(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】旅客案内システムおよび旅客案内方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20221013BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20221013BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20221013BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20221013BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20221013BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20221013BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20221013BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G01C21/34
G08G1/005
B61L25/02 Z
G06Q50/30
G16Y10/40
G16Y40/20
(21)【出願番号】P 2020540999
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010838
(87)【国際公開番号】W WO2020049775
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018165652
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植松 凌太
(72)【発明者】
【氏名】木村 恵二
(72)【発明者】
【氏名】皆川 剛
(72)【発明者】
【氏名】米原 三揮
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-126500(JP,A)
【文献】特開2016-030542(JP,A)
【文献】特開2016-185806(JP,A)
【文献】特開2016-080513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26
G01C 21/34
G08G 1/005
B61L 25/02
B61L 27/00
G06Q 50/30
G16Y 10/40
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地の情報と目的地の情報を含む入力情報が入力されると、列車を含む交通機関により前記出発地から前記目的地まで移動する経路である移動経路を該入力情報に基づき探索し、得られた前記移動経路に関する移動経路情報を出力する旅客案内システムであって、
前記入力情報と、交通機関が実際に運行した実績運行情報と、
統計情報演算部を有し、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出し、前記移動経路と前記統計量を用いて前記移動経路情報を生成する、ものであり、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出する際、
運行前日までの実績運行情報と運行当日の実績運行情報を比較することで、運行当日
との着発時刻の誤差が所定の閾値以下であった過去の日の運行の実績を特定し、該特定され
た実績に
基づいて前記移動経路と前記統計量とを算出する、
旅客案内システム。
【請求項2】
現在時刻までの交通機関の運行の実績の情報と前記現在時刻より後の交通機関の運行を予測した情報とを含む予測運行情報と、
前記現在時刻までの乗客の移動の実績の情報と前記現在時刻より後の乗客の移動を予測した情報とを含む予測人流情報のいずれか、
または両方を更に有し、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出する際、
前記運行前日までの予測運行情報
と前記運行当日の予測運行情報と
の比較と、
前記運行前日までの予測人流情報
と前記運行当日の予測人流情報と
の比較の、いずれか、または両方
をすることで、運行当日
との着発時刻の誤差が所定の閾値以下であった過去の日、または、運行当日との人流の誤差が所定の閾値以下であった過去の日、または、その両方を満たした過去の日の運行の実績を特定し、該特定され
た実績に
基いて前記移動経路と前記統計量とを算出する、
請求項
1に記載の旅客案内システム。
【請求項3】
出発地の情報と目的地の情報を含む入力情報が入力されると、列車を含む交通機関により前記出発地から前記目的地まで移動する経路である移動経路を該入力情報に基づき探索し、得られた前記移動経路に関する移動経路情報を出力する旅客案内システムであって、
前記入力情報と、交通機関が実際に運行した実績運行情報と、
統計情報演算部を有し、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出し、前記移動経路と前記統計量を用いて前記移動経路情報を生成する、ものであり、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報を用いて標本情報を生成し、前記標本情報を用いて前記移動経路および前記統計量を算出する
、
旅客案内システム。
【請求項4】
出発地の情報と目的地の情報を含む入力情報が入力されると、列車を含む交通機関により前記出発地から前記目的地まで移動する経路である移動経路を該入力情報に基づき探索し、得られた前記移動経路に関する移動経路情報を出力する旅客案内システムであって、
前記入力情報と、交通機関が実際に運行した実績運行情報と、
統計情報演算部を有し、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出し、前記移動経路と前記統計量を用いて前記移動経路情報を生成する、ものであり、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報を用いて、現在時刻までの交通機関の運行と各実績運行情報との類似度を算出し、
前記入力情報、前記実績運行情報、および前記類似度を用いて前記移動経路および前記統計量を算出する
、
旅客案内システム。
【請求項5】
前記移動経路情報では、前記目的地への各到着時刻と、当該到着時刻までに前記目的地に到着できる確率とが対応付けられている、或いは、
前記移動経路情報では、前記目的地までの各所要時間と、当該所要時間内に前記目的地に到着できる確率とが対応付けられている、或いは、
前記移動経路情報は、前記目的地への到着時刻の期待値を含む、或いは、
前記移動経路情報は、前記目的地までの所要時間の期待値を含む、
請求項
1に記載の旅客案内システム。
【請求項6】
前記移動経路情報は、各到着時刻までに前記目的地に到着できる確率を示す確率分布の情報を含む、或いは、
前記移動経路情報は、各所要時間内に前記目的地に到着できる確率を示す確率分布の情報を含む、請求項
1に記載の旅客案内システム。
【請求項7】
前記移動経路情報は、前記目的地に至るまでに経由する駅における各乗継時間と、当該乗継時間で乗継できる確率とが対応付けられている、或いは、
前記移動経路情報は、前記目的地に至るまでに経由する駅における各乗継時間の確率を示す確率分布の情報を含む、
請求項
1に記載の旅客案内システム。
【請求項8】
前記移動経路情報は、前記確率が所定の閾値よりも大きい前記移動経路情報のみを含む、
請求項
5に記載の旅客案内システム。
【請求項9】
出発地の情報と目的地の情報を含む入力情報が入力されると、列車を含む交通機関により前記出発地から前記目的地まで移動する経路である移動経路を該入力情報に基づき探索し、得られた前記移動経路に関する移動経路情報を出力する旅客案内システムであって、
前記入力情報と、交通機関が実際に運行した実績運行情報と、
統計情報演算部を有し、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出し、前記移動経路と前記統計量を用いて前記移動経路情報を生成する、ものであり、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出する際、出発時刻または到着時刻に関する類似性に基づいて前記移動経路を1つ以上のグループに分類し、該分類された各々のグループの移動経路に対応する移動経路情報を作成す
る、
旅客案内システム。
【請求項10】
出発地の情報と目的地の情報を含む入力情報が入力されると、列車を含む交通機関により前記出発地から前記目的地まで移動する経路である移動経路を該入力情報に基づき探索し、得られた前記移動経路に関する移動経路情報を出力する旅客案内システムであって、
前記入力情報と、交通機関が実際に運行した実績運行情報と、乗客の移動に関する情報を含む実績人流情報と、
統計情報演算部を有し、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出し、前記移動経路と前記統計量を用いて前記移動経路情報を生成する、ものであり、
前記統計情報演算部は、前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出する際、
運行前日までの実績人流情報と運行当日の実績人流情報を比較することで、運行当日との乗車人数の誤差が所定の閾値以下であった過去の日の運行の実績を特定し、該特定され実績に基づいて前記移動経路と前記統計量とを算出する、
旅客案内システム。
【請求項11】
出発地の情報と目的地の情報を含む入力情報が入力されると、列車を含む交通機関により前記出発地から前記目的地まで移動する経路
である移動経路を該入力情報に基づき探索し、得られた前記移動経路に関する移動経路情報を出力する旅客案内方法であって、
コンピュータが、
列車が実際に運行した実績運行情報および前記入力情報に基づいて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出し、
前記移動経路と前記統計量に基づいて前記移動経路情報を生成する、
ものであり、
前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出する際、
運行前日までの実績運行情報と運行当日の実績運行情報を比較することで、運行当日との着発時刻の誤差が所定の閾値以下であった過去の日の運行の実績を特定し、該特定された実績に基づいて前記移動経路と前記統計量とを算出する、
旅客案内方法。
【請求項12】
出発地の情報と目的地の情報を含む入力情報が入力されると、列車を含む交通機関により前記出発地から前記目的地まで移動する経路である移動経路を該入力情報に基づき探索し、得られた前記移動経路に関する移動経路情報を出力する旅客案内方法であって、
コンピュータが、
列車が実際に運行した実績運行情報および前記入力情報に基づいて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出し、
前記移動経路と前記統計量に基づいて前記移動経路情報を生成する、ものであり、
前記実績運行情報および前記入力情報を用いて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出する際、
運行前日までの乗客の移動に関する情報を含む実績人流情報と運行当日の実績人流情報を比較することで、運行当日との乗車人数の誤差が所定の閾値以下であった過去の日の運行の実績を特定し、該特定された実績に基づいて前記移動経路と前記統計量とを算出する、
旅客案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが指定した条件に応じて抽出した交通機関の経路をユーザに提示する旅客案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道輸送サービスに代表される公共交通機関では、ユーザから指定された条件に合った経路を列車運行の情報に基づいて抽出し、その経路を示す情報をユーザに提示する旅客案内サービスが運輸サービスの利便性向上という観点から重要である。例えば、鉄道の場合、旅客は、出発地点(出発駅)と到着地点(到着駅)と目標到着時刻(到着駅に到着したい時刻)とを条件として指定し、その条件に基づき旅客案内システムで抽出された経路の情報を受け、実際に利用する移動経路を決定することができる。
【0003】
また、旅客が移動経路を選択する上で考慮する指標として、移動に要する時間や旅費に加え、旅客の快適性に影響する要素のひとつである車両の混雑度がある。列車が混雑すると個々の旅客のパーソナルスペースが狭くなって不快感が増加する。そのため混雑度の高い列車を回避して他の経路を選択する旅客も多い。
【0004】
そこで経路案内において混雑度を考慮することが検討されている。例えば、特許文献1には、「混雑度の低い乗換ルートを一度に複数検索することで、ユーザの希望に近い結果を表示し、ユーザの希望に一番近い結果を選択できる」ことを目的とする情報処理システムとして「交通機関の出発時刻と交通機関の出発停留地点と交通機関の目的停留地点とを含む乗換探索条件を取得し、取得された乗換探索条件に含まれる出発時刻を含む所定時間帯に出発する、出発停留地点から目的停留地点までの交通機関の乗換経路を、ネットワーク情報を用いて探索し、当該乗換経路に関する経路情報を生成し、探索された乗換経路における交通機関の混雑に関する混雑情報を取得し、生成された経路情報と、取得された混雑情報と、を含む経路案内情報を表示部に表示させる」ことが開示されている。特許文献1では、蓄積された過去の混雑度情報を経路案内情報とともに表示することによって、混雑度の低い移動経路を希望する場合においても、旅客の意思決定を支援している。
【0005】
また、鉄道運輸サービス自体の利便性を向上するために、当日に移動需要に応じて動的に列車ダイヤを変更することが検討されている(非特許文献1参照)。これにより利便性が高く効率的な列車運行を実現することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】富井,小野,後藤,福村,土屋:「鉄道におけるデマンド指向スケジューリング実現のための課題」,情報処理学会研究報告高度交通システム(ITS),pp.15-22(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に開示されているように当日に移動需要に応じて動的に列車ダイヤが変更されるようになっても旅客に適切な経路案内サービスを提供することが求められる。しかしながら、移動需要に応じて動的に列車ダイヤが変更される状況で、特許文献1に開示された技術を用いた経路案内を行った場合には以下のような問題がある。
【0009】
特許文献1で開示された情報処理システムは、前日までに計画された列車ダイヤに基づき案内情報を作成される。そのため、列車ダイヤが当日になって動的に変更されると、実際の各列車が各時刻に各駅で出発、或いは、到着する動き(以下「列車運行」とよぶ)と異なる案内情報を旅客に提供してしまう可能性がある。
【0010】
また、前日までに計画された列車ダイヤに基づき抽出された経路よりも適切な経路があったとしても、その経路の情報を旅客に提供できない可能性もある。例えば、ある路線において混雑を緩和するために当日になって列車が増発された場合、前日までに計画された列車ダイヤにはその増発された列車は含まれていない。増発された列車を利用すれば、前日までに計画された列車ダイヤに基づいて抽出した経路よりも早い時刻に到着できる可能性があっても、旅客には増発された列車を利用する経路を案内する情報を提示することができない。このような場合に旅客は増発された列車を利用する機会を逸する可能性がある。
【0011】
また、上述のように移動需要に応じて動的に列車ダイヤが変更される場合のほか、例えば慢性的に列車遅延が発生しているような、ダイヤの不確実性が高い路線においても、同様の課題が存在しており、旅客の意思決定を支援するため、当日の状況に即した案内情報が必要とされている。
【0012】
以上を鑑み、本発明の目的は、列車ダイヤの動的な変更を想定した経路案内情報の提示を可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様にかかる旅客案内システムは、出発地の情報と目的地の情報を含む入力情報が入力されると、該入力情報に基づき交通機関の列車により前記出発地から前記目的地まで移動する経路を探索し、得られた前記移動経路に関する移動経路情報を出力する旅客案内システムであって、前記入力情報と、列車が実際に運行した実績運行情報と、ソフトウェアプログラムとを格納する記憶部と、前記入力情報および前記実績運行情報を参照して前記ソフトウェアプログラムを実行するCPUと、を有し、前記CPUは、前記実績運行情報および前記入力情報に基づいて前記出発地から前記目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出し、前記移動経路と前記統計量に基づいて前記移動経路情報を生成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、過去の運行実績から移動経路およびその所要時間に関する統計量を算出し、移動経路と統計量を基に移動経路情報を生成するので、列車ダイヤの動的な変更が想定され、将来の好適な移動経路や所要時間が変動する可能性がある場合でも、過去の実績に鑑みて好適な経路案内情報を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態にかかる旅客案内システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる運行情報の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態にかかる人流情報の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態にかかる経路情報の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態にかかる統合の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態にかかる予測情報データベースの一例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態にかかる実績情報データベースの一例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態にかかる標本情報の一例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態にかかる旅客案内システムの処理の概要を示すフローチャートである。
【
図10】第1の実施形態にかかる確率情報生成処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施形態にかかる標本情報生成処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態にかかる経路情報生成処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図13】第1の実施形態にかかる確率分布生成処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図14】第1の実施形態にかかるユーザ端末に表示される案内情報の一例を示す図である。
【
図15】第1の実施形態の変形例にかかる経路情報の一例を示す図である。
【
図16】第2の実施形態にかかる確率分布生成処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、
図1から
図14を用いて第1の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(1.1 システム構成)
図1は、第1の実施形態にかかるシステム構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、旅客案内システム100と、運行管理システム200と、人流予測システム300とは、通信ネットワーク500を介して、相互に通信可能に接続されている。旅客案内システム100とユーザ端末400とは、通信ネットワーク600を介して、相互に通信可能に接続されている。
【0019】
旅客案内システム100は、ユーザ端末400からの案内要求を受けて、システム内に格納した情報、運行管理システム200から取得した情報、および/または人流予測システム300から取得した情報に基づき、確率情報を付与した案内情報を適宜作成または更新し、ユーザ端末400に通知する。
【0020】
運行管理システム200は、列車の運行情報に従って、管理対象である列車運行ネットワーク内の複数の列車を制御する。運行管理システム200は、予測機能を有し、現在の列車の運行情報から、将来の列車の運行情報を予測する。運行管理システム200は、通信ネットワーク500を介して、運行情報を旅客案内システム100に通知する。
【0021】
人流予測システム300は、運行管理システム200が制御している列車が各駅を出発する際の乗車人数を予測する。人流予測システム300は、通信ネットワーク500を介して、人流情報を旅客案内システム100へ通知する。
【0022】
ユーザ端末400は、ユーザに対して案内情報を表示する端末である。ユーザ端末400は、ネットワーク600を介して、ユーザが入力した案内要求を旅客案内システム100へ通知する。
【0023】
旅客案内システム100は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102と、入力装置103と、記憶部104と、送受信部105と、通信部106とを有する。
【0024】
CPU101は、記憶部104に格納されているコンピュータプログラム(以下「プログラム」という)を実行する処理装置である。メモリ102は、CPU101の作業領域を提供する記憶装置(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)である。CPU101は、プログラムを実行する際に、メモリ102にデータを書き込んだり、メモリ102からデータを読み出したりする。
【0025】
入力装置103は、操作者によって入力された操作にかかる情報を、旅客案内システム100へ通知する。入力装置103は、例えば、キーボードおよび/またはマウスである。マウスは、一般にポインティングデバイスと呼ばれる。実施の形態1では、ポインティングデバイスとしてマウスを想定する。しかし、実施の形態1は、他のポインティングデバイス、例えば、トラックボールまたはポインティングスティック、タッチパッド、タッチパネル、ペンタブレットなどであってもよい。
【0026】
記憶部104は、CPU101が実行する各種プログラムとCPU101が処理に利用する各種データとが格納される記憶装置(例えばHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等)である。記憶部104に保存されたデータ等は、記憶部104から読み出されて、メモリ102に複製されてもよい。また、メモリ102に保存されたデータ等は、メモリ102から読み出されて、記憶部104に複製されてもよい。よって、記憶装置にデータなどを保存した場合、以降、そのデータは、メモリ102および記憶部104のどちらからも読み出せるとする。また、記憶装置からデータ等を読み出す場合、メモリ102および記憶部104のどちらかに保存されているデータなどを読み出すものとする。
【0027】
送受信部105は、通信ネットワーク600に接続される。旅客案内システム100は、送受信部105および通信ネットワーク600を介して、ユーザ端末400とデータを送受信する。
【0028】
通信部106は、通信ネットワーク500に接続される。旅客案内システム100は、通信部106および通信ネットワーク500を介して、運行管理システム200および人流予測システム300と通信を行う。
【0029】
記憶部104には、確率情報生成プログラムP01、情報統合プログラムP02、移動時間計算プログラムP03、移動経路探索プログラムP04、案内情報収集プログラムP05、および案内情報生成プログラムP06が格納されている。また、記憶部104には、予測情報データベースD01、実績情報データベースD02、基盤情報データベースD03、標本情報リストD04、確率情報リストD05、および入力情報リストD06が格納されている。
【0030】
確率情報生成プログラムP01は、CPU101に実行され、予測情報データベースD01、実績情報データベースD02、および基盤情報データベースD03に格納されている各種情報に基づき、案内情報に関する確率情報などを生成する。また、確率情報生成プログラムP01は、標本情報を生成する。
【0031】
情報統合プログラムP02は、CPU101に実行され、情報を統合する。情報統合プログラムP02は、以下の(A1)および(A2)の処理を実行する。
【0032】
(A1)情報統合プログラムP02は、運行管理システム200および人流予測システム300から予測運行情報および予測人流情報を取得し、予想情報取得日時を付与して、予測統合情報を生成する。そして、情報統合プログラムP02は、その生成した予測統合情報を、予測情報データベースD01に格納する。予測運行情報は、列車が、何時にどの駅に到着またはどの駅から出発するかを予測した情報である。予測人流情報は、列車が、何人の旅客を乗車させて、どの駅を出発するかを予測した情報である。予測情報取得日時は、当該予測運行情報、および、当該予測人流情報を取得した日時を示す。情報統合プログラムP02は、一定の周期(例えば30分毎)で、予測運行情報および予測人流情報を取得し、予測統合情報を生成して、予測情報データベースD10に格納する。
【0033】
(A2)情報統合プログラムP02は、運行管理システム200および人流予測システム300から実績運行情報および実績人流情報を取得し、実績情報取得日時を付与して、実績統合情報を生成する。そして、情報統合プログラムP02は、その生成した実績統合情報を、実績情報データベースD02に格納する。実績運行情報は、実際に、列車が、何時にどの駅に到着またはどの駅から出発したかを示す情報である。実績人流情報は、列車が、実際に、何人の旅客を乗車させて、どの駅を出発したかを示す情報である。実績情報取得日時は、当該実績運行情報、および、当該実績人流情報を取得した日時を示す情報である。例えば、1日の列車運行が終了して、最終的に、当該実績運行情報、および、実績人流情報が確定した日時を示す。情報統合プログラムP02は、1日の列車の運行が終了した際に、実績運行情報および実績人流情報を取得し、実績統合情報を生成して、実績情報データベースD02に格納する。
【0034】
移動時間計算プログラムP03は、CPU101に実行され、基盤情報データベースD03の各種情報に基づき、各駅間および/または与えられた経路における移動時間を計算する。なお、移動時間計算プログラムP03は、案内情報を作成する前に、各駅間の移動時間を計算しておき、記憶部104に格納してもよい。これにより、案内情報を表示するまでの時間を短縮できる。また、移動時間計算プログラムP03は、公知の技術を用いて移動時間を計算してよい。
【0035】
移動経路探索プログラムP04は、CPU101に実行され、ユーザが入力した出発駅、到着駅、および、到着時刻(または出発時刻)などに基づき、出発駅から到着駅までの移動経路を探索する。移動経路探索プログラムP04は、公知の技術を用いて移動経路を探索してよい。
【0036】
入力情報収集プログラムP05は、CPU101に実行され、ユーザがユーザ端末400に入力した入力情報(案内要求)を収集し、入力情報リストD06に格納する。
【0037】
案内情報生成プログラムP06は、CPU101に実行され、確率情報、移動時間情報、および移動経路情報に基づき、案内情報を生成する。
【0038】
予測情報データベースD01は、情報統合プログラムP02によって生成された予測統合情報を保持する。
【0039】
実績情報データベースD02は、情報統合プログラムP02によって生成された実績統合情報を保持する。
【0040】
基盤情報データベースD03は、各プログラムで共通に使用される、設備に関する情報を保持する。例えば、基盤情報データベースD03は、案内情報の作成に必要な情報である、駅の配列および乗換時間などの情報を保持する。
【0041】
標本情報リストD04には、少なくとも1つの標本情報が登録される。標本情報の詳細については後述する。
【0042】
確率情報リストD05には、少なくとも1つの確率情報が登録される。確率情報は、ある移動経路により出発地を出発して目的地へ到着するのに、どの程度の所要時間がかかる確率がどの程度かを示す情報である。確率情報の詳細については後述する。
【0043】
入力情報リストD06は、少なくとも1つの入力情報が登録される。入力情報は、ユーザ端末400に入力された入力情報(案内要求)に関する情報である。入力情報は、例えば、出発駅、到着駅、出発時刻、到着時刻、混雑度、信頼度などの情報を含む。混雑度は、車両の乗車可能人数に対してどの程度の人数が実際に乗車しているかを表す指標である。信頼度は、列車が、ある駅に予測到着時刻までにどの程度実際に到着できるのかを表す指標である。
【0044】
(1.2 データ構造)
(1.2.1 運行情報のデータ構造)
図2を用いて、運行情報D10のデータ構造について説明する。上記の予測運行情報および実績運行情報は、それぞれ、この運行情報D10のデータ構造を有する。
【0045】
図2に示すように、運行情報D10は、データ項目として、列車番号、駅名、到着時刻、および出発時刻を有する。
【0046】
列車番号には、列車を識別するための番号が格納される。
【0047】
駅名には、同じ行の列車番号の示す列車が、停車および通過する駅名が格納される。
【0048】
到着時刻には、同じ行の列車番号の示す列車が、同じ行の駅名の示す駅に到着する時刻が格納される。到着時刻における「―」は、例えば、同じ行の駅名の示す駅が始発駅または通過駅などのため、到着時刻が存在しないことを示す。なお、この到着時刻は、予測運行情報の場合、予測到着時刻であり、実績運行情報の場合、実績到着時刻である。
【0049】
発車時刻には、同じ行の列車番号の示す列車が、同じ行の駅名の示す駅を発車する時刻が格納される。発車時刻における「―」は、例えば、同じ行の駅名の示す駅が終点駅などのため、発車時刻が存在しないことを示す。なお、この発車時刻は、予測運行情報の場合、予測発車時刻であり、実績運行情報の場合、実績発車時刻である。
【0050】
図2に例示する運行情報D10は、次のことを示す。すなわち、1行目は、列車番号「1A」の列車が、駅名「St.A」の駅を、発車時刻「8:00」に発車することを示す。2行目は、同じ列車番号「1A」の列車が、駅名「St.B」の駅に、到着時刻「8:03」に到着し、発車時刻「8:05」に発車することを示す。他の行も同様である。また、途中の行については「…」によって省略している。
【0051】
なお、発車時刻には、通過駅を通過する時刻が格納されてもよい。或いは、新たにデータ項目「通過時刻」を、運行情報D10に設けてもよい。
【0052】
(1.2.2 人流情報のデータ構造)
図3を用いて、人流情報D20のデータ構造について説明する。上述の人流予測情報および実績人流情報は、それぞれ、この人流情報D20のデータ構造を有する。
【0053】
図3に示すように、人流情報D20は、データ項目として、列車番号、発車駅、および人数を有する。
【0054】
列車番号には、列車を識別するための番号が格納される。
【0055】
駅名には、同じ行の列車番号の示す列車が停車および発車する駅名が格納される。
【0056】
人数には、同じ行の列車番号の示す列車が同じ行の駅名の示す駅を発車する際に、当該列車に乗車している旅客の数が、格納される。なお、人数における「―」は、例えば、同じ行の駅名の示す駅が、通過駅または終点駅などのため、値が存在しないことを示す。なお、この人数は、予測人流情報の場合、予測人数であり、実績人流情報の場合、実績人数である。
【0057】
図3に例示する人流情報D20は、次のことを示す。すなわち、1行目は、列車番号「1A」の列車が、駅名「St.A」の駅を発車する際に、人数「200」の旅客が乗車することを示す。2行目は、同じ列車番号「1A」の列車が、駅名「St.B」の駅に停車して発車する際に、人数「220」の旅客が乗車することを示す。他の行も同様である。また、途中の行については「…」によって省略している。
【0058】
(1.2.3 経路情報のデータ構造)
図4を用いて、経路情報D30のデータ構造について説明する。
【0059】
図4に示すように、経路情報D30は、データ項目として、経路番号、線区、始点駅、終点駅、および所要時間を有する。
【0060】
経路番号には、経路を識別するための番号が格納される。
【0061】
線区には、同じ行の経路番号の示す経路に含まれる線区名が格納される。
【0062】
始点駅には、同じ行の線区名の示す線区における始点の駅名が格納される。
【0063】
終点駅には、同じ行の線区名の示す線区における終点の駅名が格納される。
【0064】
所要時間には、列車が、同じ行の始点駅の示す駅を出発し、同じ行の終点駅の示す駅に到着するまでの時間が格納される。
【0065】
図4に例示する経路情報D30は、次のことを示す。すなわち、1行目は、経路番号「1」の線区「Red Line」の始点駅「St.A」から終点駅「ST.L」までの所要時間が「30分」であることを示す。2行目は、経路番号「1」の線区「Orange Line」の始点駅「St.L」から終点駅「St.R」までの所要時間が「55分」であることを示す。他の行も同様である。また、「…」は省略を示す。
【0066】
(1.2.4 統合情報のデータ構造)
図5を用いて、統合情報D40のデータ構造について説明する。上述の予測統合情報および実績統合情報は、それぞれ、この統合情報D40のデータ構造を有する。
【0067】
図5に示すように、統合情報D40は、運行情報、人流情報、および取得日時を有する。
【0068】
運行情報は、予測統合情報の場合、予測運行情報であり、実績統合情報の場合、実績運行情報である。
【0069】
人流情報は、予測統合情報の場合、予測人流情報であり、実績統合情報の場合、実績人流情報である。
【0070】
取得日時は、予想統合情報の場合、予測情報取得日時であり、実績統合情報の場合、実績情報取得日時である。統合情報D40は、取得日時によって一意に特定できる。
【0071】
(1.2.5 予測情報データベースの構造)
図6を用いて、予測情報データベースD01の構造について説明する。
図6に示すように、予測情報データベースD01は、一定の周期で登録される複数の予測統合情報を、1日単位でグループ化して保持する。
【0072】
(1.2.6 実績情報データベースの構造)
図7を用いて、実績情報データベースD02の構造について説明する。
図7に示すように、実績情報データベースD02は、1日の列車の運行後に登録される実績統合情報を、1日単位で保持する。
【0073】
(1.2.7 標本情報のデータ構造)
図8を用いて、標本情報D50のデータ構造について説明する。
図8に示すように、標本情報D50は、予測統合情報、実績統合情報、および経路情報を有する。この予測統合情報、および、実績統合情報は、当該経路情報に示された移動経路に対して、標本として抽出されたものである。
【0074】
(1.3 旅客案内システムの処理)
(1.3.1 概略)
図9に示すフローチャートを用いて、旅客案内システム100の処理の概要を説明する。
【0075】
ステップS101として、旅客案内システム100のCPU101は、本処理の終了要求を受領しているか否かを判定する。本処理の終了要求を受領していない場合(S101:NO)、フローは、ステップS102へ進む。本処理の終了要求を受領している場合(S101:YES)、CPU101は、本処理を終了する(案内終了)。
【0076】
ステップS102として、CPU101は、ユーザ端末400から案内要求を受領しているか否かを判定する。案内要求を受領している場合(S102:YES)、フローは、ステップS103へ進む。案内要求を受領していない場合(S102:NO)、フローは、ステップS101へ戻る。
【0077】
ステップS103として、旅客案内システム100のCPU101は、入力情報収集プログラムP05を実行することにより、案内要求に含まれる出発駅(または出発地)、到着駅(または目的地)、出発時刻(または到着時刻)、到着駅(または目的地)に所定の時間までに到着できる信頼度、を入力情報D06として、記憶部104に格納する。なお、出発時刻として要求される値がない場合には、出発時刻として、現在時刻を用いてもよく、信頼度として要求される値がない場合には、信頼度として、所定の値を用いてもよい。
【0078】
ステップS104として、旅客案内システム100のCPU101は、確率情報生成プログラムP01を実行することにより、予測情報データベースD01、実績情報データベースD02、基盤情報データベースD03、標本情報D04、および入力情報D06の情報を用いて、確率情報生成処理を実行する。なお、当該ステップS104の処理の詳細については後述する。
【0079】
ステップS105として、CPU101は、確率情報に基づく案内情報を生成し、ユーザ端末400に送信する。
【0080】
(1.3.2 ステップS104の詳細:確率情報生成処理)
図10に示すフローチャートを用いて、
図9に示したステップS104の確率情報生成処理の詳細を説明する。
【0081】
ステップS201として、CPU101は、予測情報データベースD01から、時刻情報が最新の予測統合情報を、現在予測統合情報として取得する。なお、現在予測統合情報は、予測情報データベースD01以外のデータベースまたは記憶部に保持されていてもよい。
【0082】
ステップS202として、CPU101は、標本情報生成処理を実行する。標本情報は、確率情報を生成するために用いられる。なお、ステップS202の処理の詳細については後述する。
【0083】
ステップS203として、CPU101は、経路情報生成処理を実行する。なお、ステップS203の処理の詳細については後述する。
【0084】
ステップS204として、CPU101は、確率分布算出処理を実行する。なお、ステップS204の処理の詳細については後述する。
【0085】
(1.3.3 ステップS202の詳細:標本情報生成処理)
図11に示すフローチャートを用いて、
図10に示したステップS202の標本情報生成処理の詳細を説明する。
【0086】
ステップS301として、CPU101は、現在の予測統合情報における予測情報取得日時に含まれる時刻(以下「現在の予測時刻」という)に基づき、現在の予測時刻に関する過去予測データベースを作成する。例えば、CPU101は、予測情報データベースD01から、ステップS201で取得した現在の予測統合情報と同一のものを除いた、すべての予測統合情報(つまり過去の予測統合情報)を抽出する。そして、CPU101は、その抽出した過去の予測統合情報の予測情報取得日時に含まれる時刻(以下「過去の予測時刻」という)が、現在の予測時刻と一致するものを特定し、その特定した過去の予測統合情報を、現在の予測時刻に関する過去予測データベースに格納する。なお、当該一致の判定は、必ずしも厳密な一致でなくてもよい。例えば、過去の予測時刻が、現在の予測時刻から所定の範囲内に属している場合、一致と判定してもよい。
【0087】
ステップS302aとして、CPU101は、現在の予測時刻に関する過去予測データベースに格納されている過去の予測統合情報のそれぞれに対して、ステップS303からステップS309のループ処理を行う。以下、当該ループ処理の対象として選択された過去の予測統合情報を、「対象予測統合情報」と呼ぶ。また、以下のステップS303からS307までの処理は、現在の予測統合情報が、対象予測統合情報と類似しているか否かを判定する処理の一例である。
【0088】
ステップS303として、CPU101は、対象予測統合情報に含まれる運行情報の列車番号および駅の組が、現在の予測統合情報に含まれる運行情報の列車番号および駅の組と、すべて一致しているか否かを判定する。ステップS303において、すべて一致していると判定した場合(S303:YES)、フローは、ステップS304へ進み、少なくとも1つが一致していないと判定した場合(S303:NO)、フローは、ステップS302aに戻る。
【0089】
ステップS304として、CPU101は、現在の予測統合情報に含まれる運行情報の列車の到着時刻と、対象予測統合情報に含まれる運行情報の列車の到着時刻との差分(誤差)を、各列車について算出し、その差分を合計する。また、CPU101は、現在の予測統合情報に含まれる運行情報の列車の出発時刻と、対象予測統合情報に含まれる運行情報の列車の出発時刻との差分(誤差)を、各列車について算出し、その差分を合計する。そして、CPU101は、上記の到着時刻に関する差分合計と、出発時刻に関する差分合計とをさらに合計し、発着時刻誤差を算出する。なお、着発時刻誤差の算出においては、必ずしも運行情報に含まれる全ての列車の到着時刻および/または出発時刻を用いる必要はなく、或る時刻の前後で算出対象の列車を区切るなど、運行情報の一部の列車の到着時刻および/または出発時刻を用いてもよい。また、到着時刻に関する誤差(到着時刻誤差)と、発車時刻に関する誤差(発車時刻誤差)とを分けて保持してもよい。
【0090】
ステップS305として、CPU101は、着発時刻誤差が、所定の閾値以下であるか否かを判定する。着発時刻誤差が所定の閾値以下である場合(S305:YES)、フローは、ステップS306へ進み、着発時刻誤差が所定の閾値よりも大きい場合(S305:NO)、フローは、ステップS302aに戻る。なお、着発時刻誤差を、到着時刻誤差と発車時刻誤差に分けて保持し、2種類の閾値を用いることで、到着時刻と発車時刻の類似性評価を別々に行ってもよい。また、到着時刻誤差と発車時刻誤差の片方のみを発着時刻誤差として扱ってもよい。
【0091】
ステップS306として、CPU101は、現在の予測統合情報に含まれる人流情報が示す人数と対象予測統合情報に含まれる人流情報が示す人数との差分(誤差)を、各列車について算出し、その差分を合計する。以下、この差分の合計を「人流誤差」という。なお、人流誤差は、各種データの時刻データの前後で対象列車を区切るなど、比較する2つの人流情報の一部列車に対して計算したものであってもよい。
【0092】
ステップS307として、CPU101は、人流誤差が所定の閾値以下であるか否かを判定する。人流誤差が所定の閾値以下である場合(S307:YES)、フローは、ステップS308へ進み、人流誤差が所定の閾値よりも大きい場合(S307:NO)、フローは、ステップS302aに戻る。
【0093】
ステップS308として、CPU101は、標本情報を作成する。例えば、CPU101は、実績情報データベースD02から、対象予測統合情報の時刻情報と同じ日付を有する実績統合情報(以下「同日実績統合情報」という)を抽出する。そして、CPU101は、対象予測統合情報と同日実績統合情報に基づいて、標本情報D50を作成する。この対象予測統合情報は、上述のとおり、ステップS303からS307において、現在の予測統合情報と類似していると判定された、過去の統合予測情報である。
【0094】
ステップS309として、CPU101は、ステップS308で作成された標本情報D50を、標本情報リストD04に登録する。
【0095】
ステップS302bとして、ステップS302aにかかるループ処理が未完了の場合、フローは、ステップS302aに戻り、ループ処理が完了した場合、フローは、S310へ進む。
【0096】
ステップS310として、CPU101は、標本情報リストD04における標本情報D50の登録数が所定の閾値以上であるか否かを判定する。当該標本情報D50の登録数が所定の閾値以上である場合(S310:YES)、フローは、終了する。当該標本情報D50の登録数が所定の閾値未満である場合(S310:NO)、CPU101は、ステップS311へ進む。
【0097】
ステップS311として、CPU101は、ステップS305およびステップS307の少なくとも1つの閾値を緩和する方向に変更し、フローは、S302aに戻る。すなわち、類似の判定を緩和し、標本情報リストD04における標本情報D50の登録数を増やす。
【0098】
(1.3.4 ステップS203の詳細:経路情報生成処理)
図12に示すフローチャートを用いて、
図10に示したステップS203の経路情報生成処理の詳細を説明する。
【0099】
ステップS401aとして、CPU101は、ステップS202にて標本情報リストD04に登録した各標本情報の実績統合情報に対して、ステップS402からステップS403のループ処理を行う。以下、ステップS402からステップS403のループ処理の対象として選択された実績統合情報を、「対象実績統合情報」と呼ぶ。
【0100】
ステップS402として、CPU101は、対象実績統合情報と案内要求とに基づいて、経路情報D30を生成する。例えば、CPU101は、対象実績統合情報に基づいて、案内要求を反映している入力情報D06に対する移動時間と移動経路を計算し、経路情報D30を生成する。移動時間と移動経路の計算については、CPU101が移動時間計算プログラムP03と移動経路探索プログラムP04を実行することにより、公知の技術(例えば特開2007-271283)に基づいて行ってよい。
【0101】
ステップS403として、CPU101は、対象実績統合情報を含む標本情報に、ステップS402にて生成した経路情報D30を含める。
【0102】
ステップS401bとして、フローは、ステップS401aにかかるループ処理が未完了の場合、ステップS401aに戻り、ループ処理が完了の場合、終了する。
【0103】
(1.3.5 ステップS204の詳細:確率分布生成処理)
図13に示すフローチャートを用いて、
図10に示したステップS204の確率分布生成処理の詳細を説明する。
【0104】
ステップS501として、CPU101は、標本情報リストD04に登録されている経路情報D30に基づき、移動経路リストを作成する。例えば、CPU101は、標本情報リストD04に登録されている経路情報D30の全ての経路番号を抽出し、移動経路リストに登録する。例えば、
図4の場合、経路番号1、経路番号2、経路番号3、…というように、全ての経路番号が移動経路リストに登録される。
【0105】
ステップS502aとして、CPU101は、移動経路リストに登録されている各経路番号に対して、ステップS503からステップS505のループ処理を行う。以下、ステップS503からステップS505のループ処理の対象として選択された経路番号を、「対象経路番号」と呼ぶ。
【0106】
ステップS503として、CPU101は、標本情報リストD04から、経路情報D30の経路番号が対象経路番号と同一である標本情報D50を抽出し、同一経路情報リストに登録する。すなわち、同一経路情報リストとは、同一の経路に対応する標本情報の集合として成るデータである。
【0107】
ステップS504として、CPU101は、ステップS503にて作成した同一経路情報リストに基づき、ヒストグラムを作成する。例えば、CPU101は、まず所定の階級幅を設定する。次に、CPU101は、経路情報D30の所要時間を参照して、同一経路情報リストの中の全ての標本情報D50における対象経路番号の所要時間の合計値を計算し、その合計値が含まれる階級幅に対応する到着度数を加算する。到着度数は、各標本情報D50の所要時間が当該階級幅に含まれた回数を表す値である。すなわち、当該到着度数が、ヒストグラムの当該階級幅に対する値となる。
【0108】
ステップS505として、CPU101は、ステップS504にて作成したヒストグラムを、確率情報として登録する。
【0109】
ステップS502bとして、フローは、ステップS502aにかかるループ処理が未完了の場合、ステップS502aに戻り、ループ処理が完了の場合、終了する。
【0110】
(1.4 ユーザ端末に表示される案内情報)
図14を用いて、ユーザ端末400に表示される案内情報について説明する。
【0111】
図14は、入力情報D06に、出発駅(または出発地)が「st.A」、到着駅(または目的地)が「st.Z」、出発時刻が「8:00」、信頼度が「90%」という情報を含む場合の、ユーザ端末400に表示される案内情報である。
【0112】
図14において、「st.A→st.Z」は、出発駅(または出発地)「st.A」と、到着駅(または目的地)「st.Z」を示す。
【0113】
図14において、「経路1」、「経路2」、「経路3」、「経路4」、「経路5」は、互いに異なる経路情報を選択するためのタブである。各経路情報は、旅客案内システム100によって生成されたものである。ユーザ端末の画面には、選択されたタブに対応する経路情報が表示される。以下、「経路1」タブが選択された場合について説明するが、他のタブが選択された場合も同様である。
【0114】
図14において、「08:10→09:50(1時間40分)」は、経路1における、出発駅(または出発地)からの出発時刻「08:10」と、到着駅(または目的地)への到着時刻「09:50」と、出発駅(または出発地)から到着駅(または目的地)までの所要時間「1時間40分」とを示す。これらの時刻および時間は予測値である。
【0115】
図14において、「金額」は乗車運賃を、「乗換」は乗換回数を示す。「混雑度」は、経路1を走行する列車の混雑度を示す。「信頼度」は、経路1の到着時刻に関する信頼度を示す。
【0116】
混雑度は、例えば、人流予測システム300によって算出される人流予測情報を用いて、列車の乗車人数と車両数から、1車両あたりの乗車人数として計算される。混雑度は、
図14において混み具合に応じた図的表現として表示される。信頼度は、列車が到着時刻(予測値)までに到着駅(または目的地)に到着する確率である。なお、信頼度は、「列車が到着時刻(予測値)の5分後までに到着駅(または目的地)に到着する確率」のように、一定時間の遅れを許した場合の確率として算出されてもよい。
【0117】
図14において、「早」、「楽」、「安」、「空」、「信」を記号「○」で囲ったマークは、「経路1」の利便性を簡単に示したものである。「早」は到着駅に最も早く到着する経路であることを示し、「安」は運賃が最も安い経路であることを示し、「楽」は最も乗換が少ない経路であることを示し、「空」は最も混雑度が低い経路であることを示し、「信」は信頼度が所定の値よりも高い経路(例えば、信頼度90%以上の経路など)であることを示す。
【0118】
図14において、所要時間分布は、確率情報リストD05を確率分布の形式で表示したものである。確率情報リストD05は、確率情報生成プログラムP01によって計算される。横軸のポインタを移動させて所要時間の範囲を設定すると、所要時間分布には、その設定された所要時間の範囲内に列車が到着駅(または目的地)に到着する確率が表示される。例えば、
図14には、所要時間の範囲に「0分」から「100分」が設定され、その範囲内に列車が到着駅(または目的地)に到着する確率として「90%」が表示されている。
【0119】
図14において、所要時間確率は、確率情報リストD05をテキスト形式で表示したものである。
図14に例示するように、所要時間確率は、項目として、「時間」、「到着確率」、および「区間到着別確率」を有する。
【0120】
「時間」には、出発時刻(0分)からの所要時間の範囲が記載される。
【0121】
「到着確率」には、同じ行の「時間」内に、列車が経路1の到着駅(または目的地)に到着する確率が記載される。例えば、
図14に示す所要時間確率の2行目は、列車が経路1で移動した場合に、「90分以内」に到着駅(または目的地)に到着する確率が「45%」であることを示す。
【0122】
「区間到着別確率」には、「時間」の項目において1つ上の行の所要時間の範囲から時間区間を定義し、当該区間内に、列車が経路1の到着駅(または目的地)に到着する確率が記載される。例えば、
図14に示す所要時間確率の2行目は、列車が経路1で移動した場合に、「80分」(「時間」の項目の1行目の所要時間の範囲)から「90分」(「時間」の項目2行目の所要時間の範囲)の間に、列車が到着駅(または目的地)に到着する確率は「32%」であることを示す。
【0123】
上述したように、第1の実施形態にかかる旅客案内システム100は、現在時刻以前の運行実績情報に基づき、将来の運行状態に関する確率を算出する確率情報計算部を備える。この構成により、混雑状況および/または移動需要などによって、列車ダイヤが当日に動的に変更される場合であっても、旅客の意思決定を支援できる。例えば、或る路線において、混雑の緩和のために列車が増発される場合においても、現在時刻以前の運行実績情報から目的地までの所要時間に関する確率を計算でき、よって旅客の意思決定を支援できる。
【0124】
(1.5 変形例)
以上、第1の実施形態について説明したが、第1の実施形態は例示したものに限るものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0125】
例えば、案内要求に合わせて、目的地への到着時刻、経由駅までの所要時間、到着時刻の期待値、所要時間の期待値、または乗継駅における乗継時間などの情報を出力してもよい。この場合、経路情報D30は、
図4に記載されている情報のほかに、「到着時刻」、「経由駅」、「経由駅までの所要時間」、「乗継駅」、または「乗継時間」などの情報を含むものとする。「経由駅」は、当該経路の当該線区において、「始点駅」を出発してから「終点駅」までに到着するまでに経由する駅の情報である。「乗継線区」は、当該経路の当該線区において、当該線区の終点駅から移動する乗継先の別線区を示す情報である。「乗継駅」は、当該経路の当該線区において、当該線区の終点駅から移動する乗継先の別線区の始点駅を示す情報である。例えば、
図4の4行目と5行目では、「Green Line」の「St.P」という終点駅から「Blue Line」の「St.Q」という始点駅まで移動を行うため、経路番号2の線区「Green Line」に対する「乗継駅」は「Blue Line」の「St.Q」である。「乗継時間」は当該経路の当該線区において、当該線区の終点駅に列車が到着してから、移動する乗継先の別線区の始点駅で乗車予定の列車が出発するまでの時間である。
【0126】
例えば、乗継時間の情報を出力する場合には、経路情報D30として、
図15のように、各線区の情報の間に乗継時間の情報を含む経路情報を用いる。線区における「―」は、当該行が乗継時間の情報であることを示す。ここで、乗継時間は、
図12に示される経路情報生成処理のステップS402によって計算される。ステップS402における移動時間と移動経路の計算については、乗継時間を加えて計算を行う場合においても、CPU101が移動時間計算プログラムP03と移動経路探索プログラムP04とを実行することにより、公知の技術(例えば特開2007-271283)に基づいて行ってよい。
図13のステップS504において、経路情報D30の乗継時間を参照することで、乗継時間に関するヒストグラムを作成することができる。このような構成とすることで、各乗継時間で乗継できる確率に関する情報を出力できる。
【0127】
例えば、列車ダイヤの正確さが高い路線や、運行本数が少ない路線などが検索対象に含まれることが想定される場合、
図13に示す確率分布算出処理S204のステップS503において、出発時刻または到着時刻に関する類似性に基づいて同一経路と見なすか否かを判定する処理を加えてもよい。すなわち、運行本数の少ない路線などで乗車列車の情報を提示する場合には、異なる列車を使用する経路を異なる経路情報として出力しても良い。具体的には例えば、
図4に記載されている情報に加えて「列車番号」などの情報を含むように経路情報D30を構成し、ステップS503において、あらかじめ指定した特定の交通機関や路線において列車番号が異なる要素は異なる経路情報として同一経路情報リストを作成する。この場合、旅客に提示する情報として、経由駅などの経路上の駅並びに加え、使用する列車番号の情報も合わせて提示するものとする。なお、「列車番号」は、同一行の始点駅から終点駅において乗車する列車を特定する番号を示す情報である。なお、同一経路とみなすか否かの判定処理はこれに限るものではなく、出発時刻や到着時刻に関して、公知の各種クラスタリング技術を用いて実施してもよい。
【0128】
このような構成とすることで、乗継の成否によって大幅に到着駅(または目的地)への到着時刻が変わる場合にも、より適切な経路案内情報を提示することができる。例えば、
図4の4行目と5行目における経路番号2の「乗継駅」である「St.Q」を出発する列車が1時間に1本しか運行していない場合、「St.P」への列車の到着が遅延し、「St.Q」を出発する列車に乗継できないと、到着駅(または目的地)「St.Z」への到着が1時間遅れることになる。ここで、ステップS503において、異なる列車を使用する経路を異なる経路情報として出力することで、ステップS504以降の処理においてこれらの二種類のケースを混同することなく確率情報を算出し、経路案内情報を作成できることから、到着時刻や乗換時間について、より尤もらしい情報を旅客に対して提示することができる。
【0129】
このように、本発明の第1の実施形態において、種々の情報に対する確率を計算することにより、旅客の希望や、利用場面に合った様々な案内情報を提供することができる。
【0130】
また、上述した実施形態では、精度を高めるために、ステップS202の標本情報生成処理において、現在と過去の実績運行情報および実績人流情報を用いて、標本情報D50を生成している。しかし、本実施形態は、これに限られない。例えば、現在と過去の実績運行情報のみに基づいて、標本情報D50を生成してもよい。例えば、適切な実績人流情報が得られない場合は、このように、実績運行情報のみを用いてもよい。
【0131】
また、上述した実施形態では、精度を高めるために、ステップS202の標本情報生成処理において、現在と過去の予測運行情報および予測人流情報を用いて、標本情報D50を生成している。しかし、本実施形態は、これに限られない。例えば、現在と過去の実績運行情報および実績人流情報に基づいて、標本情報D50を生成してもよい。例えば、適切な予測統合情報が得られない場合は、このように、実績統合情報を用いてもよい。
【0132】
また、上述した実施形態では、移動需要に応じて動的に列車ダイヤが変更される場合の例について説明したが、本発明の実施形態はこれに限るものではなく、例えば、現在と過去の実績運行情報のみを用いて標本情報D50を生成してもよい。このような構成とすることで、例えば慢性的に列車遅延が発生しているような、ダイヤの不確実性が高い路線についても、現在の状況を基に、到着時刻や乗換時間に関して、リスクを踏まえた旅客の判断を支援可能な情報を提供することができる。
【0133】
また、上述した実施形態では、目的地への期待される到着時刻と、当該期待される到着時刻までに目的地に到着する確率とを算出し、案内情報に含めてもよい。ここで、期待される到着時刻は、目的地までの所要時間を期待値として算出し、その算出した所要時間を出発時刻に加算することにより、算出されてよい。
【0134】
また、上述した実施形態では、算出した確率が所定の閾値よりも大きい移動経路情報を、ユーザ端末へ推奨してよい。
【0135】
例えば、所定の閾値よりも確率の大きい移動経路情報を算出する場合には、入力情報D06として、閾値の情報を含む入力情報を用いる。ここで、推奨する移動経路情報の抽出は、
図13に示される確率分布生成処理で算出された確率と、入力情報に含まれる当該閾値を比較することで行うことで可能となる。このような構成とすることで、算出した確率が所定の閾値よりも大きい移動経路情報を、ユーザ端末へ推奨できる。
【0136】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態のステップS204の確率分布生成処理において、実績人流情報および/または予測人流情報を用いて、類似度によって重み付けをした確率分布を生成する。
【0137】
(2.1 ステップS204の詳細:確率分布生成処理)
図16に示すフローチャートを用いて、第2の実施形態にかかるステップS204(
図10参照)の確率分布生成処理について説明する。
【0138】
ステップS501からステップS503までの処理、およびステップS505からステップS502bまでの処理は、第1の実施形態と同様である。
【0139】
ステップS601として、確率情報生成プログラムP01を実行するCPU101は、類似度重みを計算する。類似度重みは、現在の予測人流情報と、過去の予測人流情報との類似性に対する重み係数である。例えば、確率情報生成プログラムP01は、同一経路情報リストに登録されているすべての標本情報D50について、過去の予測人流情報と、現在の予測人流情報との差分(誤差)を、類似度重み(w)として計算する。そして、確率情報生成プログラムP01は、同一経路情報リストに登録されているすべての標本情報について計算した類似度重みを正規化する。例えば、CPU101は、上述で計算した類似度重み(w)とネイピア数とからexp(-w2)を計算することにより正規化を行う。以上の処理により、類似度重みが計算される。
【0140】
ステップS602として、CPU101は、ステップS503で作成した同一経路情報リスト、および、ステップS601で計算した類似度重みに基づき、ヒストグラムを生成する。例えば、CPU101は、まず所定の階級幅を設定する。次に、CPU101は、経路情報D30の所要時間を参照して、同一経路情報リストの中の全ての標本情報D50について、当該経路における所要時間の合計値を計算する。そして、CPU101は、その合計値の所要時間が含まれる階級幅に、当該標本情報と対応する類似度重みを加算する。
【0141】
上述したように、第2の実施形態では、現在時刻以前の実績人流情報に基づき、類似度重みを計算する構成とした。当該構成により、確率情報の精度を高めることができる。例えば、ある路線において定期的なイベントによって混雑が生じ、列車が増発される場合において、現在時刻以前の実績人流情報から、各実績運行情報の類似度を評価し、現在の実績運行情報と類似性の高い情報に重み付けができる。よって、単純に階級幅に対応する到着度数を加算する場合に比べて、より精度の高い案内情報を提供できる。
【0142】
また、上述した実施形態では、精度を高めるために、ステップS601の類似度重みの計算処理において、現在と過去の予測人流情報から類似度重みを計算している。しかし、本実施形態はこれに限られない。例えば、現在と過去の実績人流情報から類似度重みを計算してもよい。例えば、適切な予測人流情報が得られない場合は、このように、実績人流情報を用いてもよい。
【0143】
<本発明のまとめ>
本発明にかかる旅客案内システムは、出発地の情報と目的地の情報を含む入力情報が入力されると、列車を含む交通機関により出発地から目的地まで移動する経路を該入力情報に基づき探索し、得られた移動経路に関する移動経路情報を出力するシステムであり、入力情報と、交通機関が実際に運行した実績運行情報と、統計情報演算部を有する。統計情報演算部は、実績運行情報および入力情報を用いて出発地から目的地までの移動経路と該移動経路による所要時間に関する統計量とを算出し、移動経路と統計量を用いて移動経路情報を生成する。
【0144】
統計情報演算部は、入力情報にて指定された出発地と目的地から算出した各移動経路について、過去に蓄積した運行実績における所要時間の情報を用いて統計量を算出する。ここで、統計情報演算部は、例えば、実績運行情報と入力情報から案内情報に関する確率情報を生成するプログラムである。
【0145】
これにより、過去の運行実績から移動経路およびその所要時間に関する統計量(例えばヒストグラム)を算出し、移動経路と統計量を基に移動経路情報を生成するので、列車ダイヤの動的な変更が想定され、将来の好適な移動経路や所要時間が変動する可能性がある場合でも、過去の実績に鑑みて好適な経路案内情報を提示することができる。
【0146】
前記旅客案内システムは、乗客の移動に関する情報を含む実績人流情報を更に有し、統計情報演算部は、入力情報、実績運行情報、および実績人流情報を用いて移動経路および統計量を算出してよい。
【0147】
統計情報演算部は、入力情報にて指定された出発地と目的地から算出した各移動経路について、例えば、人流の実績を参照することで絞り込んだ運行実績における所要時間の情報を用いて統計量を算出する。
【0148】
これにより、列車運行だけでなく人流を考慮して移動経路および統計量を算出するので、精度の高い移動経路および統計量の算出が可能である。
【0149】
前記旅客案内システムは、現在時刻までの交通機関の運行の実績の情報と現在時刻より後の交通機関の運行を予測した情報とを含む予測運行情報を更に有し、統計情報演算部は、入力情報、実績運行情報、および予測運行情報を用いて移動経路および統計量を算出してよい。
【0150】
統計情報演算部は、例えば、列車運行の予測結果を参照することで絞り込んだ運行実績における所要時間の情報を用いて統計量を算出する。
【0151】
これにより、過去に行った列車運行の予測結果をも考慮し、列車運行の実績を用いて移動経路および統計量を算出するので、精度の高い移動経路および統計量の算出が可能である。
【0152】
前記旅客案内システムは、現在時刻までの交通機関の運行の実績の情報と現在時刻より後の交通機関の運行を予測した情報とを含む予測運行情報と、現在時刻までの乗客の移動の実績の情報と現在時刻より後の乗客の移動を予測した情報とを含む予測人流情報のいずれか、または両方を更に有し、統計情報演算部は、入力情報、実績運行情報、実績人流情報、および予測運行情報と予測人流情報のいずれか、または両方を用いて移動経路および統計量を算出してもよい。
【0153】
統計情報演算部は、例えば、列車運行の予測結果と、人流の予測結果のいずれか、または両方を参照することで絞り込んだ運行実績における所要時間の情報を用いて統計量を算出する。
【0154】
これにより、過去に行った列車運行の予測結果と人流の予測結果とのいずれか、または両方を考慮し、列車運行の実績を用いて移動経路および統計量を算出するので、精度の高い移動経路および統計量の算出が可能である。
【0155】
統計情報演算部は、実績運行情報を用いて標本情報を生成し、標本情報を用いて移動経路および統計量を算出してもよい。
【0156】
統計情報演算部は、例えば、実績運行情報を所定の条件で絞り込んだ標本情報を移動経路および統計量の算出に用いる。
【0157】
これにより、標本情報を用いた精度の高い移動経路および統計量の算出が可能である。
【0158】
統計情報演算部は、実績運行情報を用いて、現在時刻までの列車の運行と各実績運行情報との類似度を算出し、入力情報、実績運行情報、および類似度を用いて移動経路および統計量を算出してよい。
【0159】
例えば、各列車の出発時刻および/または到着時刻の差分を積算し、積算値が小さいほど類似度が高くなるような演算により類似度を算出すればよい。そして、例えば、現在時刻までの列車運行との類似度が高い運行実績には高い重みを付けて移動経路および統計量を算出すればよい。
【0160】
これにより、列車運行の類似度を移動経路および統計量の算出に利用するので、精度の高い移動経路および統計量の算出が可能である。
【0161】
移動経路情報では、目的地への各到着時刻と、当該予想到着時刻までに目的地に到着できる確率とが対応付けられていてよい。また、移動経路情報では、目的地までの各所要時間と、当該予想所要時間内に目的地に到着できる確率とが対応付けられていてよい。また、移動経路情報は、目的地への到着時刻の期待値を含んでよい。また、移動経路情報は、目的地までの所要時間の期待値を含んでよい。
【0162】
統計情報演算部は、移動経路を探索し、所要時間の情報を算出する。統計情報演算部は、その所要時間を参照することで、予想到着時刻までに目的地に到着できる確率、予想所要時間内に目的地に到着できる確率、目的地への到着時刻の期待値、或いは目的地までの所要時間の期待値を計算する。
【0163】
これにより、ユーザ端末において、移動経路と共に、予想到着時刻までに目的地に到着できる確率、予想所要時間内に目的地に到着できる確率、目的地への到着時刻の期待値、或いは目的地までの所要時間の期待値をユーザに提示できる。
【0164】
移動経路情報は、各到着時刻までに目的地に到着できる確率を示す確率分布の情報を含んでよい。また、移動経路情報は、各所要時間内に目的地に到着できる確率を示す確率分布の情報を含んでよい。
【0165】
統計情報演算部は、到着時刻を確率変数として確率分布を算出する。また、統計情報演算部は、所要時間を確率変数として確率分布を算出する。
【0166】
これにより、ユーザ端末において、移動経路と共に、各到着時刻までに目的地に到着できる確率を示す確率分布、或いは、各所要時間内に目的地に到着できる確率を示す確率分布を、ユーザに提示できる。
【0167】
移動経路情報では、目的地に至るまでに経由する駅における各乗継時間と、当該乗継時間で乗継できる確率とが対応づけられていてよい。また、移動経路情報は、目的地までに至るまでに経由する駅における各乗継時間の確率を示す確率分布の情報を含んでよい。
【0168】
統計情報演算部は、乗継時間の確率を計算する場合、乗継の情報を含む移動経路を探索し、乗継時間の情報を含めた所要時間の情報を算出する。さらに、統計情報演算部は、前記所要時間に関する統計量の算出において、前記乗継時間を参照することで、前記乗継時間に関する確率を計算する。
【0169】
これにより、ユーザ端末において、移動経路と共に、各乗継時間で乗継できる確率、或いは、各乗継時間の確率を示す確率分布を、ユーザに提示できる。
【0170】
移動経路情報は、上記の確率が所定の閾値よりも大きい移動経路情報のみを含んでよい。
【0171】
統計情報演算部は、所定の閾値よりも確率の大きい移動経路情報のみを算出する場合、閾値の情報を含む入力情報を用いる。ここで、統計情報演算部は、入力情報に含まれる前記閾値を用いて、算出した確率が所定の閾値よりも大きい移動経路情報を抽出する。
【0172】
これにより、ユーザ端末において、所定の閾値よりも大きい確率の移動経路情報のみを、ユーザに提示できる。
【0173】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲を実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0174】
100…旅客案内システム、101…CPU、102…メモリ、103…入力装置、104…記憶部、105…送受信部、106…通信部、200…運行管理システム、300…人流予測システム、400…ユーザ端末、500…通信ネットワーク、600…通信ネットワーク