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特許7157820バルブシートを形成するインサートを含む燃料噴射器バルブシートアセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】バルブシートを形成するインサートを含む燃料噴射器バルブシートアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/18 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
F02M61/18 350D
F02M61/18 340Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020556912
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019060354
(87)【国際公開番号】W WO2019206897
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】62/662,353
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ダンテス ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ヘイゼル トッド ウォレス
(72)【発明者】
【氏名】メノン マノイ
(72)【発明者】
【氏名】サイフェルト ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シュタッハ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ケイリー ライアン
(72)【発明者】
【氏名】スリニヴァサン スディール
(72)【発明者】
【氏名】リシュケ ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ランダー ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーショレック セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ドエッチ ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】グリボタ ペーター
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-504531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0113406(US,A1)
【文献】特表2002-543330(JP,A)
【文献】特開2002-180932(JP,A)
【文献】国際公開第2004/070200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射器であって、
燃料噴射器ハウジングと、
前記燃料噴射器ハウジングに配設されるバルブシートであって、
前記燃料噴射器ハウジングの端部に機械的に接続されるとともに内面を含むベースと、
前記内面と前記バルブシートの外部との間に延在する噴霧孔を画定するように前記ベースと協働するインサートと、を含む前記バルブシートと、
前記燃料噴射器ハウジングに配設されるバルブボデーであって、前記バルブボデーが前記ベースの前記内面と当接するとともに流体による前記噴霧孔の通過が防止される第1位置と、前記バルブボデーが前記ベースの前記内面から離間するとともに流体による前記噴霧孔の通過が可能である第2位置との間で前記燃料噴射器ハウジングの長手軸線に沿って移動するように作動可能である前記バルブボデーと、
を包含し、
前記バルブボデーがシール線に沿って前記バルブシートと接触してシールを形成し、前記シール線が前記インサートに配設される、
燃料噴射器。
【請求項2】
前記バルブボデーが球形であって、前記シール線を含む前記インサートの部分が凹状である、請求項1記載の燃料噴射器。
【請求項3】
前記ベースが、前記燃料噴射器ハウジングに収容および固定される第1端部と、前記第1端部と反対であって前記燃料噴射器ハウジングの外側に配設される第2端部とを有し、 前記インサートが前記ベースの前記第2端部に固着され、前記シール線の位置は前記ベースの前記端部よりも前記ベースの前記端部に近い
請求項1記載の燃料噴射器。
【請求項4】
前記ベースに設けられる空所に前記インサートが配設され、前記空所内で前記インサートの機械的保持を行うため前記空所の形状に対して相補的であって協働する外側形状を前記インサートが含む、請求項1記載の燃料噴射器。
【請求項5】
前記ベースに設けられる空所に前記インサートが配設され、前記空所内で前記インサートの機械的保持を行うため前記バルブシートの内面の一部分と前記空所の両方に対して相補的であって協働する外側形状を前記インサートが含む、請求項1記載の燃料噴射器。
【請求項6】
前記バルブシートの前記内面と接触する前記インサートの部分が、前記空所内に配設される前記インサートの部分よりも直径が大きい、請求項5記載の燃料噴射器。
【請求項7】
前記バルブシートの前記内面と接触する前記インサートの部分が前記シール線を含む、請求項6記載の燃料噴射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの内燃エンジンは、内燃エンジンの燃焼室へ燃料を直接的または間接的に噴霧するように構成される一つ以上の燃料噴射器を含む燃料噴射システムを使用して燃料が供給される。直接燃料噴射器は高い圧力(例えば100バール以上の圧力)で作動して燃料室へ燃料を直接的に提供し、一方で間接燃料噴射器(ポート燃料噴射器)は比較的低い圧力(例えば10バール以下の圧力)で作動して燃焼室の上流にあるマニホルドへ燃料を提供する。
【0003】
燃料噴射器は、所定の噴霧特性を有する燃料を噴霧するのに必要とされ、エンジンに必要とされる噴霧特性はエンジン条件に応じて変化する。燃料噴射器ノズルの噴霧パターンおよび特性は、バルブシートとバルブシートに形成される噴霧孔との形状により決定される。噴霧の特性はエンジンアウト排出物に大きく寄与しうる。例えば、ある特性を制御すると、燃料噴射器により供給される内燃エンジンにより発生される粒子および気体排出物を最小にすることができる。制御されうる特性の幾つかは、バルブシートの噴霧孔での燃料の流れ、噴霧孔を出る際の噴霧の分散/霧化、燃焼室での噴霧の浸透、そしてバルブシートの先端湿潤を含む。
【0004】
幾つかの従来の高圧燃料噴射器では、レーザ穿孔により噴射器の吐出端部に噴霧孔が形成されうる。レーザ穿孔プロセスでは噴霧孔の正確な位置決定および具現が可能であるが、この方法は欠点も有する。例えば、幾つかのケースで噴霧孔は円筒形状に限定されうる。加えて、噴霧孔を製作する際のわずかな誤差は、燃料原動機について最適な噴霧形態の変化につながりうる。わずかな誤差の影響は、例えば粒子発生増加の形での汚染物発生増加と、燃焼悪化による燃料原動機での効率低下とを含む。
【0005】
精密かつ確実に形状および位置決定される噴霧孔を有する燃料噴射器とともに、これらの燃料噴射器を製作するための製造方法が、依然として必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの態様において、高圧燃料噴射器は、バルブシートと、バルブシートに対して移動して燃料噴射器の端部に設けられる噴霧孔を開閉するバルブボデーとを有する噴霧バルブを含む。バルブシートは、ベース部分と、噴霧孔を含んでベース部分に固定されるインサートとを含む。幾つかの実施形態において、インサートは電気鋳造プロセスで製造される。この方法の利点は、穿孔など幾つかの従来方法を使用して製造できない形状、表面特徴、および/または公差を有する噴霧孔をインサート内に形成することである。噴霧孔を有するインサートを含むバルブシートは、穿孔など従来の製造方法により形成される噴霧孔を含む幾つかの高圧燃料噴射器に対して向上した燃料噴霧品質(例えば、良好な霧化、噴霧パターン等)を提供する。
【0007】
噴霧孔をバルブシートに組み込むか装着するのに様々な方法が使用され、これは構想図に示されている。幾つかの実施形態は、バルブシート完成品を製作するように電気鋳造されてバルブシート構成要素に装着される独立した構成要素つまりインサートを示す。他の実施形態は、バルブシートの表面に一体的な噴霧孔を直接的に形成する電気鋳造プロセスに組み込まれるバルブシート構成要素つまりベースを示す。他の実施形態は、ベースではなくインサートに組み込まれるバルブボール密閉シートを示す。また他の実施形態は、ベースとインサートとを製作するための代替的な材料および製造プロセスの使用を含む。
【0008】
幾つかの実施形態において、燃料噴射器は、燃料噴射器ハウジングと、燃料噴射器ハウジングに配設されるバルブシートとを含む。バルブシートは、燃料噴射器ハウジングの端部に機械的に接続されて内面を含むベースと、内面とバルブシートの外部との間に延在する噴霧孔を画定するようにベースと協働するインサートとを含む。燃料噴射器は、燃料噴射器ハウジングに配設されて、バルブボデーが内面と当接するとともに流体による噴霧孔の通過が防止される第1位置と、バルブボデーが内面から離間するとともに流体による噴霧孔の通過が可能である第2位置との間で燃料噴射器ハウジングの長手軸線に沿って移動するように作動可能であるバルブボデーを含む。バルブボデーは環状のシール線に沿ってバルブシートと接触してシールを形成し、シール線はインサートに配設される。
【0009】
幾つかの実施形態において、バルブボデーは球形であって、シール線を含むインサートの部分は凹状である。
【0010】
幾つかの実施形態において、ベースは、燃料噴射器ハウジングに収容および固定される第1端部と、第1端部と反対にあって燃料噴射器ハウジングの外側に配設される第2端部とを有する。加えて、インサートはベース第2端部に固着され、シール線はベース第2端部よりもベース第1端部から離れている。
【0011】
幾つかの実施形態において、ベースに設けられる空所にインサートが配設され、インサートは、空所内でインサートの機械的保持を行うため空所の形状に対して相補的であって協働する外側形状を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、ベースに設けられる空所にインサートが配設され、インサートは、空所内でインサートの機械的保持を行うためバルブシートの内面の一部分と空所の両方に対して相補的であって協働する外側形状を含む。バルブシートの内面と接触するインサートの部分は、空所内に配設されるインサートの部分よりも直径が大きい。この部分はシール線を含む。
【0013】
幾つかの実施形態では、バルブシートが第1材料で形成されて、インサートがコーティングの形で噴霧孔の表面に設けられ、コーティングは、第1材料と異なる第2材料である。幾つかの実施形態において、噴射される燃料の噴霧特性を制御する表面特徴を噴霧孔が含むように、コーティングの塗着が制御される。
【0014】
他の実施形態において、インサートはベースとは別に形成され、続く製造ステップでベースに装着される。高圧燃料噴射器内で発生される高圧に関係なくバルブシートベースとの組立構成にインサートを保持するため、後で詳述するようにインサートをベースに組み込むか装着するのに様々な構造および方法が使用されうる。
【0015】
幾つかの実施形態において、インサートは、燃料噴射器内での燃料の高圧に関係なくベースとの組立構成および直接接触状態にインサートを保持するように対応のベース表面特徴と嵌合するインサート表面特徴を有する。
【0016】
幾つかの実施形態において、インサートは、長手軸線を中心としたベースに対する所定の回転配向にインサートを保持するように対応のベース表面特徴と嵌合するインサート表面特徴を含む。この特徴は、噴霧孔が燃料噴射器内で適切に配向されることを保証する。
【0017】
幾つかの実施形態において、ベースに形成される空所にインサートが収容され、インサートとベースとの間の境界面は、境界面に流体シールを設けるような形状を持つ。これは、燃料噴射器内での燃料の高圧に関係なくインサートとベースとの間での燃料の通過を防止する。
【0018】
幾つかの実施形態において、燃料噴射器内で移動可能であって噴霧孔を開閉するバルブボデーは、環状のシール線に沿ってバルブシートと接触してこれとシールを形成し、シール線はインサートに配設される。これは、シール線がベース内に形成される幾つかの従来の燃料噴射器構成と比較可能である。
【0019】
幾つかの実施形態において、インサートは、バルブボデー対向面と、バルブボデー対向面と反対にある外向面とを含む。噴霧孔はバルブボデー対向面と外向面との間に延在する。バルブボデー対向面は凹状部分を含み、バルブボデーが第1位置にある時に凹状部分とバルブボデーとの間に空所スペースが存在するように凹状部分が構成される。
【0020】
燃料噴射器ノズルの噴霧パターンおよび特性を制御する噴霧孔形状を提供するインサートを有するバルブシートを設けることにより、噴霧の特性が制御され、ゆえにエンジンアウト排出物が削減されうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】バルブシートを含む燃料噴射器の断面図である。図1において、バルブボデーは、第1、つまりバルブシートに対する当接位置で示されている。
【0022】
図2図1のバルブシートの断面図であり、バルブシートは、ベースと、噴霧孔を有してベースに配設されるインサートとを含む。図2では、第2、つまりバルブシートに対する後退位置を示す破線でバルブボデーが示されている。
【0023】
図3図2の一点鎖線で特定されたバルブシート部分の拡大図であり、ベース開口部に基材が配設されたインサートを図示している。
【0024】
図4図2の一点鎖線で特定されたバルブシート部分の拡大図であり、基材が除去された後のインサートを図示している。
【0025】
図5】代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0026】
図6】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0027】
図7】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0028】
図8】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0029】
図9】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0030】
図10】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0031】
図11】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0032】
図12】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0033】
図13】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0034】
図14】別の代替的実施形態バルブシートの一部分の上面図である。
【0035】
図15図14のバルブシート部分の断面図である。
【0036】
図16】別の代替的実施形態バルブシートの一部分の断面図である。
【0037】
図17】別の代替的実施形態バルブシートの一部分の断面図である。
【0038】
図18A図17の円内部分の拡大断面図である。
【0039】
図18B図17の円内部分の代替的実施形態の拡大断面図である。
【0040】
図19】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0041】
図20】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0042】
図21】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0043】
図22】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0044】
図23】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0045】
図24】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0046】
図25】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0047】
図26】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0048】
図27】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0049】
図28】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0050】
図29】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。図29では、第1、つまりバルブシートに対する当接位置でのバルブボデーが破線で示されている。
【0051】
図30】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。図30では、第1、つまりバルブシートに対する当接位置でのバルブボデーが破線で示されている。
【0052】
図31】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。図31では、第1、つまりバルブシートに対する当接位置でのバルブボデーが破線で示されている。
【0053】
図32】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。図32では、第1、つまりバルブシートに対する当接位置でのバルブボデーが破線で示されている。
【0054】
図33】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0055】
図34】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。図34では、第1、つまりバルブシートに対する当接位置でのバルブボデーが破線で示されている。
【0056】
図35】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。図35では、第1、つまりバルブシートに対する当接位置でのバルブボデーが破線で示されている。
【0057】
図36】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0058】
図37】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0059】
図38】別の代替的実施形態バルブシートの断面図である。
【0060】
図39】従来の噴射器構成(像の右側)と代替的実施形態の噴射器構成(像の左側)の両方を図示する噴射器の断面図である。
【0061】
図40】従来の噴射器構成(像の右側)と別の代替的実施形態の噴射器構成(像の左側)の両方を図示する噴射器の断面図である。
【0062】
図41】従来のバルブシートを含む燃料噴射器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1~2を参照すると、高圧燃料噴射器1は、高圧下、例えば100バール以上の圧力下の内燃エンジン(不図示)の燃焼室へのガソリンなどの燃料の噴射に使用される。燃料噴射器1は、噴霧バルブ3を一端部で支持するスリーブの形の長尺管形ハウジング2を有する。噴霧バルブ3は、バルブシート4と、バルブシート4に対して移動するバルブボデー10とを含む。バルブシート4は、燃料噴射器1のノズルとして機能する少なくとも一つの噴霧孔8を含む。バルブボデー10は、例えばボールの形状を有する。バルブボデー10は、バルブシート4と当接して噴霧孔20が閉止される第1位置(図1)と、バルブシート4から離間して噴霧孔20が開口する第2位置(図2、破線参照)との間でハウジング2の長手軸線14に沿って移動するようにバルブニードル12により作動可能である。図の実施形態において、燃料噴射器1は内向き開口の燃料噴射器1である。
【0064】
バルブシート4は、ベース16と、ベース16に固着されるインサート26とを含む。ベース16は、例えば溶接により燃料噴射器ハウジング2の端部に機械的に接続される。ベース16の凹状内面18は、ベース16内でバルブボデー10を案内する周方向離間の長手方向延在リブ20を含む。バルブボデー10は、第1位置にある時に、環状シール線6に沿って内面18と直接接触してこれとシールを形成する。インサート26はベース16と協働して内面18の一部分を画定し、バルブシート4の内面18と外面22との間に延在する噴霧孔8を含む。ベース16とインサート26とはバルブシート4を設けるように協働し、そしてバルブボデー10のための密閉面、バルブニードル12の案内部、燃料を霧化する噴霧孔8、燃料を噴霧孔8へ誘導するための流路が設けられる。
【0065】
図3および4を参照すると、バルブシート4のベース部分16は、例えば金属粉末射出成形(MIM)プロセスにより単一の構成要素として製造され、組立中に噴射器ハウジング2に溶接される。成形プロセス中に、完成した噴霧孔8の必要寸法に対して拡大された噴霧孔8のための開口部17がベース部分16に設けられる。ベース部分16の形成に続いて、後述する電気めっきプロセスを使用して、噴霧孔8を含むインサート26がベース部分16に構築される。電気めっきプロセスにより構築されるインサート26は、ベース部分16に確実に固着される。加えて、インサート26に形成される噴霧孔8は精密に位置決定され、燃料の最適噴射とそれゆえエンジンの内燃室での最適燃焼とを提供する、精密に形成された複雑な幾何学形状を有しうる。電気めっきプロセスは、インサート26をベース16に結合する単純かつ効率的な手法を提供する一方で、高費用および/または浪費的な後処理を伴わずに高精度で形成されるバルブシート4を実現するので、有利である。
【0066】
電気めっきプロセスは、完成した噴霧孔8の必要寸法に対して過大なサイズである開口部17を含むバルブシートベース16を設けることを含みうる。概ねロッド形状の要素32を含む外側形状を有する基材30が設けられ、各要素32は個々の噴霧孔8を画定し、各要素32は、当該の噴霧孔8の内面の形状および寸法に対応する形状および寸法を持つ外面を有する。幾つかの実施形態において、基材30は3Dプリンティングプロセスを使用して構築されうる。基材30は、各開口部17に要素32が配設された状態でベース16とともに組み立てられる。各要素32が開口部17より小さくなるように、基材30はベース16に対して隙間嵌めを有する寸法を持ち、こうして開口部17と基材30との間に間隙が存在する。そして基材30とベース16との間での電気めっき層(例えば亜鉛めっき層)の塗着により、インサート26がベース16に形成される。基材8が組み立てられたバルブシート4を適切な電解質溶液の電気めっき槽に載置することにより、これが達成される。めっき材料で形成される金属陽極も槽に載置され、陽極とともに(陰極としての)バルブシート4を電流が通過する。その結果、間隙内の表面を含むバルブシートベース16の表面に薄い亜鉛めっき層が形成され、最終的には間隙に亜鉛めっき材料が充填される。ベース16に直接生成される噴霧孔8の正確な位置決定および設計がインサート26で実現されうるように、基材30が適切に構成されうる。
【0067】
ベース16の表面にインサート26を生成するのに電気めっきを使用することは、詳細な部品の形成を可能にする非常に順応性のあるプロセスである。これはバッチプロセスとして実施され(例えば幾つかのバルブシート4が同時に電気めっきされ)、ゆえに効率的で信頼できる噴射器1の製作が可能である。また、噴霧孔8の位置決定を含むインサート26の幾何学形状とともに、全体形状および/または流体誘導面特徴を含む個々の噴霧孔8の幾何学形状の変更は、他の点では製作手順を維持したままでの雌型(例えば犠牲基材30)の変更によって容易に実行されうる。
【0068】
インサート26の形成に続いて、基材が除去される(図4)。インサートの幾何学形状に応じて、バルブシート4から基材30を簡単に引き抜くことが可能である。他の実施形態では、基材30が犠牲にされうる。例えば、基材30はプラスチックで製作され、基材を溶融させてバルブシート4から焼失させるのに充分なほどバルブシート4を加熱して、インサート26をベース16との組立構成で残すことにより、基材30が犠牲にされうる。
【0069】
幾つかの実施形態では、電気めっきに先立って、選択されたベース16の戦略的部分に導電性材料のコーティングが設けられる。これは例えば銀ワニスまたはグラファイト噴霧を使用して達成されうる。戦略的部分は例えば、インサート26が形成される表面に対応しうる。加えて、基材30は類似方式で完全または部分的にコーティングされうる。亜鉛めっき層は各ケースで、導電性材料で表面がコーティングされたベース16および基材30の部分に形成される。こうして噴霧孔8を含むインサート26を用意することが、例えば絶縁材料で形成される基材30により簡単に可能になる。他の実施形態では、導電性材料で基材30が形成されうる。
【0070】
幾つかの実施形態で、電気めっきプロセスにより形成されるインサート26はニッケルで形成される。ニッケルは順応性があって噴射器本体の多数の材料との適合性を持つので有利である。加えて、ニッケルは良好な腐食保護を供与する。
【0071】
図4に図示されている実施形態では、多数の噴霧孔8を含む単一のインサート26がベース16の表面に構築される。しかしながら、バルブシート4はこの構成に限定されず、幾つかの実施形態では、バルブシート4が多数のインサート26を含みうる。例えば、バルブシート4は、ベース16に形成される各開口部17のための個々のインサートを含みうる。
【0072】
図5を参照すると、代替的実施形態バルブシート104は、ベース116の表面に金属を直接的に付着させることにより噴霧孔8が形成されるように電気鋳造プロセスを介してベース116に組み込まれるインサート126を含むという点で、図1~4に図示されたバルブシート4に類似している。この実施形態と以下の実施形態において、共通の要素は共通の参照番号を使用して言及される。図5のバルブシート104は、インサート126がバルブシート内面18の大部分を占めるという点で前出の実施形態と異なっている。特に、インサート126は、内面18の、シール線6の下に所在する部分となる。
【0073】
加えて、インサート126はバルブシート外面22まで延在せず、むしろ内面に形成される空所124に形成される。空所124の周囲はベース116に嵌め込まれ、これは、燃料噴射器1内の流体圧力に関係なくインサート126が空所内に保持されることを保証する。ベース116は、空所124と外面22との間に延在してインサート126に形成される噴霧孔8と整合される予備孔119を含む。
【0074】
図6を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート204は、ベース216の表面に金属を直接的に付着させることにより噴霧孔8が形成されるように電気鋳造プロセスを介してベース216に組み込まれるインサート226を含むという点で、図5に図示されているバルブシート104に類似している。図5のバルブシートのように、インサート226は、シール線6の下に配設される内面18の一部分となる。図6のバルブシート204は、噴霧孔8を含むインサート226が内面18と外面22との間で長手方向に延在するという点で、図5のバルブシート104と異なっている。加えて、インサート226の周囲は、ベース216に形成される相補的な表面特徴221(つまり傾斜突部)と係合および嵌合する形状を持つ表面特徴228(つまり傾斜陥部)を含む。係合した表面特徴221,228により得られる協働的嵌合は、燃料噴射器1内の流体圧力に関係なくベース216との組立構成にインサート226が保持されることをさらに保証する。
【0075】
図7を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート304は、ベース316の表面に金属を直接的に付着させることにより噴霧孔8が形成されるように電気鋳造プロセスを介してベース316に組み込まれるインサート326を含むという点で、図6に図示されているバルブシート204に類似している。図6のインサート226のように、図7のインサート326は内面18の一部分となり、内面18と外面22との間で長手方向に延在する。加えて、インサート326の周囲は、ベース316に形成される相補的な表面特徴221(つまり傾斜突部)と係合および嵌合する形状を持つ表面特徴228(つまり傾斜陥部)を含む。係合した表面特徴221,228により提供される協働的嵌合は、燃料噴射器1内の流体圧力に関係なくベース316との組立構成にインサート326が保持されることをさらに保証する。図7のインサート326は、シール線6を含む形状および寸法を持つという点で図6のインサート226と異なっている。
【0076】
図6のインサート226のように、図7のインサート326は内面18の一部分となり、内面18と外面22との間で長手方向に延在する。加えて、インサート326の周囲は、ベース316に形成される相補的な表面特徴221(つまり傾斜突部)と係合および嵌合する形状を持つ表面特徴228(つまり傾斜陥部)を含む。係合した表面特徴221,228により提供される協働的嵌合は、燃料噴射器1内の燃料圧力に関係なくベース316との組立構成にインサート326を保持することをさらに保証する。図7のインサート326は、シール線6を含む形状および寸法を持つという点で図6のインサート226と異なっている。
【0077】
図8を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート404は、ベース416とは別に形成されてからバルブシート404を形成するようにベース416とともに組み立てられるインサート426を含むという点で、前述の実施形態と異なっている。インサート426は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート426はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート426はベース416に組み込まれ、締り嵌め(例えばプレス嵌めか焼き嵌め)、溶接、またはかしめを介してこれに保持される。加えて、インサート426の外面427は、空所424内でインサート426の機械的保持を行うためベース416に形成される空所424に対して相補的であってこれと協働する段状(図示)またはテーパ状(不図示)の外側形状を有する。図8に図示されている実施形態で、インサート426は、シール線6を含まない小型インサート(つまり単一の噴霧孔8を設けるのに充分なだけの大きさ)である。加えて、インサート426の外面427の段部またはテーパ部は、インサート426がバルブシート404の内側から組み立てられることを必要とするように構成される。例えば、図の実施形態では、内面18に近いインサート426の部分は、外面22に近いインサート426の部分より直径が大きい。
【0078】
図9を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート504は、ベース516とは別に形成されてからバルブシート504を形成するようにベース516とともに組み立てられるインサート526を含むという点で、図8に図示されているバルブシート404に類似している。インサート526は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート526はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート526はベース516に組み込まれ、締り嵌め(例えばプレス嵌めか焼き嵌め)、溶接、またはかしめを介してこれに保持される。加えて、インサート526は、空所524内でインサート526の機械的保持を行うためベース516に形成される空所524に対して相補的であってこれと協働する段状(図示)またはテーパ状の外側形状を有する。図9に図示されている実施形態で、インサート526は多数の噴霧孔8を備えてシール線6を含むのに充分なほど大きい。加えて、インサート526の外面の段部またはテーパ部は、バルブシート504の内側からインサート526が組み立てられることを必要とするように構成される。すなわち、内面18に近いインサート526の部分は、外面22に近いインサート526の部分より直径が大きい。
【0079】
図10を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート604は、ベース616とは別に形成されてからバルブシート604を形成するようにベース616とともに組み立てられるインサート626を含むという点で、図8に図示されているバルブシート404に類似している。インサート626は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート626はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート626はベース616に組み込まれて、締り嵌め(例えばプレス嵌めか焼き嵌め)、溶接、またはかしめを介してこれに保持される。加えて、インサート626は、空所624内でインサート626の機械的保持を行うためバルブシート内面18の一部分とベース616の空所624の両方に対して相補的であってこれと協働する段状(図示)またはテーパ状の外側形状を有する。図10に図示される実施形態において、インサート626は多数の噴霧孔8を備えてシール線6を含むのに充分なほど大きい。加えて、インサート626の外面の形状は、バルブシート604の内側からインサート626が組み立てられることを必要とするように構成される。すなわち、内面18と接触するインサート626の部分は空所624内に配設されるインサート526の部分より直径が大きい。
【0080】
図11を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート704は、ベース716とは別に形成されてからバルブシート704を形成するようにベース716とともに組み立てられるインサート726を含むという点で、図8に図示されているバルブシート404に類似している。インサート726は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート726はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。図8のインサート426と異なり、図11のインサート726は均一な直径の外側形状を有し、こうしてインサート726の外面には段部またはテーパ部は見られない。インサート726は、相補的な内側形状および寸法を有するベース716の空所724に配設される。インサート726はベース716に組み込まれて、締り嵌め(例えばプレス嵌めか焼き嵌め)、溶接、またはかしめを介してこれに保持される。図11に図示されている実施形態で、インサート726は多数の噴霧孔8を設けるのに充分なほど大きいが、シール線6の下に所在してこれを含まない。インサート726は、バルブシート704の内側または外側からベース716とともに組み立てられうる。
【0081】
図12を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート804は、ベース816とは別に形成されてからバルブシート804を形成するようにベース816とともに組み立てられるインサート826を含むという点で、図11に図示されているバルブシート704と類似している。インサート826は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート826はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。図11のインサート726のように、図12のインサート826は均一な直径の外側形状を有し、こうしてインサート826の外面には段部またはテーパ部が見られない。インサート826は、相補的な内側形状および寸法を有するベース816の空所824に配設される。インサート826はベース816に組み込まれて、締り嵌め(例えばプレス嵌めか焼き嵌め)、溶接、またはかしめを介してこれに保持される。図12に図示されている実施形態において、インサート826は多数の噴霧孔8を設けるのに十分な大きさであって、シール線6の上に延在してこれを含む。インサート826は、バルブシート804の内側または外側からベース816とともに組み立てられうる。
【0082】
図13を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート904は、ベース916とは別に形成されてからバルブシート904を形成するようにベース916とともに組み立てられるインサート926を含むという点で、図11に図示されているバルブシート704に類似している。インサート926は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート926はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。図13のインサート926は直径が不均一な円筒形の外側形状を有することにより、インサート926の外面は外面22より内面18において大きい直径を有し、二つの直径の間の移行部に肩部929が設けられる。インサート肩部929は、外面22に面して開口する長手方向延在陥部929aを含む。ベース916は、インサート926を収容する空所924を有する。空所924は、インサート926のものに対して相補的な形状および寸法を有する。特に、空所924は不均一な直径であることにより、空所924の内面は外面22より内面において大きい直径を有し、二つの直径の間の移行部にはベース肩部925が設けられる。ベース肩部925は、陥部929a内に収容される突部925aを有する。インサート926はベース816の空所924に配設され、インサート陥部929aとベース突部925aとの間の係合的嵌合を介してこれに保持される。係合した表面特徴925,925a,929,929aにより設けられる協働的な嵌合は、燃料噴射器1内での流体圧力に関係なくインサート926がベース916との組立構成に保持されることを保証する。図13に図示されている実施形態において、インサート926は多数の噴霧孔8を設けるのに充分な大きさであって、シール線6の上に延在してこれを含む。インサート926は、バルブシート904の内側からベース816とともに組み立てられうる。
【0083】
図14および15を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート1004は、ベース1016とは別に形成されてからバルブシート1004を形成するようにベース1016とともに組み立てられるインサート1026を含むという点で、図8に図示されているバルブシート404に類似している。インサート1026は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート1026はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート1026は、長手軸線14を中心としたベース1016に対する所定の回転配向でインサート1026を保持するように対応のベース表面特徴1021と嵌合するインサート表面特徴1028を含む。例えば、図14および15に図示されている実施形態において、インサート1026は矩形の周囲形状を有し、ベース内面18に形成される矩形の空所1024内に収容される。この例で、インサート1026の角部は、空所1024の角部に対応する対応の表面特徴1021と嵌合する表面特徴1028として機能する。これらの表面特徴1028,1021の間の嵌合は、ベース1016に対してインサート1026を配向して、長手軸線14を中心としたインサート1026とベース1016との間の相対動作を防止する。インサート1026とベース1016とは、ベース1016との嵌合状態にインサート1026を他の形で保持する追加特徴、例えば図1~13に関する上記の特徴を含みうるが、これらに限定されるわけではない。
【0084】
図16を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート1104は、ベース1116とは別に形成されてからバルブシート1104を形成するようにベース1116とともに組み立てられるインサート1126を含むという点で、図14および15に図示されているバルブシート1004に類似している。インサート1126は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されうるが、インサート1126はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート1126は、長手軸線14を中心としたベース1116に対する所定の回転配向にインサート1126を保持するように対応のベース表面特徴1121と嵌合するインサート表面特徴1128を含む。例えば、図16に図示されている実施形態において、インサート1126は、ベース1116に形成される空所1124内に収容され、ベース内面18の一部分を被覆するフランジ1129を含む。フランジ1129は、インサート表面特徴に対応する開口部1128を含む。開口部1128は、内面18から突出してベース表面特徴に対応する柱部1121を収容するように構成される。この例では、柱部1121が開口部1128と嵌合し、これによりインサート1126がベース1116に対して配向され、長手軸線14を中心としたベース1116に対する相対動作が防止される。インサート1126およびベース1116は、インサート1026をベース1016との嵌合状態に他の形で保持する追加特徴、例えば図1~13に関する上記の特徴を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0085】
図17および18A~18Bを参照すると、別の代替的実施形態バルブシート1204は、ベース1216とは別に形成されてからバルブシート1204を形成するようにベース1216とともに組み立てられるインサート1226を含むという点で、図8に図示されているバルブシート404に類似している。インサート1226は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルから形成されうるが、インサート1226はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート1226はベース1216の空所1224に組み込まれて締り嵌め(例えばプレス嵌めか焼き嵌め)、溶接、またはかしめを介してこれに保持される。一つの噴霧孔8のみが示されているが、インサート1226は、所望の幾何学形状を有する多数の噴霧孔8を含みうる。図の実施形態において、インサート1226の外面のテーパ部は、インサート1226がバルブシート1204の内側から組み立てられうることを必要とするように構成される。すなわち、内面18に近いインサート1226の部分は、外面22に近いインサート1226の部分よりも直径が大きい。しかしながら、インサート1226は、バルブシート1204の内側からの挿入を必要とする形状に限定されない。加えて、インサート1226とベース1216との間の境界面は、流体シールを境界面に設けるような形状を持つ。特に、境界面では、第1線形部分1221aと、角度θで第1線形部分1221aに隣接する第2線形部分1221bとをベース1216が含む。角度θは鈍角として図示されているが、これに限定されず、例えば鋭角であってもよい。第1線形部分1221と第2線形部分1221bとの交点は、境界面に流体シールを設けるようにインサート1226の対向面と嵌合するシールエッジ1221cを画定する。すなわち、インサート1226が空所1224にプレス嵌め(「くさび留め」)されると、境界面に設けられる非整合のテーパ部がインサート1226を所定箇所に係止し、シールエッジ1221cに沿って液密シールを設ける。図18Aは、隣接する非線形部分1221a,1221bをベース1216が含むことを示しているが、これらの特徴が代替的にベース1216ではなくインサート1226に設けられうる(図18B)ことは言うまでもない。
【0086】
図19を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート1304は、ベース1316とは別に形成されてからバルブシート1304を形成するようにベース1316とともに組み立てられるインサート1326を含むという点で、上述の実施形態と異なっている。インサート1326は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート1326はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート1326は、噴霧孔8が形成された中央部分1328と、中央部分1328と一体的であって長手軸線14に垂直な方向に中央部分1328から外向きに突出するクリップ部分1329とを含む。
【0087】
インサート1326がベース1316とともに組み立てられると、中央部分1328がベース1316の対応の空所1324に収容されて、クリップ部分1329は外面22と当接する。幾つかの実施形態において、クリップ部分1329は、中央部分1328から径方向外向きに延出する一つ以上の「フィンガ」(例えば細い延出部)を含みうる。例えば、クリップ部分1329は、ベース1361の終端部1316aを被覆する径方向延在部分1329aと、ベース1316の横側1316bの一部分を被覆する長手方向延在部分1329bとを含みうる。長手方向延在部分1329bは、ベース横側1316bに形成される溝部1321まで延出してこれと嵌合する内向き突出部分1329cを終端とする。
【0088】
幾つかの実施形態では、組立中に、内向き突出部分1329cがベース終端部1316aを通過して溝部1321と嵌合できるように、クリップ部分1329が弾性的に伸張しうる。他の実施形態では、長手方向延在部分1329bが外向き拡開構成で形成され、組立中に、長手方向延在部分1329bが横側1316bへ内向きに変形するように圧延プロセスが実施される。いずれのケースでも、組立後に、内向き突出部分1329cと溝部1321との嵌合を介してインサート1316がベース1316に保持される。図19に図示されている実施形態において、インサート1326はシール線6を含まない。加えて、インサート1326はベース1316の外側から組み立てられるように構成される。
【0089】
図20を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート1404は、ベース1416とは別に形成されてからバルブシート1404を形成するようにベース1416とともに組み立てられるインサート1426を含むという点で、図19に図示されているバルブシート1304に類似している。インサート1426は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート1426はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート1426は、噴霧孔8が形成されたプレート部分1428と、プレート部分1428と一体的であって長手軸線14に平行な方向にプレート部分1428の周囲から突出するクリップ部分1429とを含む。
【0090】
インサート1426がベース1416とともに組み立てられると、プレート部分1428はベース1416の終端部1416aと当接し、クリップ部分1429はベース1416の横側1416bと当接する。幾つかの実施形態において、クリップ部分1429は、プレート部分1428から軸方向に延出する一つ以上の「フィンガ」(例えば細い延出部)を含みうる。例えば、クリップ部分1429は、ベース1416の横側1416bの一部分を被覆する長手方向延在部分1429bを含みうる。長手方向延在部分1429bは、ベース横側1416bに形成される溝部1421まで延出してこれと嵌合する内向き突出部分1429cを終端とする。幾つかの実施形態では、組立中に、内向き突出部分1429cがベース終端部1416aを通過して溝部1421と嵌合できるようにクリップ部分1429が弾性的に伸張しうる。他の実施形態において、長手方向延在部分1429bは外向き拡開構成で形成され、組立中に、長手方向延在部分1429bが横側1416bへ内向きに変形するように圧延プロセスが実施される。いずれのケースでも、組立後に、内向き突出部分1429cと溝部1421との嵌合を介してインサート1416がベース1416に保持される。図20に図示されている実施形態において、インサート1426はシール線6を含まない。加えて、インサート1426はベース1416の外側から組み立てられるように構成される。
【0091】
図21を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート1504は、溝部1421を含まずにベース1416が形成されて、インサート1426のクリップ部分1429の内向き突出部分1429cがバルブシートベース1416の肩部1425と嵌合できるのに充分な長さで長手方向延在部分1429bが設けられることを除いて、図20に図示されているバルブシート1404に類似している。この実施形態において、インサート1416とベース1416との間には任意で環状シール1502が設けられうる。
【0092】
図22を参照すると、別の代替実施形態バルブシート1604は、内向き突出部分1429cがねじ接続またはバヨネット接続を介して溝部1421と嵌合するように構成されることにより、インサート1416がツイスト動作を使用してベース1416とともに組み立てられる、および/または、ツイストロックまたはカムロック機構を介してベース1416に固定されることを除いて、図20に図示されているバルブシート1404に類似している。この実施形態において、インサート1416とベース1416との間には任意で環状シール1502が設けられうる。
【0093】
図23を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート1704は、ベース1716とは別に形成されてからバルブシート1704を形成するようにベース1716とともに組み立てられるインサート1726を含む。インサート1726は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート1726はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート1726は、ベース1716の終端部1716aと同じ形状および寸法を有してベース1716の終端部1716aと当接するプレートである。ベース1716に組み込まれる特徴に押圧されることにより、インサート1726はベース1716との組立構成に保持される。例えば、図23に図示されている実施形態において、ベース1716の終端部1716aは、終端部1716aから長手方向に突出する柱部または環状リング1721を含む。柱部または環状リング1721は、インサート1726の対向面1729に形成される単数または複数の対応の開口部1728にプレス嵌めか締り嵌めで収容される。
【0094】
図24を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート1804は、ベース1816とは別に形成されてからバルブシート1804を形成するようにベース1816とともに組み立てられるインサート1826を含む。インサート1826は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート1826はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート1826は、ベース1816の終端部1816aよりも小さい周囲寸法を有してベース1816の終端部1816aと当接するプレートである。ベース1816に組み込まれる特徴に押圧されることにより、インサート1826はベース1816との組立構成に保持される。例えば、図24に図示されている実施形態において、ベース1816の終端部1816aは単数または複数の開口部1821を含み、一方でインサート1826の対向面1829は、ベース1816に向かって長手方向に突出する柱部または環状リング1828を含む。単数または複数のベース開口部1821は、プレス嵌めか締り嵌めで対応の柱部または環状リング1828を収容する。
【0095】
図25を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート1904は、ベース1916とは別に形成されてからバルブシート1904を形成するようにベース1916とともに組み立てられるインサート1926を含む。インサート1926は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート1926はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート1926は、ベース1916の終端部1916aよりも大きい周囲寸法を有するプレートである。加えて、インサート1926の周縁部に沿ってリム1928が形成される。リム1928は、インサート1926の対向面1929からベース1916に向かって長手方向に突出する。インサート対向面1929はベース1916の終端部1916aと当接し、ベース1916の終端部1916aはプレス嵌めか公差嵌めでリム1928に収容される。ゆえに、ベース1816に組み込まれる特徴に押圧されることにより、インサート1926はベース1916との組立構成に保持される。幾つかの実施形態では、溶接部1923がリム1928とベース1916との間に設けられ、これはベース1916との組立構成にインサート1926が保持されることをさらに保証する。
【0096】
図26を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2004は、ベース2016とは別に形成されてからバルブシート2004を形成するようにベース2016とともに組み立てられるインサート2026を含む。インサート2026は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート2026はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート2026は、ベース2016の終端部2016aと同じ周囲形状および寸法を有してベース2016の終端部2016aと当接するプレートである。ベース2016に組み込まれる特徴に押圧されることにより、インサート2026がベース2016との組立構成に保持される。例えば、図26に図示されている実施形態において、ベース2016の終端部2016aは単数または複数の開口部2021を含み、一方でインサート2026の対向面2029は、ベース2016に向かって長手方向に突出する柱部または環状リング2028を含む。単数または複数のベース開口部2021は、プレス嵌めか締り嵌めで対応の柱部または環状リング2028を収容する。
【0097】
図27を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2014は、ベース2116とは別に形成されてからバルブシート2104を形成するようにベース2116とともに組み立てられるインサート2126を含む。インサート2126は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート2126はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート2126は、ベース2116の終端部2116aよりも小さい周囲寸法を有してベース2116の終端部2116aと当接するプレートである。ベース2116に組み込まれる特徴に押圧されることにより、インサート2126がベース2116との組立構成に保持される。例えば、図27に図示されている実施形態において、ベース2116の終端部2116aは中央開口部2121を含み、一方でインサート2126の対向面2129は、ベース2116に向かって長手方向に突出する中央突部2128を含む。ベース中央開口部2121は、プレス嵌めか締り嵌めでインサート中央突部2128を収容する。幾つかの実施形態では、インサート2126の周縁部2123とベース終端部2116aとの間に溶接部2123が設けられ、これはインサート2126がベース2116との組立構成に保持されることをさらに保証する。
【0098】
図28を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2204は、ベース2216とは別に形成されてからバルブシート2204を形成するようにベース2216とともに組み立てられるインサート2226を含む。インサート2226は予穿設開口部2217を含み、電気めっきプロセスにおいて予穿設開口部に噴霧孔8が直接形成される。図の実施形態において、インサート2226は、ベース2216の終端部2216aのものより小さい周囲寸法を有してベース2216の終端部2216aと当接するプレートである。インサート2226は、溶接部2223によりベース2116との組立構成に保持される。
【0099】
図29を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2304は、ベース2316とは別に形成されてからバルブシート2304を形成するようにベース2316とともに組み立てられるインサート2326を含む。インサート2326は一つ以上の噴霧孔(不図示)を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート2326はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成には限定されない。インサート2326の周面2327は、空所2324内でインサート2326の機械的保持を行うためにベース2316に形成された空所2324に対して相補的であってこれと協働するテーパ状の外側形状を有する。例えば、内面18に近いインサート2326の部分は、外面22に近いインサート2326の部分より直径が大きい。加えて、インサート2326の外向面2329はベース2316の終端部2316aと同一平面にある。インサート2326はシール線6を含まない。また、インサート2326は、バルブボデーが第1(嵌着)位置にある時にインサート2326とバルブボデー10との間に間隙gを設ける凹状内向面2325を有する。間隙gは、噴射器使用中のコークス形成の削減という結果を生じうる。幾つかの実施形態において、インサート2326の周囲とベース2316との間に溶接部(不図示)が設けられ、これはベース2316との組立構成にインサート2326が保持されることをさらに保証する。
【0100】
図30を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2404は、ベース2416とは別に形成されてからバルブシート2404を形成するようにベース2416とともに組み立てられるインサート2426を含む。インサート2426は一つ以上の噴霧孔(不図示)を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート2426はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート2426の周面2427は、空所内2424でインサート2426の機械的保持を行うためベース2416の空所2424の形状および寸法に対して相補的であってこれと協働する形状および寸法を有する。例えば、インサート2426はプレス嵌めか公差嵌めを介して空所2424内に保持されうる。加えて、インサート2426の外向面2429はベース2416の終端部2416aと同一平面にある。インサート2426はシール線6を含まない。また、インサート2426は、バルブボデーが第1(嵌着)位置にある時にインサート2426とバルブボデー10との間に間隙gを設ける凹状内向面2425を有する。間隙gは噴射器使用中のコークス形成の削減を結果的に生じる。幾つかの実施形態では、溶接部(不図示)がインサート2426の周囲とベース2416との間に設けられ、これはベース2416との組立構成にインサート2426が保持されることをさらに保証する。
【0101】
図31を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2504は、ベース2516とは別に形成されてからバルブシート2504を形成するようにベース2516とともに組み立てられるインサート2526を含む。インサート2526は一つ以上の噴霧孔(不図示)を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート2526はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート2526はベース2516の終端面2516aと当接するプレートであり、インサート2526の周縁部2527は、ベース2516の終端面2516aの形状および寸法と同じである形状および寸法を有する。この実施形態において、インサート2526は溶接部2523を介してベース2516の終端面2516aに保持されうる。図29に図示されている実施形態において、インサート2526はシール線6を含まない。また、インサート2526は、バルブボデーが第1(嵌着)位置にある時にインサート2526とバルブボデー10との間に間隙gを設ける凹状陥部2525を有する。間隙gは、噴射器使用中のコークス形成の削減という結果を生じうる。
【0102】
図32を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2604は、ベース2616とは別に形成されてからバルブシート2604を形成するようにベース2616とともに組み立てられるインサート2626を含む。インサート2626は一つ以上の噴霧孔(不図示)を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されうるが、インサート2626はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート2626のものに対して相補的な形状および寸法を有するベース2616の空所2624へインサート2626を挿入することにより、インサート2626がベース2616とともに組み立てられる。空所2624へのインサート2626の挿入に続いて、空所2624の周囲に沿ってベース2616の終端面2616aにかしめプロセスが適用される。例えば、幾つかの実施形態では、ポンチ(不図示)が表面2616aに押し当てられ、その結果、終端面2616aの部分がインサート2626の外面へ変形される。別の例において、図の実施形態では、終端面2616aから外向きに突出するタブ2621が、インサート2626の外面の上に折り曲げられる(図では矢印で指示)ように変形されうる。ゆえに、インサート2626はベース2616の変形部分を介してベース2616との組立構成に保持される。
【0103】
図32に図示されている実施形態において、インサート2626はシール線6を含む。また、インサート2626は、バルブボデーが第1(嵌着)位置にある時にインサート2626とバルブボデー10との間に間隙gを設ける凹状内向面2625を有する。間隙gは、噴射器使用中にコークス形成を削減する結果を生じうる。
【0104】
図33を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2704は、ベース2716とは別に形成されてからバルブシート2704を形成するようにベース2716とともに組み立てられるインサート2726を含む。インサート2726は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されうるが、インサート2726はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート2726はベース2716の終端面2716aと当接するプレートであり、インサート2726の周縁部2727は、ベース2716の終端面2716aの形状および寸法と同じである形状および寸法を有する。この実施形態において、インサート2726は溶接部2723を介してベース2716の終端面2716aに保持されうる。インサート2726はシール線6を含まない。また、インサート2726は両側で平坦であるので、バルブボデーが第1(嵌着)位置にある時にインサート2726とバルブボデー10との間に間隙gを設ける凹状陥部をインサート2726は有していない。しかしながら、インサート2726とベース2716とは、バルブシート内面18に隣接して配設されるマニホルド空所2724を備えるように構成される。例えば、マニホルド空所2724は、ベース2716の予穿設開口部2717より大きい寸法を有してインサート2726のベース対向面に形成される陥部2728を含みうる。マニホルド空所2724は各噴霧孔8と連通し、間隙gと類似のやり方で噴射器使用中のコークス形成の削減という結果を生じる。
【0105】
図34を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2804は、ベース2816とは別に形成されてからバルブシート2804を形成するようにベース2816とともに組み立てられるインサート2826を含む。図において、インサート2826は長手軸線14を中心として対称的であるが、インサート2826の半分のみが示されている。インサート2826は一つ以上の噴霧孔(不図示)を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート2826はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート2826は、ベース2816の終端部2816aより小さい周囲寸法を有して、ベース2816の終端部2816aと当接するプレートであり、こうしてインサート2826はベース2816の終端部2816aに対して外向きに突出する。締り嵌め、溶接、ねじ嵌合、かしめ、または他の変形等を介したものを含めて、上述の構造または方法のうち一つ以上によりベース2816との組立構成にインサート2826が保持される。インサート2826はシール線6を含まない。加えて、インサート2826は、バルブボデー10が第1(嵌着)位置にある時にインサート2826とバルブボデー10との間に間隙gを設ける凹状内向面2825を有する。間隙gは噴射器使用中のコークス形成の削減という結果を生じうる。
【0106】
図35を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート2904は、ベース2916とは別に形成されてからバルブシート2904を形成するようにリテーナ2940を使用してベース2916とともに組み立てられるインサート2926を含む。インサート2926は一つ以上の噴霧孔(不図示)を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されうるが、インサート2926はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成には限定されない。インサート2926はベース2916の空所2924に配設される。インサート2926の周面2927は、空所2924のものに対して相補的である形状および寸法を有する。幾つかの実施形態において、インサート2926はプレス嵌めか公差嵌めを介して空所2924内に保持されうる。インサート2926が空所2924内に確実に保持されることをさらに保証するのにリテーナ2940が使用される。リテーナ2940はインサート2926の周囲を囲繞して、例えば溶接によりこれに固定される。リテーナ2940は、ベース2916の終端部2916aと当接して、例えば溶接(溶接部2923参照)によりこれに機械的に接続されるバルブシート対向面2942を有する。加えて、インサート2926は、バルブボデー10が第1(嵌着)位置にある時にインサート2926とバルブボデー10との間に間隙gを設ける凹状内向面2925を有する。間隙gは、噴射器使用中のコークス形成の削減という結果を生じうる。
【0107】
図36を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート3004は、ベース3016とは別に形成されてからバルブシート3004を形成するようにリテーナ3040を使用してベース3016とともに組み立てられるインサート3026を含む。インサート3026は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されうるが、インサート3026はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート3026は、ベース3016の空所3024に配設される平坦なプレートである。インサート3026の周面3027は、空所3024のものに対して相補的である形状および寸法を有する。幾つかの実施形態において、インサート3026はプレス嵌めか公差嵌めを介して空所3024内に保持されうる。リテーナ3040は、インサート3026が空所3024内に確実に保持されることをさらに保証するのに使用される。リテーナ3040は、ベース終端部3016aと当接するとともに中央開口部3046を有する端面3042を含む。中央開口部3046は、流体放出を可能にするのに充分大きく、またリテーナ3040がインサート3026を空所3024内に保持できるのに充分小さい寸法を持つ。リテーナ3040は、端面3042から突出するとともに、ベース3016の横側3016bの一部分を囲繞してこれを被覆する側壁3044を含み、例えばねじ山境界面(図示)、カムロック境界面(不図示)、バヨネット境界面(不図示)、または他のツイスト係止境界面により横側3016bに固定される。
【0108】
図37を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート3104は、ベース3116とは別に形成されてからバルブシート3104を形成するようにリテーナ3140を使用してベース3116とともに組み立てられるインサート3126を含む。インサート3126は、電気めっきにより噴霧孔8が形成された予穿設孔を有する平坦なプレートである。インサート3126は、ベース3116の空所3124に配設される。インサート3126の周面3127は、空所3124のものに対して相補的である形状および寸法を有する。ベース3116は、噴霧孔8と整合される予穿設孔3119を含み、こうして燃料が燃料噴射器1から流出できる。幾つかの実施形態において、インサート3126はプレス嵌めか公差嵌めを介して空所3124内に保持されうる。リテーナ3140は、インサート3126が空所3124内に確実に保持されることをさらに保証するのに使用される。リテーナ3140は、インサート3126に対して内向きの箇所でベース内面18に溶接される環状部材でありうる。リテーナ3140はバルブシートおよびシール線6を画定し、流体が噴霧孔8を通過するための中央開口部3146も含む。
【0109】
図38を参照すると、別の代替的実施形態バルブシート3204は、ベース3216とは別に形成されてからバルブシート3204を形成するようにベース3216とともに組み立てられるインサート3226を含む。インサート3226は一つ以上の噴霧孔8を含み、電気鋳造プロセスにおいてニッケルで形成されるが、インサート3226はこの材料または電気鋳造プロセスによる形成に限定されない。インサート3226は、ベース3216の終端面3216aと当接するプレートであり、インサート3226の周縁部3227は、ベース3216の終端面3216aの形状および寸法と同じである形状および寸法を有する。この実施形態において、インサート3226は溶接部3223を介してベース3216の終端面3216aに保持されうる。この実施形態において、ベース3216は、インサート内面3225がバルブシートを画定してシール線6を含むのに充分なほど先端が切除されている。加えて、インサート内面3225は、バルブボデーが第1(嵌着)位置にある時にインサート3226とバルブボデー10との間に間隙gを設ける凹所を含む。間隙gは、噴射器使用中のコークス形成の削減という結果を生じうる。
【0110】
図39を参照すると、噴射器4000は、管形ハウジング4002が前出の実施形態よりもバルブシート終端部4016aに向かって長手方向にさらに延在する代替的なバルブシート4004を含む。この図で、像の右側は従来の噴射器構成を表し、一方で像の左側は噴射器4000を表す。噴射器4000において、ベース4016はハウジング4002に囲繞され、インサート4026(噴射孔は不図示)はベース4016の終端部4016aとハウジング4002とに固着されている。インサート4026は模式的に図示されており、前出の実施形態のいずれかの特徴またはこれらの組み合わせを使用して構成されうる。
【0111】
図40を参照すると、噴射器4100は、管形ハウジング4102が前出実施形態よりもバルブシート終端部4116aに向かって長手方向にさらに延在する代替的なバルブシート4104を含む。この図で、像の右側は従来の噴射器構成を表し、一方で像の左側は噴射器4100を表す。噴射器4100ではベースが省略され、インサート4126はシール線6とともに噴射孔(不図示)を含むバルブシートとなる。インサート4126はハウジング4102の終端部4002aに固着される。インサート4126は図の構成に限定されず、前出の実施形態のいずれかの特徴またはその組み合わせを使用して構成されうる。
【0112】
図41を参照すると、噴射器4200は、菅形ハウジング4202が噴射器4200の終端部まで延在する代替的なバルブシート4204を含む。噴射器4200では、ベース4216とインサート4226とはハウジング4202に囲繞され、インサート4026(噴霧孔は不図示)はベース4216の終端部4216aに固着される。幾つかの実施形態において、ベース4216はハウジング4202にプレス嵌めされうる。インサート4226は図の構成に限定されず、前出の実施形態のいずれかの特徴またはその組み合わせを使用して構成されうる。図41に示されているアセンブリは、多数の単純な構成要素で製作されうる。
【0113】
バルブシートベース(すべての実施形態)は本願では金属粉末射出成形プロセスにより製造されるものとして記載されているが、バルブシートベースはこのプロセスによる製造に限定されない。例えば、幾つかの実施形態において、バルブシートベースは鍛造または機械加工されうる。バルブシートベースを形成するのに使用される材料は、特定の用途の要件のみにより限定される。
【0114】
インサート(すべての実施形態)は本願では金属で形成されるものとして記載されているが、インサートは金属による形成に限定されず、代替的に非金属、例えばプラスチックまたはセラミックから製作されうる。
【0115】
図1~41に関して本願で記載された特徴は、バルブシートベースとバルブシートインサートとの間に信頼できる固着接続を有する高圧燃料噴射器を形成するように、個々に、または組み合わせで使用されうる。
【0116】
燃料噴射器およびバルブシートの選択的な例示的実施形態が幾らか詳細に上で記載されている。燃料噴射器およびバルブシートを明示するのに必要だと考えられる構造のみがここに記載されていることが理解されるべきである。他の従来構造と、燃料噴射器およびバルブシートの付随的および補助的な構成要素の構造は、当業者には既知であって理解されていると推定される。また、燃料噴射器およびバルブシートの実施例が上に記載されているが、燃料噴射器およびバルブシートは上に記載された実施例に限定されず、請求項に提示される燃料噴射器およびバルブシートから逸脱することなく様々な設計変更が行われうる。
【符号の説明】
【0117】
1 高圧燃料噴射器
2 燃料噴射器ハウジング
4,104,204,304,404,504,604,704,804,904,1004,1204,1304,1404,1504,1604,1704,1804,1904,2004,2104,2204,2304,2404,2504,2604,2704,2804,2904,3004,3104,3204,4002,4104 バルブシート
6 シール線
8 噴霧孔
10 バルブボデー
12 バルブニードル
14 長手軸線
16,116,216,316,416,516,616,716,816,916,1016,1116,1216,1216’,1316,1416,1716,1816,1916,2016、2116,2216,2316,2416,2516,2616,2716,2816,2916,3016,3116,3216,4016,4216 ベース
17,1128,1728,1821,2021 開口部
18 ベース部分の凹状内面
20 リブ
22 バルブシートの外面
26,126,226,326,426,526,626,726,826,926,1026,1126,1226,1226’,1326,1426,1726,1826,1926,2026,2126,2226,2326,2426,2526,2626,2726,2826,2926,3026,3126,3226,4026,4126,4226 インサート
30 基材
119 予備孔
124,424,524,624,724,824,1024,1124,1224,1324,2324,2424,2624,2724,2924,3024,3124 空所
221,1021 相補的表面特徴
228,1028 表面特徴
427 外面
1121 柱部
1129 フランジ
1221a,1221a’,1221b,1221b’ 非線形部分
1221c,1221c’ シールエッジ
1316a,1416a,1716a,1816a,1916a,2016a,2116a,2216a,2516a,2616a,2916a,3016a,4002a,4016a,4116a 終端部
1316b,1416b,3016b 横側
1321,1421 溝部
1328 中央部分
1329,1429 クリップ部分
1329a 径方向延在部分
1329b,1429b 長手方向延在部分
1329c,1429c 内向き突出部分
1425 肩部
1428 プレート部分
1502 環状シール
1721,1828,2028,2128 環状リング
1729,1829,1929,2029,2129 対向面
1923,2123,2223,2523,2723,3223 溶接部
1928 リム
2217,2717 予穿設開口部
2325,2425,2925 凹状内向面
2327,2427,3027,3127 周面
2329,2429 外向面
2525 凹状陥部
2527,2727,2827 周縁部
2621 タブ
2716a,2816a 終端面
2940,3040,3140 リテーナ
2942 バルブシート対向面
3042 端面
3044 側壁
3046,3146 中央開口部
3119 予穿設孔
3225 インサート内面
4000,4100,4200 噴射器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41