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  • 特許-気体圧縮機、及び、その制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】気体圧縮機、及び、その制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
F04B49/06 341L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020548071
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2019029511
(87)【国際公開番号】W WO2020066268
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2018181425
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 明弘
(72)【発明者】
【氏名】兼本 喜之
(72)【発明者】
【氏名】青柳 則夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 広明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史紀
(72)【発明者】
【氏名】岡 大地
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152698(JP,A)
【文献】特開平04-032903(JP,A)
【文献】特開2014-152699(JP,A)
【文献】特開平02-011878(JP,A)
【文献】特開平07-217534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体と前記圧縮機本体を駆動するモータと前記モータを制御するインバータとで構成された圧縮機ユニットを複数有し、
複数の前記インバータを制御する制御装置と、
複数の前記圧縮機本体からの吐出配管が合流する一つの主吐出配管とを有し、
各インバータが各モータを制御することで、各圧縮機本体が吐出する気体の圧力を制御し前記主吐出配管の吐出圧力を制御する気体圧縮機であって、
前記主吐出配管からの圧縮気体の使用量増加に伴う圧縮機ユニットの稼働台数増加時と、使用量低下に伴う圧縮機ユニットの稼働台数減少時とで、前記モータの下限駆動周波数が異なるものであり、
前記下限駆動周波数は、使用量低下に伴う圧縮機ユニットの稼働台数減少時の方が低いものであり、
前記制御装置は、前記圧縮機本体のモータの駆動周波数が下限駆動周波数で運転している状態で前記主吐出配管の吐出圧力が上昇した場合、停止圧力に到達する予測時間を算出し、該予測時間が閾値よりも小さい場合、前記圧縮機本体のモータの駆動周波数を上昇させた後、前記圧縮機本体の1台を停止することを特徴とする気体圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の気体圧縮機であって、
前記圧縮機本体のモータの駆動周波数の上昇は、圧縮機本体の1台停止後の運転開始時周波数まで上昇させることを特徴とする気体圧縮機。
【請求項3】
圧縮機本体と前記圧縮機本体を駆動するモータと前記モータを制御するインバータとで構成された圧縮機ユニットを複数有し、
複数の前記インバータを制御する制御装置と、
複数の前記圧縮機本体からの吐出配管が合流する一つの主吐出配管とを有し、
各インバータが各モータを制御することで、各圧縮機本体が吐出す気体の圧力を制御し前記主吐出配管の吐出圧力を制御する気体圧縮機の制御方法であって、
使用量増加に伴う圧縮機ユニットの稼働台数増加時と、使用量低下に伴う圧縮機ユニットの稼働台数減少時とで、前記モータの下限駆動周波数が異なるものであり、
前記下限駆動周波数は、使用量低下に伴う圧縮機ユニットの稼働台数減少時の方が低いものであり、
前記圧縮機本体のモータの駆動周波数が下限駆動周波数で運転している状態で前記主吐出配管の吐出圧力が上昇した場合、停止圧力に到達する予測時間を算出し、該予測時間が閾値よりも小さい場合、前記圧縮機本体のモータの駆動周波数を上昇させた後、前記圧縮機本体の1台を停止することを特徴とする気体圧縮機の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の気体圧縮機の制御方法であって、
前記圧縮機本体のモータの駆動周波数の上昇は、圧縮機本体の1台停止後の運転開始時周波数まで上昇させることを特徴とする気体圧縮機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体圧縮機に係り、特に複数台の圧縮機本体を備えた気体圧縮機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台の圧縮機本体を備えた圧縮機の制御方法の背景技術として特許文献1がある。特許文献1には、インバータにより回転数制御される並列配置された複数台の圧縮機本体と、これらの圧縮機本体の各吐出流路を合流させた一本の主吐出流路とを備え、この主吐出流路における吐出圧力を一定に保つように制御される圧縮機の運転方法において、吐出圧力の調整のために、圧縮機本体の内の運転状態にある圧縮機本体の全てに対して常時平等に回転数制御を行うとともに、主吐出流路への圧縮ガス供給が過剰で、運転中の圧縮機本体の台数を一つ減少させても足りる場合には、この台数を減少させる一方、運転中の圧縮機本体を全負荷運転させても上記圧縮ガス供給が不足している場合には、台数を一つ増大させるようにした、点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-122078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、インバータによる回転数制御により圧縮機の吐出圧力を制御しており、運転中の圧縮機本体の台数がNの場合において、使用空気量の減少とともに、インバータに対する指令回転数SOが下がってゆき、SOがモータの定格回転数SRに(N-1)/Nを乗じた値になると、台数Nは台数(N-1)に減ぜられるように台数制御する。しかしながら、使用空気量の急激な減少の場合、インバータによる回転数制御が間に合わず、圧縮機の吐出圧力が必要以上に上昇してしまい上限圧を超えてしまうという課題について考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、これらの課題に鑑み、圧縮機本体の台数制御において、吐出圧力の変動を低減できる気体圧縮機、及び、その制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、圧縮機本体と圧縮機本体を駆動するモータとモータを回転数制御するインバータで構成された圧縮機ユニットを複数有し、各インバータを制御する制御装置を備え、各圧縮機本体の吐出配管は一つの主吐出配管に合流しており、各インバータでそれぞれの圧縮機本体のモータの駆動周波数を制御することで吐出配管の圧力を制御し主吐出配管の吐出圧力を制御する気体圧縮機であって、制御装置は、圧縮機本体のモータの駆動周波数が下限周波数に達する前の駆動周波数を下げている期間に主吐出配管の吐出圧力が上昇した場合、停止圧力に到達する予測時間を算出し、予測時間が閾値よりも小さい場合、圧縮機本体の1台を停止する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮機本体の台数制御において、吐出圧力の変動を低減できる気体圧縮機、及び、その制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1における気体圧縮機の背面斜視図である。
図2】実施例1の前提となる台数減少制御を説明する図である。
図3】実施例1の前提となる圧力予測制御による圧縮機本体停止の原理を説明する図である。
図4】実施例1における台数減少制御を説明する図である。
図5】実施例2における台数減少制御を説明する図である。
図6】実施例3における台数減少制御を説明する図である。
図7】実施例4における圧縮機の回転周波数と圧縮空気の使用量との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例における気体圧縮機は圧縮機本体を複数台搭載した気体圧縮機を前提としている。また、本実施例では、空気を圧縮する気体圧縮機を例に説明する。
【0011】
図1は、本実施例における気体圧縮機の背面斜視図である。図1では、背面パネル30、側面パネル31、上面パネル32、を外した状態を示しており、本実施例では、図1に示すように、3段の圧縮機ユニットから構成され、それぞれの圧縮機ユニットは、それぞれ圧縮機本体10、11、12と、インバータ20、21、22で構成される。また、それぞれの圧縮機本体10、11、12は、それぞれのインバータ20、21、22によって、圧縮機本体を駆動するそれぞれのモータ(図中では隠れていて見えない)の駆動周波数を制御する。また、各インバータを制御する制御装置(図中では隠れていて見えない)を備える。また、それぞれの圧縮機本体の吐出配管は一つの主吐出配管に合流しており、各インバータでそれぞれの圧縮機本体のモータの駆動周波数を制御しモータの回転数制御を行うことで吐出配管の圧力を制御し主吐出配管の吐出圧力を制御する。すなわち、制御装置は、それぞれの圧縮機本体の吐出圧力をインバータによる回転数制御することで気体圧縮機全体の吐出圧力を制御する。例えば、気体圧縮機の出力22KWに対しては、7.5KWの圧縮機本体を3台で対応可能となる。
【0012】
図2は、本実施例の前提となる台数減少制御を説明する図である。図2は、使用空気量が減少し、運転周波数を減少させても空気量が余剰な場合に、圧縮機本体の運転台数を減少させる処理である。図2において、(a)は、気体圧縮機の吐出圧力(以降、特に断わらない限り、気体圧縮機の吐出圧力、すなわち主吐出配管での吐出圧力を単に吐出圧力と称す)の時間経過を示しており、(b)、(c)は圧縮機本体1、2のモータの駆動周波数(以降、圧縮機本体の駆動周波数と称す)の時間経過を示している。図2において、圧縮機本体1を主機、圧縮機本体2を追従機とした場合、期間TP1では主機と追従機の2台でインバータによる回転数制御で気体圧縮機の吐出圧力はPID制御により一定圧力になるように制御されている場合を想定している。ここで、時刻T1で使用空気量が減少した場合、インバータによる回転数制御で圧縮機本体の駆動周波数を下げるように制御する。そして、時刻T2で下限周波数に達すると、それ以上周波数を下げられないので、吐出圧力は上昇する。そこで、圧縮機本体の動作台数を減少させる判定を行う。
【0013】
図3は、本実施例の前提となる圧力予測制御による圧縮機本体停止の原理を説明する図である。図3において、(a)は、気体圧縮機の吐出圧力の時間経過を示しており、(b)は圧縮機本体の稼働/停止を示している。(a)において、圧力上昇時、停止圧力(上限圧力)に到達する予測時間Tuを下記式(1)により計算する。すなわち、吐出圧力の増加直線の傾斜情報を用いて計算する。
Tu=(Pmoff-P(k))/(P(k)-P(k-1))×1秒 …(1)
ここで、P(k):測定圧力、P(k-1):1秒前の測定圧力、Pmoff:停止圧力
そして、Tu<Tu閾値の場合は、使用空気量の減少の割合が大きいと判断し圧縮機本体1台を停止する。
【0014】
図2において、時刻T3で、上記Tu判定、すなわち、圧力予測制御により追従機である圧縮機本体2を停止し、主機のみで一定圧力制御を開始する。
【0015】
ここで、使用空気量の急激な減少の場合、インバータによる回転数制御が間に合わず、圧縮機の吐出圧力が必要以上に上昇してしまい上限圧を超えてしまう場合が想定される。
【0016】
そこで、本実施例では、圧縮機本体の駆動周波数が下限周波数に達する前の、駆動周波数を下げている最中に、吐出圧力が上昇した場合、上記Tu予測判定を行う。
【0017】
図4は、本実施例における台数減少制御を説明する図である。図4において、条件は図2と同じであり、図2と異なる点は、(b)、(c)において、圧縮機本体1、2の駆動周波数が下限周波数に達する前の駆動周波数を下げている最中に吐出圧力が上昇した場合、時刻T4に、上記Tu判定を行い、Tu<Tu閾値の場合、圧縮機本体2を停止する。これにより、早めに圧力上昇を抑えることが出来、使用空気量の急激な減少による吐出圧力の上昇を防止することが可能となる。
【実施例2】
【0018】
本実施例は、追従機を止める前に圧力を上げる運転を行い、吐出圧力の変動を低減する点について説明する。
【0019】
図5は、本実施例における台数減少制御を説明する図である。図5において、条件は図2と同じであり、図2と異なる点は、下限周波数で運転している状態で吐出圧力が上昇した場合、Tu判定を行ない、Tu<Tu閾値の場合は、圧縮機本体1、2を1台停止後の運転開始時周波数fnsまで周波数を上昇させた後、時刻T5で追従機の圧縮機本体2を停止させ、主機のみで一定圧力制御を開始する点である。
【0020】
すなわち、追従機を停止させると、動作台数が半分になるので、主機の回転数を上げるまでの間に圧力が低下する。そのため、追従機の停止で圧力が低下する分、追従機の停止前に主機・追従機を加速させ圧力を少し上げておく。これにより、台数減少制御による吐出圧力の変動を低減することができる。
【0021】
なお、本実施例では、下限周波数に達する時刻T2と、Tu判定を行う時刻T3を同じとして説明したが、図2と同様に、時刻T2以降の時刻T3にTu判定を行ってもよい。
【実施例3】
【0022】
本実施例は、3台以上を運転しているときに、圧力上昇が急なときには、複数台を止めることを可能にする例について説明する。
【0023】
図6は、本実施例における台数減少制御を説明する図である。図6おいては、例として、3台の圧縮機本体で運転している場合を示している。吐出圧力上昇時、図3で説明したように、停止圧力(上限圧力)に到達する予測時間Tuを前述の式(1)により計算し、Tuが所定閾値より小さい場合は、使用空気量の減少の割合が大きいと判断し圧縮機本体を停止すると判断するが、本実施例では、Tu閾値を2つ設け、Tu閾値Tu1、Tu2、ただし、Tu1<Tu2として、Tu1≦Tu<Tu2の場合は圧縮機本体3の1台停止、Tu<Tu1の場合は圧縮機本体2、3の2台停止するように制御する。これにより、急激な圧力上昇時にも、迅速に圧力変動を低減することができる。
【0024】
なお、本実施例は3台に限定するものではなく3台以上の場合、Tu閾値を複数設け、複数台を同時に停止するようにしてもよい。
【実施例4】
【0025】
本実施例は、圧縮機本体の下限周波数に応じた制御の例について説明する。本実施例では、圧縮機本体の上限周波数を100%として回転周波数をパーセントで表し、上限周波数で動作する1台の圧縮機本体が吐出する圧縮空気量を100%として圧縮空気の使用量をパーセントで表して説明する。
【0026】
本実施例における圧縮機本体のモータの下限周波数は例えば60%である。これは圧縮機の冷却ファンがモータに備えられているため、回転周波数が低いと冷却ファンの回転数も下がり、圧縮機を十分に冷却できないことや、回転周波数が低い領域では圧縮室からの空気漏れ及び再圧縮により圧縮効率が低下するためである。
【0027】
図7に圧縮空気の使用量と圧縮機本体の起動台数および回転周波数との関係の一例を示す。図7(a)は圧縮機の下限周波数が60%の場合の動作を示すグラフであり、図7(b)および図7(c)は下限周波数をそれぞれ50%および40%で動作可能とした場合の動作を示すグラフである。なお、図7(b)および図7(c)において50%から60%、40%から60%の領域においても60%より低い下限周波数で動作可能としているが、この領域においては図7(a)と同様に下限周波数を60%としても良い。
【0028】
図7において、74は全圧縮機本体の回転周波数と、これに対応する圧縮空気の生成量(=顧客による圧縮空気の使用量)との関係を示すグラフである。また、73は2台目の圧縮機本体の回転周波数と、これに対応する圧縮空気の生成量(=顧客による圧縮空気の使用量)との関係を示すグラフである。
【0029】
すなわち、図7(a)において使用量が0%から100%までのグラフ74は1台目の圧縮機本体のみが稼働しているため、この領域のグラフ74は1台目の圧縮機本体の回転周波数と、これに対応する圧縮空気の生成量(=顧客による圧縮空気の使用量)との関係を示すグラフと等価であり、使用量が100%以降のグラフ74からグラフ73を減じた部分が1台目の圧縮機本体の回転周波数と、これに対応する圧縮空気の生成量との関係を示している。
【0030】
下限周波数が60%に設定されている場合、圧縮空気の使用量が100%より多く120%未満の領域71では1台の圧縮機本体が100%の出力で動作する第1の状態と、2台がそれぞれ60%の出力で動作する第2の状態とを交互に行うことで時間平均では100%より多く120%未満の出力で動作する。この場合、特に2台目の圧縮機本体はON/OFFを繰り返すことにより部品寿命が短くなる恐れがある。また、圧縮機本体の起動と目標とする圧縮空気の吐出には時間差があるため、圧縮空気の使用量に対する吐出空気量の追従性が低下する恐れがある。1台の圧縮機本体の部品寿命が極端に低下することを防ぐため、この場合は所定時間毎、またはON/OFF回数が所定回数を超える毎に1台目と2台目の圧縮機を入れ替えることが望ましい。
【0031】
ON/OFF回数が増加する問題は、使用空気量が100%から120%の場合のみ圧縮機本体の下限周波数を60%より低い周波数で動作可能とする低回転数モードを搭載することで改善可能である。すなわち、図7(b)で示すように使用空気量が100%より多く120%未満の場合は少なくとも圧縮機本体の下限周波数を50%で動作可能とすることで使用空気量が100%までは1台が動作し、100%より多く120%未満の場合は2台の圧縮機本体が50%から60%の周波数で動作することで2台目の圧縮機本体のON/OFF回数を低減することができる。ただし、下限周波数を50%とした場合は顧客の空気使用量が100%付近で前後する場合に1台が100%の周波数で動作する状態と2台が50%の周波数で動作する状態とが頻繁に遷移するハンチングの可能性がある。これにより2台目の圧縮機本体のON/OFF回数が増大する可能性があるため、50%よりもさらに低い周波数を設定可能とすることが望ましい。
【0032】
例えば、図7(c)のように下限周波数を40%に設定可能とすることで、使用量が80%から100%の領域72を1台でも2台でもカバー可能となる。このように設定することにより、使用量が100%付近で前後している場合であったとしても、台数増加と減少でヒステリシスを持たせることができ、ハンチングを起こさずに圧縮機本体を動作可能である。すなわち、使用量が100%付近で推移する場合は圧縮機2台が約50%の周波数で動作する。そして、80%まで使用量が低下した場合は2台の圧縮機本体が40%で動作している状態から1台が80%で動作している状態に遷移し、その後は使用量が100%になるまでは1台の圧縮機本体が圧縮空気を供給する。なお、上述のように圧縮機本体は起動してから圧縮空気を吐出するまでに時間差があるため、例えば使用量が95%になった時点で2台目の圧縮機本体を起動し、2台の圧縮機本体が約50%の周波数で動作するようにしても良い。このように設定することにより使用量の増加に対する追従性が向上する。
【0033】
なお、下限周波数が60%の圧縮機本体を周波数40%で動作している状況では圧縮効率の低下や圧縮機本体が過熱される恐れがあるため、下限周波数を下げる制御は上述のハンチングが起こりやすい場合に絞る必要がある。ハンチングが起こりやすい状況とは、顧客の空気使用量が継続して100%付近を推移する状況、すなわち顧客の空気使用量の変化率が少ない状況である。従って、顧客の空気使用量の変化率の目安となるTuに閾値を設け、Tuが閾値を超えない場合は下限周波数を60%より低い周波数で動作可能とする。2台目の圧縮機本体の停止前にこの判定を行う必要があるため、この閾値は実施例1で説明したTu閾値よりも大きい値である。
【0034】
また、低回転数モードの間は一定時間ごとに回転速度を上げる時間を設けてファン回転数を増加させ、強制的に冷却する制御を行っても良い。また、本体温度が所定以上となった場合に低回転数モードを解除するように制御しても良い。このように低回転数モードに制限を設けることで圧縮機本体の加熱を防止することができる。
【0035】
なお、低回転数モードは動作する圧縮機本体が1台と2台が切り替わる使用量100%前後の場合に適用される。2台と3台が切り替わる使用量200%前後の場合は、既に60%×3台(180%)<100%×2台(200%)、となっており、2台の動作範囲と3台の動作範囲が重複しているので、低回転数モードは不要である。すなわち、図7(a)のように圧縮空気の使用量に追従できない領域71に相当する領域が存在しないためである。ただし、上述したように台数増加と減少でヒステリシスを持たせることで、ハンチングを防止する制御は適用可能であり、圧縮機本体の部品寿命の向上に有効である。
【0036】
なお、本実施例では下限周波数が60%に設定されている圧縮機本体を利用する場合の制御について説明したが、本制御は下限周波数が50%以上の圧縮機本体であれば同様に実施可能である。また、上述の、低回転数モードにおける下限周波数を40%に設定する、や、1台動作時に使用量が95%になった時点で2台目を起動する、等の数値は厳密にこの値でなければ効果を発揮しないものではないが、一般にこの数値付近で制御することで本実施例における各構成の効果を強く発揮することができる値である。
【0037】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10、11、12:圧縮機本体、20、21、22:インバータ、30:背面パネル、31:側面パネル、32:上面パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7