(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】試料保持具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2020557832
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046640
(87)【国際公開番号】W WO2020111194
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018225129
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹森 啓真
【審査官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-028448(JP,A)
【文献】特開2002-313781(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132909(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面が試料保持面であって、該一方の主面から他方の主面まで繋がる流路を有する板状の基体と、
一方の主面が前記基体の前記他方の主面に接合されて、該一方の主面に開口する孔部を有する支持体と、
該孔部に位置し、前記流路に連続する貫通孔を有する筒状部材と、
該筒状部材の外周面と前記孔部の内周面との間に位置する環状部材と、を備えており、
該環状部材は、前記筒状部材を囲み、該筒状部材を前記支持体に固定して
おり、
前記孔部の前記内周面は、前記支持体の前記一方の主面に開口する部位から前記環状部材に接する部位まで、樹脂部材で覆われていることを特徴とする試料保持具。
【請求項2】
前記環状部材は、前記筒状部材および前記支持体よりも弾性率が小さいことを特徴とする請求項1に記載の試料保持具。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記外周面に凹部を有し、
前記環状部材は、前記凹部に位置していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の試料保持具。
【請求項4】
前記孔部の前記内周面と前記筒状部材の前記外周面との間には隙間があることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の試料保持具。
【請求項5】
前記孔部の前記内周面は、全体が前記樹脂部材で覆われていることを特徴とする請求項
1~請求項4のいずれかに記載の試料保持具。
【請求項6】
前記基体と前記支持体とは、前記樹脂部材と同じ材料からなる接合材によって接合されていることを特徴とする請求項
1~請求項5のいずれかに記載の試料保持具。
【請求項7】
前記筒状部材および前記環状部材は、前記樹脂部材によって固定されており、
該樹脂部材は、前記筒状部材および前記環状部材よりも弾性率が小さいことを特徴とする請求項
1~請求項6のいずれかに記載の試料保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体集積回路の製造工程または液晶表示装置の製造工程等において用いられる、半導体ウエハ等の試料を保持する試料保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等に用いられる試料保持具として、例えば、特許文献1に記載の静電チャックが知られている。特許文献1に記載の静電チャックは、絶縁体と金属ベースとを備え、絶縁体と金属ベースとを貫く貫通孔が設けられており、貫通孔には、絶縁体と金属ベースとの境目部分を覆う絶縁スリーブが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の試料保持具は、一方の主面が試料保持面であって、該一方の主面から他方の主面まで繋がる流路を有する板状の基体と、一方の主面が前記基体の前記他方の主面に接合されて、該一方の主面に開口する孔部を有する支持体と、該孔部に位置し、前記流路に連続する貫通孔を有する筒状部材と、該筒状部材の外周面と前記孔部の内周面との間に位置する環状部材と、を備えており、該環状部材は、前記筒状部材を囲み、該筒状部材を前記支持体に固定しており、前記孔部の前記内周面は、前記支持体の前記一方の主面に開口する部位から前記環状部材に接する部位まで、樹脂部材で覆われている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【
図2】試料保持具の領域Aを拡大した部分拡大断面図である。
【
図3】試料保持具の他の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【
図4】試料保持具の他の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、試料保持具100について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の試料保持具の一実施形態を示す断面図である。試料保持具100は、絶縁基体1と、支持体2と、接合材3と、環状部材4と、多孔質部材5と、スリーブ10と、を備える。
【0007】
絶縁基体1は、第1面(一方の主面)1aおよび該第1面1aと反対側の第2面(他方の主面)1bを有するセラミック体であり、第1面1aが、試料を保持する試料保持面である。絶縁基体1は、板状の部材であって、外形状は限定されず、例えば円板状または角板状であってもよい。
【0008】
絶縁基体1は、例えばセラミック材料で構成される。セラミック材料としては、例えばアルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素またはイットリア等とすることができる。絶縁基体1の外形寸法は、例えば直径(または辺長)を200~500mm、厚みを2~15mmにすることができる。
【0009】
絶縁基体1を用いて試料を保持する方法としては様々な方法を用いることができる。本例の試料保持具100は、静電気力によって試料を保持する静電チャックである。そのため、試料保持具100は絶縁基体1の内部に吸着電極6を備えている。吸着電極6は、2つの電極を有している。2つの電極は、一方が電源の正極に接続され、他方が負極に接続される。2つの電極は、それぞれ略半円板状であって、半円の弦同士が対向するように、絶縁基体1の内部に位置している。これら2つの電極が合わさって、吸着電極6全体の外形が円形状となっている。この吸着電極6の全体による円形状の外形の中心は、同じく円形状のセラミック体の外形の中心と同一に設定できる。吸着電極6は、例えば、金属材料を有する。金属材料としては、例えば、白金、タングステンまたはモリブデン等の金属材料を有する。
【0010】
試料保持具100は、例えば、試料保持面である絶縁基体1の第1面1aよりも上方においてプラズマを発生させて用いられる。プラズマは、例えば、外部に設けられた複数の電極間に高周波を印加することによって、電極間に位置するガスを励起させ、発生させることができる。
【0011】
支持体2は、金属製であり、絶縁基体1を支持するための部材である。金属材料としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。支持体2の外形状は特に限定されず、円形状または四角形状であってもよい。支持体2の外形寸法は、例えば直径(または辺長)を200~500mmに、厚さを10~100mmにすることができる。支持体2は、絶縁基体1と同じ外形状であってもよく、異なる外形状であってもよく、同じ外形寸法であってもよく、異なる外形寸法であってもよい。
【0012】
支持体2と絶縁基体1とは、接合材3を介して接合されている。具体的には、支持体2の第1面2aと絶縁基体1の第2面1bとが、接合材3によって接合されている。接合材3としては、例えば、樹脂材料の接着剤を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂などを用いることができる。
【0013】
図2,3に示すように、支持体2には、第1面(一方の主面)2aから該第1面2aと反対側の第2面(他方の主面)2bまで貫通する孔部7が設けられている。また、絶縁基体1には、第1面1aから第2面1bまで貫通する貫通孔9が設けられている。孔部7と貫通孔9とは連通しており、絶縁基体1の第1面1aから、接合材3を通って、支持体2の第2面2bまで連続した孔となっている。孔部7および貫通孔9は、例えば、ヘリウム等のガスを、支持体2の第2面2b側から試料保持面である絶縁基体1の第1面1a側に流入させるためのガス流入孔として設けられている。
【0014】
貫通孔9は、絶縁基体1の少なくとも一部において支持体2の孔部7の孔径よりも孔径が小さくなっている。本例の試料保持具100においては、孔部7は、支持体2の第2面2bから第1面2aにかけて孔径が一定の円柱状である。また、貫通孔9は、絶縁基体1中においては、絶縁基体1の第2面1bから第1面1aにかけて孔径が一定の円柱状である。なお、本実施形態では、絶縁基体1の第2面1bにおいて、支持体2の孔部7との連通のために、孔部7と同径の円柱状であって、第1面1a側に凹んだ凹所8を設けている。
【0015】
試料保持具100は、孔部7に位置するスリーブ10を備える。スリーブ10は、孔部7の中心軸線に沿って延びる円筒状を有しており、絶縁性材料からなる筒状部材である。スリーブ10は、孔部7の内部空間において、金属材料が露出する内周面を覆っている。スリーブ10を孔部7内に設けることで、スリーブ10の内部空間と貫通孔9とが連通することになり、上記のガス流入孔を構成している。
【0016】
スリーブ10を構成する絶縁性材料としては、例えば、セラミック材料を用いることができる。セラミック材料としては、例えば、アルミナまたは窒化アルミニウムが挙げられる。
【0017】
多孔質部材5は、試料保持面である第1面1aより上方においてプラズマを発生させたときに、プラズマが貫通孔9を通って支持体2側にまで入り込まないようにするために設けられている。多孔質部材5としては、例えば、アルミナ等のセラミック多孔質材料を用いることができる。多孔質部材5は、孔部7の内部に位置している。多孔質部材5は、上面から下面に気体を流すことが可能な程度の気孔率を有している。そのため、孔部7の内部に多孔質部材5を位置させることによって、貫通孔9に気体を流しつつも、プラズマが支持体2側に到達してしまうおそれを低減する。多孔質部材5の気孔率としては、例えば、40~60%に設定できる。
【0018】
また、スリーブ10は下端の内径よりも、上端の内径が大きくてもよい。これにより、スリーブ10の上端側に、多孔質部材5をスリーブ10で囲むように位置させることができる。プラズマが多孔質部材5まで到達しても、スリーブ10によって支持体2との短絡を防ぐことができる。
【0019】
試験や処理のために保持した試料を加熱する場合があるが、従来の静電チャックでは、絶縁スリーブと金属ベースとでは熱膨張率が異なるので、絶縁スリーブと金属支持体との間に発生する熱応力によって絶縁スリーブの破損などが生じていた。
【0020】
本実施形態では、スリーブ10の外周面10aと孔部7の内周面7aとの間に位置する環状部材4を設けている。環状部材4は、スリーブ10を囲み、スリーブ10を支持体2に固定している。この環状部材4は、環の中心軸線が、貫通孔9およびスリーブ10の中心軸線と平行または一致するようにスリーブ10に外嵌されている。スリーブ10に外嵌された状態の環状部材4は、その外径が、孔部7の内径よりもわずかに大きくなっている。孔部7内に嵌入された状態で、環状部材4によって孔部7の内周面7aにスリーブ10が固定される。スリーブ10の外周面10aと孔部7の内周面7aとの間には隙間があり、外周面10aと内周面7aとが非接触に保たれる。これにより、試験時や試料の処理時に支持体2が加熱された場合でも、環状部材4によって、スリーブ10の外周面10aと孔部7の内周面7aとの間に発生する熱応力を低減することができる。
【0021】
環状部材4を構成する絶縁材料としては、弾性率がスリーブ10および支持体2よりも弾性率が小さく、プラズマに耐性を有するものであれば使用することができ、例えば、フッ素性樹脂である。環状部材4の形状は、環状であって、例えば、中心軸線に平行な切断面における断面形状が円形状である。なお、断面形状は、円形に限定されず、矩形状や多角形状であってもよい。
【0022】
環状部材4は、上記の熱応力低減効果に加えて、プラズマ発生用ガスがスリーブ10の外周面10aと孔部7の内周面7aとの間に漏れ出してしまったときのシール効果も有している。上記のように、支持体2が金属製で、スリーブ10がセラミックス製であると、外周面10aと内周面7aとの間には微小な隙間ができやすくガスの漏れが生じる場合がある。環状部材4を設けることで、外周面10aと内周面7aとの間をシールすることができる。
【0023】
スリーブ10は、外周面10aに凹部11を有しており、環状部材4は、この凹部11に位置している。スリーブ10に外嵌された環状部材4は、外周面10a上で軸線方向に位置ずれする場合がある。スリーブ10に凹部11を設けることによって、凹部11の位置に環状部材4が固定されて位置ずれが防止される。
【0024】
孔部7は、支持体2の全面にわたって設けられており、プラズマ発生用ガスを、絶縁基体1の第1面1aに均一に供給することができる。環状部材4は、シール機能を有しており、漏れ出そうとするガスを留めておくことができる。環状部材4の位置がそれぞれの孔部7においてずれていた場合に、漏れ出すガスの量がばらついて、第1面1aに供給されるガスの量が孔部7ごとにばらついてしまう。スリーブ10に凹部11を設けておき、複数のスリーブ10において、いずれも凹部11の位置を同じとする。これにより、環状部材4の位置を揃え、各孔部7から第1面1aに供給されるガスの量を均一にすることができる。
【0025】
図3,4は、試料保持具の他の実施形態を示す部分拡大断面図である。以下の各実施形態では、スリーブ10の外周面10aと孔部7の内周面7aとの間に樹脂部材12が設けられている。樹脂部材12以外の構成については、
図1,2で示した上記実施形態の試料保持具100と同じであるので、説明は省略する。
【0026】
図3に示す実施形態では、孔部7の内周面7aが、絶縁基体1に開口する部位から環状部材4に接する部位まで、樹脂部材12で覆われている。プラズマ発生用ガスは、スリーブ10の外周面10aと孔部7の内周面7aとの間に漏れ出す場合、多孔質部材5付近から漏れだす可能性が高い。このようなガスの漏れによって、発生したプラズマによって孔部7の内周面7aと短絡してしまう。孔部7の内周面7aのうち上部側を樹脂部材12で覆うことで短絡を低減することができる。
【0027】
スリーブ10の外周面10aと孔部7の内周面7aとの間が埋まっていたとしても、樹脂部材12は、スリーブ10および支持体2よりも弾性率が小さいので、熱応力の低減効果が妨げられることはない。
【0028】
図4に示す実施形態では、孔部7の内周面7a全体が樹脂部材12で覆われている。プラズマ発生用ガスの漏れは、必ずしも上部側で生じるとは限らないので、孔部7の内周面7aの全体を樹脂部材12で覆うことで、短絡を低減することができる。上記と同様に、スリーブ10の外周面10aと孔部7の内周面7aとの間が埋まっていたとしても、樹脂部材12は、スリーブ10および支持体2よりも弾性率が小さいので、熱応力の低減効果が妨げられることはない。
【0029】
樹脂部材12は、スリーブ10と支持体2とを接合することが可能な樹脂材料であれば使用することができる。また、樹脂部材12の樹脂材料を、支持体2と絶縁基体1とを接合する接合材3と同じ樹脂材料とすることもできる。樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂などを用いることができる。同じ樹脂材料とすることで、樹脂部材12と接合材3との界面での剥がれなどの発生を抑制することができる。
【0030】
スリーブ10の外周面10aと孔部7の内周面7aとの間に樹脂部材12が設けられることで、スリーブ10と環状部材4とは、樹脂部材12によって固定されることになる。樹脂部材12は、上記のようにたとえば、シリコーン樹脂などであり、環状部材4は、フッ素性樹脂であり、樹脂部材12が環状部材4よりも弾性率が小さい。これにより、環状部材4による熱応力の緩和効果を妨げることがない。
【0031】
本開示は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0032】
1 絶縁基体
1a 第1面
1b 第2面
2 支持体
2a 第1面
2b 第2面
3 接合材
4 環状部材
5 多孔質部材
6 吸着電極
7 孔部
7a 内周面
8 凹所
9 貫通孔
10 スリーブ
10a 外周面
11 凹部
12 樹脂部材
100 試料保持具