaC配列を認識する。よって、siRNAは全て治療の場でヒトα-ENaC mRNAを標的とするために使用可能である。
治療用スクリーニングセットは、ヒトおよびアカゲザルα-ENaC配列と完全に相補的なsiRNA配列だけを含むように設計した。
【0221】
α-ENaCを標的とするsiRNAの設計およびin silico選択(SCNN1A)
siRNAの設計は、これまでに定義されている4つのセットに対してsiRNAを同定するように行った(上記参照)。
a)「初期スクリーニングセット」
b)「拡張スクリーニングセット」
c)「ラットに関するin vivoサロゲートセット」
d)「モルモットに関するin vivoサロゲートセット」
【0222】
初期スクリーニングセット
初期スクリーニングセットのin silico選択の目的は、ヒトα-ENaCならびにそのアカゲザル相同分子種を特的に標的とするsiRNAを同定することである。ヒト標的mRNA(NM_001038.4)は、全siRNA選択手順の中で、NCBIリソース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?CMD=search&DB=nucleotide)からダウンロードした。α-ENaCアカゲザル(Macaca mulatta)相同分子種を同定するため、このヒト配列を2004年10月01日現在のMmulattaコンティグに対するBaylor College of Medicine(http://www.hgsc.bcm.tmc.edu/blast/?organism=Mmulatta)におけるblastn検索で用いた。全てのヒット領域を抽出し、CAPアセンブリツールによってアセンブルし、最初のアセンブリ配列を作成した。さらに、アカゲザルフリーズ(2005年3月12日)に対するUCSC(http://genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgBlat?command=start&org=Rhesus&db=rheMac2&hgsid=84859356)においてヒト配列を用いたBLAST検索を行った。スキャフォールドヒット84554をダウンロードし、CAPにより、最初のアセンブリ配列とともに用いてアカゲザルα-ENaCの最終的なコンセンサス配列を作成した。
【0223】
ヒトmRNAから重複する全ての19マー配列を抽出した後、保存されている19マーが、アセンブルされたアカゲザルコンセンサス配列において同一の配列を持っていたことを確認した。これらの19マー配列をヒト-アカゲザル交差反応性siRNA(センス)配列のプールとして定義し、1185種の19マーで表した。
【0224】
対応するアンチセンス配列を作成し、ヒトにおける特異性を調べた。このため、それらの推定される、無関連の標的mRNAと相互作用する能力(標的外能力)をパラメーターとした。標的外能の低い配列を、好ましく、より特異性が高いと推定されると定義した。
【0225】
さらなる選択については、候補siRNAを、それらの推定される、他の宿主配列(ここでは、限定されるものではないが、ヒト)と相互作用する能力に従ってランク付けした。標的外能の低いsiRNAは、in vivoにおいてより特異性が高いと推測される。siRNA特異的標的外能を推定するため、以下の仮説を立てた。
1)鎖の標的外能は、標的外に対するミスマッチの数および分布から推測することができる。
2)最も関連のある標的外、すなわち、ミスマッチの耐性のためにサイレンシングされる確率が最も高いと推定される遺伝子は、鎖の標的外能を決定する。
3)鎖の2~9番の位置(5'から3'方向に数える)(シード領域)は、残りの配列(すなわち、非シード領域および切断部位領域)よりも標的外能により大きく寄与し得る(Haley, B., and Zamore, P.D., Nat Struct Mol Biol. 2004, 11:599)。
4)鎖の10番と11番の位置(5'から3'方向に数える)(切断部位領域)は、非シード領域(すなわち、5'から3'方向に数えて12~18番の位置)よりも標的外能により大きく寄与し得る。
5)各鎖の1番と19番の位置は標的外能に関連がない。
6)標的外能は、仮説3~5を考慮して、標的外遺伝子の最も相同な領域に対する鎖のミスマッチの数および位置に基づいて計算された、最も関連のある標的外の標的外スコアによって表すことができる。
7)導入された内部修飾によるセンス鎖活性化の中断の可能性を仮定すると、アンチセンス鎖の標的外能だけが関連する。
【0226】
可能性のある標的外遺伝子を同定するため、19マーのアンチセンス配列について、ヒト包括的トランスクリプトームに相当すると仮定される公開ヒトmRNA配列に対する相同性検索を行った。
【0227】
この目的で、fastA(バージョン3.4)検索を、全ての19マー配列を用い、ヒトRefSeqデータベース(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/refseq/ on Nov., 18 2005から入手可能なバージョン)に対して行った。FastA検索は、ギャップを用いずに全長19マーの相同性を考慮するために、パラメーター値の対-f30-g30を用いて実行した。さらに、fastA出力ファイルにおいて関連のある全ての標的外ヒットの一覧化を確保するため、パラメーターE15000を用いた。
【0228】
この検索から、完全な19マーの配列相同性が降順で一覧化された各入力配列の可能性のある標的外の一覧が得られる。
仮説3~5の全ての可能性のある標的外をランク付けし、これにより最も関連のある標的外遺伝子およびその標的外スコアを特定するために、fastA出力ファイルをパールスクリプトにより分析した。
【0229】
このスクリプトは、標的外スコアを計算するため、各19マー入力配列および各標的外遺伝子の以下の標的外特性を抽出した。
・非シード領域のミスマッチの数
・シード領域のミスマッチの数
・切断部位領域のミスマッチの数
標的外スコアは仮説3~5を考慮して以下のように計算した。
標的外スコア=シードミスマッチの数10
+切断部位ミスマッチの数1.2
+非シードミスマッチの数
【0230】
各19マー配列の最も関連のある標的外遺伝子を、標的外スコアが最も低い遺伝子と定義した。従って、最も低い標的外スコアは、分析した19マーアンチセンス配列で表される、各siRNAの標的外能を代表するものとして定義した。
計算された標的外能をソーティングパラメーター(標的外スコアの降順)として用い、全てのヒト-アカゲザル交差反応性siRNA配列のランク付けを作成した。
【0231】
3以上の標的外スコアをsiRNA選択の必要条件として定義したが、列に4以上のGを含む配列(ポリG配列)は排除されており、全部で152の、ヒトおよびアカゲザルENaC αを標的とするsiRNAを選択するに至った(表1a参照)。
【0232】
拡張スクリーニングセット
拡張スクリーニングセットのin silico選択の目的は、アカゲザルとの交差反応性が無いために最初のセットから排除された、十分な特異性を有するヒトα-ENaCを標的とするさらなるsiRNAを全て同定することであった。分析されていなかったヒトα-ENaCに由来する19マーのプールからの残りの配列を取得し、対応するアンチセンス配列を作成した。最も関連のある標的外遺伝子およびその対応する標的外スコアを「初期スクリーニングセット」の節に記載されているように計算した。
【0233】
マウスおよびモルモット(Cavia porcellus/cobya)との交差反応性を調べるため、これらの種のα-ENaC配列をNCBIヌクレオチドデータベース(それぞれ受託番号NM_011324.1およびAF071230(全長)/DQ109811(部分的cds))からダウンロードした。この2つのモルモット配列を用いて、モルモットα-ENaCコンセンサス配列を作成した。
全ヒト19マー配列をマウスおよびモルモット配列の存在を調べた。陽性配列をヒト-マウス交差反応性siRNA(センス)配列またはヒト-モルモット交差反応性siRNA(センス)配列のプールに割り付けた。全てのポリG配列を排除した後、標的外スコアが3以上の配列ならびに標的外スコアが2.2または2.4で、マウス、アカゲザルまたはモルモットとの交差反応性を有するものを選択した。拡張スクリーニングプールにおけるsiRNAの総数は344であった(表1b参照)。
【0234】
in vivoラットサロゲートセット
in vivoラットサロゲートセットのin silico選択の目的は、ラットにおいて十分な特異性を有するヒトおよびラットα-ENaCを標的とする全てのsiRNAを同定することであった。ヒト-ラット交差反応性siRNAの同定のため、ラットα-ENaC mRNA配列をNCBIヌクレオチドデータベース(受託番号NM_031548.2)からダウンロードし、ヒト19マーのプールからの全ての配列を、ヒト-ラット交差反応性siRNA(センス)配列を表す配列ラット配列における存在に関して調べた。
【0235】
対応するアンチセンス配列を作成し、ラットにおける特異性を試験した。このため、ラットにおける最も関連のある標的外遺伝子およびその対応する標的外スコアを、ヒト転写物の代わりにラットmRNAセット(RefSeqデータベース)を用い、「初期スクリーニングセット」の節に記載されているように毛算した。全てのポリG配列を排除した後、ラット標的外スコアを第一優先、ヒト標的外スコアを第二優先として、ランク付けを作成した。
一覧の上の48配列が最終的に選択され、in vivoラットサロゲートセットを表す(表1c参照)。
【0236】
in vivoモルモットサロゲートセット
in vivoモルモットサロゲートセットのin silico選択の目的は、それまでのセットで選択されていないヒトおよびモルモットα-ENaCを標的とする全てのsiRNAを同定することであった。それまでに判定されたヒト-モルモット交差反応性siRNA(センス)配列の残りのsiRNAを、ヒト標的外スコアに従ってランク付けした。in vivoモルモットサロゲートセットを表す、上の63配列(ポリG配列を除く)を選択した(表1d参照)。
【0237】
実施例2:siRNA合成
天然塩基を含むヌクレオチドの合成
スクリーニングセットからのsiRNAが全てin vivo投与に意図される可能性があるので、siRNAを、生体環境中でのエンドおよびエキソヌクレアーゼによる分解からsiRNAを保護する改変戦略で合成した。この戦略では、両鎖の3'末端を、3'末端の最後の2つの核酸塩基の間のホスホロチオエート結合により、3'→5'エキソヌクレアーゼ活性から保護する。siRNAのエンドヌクレアーゼ分解を阻害するため、siRNAのセンス鎖の全てのピリミジンを対応する2'-O-メチル修飾リボヌクレオチドで置換した。より活性の高い、従って修飾に対する感受性の高い鎖であるアンチセンス鎖における修飾の数を減らすために、本発明者らはこれまでに同定されている主要なヌクレアーゼ切断部位に関してピリミジンのみを2'-O-メチル基で修飾した。この主要な切断部位は次の2つの配列モチーフ:5'-UA-3'および5'-CA-3'である。
【0238】
製剤において、肺における核酸分解生体環境からRNAを潜在的に保護するsiRNAを用いることも考えられたので、同じセットのsiRNAを、エンドヌクレアーゼ分解からの保護を行わずに合成した。
本発明において試薬の供給源が特に示されない場合、そのような試薬は、分子生物学用試薬の供給者から分子生物学における適用に標準的な品質/純度で入手可能である。
【0239】
一本鎖RNAは、8909合成装置(Applied Biosystems, Applera Deutschland GmbH, Darmstadt, Germany)および固相支持体としての多孔性ガラス(controlled pore glass)(CPG、500Å、Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を用い、固相合成により1μモルのスケールで作製した。RNAおよび2'-O-メチルヌクレオチドを含むRNAを、それぞれ対応するホスホルアミダイトおよび2'-O-メチルホスホルアミダイト(Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を用いる固相合成により作製した。これらの結合ブロックを、Current protocols in nucleic acid chemistry, Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載されているような標準的なヌクレオシドホスホルアミダイトを用い、そのオリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択部位に組み込んだ。ホスホロチオエート結合は、ヨウ素酸化剤溶液を、アセトニトリル(1%)中、Beaucage試薬(Chruachem Ltd, Glasgow, UK)の溶液に置き換えることにより導入した。さらなる補助試薬はMallinckrodt Baker(Griesheim, Germany)から得た。
【0240】
陰イオン交換HPLCによる粗オリゴリボヌクレオチドの脱保護および精製は、確立されている手順に従って行った。収量および濃度は、分光光度系(DU 640B, Beckman Coulter GmbH, Unterschleissheim, Germany)を用い、260nmにおける個々のRNAの溶液のUV吸収により測定した。二本鎖RNAは、アニーリングバッファー(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)中、相補鎖の当モル溶液を混合することにより作製し、水浴にて85~90℃で3分間加熱し、3~4時間かけて室温まで冷ました。アニーリングしたRNA溶液を50μモル二本鎖RNA/Lの濃度まで希釈し、使用まで-20℃で保存した。
【0241】
実施例3:in vitroにおけるsiRNA試験
iRNA剤のα-ENaC発現阻害能を、in vitroではヒト細胞系統で、またはin vivoではラットで試験した。iRNA剤を、例えばトランスフェクションにより細胞にトランスフェクトし、一定時間、例えば24時間細胞に作用させ、α-ENaC mRNAのレベルを分岐DNA分析により測定した。あるいは、in vivoにおいてiRNA剤を気管内経路により投与し、α-ENaC mRNA発現の阻害を標的器官に対する分岐DNA分析により測定した。これらの直接的アッセイの補足として、本発明者らは、哺乳類宿主細胞により組換え発現されたα-ENaC mRNAに対するRNAi剤による標的遺伝子発現の阻害を試験した。
【0242】
細胞系統
H441細胞はAmerican Type Culture Collection(ATCC-Number: HTB-174, LCG Promochem GmbH, Wesel, Germany)から入手し、5%CO/95%空気雰囲気下、37℃、RPMI 1640、10%ウシ胎児血清、100uペニシリン/100μg/mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、10nM Hepesおよび1mMピルビン酸ナトリウム(全てBiochrom AG, Berlin, Germanyから)中で増殖させた。
【0243】
一次ヒト気管支上皮細胞は通常、Cambrex(カタログ番号CC-2540)から入手し、singlequots(Cambrexカタログ番号CC-3170 トリヨードトレオニン不含)を含むBEGM培地で増殖させた。空気と液体の界面での分極および増殖のため、トリヨードトレオニンおよびGA1000画分を除き、50μg/mLのゲンタマイシン(Gibco Brlカタログ番号10131-015)が存在すること以外が上記と同様に、4.5g/L D-グルコース(Gibco BRLカタログ番号41965-039)を添加し、さらにsinglequots(Cambrexカタログ番号CC-4175)を添加したBEGM:DMEMの1:1混合物中で、細胞を増殖させた。細胞を血清不含培地で維持した際は、継代培養工程でトリプシン中和溶液を用いた(Cambrexカタログ番号CC-5002)。
空気-液体界面での分極および培養のため、細胞を半透性(0.4ミクロン)ポリカーボネート支持体(Corning Costarカタログ番号3407#3460)上で増殖させ、37℃、5%CO/95%空気雰囲気下で培養した。
【0244】
Cos-1アフリカミドリザル腎臓細胞(ATCC#CRL-1650)は、ダルベッコのMEM、4.5g/Lグルコース、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、1.5g/L重炭酸ナトリウム(Gibco BRL)、100uペニシリン/100μg/mLストレプトマイシン中で増殖させた。
【0245】
実施例3.1:活性なα-ENaC siRNAのin vitroスクリーニングおよびH441におけるIC 50 の測定
トランスフェクション1日前に、H441細胞(ATCC-Number: HTB-174, LCG Promochem GmbH, Wesel, Germany)において、100nMのデキサメタゾンを加えることでENaC-α発現を誘発した。トランスフェクション直前に、細胞を96ウェルプレート(Greiner Bio-One GmbH, Frickenhausen, Germany)上、培養培地75μL(RPMI 1640、10%ウシ胎児血清、100uペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、10nM Hepesおよび1mMピルビン酸ナトリウム、全てBiochrom AG, Berlin, Germanyから)中、1.5×10細胞/ウェルで播種した。トランスフェクションは4反復で行った。各ウェル0.5μLのリポフェクタミン2000(Invitrogen GmbH, Karlsruhe, Germany)を12μLのOpti-MEM(Invitrogen)と混合し、室温で15分間インキュベートした。トランスフェクション容量100μLでsiRNA濃度が50nMである場合、1μLの5μM siRNAをウェル当たり11.5μLのOpti-MEMと混合し、リポフェクタミン2000-Opti-MEM混合物と合わせ、再び室温で15分間インキュベートした。siRNA-リポフェクタミン2000-複合体を細胞に完全に適用し(ウェル当たり各25μL)、細胞を加湿インキュベーター(Heraeus GmbH, Hanau)中、37℃、5%COで24時間インキュベートした。
【0246】
100μLの増殖培地が入った各ウェルに50μLの溶解混合物(Genospectra, Fremont, USAからのQuantiGene bDNA-キットの内容物)を適用することにより細胞を採取し、53℃で30分間溶解させた。その後、50μLの溶解液をヒトENaC-αおよびヒトGAPDHに特異的なプローブセット(プローブセットの配列は下記参照)とともにインキュベートし、QuantiGeneに関する製造業者のプロトコールに従って処理した。終了時に、化学発光をVictor2-Light(Perkin Elmer, Wiesbaden, Germany)にてRLU(relative light units)として測定し、hENaCプローブセットで得られた値を、各ウェルの個々のGAPDH値に対して標準化した。ENaC-αに対するsiRNAで得られた値を非特異的siRNA(HCVに対するもの)(100%に設定)で得られた値と相関させた。siRNA例に関するα-ENaCの残存発現%を表1A~1Dに示す。
【0247】
このスクリーニングからの有効なsiRNAを、用量応答曲線によりさらに特徴付けた。用量応答曲線のトランスフェクションは以下の濃度で行い:100nM、16.7nM、2.8nM、0.46nM、77pM、12.8pM、2.1pM、0.35pM、59.5fM、9.9fMおよびモック(siRNA無し)、上記のプロトコールに従い、週濃度12.5μlとなるようにOpti-MEMで希釈した。データ分析は、マイクロソフト・エクセル・アドインソフトウエアXL-fit 4.2(IDBS, Guildford, Surrey, UK)を用い、シグモイドモデルナンバー606を適用して行った。
【0248】
【表1】
【0249】
【表2】
【0250】
siRNA例のIC50を表2Aおよび2Bに示す。
【0251】
実施例3.2:一次ヒト気管支上皮モデルにおける一時的α-ENaCノックダウン:
ヒト気管支上皮細胞(ドナー参照4F1499)をトランスフェクション1日前に、24ウェルプレートに0.5mL培養培地中、1×10細胞/ウェルでプレーティングした。
細胞はsiRNAトランスフェクション当日、集密度70%であった。
【0252】
各siRNAを個別の試験管で1mLのOptimem I(Invitrogen)に100nMで再懸濁させ、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を6μL/mL Optimemに希釈し、24ウェルプレートで4回のトランスフェクションに十分な量を得た。室温で5分後、これらの混合物を合わせ、所望の終濃度50nM siRNAおよび3μL/mLリポフェクタミン2000とした。このトランスフェクション混合物を室温でさらに20分間インキュベートし、実験計画の指定通りに420μLのsiRNA/試薬複合体を各ウェルに加えた。プレートを穏やかに揺動し、完全な混合を確保した後、インキュベーター内、37℃、5%CO/95%空気で4時間インキュベートした。その後、トランスフェクション混合物を吸引し、細胞をさらに20時間、通常の培養条件に戻した。
【0253】
細胞溶解液を分岐DNA分析用に調製した。2:1培地:溶解バッファー(Panomics)混合物を作製し、細胞を200μLに53℃30分間溶解した。完全に溶解したことを目で確認した後、細胞溶解液を次の分析のために-80℃で保存した。分岐DNA分析は上記のように行い、α-ENaC発現をGAPDHに対して標準化した。用いた分岐DNA分析プロトコールは、この場合には各ウェルに20μLのサンプルを適用したことだけが上記の場合と異なっている。
表2Cは、siRNA例に関する一次HBECにおけるα-ENaC発現を示す。
【0254】
実施例3.3:Cos-1細胞における、選択されたRNAi剤に対する、外因的に発現されたクローニングカニクイザルα-ENaC遺伝子発現のin vitro阻害
カニクイザルα-ENaC配列のクローニング
5'-UTRおよびCDSの増幅のためのプライマー配列(括弧内に示されているヌクレオチドはMacaca mulatta(アカゲザル)α-ENaC cDNA配列に相当する):
P745:5'-CTCCATGTTCTGCGGCCGCGGATAGAAG-3'(nt1427)(配列番号1674)
P733:5'-CCGGCCGGCGGGCGGGCT-3'(nt1)(配列番号1675)
P734:5'-CTCCCCAGCCCGGCCGCT-3'(nt17)(配列番号1676)
P735:5'-GGCCGCTGCACCTGTAGG-3'(nt28)(配列番号1677)
【0255】
CDSおよび3'-UTR増幅のためのプライマー配列:
P737:5'-ATGGAGTACTGTGACTACAGG-3'(nt1422)(配列番号:1678)
P740:5'-TTGAGCATCTGCCTACTTG-3'(nt3113)(配列番号:1679)
【0256】
CDSの内部部分の増幅のためのプライマー配列:
P713:5'-5'-ATGGATGATGGTGGCTTTAACTTGCGG-3'(nt1182)(配列番号:1710)P715:5'-5'-TCAGGGCCCCCCCAGAGG-3'(nt2108)(配列番号:1680)
【0257】
カニクイザル(Macaca fascicularis)肺全RNA(#R1534152-Cy-BC)はBioCat(Germany)から購入した。cDNAの合成は、スーパースクリプトIII第一鎖合成系(Invitrogen)を用いて行った。cDNAの合成は、ランダムヘキサマーまたはオリゴdTプライマーのいずれかを用いて行った。さらに、カニクイザル肺第一鎖cDNAはBioCat/#C1534160-Cy-BCからも購入した。PCR増幅には、Advantage 2 PCRキット(#K1910-1、Clontech)を用いた。5'-UTRおよびCDSの一部の増幅は、P745、ならびにP733、P734およびP735の当モル混合物を用いて行った。CDSおよび3'-UTRのPCR増幅には、プライマーP737およびP740を用いた。CDSの一部の増幅には、プライマーP713およびP715を用いた。
【0258】
全てのPCR産物をアガロースゲル電気泳動により分析した後、TOP10菌にてTOPO TAクローニングキット(Invitrogen)を用い、pCR2.1ベクターにクローニングした。
次に、クローンを採取し、Qiagen Miniprepキットを用いてDNAを単離した。EcoRIによる制限酵素消化およびアガロースゲル電気泳動による分析の後、適切なクローンからのDNAに対して配列決定を行った。
【0259】
次に、これらの配列をアカゲザルのα-ENaC cDNA配列とともにアラインし、個々のクローンの配列を互いにアラインした。その後、全長カニクイザルα-ENaC cDNAを、EcoRIおよびNotIによる5'部分の消化(5'-UTRおよびCDS、クローン55)、NotIおよびBstEIIによるCDSの中央部分の消化(クローン15)、ならびにBstE IIおよびEcoRVによる3'部分(CDSおよび3'-UTR)の消化(クローン80)によりクローニングした。その後、消化されたDNAフラグメントを、EcoRIおよびEcoRVで消化したpcDNA3.1にサブクローニングした。
そして、pcDNA3.1中の全長カニクイザルα-ENaC cDNAに対して全長配列決定(Ingenetix, Vienna, Austria)を行った。カニクイザルα-ENaC cDNA配列は、アカゲザルα-ENaC cDNA配列のnt28~3113に相当する。最後に、カニクイザルα-ENaC cDNAを、BamH IおよびEcoRVによる消化により、pcDNA3.1-カニクイザルα-ENaCから抽出し、ベクターpXOONにサブクローニングした。プラスミドマップを図1に示す。図2は、カニクイザルα-ENaCのタンパク質(配列番号:1681)およびDNA(配列番号:1682)配列を示す。
【0260】
トランスフェクション
COS-1細胞を24ウェルプレート上の各0.5mLの培養培地中に6×10細胞/ウェルで播種した。播種1日後に細胞をpXOONカニクイザルα-ENaC発現プラスミドと示されたsiRNAで同時トランスフェクトした。下記のように、X-treme遺伝子トランスフェクション試薬(Roche)を3.75μL/ウェルにて、全量720μL/ウェルOpti-MEM(Invitrogen)で用い、4ngのα-ENaC発現プラスミドおよび600ngの担体プラスミド(pNFAT-luc)を関連のsiRNA(終濃度45nM)で同時トランスフェクトした。
【0261】
トランスフェクションは各サンプルにつき3反復で行った。プラスミド/siRNAマスターミックス(3.5ウェルにつき)を以下のように調製した:全量210μL(Opti-MEM)中、14ngのα-ENaC発現プラスミド、2.1μgの担体プラスミドおよび112ピコモルの関連siRNA。脂質マスターミックスを全トランスフェクションに関して調製した(8種類で3反復のトランスフェクションサンプルについて105μL脂質および1575μL Opti-MEM)。プラスミド/siRNAおよび脂質を等量で混合し、3反復のサンプル(3.5×)について全量420μLのトランスフェクションミックスを得た。室温で20分インキュベートした後、120μLの関連トランスフェクションミックスを各ウェルの細胞に最終トランスフェクション容量720μL(Opti-MEM)となるように加えた。細胞を加湿インキュベーター(Heraeus GmbH, Hanau, Germany)内、37℃、5%COで24時間トランスフェクトし、分岐DNA分析のために採取した。
【0262】
細胞溶解液を分岐DNA分析用に調製した。2:1培地:溶解バッファー(Panomics)混合物を作製し、細胞を200μLに53℃30分間溶解した。完全に溶解したことを目で確認した後、細胞溶解液を次の分析のために-80℃で保存した。分岐DNA分析は上記のように行い、α-ENaC発現を発現プラスミドからのeGFPに対して標準化した。
用いた分岐DNA分析プロトコールは、この場合には各ウェルに20μLのサンプルを適用したことだけが上記の場合と異なっている。
【0263】
【表3】
【0264】
【表4】
【0265】
表2Cは、siRNA例に関する、カニクイザル種におけるα-ENaCの発現を示す。
【0266】
実施例3.4 インターフェロンα誘導のスクリーニング
siRNAの、インターフェロン-α(IFNα)放出刺激能を評価するため、siRNAを新たに精製した末梢血単核細胞(PBMC)とともに24時間インキュベートした。siRNAは、そのままPBMCに加えるか、またはまず脂質トランスフェクション剤(GenePorter 2またはリポフェクタミン2000またはDOTAPトランスフェクション剤)と複合体を形成させ、次に、PBMCとともにインキュベートするかのいずれかとした。IFNα誘導の陽性対照として、非修飾対照配列DI_A_2216およびDI_A_5167を含めた。
【0267】
DI_A_2216は、一本鎖アンチセンスDNA分子である。
5'-dGsdGsdGdGdGdAdCdGdAdTdCdGdTdCdGsdGsdGsdGsdGsdG-3'(配列番号:1707)
DI_A_5167は、コレステロールコンジュゲートsiRNAである。
5'-GUCAUCACACUGAAUACCAAU-s-chol-3'(配列番号:1709)
3'-CsAsCAGUAGUGUGACUUAUGGUUA-5'(配列番号:1708)
【0268】
24時間後、IFNαをELISAにより測定した。基準IFNαレベルは非処理細胞に関して測定し、いつも水だけの対象に極めて近かった。トランスフェクション剤単独を添加しても、IFNαレベルの上昇は全く、またはほとんど見られなかった。既知の刺激性オリゴヌクレオチドをそのまま、または形質転換体の存在下で細胞に加え、予測されるIFNαの増加を観察した。この設定により、siRNA(または他のオリゴヌクレオチド)によるヒトPBMCにおけるIFNαの刺激の判定が可能となる。
【0269】
ヒトPBMCの単離:白血球の濃縮画分(バッフィーコート)をBlood Bank Suhl, Institute for Transfusion Medicine, Germanyから入手した。これらの細胞は、HIV、HCVおよびその他を含め、種々の病原体に関して陰性であった。バッフィーコートをPBSで1:1希釈し、フィコールの入った試験管に加え、2200rpmで20分間遠心分離して分画した。その後、濁りのある白血球層を取り出し、新鮮なPBSおよびフィコールが入った試験管に移し、2200rpmで15分間遠心分離した。濁りのある白血球層を再び取り出し、RPMI 1640培養培地に移し、1,200rpmで5分間遠心分離し、白血球をペレットとした。これらの細胞をRPMIに再懸濁させ、上記のようにペレットとし、10%FCSを含む培地に再懸濁させて1×10/mLとした。
【0270】
インターフェロン-αの測定:培養細胞を37℃で24時間、Optimem中500nM(または1μM)のオリゴヌクレオチド、またはGP2もしくはリポフェクタミン2000もしくはDOTAPトランスフェクション剤中133nMのオリゴヌクレオチドのいずれかと合わせた。インターフェロン-αは、製造業者の説明書に従い、Bender Med Systems(Vienna, Austria)インスタントELISAキットを用いて測定した。
主要治療配列の選択は、IFNα誘導のレベルが陽性対照の15%未満であることに基づいた。
【0271】
実施例3.5 CF患者の痰におけるsiRNA安定性の判定
痰サンプルはAhmet Uluer医師(ボストン小児病院)により採取された。収集後、痰サンプルは抗生物質で処理し、UV照射して細菌含量を減らした。痰サンプルにおけるsiRNA安定性を判定するため、siRNAを、5μM濃度の痰30μL中、37℃で示された時間インキュベートした。プロテイナーゼKの添加により反応を終わらせ、サンプルを42℃でさらに20分間インキュベートした。ヌクレアーゼ分解耐性のL-ヌクレオチドからなる40マーのRNA分子(「Spiegelmer」)を加え、較正標準として用いた。サンプルを0.2μm膜で濾過して残渣を除去した。サンプルを、pH11.0で、溶出に過塩素酸ナトリウム勾配を用いる、DNAPac PA 200カラム(Dionex)での変性イオン交換HPLCにより分析した。siRNAおよび分解生成物を、各サンプルのピーク下面積の測定によって定量した。濃度は非インキュベートサンプルにおける濃度に対して標準化した。
【0272】
主要治療配列(ND8356、ND8357およびND8396)の選択は、CF痰において見られたin vitro安定性が60分間を超える半減期であることに基づいた。
【0273】
実施例3.6 ヒトSCNN1A遺伝子における既知の多型に対する主要治療配列の交差確認
主要候補の標的部位から既知の多型を排除するため、主要siRNA配列をNCBI一塩基多型(SNP)データベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?CMD=search&DB=snp)に対して確認した。ヒトSCNN1A遺伝子における既知の10種のエキソン多型で、最も有効な10種の主要治療薬候補のいずれかの標的部位に存在することが示されたものはなかった。
【0274】
実施例3.7:上位5つの推定標的外配列のin vitroプロファイリング
各配列のアライメントの一覧を19マー領域にわたる相同性により選別した。標的外を、実施例1に記載されている基準に従い、ミスマッチの数および位置に基づいてスコアリングした。上位5つの標的外配列を各主要治療配列(ND8356、ND8357およびND8396)に関して同定した。標的配列および標的外配列をそれぞれデュアルルシフェラーゼリポーター系にクローニングした。各クローニングフラグメントは、標的配列の5'および3'の双方に、10ヌクレオチドのフランキング領域に加えて標的19ヌクレオチドを包含した。これらのフラグメントをSV40プロモーターの制御下、ウミシイタケ・ルシフェラーゼ配列の3'側の多重クローニング部位にクローニングした。標的配列および標的外配列の双方に対する各siRNAの活性を、ホタル・ルシフェラーゼ(HSV-TKプロモーターにより独立に制御される)に対する標的ウミシイタケ・ルシフェラーゼの相対的蛍光により決定した。まず、COS-7細胞においてsiRNA濃度50nMでトランスフェクションを行った。ルシフェラーゼの読み取りは、トランスフェクション24時間後に行った。この高濃度のsiRNAでは、この3つの主要siRNAのいずれについてもいずれの標的外配列に対しても30%を超えるノックダウンは見られなかった。標的配列に対する活性は、ウミシイタケ・ルシフェラーゼ活性における相対的低下がおよそ80%であることで示した。また、標的配列に対する各siRNAについてIC50曲線も作成し、上記で同定された標的外配列を対照とした。各主要siRNAに関して、このリポーターアッセイにおける標的IC50は、H441において内在標的に対して得られたIC50(実施例3.3)と同じ桁であり(10~50pM)、ND8356、ND8357およびND8396に関して、標的配列に対する効力は、推定される標的外配列のいずれよりも少なくとも1000~5000倍高かったことを示す。
【0275】
実施例3.8:遺伝毒性プロファイリング
細胞傷害性の判定:細胞傷害性は、培養細胞数の評価のための細胞計数を用いることで判定した。
in vitroにおいて細胞傷害性濃度を試験することで、小核形成などの遺伝毒性作用が誘発され得ることがよく知られている。よって、本発明者らは、小核を有する細胞の非用量依存的な増加がせいぜい中程度の毒性を示す濃度ですでに認めることができれば、50%前後またはそれより低い(同時に行った陰性対照に比べて)細胞総数で小核を含む細胞の数の増加が見られることが細胞傷害性に関連すると考えた。in vitro哺乳類細胞アッセイを規制するガイドライン(染色体異常試験の実施に関するOECDおよびICHガイドライン)によれば、細胞総数に少なくとも50%の減少を示す濃度の分析が必要とされる。さらに、OECDプロトコールは、無毒な化合物を、少なくとも1種類の沈殿濃度を含むように(これが10mMまたは5mg/ml(いずれにせよ低い)を超えない限り)試験することを必要とする。in vitro小核試験は、調節アッセイ、すなわち、in vitro染色体異常試験の転帰を推定することを目的とするので、このin vitro小核試験のプロトコールはこれらの試験の要件を満たすように設計した。
【0276】
試験系:TK6細胞はエプスタイン-バー-ウイルスでトランスフェクトされ、不死化された細胞(脾臓に由来するヒトリンパ芽球起源)である。TK6細胞を用いた、雄ラット(Aroclor 1254前処理)由来のS9-肝臓ホモジネート(2%)を含む、または含まない、in vitro小核試験における染色体異常誘発能および/または異数性誘発能の決定。処理時間:20時間(-S9)、3時間(+S9)。サンプリング時間:3時間処理の開始の24時間後、20時間処理の開始の48時間後。各物質について、少なくとも3種類の濃度(各濃度2回培養)および各濃度2000細胞を分析した。
【0277】
小核を有する細胞の頻度が、
・≧2%であり、同時に行った溶媒対照値の少なくとも2倍を示した場合、または
・<2%であり、同時に行った溶媒対照値の少なくとも3倍の増加を示した場合
に、試験濃度に関する小核誘導作用は陽性であるとみなした。
実験が陽性であると結論付けるためには、用量-作用関係と細胞傷害性を考慮しなければならない。
【0278】
要約:主要な治療配列ND8396、ND8356、ND8357は、代謝活性化を行わない場合の20時間処理後も、S9を含む、または含まない場合の3時間処理後も小核を含む細胞の数の増加を誘導しなかった。非細胞傷害性濃度は試験限界5mg/mlまで分析可能であった。
【0279】
実施例3.9 H441におけるin vitro機能有効性:ND8396
αENaCに対する主要siRNAのin vitro機能有効性を証明するため、H441細胞をsiRNAでトランスフェクトし、イオン輸送のUssingsチャンバー分析のために調製した。トランスフェクションのため、H441細胞をT25フラスコの、200nMデキサメタゾンを添加した培養培地中に、フラスコ当たり2×10細胞をプレーティングした。各フラスコの細胞をND8396または非標的対照siRNAのいずれかで、全量5mL(血清不含培地)中、30nM siRNAおよび4mL/mLリポフェクタミン2000にてトランスフェクトした。トランスフェクション1日後に、細胞を、分化および固着の形成に必要な時間を最短にするため、1cm Snapwellインサート上に集密状態(2×10細胞/インサート)でプレーティングし、上部と下部の双方に培地を供給した。さらに1日培養した後、上部の培地を除去し、下部の培地を交換し、このようにして細胞を空気-液体界面(ALI)培養とした。細胞をイオン輸送分析前さらに6日間ALIで維持した。
【0280】
Ussingsチャンバーでの機能分析のため、Vertical拡散チャンバー(Costar)にSnapwellインサートを取り付け、120mM NaCl、25mM NaHCO、3.3mM KHPO、0.8mM KHPO、1.2mM CaCl、1.2mM MgClおよび10mMグルコースを含有する、37℃に維持し、継続的に通気したリンゲル液(O中5%CO、pH7.4)を満たした。溶液の浸透圧は280および300mosmol/kgHOの範囲に定めた。細胞を0mVに電位固定した(モデルEVC4000;WPI)。経上皮抵抗性(R)は、30秒間隔で1または2mVパルスをかけるか、細胞間初期電位差と測定された初期電流を用い、その後、オームの法則によりRを計算することにより評価した。データはPowerLabワークステーション(ADInstruments)を用いて記録した。siRNA処理の後、細胞の基本的特徴およびアミロライド感受性短絡電流(10μMアミロライドの適用後のISC;上側のみ)を記録した。各培養物のENaCチャネル活性を、各場合のアミロライド感受性ISCにより求めた。
【0281】
アッセイ後、RNA分析のために個々のインサート上の細胞を溶解させた。このアッセイ時点でRNAレベルで75%のノックダウン(非標的対照と比較した場合のND8396)を、およそ30%のアミロライド感受性電流の機能的ノックダウン(非標的対照と比較した場合のND8396)と相関させた。
核酸配列を、標準的な命名法と、特に表Aの省略形を用い、以下に示す。
【0282】
【表5】
【0283】
表1A:初期スクリーニングセットにおいて選択されたsiRNA(ヒト-アカゲザルENaCα交差反応性siRNA)。主鎖修飾を有するもの(配列鎖1~304)と有さないもの(配列鎖305~608)双方の、全部で152のiRNA配列を初期スクリーニングセットとして同定した。iRNA配列を、実施例の節に記載されている設計基準に従い、ヒトおよびアカゲザル双方のα-ENaC配列に完全に相補的となるように設計した。2回の独立した単回投与トランスフェクション実験のα-ENaCの残存発現%を示す(用いた方法については実施例の節を参照)。
【表6】
【表7】
【0284】
【表8】
【表9】
【0285】
【表10】
【表11】
【0286】
【表12】
【表13】
【0287】
【表14】
【表15】
【0288】
【表16】
【表17】
【0289】
表1B:拡張スクリーニングセットにおいて選択されたsiRNA(「ヒトのみ」siRNA)。さらに344のiRNA配列を同定し、実施例の節に記載されている設計基準に従い、ヒトα-ENaC配列に完全に相補的となるように設計した。このスクリーニングセットに挙げられているsiRNAは全て、各鎖の3'末端ヌクレオチド20と21の間のホスホロチオエート結合でのみ修飾された。単回投与トランスフェクションアッセイのα-ENaCの残存発現%を示す(用いた方法については実施例の節を参照)。
【表18】
【表19】
【0290】
【表20】
【表21】
【0291】
【表22】
【表23】
【0292】
【表24】
【表25】
【0293】
【表26】
【表27】
【0294】
【表28】
【表29】
【0295】
【表30】
【表31】
【0296】
【表32】
【表33】
【0297】
【表34】
【表35】
【0298】
【表36】
【表37】
【0299】
【表38】
【表39】
【0300】
【表40】
【0301】
表1C:in vivoにおいてラットサロゲートセットで選択されたsiRNA(ラットにおいて最も高い特性を有するヒト-ラット交差反応性siRNA)。48のヒトおよびラット交差反応性α-ENaC iRNA配列のスクリーニングセットを同定した。2回の独立した単回投与トランスフェクション実験のα-ENaCの残存発現%を示す(用いた方法については実施例の節を参照)。
【表41】
【表42】
【0302】
表1D:in vivoにおいてモルモットサロゲートセットで選択されたsiRNA(ヒト-モルモット交差反応性siRNA)。主鎖修飾を有するもの(配列鎖1393~1518)と有さないもの(配列鎖1519~1644)の双方の63のヒトおよびモルモット交差反応性α-ENaC iRNA配列のスクリーニングセットを同定した。2回の独立した単回投与トランスフェクション実験のα-ENaCの残存発現%を示す(用いた方法については実施例の節を参照)。
【表43】
【表44】
【0303】
【表45】
【表46】
【0304】
【表47】
【表48】
【0305】
【表49】
【0306】
【表50】
【0307】
【表51】
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
【配列表】
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