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特許7157839癌治療のための免疫療法とサイトカイン制御療法との組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】癌治療のための免疫療法とサイトカイン制御療法との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20221013BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20221013BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 38/55 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221013BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221013BHJP
   A61P 31/16 20060101ALN20221013BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20221013BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20221013BHJP
   A61P 17/04 20060101ALN20221013BHJP
   A61P 1/18 20060101ALN20221013BHJP
   A61P 17/02 20060101ALN20221013BHJP
   A61K 47/68 20170101ALN20221013BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
A61K35/15 Z
A61K35/17 A
A61K45/00
A61K38/55
A61P35/00
A61K39/395 T
A61P37/06
A61P35/02
A61P29/00
A61P31/16
A61P11/00
A61P19/02
A61P17/04
A61P1/18
A61P17/02
A61K47/68
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021048176
(22)【出願日】2021-03-23
(62)【分割の表示】P 2017543802の分割
【原出願日】2016-02-18
(65)【公開番号】P2021100955
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】62/117,752
(32)【優先日】2015-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/127,218
(32)【優先日】2015-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/148,227
(32)【優先日】2015-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/159,365
(32)【優先日】2015-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】321012580
【氏名又は名称】エンリヴェックス セラピューティクス アールディーオー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノビク、シャイ
(72)【発明者】
【氏名】メヴォラク、ドロール
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/011984(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/087408(WO,A1)
【文献】特表2003-534281(JP,A)
【文献】特表2010-526153(JP,A)
【文献】国際公開第2013/155375(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/151085(WO,A1)
【文献】EMBO Mol.Med.,2011,3(2),p.102-114
【文献】J.Clin.Invest.,2013,123(7),p.2773-2774
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)癌療法を受けている対象における死亡率を減少させるための併用療法用の組成物キットを製造するためのアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の使用であって、
前記組成物キットは、
キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)と、
アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清と、
薬学的に許容可能な賦形剤とを含み、
前記CAR-T細胞と、前記アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清とは、予め混合されて1つの組成物に含まれるか、または互いに別個の組成物に含まれ、
前記アポトーシス細胞が、初期アポトーシス状態の単核アポトーシス細胞を含み、前記アポトーシス細胞は、40%以上がアネキシン-Vに対して陽性に染色され、15%以下がヨウ化プロピジウムに対して陽性に染色されることを特徴とする使用。
【請求項2】
キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)癌療法を受けている対象における体重減少を少なくするための併用療法用の組成物キットを製造するためのアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の使用であって、
前記組成物キットは、
キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)と、
アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清と、
薬学的に許容可能な賦形剤とを含み、
前記CAR-T細胞と、前記アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清とは、予め混合されて1つの組成物に含まれるか、または互いに別個の組成物に含まれ、
前記アポトーシス細胞が、初期アポトーシス状態の単核アポトーシス細胞を含み、前記アポトーシス細胞は、40%以上がアネキシン-Vに対して陽性に染色され、15%以下がヨウ化プロピジウムに対して陽性に染色されることを特徴とする使用。
【請求項3】
前記アポトーシス細胞が、前記対象の自家由来であることを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記アポトーシス細胞が、プールされた第三者のドナー細胞であることを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記組成物キットの組成物の前記対象への投与は、前記CAR-T細胞癌療法の前、同時、または後に実施されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの使用。
【請求項6】
前記アポトーシス細胞上清が、アポトーシス細胞白血球上清を含み、
前記白血球が、食細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、B細胞、T細胞、及びNK細胞からなる群より選択されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記組成物キットの組成物の前記対象への投与は、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤の前記対象への投与とともに実施されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記追加的な薬剤の前記対象への投与が、前記CAR-T細胞癌療法の前、同時、または後に実施されることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記癌が、固形腫瘍を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記固形腫瘍が、副腎皮質腫瘍(腺腫及び癌腫)、癌腫、直腸結腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍、神経芽細胞腫、卵巣癌、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、横紋筋肉腫以外の軟部肉腫、ウィルムス腫瘍、乳房腫瘍、前立腺癌、子宮頸癌、結腸癌、脳腫瘍、膵臓腫瘍、または直腸結腸腫瘍のいずれかを含むことを特徴とする請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記癌が、血液癌を含むことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記血液癌が、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病または慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群、または骨髄増殖性腫瘍を含むことを特徴とする請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減するための組成物及び方法に関する。さらに、本開示は、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームが発生している対象におけるサイトカイン産生を低減または抑制するための組成物及び方法に関する。本開示に係る方法は、CAR-T細胞療法と組み合わせて、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを有する。
【背景技術】
【0002】
癌の標準的な治療法は、外科手術、化学療法、及び放射線療法であるが、例えば標的免疫療法などの改善された方法が、現在開発され試験されている。1つの有望な技術は、養子細胞移植(ACT)を使用し、腫瘍を認識して攻撃するように免疫細胞を改変する。ACTの一例では、患者自身またはドナーの細胞障害性T細胞を遺伝子操作し、腫瘍細胞の表面に発現した腫瘍特異性抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR-T細胞)が発現するようにする。このようなCAR-T細胞は、発現後、腫瘍特異性抗原を発現する細胞に対してのみ細胞障害性を有する。CAR-T細胞療法が、とりわけ進行した急性リンパ性白血病(ALL)及びリンパ腫の制御に対して大きな可能性を有していることが、臨床試験により示されている。
【0003】
しかしながら、CAR-T細胞療法または別の免疫療法を受けている患者の一部には、サイトカイン放出症候群(CRS)と呼ばれる、生命を脅かす可能性のある危険な副作用が発生することがある。CRSでは、患者に投与され活性化されたT細胞によって全身性炎症反応が発生し、血流中にサイトカインが急激かつ大量に放出され、危険な低血圧、高熱、震えが生じる。
【0004】
CRSの重症例では、サイトカインと白血球との間に正のフィードバックループが存在しサイトカイン濃度(レベル)が大幅に上昇するサイトカインストーム(別名、サイトカインカスケードまたは高サイトカイン血症)が患者に生じる。これにより、例えば、心機能障害、成人呼吸窮迫症候群、神経毒性、腎不全、肝不全、肺水腫、及び播種性血管内凝固症候群などの生命を脅かす可能性のある合併症が発生する恐れがある。
【0005】
例えば、最新のフェーズI試験において、T細胞表面のCD28受容体と結合するモノクローナル抗体TGN1412が投与された6名の患者に、重度のサイトカインストーム及び多臓器不全が生じた。これは、TGN1412投与量が、動物において安全であることが分かっている量よりも500倍低いという事実に関わらず起こった(St. Clair EW: The calm after the cytokine storm: Lessons from the TGN1412 trial. J Clin Invest 118: 1344-1347, 2008)。
【0006】
今日まで、コルチコステロイドを用いた生物学的療法、例えば抗IL-6療法及び抗炎症薬が、CAR-T細胞療法を受けている患者におけるサイトカイン放出症候群を制御すると考えられえていた。しかしながら、ステロイドは、CAR-T細胞の活性及び/または増殖に影響を与え、患者を敗血症及び日和見感染症の危険に曝す。抗炎症薬は、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの制御に効果的ではない。サイトカインストームでは非常に多数のサイトカインが放出されるが、患者への抗炎症薬の投与には限界があるためである。したがって、CAR-T細胞療法の可能性を実現するために、サイトカイン放出症候群、特にサイトカインストームを制御するための新規なストラテジーが求められている。
【0007】
サイトカインストームはまた、他の感染性または非感染性刺激に由来する。サイトカインストームでは、例えば、インターロイキン1(IL-1)、IL-6、ガンマインターフェロン(γ-IFN)などの様々な炎症誘発性サイトカインが放出され、それにより、低血圧症、出血、そして最終的には多臓器不全が発生する。1918年のH1N1インフルエンザ・パンデミック及びつい最近の鳥インフルエンザH5N1の感染における、健康な免疫系を有していると思われる若年層における比較的高い死亡率は、サイトカインストームに起因するものである。この症候群はまた、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エプスタイン・バール・ウイルス関連血球貪食症候群、グラム陰性敗血症、マラリア、及び他の様々な感染症(例えばエボラ感染症)の進行症状または末期症状として起こることも知られている。
【0008】
サイトカインストームはまた、例えば、急性膵炎、重度の火傷若しくは外傷、または急性呼吸窮迫症候群などの感染以外の原因に由来する。そのため、サイトカイン放出症候群、特にサイトカインストームを制御するための新規なストラテジーが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一態様では、ここで開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)と、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む組成物である。関連する一態様では、アポトーシス細胞は、初期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。関連する別の態様では、アポトーシス細胞は、プールされた第三者のドナー細胞を含む。関連する一態様では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を用意するステップと、(b)アポトーシス細胞を培養するステップと、(c)培養したアポトーシス細胞から上清を分離するステップとを有する方法により得られる。関連する一態様では、アポトーシス細胞上清はアポトーシス細胞白血球上清であり、ステップ(b)の代わりに、(d)白血球を用意するステップと、(e)任意選択で、アポトーシス細胞及び白血球を洗浄するステップと、(f)アポトーシス細胞及び白血球を共培養するステップとを有する。関連する別の態様では、用意される白血球は、食細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、B細胞、T細胞、及びNK細胞からなる群より選択される。
【0010】
関連する一態様では、CAR-T細胞と、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清とは、互いに別個の組成物に含まれる。
【0011】
関連する一態様では、本発明に係る組成物は、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤をさらに含む。関連する別の態様では、追加的な薬剤またはそれらの任意の組み合わせは、CAR-T細胞を含む組成物に含まれるか、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含む組成物に含まれるか、またはそれらとは別個の組成物に含まれる。
【0012】
一態様では、ここで開示されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS:Cytokine Release Syndrome)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法であって、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを有し、それにより、前記対象のサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法である。関連する一態様では、アポトーシス細胞は、初期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。関連する別の態様では、アポトーシス細胞は、前記対象の自家由来であるか、またはプールされた第三者のドナー細胞を含む。関連する別の態様では、前記組成物を前記対象に投与する前記ステップは、CAR-T細胞癌療法の前、同時、または後に実施される。関連する別の態様では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を用意するステップと、(b)アポトーシス細胞を培養するステップと、(c)培養したアポトーシス細胞から上清を分離するステップとを有する方法により得られる。関連する別の態様では、アポトーシス細胞上清はアポトーシス細胞白血球上清であり、ステップ(b)の代わりに、(d)白血球を用意するステップと、(e)任意選択で、アポトーシス細胞及び白血球を洗浄するステップと、(f)アポトーシス細胞及び白血球を共培養するステップとを有する。関連する別の態様では、用意される白血球は、食細胞、マクロファージ、樹状細胞、単球、B細胞、T細胞、及びNK細胞からなる群より選択される。
【0013】
関連する別の態様では、本開示に係る方法は、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤を対象に投与するステップをさらに有する。関連する別の態様では、前記追加的な薬剤を対象に投与する前記ステップは、CAR-T細胞癌療法の前、同時、または後に実施される。関連する別の態様では、CAR-T細胞癌療法を受けているがアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清が投与されていない対象と比較して、少なくとも1つの炎症誘発性サイトカインの濃度(レベル)が減少する。
【0014】
一態様では、ここで開示されるのは、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームが発生しているか、またはサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームが発生しやすい対象におけるサイトカイン産生を低減または抑制する方法であって、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを有し、それにより、前記対象のサイトカイン産生を低減または抑制する方法である。関連する一態様では、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームが発生しているか、またはサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームが発生しやすいが、前記アポトーシス細胞または前記アポトーシス細胞上清が投与されていない対象と比較して、少なくとも1つの炎症誘発性サイトカインの産生が低減または抑制される。関連する別の態様では、前記対象は、CAR-T細胞癌療法を受けており、当該方法は、CAR-T細胞癌療法の効果を低下させない。
【0015】
関連する一態様では、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、感染性の刺激、疾病、または症候群を含む。関連する別の態様では、感染性の刺激、疾病、または症候群は、インフルエンザ、鳥インフルエンザ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、エプスタイン・バール・ウイルス関連血球貪食症候群(HLH)、敗血症、グラム陰性敗血症、マラリア、エボラウイルス、天然痘ウイルス、全身型グラム陰性菌感染症、またはヤーリッシュ・ヘルクスハイマー症候群を含む。
【0016】
関連する一態様では、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、非感染性の刺激、疾病、または症候群を含む。関連する別の態様では、非感染性の刺激、疾病、または症候群は、血球貪食症候群(HLH)、突発性HLH、マクロファージ活性化症候群(MAS)、慢性関節炎、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、スティル病、クリオピリン関連周期性発熱症候群(CAPS)、家族性寒冷自己炎症症候群(FCAS)、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、慢性乳児神経皮膚関節炎症候群(CINCA)、NLRP3遺伝子における遺伝的または新生の機能獲得変異を含むクリオピリン関連周期性発熱症候群、遺伝性自己炎症性疾患、急性膵炎、重症熱傷、外傷、急性呼吸窮迫症候群、免疫療法に起因するもの、モノクローナル抗体療法、薬物使用に起因するもの、毒素吸入に起因するもの、リポ多糖(LPS)に起因するもの、グラム陽性毒素に起因するもの、真菌毒素に起因するもの、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)に起因するもの、またはRIG-1遺伝子発現の調節に起因するものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示の主題は、本明細書の結論部分に、具体的に指摘されかつ明確に請求記載されている。しかしながら、本開示に係る組成物及び方法は、構成及び操作方法の両方に関して、その目的、特徴、及び利点と共に、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより十分に理解できるであろう。
【0018】
図1A】標準的なCAR-T細胞療法を示す概略図。
図1B】患者自身の細胞(自己由来)を用いてアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を産生する患者における、安全かつ有効なCAR-T細胞癌療法の実施形態を示す概略図。
図2】ドナー細胞を用いてアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を産生する患者における、安全かつ有効なCAR-T細胞癌療法の実施形態を示す概略図。
図3】形質導入されたT4+CAR-T細胞の抗CD124分析のフローサイトメトリー結果を示すT細胞の形質導入の検証を示す図。
図4】T4+CAR-T細胞は、SKOV3-luc卵巣腺癌細胞の増殖を減少させた。SKOV3-luc細胞の単層を非形質導入T細胞またはT4+CAR-T細胞のいずれかによって培養した細胞障害性アッセイの結果を示すグラフ図。
図5】アポトーシス細胞は、T4+CAR-T細胞の抗腫瘍活性を無効化しない。SKOV3-luc細胞の単層を、ビヒクル(ハルトマン溶液)、アポトーシス細胞(ApoCell)、アポトーシス細胞の上清(ApoSup)、または共培養したアポトーシス細胞及び単球/マクロファージの上清(ApoMon Sup)の存在下で、非形質導入T細胞またはT4+CAR-T細胞のいずれかと共に培養した、細胞毒性アッセイに基づいた結果のグラフ図。
図6】細胞毒性作用の間に高レベルで分泌されるIL-6は、アポトーシス細胞によって減少させられる。SKOV3-luc及びヒト単球/マクロファージの共培養物を、アポトーシス細胞(ApoCell)、ApoCell上清(ApoSup)、またはアポトーシス細胞及び単球/マクロファージ共培養物(ApoMon Sup)に曝露した結果を示すグラフ図。
図7】CAR-T細胞療法中のLPS曝露後のアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞及び単球の共培養物の効果を示すグラフ図。リポ多糖類(LPS)を細胞障害アッセイに添加すると、IL-6の非常に高い分泌が証明された。結果は、アポトーシス細胞(Apocell)、またはアポトーシス細胞の上清(ApoSup)、またはアポトーシス細胞及び単球/マクロファージ(ApoMon Sup)の共培養物の上清への曝露がIL-6を減少させ、IL-6は許容レベルまで低下したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
説明の簡潔さ及び明確さを目的として、図中の要素は、必ずしも正確な縮尺で図示されているとは限らないことを理解されたい。例えば、要素のいくつかの寸法は、明確さを目的として、他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに、適切と考えられる場合、対応する要素または類似の要素を示すために、参照符号が複数の図面で繰り返し使用される。
【0020】
本出願は、米国特許仮出願第62/117,752号(2015年2月18日出願)、同第62/127,218号(2015年3月2日出願)、同第62/148,227号(2015年4月16日出願)、及び同第62/159,365号(2015年5月11日出願)の利益を主張する。上記出願の開示内容の全体は、この参照により本明細書に援用される。
【0021】
以下の詳細な説明において、本発明の十分な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が示される。しかしながら、本発明が、これらの具体的な詳細を用いることなく実施可能であることは、当業者には理解できるであろう。他の例では、本発明を不明瞭にしないように、よく知られた方法、手順、及び構成要素は、詳細には記載しない。
【0022】
免疫細胞の遺伝子操作は、癌に対する免疫細胞療法のストラテジーとしてよく知られている。免疫細胞療法は、必要としている対象への、自家由来または同種の免疫細胞の操作及び投与に基づいている。免疫細胞に基づく療法は、ナチュラルキラー細胞療法、枝状細胞療法、並びに、ナイーブT細胞、エフェクターT細胞(別名、ヘルパーT細胞)、細胞傷害性T細胞、及び制御性T細胞(Treg)を使用したT細胞免疫療法を含む。
【0023】
一実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作された免疫細胞を含む組成物である。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、T細胞である。別の実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞である。別の実施形態では、T細胞は、ナイーブCD4T細胞である。別の実施形態では、T細胞は、ナイーブCD8T細胞である。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、枝状細胞である。さらに別の実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL細胞)である。別の実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、制御性T細胞(Treg)である。別の実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞である。別の実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)細胞である。
【0024】
一実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作された免疫細胞と、アポトーシス細胞とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作された免疫細胞と、アポトーシス細胞上清とを含む組成物である。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、T細胞である。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。さらに別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL細胞)である。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、制御性Tリンパ球(Treg細胞)である。
【0025】
一実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞と、アポトーシス細胞とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞と、アポトーシス細胞上清とを含む組成物である。別の実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞である。別の実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)細胞である。
【0026】
一実施形態では、ここで開示されるのは、CAR-T細胞と、アポトーシス細胞とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)細胞と、アポトーシス細胞とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、CAR-T細胞と、アポトーシス細胞上清とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)細胞と、アポトーシス細胞上清とを含む組成物である。
【0027】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞と、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清とは、単一の組成物に含まれる。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞と、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清とは、互いに別個の組成物に含まれる。
【0028】
一実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作された免疫細胞と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作された免疫細胞と、アポトーシス細胞と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作された免疫細胞と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作された免疫細胞と、アポトーシス細胞上清と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、T細胞である。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。さらに別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL細胞)である。
【0029】
一実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞と、アポトーシス細胞と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞と、アポトーシス細胞上清と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞である。別の実施形態では、遺伝子操作されたT細胞は、T細胞受容体(TCR)細胞である。
【0030】
一実施形態では、ここで開示されるのは、CAR-T細胞と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、CAR-T細胞と、アポトーシス細胞と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)と、アポトーシス細胞と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。別の実施形態では、ここで開示されるのは、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)と、アポトーシス細胞上清と、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体、テルル系化合物、免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される追加的な薬剤とを含む組成物である。
【0031】
一実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果に影響を与えない。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果を約5%以上低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果を約10%以上低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果を約15%以上低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果を約20%以上低下させない。
【0032】
別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果に影響を約5%以上低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果に影響を約10%以上低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果に影響を約15%以上低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果に影響を約20%以上低下させない。一実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果に影響を与えない。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、癌または腫瘍の治療、予防、抑制、発生低減、寛解、または緩和に対するCAR-T細胞の効果を低下させない。
【0033】
別の実施形態では、ここで開示されるのは、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法である。別の実施形態では、本開示に係る方法は、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン産生を低減または阻害し、それにより、サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する。別の実施形態では、本開示に係る、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記癌療法を受けている前記対象に、アポトーシス細胞を含む組成物を投与するステップを含む。さらに別の実施形態では、本開示に係る、CAR-T細胞癌療法を受けている対象における産出を低減または抑制する方法は、前記癌療法を受けている前記対象に、アポトーシス細胞を含む組成物を投与するステップを含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物の投与は、CAR-T細胞療法の効果に影響を与えない。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、CAR-T細胞療法の効果を低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、CAR-T細胞療法の効果を約5%以上低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、CAR-T細胞療法の効果を約10%以上低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、CAR-T細胞療法の効果を約15%以上低下させない。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、CAR-T細胞療法の効果を約20%以上低下させない。
【0034】
別の実施形態では、ここで開示されるのは、サイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームが発生しているか、またはサイトカイン放出症候群若しくはサイトカインストームが発生しやすい対象におけるサイトカイン産生を低減または抑制する方法であって、本明細書に開示されたアポトーシス細胞上清または該アポトーシス細胞上清を含む組成物を投与するステップを含む方法である。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞-食細胞上清を含む。
【0035】
さらに別の実施形態では、本開示に係る、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン産生を低減または抑制する方法は、前記癌療法を受けている前記対象に、アポトーシス細胞上清を含む組成物を投与するステップを含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、CAR-T細胞療法の効果に影響を与えない。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、CAR-T細胞療法の効果を低下させない。
【0036】
一実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記対象に、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物を投与するステップを含む。別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記対象における少なくとも1つの炎症誘発性サイトカインの産生を低減または抑制する。
【0037】
キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)
【0038】
一実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、抗原標的受容体(antigen-targeted receptor)の一種であり、細胞外腫瘍結合部分(最も一般的には、モノクローナル抗体由来の一本鎖可変断片(scFv))と融合した細胞内T細胞シグナリングドメインから構成される。CARは、MHC媒介提示から独立して、細胞表面抗原を直接的に認識し、全ての患者における所与の抗原に対して特異的な単一の受容体構築物の使用を許可する。最初のCARは、T細胞受容体(TCR)複合体のCD3ζ活性化鎖に対する抗原認識ドメインと融合する。これらの第1世代のCARは、T細胞のエフェクター機能をインビトロで誘導するので、インビボでの抗腫瘍効果が弱いという大きな制約を受けることとなる。その後の世代のCARは、例えば、CD28由来の細胞内ドメイン、または様々なTNF受容体ファミリー分子(例えば、4-1BB(CD137)及びOX40(CD134))などのCD3ζと共に第2の共刺激シグナルを含む。さらに、第3世代の受容体は、最も一般的にはCD28及び4-1BB由来のCD3ζに加えて、2つの共刺激シグナルを含む。第2及び第3世代のCARは、抗腫瘍効果が劇的に向上し、場合によっては、進行癌患者の完全な寛解を誘導する。
【0039】
一実施形態では、CAR-T細胞は、抗原受容体を含む免疫応答性細胞であり、その抗原受容体がそれに対応する抗原に結合したときに活性化される。
【0040】
一実施形態では、本開示に係る組成物及び方法に使用されるCAR-T細胞は、第1世代のCAR-T細胞である。別の実施形態では、本開示に係る組成物及び方法に使用されるCAR-T細胞は、第2世代のCAR-T細胞である。別の実施形態では、本開示に係る組成物及び方法に使用されるCAR-T細胞は、第3世代のCAR-T細胞である。別の実施形態では、本開示に係る組成物及び方法に使用されるCAR-T細胞は、第4世代のCAR-T細胞である。一実施形態では、各世代のCAR-T細胞は、その前の世代のCAR-T細胞よりも効力が高い。
【0041】
一実施形態では、第1世代のCAR-T細胞は、1つのシグナルドメイン、通常はCD3-TCRζ鎖の細胞質シグナルドメインを有する。
【0042】
別の実施形態では、本開示に係るCAR-T細胞は、第2世代のCAR-T細胞である。別の実施形態では、本開示に係るCAR-T細胞は、三者キメラ受容体(TPCR)を含む。一実施形態では、本開示に係るCAR-T細胞は、ナイーブT細胞を、共刺激から独立した態様で活性化させる1以上のシグナリング部分を含む。別の実施形態では、CAR-T細胞は、腫瘍壊死因子受容体ファミリー(一実施形態では、CD27、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、またはそれらの組み合わせ)の1以上のメンバーをさらにコードする。
【0043】
第3世代のCAR-T細胞は、2つの共刺激ドメイン(一実施形態では、CD28ドメインと、4-1BBまたはOX-40シグナリングドメイン)のシグナリングポテンシャル(signaling potential)を利用することを試みる。別の実施形態では、本開示に係る組成物及び方法に使用されるCAR-T細胞は、共刺激シグナリングドメイン(一実施形態では、CD28ドメイン)をさらにコードする。別の実施形態では、前記シグナリングドメインは、CD3ζ鎖、CD97、GDI la-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、CD28シグナリングドメイン、またはそれらの組み合わせである。
【0044】
一実施形態では、テロメア長及び複製能力は、養子移植されたT細胞株の生着効率及び抗腫瘍効果と相関する。一実施形態では、CD28刺激は、T細胞のテロメア長を維持する。
【0045】
一実施形態では、CAR改変T細胞の効力は、追加的な遺伝子(例えば、増殖性サイトカイン(すなわち、IL-12)または共刺激リガンド(すなわち、4-1BBL)をコードするもの)を導入することによりさらに強化され、それにより、「装甲された」第4世代のCAR改変T細胞が生成される。一実施形態では、「装甲された」CAR-T細胞は、抑制性の腫瘍微環境から保護されたCAR-T細胞である。別の実施形態では、「装甲された」CAR技術は、全身性副作用を最小限に抑える目的で腫瘍微環境内での免疫応答を増幅させるための可溶性シグナルタンパク質の局所分泌を含む。一実施形態では、前記シグナルタンパク質は、T細胞の活性及び動員を刺激することができるIL-12である。一実施形態では、「装甲された」CAR技術は、微環境及び強力な免疫抑制メカニズムがロバストな抗腫瘍応答をより困難にする可能性を有する固形腫瘍の指標として特に有用である。
【0046】
一実施形態では、CAR-T細胞は、アポトーシスの防止、腫瘍微環境の再構成、恒常的増殖の誘導、及び直接的なT細胞の誘導を促進するケモカイン受容体に関与する分子をコードするために、遺伝子的に操作される。
【0047】
別の実施形態では、本開示に係る組成物及び方法に用いられるCAR-T細胞療法は、サイトカイン導入遺伝子の発現、小分子阻害剤との併用療法、またはモノクローナル抗体の使用により効果が向上する。別の実施形態では、腫瘍細胞をより特異的に標的にするためにCARとケモカイン受容体との両方を使用するCAR-T細胞療法の効果向上を目的とする別のストラテジーは、本明細書に開示されたCAR-T細胞及びCAR-T細胞療法の一部と見なされるものとする。
【0048】
本開示に係る組成物及び方法に使用されるCAR-T細胞は、正常細胞と比べて癌細胞に対する特異性を高めるために抑制または増幅信号を発生させることができる第2の結合ドメインを含む。例えば、CAR-T細胞は、第1のタンパク質が存在する場合にはトリガーされるが、第2のタンパク質が存在する場合には抑制されるように遺伝子操作され得る。あるいは、CAR-T細胞は、最大活性化のためには、2つの標的タンパク質が必要とされるように遺伝子操作され得る。これらのアプローチは、正常組織と比べて腫瘍に対するCARの特異性を高める。
【0049】
一実施形態では、本開示に係る組成物及び方法に使用されるCAR-T細胞は、抗体ベースの外部受容体構築物と、免疫受容活性化チロシンモチーフから構成されるシグナル伝達モジュールをコードする細胞質ドメインとをコードする。
【0050】
一実施形態では、CAR-T細胞は、免疫抑制活性を有するポリペプチドと結合する一本鎖可変断片(scFv)をさらにコードする。別の実施形態では、免疫抑制活性を有するポリペプチドは、CD47、PD-1、CTLA-4、またはそれらの組み合わせである。
【0051】
一実施形態では、CAR-T細胞は、免疫刺激活性を有するポリペプチドと結合する一本鎖可変断片(scFv)をさらにコードする。別の実施形態では、免疫刺激活性を有するポリペプチドは、CD28、OX-40、4-1 BB、またはそれらの組み合わせである。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD40リガンド(CD40L;一実施形態では、抗原の免疫刺激活性を高める)をさらにコードする。
【0052】
一実施形態では、免疫細胞は、細胞障害性を有する。別の実施形態では、遺伝子操作のための細胞障害性細胞は、対象またはドナーの骨髄から得られる。他の場合では、細胞障害性細胞は、幹細胞から得られる。例えば、細胞障害性細胞は、ヒト多能性幹細胞、例えばヒト胚性幹細胞またはヒト人工多能性T細胞などから得られる。人工多能性幹細胞(IPSC)の場合、多能性T細胞などは、細胞障害性が提供される対象の体細胞を使用して得ることができる。一実施形態では、免疫細胞は、静脈穿刺、アフェレーシス方法、白血球細胞動員とそれに続くアフェレーシス若しくは静脈穿刺、または骨髄穿刺によって、対象またはドナーから細胞を収集することにより得ることができる。
【0053】
一実施形態では、本開示に係る方法は、対象から免疫細胞を取得するステップと、取得した免疫細胞を遺伝子操作してキメラ抗原受容体を発現させるステップとを有する。別の実施形態では、本開示に係る方法は、対象から免疫細胞を取得するステップと、取得した免疫細胞を遺伝子操作してキメラ抗原受容体を発現させるステップと、発現したキメラ抗原受容体をアポトーシス細胞と組み合わせるステップとを有し、それにより、対象のサイトカイン産生を低減させるが、アポトーシス細胞集団と共に投与されないCARを発現する免疫細胞に対する細胞障害性には実質的に影響を与えない(図1A-1B、及び図2)。別の実施形態では、本開示に係る方法は、対象から免疫細胞を取得するステップと、取得した免疫細胞を遺伝子操作してキメラ抗原受容体を発現させるステップと、発現したキメラ抗原受容体をアポトーシス細胞上清またはそれを含む組成物と組み合わせるステップとを有し、それにより、対象のサイトカイン産生を低減させるが、アポトーシス細胞上清と共に投与されないCARを発現する免疫細胞に対する細胞障害性には実質的に影響を与えない。別の実施形態では、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清の投与は、免疫細胞の抗原受容体を発現させる効果を低下させない。
【0054】
したがって、本開示に係る一実施形態は、細胞障害性機能を保持するための抗原受容体(CAR)を含む細胞障害性免疫細胞(例えば、NK細胞またはT細胞)に関する。別の実施形態では、キメラ抗原受容体は、T細胞に対して外因性である。別の実施形態では、CARは、組換え技術により発現される。別の実施形態では、CARは、ベクターから発現される。
【0055】
一実施形態では、CAR-T細胞の生成に使用されるT細胞は、ナイーブCD4T細胞である。別の実施形態では、CAR-T細胞の生成に使用されるT細胞は、ナイーブCD8T細胞である。一実施形態では、CAR-T細胞の生成に使用されるT細胞は、エフェクターT細胞である。一実施形態では、CAR-T細胞の生成に使用されるT細胞は、制御性T細胞(Treg)である。別の実施形態では、CAR-T細胞の生成に使用されるT細胞は、細胞傷害性T細胞である。
【0056】
遺伝子操作された免疫細胞、例えばT細胞の供給源は、文献に幅広く記載されている。例えば、「Themelli et al. (2015) New Cell Sources for T cell Engineering and Adoptive Immunotherapy. Cell Stem Cell 16: 357-366」、「Han et al. (2013) Journal of Hematology & Oncology 6:47-53」、「Wilkie et al. (2010) J Bio Chem 285(33):25538-25544」、及び「van der Stegen et al. (2013) J. Immunol 191: 4589-4598」を参照されたい。CAR-T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)のカスタム設計及び作製サービス、または、組換えアデノウイルスワクチンによりコードされた防御免疫を誘導することができる予め作製したCAR構築物のストックを提供する商業的供給源(例えば、クリエイティブ・バイオラブズ社(Creative Biolabs、米国ニューヨーク州所在)など)から入手可能である。カスタムメイドのCAR-T細胞は、特別に設計されたCAR-T細胞を提供することができるプロマブ・バイオテクノロジー社(Promab Biotechnologies、米国カリフォルニア州所在)からも入手可能である。
【0057】
標的抗原
【0058】
一実施形態では、CARは、抗原に対応する抗体または抗体断片を介して、抗原のエピトープと結合する。別の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。別の実施形態では、抗体断片は、一本鎖可変断片(scFv)である。
【0059】
別の実施形態では、本開示に係る組成物のCAR-T細胞は、腫瘍関連抗原(TAA)と結合する。別の実施形態では、腫瘍関連抗原は、細胞表面関連ムチン1(MUC1)または多型上皮性ムチン(PEM)、変異型初期腫瘍内アルギニンリッチ(ARMET)、熱ショックタンパク質60(HSP60)、カルネキシン(CNX)、メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ(NADP+ 依存性)-2、メテニルテトラヒドロ葉酸シクロヒドロラーゼ(MTHFD-2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP6)、Bメラノーマ抗原-1(BAGE-1)、N-アセチルグルコサミン転移酵素Vの異常転写物(GnTV)、Q5H943、癌胎児性抗原(CEA)、Pmel、カリクレイン-4、ママグロビン-1、MART-1、GPR143-OA1、前立腺特異抗原(PSA)、TRP1、チロシナーゼ、FGP-5、NEU癌原遺伝子、Aft、MMP-2、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、テロメラーゼ関連タンパク質-2、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、ウロプラキンII、またはプロテイナーゼ3である。
【0060】
別の実施形態では、CARは、例えば白血病などにおいてB細胞を破壊したい場合にB細胞を標的とするために、CD19またはCD20と結合する。別の実施形態では、CARは、ROR1、CD22、またはGD2と結合する。別の実施形態では、CARは、NY-ESO-1と結合する。別の実施形態では、CARは、MAGEファミリータンパク質と結合する。別の実施形態では、CARは、メソセリンと結合する。別の実施形態では、CARは、c-erbB2と結合する。別の実施形態では、CARは、例えばBRAFV600E変異体及びBCR-ABL転移体などの腫瘍特異的変異抗原と結合する。別の実施形態では、CARは、例えばHDにおけるEBV、子宮頸癌におけるHPV、及びメルケル癌におけるポリオーマウイルスなどの腫瘍特異的なウイルス抗原と結合する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、Her2/neuと結合する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、EGFRvIIIと結合する。
【0061】
一実施形態では、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)は、CD19抗原と結合する。別の実施形態では、CARは、CD22抗原と結合する。別の実施形態では、CARは、葉酸受容体αと結合する。別の実施形態では、CARは、CAIXと結合する。別の実施形態では、CARは、CD20と結合する。別の実施形態では、CARは、CD23と結合する。別の実施形態では、CARは、CD24と結合する。別の実施形態では、CARは、CD30と結合する。別の実施形態では、CARは、CD33と結合する。別の実施形態では、CARは、CD38と結合する。別の実施形態では、CARは、CD44v6と結合する。別の実施形態では、CARは、CD44v7/8と結合する。別の実施形態では、CARは、CD123と結合する。別の実施形態では、CARは、CD171と結合する。別の実施形態では、CARは、癌胎児性抗原(CEA)と結合する。別の実施形態では、CARは、EGFRvIIIと結合する。別の実施形態では、CARは、EGP-2と結合する。別の実施形態では、CARは、EGP-40と結合する。別の実施形態では、CARは、EphA2と結合する。別の実施形態では、CARは、Erb-B2と結合する。別の実施形態では、CARは、Erb-B2,3,4と結合する。別の実施形態では、CARは、Erb-B3/4と結合する。別の実施形態では、CARは、FBPと結合する。別の実施形態では、CARは、胎児アセチルコリン受容体と結合する。別の実施形態では、CARは、GD2と結合する。別の実施形態では、CARは、GD3と結合する。別の実施形態では、CARは、HER2と結合する。別の実施形態では、CARは、HMW-MAAと結合する。別の実施形態では、CARは、IL-11Ralphaと結合する。別の実施形態では、CARは、IL-13Ralpha1と結合する。別の実施形態では、CARは、KDRと結合する。別の実施形態では、CARは、κ(カッパ)型軽鎖と結合する。別の実施形態では、CARは、ルイスY(Lewis Y)と結合する。別の実施形態では、CARは、L1-細胞接着分子と結合する。別の実施形態では、CARは、MAGE-A1と結合する。別の実施形態では、CARは、メソセリンと結合する。別の実施形態では、CARは、CMV感染細胞と結合する。別の実施形態では、CARは、MUC1と結合する。別の実施形態では、CARは、MUC16と結合する。別の実施形態では、CARは、NKG2Dリガンドと結合する。別の実施形態では、CARは、NY-ESO-1(アミノ酸157-165)と結合する。別の実施形態では、CARは、癌胎児性抗原(h5T4)と結合する。別の実施形態では、CARは、PSCAと結合する。別の実施形態では、CARは、PSMAと結合する。別の実施形態では、CARは、ROR1と結合する。別の実施形態では、CARは、TAG-72と結合する。別の実施形態では、CARは、VEGF-R2または他のVEGF受容体と結合する。別の実施形態では、CARは、B7-H6と結合する。別の実施形態では、CARは、CA9と結合する。別の実施形態では、CARは、αβインテグリンと結合する。別の実施形態では、CARは、8H9と結合する。別の実施形態では、CARは、NCAMと結合する。別の実施形態では、CARは、胎児型アセチルコリン受容体と結合する。
【0062】
別の実施形態では、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)は、CD19抗原を標的とし、B細胞悪性腫瘍、ALL、濾胞性リンパ腫、CLL、またはリンパ腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD22抗原を標的とし、B細胞悪性腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、葉酸受容体αを標的とし、卵巣癌または上皮癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CAIXまたはG250/CAIXを標的とし、腎細胞癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD20を標的とし、リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または低悪性度B細胞リンパ腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD23を標的とし、CLLに罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD24を標的とし、膵臓腺癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD30を標的とし、リンパ腫またはホジキンリンパ腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD33を標的とし、AMLに罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD38を標的とし、非ホジキンリンパ腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD44v6を標的とし、いくつかの悪性腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD44v7/8を標的とし、子宮頸癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD123を標的とし、骨髄性悪性腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CEAを標的とし、結腸直腸癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、EGFRvIIIを標的とし、神経膠芽腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、EGP-2を標的とし、複数の悪性腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、EGP-40を標的とし、結腸直腸癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、EphA2を標的とし、神経膠芽腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、Erb-B2またはErbB3/4を標的とし、乳癌、前立腺癌、結腸癌、または他の様々な腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、Erb-B2,3,4を標的とし、乳癌、または他の腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、FBPを標的とし、卵巣癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、胎児アセチルコリン受容体を標的とし、横紋筋肉腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、GD2を標的とし、神経芽細胞腫、メラノーマ(悪性黒色腫)、またはユーイング肉腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、GD3を標的とし、メラノーマに罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、HER2を標的とし、髄芽腫、膵臓腺癌、神経膠芽腫、骨肉腫、または卵巣癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、HMW-MAAを標的とし、メラノーマに罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、IL-11Ralphaを標的とし、骨肉腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、IL-13Ralpha1を標的とし、神経膠腫(グリオーマ)、神経膠芽腫、または髄芽腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、IL-13受容体α2を標的とし、いくつかの悪性腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、KDRを標的とし、腫瘍血管新生を標的とすることにより、腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、κ(カッパ)型軽鎖を標的とし、B細胞悪性腫瘍(B-NHL、CLL)に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、ルイスY(Lewis Y)を標的とし、様々な細胞腫または上皮由来腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、L1-細胞接着分子を標的とし、神経芽細胞腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、MAGE-A1またはHLA-A1 MAGE-A1を標的とし、メラノーマに罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、メソセリンを標的とし、中皮腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CMV感染細胞を標的とし、CMVに罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、MUC1を標的とし、乳癌または卵巣癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、MUC16を標的とし、卵巣癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、NKG2Dリガンドを標的とし、骨髄腫(ミエローマ)、卵巣腫瘍、または他の腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、NY-ESO-1(アミノ酸157-165)を標的とし、複数の骨髄腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、癌胎児性抗原(h5T4)を標的とし、様々な腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、PSCAを標的とし、前立腺癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、PSMAを標的とし、前立腺癌/腫瘍血管系に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、ROR1を標的とし、B-CLLまたはマントル細胞リンパ腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、TAG-72を標的とし、腺癌または胃腸癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、VEGF-R2または他のVEGF受容体を標的とし、腫瘍血管新生を標的とすることにより、腫瘍に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CA9を標的とし、腎細胞癌に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、CD171を標的とし、腎性神経芽細胞腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、NCAMを標的とし、神経芽細胞腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、胎児型アセチルコリン受容体を標的とし、横紋筋肉腫に罹患している対象に対して治療効果を有する。別の実施形態では、CARは、この参照によりその全体が本明細書に援用されるSadelainらの表1(Cancer Discov. 2013 Apr; 3(4): 388-398)に記載された標的抗原のうちの1つと結合する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、炭水化物または糖脂質構築物と結合する。
【0063】
一実施形態では、CARは、血管新生因子に結合し、それにより、腫瘍血管を標的とする。一実施形態では、血管新生因子は、VEGFR2である。別の実施形態では、血管新生因子は、エンドグリンである。別の実施形態では、本明細書で開示される血管新生因子は、アンジオゲニン、アンジオポエチン-1、Del-1、線維芽細胞増殖因子(酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF))、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/散乱因子(SF)、インターロイキン-8(IL-8)、レプチン、ミッドカイン、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)、血小板由来増殖因子BB(PDGF-BB)、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、形質転換増殖因子α(TGF-α)、形質転換増殖因子β(TGF-β)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、または血管内皮増殖因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)である。別の実施形態では、本明細書で開示される血管新生因子は、血管新生タンパク質である。一実施形態では、増殖因子は、血管新生タンパク質である。一実施形態では、本開示に係る組成物または方法に使用される血管新生タンパク質は、線維芽細胞増殖因子(FGF);VEGF;VEGFR及びニューロピリン1(NRP-1);アンジオポエチン1(Ang1)及びTie2;血小板由来増殖因子(PDGF;BBホモ二量体)及びPDGFR;形質転換増殖因子β(TGF-β)、エンドグリン、及びTGF-β受容体;単球走化性タンパク質-1(MCP-1);インテグリンαVβ3、αVβ5、及びα5β1;VE-カドヘリン及びCD31;エフリン;プラスミノーゲン活性化因子1;一酸化窒素合成酵素(NOS)及びCOX-2;AC133;またはId1/Id3である。一実施形態では、本開示に係る組成物または方法に使用される血管新生タンパク質はアンジオポエチンであり、一実施形態では、アンジオポエチン1、アンジオポエチン3、アンジオポエチン4、またはアンジオポエチン6である。一実施形態では、エンドグリンは、CD105、EDG、HHT1、ORW、またはORW1としても知られている。一実施形態では、エンドグリンは、TGF-β共受容体である。
【0064】
別の実施形態では、CAR-T細胞は、感染病原体に関連する抗原と結合する。一実施形態では、感染病原体は、結核菌である。一実施形態では、結核菌に関連する抗原は、抗原85B、リポタンパク質IpqH、ATP依存性の推定上のヘリカーゼ、特徴付けられていないタンパク質Rv0476/MTO4941前駆体、または特徴付けられていないタンパク質Rv1334/MT1376前駆体である。
【0065】
別の実施形態では、CAR-T細胞は、抗体と結合する。一実施形態では、CAR-T細胞は、「抗体結合型T細胞受容体(ACTR)」である。この実施形態によれば、CAR-T細胞は、普遍的CAR-T細胞である。別の実施形態では、抗体受容体を有するCAR-T細胞は、抗体投与の前、後、または同時に投与され、その後、抗体と結合し、T細胞を腫瘍または癌のごく近傍に位置させる。別の実施形態では、抗体は、腫瘍細胞抗原に対するものである。別の実施形態では、抗体は、CD20に対するものである。別の実施形態では、抗体は、リツキシマブに対するものである。
【0066】
別の実施形態では、抗体は、ERBB2に対するヒト化IgG1抗体であるトラスツズマブ(Herceptin;Genentech)を含む。別の実施形態では、抗体は、VEGFに対するヒト化IgG1抗体であるベバシズマブ(Avastin;Genentech/Roch)を含む。別の実施形態では、抗体は、EGFRに対するキメラ型ヒト/マウスIgG1抗体であるセツキシマブ(Erbitux;Bristol-Myers Squibb)を含む。別の実施形態では、抗体は、EGFRに対するIgG2抗体であるパニツムマブ(Vectibix;Amgen)を含む。別の実施形態では、抗体は、CTLA4に対するIgG1抗体であるイピリムマブ(Yervoy;Bristol-Myers Squibb)を含む。
【0067】
別の実施形態では、抗体は、CD52に対するヒト化IgG1抗体であるアレムツズマブ(Campath;Genzyme)を含む。別の実施形態では、抗体は、CD20に対するヒトIgG1抗体であるオファツムマブ(Arzerra;Genmab)を含む。別の実施形態では、抗体は、CD33に対するヒト化IgG4抗体であるゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg;Wyeth)を含む。別の実施形態では、抗体は、CD30に対するキメラ化IgG1抗体であるブレンツキシマブベドチン(Adcetris;Seattle Genetics)を含む。別の実施形態では、抗体は、CD20に対するマウスIgG1抗体である90Y標識化イブリツモマブチウキセタン(Zevalin;IDEC Pharmaceuticals)を含む。別の実施形態では、抗体は、CD20に対するマウスIgG2抗体である131I標識化トシツモマブ(Bexxar;GlaxoSmithKline)を含む。
【0068】
別の実施形態では、抗体は、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR-2)に対する抗体であるラムシルマブを含む。別の実施形態では、抗体は、ラムシルマブ(Cyramza注射剤;Eli Lilly and Company)、ブリナツモマブ(BLINCYTO; Amgen Inc.)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA;Merck Sharp & Dohme Corp.)、ビヌツズマブ(GAZYVA;Genentech, Inc.;以前はGA101と呼ばれていた)、ペルツズマブ注射剤(PERJETA;Genentech, Inc.)、またはデノスマブ(Xgeva;Amgen Inc.)である。別の実施形態では、抗体は、バシリキシマブ(Simulect;Novartis)である。別の実施形態では、抗体は、ダクリズマブ(Zenapax;Roche)である。
【0069】
別の実施形態では、CAR-T細胞と結合する抗体は、本明細書に開示した及び当分野で既知の腫瘍または癌抗原またはその一部に対するものである。別の実施形態では、CAR-T細胞と結合する抗体は、腫瘍関連抗原に対するものである。別の実施形態では、CAR-T細胞と結合する抗体は、血管新生因子である腫瘍関連抗原またはその一部に対するものである。
【0070】
別の実施形態では、CAR-T細胞と結合する抗体は、本明細書に開示した及び当分野で既知の腫瘍関連抗原またはその一部に対するものである。
【0071】
サイトカインストーム及びサイトカイン放出症候群
【0072】
一実施形態では、本開示に係る方法は、対象における毒性サイトカイン放出、「サイトカイン放出症候群(CRS)」、「重度のサイトカイン放出症候群(sCRS)」、または「サイトカインストーム」の発生を低減するために、例えば遺伝子操作されたキメラ抗原受容体を含むNK細胞やT細胞などの免疫細胞と、少なくとも1つの追加的な薬剤とを用意するステップを含む。別の実施形態では、CRS、sCRS、またはサイトカインストームは、免疫細胞の投与の結果として生じる。別の実施形態では、CRS、sCRS、またはサイトカインストームは、免疫細胞以外の刺激、疾病、症候群の結果として生じる(詳細については後述する)。別の実施形態では、サイトカインストーム、サイトカインカスケード、高サイトカイン血症は、サイトカイン放出症候群の重症型である。
【0073】
一実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞、またはアポトーシス細胞を含有する組成物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞上清、またはアポトーシス細胞上清を含有する組成物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、CTLA-4阻害剤を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、CTLA-4阻害剤とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、テルル系化合物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、テルル系化合物とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、免疫調節剤を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、免疫調節剤とを含む。
【0074】
毒性サイトカイン放出または毒性サイトカイン濃度(レベル)を減少させることは、対象における毒性サイトカインの生成を低減または抑制すること、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を低減または抑制することを含むことは、当業者であれば理解できるであろう。別の実施形態では、CRSまたはサイトカインストームの発生中に毒性サイトカインの濃度が減少する。別の実施形態では、毒性サイトカイン産生濃度の低減または抑制は、CRSまたはサイトカインストームの治療を含む。別の実施形態では、毒性サイトカイン産生濃度の低減または抑制は、CRSまたはサイトカインストームの緩和を含む。別の実施形態では、毒性サイトカイン産生濃度の低減または抑制は、CRSまたはサイトカインストームの寛解を含む。別の実施形態では、毒性サイトカインは、炎症促進性サイトカインを含む。別の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-6を含む。別の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-1βを含む。別の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、TNF-αを含む。別の実施形態では、炎症促進性サイトカインは、IL-6、IL-1β、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0075】
一実施形態では、サイトカイン放出症候群(CRS)は、対象における、いくつかの炎症性サイトカインの濃度上昇及び有害な身体的反応(例えば、低血圧、高熱、及び震え)によって特徴付けられる。別の実施形態では、炎症性サイトカインは、IL-6、IL-1β、及びTNF-αを含む。別の実施形態では、CRSは、IL-6、IL-1β、またはTNF-α、またはそれらの任意の組み合わせの濃度上昇によって特徴付けられる。別の実施形態では、CRSは、IL-8、IL-13、またはそれらの任意の組み合わせの濃度上昇によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、GM-CSF、IL-5、フラクタルカイン、それらの任意の組み合わせ、またはそれらのサブセットによって特徴付けられる。さらに別の実施形態では、IL-6は、CRSまたはサイトカインストームのマーカーを含む。別の実施形態では、IFN-γは、CRSまたはサイトカインストームのマーカーを含む。別の実施形態では、大きな腫瘍量を有する患者は、サイトカイン症候群の発生率及び重症度が高い。
【0076】
別の実施形態では、ヒトまたはマウスにおけるCRSまたはサイトカインストームで増加するサイトカインは、下記の表1及び表2に記載されたサイトカインの任意の組み合わせを含み得る。
【0077】
【表1】
【0078】
一実施形態では、表1に示したサイトカイン、すなわち、Flt-3L、フラクタルカイン、GM-CSF、IFN-γ、IL-1β、IL-2、IL-2Rα、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、及びIL-13が、CRSまたはサイトカインストームにおいて有意であると考えられる。別の実施形態では、表1に示したIFN-α、IFN-β、IL-1、及びIL-1Rαが、CRSまたはサイトカインストームにおいて重要であるように思われる。別の実施形態では、M-CSFが、未知の重要性を有している。別の実施形態では、表1に記載した任意のサイトカインまたはそれらの組み合わせを、CRSまたはサイトカインストームのマーカーとして使用することができる。
【0079】
【表2】
【0080】
一実施形態では、表2に示したIL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-22、IP-10、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、及びTNF-αが、CRSまたはサイトカインストームにおいて有意であると考えられる。別の実施形態では、表2に示したIL-27、MCP-3、PGE2、RANTES、TGF-β、TNF-αR1、及びMIGが、CRSまたはサイトカインストームにおいて重要であるように思われる。別の実施形態では、IL-23及びIL-25が、未知の重要性を有している。別の実施形態では、表2に記載した任意のサイトカインまたはそれらの組み合わせを、CRSまたはサイトカインストームのマーカーとして使用することができる。
【0081】
「サイトカイン」という用語が、サイトカイン(例えば、インターフェロン・ガンマ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、腫瘍壊死因子α)、ケモカイン(例えば、MIP-1α、MIP-1β、RANTES)、及び他の可溶性の炎症メディエータ(例えば、活性酸素種、一酸化窒素)を包含することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0082】
一実施形態では、特定のサイトカインの放出の増加は、有意であるか、重要であるか、または未知の重要性を有しているか否かに関わらず、特定のサイトカインがサイトカインストームの一部であるという演繹的な意味ではない。一実施形態では、少なくとも1つのサイトカインの増加は、サイトカインストームまたはCRSの結果ではない。別の実施形態では、CAR-T細胞は、特定のサイトカインまたはサイトカイン群の濃度上昇の原因であり得る。
【0083】
別の実施形態では、サイトカイン放出症候群は、下記の任意のまたは全ての症状により特徴付けられる。寒気を伴うまたは伴わない高熱、不快感、倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛、吐き気、嘔吐、頭痛、皮膚発疹、吐き気、嘔吐、下痢、多呼吸、低酸素血症、心臓血管頻拍、脈圧拡大、低血圧、心拍出量の増大(初期)、心拍出量の減少(後期)、D二量体レベルの上昇、出血を伴うまたは伴わない低フィブリノゲン血症、高窒素血症、肝臓の高トランスアミナーゼ血症、高ビリルビン血症、頭痛、精神状態の変化、精神錯乱、せん妄、喚語困難または明らかな失語症、幻覚、震え、測定障害、歩調失調、痙攣。別の実施形態では、サイトカインストームは、IL-2放出及びリンパ球増殖によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、CAR-T細胞により放出されるサイトカインの増加によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、CAR-T細胞以外の細胞により放出されるサイトカインの増加によって特徴付けられる。
【0084】
別の実施形態では、サイトカインストームは、生命を脅かす可能性のある合併症、例えば、心機能障害、成人呼吸窮迫症候群、神経毒性、腎不全、肝不全、播種性血管内凝固症候群などを引き起こす。
【0085】
サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームは、それがトリガーされてから数日または数週間後に発生すると推定されることは、当業者であれば理解できるであろう。一実施形態では、CAR-T細胞は、CRSまたはサイトカインストームの原因となる。別の実施形態では、CRSまたはサイトカインストームの原因は、CAR-T細胞ではない。
【0086】
一実施形態では、サイトカインストームの指標としてのサイトカイン濃度の測定値は、サイトカイン濃度の倍数増加(fold increase)、パーセント(%)増加、純増加、または変化割合として表される。別の実施形態では、サイトカインの絶対濃度が所定の濃度を超えていることが、対象においてサイトカインストームが発生しているまたは発生しそうであることの指標となる。別の実施形態では、サイトカインの絶対濃度が、所定の濃度、例えばCAR-T細胞療法を受けていない対照の対象において通常見られる濃度であることが、CAR-T細胞療法を受けている対象においてサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法の指標となる。
【0087】
「サイトカイン濃度」という用語が、濃度の測定値、倍数変化の大きさ、パーセント(%)変化の大きさ、または変化割合の大きさを包含することは、当業者であれば理解できるであろう。さらに、血液、唾液、血清、尿、及び血漿中のサイトカインを測定する方法は、当分野で周知である。
【0088】
一実施形態では、サイトカインストームがいくつかの炎症性サイトカインの濃度上昇と関連しているという認識にも関わらず、IL-6の濃度が、サイトカインストーム及び/またはその治療効果の一般的な指標として用いられている。別のサイトカインもサイトカインストームのマーカーとして使用できることは、当業者であれば理解できるであろう。例えば、TNF-α、IB-1α、IL-6、IL-8、IL-13、INF-γ、またはそれらの任意の組み合わせを、CRSまたはサイトカインストームのマーカーとして使用することができる。さらに、サイトカインを測定するための分析方法は、当分野で周知である。サイトカインストームに影響を与える方法は、同様に、サイトカイン放出症候群(CRS)にも影響を与えることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0089】
一実施形態では、ここで開示されるのは、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームが発生している対象においてサイトカイン産生を低減または抑制する方法である。別の実施形態では、本開示に係る方法は、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームが発生しやすい対象においてサイトカイン産生を低減または抑制する方法である。別の実施形態では、本開示に係る方法は、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームが発生している対象においてサイトカイン産生を低減または抑制する方法であって、表1及び/または表2に記載されている任意のサイトカインまたはサイトカイン群の産生を低減または抑制する方法である。別の実施形態では、サイトカインIL-6の産生が低減または抑制される。別の実施形態では、サイトカインIL-β1の産生が低減または抑制される。別の実施形態では、サイトカインIL-8の産生が低減または抑制される。別の実施形態では、サイトカインIL-13の産生が低減または抑制される。別の実施形態では、サイトカインTNF-αの産生が低減または抑制される。別の実施形態では、サイトカインIL-6、サイトカインIL-β1、サイトカインTNF-α、またはそれらの任意の組み合わせの産生が低減または抑制される。
【0090】
一実施形態では、サイトカイン放出症候群は、グレード化されている。別の実施形態では、グレード1のサイトカイン放出症候群は、命に別条はなく、対処療法のみを必要とする症状(例えば、熱、吐き気、倦怠感、頭痛、筋肉痛、不快感)を示す。別の実施形態では、グレード2の症状は、例えば低血圧のための酸素、流体、昇圧剤などの中程度の医療介入を必要とする。別の実施形態では、グレード3の症状は、積極的な医療介入を必要とする。別の実施形態では、グレード4の症状は、生命を脅かす症状であり、人工呼吸器を必要とし、患者に臓器毒性が見られる。
【0091】
別の実施形態では、サイトカインストームは、IL-6及びインターフェロン・ガンマの放出によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、IL-6の放出によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、インターフェロン・ガンマの放出によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、表1及び表2に記載された任意のサイトカインまたはその組み合わせの放出によって特徴付けられる。別の実施形態では、サイトカインストームは、当分野で既知の任意のサイトカインまたはその組み合わせの放出によって特徴付けられる。
【0092】
一実施形態では、症状の発生は、投与開始後の数分後または数時間後に始まる。別の実施形態では、症状は、サイトカインのピーク濃度と一致する。
【0093】
一実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記対象にアポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清、あるいはそれらの組成物を投与するステップを含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清、あるいはそれらの組成物は、CAR-T細胞癌療法を助ける。別の実施形態では、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清、あるいはそれらの組成物は、CRSまたはサイトカインストームの発生の抑制または低減を助ける。別の実施形態では、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清、あるいはそれらの組成物は、CRSまたはサイトカインストームの治療を助ける。別の実施形態では、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清、あるいはそれらの組成物は、CRSまたはサイトカインストームの予防を助ける。別の実施形態では、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清、あるいはそれらの組成物は、CRSまたはサイトカインストームの寛解を助ける。別の実施形態では、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清、あるいはそれらの組成物は、CRSまたはサイトカインストームの緩和を助ける。
【0094】
一実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記対象に追加的な薬剤を投与するステップを含む。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CAR-T細胞癌療法を助ける。一実施形態では、TCR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記対象に追加的な薬剤を投与するステップを含む。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、TCR-T細胞癌療法を助ける。一実施形態では、樹状細胞療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記対象に追加的な薬剤を投与するステップを含む。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、樹状細胞療法を助ける。一実施形態では、NK細胞療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記対象に追加的な薬剤を投与するステップを含む。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、NK細胞療法を助ける。
【0095】
一実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けており、かつアポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清、あるいはそれらの組成物が投与されている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記対象に追加的な薬剤を投与するステップを含む。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CAR-T細胞癌療法を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの発生の抑制または低減を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの治療を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの予防を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの寛解を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの緩和を助ける。
【0096】
一実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、前記対象に追加的な薬剤を投与するステップを含む。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CAR-T細胞療法を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの発生の抑制または低減を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの治療を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの予防を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの寛解を助ける。別の実施形態では、前記追加的な薬剤は、CRSまたはサイトカインストームの緩和を助ける。
【0097】
一実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞、またはアポトーシス細胞を含有する組成物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞上清、またはアポトーシス細胞上清を含有する組成物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、CTLA-4阻害剤を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、CTLA-4阻害剤とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、α1-アンチトリプシンまたはその断片若しくは類似体とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、テルル系化合物を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、テルル系化合物とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、免疫調節剤を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、免疫調節剤とを含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、Treg細胞を含む。別の実施形態では、有害なサイトカイン放出を低減させるための追加的な薬剤は、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清を含有する組成物と、Treg細胞とを含む。
【0098】
別の実施形態では、本開示に係る組成物及び方法は、CAR-T細胞と1以上のCTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)との併用療法を用いる。別の実施形態では、CTLA-4は、T細胞活性化の強力な阻害剤であり、自己免疫寛容の維持を助ける。別の実施形態では、抗CTLA-4阻害剤(別の実施形態では抗体)の投与によりT細胞活性化の正味の影響を生成する。別の実施形態では、本開示に係る組成物及び方法は、アポトーシス細胞と、CAR-T細胞と、1以上のCTLA-4阻害剤(例えば、イピリムマブ)との併用療法を用いる。
【0099】
別の実施形態では、本開示に係る組成物または方法により治療、予防、抑制、寛解、発生率低減、または緩和することができる、CAR-T細胞またはNK細胞の投与の結果として生じる他の毒性は、B細胞形成不全または腫瘍崩壊症候群(TLS)を含む。
【0100】
一実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、CAR-T細胞療法の効果に影響を与えない。別の実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、CAR-T細胞療法の効果を約5%以上低下させない。別の実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、CAR-T細胞療法の効果を約10%以上低下させない。別の実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、CAR-T細胞療法の効果を約15%以上低下させない。別の実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を抑制または低減する方法は、CAR-T細胞療法の効果を約20%以上低下させない。
【0101】
CARを発現するように改変された免疫細胞の活性が実質的に変化しないか否かを判断するのに、任意の適切な細胞障害性の定量化方法を用いることができる。例えば、細胞障害性は、細胞培養に基づく分析法、例えば実施例において説明する細胞障害性分析法などを用いて定量化することができる。細胞障害性分析法は、死細胞のDNAを優先的に染色する色素を使用することができる。別の場合では、細胞集団中の生細胞及び死細胞の相対数を測定する蛍光及び発光分析法を用いることができる。そのような分析法では、プロテアーゼの活性が、細胞生存率及び細胞毒性のマーカーとしての役割を果たし、標識化された細胞透過性ペプチドが、サンプル中の生細胞数に比例する蛍光シグナルを生成する。様々な細胞障害性分析法のためのキットが、例えばプロメガ・アンド・ライフテクノロジーズ社(Promega and Life Technologies)などの製造業者から市販されている。別の実施形態では、細胞障害性の指標は、定性的であり得る。別の実施形態では、細胞障害性の指標は、定量的であり得る。さらなる実施形態では、細胞障害性の指標は、細胞障害性サイトカインの発現の変化に関連し得る。
【0102】
一実施形態では、本開示に係る方法は、同種ドナー細胞の拒絶反応の克服に有用な追加的なステップを有する。一実施形態では、本開示に係る方法は、CAR-T細胞(一実施形態では、同種CAR-T細胞)の投与前に、完全または部分的にリンパ球を枯渇させるステップを有する。別の実施形態では、リンパ球枯渇(lymphodepletion)は、宿主対移植片反応を、同種CAR-T細胞が、標的の腫瘍を攻撃するのには十分であるが、骨髄移植による宿主免疫系のレスキュー(rescue)を要求するのには不十分な期間(時間)だけ遅延させるように調節される。別の実施形態では、宿主対移植片反応の有効性を有するが開始因子を欠いている同種CAR-T細胞の使用を可能にするために、リンパ節からの同種T細胞の放出を遅延させる薬剤、例えば、2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1、3-ジオール(FTY720)、5-[4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]1,2,4-オキサジアゾール(SEW2871)、3-(2-(-ヘキシルフェニルアミノ)-2-オキソエチルアミノ)プロピオン酸(W123)、2-アミノ-4-(2-クロロ-4-(3-フェノキシフェニルチオ)フェニル)-2-(ヒドロキシメチル)リン酸水素ブチル(KRP-203リン酸)、または当分野で既知の別の薬剤が、本開示に係る組成物及び方法の一部として使用され得る。一実施形態では、同種細胞の拒絶を減少させるために、同種CAR-T細胞によるMHC発現が抑制される。別の実施形態では、アポトーシス細胞が、同種細胞の拒絶を防止する。
【0103】
CAR-T細胞療法に関連したサイトカイン放出
【0104】
一実施形態では、サイトカイン放出は、CAR-T細胞療法のような免疫療法の投与の数日後から2週間後の間に起こる。一実施形態では、低血圧及び他の症状は、サイトカイン放出の後にすなわち数日から数週間続く。したがって、一実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、予防としての免疫療法と同時に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の2~3日後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の7日後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の10日後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の14日後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の2~14日後に対象に投与される。
【0105】
別の実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の2~3時間後に被験者に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の7時間後に被験者に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の10時間後に被験者に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の14時間後に被験者に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の2~14時間後に被験者に投与される。
【0106】
代替的な実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、予防としての免疫療法の前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の1日前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の2~3日前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の7日前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の10日前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の14日前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の2~14日前に対象に投与される。
【0107】
別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の2~3時間前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の7時間前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の10時間前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の14時間前に対象に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、免疫療法の投与の2~14時間前に対象に投与される。
【0108】
別の実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、サイトカイン放出症候群が起こると、治療的に投与され得る。一実施形態では、サイトカイン放出症候群の開始につながるか、またはサイトカイン放出症候群の開始の証拠となるサイトカイン放出が検出されると、アポトーシス細胞または上清を投与され得る。一実施形態では、アポトーシス細胞または上清は、増加したサイトカインレベルまたはサイトカイン放出症候群を終結させ、その後遺症を回避することができる。
【0109】
別の実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、複数の時点で治療的に投与され得る。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の投与は、少なくとも本明細書に記載される2つの時点である。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の投与は、少なくとも本明細書に記載される3つの時点である。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の投与は、CRSかまたはサイトカインストームの前でかつサイトカイン放出症候群が起こっているときか、それらの任意の組み合わせである。
【0110】
一実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法及びアポトーシス細胞療法または上清を一緒に投与する。別の実施形態において、CAR-T細胞療法は、アポトーシス細胞療法または上清の後に投与される。別の実施形態において、CAR-T細胞療法は、アポトーシス細胞療法または上清の前に投与される。この態様によれば、一実施形態において、アポトーシス細胞療法または上清は、CAR-T細胞治療の約2~3週間後に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞療法または上清は、CAR-T細胞治療の約6~7週間後に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞療法または上清は、CAR-T細胞治療の約9週間後に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞療法または上清は、CAR-T細胞治療の数ヶ月後に投与される。
【0111】
したがって、一実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、予防としての免疫療法と同時に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の2~3日後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の7日後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の10日後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の14日後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の2~14日後に対象に投与される。
【0112】
別の実施形態においては、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清が、免疫療法の投与の2~3時間後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の7時間後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の10時間後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の14時間後に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の投与の2~14時間後に対象に投与される。
【0113】
代替的な実施形態においては、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清が、予防として免疫療法の前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の1日前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の2~3日前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の7日前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の10日前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の14日前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の2~14日前に対象に投与される。
【0114】
別の実施形態においては、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清が、免疫療法の2~3時間前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の7時間前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の10時間前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の14時間前に対象に投与される。別の実施形態においては、アポトーシス細胞または上清が、免疫療法の2~14時間前に対象に投与される。
【0115】
別の実施形態においては、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、サイトカイン放出症候群が起こると、治療的に投与され得る。一実施形態では、サイトカイン放出症候群の開始につながるか、またはサイトカイン放出症候群の開始の証拠となるサイトカイン放出が検出されると、アポトーシス細胞または上清が投与され得る。一実施形態では、アポトーシス細胞または上清は、増加したサイトカインレベルまたはサイトカイン放出症候群を終結させ、その後遺症を回避することができる。
【0116】
別の実施形態において、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、複数の時点で治療的に投与され得る。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の投与は、少なくとも本明細書に記載される2つの時点である。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の投与は、少なくとも本明細書に記載される3つの時点である。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の投与は、CRSかまたはサイトカインストームの前であり、かつサイトカイン放出症候群が起こっているとき、及びそれらの任意の組み合わせである。
【0117】
一実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法及びアポトーシス細胞療法または上清を一緒に投与する。別の実施形態においては、CAR-T細胞療法は、アポトーシス細胞療法または上清の後に投与される。別の実施形態においては、CAR-T細胞療法は、アポトーシス細胞療法または上清の前に投与される。この態様によれば、一実施形態において、アポトーシス細胞療法または上清は、CAR-T細胞治療の約2~3週間後に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞療法または上清は、CAR-T細胞治療の約6~7週間後に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞療法または上清は、CAR-T細胞治療の約9週間後に投与される。別の実施形態において、アポトーシス細胞療法または上清は、CAR-T細胞治療の数ヶ月後に投与される。
【0118】
他の実施形態では、予防としての免疫療法と同時に、追加的な薬剤を対象に投与する。一実施形態では、追加的な薬剤は、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、CTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、細胞系化合物、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与後2~3日の対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与後7日の対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与後10日の対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与後14日の対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与後2~14日の対象に投与される。
【0119】
別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の2~3時間後に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の7時間後に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の10時間後に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の14時間後に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の2~14時間後に対象に投与される。
【0120】
代替的な実施形態では、追加的な薬剤は、予防として免疫療法の前に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の1日前に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の2~3日前に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の7日前に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の10日前に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の14日前に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の2~14日前に対象に投与される。
【0121】
別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の7時間前に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の10時間前に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の14時間前に対象に投与される。別の実施形態では、追加的な薬剤は、免疫療法の投与の2~14時間前に対象に投与される。
【0122】
別の実施形態においては、追加的な薬剤は、サイトカイン放出症候群が起こると、治療的に投与される。一実施形態では、サイトカイン放出症候群の開始につながるか、またはサイトカイン放出症候群の開始の証拠となるサイトカイン放出が検出されると、追加的な薬剤が投与される。一実施形態では、追加的な薬剤は、増加したサイトカインレベル、またはサイトカイン放出症候群を終了させ、その後遺症を回避することができる。
【0123】
別の実施形態では、追加の薬剤は、複数の時点で治療的に投与される。別の実施形態では、追加の薬剤の投与は、少なくとも本明細書に記載される2つの時点である。別の実施形態では、追加の薬剤の投与は、少なくとも本明細書に記載される3つの時点である。別の実施形態において、追加的な薬剤の投与は、CRSかまたはサイトカインストームの前、サイトカイン放出症候群が起きたとき、及びそれらの任意の組み合わせである。
【0124】
一実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法及び追加的な薬剤を一緒に投与する。別の実施形態では、CAR-T細胞療法は、追加的な薬剤を投与される。別の実施形態では、CAR-T細胞療法は、追加的な薬剤の前に投与される。この態様によれば、一実施形態では、CAR-T細胞治療の約2~3週間後に追加的な薬剤が投与される。別の実施形態では、CAR-T細胞治療の約6~7週間後に追加的な薬剤が投与される。別の実施形態では、CAR-T細胞治療の約9週間後に追加的な薬剤が投与される。別の実施形態では、CAR-T細胞治療の数ヶ月後に追加的な薬剤が投与される。
【0125】
一実施形態では、CAR-T細胞は、対象に対して異種である。一実施形態では、CAR-T細胞は、1以上のドナーに由来する。一実施形態では、CAR-T細胞は、1以上の骨髄ドナーに由来する。別の実施形態では、CAR-T細胞は、1以上の血液バンク献血に由来する。一実施形態では、ドナーは適合ドナー(マッチドナー)である。一実施形態では、CAR-T細胞は、ユニバーサル同種異系CAR-別の実施形態では、CAR-T細胞は、非適合の(アンマッチの)第三者のドナーからのものである。別の実施形態では、CAR-T細胞は、プールされた第三者のドナーからのものである。一実施形態では、ドナーは骨髄ドナーである。別の実施形態において、ドナーは、血液バンクドナーである。一実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法のCAR-T細胞は、1以上のMHC非制限腫瘍指向性キメラ受容体を含む。一実施形態では、非自己T細胞は、例えば引用により本明細書に組み入れられる米国特許出願第2013/0156794号明細書に記載されているように、自己免疫反応を予防または最小限に抑えるために、当該分野で公知のプロトコールにしたがって改変または投与され得る。
【0126】
他の実施形態では、CAR-T細胞は、自己由来である。一実施形態では、患者自身の細胞が使用される。この実施形態において、患者自身の細胞が使用される場合、CAR-T細胞療法は、アポトーシス細胞療法の後に投与される。
【0127】
一実施形態では、アポトーシス細胞は対象に対して異種である。一実施形態では、アポトーシス細胞は、1以上のドナーに由来する。一実施形態では、アポトーシス細胞は、1以上の骨髄ドナーに由来する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、1以上の血液バンク献血に由来する。一実施形態では、ドナーはマッチドナーである。別の実施形態において、アポトーシス細胞は、アンマッチの第三者のドナー由来である。一実施形態では、アポトーシス細胞はユニバーサル同種異系アポトーシス細胞である。別の実施形態では、アポトーシス細胞は同系ドナーからのものである。別の実施形態では、CAR-T細胞は、プールされた第三者のドナーからのものである。一実施形態では、ドナーは骨髄ドナーである。別の実施形態において、ドナーは、血液バンクドナーである。別の実施形態において、アポトーシス細胞は対象の自家由来である。この実施形態では、患者自身の細胞が使用される。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、本明細書中に開示される治療用単核豊富細胞調製物またはアポトーシス細胞上清は、全身的に対象に投与される。別の実施形態において、投与は、静脈内経路による。あるいは、治療用単核豊富細胞または上清を、これに限定されないが、非経口、腹腔内、関節内、筋肉内及び皮下経路を含む様々な他の経路によって対象に投与することができる。各可能性は、本明細書に開示されるそれぞれ別の実施形態を表す。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、本明細書中に開示される治療用単核豊富細胞調製物または追加的な薬剤は、全身的に対象に投与される。別の実施形態において、投与は、静脈内経路による。あるいは、治療用単核豊富細胞または追加の薬剤は、これに限定されないが、非経口、腹腔内、関節内、筋肉内及び皮下経路を含む様々な他の経路にしたがって対象に投与することができる。各可能性は、本明細書に開示されるそれぞれ別の実施形態を表す。
【0130】
一実施形態では、製剤は、全身的ではなく局所的な方法で、例えば患者体内の特定の領域に直接製剤を注射することによって投与される。別の実施形態において、特定の領域は、腫瘍または癌を含む。
【0131】
別の実施形態では、治療用単核豊富細胞または上清を、これらに限定しないが、生理学的溶液(生理食塩水等)、PBS、HBSSなどの適切な生理学的緩衝液中に懸濁させて対象に投与する。さらに、懸濁媒体は、細胞の生存能力を維持するのに役立つサプリメントをさらに含んでもよい。別の実施形態では、例えば、生理学的溶液、PBS、HBSSなどの生理学的緩衝液に懸濁された追加的な薬剤を対象に投与する。
【0132】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物が静脈内投与される。別の実施形態によれば、医薬組成物は単回投与で投与される。別の実施形態によれば、医薬組成物は複数回投与で投与される。別の実施形態によれば、医薬組成物は、2回投与で投与される。別の実施形態によれば、医薬組成物は、3回投与で投与される。別の実施形態によれば、医薬組成物は、4回投与で投与される。別の実施形態によれば、医薬組成物は、5回投与またはそれ以上の回数の投与で投与される。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、静脈注射用に製剤化される。
【0133】
一実施形態では、改変CAR発現免疫細胞を対象に与える任意の適切な方法を、本明細書に記載の方法のために使用することができる。一実施形態では、対象に細胞を与える方法は、造血細胞移植(HCT)、癌患者へのドナー由来NK細胞の注入、またはそれらの組み合わせを含む。
【0134】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または低減させる方法であって、アポトーシス細胞を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。
【0135】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または低減させる方法であって、アポトーシス細胞・食細胞上清などのアポトーシス細胞上清を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。
【0136】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または低減させる方法であって、少なくとも1つの追加的な薬剤を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。
【0137】
特定の実施形態では、CAR-T細胞療法は、本明細書に開示されるCAR-T細胞及びアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清、またはその他の追加の薬剤あるいは追加の薬剤の組み合わせを含む、本明細書に開示される組成物を投与することを含む。代替的な実施形態では、CAR-T細胞療法は、本明細書に開示されるCAR-T細胞を含む組成物及びアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清、または追加の薬剤またはそれらの組み合わせのいずれかを含む組成物投与することを含む。
【0138】
非CAR-T細胞適用に関連するサイトカイン放出
【0139】
一実施形態では、本明細書に記載されているのは、サイトカン放出症候群またはサイトカインストームに罹患している対象またはサイトカン放出症候群またはサイトカインストームを発症しやすい対象におけるサイトカイン産生を低減または阻害する方法であって、アポトーシス細胞またはアポトーシス上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを含み、前記投与は、前記対象におけるサイトカイン産生を低減させるかまたは阻害する、該方法である。別の実施形態では、サイトカイン産生の減少または阻害を、サイトカン放出症候群またはサイトカインストームに罹患している、またはサイトカン放出症候群またはサイトカインストームを発症しやすく、かつアポトーシス細胞またはアポトーシス上清を投与されていない対象と比較する。別の実施形態では、サイトカイン産生を減少または阻害する方法は、炎症誘発性サイトカイン産生を減少または抑制する。別の実施形態において、サイトカイン産生を減少または阻害する方法は、少なくとも1つの炎症誘発性サイトカインの産生を減少または抑制する。別の実施形態において、サイトカイン産生を減少または阻害する方法は、少なくともサイトカインIL-6の産生を減少または抑制する。別の実施形態において、サイトカイン産生を減少または阻害する方法は、少なくともサイトカインIL-1βの産生を減少または抑制する。別の実施形態において、サイトカイン産生を減少または阻害する方法は、少なくともサイトカインTNF-αの産生を減少または抑制する。別の実施形態において、サイトカイン産生を減少または阻害するための本明細書に開示される方法は、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに罹患しているか、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに発症しやすく、かつアポトーシス細胞またはアポトーシス上清を投与されていない対象と比較して、前記対象にサイトカインIL-6、IL-1β、またはTNF-αの産生の低減または阻害をもたらす。
【0140】
癌または腫瘍はまた、炎症誘発性サイトカインを含むサイトカインの絶対レベルに影響を与え得る。対象における腫瘍負荷のレベルは、サイトカインレベル、特に前炎症性サイトカインレベルに影響を及ぼし得る。当業者は、語句「減少または抑制する」またはその文法的変形が、サイトカイン産生の大幅な減少または阻害、またはサイトカイン産生の正味の減少または阻害またはパーセント(%)の減少または阻害を包含し得るものであり、またはサイトカイン産生の減少または阻害の変化率を包含し得るものであることを理解されよう。
【0141】
別の実施形態において、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに罹患しているか、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに発症しやすい対象におけるサイトカイン産生を減少または阻害するための本明細書に開示される方法は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0142】
別の実施形態において、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに罹患しているか、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに発症しやすい対象におけるサイトカイン産生を減少または阻害するための本明細書に開示される方法は、アポトーシス細胞上清などのアポトーシス細胞・食細胞上清、または前記上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0143】
別の実施形態において、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに罹患しているか、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに発症しやすい対象におけるサイトカイン産生を減少または阻害するための本明細書に開示される方法は、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、免疫調節剤またはその任意の組み合わせを含む群から選択される追加的の薬剤のようなアポトーシス細胞上清、あるいは前記上清を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0144】
一実施形態では、感染により、前記対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームが引き起こされる。一実施形態では、感染はインフルエンザ感染である。一実施形態では、インフルエンザ感染はH1N1である。別の実施形態において、インフルエンザ感染はH5N1鳥インフルエンザである。別の実施形態において、感染症は重症急性呼吸器症候群(SARS)である。別の実施形態において、前記対象はエプスタイン・バール・ウイルス関連血球貪食症候群(HLH)を有する。別の実施形態において、感染は敗血症である。一実施形態では、その敗血症はグラム陰性である。別の実施形態において、感染はマラリアである。別の実施形態において、感染はエボラウイルス感染である。別の実施形態において、感染は天然痘ウイルスである。別の実施形態において、感染は全身型グラム陰性菌感染症である。別の実施形態において、感染はヤーリッシュ・ヘルクスハイマー症候群である。
【0145】
一実施形態では、対象におけるカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、血球貪食症候群(HLH)である。別の実施形態において、HLHは突発性HLHである。別の実施形態において、HLHはマクロファージ活性化症候群(MAS)である。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因はMASである。
【0146】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は慢性関節炎である。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、スティル病としても知られている全身型若年性発作関節炎(sJIA)である。
【0147】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、クリオピリン関連周期性発熱症候群(CAPS)である。別の実施形態では、CAPSは、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)としても知られている家族性寒冷自己炎症症候群(FCAS)を含む。別の実施形態において、CAPSはマックル・ウェルズ症候群(MWS)を含む。別の実施形態において、CAPSは慢性乳児神経皮膚関節炎症候群(CINCA)を含む。さらに別の実施形態において、CAPSはFCAS、FCU、MWS、またはCINCA症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、FCASである。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、FCUである。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、MWSである。別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、CINCA症候群である。さらに別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、FCAS、FCU、MWS、またはCINCA症候群、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0148】
別の実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、CIASI遺伝子としても知られるNLRP3遺伝子の遺伝的または新生の機能獲得変異を含むクリオピリン関連周期性発熱症候群である。
【0149】
一実施形態では、対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの原因は、遺伝性自己炎症性疾患である。
【0150】
一実施形態では、炎症性サイトカイン放出のトリガーは、リポ多糖(LPS)、グラム陽性毒素、真菌毒素、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)またはRIG-1遺伝子発現の調節である。
【0151】
別の実施形態では、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに罹患している対象は、感染症を有していない。一実施形態では、前記対象は急性膵炎を有する。別の実施形態では、前記対象は一実施形態では重症熱傷または外傷である組織傷害である。別の実施形態では、前記対象は急性呼吸窮迫症候群を有する。別の実施形態では、前記対象は、薬物使用に伴うサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを有する。別の実施形態では、前記対象は、毒素吸入に伴うサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを有する。
【0152】
別の実施形態では、前記対象は、免疫療法を受けることに伴うサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを有し、前記免疫療法は、一実施形態では、スーパーアゴニストCD28特異的モノクローナル抗体(CD28SA)を用いた免疫療法である。一実施形態では、CD28SAはTGN1412である。別の実施形態において、免疫療法はCAR-T細胞療法である。別の実施形態において、免疫療法は樹状細胞療法である。
【0153】
別の実施形態において、医薬組成物の投与から生じるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを制御するために、アポトーシス細胞または上清またはCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片、その類似体、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせが使用され得る。一実施形態では、医薬組成物は、オキサリプラチン、シタラビン、レナリドマイド、またはそれらの組み合わせである。
【0154】
別の実施形態において、抗体の投与から生じるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを制御するために、アポトーシス細胞または上清またはCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片、その類似体、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせが使用され得る。一実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。一実施形態では、抗体はリツキシマブである。別の実施形態では、抗体はオルソクローンOKT3(ムロモナブ-CD3)である。別の実施形態では、抗体はアレムツズマブ、トシツズマブ、CP-870、893、LO-CD2a/BTI-322またはTGN1412である。
【0155】
別の実施形態では、炎症性サイトカイン産生の制御が有益であり得る疾患の例として、癌、アレルギー、あらゆるタイプの感染症、毒素ショック症候群、敗血症、あらゆるタイプの自己免疫疾患、関節炎、クローン病、狼瘡、乾癬、その他、顕著な特徴が対象において有害な作用を引き起こす毒性サイトカイン放出であるあらゆる他の病気などが挙げられる。
【0156】
T細胞受容体(TCR)
【0157】
別の実施形態において、本明細書に開示される組成物及び方法は、CAR-T細胞に加えてまたはその代わりに、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、免疫調節剤またはその任意の組み合わせ、及びデザイナーT細胞受容体による組み合わせ療法を利用する。一実施形態では、TCR療法は、目的のタンパク質のエピトープに特異的なT細胞受容体(TCR)をT細胞に導入することを含む。別の実施形態では、目的のタンパク質は腫瘍関連抗原である。別の実施形態において、遺伝子操作されたTCRは、T細胞活性化ドメインと共に腫瘍細胞上の主要組織適合複合体(MHC)によって提示される腫瘍抗原エピトープを認識する。別の実施形態では、T細胞受容体は、それらの細胞内または膜の局在とは無関係に抗原を認識する。別の実施形態では、TCRは、腫瘍関連抗原を細胞内で発現する腫瘍細胞を認識する。一実施形態では、TCRは内部抗原を認識する。様々な遺伝子改変T細胞受容体及びそれらの製造方法は当該分野で公知である。
【0158】
一実施形態では、血液学的疾患(リンパ腫及び白血病)及び固形腫瘍(難治性メラノーマ、肉腫)を含む進行性転移性疾患またはその発生を治療、予防、抑制、改善、低減、または緩和するためにTCR療法が使用される。別の実施形態において、T細胞受容体は、NY-ESO-1エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCR改変T細胞は、抗NY-ESO-1である。別の実施形態において、T細胞受容体は、HPV-16 E6エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCR改変T細胞は、抗HPV-16 E6である。別の実施形態において、T細胞受容体は、HPV-16 E7エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCR改変T細胞は、抗HPV-16 E7である。別の実施形態において、T細胞受容体は、MAGE A3/A6エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCR改変T細胞は、抗MAGE A3/A6である。別の実施形態において、T細胞受容体は、MAGE A3エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCR改変T細胞は、抗MAGE A3である。別の実施形態において、T細胞受容体は、SSX2エピトープに結合するように遺伝子改変され、TCR改変T細胞は、抗SSX2である。
【0159】
本明細書に開示される組成物及び方法において使用されるTCR療法は、Sadelainら(ibid)の表1に記載された悪性腫瘍を治療する。
【0160】
樹状細胞
【0161】
別の実施形態において、樹状細胞を用いた免疫療法の安全性を高めるために、アポトーシス細胞または上清またはCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片、その類似体、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせが使用され得る。一実施形態では、樹状細胞(DC)は、抗原物質を処理し、それを免疫系のT細胞に細胞表面上に提示し、それによりT細胞を新しい抗原とリコール抗原の両方に感作することができる哺乳動物免疫系の抗原産生及び提示細胞である。別の実施形態では、DCは、最も強力な抗原産生細胞であり、自然免疫系と適応免疫系との間のメッセンジャーとして作用する。DC細胞は、一実施形態では、腫瘍を攻撃及び溶解するエフェクター細胞の生成を介して特異的な抗腫瘍免疫を開始するために使用され得る。
【0162】
樹状細胞は、皮膚(ランゲルハンス細胞と呼ばれる特殊な樹状細胞型がある)及び鼻、肺、胃及び腸の内層のような外部環境と接触している組織に存在する。それらはまた、血中で未成熟状態で見出すことができる。活性化されるとそれらはリンパ節に移動し、そこでT細胞及びB細胞と相互作用して適応免疫応答を開始及び形成する。一定の開発段階では、樹状突起細胞の名前が由来する樹状の突起を成長させる。樹状細胞は、特定の腫瘍抗原を発現するように改変することができる。
【0163】
T細胞活性化に必要な3つのシグナルは、(i)自己MHC分子における同族抗原の提示、(ii)膜結合受容体-リガンド対による同時刺激、及び(iii)続く免疫応答の分化を誘導する可溶性因子である。樹状細胞(DC)は、T細胞活性化に必要な3つのシグナルの全てを提供することができ、優れた癌ワクチンプラットフォームとなる。
【0164】
したがって、別の実施形態では、本明細書に開示されるものは、樹状細胞及びアポトーシス細胞、アポトーシス上清、またはCTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物である。
【0165】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、樹状細胞療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または低減させる方法であって、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、またはCTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、樹状細胞療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを治療する方法であって、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、またはCTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。別の実施形態では、樹状細胞療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを予防する方法が、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、またはCTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、樹状細胞療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを改善する方法が、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、またはCTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、樹状細胞療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを緩和する方法が、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、またはCTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0166】
一実施形態では、本明細書に記載されるのは、樹状細胞及び追加的な薬剤を含む組成物であって、前記追加的な薬剤が、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、またはCTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む、該組成物である。
【0167】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、サイトカイン放出症候群または樹状細胞療法を受けている対象においてサイトカイン産生を低減または阻害する方法であって、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、またはCTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。
【0168】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、自己免疫毒性の発生を阻害または低減する方法であって、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞集団、アポトーシス細胞上清、またはCTLA-4阻止剤、α1-アンチトリプシンまたはその断片またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む組成物を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。
【0169】
α-1-アンチトリプシン(AAT)
【0170】
α-1-アンチトリプシン(AAT)は、主に肝臓によって産生される循環52kDa糖タンパク質である。AATは主としてセリンプロテアーゼ阻害剤として知られており、遺伝子SERPINA1によってコードされている。AATは好中球エラスターゼを阻害し、循環AATの遺伝的欠損は、肺組織の劣化及び肝臓疾患をもたらす。炎症の間に、血清AAT濃度は健康な個体における濃度の2倍に増加する。
【0171】
AATレベルといくつかの炎症性疾患の重症度との間には負の相関関係がある。例えば、HIV感染、真性糖尿病、C型肝炎感染誘発慢性肝疾患、及びいくつかのタイプの血管炎を有する患者において、AATのレベルまたは活性の低下が文献に記載されている。
【0172】
ヒト血清由来のα-1-抗トリプシン(AAT)は、炎症誘発性サイトカインの産生を減少させ、抗炎症性サイトカインを誘導し、樹状細胞の成熟を妨げることが立証されている。
【0173】
実際、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)へのAATの添加により、LPS誘発TNF-α及びIL-1β放出が阻害されるが、IL-1受容体拮抗薬(IL-1Ra)及びIL-10産生が増加する。
【0174】
AATは、インビトロでIL-1β媒介膵島毒性を低下させ、AAT単独療法は膵島同種移植生存期間を延ばし、マウスでは抗原特異的免疫寛容を促進し、非肥満糖尿病(NOD)マウスでは糖尿病の進行を遅らせる。AATは、実験モデルにおいてLPS誘発急性肺傷害を抑制することが示された。近年、AATは、急性心筋虚血-再灌流傷害のマウスモデルにおいて、梗塞のサイズ及び心不全の重篤度を低下させることが示された。
【0175】
臨床グレードのヒトAAT(hAAT)による単剤療法は、実験的同種骨髄移植後の循環炎症誘発性サイトカインの減少、移植片対宿主病(GvHD)の重症度の低下、及び動物の生存の延長をもたらしたことが文献(Tawaraら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Jan 10; 109(2): 564-9)に記載されており、この文献の内容は引用により本明細書の一部とする。AAT処置は、アロ反応性Tエフェクター細胞の増殖を低減させたが、T調節性T細胞(Tregs)の回復を増やし、病理学的過程を減少させるようにT調節細胞に対するドナーTエフェクターの比率を変化させた。インビトロで、AATは、TNF-α及びIL-1βなどの前炎症性サイトカインのインビトロでのLPS誘発分泌を抑制し、抗炎症性サイトカインIL-10の産生を増やし、宿主樹状細胞におけるNF-κB転座を減少させた。Marcondes, Blood. 2014 (Oct 30; 124(18): 2881-91)(引用によりその内容を本明細書の一部とする)には、AATによる処置はGvHDを改善するだけでなく、移植片対白血病(GVL)効果を維持し、おそらくその効果をさらに高めることが示されている。
【0176】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)及びα-1-抗トリプシン(AAT)を含む組成物である。別の実施形態では、CAR-T細胞及びα-1-抗トリプシン(AAT)は別個の組成物である。別の実施形態では、AATは、完全長AATまたはその機能的断片を含む。別の実施形態では、AATは、完全長AATの類似体またはその機能的断片を含む。別の実施形態では、AATを含む組成物は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清をさらに含む。
【0177】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または低減させる方法であって、α-1-アンチトリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを治療する方法が、α-1-アンチトリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを予防する方法が、α-1-アンチトリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを改善する方法が、α-1-アンチトリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを緩和する方法が、α-1-アンチトリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0178】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに罹患している、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症しやすい対象においてサイトカイン産生を減少または阻害させる方法であって、α-1-アンチトリプシン(AAT)を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。
【0179】
一実施形態では、AATを単独で投与してサイトカイン放出を制御する。別の実施形態では、サイトカイン放出を制御するために、AAT及びアポトーシス細胞またはその組成物、またはアポトーシス細胞上清またはその組成物を投与する。
【0180】
免疫調節剤
【0181】
当業者であれば、免疫調節剤が細胞外メディエータ、受容体、細胞内シグナル伝達経路のメディエータ、及び翻訳及び転写のレギュレータを包含し得ることを理解されよう。一実施形態では、本明細書に開示される追加的な薬剤は、当該分野で公知の免疫調節剤である。別の実施形態では、本明細書に開示される方法における免疫調節剤の使用は、少なくとも1つのサイトカインのレベルを低下させる。別の実施形態では、本明細書に開示される方法における免疫調節剤の使用は、CRSまたはサイトカインストームを低減または阻害する。
【0182】
一実施形態では、免疫調節剤は、サイトカインまたはケモカインの放出をブロック、抑制または低減する化合物を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、IL-21またはIL-23、またはそれらの組み合わせの放出をブロック、抑制または低減する化合物を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ケモカイン受容体-5(CCR5)受容体アンタゴニストクラスにおける抗レトロウイルス薬、例えばマラビロクに含む。別の実施形態において、免疫調節剤は、抗DNAM-1抗体を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ヘパリン硫酸、ATP、及び尿酸、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される損傷/病原体関連分子(DAMP/PAMP)を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、シアル酸結合Ig様レクチン(Siglecs)を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、例えば調節CD4+ CD25+ T細胞(Tregs)または不変ナチュラルキラーT細胞(iNK T細胞)のような免疫トレランスの細胞メディエータを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ルキソリチニブ及びトファシチニブを含む群から選択されるJAK2またはJAK3阻害剤を含む。別の実施形態において、免疫調節剤は、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)の阻害剤、例えば、フォスタマチニブを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤ボリノスタットアセチル化STAT3を含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、NEDD化阻害剤、例えばMLN4924を含む。別の実施形態において、免疫調節剤は、miR-142アンタゴニストを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、シチジンの化学的類似体、例えばアザシチジンを含む。別の実施形態では、免疫調節剤は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤、例えばボリノスタットを含む。別の実施形態において、免疫調節剤は、ヒストンメチル化の阻害剤を含む。
【0183】
テルル系化合物
【0184】
テルルは、人体にみられる微量元素である。種々のテルル化合物は、免疫調節特性を有し、種々の前臨床及び臨床研究において有益な効果を有することが示されている。一実施形態では、本明細書に開示される方法は、追加的な薬剤としてのテルル系化合物の投与を含む。
【0185】
一実施形態において、テルル系化合物は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を阻害する。別の実施形態において、テルル系化合物は、少なくとも1つのサイトカインの分泌を低減させる。別の実施形態では、テルル化合物は、サイトカインストームのサイトカン放出症候群(CRS)を阻害または低減する。
【0186】
一実施形態では、本明細書に開示されるのは、キメラ受容体発現T細胞(CAR-T細胞)及びテルル系化合物を含む組成物である。別の実施形態では、CAR-T細胞及びテルル系化合物は別個の組成物である。別の実施形態では、AATは、完全長AATまたはその機能的断片を含む。別の実施形態では、AATは、完全長AATの類似体またはその機能的断片を含む。
【0187】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または低減させる方法であって、テルル系化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを治療する方法が、テルル系化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを予防する方法が、テルル系化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを改善する方法が、テルル系化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)療法を受けている対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを緩和する方法が、テルル系化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0188】
別の実施形態では、本明細書に記載されるのは、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームに罹患しているか、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症しやすい対象においてサイトカイン産生を減少または阻害または低減させる方法であって、テルル系化合物を含む組成物を前記対象に投与するステップを含む、該方法である。
【0189】
一実施形態において、テルル系化合物は、サイトカイン放出を制御するために単独で投与される。別の実施形態では、サイトカイン放出を制御するために、テルル系化合物及びアポトーシス細胞またはその組成物、またはアポトーシス細胞上清またはその組成物を投与する。
【0190】
遺伝的改変
【0191】
一実施形態では、T細胞、樹状細胞及び/またはアポトーシス細胞の遺伝子改変は、RNA、DNA、組換えウイルス、またはそれらの組み合わせを用いて達成され得る。一実施形態において、ガンマレトロウイルスまたはレンチウイルス由来のベクターは、本明細書に開示される組成物及び方法において使用される。別の実施形態では、これらのベクターは、導入遺伝子の永久発現の可能性をもって宿主ゲノムに組み込まれることができ、固有の免疫原性が低いものである。別の実施形態では、ホストゲノムに組み込まれ、及び/または固有の免疫原性が低い別のベクターが、本明細書に開示される組成物及び方法において使用され得る。別の実施形態では、非ウイルスベクター媒介スリーピングビューティ(Sleeping Beauty)トランスポゾンシステムを使用して、CAR及び他の遺伝子をT細胞に挿入する。別の実施形態において、「自殺遺伝子」は、T細胞に組み込まれ、プロアポトーシス遺伝子の発現は、全身的に送達された薬物に応答する誘導性プロモータの制御下にある。
【0192】
一実施形態において、遺伝子改変は一時的であり得る。別の実施形態において、遺伝子改変は、メッセンジャーRNA(mRNA)を利用し得る。別の実施形態においては、多数の細胞が、mRNAをトランスフェクトされたT細胞などの一時的に改変されたT細胞において複数回注入され得る。別の実施形態では、インビトロで転写されたmRNAを使用するリンパ球のRNAをベースにした電気穿孔が、タンパク質の一時的発現を約1週間にわたって媒介し、ウイルスベクターを組み込むリスクを回避する。別の実施形態では、mRNA形質導入された樹状細胞またはmRNA電気穿孔されたT細胞及びNKリンパ球が用いられる。
【0193】
遺伝子改変T細胞は、養子免疫伝達後も有害な影響を伴わずに10年以上維持され、遺伝子改変ヒトT細胞は基本的に安全であることが示されている。
【0194】
別の実施形態では、本明細書中に開示される組成物及び方法における遺伝子改変は、当技術分野で公知の任意の方法であり得る。
【0195】
アポトーシス細胞
【0196】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞(「Apocells」)は、国際公開第2014/087408号に記載されるとおりである。この特許文献は引用によりその全内容を本明細書の一部とする。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞は、当該分野で公知の任意の方法で製造される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞は、治療を受けている対象の自己細胞である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞は、治療を受けている対象の同種異系細胞である。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、本明細書中に開示されるような、または当技術分野で公知のアポトーシス細胞を含む。
【0197】
一実施形態では、アポトーシス細胞は単核豊富細胞を含む細胞調製物を含み、前記細胞調製物は少なくとも85%の単核細胞を含み、前記細胞調製物中の細胞の少なくとも40%は初期アポトーシス状態にあり、前記細胞調製物中の細胞の少なくとも85%は生細胞であり、前記細胞調製物は15%以下のCD15高発現細胞を含む。
【0198】
当業者であれば、「早期アポトーシス状態」という用語が、アポトーシスの後期兆候がなくアポトーシスの早期兆候を示す細胞を包含し得ることを理解するであろう。細胞におけるアポトーシスの早期兆候の例としては、ホスファチジルセリン(PS)の曝露及びミトコンドリア膜電位の喪失などが挙げられる。後期事象の例としてはヨウ化プロピジウム(PI)の細胞への導入及び最終的なDNA切断などが挙げられる。一実施形態では、細胞が「初期アポトーシス」状態にあることを記録するために、アネキシンVによるPI曝露検出及びPI染色が用いられ、アネキシンVで染色されるがPIでは染色されない細胞は、「早期アポトーシス」状態にあると考えられる。別の実施形態では、アネキシン-V FITC及びPIの両方によって染色される細胞は、「後期アポトーシス細胞」であると考えられる。別の実施形態では、アネキシン-VまたはPIのいずれかに染色されない細胞は、非アポトーシス生存細胞と考えられる。
【0199】
一実施形態では、アポトーシス細胞は初期アポトーシス状態の細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも90%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも80%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも70%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも60%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、前記細胞の少なくとも50%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。
【0200】
一実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、抗凝固剤をさらに含む。
【0201】
一実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、酸クエン酸デキストロース(ACD)剤A及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0202】
一実施形態では、組成物はメチルプレドニゾロンをさらに含む。一実施形態では、メチルプレドニゾロンの濃度は30μg/mlを超えない。一実施形態では、約140×10~210×10個のアポトーシス細胞が投与される。
【0203】
一実施形態では、アポトーシス細胞は高用量で使用される。一実施形態では、アポトーシス細胞は高濃度で使用される。一実施形態では、ヒトアポトーシス多形核好中球(PMN)が使用される。一実施形態では、50%がアポトーシス細胞である細胞群が使用される。一実施形態では、アポトーシス細胞は、メイギムザ染色細胞標本によって確認される。一実施形態では、細胞の生存能力は、トリパンブルー色素排除によって評価される。一実施形態において、細胞のアポトーシス及び壊死状態は、FACSで検出されるアネキシンV/ヨウ化プロピジウム染色によって確認される。
【0204】
一実施形態では、10×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1010個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では10×1011個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1012個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0205】
一実施形態では、高用量のアポトーシス細胞が投与される。一実施形態では、35×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、210×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、70×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、140×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、35~210×10個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0206】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される製造方法による単核豊富細胞組成物を得ることは、白血球除去輸血によって達成される。当業者であれば、「白血球除去輸血」という用語が、白血球がドナーの血液から分離されるアフェレーシス手順(血液成分分離手順)を包含し得ることは理解されよう。いくつかの実施形態によれば、ドナーの血液は白血球除去輸血を受け、したがって本明細書に開示される製造方法にしたがって単核豊富細胞組成物が得られる。回収された細胞の凝固を防止するために、当該技術分野で知られているように、白血球除去輸血中に少なくとも1つの抗凝固剤の使用が必要であることに留意されたい。
【0207】
いくつかの実施形態によれば、白血球除去輸血手順は、本明細書中に開示される製造方法による単核豊富細胞組成物の収集を可能にするように構成される。いくつかの実施形態によれば、白血球除去輸血によって得られる細胞収集物は、少なくとも65%を構成する。他の実施形態では、少なくとも70%、または少なくとも80%の単核細胞である。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、細胞ドナーからの血漿は、本明細書に開示される製造方法による単核豊富細胞組成物の取得と並行して収集される。いくつかの実施形態によれば、細胞ドナーからの約300~600mlの血漿が、本明細書に開示される製造方法による単核豊富細胞組成物の取得と並行して収集される。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される製造方法による単核豊富細胞組成物の取得と並行して収集される血漿は、凍結及び/または培養媒質の一部として使用される。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態を表す。本明細書中に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞の豊富な集団を取得するさらなる詳細な方法は、その全内容が引用により本明細書の一部とする国際公開第2014/087408号に記載されている。
【0208】
いくつかの実施形態によれば、最初の単核豊富細胞調製物は、少なくとも65%の単核細胞、少なくとも70%、または少なくとも80%の単核細胞を含むが、本明細書に開示される製造方法による本明細書に開示される最終医薬組成物は、少なくとも85%を含む。別の実施形態では、少なくとも90%、または少なくとも95%の単核細胞を含む。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態を表す。
【0209】
一実施形態では、アポトーシス細胞は、限定しないが、静脈内、皮下、結節内、腫瘍内、髄腔内、胸腔内、腹腔内、及び胸腺への直接的投与を含む任意の方法によって投与することができる。
【0210】
一実施形態では、アポトーシス細胞は同種異系である。一実施形態において、アポトーシス細胞は、プールされた第三者のドナー由来である。一実施形態では、本明細書中に開示される方法は、例えば引用により本明細書に組み入れられる米国特許出願第2013/0156794号明細書に記載されている1つ以上のステップを含む、同種異系細胞の拒絶を克服するために有用なさらなる工程を含む。一実施形態では、前記方法は、一実施形態では同種異系アポトーシス細胞であるアポトーシス細胞の投与前の完全または部分的なリンパ枯渇のステップを含む。一実施形態では、同種異系アポトーシス細胞がサイトカイン放出を制御するのに十分な期間、ホスト対移植片反応を遅延させるように、リンパ球枯渇を調整する。別の実施形態では、前記方法は、リンパ節からの同種異系アポトーシス性T細胞の放出を遅延させる薬剤の投与するステップを含み、そのような薬剤としては例えば、2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール(FTY720)、5-[4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]1,2,4-オキサジアゾール(SEW2871)、3-(2-(-ヘキシルフェニルアミノ)-2-オキソエチルアミノ)プロパン酸(W123)、(2-クロロ-4-(3-フェノキシフェニルチオ)フェニル)-2-(ヒドロキシメチル)ブチリルリン酸水素塩(KRP-203リン酸)または当該分野で公知の他の薬剤が挙げられ、前記方法は、有効で、かつ移植片対宿主病の開始がない同種異型アポトーシス細胞の使用を可能にするべく本明細書に開示される組成物及び方法の一部として使用され得る。別の実施形態では、同種間アポトーシス性T細胞によるMHC発現を抑制して、同種異系細胞の拒絶を低減する。
【0211】
別の実施形態において、前記方法は、投与前にレシピエントに提供されるWBC由来のアポトーシス細胞に放射線照射するステップを含む。一実施形態において、細胞は、アポトーシス細胞集団内の残存生存細胞の増殖及び/または活性化を回避するように放射線照射される。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞は、それらの早期のアポトーシス、免疫調節、及び安定性に関する特性をすべて保存する。別の実施形態では、放射線照射ステップはUV放射線を使用する。別の実施形態では、放射線照射ステップはガンマ線を使用する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、減少した割合の生存非アポトーシス細胞を含むか、アポトーシス細胞調製物中に存在するあらゆる生存非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された調製物を含むか、またはアポトーシス細胞調製物中に存在するあらゆる生存非アポトーシス細胞を含むか、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0212】
一実施形態では、初期アポトーシス状態の単核細胞を含むプールされた単核アポトーシス細胞調製物を使用し、該プールされた単核アポトーシス細胞は、少ない割合の生存非アポトーシス細胞、あらゆる生存非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された調製物、または、生存非アポトーシス細胞の増殖が減少した調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞は放射線照射されたものである。別の実施形態では、本明細書中に開示されているのは、いくつかの実施形態において、献血された血液から得られる白血球分画(WBC)に由来する、プールされた単核アポトーシス細胞調製物である。
【0213】
一実施形態では、アポトーシス細胞調製物が放射線照射される。別の実施形態において、前記放射線照射はガンマ線照射またはUV照射を含む。さらに別の実施形態においては、放射線照射された調製物は、非放射線照射のアポトーシス細胞調製物と比較して少ない数の非アポトーシス細胞を有する。別の実施形態において、放射線照射された調製物は、非放射線照射のアポトーシス細胞調製物と比較して少ない数の増殖細胞を有する。別の実施形態では、放射線照射された調製物は、非放射線照射アポトーシス細胞集団と比較して少ない数の潜在的に免疫学的に活性な細胞を有する。
【0214】
一実施形態において、プールされた血液は、ドナーとレシピエントとの間でマッチしない第三者の血液を含む。
【0215】
当業者であれば、「プールされた」という表現は、複数のドナーから採取され、後の使用のために調製され、保存されたものであり得る血液を包含し得ることを理解されよう。次いで、この結合した血液プールを処理して、プールされた単核アポトーシス細胞調製物を生成することができる。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、単核アポトーシス細胞の容易に利用可能な供給が利用可能であることを保証する。別の実施形態において、細胞は、アポトーシスが誘発される培養ステップの直前にプールされる。別の実施形態では、細胞は、再懸濁のステップでの培養ステップの後に、プールされる。別の実施形態では、細胞は、放射線照射ステップの直前にプールされる。別の実施形態では、細胞は、放射線照射ステップの後にプールされる。別の実施形態では、細胞は、調節方法のなかの任意のステップにおいてプールされる。
【0216】
一実施形態において、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2~25単位の血液中に存在する細胞に由来する。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2~5、2~10、2~15、2~20、5~10、5~15、5~20、5~25、10~15、10~20、10~25、6~13、または6~25単位の血液中に存在する細胞から構成される。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25単位の血液中に存在する細胞から構成される。必要な血液の単位数もまた、血液からのWBC回収の効率に左右される。例えば、WBC回収の効率が低いと、追加の単位の血液が必要となり、WBC回収の効率が高いと、必要な血液の単位数が少なくなる。いくつかの実施形態では、各単には血液バッグである。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、少なくとも25単位の血液、少なくとも50単位の血液、または少なくとも100単位の血液中に存在する細胞を含む。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態を表す。
【0217】
一実施形態では、血液の単位は、献血由来の白血球(WBC)画分を含む。別の実施形態では、献血は、血液センターまたは血液バンクからのものであり得る。別の実施形態では、献血は、プールされたアポトーシス細胞調製物の調製時に収集された病院のドナーからのものであり得る。別の実施形態において、複数のドナーからのWBCを含む血液の単位は、本明細書に開示される組成物及び方法の目的のために作られた独立した血液バンクに保存され、維持される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及びその方法の目的のために設立された血液バンクは、複数のドナーからのWBCを含む血液の単位を供給することができ、白血球除去輸血を含む。
【0218】
一実施形態において、プールされたWBCの単位は、HLAマッチングによって制限されない。したがって、結果として得られたアポトーシス細胞調製物は、HLAマッチングによって制限されない細胞集団を含む。したがって、特定の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、同種異系細胞を含む。
【0219】
HLAのマッチングに制限されない、プールされたWBCに由来するプールされた単核球アポトーシス細胞調製物の利点は、容易に入手できるWBCの供給源であり、WBCの取得コストを低減させることである。
【0220】
一実施形態において、プールされた血液は、HLAマッチングとは無関係に複数のドナーからの血液を含む。別の実施形態において、プールされた血液は、複数のドナーからの血液を含み、ここで、レシピエントとマッチするHLAが考慮されている。例えば、1個のHLA対立遺伝子、2個のHLA対立遺伝子、3個のHLA対立遺伝子、4個のHLA対立遺伝子、5個のHLA対立遺伝子、6個のHLA対立遺伝子、または7個のHLA対立遺伝子が、ドナーとレシピエントの間でマッチングされている。別の実施形態では、複数のドナーが部分的にマッチングされ、例えば、ドナーのうちのいくつかが、HLAマッチされたもので、1個のHLA対立遺伝子、2個のHLA対立遺伝子、3個のHLA対立遺伝子、4個のHLA対立遺伝子、5個のHLA対立遺伝子、6個のHLA対立遺伝子、または7個のHLA対立遺伝子が、いくつかのドナーとレシピエントの間でマッチングされている。各可能性は、本明細書に開示される実施形態を含む。
【0221】
特定の実施形態において、いくつかの生存可能な非アポトーシス細胞(耐アポトーシス)は、以下に記載されるアポトーシスステップの誘導後に残存し得る。これらの生存可能な非アポトーシス細胞の存在は、一実施形態では、放射線照射ステップの前に観察される。これらの生存可能な非アポトーシス細胞は、増殖し得るか、または活性化され得る。一実施形態では、複数のドナーに由来するプールされた単核球アポトーシス細胞調製物は、ホストに対して活性化されるか、相互に活性化されるか、またはその両方で活性化され得る。
【0222】
一実施形態では、本明細書に開示されるような放射線照射された細胞調製物は、非放射線照射細胞調製物と比較して、細胞活性化が抑制され、増殖が少なくなっていた。別の実施形態において、放射線照射はガンマ線照射またはUV照射を含む。別の実施形態では、放射線照射された細胞調製物は、非放射線照射細胞調製物と比較して非アポトーシス細胞の数が減少する。別の実施形態では、放射線照射は約15グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は約20グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は約25グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は約30グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は約35グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は約40グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は約45グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は約50グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は約55グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は約60グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射は最大2500グレイ単位(Gy)を含む。別の実施形態では、放射線照射されたプールされたアポトーシス細胞調製物は、非放射線照射のプールされたアポトーシス細胞調製物と同じまたは類似のアポトーシスプロファイル、安定性及び有効性を維持する。
【0223】
一実施形態では、本明細書に開示されるようなプールされた単核球アポトーシス細胞調製物は、24時間まで安定である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも24時間安定である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、24時間以上安定である。さらに別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、36時間まで安定である。さらに別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも36時間安定である。さらに別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、36時間以上安定である。さらに別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、48時間まで安定である。さらに別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも48時間安定である。さらに別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、48時間以上安定である。
【0224】
一実施形態では、放射線照射ステップを含むプールされた細胞調製物を製造する方法は、単一のマッチドナー由来のアポトーシス調製物において観察される初期アポトーシス、免疫調節及び安定性を保存し、細胞調製物が放射線照射ステップを含まなくてもよい。別の実施形態では、本明細書に開示されるように、プールされた単核球アポトーシス細胞調製物は、移植片対宿主病(GVHD)反応を誘発しない。
【0225】
細胞調製物の放射線照射は、当技術分野において安全であると考えられる。放射線照射手順は、WBCに対する反応を防ぐために、現在、定期的に輸血血液に対して実施されている。
【0226】
別の実施形態では、本明細書に開示されたようなプールされた単核球アポトーシス細胞調製物中のアポトーシス細胞の画分は100%に近く、それにより細胞調製物中の生存非アポトーシス細胞の画分が減少する。一実施形態では、アポトーシス細胞のパーセントは少なくとも40%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞のパーセントは少なくとも50%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞のパーセントは少なくとも60%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞のパーセントは少なくとも70%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞のパーセントは少なくとも80%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞のパーセントは少なくとも90%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞のパーセントは少なくとも99%である。したがって、生存非アポトーシス細胞の減少した画分を含むまたはそのような画分が存在しない細胞調製物は、一実施形態では、レシピエントにおいてGVHDを誘発しない、プールされた単核球アポトーシス細胞調製物を提供し得る。各可能性は、本明細書に開示される実施形態を表す。
【0227】
あるいは、別の実施形態では、生存非アポトーシスWBCのパーセンテージは、例えば標的化沈殿によって、生存細胞集団を特異的に除去することによって減少する。別の実施形態では、生存している非アポトーシス細胞のパーセントは、ホスファチジルセリンに結合する磁気ビーズを用いて減少させることができる。別の実施形態では、非アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーに結合するが、アポトーシス細胞には結合しない磁気ビーズを使用して、生存非アポトーシス細胞のパーセントを減少させることができる。別の実施形態では、アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーに結合するが、非アポトーシス細胞には結合しない磁気ビーズを使用して、アポトーシス細胞がさらなる調製のために選択され得る。さらに別の実施形態では、生存非アポトーシス性WBCのパーセンテージは、超音波の使用によって低減される。
【0228】
一実施形態において、アポトーシス細胞は、プールされた第三者のドナー由来である。
【0229】
一実施形態において、プールされた細胞調製物は、リンパ球、単球及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される少なくとも1つの細胞の種類を含む。別の実施形態では、プールされた細胞調製物は、単核豊富細胞集団を含む。一実施形態では、プールされた単核球は、リンパ球、単球及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される種類の細胞を含む単核豊富細胞調製物である。別の実施形態において、単核豊富細胞調製物は、顆粒球(すなわち、好中球、好塩基球及び好酸球)としても知られている多形核白血球を15%以下、あるいは10%以下、典型的には5%以下しか含まない。別の実施形態では、プールされた単核細胞調製物は顆粒球を欠いている。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態を表す。
【0230】
他の実施形態では、プールされた単核豊富細胞調製物は、15%以下、あるいは10%以下、典型的には5%以下のCD15高発現細胞を含む。一実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、15%未満のCD15高発現細胞を含む。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態を表す。
【0231】
一実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核細胞豊富調製物は、少なくとも80%の単核細胞、少なくとも85%の単核細胞、あるいは少なくとも90%の単核細胞、または少なくとも95%の単核細胞を含み、各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態である。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示されたプールされた単核豊富細胞調製物は、少なくとも85%の単核細胞を含む。
【0232】
別の実施形態では、最終的なプールされたパーセントが少なくとも80%である任意のプールされた細胞調製物が、本明細書に開示されるようなプールされた単核細胞豊富細胞集団であると考えられる。したがって、少なくとも80%単核細胞の得られた「プール」を有する高単核細胞を有する細胞調製物を用いて多形核細胞(PMN)の増加した細胞調製物をプールすることは、本明細書に開示される調製物を含む。いくつかの実施形態によれば、単核細胞は、リンパ球及び単球を含む。
【0233】
当業者であれば、「単核細胞」という用語が、1つの分葉核を有する白血球を包含し得ることを理解されよう。別の実施形態では、本明細書で開示されるように、プールされたアポトーシス細胞調製物は、5%未満の多形核白血球を含む。
【0234】
一実施形態では、アポトーシス細胞はT細胞である。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、CAR-T細胞と同じプールされた第三者のドナーT細胞由来である。別の実施形態では、アポトーシス細胞はCAR-T細胞集団に由来する。
【0235】
驚くべきことに、アポトーシス細胞は、IL-6などのサイトカインストームに関連するサイトカインの産生を減少させる。一実施形態では、アポトーシス細胞は、マクロファージ及びDCにおけるサイトカイン発現レベルに影響を及ぼすが、T細胞自体におけるサイトカイン発現レベルに影響しない。したがって、アポトーシス細胞がCAR-T細胞療法または樹状細胞療法の有効性向上に有用であることは予想外であった。
【0236】
別の実施形態では、アポトーシス細胞はT細胞の細胞死を誘発するが、サイトカイン発現レベルの変化を介するものではない。
【0237】
別の実施形態において、アポトーシス細胞は、アポトーシス細胞がなければサイトカインストームを増幅するであろう、マクロファージ及び樹状細胞のサイトカイン分泌のプライミングに拮抗する。別の実施形態において、アポトーシス細胞は、炎症応答を抑制し、及び/またはサイトカインの過剰放出を防止する制御性T細胞(Treg)を増加させる。
【0238】
一実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1つ以上の炎症誘発サイトカインを阻害する。一実施形態では、炎症誘発サイトカインは、IL-1β、IL-6、TNF-α、またはIFN-γ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態において、アポトーシス細胞の投与は、1つ以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。一実施形態では、抗炎症性サイトカインは、TGF-β、IL-10、またはPGE2、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0239】
別の実施形態において、アポトーシス細胞の投与は、TLRリガンドへの曝露後の樹状細胞の成熟を阻害する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、潜在的に寛容原性の樹状細胞を生成し、これは一実施形態では移動可能であり、一実施形態では、移動はCCR7によるものである。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、一実施形態ではTAM受容体シグナル伝達(Tyro3、Axl及びMer)である様々なシグナル伝達事象を誘発するし、このTAM受容体シグナル伝達は、一実施形態では、抗原提示細胞における炎症を阻害する。
【0240】
一実施形態では、Tyro-3、Axl及びMerは、キナーゼドメイン及び接着分子様細胞外ドメイン内の保存された配列によって特徴付けられる受容体チロシンキナーゼ(RTK)のTAMファミリーを構成する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、MerTKを介したシグナル伝達を活性化する。別の実施形態において、アポトーシス細胞の投与は、一実施形態ではNF-κBを負に調節する、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路を活性化する。別の実施形態において、アポトーシス細胞の投与は、一実施形態では、炎症誘発サイトカイン分泌、DC成熟、またはそれらの組み合わせの阻害をもたらす、インフラマソームを負に調節する。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、Nr4a、Thbs1、またはその組み合わせなどの抗炎症性遺伝子の発現をアップレギュレートする。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、一実施形態では、パネキシン1依存的に蓄積される高レベルのAMPを誘導する。別の実施形態において、アポトーシス細胞の投与は、炎症を抑制する。
【0241】
アポトーシス細胞上清(ApoSup及びApoSup Mon)
【0242】
一実施形態では、本明細書に開示されるような方法及び治療で使用するための組成物は、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清を含む。
【0243】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップ、(b)ステップ(a)のアポトーシス細胞を培養するステップ、及び(c)細胞から上清を分離するステップを含む方法によって得られる。
【0244】
一実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清を作製するためのアポトーシス細胞は、治療を受けている対象の自己細胞である。別の実施形態では、本明細書で開示されるアポトーシス細胞上清を作製するのに使用するためのアポトーシス細胞は、治療を受けている対象の同種異系である。
【0245】
アポトーシス細胞上清の取得元の「アポトーシス細胞」は、当業者に知られているアポトーシスを誘導する方法で用いられる、任意の種類の細胞または任意の市販の細胞株から選択された細胞であり得る。アポトーシスを誘導する方法は、低酸素、オゾン、熱、放射線、化学物質、浸透圧、pHシフト、X線照射、ガンマ線照射、UV照射、血清枯渇、コルチコイドまたはそれらの組み合わせを利用する方法か、または本明細書に記載されている方法か当該分野で公知である他の方法である。別の実施形態において、アポトーシスを誘導する方法は、初期アポトーシス状態においてアポトーシス細胞を製造する方法である。
【0246】
一実施形態では、アポトーシス細胞は白血球である。
【0247】
一実施形態では、前記アポトーシス性白血球は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来する。別の実施形態では、前記白血球は、プールされた第三者のドナー由来である。別の実施形態において、前記白血球は同種異系である。
【0248】
一実施形態によれば、アポトーシス細胞は、非接着性白血球を選択し、それらをアポトーシス誘導させ、その後のステップで培養培地中の細胞培養することよって提供される。アポトーシス細胞-食細胞上清を作製するために使用される「白血球」は、免疫系の有核細胞及び/または造血系の任意の系列またはサブ系列に由来したものであり得、限定しないが、樹状細胞、マクロファージ、好塩基球、造血幹細胞、骨髄細胞、ナチュラルキラー細胞などが挙げられる。白血球は、用途及び目的、所望の白血球系統などに応じて、様々な適切な解剖学的区画のいずれかから、任意の様々な適切な方法で誘導または取得することができる。一実施形態では、ソースの白血球は原発性白血球である。一実施形態では、ソースの白血球は初代末梢血白血球である。
【0249】
初代リンパ球及び単球は、好都合に末梢血に由来し得る。末梢血白血球には、70~95%のリンパ球及び5~25%の単球が含まれる。
【0250】
血液から特定の種類のソース白血球を得る方法は、日常的に実施されている。ソースリンパ球及び/または単球の取得は、例えば、ヘパリンまたはクエン酸などの抗凝固剤の存在下で血液を採取することによって達成することができる。採取された血液は、その後、フィコールクッション上で遠心分離され、勾配界面でリンパ球及び単球、ならびにペレット中の好中球及び赤血球が単離される。
【0251】
白血球は、標準的な免疫磁気選択または免疫蛍光フローサイトメトリー技術によって、それらの特異的な表面マーカーにしたがって、または遠心分離による溶離によって、互いに分離され得る。例えば、単球はCD14+画分として選択することができ、Tリンパ球はCD3+画分として、Bリンパ球はCD19+画分として、マクロファージはCD206+画分として選択することができる。
【0252】
リンパ球及び単球は、例えば、組織培養処理された培養レシピエントにおける静的培養(その結果、リンパ球ではなく単球の細胞接着性基質への選択的接着が生じる)などによる基質接着条件に供することによって互いに単離することができる。
【0253】
白血球はまた、末梢血単核細胞(PBMC)から得ることができ、本明細書に記載のように単離することができる。
【0254】
当業者であれば、本明細書中に開示されるような培養されたソース白血球の所望の量を生成するために初代白血球を適切に培養するために必要な専門知識を有しており、そのような培養方法を実施するための十分な指針が当該技術分野の文献から得られよう。
【0255】
当業者であれば、アポトーシス性白血球を誘導するための適切な樹立された白血球細胞株を構築、購入、または取得するために必要な専門知識をさらに有している。適切な白血球細胞株は、ATTC(American Tissue Type Collection)社のような商業的供給者から取得できる。ソース白血球は、アポトーシス性白血球を産生する能力を有意に妨げる技術によっては得られないことは、当業者には明らかであろう。
【0256】
一実施形態では、アポトーシス細胞は、調製物中の細胞の少なくとも40%が早期アポトーシス状態にある、少なくとも85%の単核細胞を含む単核豊富細胞を含む細胞調製物を含み、調製物中の細胞の少なくとも85%が生存可能な細胞であり、調製物は15%以下のCD15高発現細胞を含む。
【0257】
別の実施形態では、アポトーシス細胞はアポトーシス性リンパ球であり得る。一次リンパ球などのリンパ球のアポトーシスは、初代リンパ球を血清欠乏、コルチコステロイドまたは放射線照射で処置することによって誘導することができる。別の実施形態においては、コルチコステロイドによる処置を介して原発性リンパ球のアポトーシスを誘導することは、初代リンパ球をデキサメタゾンで処理することによって達成される。別の実施形態では、約1マイクロモルの濃度のデキサメタゾンで処理する。別の実施形態では、放射線照射による初代リンパ球のアポトーシスの誘導は、初代リンパ球をガンマ線照射で処置することによって実施される。別の実施形態では、放射線照射は約66ラドの線量で行われる。そのような処理は、貪食細胞との共培養ステップに適したアポトーシス性リンパ球の生成をもたらす。
【0258】
さらなる実施形態では、アポトーシス細胞は、アポトーシス性単球、例えば原発性単球であり得る。アポトーシス性単球を生成するために、単球を、血清枯渇の条件下で基質/表面接着のインビトロ条件の下におく。このような処置は、食細胞との共培養ステップに適した非炎症性アポトーシス単球の生成をもたらす。
【0259】
他の実施形態では、アポトーシス細胞は、同種異系アポトーシス細胞、第三者のアポトーシス細胞、及びアポトーシス細胞のプールを含む本明細書中に記載される任意のアポトーシス細胞であり得る。
【0260】
他の実施形態においては、アポトーシス細胞上清は、他の細胞とのアポトーシス細胞の共培養によって得ることができる。
【0261】
したがって、一実施形態において、アポトーシス細胞上清は、以下のステップ、すなわち、(a)アポトーシス細胞を提供するステップ、(b)他の細胞を提供するステップ、(c)任意選択で、ステップ(a)及び(b)からの細胞を洗浄するステップ、(d)ステップ(a)及び(b)の細胞を共培養するステップ、及び任意選択で、(e)上清を細胞から分離するステップを含む方法によって得られるアポトーシス細胞上清である。
【0262】
一実施形態では、アポトーシス細胞と共培養される他の細胞は白血球である。
【0263】
したがって、一実施形態において、アポトーシス細胞上清は、以下のステップ、すなわち、(a)アポトーシス細胞を提供するステップ、(b)白血球を提供するステップ、(c)任意選択で、ステップ(a)及び(b)からの細胞を洗浄するステップ、(d)ステップ(a)及び(b)の細胞を共培養するステップ、及び任意選択で、(e)上清を細胞から分離するステップを含む方法によって得られるアポトーシス細胞上清である。
【0264】
一実施形態では、白血球は、マクロファージ、単球または樹状細胞などの食細胞であり得る。
【0265】
一実施形態では、白血球はB細胞、T細胞、またはナチュラルキラー(NK細胞)であり得る。
【0266】
したがって、一実施形態では、本明細書中に開示されるような方法及び治療で使用するための組成物は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2014/106666号に記載されたアポトーシス細胞-食細胞上清を含む。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のためのアポトーシス細胞-食細胞上清は、当技術分野で公知の任意の方法で製造される。
【0267】
一実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清は、アポトーシス細胞と食細胞の共培養から得られる。
【0268】
したがって、一実施形態において、アポトーシス細胞-食細胞上清は、以下のステップ、すなわち、(a)食細胞を提供するステップ、(b)アポトーシス細胞を提供するステップ、(c)任意選択で、ステップ(a)及び(b)からの細胞を洗浄するステップ、(d)ステップ(a)及び(b)の細胞を共培養するステップ、及び任意選択で、(e)上清を細胞から分離するステップを含む方法によって得られる。
【0269】
「食細胞(貪食細胞)」という用語は、有害な異物、細菌、及び死んだ細胞または死んでいる細胞を摂取(貪食)することによって身体を保護する細胞を指す。食細胞としては、例えば、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、及びマストT細胞(好ましくは樹状細胞及び単球/マクロファージ)が挙げられる。食細胞は、樹状細胞(CD4+HLA-DR+系統-BDCA1/BDCA3+)、マクロファージ(CD14+CD206+HLA-DR+)、または単球(CD14+)由来であり得る。これらの異なる食細胞を区別する技術は、当業者に公知である。
【0270】
一実施形態において、単球は、プラスチック付着ステップによって得られる。前記単球は、マーカーCD14+を有するB及びT細胞から区別することができ、一方、望ましくないB細胞はCD19+及びT細胞のCD3+を発現する。マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)誘導成熟後、得られたマクロファージは、一実施形態では、マーカーCD14+、CD206+、HLA-DR+に対して陽性である。
【0271】
一実施形態では、前記食細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来する。
【0272】
食細胞は、食細胞を得るための当該分野で公知の任意の方法によって提供され得る。一実施形態では、マクロファージまたは樹状細胞のような食細胞は、成熟ステップによって、前駆細胞から対象から直接単離され得るか、または前駆細胞から誘導され得る。
【0273】
一実施形態では、マクロファージを対象の腹腔から直接単離し、完全なRRPMI培地で培養することができる。マクロファージはまた、脾臓から単離することもできる。
【0274】
食細胞は、末梢血単球からも得ることができる。この実施例では、培養した単球は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を細胞培養培地に添加することにより単球由来マクロファージに分化する。
【0275】
例えば、食細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来し得る。例えば、PBMCは、個体からの細胞抽出バッグから、細胞接着ステップにおいて完全RPMI培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)中に90分間プレーティングされ、フィコール勾配遠心分離を介して単離され得る。非接着性T細胞は、プラスチック接着ステップによって除去され、付着したT細胞は、組換えヒトM-CSFを補充した完全RPMI環境で培養される。培養期間後、単球由来のマクロファージが得られる。
【0276】
食細胞は、細胞接着ステップによって選択することができる。前記「細胞接着ステップ」とは、食細胞または食細胞に成熟し得る細胞が、培養された細胞の表面への接着を可能にする培養条件を介して、細胞接着表面(例えば、組織培養皿、マトリックス、適切なタイプのナイロンまたはプラスチックを有するサックまたはバッグ)で選択されることを意味する。当業者であれば、「細胞接着表面」という用語が、親水性及び負電荷を包含することができ、当技術分野で公知の様々な方法のいずれかで得ることができることを理解されよう。別の実施形態では、例えば、コロナ放電またはガスプラズマを使用してポリスチレン表面を改質する。これらのプロセスは、表面が親水性で負に帯電するように表面ポリスチレン鎖にグラフト重合する高エネルギー酸素イオンを生成する。細胞接着を促進するために設計された培養レシピエントは、様々なサプライヤ(例えば、コーニング社(Corning)、パーキン・エルマー社(Perkin-Elmer)、フィッシャー・サイエンティフィック社(Fisher Scientific)、エバーグリーン・サイエンティフィック社(Evergreen Scientific)、ヌンク社(Nunc)など)から入手可能である。
【0277】
B細胞、T細胞及びNK細胞は、そのような細胞を得るための当該分野で公知の任意の方法によって提供され得る。一実施形態では、B細胞、T細胞またはNK細胞は、対象から直接単離され得るか、または成熟ステップによって前駆細胞から誘導され得る。別の実施形態において、B細胞、T細胞またはNK細胞は、B細胞株、T細胞株またはNK細胞株由来であり得る。当業者であれば、適切な構築されたB細胞株、T細胞株及びNK細胞株を構築、購入、または他の方法で入手するために必要な専門知識を有するであろう。適切な細胞株は、ATCCのようなサプライヤから入手することができる。
【0278】
一実施形態では、前記アポトーシス細胞及び前記白血球、例えば食細胞、B細胞、T細胞またはNK細胞は、共培養ステップ(d)の前に個々に培養される。
【0279】
食細胞の細胞成熟は、例えば培地への成熟因子の添加に起因して細胞培養中に起こる。一実施形態では、前記成熟因子はM-CSFであり、これは例えば単球由来のマクロファージを得るために使用することができる。
【0280】
食細胞の成熟または選択のために使用される培養ステップは、数時間から数日かかることがある。別の実施形態では、前記前成熟貪食細胞は、適切な培地で2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、または58時間培養する。
【0281】
食細胞の培養培地は、当業者に公知であり、例えば、限定しないがRPMI、DMEM、X-vivo(登録商標)及びUltraculture(登録商標)培地であり得る。
【0282】
一実施形態では、アポトーシス細胞及び食細胞の共培養は生理学的溶液中で起こる。
【0283】
この「共培養」の前に、細胞を洗浄ステップに供することができる。一実施形態において、白血球(例えば、食細胞)及びアポトーシス細胞は、共培養ステップの前に洗浄される。別の実施形態では、細胞をPBSで洗浄する。
【0284】
共培養中には、白血球(例えば、マクロファージ、単球または食細胞またはB細胞、T細胞またはNK細胞などの食細胞)とアポトーシス細胞を、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1または1:1の比率で、または1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10の(白血球:アポトーシス細胞)比率で混合し得る。一例では、白血球対アポトーシス細胞の比は1:5である。
【0285】
細胞の共培養は数時間から数日間であり得る。いくつかの実施形態では、前記アポトーシス細胞は2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52時間培養される。当業者であれば、抗炎症性化合物の存在、白血球の生存量及びこれまでに除去されていないアポトーシス細胞の量を測定することにより、共培養の最適時間を評価することができる。
【0286】
食細胞によるアポトーシス細胞の排除は、アポトーシス細胞の消失のために光学顕微鏡で観察可能である。
【0287】
一実施形態では、アポトーシス細胞の培養、例えば白血球(例えば、マクロファージ、単球または食細胞などの食細胞、またはB細胞、T細胞またはNK細胞)の培養液との共共培養は、培養培地及び/または対象への注射等による投与に適合する生理学的溶液内で起こる。
【0288】
当業者であれば、「生理学的溶液」は、培養時間内に白血球の死に至らない溶液を包含し得ることを理解されよう。いくつかの実施形態では、生理学的溶液は2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52時間にわたって死に至らない。他の実施形態では、48時間または30時間である。
【0289】
一実施形態では、白血球(例えばマクロファージ、単球または食細胞またはB細胞、T細胞またはNK細胞などの食細胞)及びアポトーシス細胞を少なくとも30分間生理学的溶液中で培養する。この培養時間により、サイトカイン及び他の有益な物質の貪食開始及び分泌が可能となる。
【0290】
一実施形態では、そのような生理学的溶液は、白血球由来マクロファージによるアポトーシス性白血球除去を抑制しない。
【0291】
培養または共培養ステップの終わりに、上清は、任意選択で、培養されたアポトーシス細胞または共培養細胞から分離される。上清を細胞から分離する技術は、当技術分野で公知である。例えば、細胞及び残屑を除去するために、上清を収集及び/またはろ過及び/または遠心分離することができる。例えば、前記上清を室温において15分間3000rpmで遠心分離して細胞から分離することができる。
【0292】
上清は、使用前に、例えば放射線照射によって「不活性化」され得る。したがって、アポトーシス細胞上清を作製するための方法は、任意選択の追加の放射線照射ステップ(f)を含み得る。前記「放射線照射」ステップは、血液製剤を不活性化するために日常的に行われるように、微生物を殺すのに十分な速度でX線照射(25~45グレイ)を用いる殺菌方法と考えることができる。
【0293】
上清の放射線照射は当該技術分野において安全であると考えられる。放射線照射手順は、WBCとの反応を防ぐために、現在、輸血された血液に対して定期的に実施されている。
【0294】
一実施形態において、アポトーシス細胞上清は、本明細書に詳細に記載されるように、対象への投与に適した医薬組成物に製剤化される。
【0295】
一実施形態では、最終生成物を+4℃で保存する。別の実施形態では、最終生成物は次の48時間で使用するためのものである。
【0296】
一実施形態では、アポトーシス細胞食細胞上清などのアポトーシス細胞上清を含む医薬組成物を、例えば-80℃での保存のために凍結乾燥することができる。
【0297】
1つの特定の実施形態では、国際公開第2014/106666号の実施例1に記載されているように、アポトーシス細胞-食細胞上清は、アポトーシス細胞として胸腺細胞を用いて作製され得る。単離後、胸腺細胞を放射線照射し(例えば、35X-グレイ照射で)、完全DMEM培地中で、例えば6時間培養し、アポトーシスを起こさせる。並行して、マクロファージを腹膜腔から単離し、完全RPMI(10%FBS、Peni-Strepto、EAA、Hepes、NaP及び2-メルカプトエタノール)中で洗浄及び培養する。次いで、マクロファージ及びアポトーシス細胞を洗浄し、1/5のマクロファージ/アポトーシス細胞比でフェノールを含まないX-vivo(登録商標)培地中でさらに48時間共培養する。次いで、上清を回収し、遠心分離して残屑を除去し、保存のために凍結または凍結乾燥することができる。マクロファージの濃縮は、FACSによるF4/80の陽性染色を用いて確認することができる。アポトーシスは、アネキシンV及び7AAD排除について陽性染色を用いてFACSによって確認することができる。
【0298】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清は、別々に培養されたマクロファージまたはアポトーシス細胞のいずれかから得られた上清と比較して、TGF-βの活性型及び潜在型の両方におけるTGF-βレベルが高くなるように濃縮されている。一実施形態では、単独で培養されたマクロファージと比較してIL-10レベルも上昇し、単独で培養されたアポトーシス細胞と比較して劇的に増加する。別の実施形態では、IL-6などの炎症性サイトカインは検出できず、IL-1β及びTNFは検出できないか、または非常に低いレベルである。
【0299】
一実施形態では、単独で培養されたマクロファージまたは単独で培養されたアポトーシス細胞からの上清と比較して、アポトーシス細胞上清は、TGF-β及びIL-10に加えて、炎症を制御するための上清の寛容原性の役割に関与している可能性があるIL-1ra、TIMP-1、CXCL1/KC及びCCL2/JE/MCP1のレベルを上昇している。
【0300】
別の特定の実施形態では、国際公開第2014/106666号の実施例3に記載されているように、ヒトアポトーシス細胞-食細胞上清は、アポトーシスPBMCで培養された末梢血単核細胞(PBMC)由来のマクロファージの共培養から作製され得る。したがって、PBMCは、健康な志願者からの細胞分離バッグから、例えばフィコール勾配遠心分離によって単離される。次いで、PBMCを完全RPMI培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)に90分間播種する。次いで、非接着細胞を除去し、アポトーシスを起こさせるが、これは、例えば35グレイの線量のX線照射を使用し、アポトーシスを起こさせるべく完全RPMI環境で4日間(培養の最初の48時間後の細胞洗浄を含む)培養することよってなされる。並行して、接着性T細胞を、50μg/mLの組換えヒトM-CSFを補充した完全RPMI培地で、最初の48時間後の細胞洗浄を含めて4日間培養する。4日間の培養期間の終わりに、単球由来のマクロファージ及びアポトーシス細胞を洗浄し、5アポトーシスに対して1マクロファージの細胞数比で48時間、X-vivo(登録商標)培地で一緒に培養する。その後、後者の培養物からの上清を回収し、遠心分離して細胞及び残屑を除去し、保存及びその後の使用のために凍結または凍結乾燥することができる。
【0301】
ある実施形態では、国際公開第2014/106666号に記載されているように、ヒトアポトーシス細胞-食細胞上清は、末梢血単核細胞(PBMC)から6日間で得ることができる。培養物へのM-CSF添加を用いてPBMC由来マクロファージを得るために4日間かかり、初日に単離された非接着性PBMCに対応する、アポトーシス細胞を伴うPBMC由来マクロファージの共培養についてさらに2日間かかる。
【0302】
一実施形態では、国際公開第2014/106666号に記載されているように、標準化されたヒトアポトーシス細胞-食細胞上清は、PBMCのドナーまたはソース(血球分離またはバフィーコート)とは独立して得ることができる。プラスチック接着ステップは、豊富な単球(プラスチック培養皿上での接着後の20~93%のCD14+細胞)の重要な開始集団を得るために十分である。さらに、そのような接着性T細胞は、B細胞及びT細胞(CD19+B細胞の1.0%及びCD3+T細胞の12.8%)の非常に低い存在量を示す。M-CSFの存在下で接着T細胞を4日間培養した後、単球誘導マクロファージの割合は、CD14+CD206+HLA-DR+マクロファージの0.1%から77.7%に有意に増加する。その際、48時間の間にアポトーシス細胞-食細胞上清を製造するために、単球由来マクロファージをアポトーシス非接着性PBMC(アネキシンV染色及び7AAD排除によって示されるように47.6%アポトーシス)と共培養することができる。
【0303】
ある実施形態では、収集されたアポトーシス細胞-食細胞上清は、単球由来マクロファージ単独の培養上清または炎症状態(+LPS)で処理された単球由来マクロファージよりも有意に多くの潜在性TGFを含み、炎症性サイトカイン、例えばIL-1βまたはTNFは僅かなまたは非常に低いレベルしか産生しない。
【0304】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、抗凝固剤をさらに含む。一実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、酸クエン酸デキストロース(ACD)剤A及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0305】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、メチルプレドニゾロンをさらに含む。一実施形態では、メチルプレドニゾロンの濃度は30μg/mlを超えない。
【0306】
一実施形態では、その組成物は、体重1kgあたり約2億の細胞に相当する(70kgの対象)、細胞分離によって得られた約14×10のCD45+細胞の共培養から誘導されたアポトーシス細胞上清の全量またはアリコートで使用することができる。一実施形態では、そのような総用量は、体重1kgあたり約1億個の細胞に由来する単位用量の上清として投与され、及び/または毎週の間隔で単位用量として投与される。別の実施形態では、この実施形態による適切な総用量の両方には、体重1kg当たり約1千万~約40億個の細胞に由来する上清の総用量が含まれる。別の実施形態では、上清は、体重1キログラムあたり約4千万~約10億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、体重1キログラムあたり約8千万~約5億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、体重1キログラムあたり約1.6億~約2.5億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、体重1キログラムあたり約400万~約4億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、体重1キログラムあたり約800万~約2億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、体重1キログラムあたり約1600万~約1億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、体重1キログラムあたり約3200万~約5000万個の細胞に由来する。
【0307】
別の実施形態においては、約10×10個のアポトーシス細胞の共培養から誘導されるアポトーシス細胞上清の用量が投与される。別の実施形態において、10×10個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態において、10×10個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態において、10×10個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態において、10×1010個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態において、10×1011個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態において、10×1012個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態において、10×1015個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態において、10×1014個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態において、10×1013個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態において、10×1012個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。
【0308】
一実施形態では、35×1026個のアポトーシス細胞に由来するアポトーシス細胞上清の用量を投与する。別の実施形態では、210×10個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態では、70×10個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態では、140×10個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。別の実施形態では、35~210×10個のアポトーシス細胞に由来する用量が投与される。
【0309】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清、または前記アポトーシス細胞上清を含む組成物は、限定しないが静脈内、皮下、結節内、腫瘍内、髄腔内、胸膜内、腹腔内投与を含む任意の既知の投与方法によって、本明細書で詳細に考察されるように、胸腺に直接的に送達される。
【0310】
驚くべきことに、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清は、IL-6などのサイトカインストームに関連するサイトカインの産生を減少させる。別のサイトカイン、IL-2は、DC及びマクロファージによって少量で分泌されるが、サイトカイン放出症候群には関与しない。しかし、これはCAR-T細胞の生存及び増殖に必要であり、これらのT細胞によって大部分が産生される。予期しないことに、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清は、CAR-T細胞の生存に悪影響を与えるほどIL-2レベルを低下させない。
【0311】
一実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清は、マクロファージ及びDCにおけるサイトカイン発現レベルに影響を及ぼすが、T細胞自身のサイトカイン発現レベルに影響しない。したがって、アポトーシス細胞上清がCAR-T細胞療法または樹状細胞療法の増強に有用であるという効果は予想外であった。
【0312】
別の実施形態において、アポトーシス細胞上清は、T細胞の細胞死を引き起こすが、それはサイトカイン発現レベルの変化を介するものではない。
【0313】
別の実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞上清がなければサイトカインストームを増幅するであろう、マクロファージ及び樹状細胞のサイトカイン分泌のプライミングに拮抗する。別の実施形態において、アポトーシス細胞上清は、炎症応答を抑制し、及び/またはサイトカインの過剰放出を防止する制御性T細胞(Treg)を増加させる。
【0314】
一実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清の投与は、1つ以上の炎症誘発サイトカインを阻害する。一実施形態では、炎症誘発サイトカインは、IL-1β、IL-6、TNF-α、またはIFN-γ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態において、アポトーシス細胞上清の投与は、1つ以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。一実施形態では、抗炎症性サイトカインは、TGF-β、IL-10、またはPGE2、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0315】
別の実施形態において、アポトーシス細胞上清の投与は、TLRリガンドへの曝露後の樹状細胞の成熟を阻害する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、潜在的に寛容原性の樹状細胞を生成し、これは一実施形態では移動可能であり、一実施形態では、移動はCCR7によるものである。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、一実施形態ではTAM受容体シグナル伝達(Tyro3、Axl及びMer)である様々なシグナル伝達事象を誘発するし、このTAM受容体シグナル伝達は、一実施形態では、抗原提示細胞における炎症を阻害する。一実施形態では、Tyro-3、Axl及びMerは、キナーゼドメイン及び接着分子様細胞外ドメイン内の保存された配列によって特徴付けられる受容体チロシンキナーゼ(RTK)のTAMファミリーを構成する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、MerTKを介したシグナル伝達を活性化する。別の実施形態において、アポトーシス細胞上清の投与は、一実施形態ではNF-κBを負に調節する、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路を活性化する。別の実施形態において、アポトーシス細胞上清の投与は、一実施形態では、炎症誘発サイトカイン分泌、DC成熟、またはそれらの組み合わせの阻害をもたらす、インフラマソームを負に調節する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、Nr4a、Thbs1、またはその組み合わせなどの抗炎症性遺伝子の発現をアップレギュレートする。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、一実施形態では、パネキシン1依存的に蓄積される高レベルのAMPを誘導する。別の実施形態において、アポトーシス細胞上清の投与は、炎症を抑制する。
【0316】
組成物
【0317】
一実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患を治療するための医薬組成物が、本明細書に開示される。別の実施形態では、医薬組成物は、遺伝子改変免疫細胞またはその遺伝子改変受容体を含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、T細胞を含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、キメラ抗原受容体CAR-T細胞を含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、細胞傷害性Tリンパ球を含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、樹状細胞を含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞を含む。別の実施形態では、遺伝子改変受容体は、T細胞受容体を含む。
【0318】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患を治療するための医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤中に、本明細書に記載の有効量の遺伝子改変免疫細胞、またはその遺伝子改変受容体を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患を治療するための医薬組成物は、本明細書に記載の有効量のCAR-T細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患を治療するための医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の細胞傷害性CAR-T細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患を治療するための医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の遺伝子改変樹状細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患を治療するための医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の遺伝子改変ナチュラルキラー細胞、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患を治療するための医薬組成物は、本明細書に記載の有効量の遺伝子改変T細胞受容体、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0319】
別の実施形態では、本明細書に記載の状態または疾患は、腫瘍または癌である。別の実施形態では、本明細書に記載される対象のタンパク質またはペプチドに結合する遺伝子改変免疫細胞またはその受容体、例えばCAR-T細胞、を含む組成物が、本明細書に開示される。別の実施形態では、対象のタンパク質またはペプチドは、腫瘍抗原またはその断片を含む。
【0320】
別の実施形態では、本明細書に開示され、かつ本明細書に開示される方法で使用される組成物は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。さらに別の実施形態では、有効量の遺伝子改変免疫細胞またはその遺伝子改変受容体を含む組成物は、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清を含む組成物と同一であり得る。別の実施形態では、有効量のCAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、遺伝子改変樹状細胞、または遺伝子改変ナチュラルキラー細胞を含む組成物は、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清を含む組成物と同一であり得る。さらに別の実施形態では、有効量の遺伝子改変T細胞受容体を含む組成物は、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清を含む組成物と同一であり得る。さらに別の実施形態では、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、または樹状細胞を含む群から選択される、有効量の遺伝子改変免疫細胞を含む組成物は、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清を含む。別の実施形態では、組成物は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)、及びアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清のいずれか、及び薬学的に許容される賦形剤を含む。別の実施形態では、有効量の遺伝子改変T細胞受容体を含む組成物は、アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清を含む組成物と同一ではない。
【0321】
別の実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、早期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。別の実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、プールされた第三者ドナー細胞である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物に含まれるアポトーシス細胞上清は、初期アポトーシス細胞から収集される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物に含まれるアポトーシス細胞上清は、プールされた第三者ドナー細胞から収集される。
【0322】
一実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、またはサイトカインストームを発症するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞、及びアポトーシス細胞を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者において、サイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞、及びアポトーシス細胞上清を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者において、サイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。
【0323】
一実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR-T細胞を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR-T細胞、及びアポトーシス細胞を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR-T細胞、及びアポトーシス細胞上清を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。
【0324】
一実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するためのするための、追加的な医薬組成物をさらに含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞、及びアポトーシス細胞を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞、及びアポトーシス細胞上清を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するためのするための、追加的な医薬組成物をさらに含む。
【0325】
一実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞、及びアポトーシス細胞を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞、及びアポトーシス細胞上清を含む組成物は、サイトカイン放出症候群に罹患している患者、またはサイトカインストームを発症している患者においてサイトカイン放出を予防、抑制、または調節するための、追加的な医薬組成物をさらに含む。
【0326】
一実施形態では、追加的な医薬組成物は、CTLA-4阻害剤を含み、一実施形態ではイピリムマブである。別の実施形態では、追加的な医薬組成物は、本明細書に開示されるα1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体を含む。別の実施形態では、追加的な医薬組成物は、本明細書に開示されるテルル系化合物を含む。別の実施形態では、追加的な医薬組成物は、本明細書に開示される免疫調節剤を含む。別の実施形態では、追加的な医薬組成物は、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0327】
一実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤は、単一の組成物を含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせは、複数の組成物を含み、一実施形態ではCAR-T細胞である各遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせは、別個の組成物に含まれる。さらに別の実施形態では、一実施形態ではCAR-T細胞である遺伝子改変免疫細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせが、複数の組成物を含み、一実施形態ではCAR-T細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4阻害剤、またはα1-アンチトリプシン、またはその断片若しくはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の組み合わせが、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞、組成物中に存在し、及びアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、別個の組成物に含まれる。
【0328】
一実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR-T細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤は、単一の組成物を含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR-T細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせは、複数の組成物を含み、一実施形態ではTCR-T細胞である各遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせは、別個の組成物に含まれる。さらに別の実施形態では、一実施形態ではTCR-T細胞である遺伝子改変免疫細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせが、複数の組成物を含み、一実施形態ではTCR-T細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4阻害剤、またはα1-アンチトリプシン、またはその断片若しくはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の組み合わせが、遺伝子改変免疫細胞、例えばTCR-T細胞、組成物中に存在し、及びアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、別個の組成物に含まれる。
【0329】
一実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤は、単一の組成物を含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせは、複数の組成物を含み、一実施形態では樹状細胞である各遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせは、別個の組成物に含まれる。さらに別の実施形態では、一実施形態では樹状細胞である遺伝子改変免疫細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせが、複数の組成物を含み、一実施形態では樹状細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4阻害剤、またはα1-アンチトリプシン、またはその断片若しくはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の組み合わせが、遺伝子改変免疫細胞、例えば樹状細胞、組成物中に存在し、及びアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、別個の組成物に含まれる。
【0330】
一実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、またはアポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤は、単一の組成物を含む。別の実施形態では、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、アポトーシス細胞若しくはアポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせは、複数の組成物を含み、一実施形態ではNK細胞である各遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせは、別個の組成物に含まれる。さらに別の実施形態では、一実施形態ではNK細胞である遺伝子改変免疫細胞を含む組成物、及びCTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体のいずれか1つを含む医薬組成物、アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせが、複数の組成物を含み、一実施形態ではNK細胞である遺伝子改変免疫細胞、CTLA-4阻害剤、またはα1-アンチトリプシン、またはその断片若しくはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせ、またはそれらの任意の組み合わせが、遺伝子改変免疫細胞、例えばNK細胞、組成物中に存在し、及びアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、別個の組成物に含まれる。
【0331】
当業者であれば、「医薬組成物」が、生理学的に適切な担体及び賦形剤などの他の化学成分と共に、本明細書に記載される1つ以上の活性成分の調製を包含し得ることを理解するであろう。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0332】
当業者であれば、「生理学的に許容される担体」、「薬学的に許容される担体」、「生理学的に許容される賦形剤」、及び「薬学的に許容される賦形剤」という表現が互換的に使用されてもよく、担体、賦形剤、または生物に有意な刺激を引き起こさず、投与された活性成分の生物活性及び特性を抑制しない希釈剤を包含し得ることを理解するであろう。
【0333】
当業者であれば、「賦形剤」が活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を包含し得ることを理解するであろう。一実施形態では、賦形剤は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及び澱粉のタイプ、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールを含む。
【0334】
薬剤の製剤化及び投与のための技法は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(マック・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)、米国ペンシルバニア州イーストン所在)最新版の参照により本明細書に組み込まれる。
【0335】
一実施形態では、組成物は同時に投与される。他の実施形態では、組成物は異なる時間に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、遺伝子改変免疫細胞またはその受容体の注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、CAR-T細胞注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、細胞侵害性T細胞注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、ナチュラルキラー細胞注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、樹状細胞注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、遺伝子改変T細胞受容体注射の前に投与される。
【0336】
別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、遺伝子改変免疫細胞またはその受容体の注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、CAR-T細胞注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、細胞傷害性T細胞注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、ナチュラルキラー細胞注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、樹状細胞注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、遺伝子改変T細胞受容体注射の前に投与される。
【0337】
別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、遺伝子改変免疫細胞またはその受容体の注射の前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、遺伝子改変免疫細胞またはその受容体の注射の約24時間前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射の約24時間前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射の約24時間前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間前に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間前に投与される。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態を表す。
【0338】
別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、遺伝子改変免疫細胞またはその遺伝子改変受容体の注射後に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射後に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、遺伝子改変免疫細胞またはその遺伝子改変受容体の注射後に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射後に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射の約24時間後に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、遺伝子改変免疫細胞またはその遺伝子改変受容体の注射後に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射の約24時間後に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間後に投与される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、CAR-T細胞、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、または遺伝子改変T細胞受容体の注射の約2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、22時間、24時間、36時間、48時間、60時間、または72時間後に投与される。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態を表す。
【0339】
製剤化
【0340】
遺伝子改変免疫応答細胞、アポトーシス細胞、アポトーシス上清、またはそれらの任意の組み合わせを含む本明細書に開示された組成物は、滅菌液体調製物、例えば等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、または粘性組成物として都合よく提供されることができ、選択されたpHに緩衝化されてもよく、液体調製物は、ゲル、他の粘性組成物、及び固体組成物より調製が通常容易である。加えて、液体調製物は、特に注射によって投与する方が幾分便利である。一方、粘性組成物は、適切な粘度範囲内で製剤することができ、特定の組織とのより長い接触時間を提供する。液体または粘性組成物は、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒、または分散媒であり得る担体を含んでいてもよい。
【0341】
滅菌注射溶液は、必要に応じて、本明細書に開示された方法を実施する際に利用される遺伝子改変免疫応答細胞またはアポトーシス細胞上清を、様々な量の他の成分を含む必要量の適切な溶媒に配合することにより調製され得る。このような組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤、または賦形剤と混合されてもよい。組成物は凍結乾燥されてもよい。組成物は、投与経路及び所望の調製に依存して、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えばメチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化または増粘添加剤、防腐剤、香料、着色料などの補助物質を含むことができる。本明細書に参照として組み入れられる「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE」(第17版、1985年)などの標準テキストを、不要な実験をすることなく適切な調製物を調製するために参照することができる。
【0342】
抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、及び緩衝剤を含む組成物の安定性及び無菌性を増強する様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用の防止を、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることができる。注射可能な薬剤形態の長期吸収が、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって、もたらされ得る。しかし、本明細書の開示によれば、使用される任意のビヒクル、希釈剤、または添加剤は、遺伝子改変免疫応答細胞またはそれらの前駆細胞と適合しなければならない。
【0343】
組成物は等張性であり得る。すなわち、組成物は、血液及び涙液と同じ浸透圧を有し得る。本明細書に開示される組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、またはデキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、または他の無機若しくは有機溶質などの他の薬学的に許容される薬剤を用いて達成され得る。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含む緩衝剤にとって、特に好ましい。
【0344】
必要に応じて、薬学的に許容される増粘剤を用いて、組成物の粘度を選択されたレベルに維持することができる。メチルセルロースは、容易かつ経済的に入手可能であり、取り扱いが容易であるため、好ましい。
【0345】
他の適切な増粘剤には、例えばキサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが含まれる。増粘剤の好ましい濃度は、選択される薬剤に依存する。重要な点は、選択された粘度を達成する量を使用することである。明らかに、適切な担体及び他の添加剤の選択は、正確な投与経路及び特定の投薬形態の性質、例えば液体投薬形態(例えば、組成物が溶液、懸濁液、ゲル、または時間放出形状若しくは液体充填形状などの他の液体形状に製剤化されるか否か)に依存する。
【0346】
当業者であれば、組成物の構成要素が化学的に不活性であるように選択され、本明細書に開示される方法で記載される遺伝子改変免疫応答細胞の生存性または有効性に影響しないことを認識するであろう。これは、化学及び薬学の原則に熟練した者には問題が生じないか、または、本開示及び本明細書に引用される文献からの、標準テキストの参照、または簡単な実験(不要な実験を伴わない)によって、容易に回避し得る問題である。
【0347】
本明細書に開示される遺伝子改変免疫応答細胞の治療的使用に関する1つの考察は、最適効果を達成するために必要な細胞の量である。投与される細胞の量は、扱われる対象によって異なる。一実施形態では、本明細書に開示される10~1010の間、10~10の間、または10~10の間の遺伝子改変免疫応答細胞が、ヒト対象に投与される。より効果的な細胞は、より少ない数で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される少なくとも約1×10、2×10、3×10、4×10、及び5×10の遺伝子改変免疫応答細胞が、ヒト対象に投与される。有効量と見なされるものの正確な決定は、対象のサイズ、年齢、性別、体重、及び特定の対象の状態を含む、各対象に固有の因子に基づくことができる。投薬量は、本開示及び当技術分野の知識から、当業者によって容易に理解され得る。
【0348】
当業者は、組成物中の細胞及び任意の添加物、ビヒクル、及び/または担体の量を容易に決定し、本明細書に開示される方法で投与することができる。一般的には、任意の添加剤(活性細胞(複数可)及び/または薬剤(複数可)に加えて)が、リン酸緩衝生理食塩水中に0.001~50%(重量)の量で存在し、活性成分は、約0.0001~約5重量%のように、マイクログラムからミリグラムのオーダーで存在する。別の実施形態では、約0.0001~約1重量%である。さらに別の実施形態では、約0.0001~約0.05重量%、または約0.001~約20重量%である。さらなる実施形態では、約0.01~約10重量%である。別の実施形態では、約0.05~約5重量%である。当然のことながら、動物またはヒトに投与される任意の組成物、及び任意の特定の投与方法のために、適切な動物モデル、例えばマウスなどの齧歯動物において致死量(LD)及びLD50を決定することにより、適切な応答を誘発する毒性、組成物(複数可)の投与量、その中の構成要素の濃度、及び組成物(複数可)の投与のタイミングを決定することが望ましい。そのような決定は、当業者の知識、本開示、及び本明細書に引用された文献からの過度の実験を必要としない。そして、過度の実験を行うことなく連続投与の時間を確認することができる。
【0349】
核酸配列、ベクター、細胞
【0350】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のための、本明細書に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離された核酸配列が、本明細書に開示される。
【0351】
別の実施形態では、本明細書に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含むベクターが、本明細書に開示される。
【0352】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法における使用のための、本明細書に記載の遺伝子改変T細胞受容体(TCR)をコードする単離された核酸配列が本明細書に開示される。別の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変T細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列を含むベクターが、本明細書に開示される。
【0353】
免疫応答細胞(例えばT細胞、CTL細胞、NK細胞)の遺伝子改変は、実質的に均質な細胞組成物を、組換えDNA構築物で形質導入することにより達成することができる。一実施形態では、細胞へのDNA構築物の導入のために、レトロウイルスベクター(γ-レトロウイルスまたはレンチウイルスのいずれか)を用いる。例えば、抗原(例えば腫瘍抗原、または変異体、若しくはその断片)に結合する受容体をコードするポリヌクレオチドは、レトロウイルスベクターにクローニングされることができ、発現は、その内因性プロモータ、レトロウイルスの末端反復配列、または対象の標的T細胞に特異的なプロモータから駆動され得る。非ウイルスベクターも同様に使用され得る。
【0354】
非ウイルスアプローチはまた、細胞内でのタンパク質の発現のために使用され得る。例えば、リポフェクション(Feigner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:7413, 1987; Ono et al., Neuroscience Letters 17:259, 1990; Brigham et al, Am. J. Med. Sci. 298:278, 1989; Staubinger et al, Methods in Enzymology 101 :512, 1983)、アシアロオロソムコイド-ポリリジン結合(Wu et al., Journal of Biological Chemistry 263: 14621, 1988; Wu et al., Journal of Biological Chemistry 264:16985, 1989)の存在下で核酸を投与することによって、または外科的条件下での微量注射(Wolff et al., Science 247: 1465, 1990)によって、核酸分子を細胞に導入することができる。遺伝子導入のための他の非ウイルス性手段には、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、及びプロトプラスト融合を用いたインビトロでの遺伝子導入が含まれる。リポソームはまた、細胞へのDNA送達にとって潜在的に有益であり得る。対象の患部組織への正常遺伝子の移植は、通常の核酸をエクスビボで培養可能な細胞型(例えば、自己若しくは異種の一次細胞、またはその子孫)に移植することにより達成することができ、その後、細胞(またはその子孫)は標的組織に注射されるか、または全身に注射される。組換え受容体はまた、トランスポザーゼまたは標的ヌクレアーゼ(例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、またはTALEヌクレアーゼ)を用いて送達または獲得され得る。一過性発現は、RNAエレクトロポレーションによって得られる。ポリヌクレオチド治療法での使用のためのcDNA発現は、任意の適切なプロモータ(例えばヒトサイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、またはメタロチオネインプロモータ)から導かれ、任意の適切な哺乳動物調節エレメントまたはイントロン(例えば伸長因子laエンハンサ/プロモータ/イントロン構造)によって調節され得る。例えば、必要に応じて、特定の細胞型において遺伝子発現を優先的に導くことが知られているエンハンサを用いて、核酸の発現を導くことができる。使用されるエンハンサには、組織特異的、または細胞特異的エンハンサとして特徴付けられるエンハンサが含まれるが、これに限定されない。あるいは、ゲノムクローンが治療用構築物として使用される場合、調節は、同種の調節配列によって、または必要に応じて、異種供給源から送達される調節配列によって媒介されることができ、上記の任意のプロモータまたは調節エレメントを含む。
【0355】
別の実施形態では、本明細書に開示されるキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含むベクターを含む細胞が、本明細書に開示される。
【0356】
キット
【0357】
一実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)の癌治療を受けている対象において、サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または減少させるためのキットが本明細書に開示され、前記キットは、本明細書に開示されるCAR-T細胞及びアポトーシス細胞を、別個に、または予め混合して含む。
【0358】
別の実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)の癌治療を受けている対象において、サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または減少させるためのキットが本明細書に開示され、前記キットは、本明細書に開示されるCAR-T細胞及びアポトーシス細胞上清を、別個に、または予め混合して含む。
【0359】
新生物、病原体感染、免疫異常または同種移植の治療または予防によって、または、癌または腫瘍の治療、予防、阻害、発生の減少、寛解、または改善によって生じるサイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または予防するためのキットが本明細書に開示される。一実施形態では、キットは、本明細書に開示される有効量の免疫応答性細胞及びアポトーシス細胞を単位剤形で含む、治療用または予防用の組成物を含む。別の実施形態では、キットは、本明細書に開示される有効量の免疫応答性細胞及びアポトーシス細胞上清を単位剤形で含む、治療用または予防用の組成物を含む。特定の実施形態では、細胞は、共刺激リガンドをさらに含む。別の実施形態では、キットは、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシン、またはその断片、若しくはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択された追加的な薬剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、治療用または予防用ワクチンを含む滅菌容器を含み、そのような容器は、ボックス、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、パウチ、ブリスターパック、または当技術分野で公知の他の適切な容器形態であり得る。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、または医薬品を保持するのに適した他の材料で作ることができる。
【0360】
必要に応じて、免疫応答性細胞及びアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清は、新生物、病原体感染、免疫異常または同種移植、または腫瘍若しくは癌を有するか、または発症のリスクがある対象に細胞を投与するための説明書と共に提供される。説明書は一般に、新生物、病原体感染、免疫異常、同種移植、腫瘍または癌の治療または予防のための組成物の使用に関する情報を含む。他の実施形態では、説明書は、以下の、治療薬の説明(新生物、病原体感染、免疫異常または同種移植、癌、腫瘍、またはそれらの症状の治療のための投与計画及び投与)、予防措置、警告、適応症、カウンタ表示、投与量情報、副作用、動物薬理学、臨床研究、及び/またはリファレンス、のうち少なくとも1つを含む。説明書は、容器(存在する場合)に直接印刷されるか、容器に貼られたラベルに印刷されるか、または容器に入れられた別のシート、パンフレット、カード、またはフォルダに印刷されてもよい。
【0361】
当業者であれば、「抗原認識受容体」という用語が、抗原結合に応答して免疫細胞(例えばT細胞)を活性化することができる受容体を包含し得ることを理解するであろう。例示的な抗原認識受容体は、腫瘍抗原結合ドメインが免疫細胞(例えばT細胞)を活性化することができる細胞内シグナル伝達ドメインに融合された、天然または内在性のT細胞受容体またはキメラ抗原受容体であり得る。
【0362】
当業者であれば、「抗体」という用語が、インタクトな抗体分子だけでなく、免疫原結合能力を保持する抗体分子の断片も意味することを理解するであろう。そのような断片も当技術分野で周知であり、インビトロ及びインビボの両方で常用される。したがって、当業者であれば、「抗体」という用語が、インタクトな免疫グロブリン分子だけでなく、周知の活性断片F(ab1)2及びFabも意味することを理解するであろう。F(ab')25及びインタクトな抗体のFc断片を欠くFab断片は、循環からより迅速に透明になり、インタクトな抗体の非特異的組織結合はより少なくなり得る(Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983))。本明細書に開示される抗体は、完全な天然抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、Fab、Fab'、一本鎖V領域断片(scFv)、融合ポリペプチド、及び非旧来型抗体を含む。
【0363】
当業者であれば、「一本鎖可変断片」すなわち「scFv」という用語が、共有結合で連結してVH::VLヘテロニ重体を形成する免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を包含することを理解するであろう。重鎖(VH)及び軽鎖(VL)は、直接結合されるか、またはペプチドをコードするリンカー(例えば、30、15、20、25アミノ酸)によって結合され、VHのN末端をVLのC末端に、またはVHのC末端をVLのN末端に連結するリンカーは、通常、柔軟性を有するためにグリシンが豊富であり、溶解性を有するためにセリンまたはスレオニンも豊富である。定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Hustonらによって説明されるように、VH及びVLをコードする配列を含む核酸から発現され得る(Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)。米国特許第5091513号明細書、米国特許第5132405号明細書、米国特許第4956778号明細書、及び米国特許出願公開第2005/0196754号明細書も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニスト性scFvが説明されている(例えば、Zhao et al., Hyrbidoma (Larchmt) 2008 27(6):455-51、Peter et al., J Cachexia Sarcope ia Muscle 2012 August 12、Shieh et al., J Imunol2009 183(4):2277-85、Giomarelli et al., Thromb Haemost 2007 97(6):955-63、Fife eta., J Clin Invst 2006 1 16(8):2252-61、Brocks et al., Immunotechnology 1997 3(3):173-84、Moosmayer et al., Ther Immunol 1995 2(10:31-40)を参照されたい)。刺激活性を有するアゴニスト性scFvが説明されている(例えば、Peter et al., J Biol Chem 2003 25278(38):36740-7、Xie et al, Nat Biotech 1 97 15(8):768-71、Ledbetter et al., Crit Rev Immunol l997 1 (5-6) -.427-55、Ho et al., BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257-66を参照されたい)。
【0364】
「親和性」とは、結合強度の尺度を意味する。いかなる理論に拘束されるものではないが、親和性は、抗体結合部位と抗体決定基との間の立体化学的適合の近さ、それらの接触面積の大きさ、及び、荷電及び疎水性基の分布に依存する。親和性は、可逆的複合体の形成後の抗原-抗体結合の強さを指す「結合力」という用語も含む。抗原に対する抗体の親和性を計算する方法は、当技術分野で公知であり、親和性を計算するための結合実験の使用を含む。機能アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)における抗体活性はまた、抗体親和性を反映する。抗体及び親和性は、機能アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)を使用して表現型的に特徴付け、及び比較することができる。
【0365】
当業者であれば、「キメラ抗原受容体」すなわち「CAR」が、免疫細胞を活性化または刺激することができる細胞内シグナル伝達ドメインに融合された抗原結合ドメインを包含し得ることを理解するであろう。一実施形態では、CARの細胞外結合ドメインは、マウスまたはヒト化モノクローナル抗体の可変重鎖及び軽鎖領域の融合に由来する一本鎖可変断片(scFv)から成る。あるいは、様々な実施形態において、Fab'から得られるscFv(抗体の代わりに、例えばFabライブラリから得られる)が使用されてもよく、このscFvは、膜貫通ドメインに融合され、その後細胞内シグナル伝達ドメインに融合される。様々な実施形態において、CARは、抗原に対する高い親和性または結合活性を有するべく選択される。
【0366】
ポリペプチド及び類似体
【0367】
本明細書に開示される方法には、アンチMUC1、CD28、CD3σ、及び、免疫応答細胞において発現される場合にその抗新生物活性(例えばヒト化モノクローナル抗体)を増強するように修飾された様々なscFvポリペプチドまたはその断片も含まれる。特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、アミノ酸配列または核酸配列を、配列の改変を生成することによって最適化することを含む。そのような改変は、特定の突然変異、欠失、挿入、または翻訳後修飾を含み得る。本明細書に提供される開示は、本明細書に開示される、天然に存在する任意のポリペプチドの類似体をさらに含む。類似体は、アミノ酸配列の相違、翻訳後修飾、またはその両方によって、本明細書に開示される天然に存在するポリペプチドとは異なっていてもよい。本明細書に開示される類似体は一般的に、本明細書に開示される天然に存在するアミノ酸配列の全てまたは一部と、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であることを明示する。配列比較の長さは、少なくとも5、10、15、または20アミノ酸残基である。別の実施形態では、少なくとも25、50、または75アミノ酸残基である。さらに別の実施形態では、100を超えるアミノ酸残基である。さらに、同一性の程度を決定するための例示的アプローチでは、e-3とe-100との間の確率スコアが密接に関連する配列を示すBLASTプログラムを使用することができる。修飾にはインビボ及びインビトロでのポリペプチドの化学的誘導体化、例えばアセチル化、カルボキシル化、リン酸化、またはグリコシル化が含まれ、そのような修飾は、ポリペプチド合成またはポリペプチドプロセシング中に、または単離された修飾酵素での処理後に生じ得る。類似体はまた、本明細書に開示される天然に存在するポリペプチドとは、一時配列の改変によって異なる可能性がある。これらは、天然及び誘導の両方の遺伝的変異体を含む(例えば、Sambrook, Fritsch and Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed.), CSH Press, 1989、または前述のAusubelらによって説明されているように、照射またはエタンメチル硫酸塩への曝露によるランダム突然変異誘発から、または部位特異的突然変異誘発に起因する)。また、L-アミノ酸以外の残基、例えばD-アミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、または合成アミノ酸、例えばβアミノ酸またはγアミノ酸を含む、環化ペプチド、分子、及び類似体も含まれる。
【0368】
非タンパク質類似体は、本明細書に開示されるタンパク質の機能活性を模倣すべく設計された化学構造を有する。そのような類似体は、本明細書に開示される方法にしたがって投与される。そのような類似体は、元のポリペプチドの生理活性を超える可能性がある。類似体設計の方法は当技術分野において周知であり、得られた類似体が免疫応答細胞で発現されたときに元のポリペプチドの抗新生物活性を増加させるように化学構造を改変することにより、このような方法にしたがって類似体の合成を行うことができる。これらの化学修飾には、代替のR基を置換し、基準ポリペプチドの特定の炭素原子における飽和度を変化させることが含まれるが、これに限定されない。別の実施形態では、タンパク質類似体は、インビボでの分解に対して比較的耐性を有し、投与の際により延長された治療効果をもたらす。機能活性を測定するためのアッセイには、以下の実施例において説明されるアッセイが含まれるが、これに限定されない。
【0369】
「免疫抑制活性」という用語は、シグナル伝達の誘導、または免疫反応の低下をもたらす細胞(例えば活性化免疫応答細胞)におけるタンパク質発現の変化を表す。結合を介して免疫応答を抑制または減少させることが知られているポリペプチドには、CD47、PD-1、CTLA-4、及びそれらの対応するリガンドであるSIRPa、PD-L1、PD-L2、B7-1、及びB7-2が含まれる。このようなポリペプチドは、腫瘍の微小環境に存在し、新生細胞に対する免疫応答を阻害する。様々な実施形態において、免疫抑制ポリペプチド、及び/またはそれらのリガンドの相互作用を阻害、遮断、または拮抗することにより、免疫応答細胞の免疫応答が増強される。
【0370】
「免疫賦活活性」という用語は、シグナル伝達の誘導、または細胞(例えば、活性化免疫応答細胞)におけるタンパク質発現の変化が、免疫応答の増加をもたらすことを表す。免疫刺激活性には、炎症性活性が含まれ得る。結合を介して免疫応答を刺激または増加させることが知られているポリペプチドには、CD28、OX-40、4-IBB、及びそれらの対応するリガンドであるB7-1、B7-2、OX-40L、及び4-1BBLが含まれる。このようなポリペプチドは、腫瘍の微小環境に存在し、新生細胞に対する免疫応答を活性化する。様々な実施形態において、炎症誘発ポリペプチド、及び/またはそれらのリガンドを促進、誘発、または刺激することにより、免疫応答細胞の免疫応答が増強される。
【0371】
本明細書に開示される方法において有用な核酸分子は、本明細書に開示されるポリペプチドまたはその断片をコードする任意の核酸分子を含む。このような核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、一般的には実質的同一性を示す。内因性配列との「実質的同一性」を有するポリヌクレオチドは、一般的には、二本鎖核酸分子の少なくとも1つの鎖とハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイズ」とは、ストリンジェンシーの様々な条件下で、相補的ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載の遺伝子)またはその一部の間に二本鎖分子を形成する対を意味する(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399、immel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507を参照されたい)。
【0372】
当業者であれば、「実質的に同一」という用語が、基準アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のうち任意の1つ)、または核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のうち任意の1つ)と少なくとも50%の同一性を示すポリペプチドまたは核酸分子を含有し得ることを理解するであろう。一実施形態では、そのような配列は、比較のために使用される配列と、アミノ酸レベルまたは核酸レベルにおいて少なくとも60%、80%、または85%、90%、95%、さらには99%同一である。
【0373】
配列同一性は、一般的には、配列分析ソフトウェア(例えば、米国ウィスコンシン州マディソン所在のジェネティクス・コンピュータ・グループ社(Genetics Computer Group)、ウィスコンシン大学バイオテクノロジー・センター(Biotechnology Center)による配列分析ソフトウェアパッケージ、BLAST、BESTFIT、GAPまたはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用して測定される。そのようなソフトウェアは、様々な置換、欠失、及び/または他の修飾に相同性の程度を割り当てることによって、同一または類似の配列を一致させる。保存的置換は、一般的に、以下の群、すなわち、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、リジン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、の中での置換を含む。同一性の程度を決定するための例示的なアプローチでは、e-3とe-100との間の確率スコアが密接に関連する配列を示すBLASTプログラムが使用され得る。
【0374】
当業者であれば、「類似体」という用語が、基準ポリペプチドまたは核酸分子の機能を有する、構造的に関連するプリペプチドまたは核酸分子を包含し得ることを理解するであろう。
【0375】
当業者であれば、「リガンド」という用語が、受容体に結合する分子を包含し得ることを理解するであろう。特に、リガンドは、細胞間認識及び/または相互作用を可能にする別の細胞の受容体に結合する。
【0376】
当業者であれば、「構成的発現」という用語が、全ての生理学的条件下での発現を包含し得ることを理解するであろう。
【0377】
当業者であれば、「疾患」という用語が、細胞、組織または器官の正常な機能を損ねるか、または妨害する任意の状態または障害を包含し得ることを理解するであろう。疾患の例には、新生物または細胞の病原体感染が含まれる。
【0378】
当業者であれば、「有効量」という用語が、治療効果を有するのに十分な量を包含し得ることを理解するであろう。一実施形態では、「有効量」は、新生物の継続的な増殖、成長、または転移(例えば、侵入または移動)を阻止、改善、または阻害するのに十分な量である。
【0379】
当業者であれば、「新生物」という用語が、細胞または組織の病理学的増殖、及びその後の他の組織または器官への移動または侵入を特徴とする疾患を包含し得ることを理解するであろう。新生物の成長は、一般的には制御されず、進行性であり、正常細胞の増殖を誘発しないか、または停止を引き起こす条件化で起きる。新生物は、様々な細胞型、組織、または器官に影響を与える可能性があり、骨、脳、乳房、軟骨、グリア、食道、卵管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、器官、尿生殖路、尿管、尿道、子宮、及び膣、またはそれらの組織若しくは細胞型を含む群から選択される器官を含むが、これに限定されない。新生物には、肉腫、癌腫、または形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)などの癌が含まれる。
【0380】
当業者であれば、「病原体」という用語が、病気を引き起こすことができるウイルス、バクテリア、真菌、寄生虫または原虫を包含し得ることを理解するであろう。
【0381】
当業者であれば、「腫瘍抗原」または「腫瘍関連抗原」という用語が、正常、または非IS新生物細胞と比較して、腫瘍細胞上で一意に、または差次的に発現される抗原(例えばポリペプチド)を包含し得ることを理解するであろう。本明細書に開示される組成物及び方法に関して、腫瘍抗原は、抗原認識受容体(例えば、CD19、MUCI)を介して免疫応答を活性化または誘導することができるか、または受容体-リガンド結合(例えば、CD47、PD-L1/L2、B7.1/2)を介して免疫応答を抑制することができる腫瘍によって発現される任意のポリペプチドを含む。
【0382】
当業者であれば、「ウイルス抗原」という用語が、免疫応答を誘導することができるウイルスによって発現されるポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。
【0383】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」という用語は、米国特許法においてそれらに帰する広い意味を有することが意図され、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」などを意味することができる。同様に、「から成る(consists of)」、「本質的に~から成っている(consisting essentially of)」という用語は、米国特許法においてそれらに帰する意味を有する。本明細書に開示される組成物及び方法は、活性成分または特定のステップを含むか、活性成分または特定のステップから成るか、または本質的に活性成分または特定のステップから成るかのいずれかのように想起される。
【0384】
当業者であれば、「治療」という用語が、治療される固体または細胞の疾患経過を変化させる試みにおける臨床的介入を包含し得、予防のため、または臨床病理の経過の間のいずれかに実施され得ることを理解するであろう。治療の効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、及び緩和または改善された予後を含むが、これに限定されない。疾患または障害の進行を予防することにより、治療は、罹患したまたは診断された対象、またはその障害を有すると疑われる対象における障害による悪化を防ぐことができ、治療はまた、障害のリスクのある対象、または障害を有すると疑われる対象における障害の発症または症状を予防することができる。
【0385】
当業者であれば、「対象」という用語が脊椎動物を、一実施形態では哺乳動物を、一実施形態ではヒトを包含し得ることを理解するであろう。対象はまた、一実施形態では、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコ、イヌ、及び実験動物であるマウス、ラット、アレチネズミ、ハムスターなどを含む家畜を指していてもよい。
【0386】
一実施形態では、CARが目的のペプチドに向けられたCAR-T細胞が本明細書に開示される。一実施形態では、CARは目的のペプチドに結合する。別の実施形態では、CARは目的のペプチドを標的とする。別の実施形態では、CARは目的のペプチドを活性化する。別の実施形態では、CARは目的のペプチドのリガンドである。これらの実施形態の各々は、本明細書に開示される一部と見なされるべきである。
【0387】
一実施形態では、本明細書に開示される免疫細胞は、T細胞ではない。別の実施形態では、本明細書に開示される免疫細胞は、NK細胞ではない。別の実施形態では、本明細書に開示される免疫細胞は、CTLではない。別の実施形態では、本明細書に開示される免疫細胞は、制御性T細胞ではない。別の実施形態では、免疫細胞はヒト胚性幹細胞ではない。別の実施形態では、免疫細胞はリンパ系細胞が分化され得る多能性幹細胞ではない。
【0388】
使用方法
【0389】
免疫療法に対する1つのアプローチは、患者自身の免疫細胞を操作し、腫瘍を認識して攻撃する遺伝子改変免疫細胞を生み出すことを含む。本明細書に記載のように、免疫細胞は収集、及び遺伝子改変され、例えば免疫細胞、例えばT細胞が腫瘍または癌細胞上の特異的タンパク質抗原を認識することを可能にするキメラ抗原受容体(CAR)がその細胞表面上に産生される。その後、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR-T細胞の増殖集団を患者に投与する。一実施形態では、投与された細胞は患者の体内で増殖し、その表面上に抗原を有する癌及び腫瘍細胞を認識して死滅させる。別の実施形態では、投与された細胞は患者の体内で増殖し、腫瘍関連抗原を認識して死滅させ、癌及び腫瘍細胞の死をもたらす。
【0390】
一実施形態では、CAR-T細胞癌療法を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または低減する方法、及びサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症する対象におけるサイトカイン産生を減少または阻害する方法が開示され、前記方法は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞の上清を含む組成物を投与するステップを含む。別の実施形態では、CAR-T細胞療法を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを治療する方法が本明細書に開示される。別の実施形態では、CAR-T細胞療法を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを予防する方法が本明細書に開示される。別の実施形態では、CAR-T細胞療法を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを緩和する方法が本明細書に開示される。別の実施形態では、CAR-T細胞療法を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを改善する方法が本明細書に開示される。別の実施形態では、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清またはその組成物の投与は、CAR-T細胞療法の有効性を低下させることはない。
【0391】
一実施形態では、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)癌療法を受ける対象におけるサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームの発生を阻害または低減する方法が開示され、前記方法は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清またはその組成物を含む組成物を投与するステップを含む。別の実施形態では、サイトカイン放出症候群(CRS)またはサイトカインストームの発生を阻害または低減することを、キメラ抗原受容体発現T細胞癌療法を受けている対象におけるサイトカインレベルを測定し、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を投与することによって決定する。別の実施形態では、測定されたサイトカインのレベルを、CAR-T細胞癌療法を受けていない対象におけるサイトカインレベルと比較する。別の実施形態では、測定されたサイトカインレベルを、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を投与しない対象におけるサイトカインレベルと比較する。さらに別の実施形態では、測定されたサイトカインレベルを、対照の対象と比較する。
【0392】
別の実施形態では、炎症性サイトカインのレベルは、CAR-T細胞癌療法を受け、かつ前記アポトーシス細胞または前記アポトーシス細胞上清またはその組成物を投与されていない対象と比較して減少する。別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、CAR-T細胞癌療法を受け、かつ前記アポトーシス細胞または前記アポトーシス細胞上清またはその組成物を投与されていない対象と比較して、少なくとも1つの炎症性サイトカインの産生レベルを低下または阻害する。
【0393】
別の実施形態では、本明細書に開示される方法は、追加的な薬剤の投与をさらに含み得る。あるいは、本明細書に開示される方法は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清ではない追加的な薬剤の投与を含み得る。さらに別の実施形態では、追加的な薬剤は、CAR-T細胞癌療法を増強または改善する化合物または組成物、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。さらに別の実施形態では、CAR-T細胞癌療法を増強または改善する追加的な薬剤は、CTLA-4阻害剤、α1-アンチトリプシンまたはその機能性断片、またはその類似体、テルル系化合物、または免疫調節剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、追加的な薬剤は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の追加的な薬剤の投与は、前記CAR-T細胞癌療法の前に、同時に、または後に行われる。
【0394】
一実施形態では、IL-6受容体アンタゴニストは、一実施形態ではトシリズマブであり、本明細書に開示される組成物及び方法と共に使用される。
【0395】
一実施形態では、養子移入されたT細胞は、リンパ球性宿主においてより効率的に移植及び増殖する。したがって、一実施形態では、対象はCAR-T細胞または他の改変免疫細胞の移入の前にリンパ球の枯渇に陥る。別の実施形態では、CAR-T細胞を受ける対象にT細胞支持性サイトカインが投与される。
【0396】
一実施形態では、T細胞はエフェクターT細胞である。別の実施形態では、T細胞はナイーブT細胞である。別の実施形態では、T細胞はセントラルメモリー(TCM)T細胞である。別の実施形態では、T細胞はTh17細胞である。別の実施形態では、T細胞は幹細胞様メモリーT細胞である。別の実施形態では、T細胞は高い複製能を有する。別の実施形態では、T細胞増殖が患者において起きる。別の実施形態では、少数の細胞を患者に移入することができる。別の実施形態では、T細胞増殖はインビトロで起こる。別の実施例では、多数の細胞を患者に移入し、細胞及び/または上清、またはそれらの組み合わせを患者に複数回移入することができる。
【0397】
一実施形態では、CAR-T細胞の利点は、CAR-T細胞が細胞表面分子に特異的であるため、MHC拘束性TCR認識の制約を克服し、抗原提示またはヒト血球抗原発現の障害による腫瘍逃避を回避することである。
【0398】
一実施形態では、対象において腫瘍負荷を低減する方法が本明細書に開示され、前記方法は、本明細書に記載の任意の組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0399】
一実施形態では、腫瘍負荷を低減することは、対象の腫瘍細胞の数を減少させることを含む。別の実施形態では、腫瘍負荷を低減することは、対象の腫瘍サイズを減少させることを含む。別の実施形態では、腫瘍負荷を低減することは、対象の腫瘍を根絶することを含む。
【0400】
別の実施形態では、対象において腫瘍細胞死を誘導する方法が本明細書に開示され、前記方法は、本明細書に記載の任意の組成物を前記対象に投与するステップを含む。別の実施形態では、対象において腫瘍細胞死を誘導するための本明細書に記載の方法は、対象において毒性サイトカイン放出、または「サイトカイン放出症候群(CRS)」または「サイトカインストーム(sCRS)」を低減させるための少なくとも1つの追加的な薬剤を有する、操作されたキメラ抗原受容体を含む、NK細胞またはT細胞を含む。
【0401】
別の実施形態では、新生物を有する対象の生存を増加または延長する方法が本明細書に開示され、本明細書に記載の任意の組成物を前記対象に投与する方法が含まれる。別の実施形態では、対象の生存を増加または延長させる方法は、対象において毒性サイトカイン放出、すなわち「サイトカイン放出症候群(CRS)」または「重度のサイトカイン放出症候群(sCRS)」または「サイトカインストーム」を低減させるための少なくとも1つの追加的な薬剤を有する、遺伝子操作されたキメラ抗原受容体を含む、NK細胞またはT細胞を含む。
【0402】
別の実施形態では、新生物を有する対象の生存を増加または延長させる方法が本明細書に開示され、本明細書に記載の任意の組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0403】
別の実施形態では、対象において新生物を防ぐ方法が本明細書に開示され、前記方法は本明細書に記載の任意の組成物を前記対象に投与するステップを含む。
【0404】
一実施形態では、新生物は、血液癌、B細胞性白血病、多発性骨髄腫、リンパ芽急性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0405】
別の実施形態では、それらを必要とする対象において血液癌を治療する方法が本明細書に開示され、本明細書に記載の任意の組成物を前記対象に投与するステップを含む。一実施形態では、血液癌は、B細胞白血病、多発性骨髄腫、急性リンパ芽急性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病、及び非ホジキンリンパ腫から成る群から選択される。
【0406】
一実施形態では、サイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを発症するか、またはサイトカイン放出症候群またはサイトカインストームを罹患しやすい対象におけるサイトカイン産生を減少または阻害する方法は、本明細書に開示されるように、サイトカイン産生を減少または阻害する。別の実施形態では、この方法は、炎症性サイトカイン産生を減少または阻害する。さらなる実施形態では、この方法は、少なくとも1つの炎症性サイトカインを減少させるか、または阻害する。別の実施形態では、対象はCAR-T細胞癌療法を受けており、この方法はCAR-T細胞癌療法の有効性を低下させない。
【0407】
本明細書で提供される方法は、所望の効果、すなわち既存の状態の緩和、または再発の予防を達成するのに有効な量で、本明細書に開示されるT細胞、NK細胞、またはCTL細胞を投与することを含む。治療のために投与される量は所望の効果を生じるのに有効な量である。有効量を、1回または一連の投与で提供することができる。ボーラスまたは連続灌流によって有効量を提供することができる。
【0408】
当業者であれば、「有効量」(または「治療的有効量」)は、治療の際に有益な、または所望の臨床効果を達成するのに十分な量を包含し得ることを認識するであろう。有効量を、1回以上の用量で対象に投与することができる。治療に関して、有効量は、疾患の進行を緩和、改善、安定化、逆行、または遅らせるか、そうでなければ疾患の病理学的結果を減少させるのに十分な量である。有効量は、一般的に事例ごとに医師によって決定され、当業者の技術範囲内である。有効量を達成するための適切な投薬量を決定する際、いくつかの要因が一般的に考慮される。これらの要因には、対象の年齢、性別及び体重、治療される状態、状態の重症度、及び投与される抗原結合断片の形態及び有効濃度が含まれる。
【0409】
抗原特異的T細胞、例えばCAR-T細胞を用いる養子免疫療法では、10~1010(例えば10)の範囲の細胞が一般的に注射される。遺伝子改変された細胞の宿主への投与、及びその後の分化に際し、特異的抗原に対して特異的に向けられるT細胞が誘導される。T細胞の「誘導」は、欠失またはアネルギーなどによる抗原特異的T細胞の不活性化を含む。不活性化は、自己免疫異常などにおける耐性を確立または再確立するのに特に有用である。修飾された細胞は、静脈内、皮下、結節内、腫瘍内、髄腔内、胸腔内、腹腔内、及び胸腺に直接的に投与することを含む、当技術分野で周知の任意の方法によって投与されるが、これに限定されない。一実施形態では、T細胞は腹腔内に投与されない。一実施形態では、T細胞は腫瘍内に投与される。
【0410】
本明細書に開示される遺伝子改変免疫応答細胞(例えばT細胞、N細胞、CTL細胞、またはそれらの前駆細胞)を含む組成物は、新生物、病原体感染、または感染症の治療のために、全身的または直接的に対象に提供され得る。一実施形態では、本明細書に開示される細胞は、目的の器官(例えば、新生物によって影響を受ける器官)に直接注射される。あるいは、遺伝子改変された免疫応答細胞を含む組成物は、例えば、循環系(例えば、腫瘍血管系)への投与によって目的の器官へ間接的に提供される。増殖及び分化剤は、インビトロまたはインビボでT細胞、NK細胞、CTL細胞の産生を増加させるために細胞の投与前、投与中、または投与後に提供され得る。
【0411】
修飾された細胞は、細胞が再生または分化のための適切な部位(例えば、胸腺)を見つけ出すことができる骨または他の都合のよい部位にも導入され得るが、任意の生理学的に許容されるビヒクルで、通常は血管内に投与され得る。通常、少なくとも1×10の細胞が投与され、最終的には1×1010、またはそれ以上に達する。本明細書に開示された遺伝子改変免疫応答細胞は、精製された細胞手段を含み得る。当業者であれば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)などの様々な周知の方法を用いて、集団における遺伝子改変免疫応答細胞のパーセンテージを容易に決定することが可能であろう。いくつかの実施形態では、遺伝子改変免疫応答細胞を含む集団における純度の範囲は、約50~約55%、約55~約60%、及び約65%~約70%である。他の実施形態では、純度は約70~約75%、約75~約80%、約80%~約85%である。さらなる実施形態では、純度は約85~約90%、約90~約95%、及び約95%~約100%である。投薬量は、当業者によって容易に製剤化され得る(例えば、純度の低下は投薬量の増加を必要とし得る)。細胞は、注射、カテーテルなどによって導入され得る。必要に応じて、インターロイキン、例えばIL-2、IL-3、IL-6、IL-11、IL7、IL12、ILIS、IL21、及び他のインターロイキン、G-、M-、及びGM-CSFなどのコロニー刺激因子、インターフェロン、例えばγインターフェロン及びエリスロポエチンを含む因子が含まれ得るが、これに限定されない。
【0412】
組成物には、遺伝子改変免疫応答細胞またはその前駆細胞、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が含まれる。投与は、自己または異種であり得る。例えば、免疫応答細胞または前駆細胞は、1つの対象から得られ、同じ対象、または異なる適合性の対象に投与され得る。本明細書に開示される末梢血由来の免疫応答細胞またはその子孫(例えば、インビトロ、エクスビボ、またはインビトロ由来)は、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を含む局所注射を介して投与され得る。
【0413】
別の実施形態では、本明細書に開示されるCAR-T細胞または他の免疫細胞、及びアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の産生方法が本明細書に開示され、前記方法はT細胞または免疫細胞に、目的の抗原に結合するCARをコードする核酸配列を導入することを含む。別の実施形態では、本明細書に開示されるCAR-T細胞または他の免疫細胞を含む組成物は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を含む組成物とは別個である。
【0414】
当業者であれば、遺伝子改変免疫細胞、例えばCAR改変T細胞によって誘発された抗腫瘍免疫応答が、活性または受動免疫応答であり得ることを理解するであろう。さらに、CAR媒介性免疫応答は、CAR改変T細胞がCAR中の抗原結合部分に特異的な免疫応答を誘導する養子免疫療法アプローチの一部であり得る。
【0415】
当業者であれば、免疫療法が、免疫エフェクター細胞及び分子を用いて癌細胞を標的化及び破壊することを包含し得ることを理解するであろう。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体は単独では、治療のエフェクターとして働くことができるか、または実際に細胞死をもたらすために他の細胞を補充することができる。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートされることができ、単に標的剤として役立つこともできる。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞及びNK細胞が含まれる。
【0416】
悪性腫瘍
【0417】
いくつかの実施形態では、CAR-T細胞は、癌または腫瘍の治療、予防、阻害、発症の低減、改善または緩和の方法で利用され、前記方法は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)を投与するステップを含む。本明細書に開示されるように、これらの方法は、CRSまたはサイトカインストームの発症を阻害または減少させるための、追加的な薬剤の投与をさらに含む。
【0418】
一実施形態では、癌はB細胞悪性腫瘍である。一実施形態では、B細胞悪性腫瘍は白血病である。別の実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病である。
【0419】
一実施形態では、癌は白血病である。一実施形態では、癌はリンパ腫である。一実施形態では、リンパ腫は大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0420】
一実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。別の実施形態では、固形腫瘍は、嚢腫または液体領域を欠く異常な組織の塊である。別の実施形態では、固形腫瘍は、血液、骨髄またはリンパ球以外の体細胞組織の異常増殖によって形成される新生物(細胞の新生物)または病変(解剖学的構造の損傷または生理学的機能の障害)である。別の実施形態では、固形腫瘍は、肝臓、結腸、乳房または肺などの異なる組織型に由来する可能性のある、異常な細胞の塊から成り、その細胞起源の器官で最初に増殖する。しかし、このような癌は、疾患の進行したステージで転移性腫瘍の成長により、他の器官に広がる可能性がある。
【0421】
一実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。別の実施形態では、固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫及びリンパ腫である。
【0422】
別の実施形態では、固形腫瘍は、副腎皮質腫瘍(腺腫及び癌腫)、癌腫、直腸結腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍、肝芽腫、肝細胞癌、黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、横紋筋肉腫以外の軟部肉腫、及びウィルムス腫瘍を含む。一実施形態では、固形腫瘍は乳房腫瘍である。別の実施形態では、固形腫瘍は前立腺癌である。別の実施形態では、固形腫瘍は大腸癌である。一実施形態では、腫瘍は脳腫瘍である。別の実施形態では、腫瘍は膵臓腫瘍である。別の実施形態では、腫瘍は直腸結腸腫瘍である。
【0423】
別の実施形態において、本明細書に開示される組成物及び方法は、肉腫及び癌腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、シュワン細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、及び網膜芽腫)に対して治療的、及び/または予防的有効性を有する。本明細書に開示される組成物及び方法は、当該分野で周知の任意の固形腫瘍を治療、予防、阻害、改善、発症の減少、または緩和するために使用され得る。
【0424】
別の実施形態では、腫瘍は血液腫瘍である。一実施形態では、血液腫瘍は、血液、髄液、及びリンパ節に影響を与える癌のタイプである。血液腫瘍は、2つの主要な血液細胞系、すなわち骨髄系細胞株及びリンパケイ細胞株のいずれかから誘導され得る。骨髄系細胞株は、通常、顆粒球、赤血球、血小板、マイクロファージ、及びmasT細胞を産生するが、リンパ球細胞系は、B細胞、NK細胞、及び形質細胞を産生する。リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫)、リンパ球性白血病、及び骨髄腫は、リンパ系統に由来するが、急性及び慢性骨髄白血病(AML、CML)、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性疾患は、骨髄由来である。
【0425】
別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法は、白血病(例えば、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性多血症、リンパ腫(ホジキン病、非ホジキン病)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、重鎖疾患に対する治療的、及び/または予防的有効性を有する。本明細書に開示される組成物及び方法は、当技術分野で周知の任意の血液学的腫瘍を治療、予防、阻害、改善、発生の減少、または軽減するために使用され得る。
【0426】
一実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドまたはペプチドドメインのいずれか1つの活性断片が、本明細書に開示される。当業者であれば、「断片」という用語が、少なくとも5、10、または15のアミノ酸を包含し得ることを理解するであろう。他の実施形態では、断片は少なくとも20の連続したアミノ酸である。本明細書に開示される断片は、当業者に周知の方法で生成され得るか、または正常なタンパク質プロセシング(例えば、生物活性に必要ではない新生プリペプチドからのアミノ酸の除去、または代替のmRNAスプライシング若しくは代替のタンパク質プロセシング事象によるアミノ酸の除去)からもたらされ得る。
【0427】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で互換的に使用され、具体的には、抗体の結合活性を保持するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはその任意の断片を指す。特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体の使用を含む。
【0428】
当業者であれば、「ポリクローナル抗体(複数可)」という用語が、同じ抗原の異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体の集団を包含し得ることを理解するであろう。
【0429】
当業者であれば、「モノクローナル抗体(複数可)」という用語が、実質的に均質な抗体の集団、すなわち、集団を含む個々の抗体が、少量で存在し得る自然発生する可能性のある突然変異を除き同一であること、を包含し得ること理解するであろう。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対して向けられる。
【0430】
本明細書に開示されるモノクローナル抗体は、Kohler et al, Nature, 256: 495 (1975)で最初に説明されたハイブリドーマ法を用いて作製されるか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号明細書)によって作製され得る。
【0431】
ハイブリドーマ法では、マウス、またはハムスターなどの他の適切な宿主動物を免疫化して、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生する、または産生することができるリンパ球を誘発する。目的のタンパク質に対する抗体は、目的の所望のタンパク質及びアジュバントの皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により、動物において一般的に産生される。一実施形態では、担体タンパク質としてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH、シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich))に結合した対象タンパク質で、動物を免疫化する。
【0432】
動物の免疫化に使用される目的のタンパク質は、当技術分野で周知の方法を用いて調製される。例えば、目的のタンパク質は、組換え方法またはペプチド合成方法によって産生され得る。
【0433】
あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化し、その後ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いてミエローマ細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成することができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。
【0434】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al., Anal Biochem., 107: 220 (1980)のスキャチャード解析によって決定され得る。
【0435】
本明細書に開示される抗体は、コンビナトリアルライブラリを使用して、所望の活性を有する合成抗体クローンをスクリーニングすることによって産生され得る。原則として、合成抗体クローンは、当技術分野で周知の方法を用いてファージコートタンパク質に融合された抗体可変領域(Fv)の様々な断片を提示するファージを含むファージライブラリをスクリーニングすることによって選択される。
【0436】
当業者であれば、「抗体の結合活性を保持する任意のその断片」という用語が、無傷の抗体の標的抗原に結合することができる抗原結合、またはその可変領域を含み得る抗体の一部を包含し得ることを理解するであろう。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片を含む。
【0437】
これらの抗体断片は、組換え技術によって、または酵素消化などの伝統的な手段によって産生され得る。6抗体のパパイン分解は、各々が単一の結合部位を有する「Fab」断片、及び残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋結合することができるF(ab')2断片を生じる。「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。
【0438】
本明細書に開示されるポリクローナル抗体、及びモノクローナル抗体は、当技術分野で周知の方法を用いて調製される。
【0439】
一実施形態では、CARがT細胞に対して内因性であるCAR-T細胞または関連組成物が本明細書に開示される。一実施形態では、「内因性」は、細胞または組織において通常発現される核酸分子(例えば、cDNA、DNA、またはRNA分子)またはプリペプチドを含む。
【0440】
別の実施形態では、CARがT細胞に対して外因性であるCAR-T細胞または関連組成物が本明細書に開示される。一実施形態では、「外因性」は、細胞内に内因的に存在しないか、または人為的に過剰発現された場合に得られる機能的効果を達成するために十分なレベルで存在しない核酸分子、またはポリペプチドを含む。したがって、当業者であれば、「外因性」という用語が、外来性、異種性、及び過剰発現核酸分子及びポリペプチドなどの、細胞内で発現される任意の組換え核酸分子またはポリペプチドを包含することを理解するであろう。
【0441】
一実施形態では免疫細胞が、一実施形態では、T細胞が対象に対して事故由来であるCAR-T細胞が、本明細書に開示される。別の実施形態では、CAR-T細胞は対象に対して異種である。一実施形態では、CAR-T細胞は同種異系である。一実施形態では、CAR-T細胞は普遍的同種異系CAR-T細胞である。別の実施形態では、T細胞は、自己由来、同種異系、または操作された前駆細胞または肝細胞からインビトロで誘導され得る。
【0442】
別の実施形態では、本明細書に記載のCAR-T細胞及びアポトーシス細胞は、両者とも同じ供給源に由来する。さらなる実施形態では、本明細書に記載のCAR-T細胞及びアポトーシス細胞は、両者とも対象由来である(図1)。別の実施形態では、本明細書に記載のCAR-T細胞及びアポトーシス細胞は、異なる供給源に由来する。さらに別の実施形態では、CAR-T細胞は自己由来であり、本明細書に記載のアポトーシス細胞は同種異系である(図2)。当業者であれば、同様に、アポトーシス細胞上清はCAR-T細胞と同じ供給源に由来する細胞から作製されてもよく、一実施形態では自己由来であってもよく、またはアポトーシス細胞上清はCAR-T細胞とは異なる供給源に由来する細胞から作製されてもよいことを理解するであろう。
【0443】
当業者であれば、「異種」という用語が、異なる生物に由来する組織、細胞、核酸分子、またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。一実施形態では、異種タンパク質は、レシピエント由来の異なるT細胞型、または異なる種から最初にクローン化されるか、または由来し、細胞または細胞から得られたサンプルに通常は存在しないタンパク質である。
【0444】
当業者であれば、「自己」という用語が、ドナーとレシピエントが同じ人間である組織、細胞、核酸分子、またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。
【0445】
当業者であれば、「同種異系」という用語が、同じ種の別々の固体に由来する組織、細胞、核酸分子、またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。一実施形態では、同種異系ドナー細胞は、レシピエントと遺伝的に異なる。
【0446】
別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法は、本明細書に開示されるアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清、及び1つ以上のイピリムバムなどのCTLA-4阻害剤の併用療法を利用する。一実施形態では、CTLA-4は、自己免疫寛容を維持するために役立つT細胞活性化の強力な阻害剤である。一実施形態では、別の実施形態では抗体であるアンチCTLA-4阻害剤の投与は、T細胞活性化の正味の効果を生じる。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法は、アポトーシス細胞、CAR-T細胞、及び1つ以上のCTLA-4阻害剤を含む併用療法を利用する。
【0447】
いくつかの場合では、本明細書に開示される方法で使用されるポリペプチドは、非修飾アミノ酸配列と比較して、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を含む。他の場合では、ポリペプチドは、非保存的アミノ酸置換を含む。そのような場合、このような修飾を有するポリペプチドは、このようなアミノ酸置換を欠いているポリペプチドと比較して、増大した安定性またはより長い半減期を示す。
【0448】
一実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に記載の様々な治療及び予防目的のための、本明細書に記載の組成物の使用として、あるいは、本明細書に記載の様々な治療及び予防目的のための、医薬品若しくは治療用組成物、または組成物の調製における本明細書に記載の組成物の使用として表され得る。
【0449】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法は、様々な構成要素及びステップを含む。しかし、別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法は、本質的に、他の構成要素またはステップが含まれ得る様々な構成要素及びステップから成る。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法は、様々な構成要素またはステップから成る。
【0450】
いくつかの実施形態では、「含む(comprise)」という用語は、当技術分野で周知であり得る組成物の有効性に影響を及ぼす組成物の他の構成要素の含有を包含し得る。いくつかの実施形態では、「本質的に~から成る(consisting essentially of)」という用語は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)、及びアポトーシス細胞または任意のアポトーシス細胞上清を有する組成物を含む。しかし、組成物の有用性に直接関与しない他の成分が含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、「含んでいる」という用語は、本明細書に記載の任意の形態または実施形態の、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)及び本明細書に開示されるアポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清を有する組成物を包含する。
【0451】
一実施形態では、「治療(treating)」という用語は治療的措置を含み、「防止(preventing)」という用語は予防的、または防止的手段を含み、その目的は、上文に記載の標的病理学的状態または障害を防止または軽減することである。したがって、一実施形態では、治療は、疾患、障害または状態に関連する直接的影響または治癒、抑制、阻害、防止、重症度の軽減、発症の遅延、症状の軽減、またはそれらの組み合わせを含み得る。したがって、一実施形態では、「治療(treating)」、「寛解(ameliorating)」、及び「緩和(alleviating)」は、とりわけ、進行の遅延、寛解の促進、寛解の誘発、寛解の増強、回復の加速、代替治療に対する効力の増加若しくは抵抗の減少、またはそれらの組み合わせを指す。一実施形態では、「防止(preventing)」は、とりわけ、症状の発症の遅延、疾患の再発の防止、再発発症の数または頻度の減少、症状発症間の潜伏時間の増加、またはそれらの組み合わせを指す。一実施形態では、「抑止(suppressing)」または「阻害(inhibiting)」は、とりわけ、症状の重篤度の低下、急性発症の重症度の低下、症状の数の減少、疾患関連症状の発生率の低下、症状の潜伏の減少、症状の改善、二次症状の減少、二次感染の減少、患者の生存の延長、またはそれらの組み合わせを指す。
【0452】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物は、1回投与される。別の実施形態では、組成物は2回投与される。別の実施形態では、組成物は3回投与される。別の実施形態では、組成物は4回投与される。別の実施形態では、組成物は少なくとも4回投与される。別の実施形態では、組成物は4回より多く投与される。
【0453】
一実施形態では、本明細書に開示されるCAR-T細胞は1回投与される。別の実施形態では、CAR-T細胞は2回投与される。別の実施形態では、CAR-T細胞は3回投与される。別の実施形態では、CAR-T細胞は4回投与される。別の実施形態では、CAR-T細胞は少なくとも4回投与される。別の実施形態では、組成物は4回より多く投与される。
【0454】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物は治療用組成物である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物は治療効果を有する。
【0455】
一実施形態では、CAR-T細胞のみを含む組成物と比較して、炎症性サイトカインまたはケモカインの放出は減少するが、同等の細胞障害性を有する組成物が本明細書に開示される。
【0456】
当業者であれば、「約(about)」という用語が、示された数または数の範囲から0.0001~5%の間の逸脱を包含し得ることを理解するであろう。さらに、示された数または数の範囲から1~10%の逸脱を包含し得る。さらに、示された数または数の範囲から最大25%の逸脱を包含し得る。
【0457】
当業者であれば、「a」、「an」及び「the」という単数形が、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含むことを理解するであろう。例えば、「1つの薬剤(an agent)」または「少なくとも1つの薬剤(at least an agent)」は、その混合物を含む複数の薬剤を含み得る。
【0458】
本出願を通して、本明細書で開示される様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での記述は、単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきでないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~5などの部分範囲、及びその範囲内の個々の数字、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示したものと見なされるべきである。これは、範囲の幅に関わらず適用される。
【0459】
本明細書で数値範囲が示されるいかなる時においても、示された範囲内に任意の引用数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の指示数及び第2の指示数の「範囲/間の範囲(ranging/ranges between)」という表現、及び第1の指示数の「範囲/範囲から(ranging/ranges from)」第2の指示数「まで(to)」という表現は、本明細書では互換的に使用され、第1及び第2の指示数、並びにすべての小数及び整数の数字を含むことを意味する。
【0460】
以下の実施例を、本明細書に開示される実施形態をより完全に説明するために提示する。しかし、それらは本発明の広い範囲を限定するものとして、決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0461】
実施例1:アポトーシス細胞療法による、CAR-T細胞療法を受けた患者におけるサイトカインストームの防止
【0462】
材料及び方法
【0463】
組換えDNA構築物
【0464】
特定の腫瘍関連抗原に対するT細胞特異性を再標的化するCARが開発されている。T細胞を非関連腫瘍関連抗原に導く、対照となるCARが開発されている。背景に使用されるCARは、装甲されたCAR-T細胞、すなわち第4世代CAR-T細胞である。一実施形態では、IL-2及びIL-15受容体に使用されるβ鎖の膜貫通、及びエンドドメインに結合したIL-4受容体αサブユニットの外部ドメインを発現するよう細胞も操作され、IL-4の添加によってT細胞を拡大させることができる。
【0465】
レトロウイルス形質導入及びT4+T細胞の培養
【0466】
血液サンプルを、健康なボランティア及び癌患者から得た。T細胞は、CD3/CD28でコーティングした常磁性のビーズ(1:1ビーズ/細胞比、ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies))、またはPHA(5mg/ml、シグマ・アルドリッチ社)を用いて遺伝子導入の前に活性化することができた。PG13レトロウイルスパッケージング細胞を用いて活性化T細胞のレトロウイルス形質導入を行った。記載のように、形質導入を、適正製造基準(GMP)下で製造されたSFG T4ウイルスベクターを用いて行い、次にガス透過性バッグ中のGMPグレードのIL-4(30mg/ml)を用いてT細胞の拡大を行った。
【0467】
細胞及び培養細胞
【0468】
ホタルルシフェラーゼを発現する腫瘍細胞株を、10%FBS(シグマ・アルドリッチ社)、GlutaMAX(商標)、及び抗生物質・抗真菌剤溶液(ライフ・テクノロジーズ社)を加えた適切な培地、例えばDMEM(ロンザ社(Lonza)、スイス国バーゼル所在)中で増殖させた。
【0469】
フローサイトメトリー
【0470】
ビチオン化Ab及びストレプトアビジン(streptavidin)-PE(ライフ・テクノロジーズ社)を用いてCARの発現を検出した。マウス由来の器官における腫瘍抗原発現を定量化するために、切開した組織を、シリンジプランジャを用いてPBS内で均質化し、100mm細胞ストレーナで濾過した。赤血球溶解溶液(Red Blood Lysis Solution)(ミルテニー・バイオテク社(Miltenyi Biotec)、イギリス国ビスレー所在)で処理後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(37℃で10分間)を用いて固定し、氷冷メタノールを用いて30分間透過処理し、40%D10/60%PBSで洗浄した。次に、対照としてのラビット抗腫瘍抗原抗体またはラビット血清(ダコ社(Dako)、イギリス国イーリー所在)、続いてブタF(ab9)2 抗ラビットIgG-FITC(ダコ社)と共に細胞を培養した。あるいは、ヒト腫瘍抗原受容体の発現を、フローサイトメトリーによって実証した。すべての場合において、前方散乱/側方散乱ゲートを、存在するドミナントT細胞集団を同定するために使用した。フローサイトメトリーを、CellQuest Proソフトウェアを用いたFACSCaliburフローサイトメータを使用して実施した。
【0471】
サイトカイン分析
【0472】
上清及び血清を、ELISAキット、サイトメトリービーズアレイ(Th1/Th2/Th17、BDバイオサイエンセス社(BD Biosciences))を使用し、製造業者によって記載のように分析した。例えば、分析は炎症性サイトカインの前であってもよく、場合によってはIL-6である。
【0473】
細胞毒性アッセイ
【0474】
T細胞による腫瘍細胞単層の破壊を、クリスタルバイオレット染色によって視覚化した。腫瘍細胞の生存率を、MTTアッセイ(ライフ・テクノロジーズ社)を用いて、製造業者によって記載のように定量化した。
【0475】
インビトロルシフェラーゼアッセイ
【0476】
形質導入された合計0.5×106の細胞(及び同数の対照として形質導入されていない細胞)を、ルシフェラーゼアッセイシステムキット(プロメガ社(Promega)、米国ウィスコンシン州マディソン所在)を用いて製造業者によって記載のように測定した。アッセイを、Omegaソフトウェアを備えたマイクロプレートリーダを使用して読み取った。
【0477】
インビボ研究
【0478】
マウスに腫瘍細胞(1×10)を、PBSで腹腔内に、または200mlマトリゲル(BDバイオサイエンセス社)で皮下に植え付けた。生物発光イメージング(BLI)によって腫瘍移植を確認し、マウスをT細胞投与の前に同様のシグナル強度を有する群に分類した。IVIS Lumina IIまたはIVIS Spectrum(パーキン・エルマー社)を使用して、Living Imageソフトウェア(パーキン・エルマー社)と共にイメージングを実行し、T細胞イメージングのために大きなビニングを使用した。T細胞のインビボ毒性を評価するために器官をマウスから採取し、ホルマリン固定し、組織病理学的分析にかけた。
【0479】
結果
【0480】
CAR-T細胞は、目標の標的を発現する腫瘍細胞に向けられ、それらを破壊した。
【0481】
目的の腫瘍関連抗原は、低レベルで健康なマウス組織に、及びマウスで発現された腫瘍に発現した。
【0482】
インビトロでは、ヒトCAR-T細胞は、腫瘍細胞単層を急速に破壊したが、対照T細胞は腫瘍細胞を破壊しなかった。さらに、サイトカイン産生を、腫瘍関連抗原を発現する腫瘍細胞でT細胞を刺激した後に観察した。対照として、非形質転換マウス細胞を、ヒトCAR-T細胞の活性化のために試験した。非形質転換マウス細胞もまた、ヒトCAR-T細胞を刺激し、腫瘍関連抗原も発現することを実証した。非形質転換マウスは、ヒトCAR-T細胞を刺激しなかった。
【0483】
CAR-T細胞療法は、サイトカイン放出症候群を誘発した。
【0484】
3群の腫瘍を有していないマウス及び腫瘍を有するマウスに、徐々に大きな用量のCAR―T細胞(3×10、10×10、または30×10)を投与した(腹腔内投与、または腫瘍に直接投与)。最も高い用量では、腫瘍を有していないマウス及び腫瘍を有するマウスは、24時間以内に抑制された行動、立毛、及び移動の現象を示し、48時間以内に急速な体重減少、及びそれに続く死亡を伴った。ヒトインターフェロンγ及びマウスIL-6は、最も高い用量のCAR-T細胞が与えられたマウスからの血液サンプル中で検出可能であった。異なる腫瘍抗原に向けられた高用量のCAR-T細胞を受けた動物は、体重減少または行動の変化を示さなかった。
【0485】
アポトーシス細胞の投与は、CAR-T細胞療法によって誘発されるサイトカイン放出症候群の発症を阻害または減少させた。
【0486】
最も高い容量のCAR-T細胞を与えた1群のマウスには、安全で有効な用量であることが予め実証されている2.10×10/kgのアポトーシス細胞を同時に投与した。ヒトCAR-T+アポトーシス細胞を受けたマウスでは、マウスIL-6レベルが有意に低下し、体重減少が低下し、死亡率が減少した。
【0487】
実施例2:CAR-T細胞の効力に対しマイナス効果のないサイトカインストームに対するアポトーシス細胞の影響
【0488】
目的:アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞に由来する上清の、腫瘍または癌細胞に対するサイトカインストームマーカーであるサイトカイン及びCAR-T細胞の効力に対する影響を試験した。
【0489】
方法
【0490】
マウスのサイトカインストームを誘導すると報告された固形腫瘍モデル(van der Stegen et al., 2013、同上所収)を利用した。このモデルでは、頭頚部腫瘍及び卵巣癌などの特定の固形腫瘍においてしばしば高度に増加される特定のErbB二量体(T4+CAR-T細胞)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)でT細胞を操作した。CD-3マイクロビーズを用いて末梢血から分離したPBMCからT細胞を単離した。キメラT4+受容体を含むベクターを構築し、単離されたT細胞に変換し、T4+CAR-T細胞を得た。本明細書で実施された実験のために、T4+CAR-T細胞を購入した(クリエイティブ・バイオラブズ社、またはプロマブ・バイオテクノロジー社)。図3は、フローサイトメトリー及び抗CD124モノクローナル抗体(Wilkie et al.、同上所収)を用いて、T4+CAR-T細胞上の4αβ(キメラサイトカイン受容体)の細胞表面発現の検証を示す。さらに、PCR手順を実施し、形質導入されたT細胞におけるベクターの存在を検証した。
【0491】
SKOV3-luc卵巣腺癌組織培養細胞を使用した(Wilkie et al.、同上所収)。SKOV3-lucは、ErbB受容体を高発現し、T4+CAR-T細胞の標的である(van der Stegen et al., 2013、同上所収)。これらのSKOV3-luc細胞を操作してホタルルシフェラーゼ遺伝子を構成的に発現させ、インビトロでの細胞増殖の追跡及びインビボでの腫瘍増殖及び後退を可能にした。
【0492】
アポトーシス細胞
【0493】
富化された単核細胞分画を、健康で適格なドナーからの白血球搬出法により採取した。この手順を、Hadassah Ein Keremアフェレーシス装置で行った。採取した細胞を処理し、白血球搬出完了直後に液体窒素中で保存した。アポトーシス細胞(ApoCell)の調製のために、凍結保存された細胞を解凍し、洗浄し、次いで50mg/mLのメチルプレドニゾロン(ファイザー社(Pfizer)、米国ニューヨーク州所在)及び10%の自己由来血漿の存在下で、37℃、5%CO2で6時間培養した。培養の最後に、細胞を収集し、洗浄し、下流の用途にしたがって選択した緩衝液で再懸濁した。ApoCellのアポトーシス及び生存率を、フローサイトメータを介してAnnexinV及びPI(MBL社、米国マサチューセッツ州所在)染色(≧40%及び≦15%)を用いて測定した。FCS expressソフトウェアを用いて結果を分析した。
【0494】
アポトーシス細胞上清
【0495】
12ウェルプレート中に、1ウェルあたり800万個のアポトーシス細胞を播種した。24時間後、細胞を遠心分離した(290g、4℃、10分)。上清を集め、使用まで-80℃でアリコートで凍結した。異なる数の細胞を使用して上清を作った。いくつかのアリコートには濃縮上清を含ませた。
【0496】
単球単離
【0497】
健康な適格なドナーから得られた末梢血バフィコートから、Ficoll(GEヘルスケア社(GE healthcare)、イギリス国所在)を用いてPBMCを単離した。RPMI1640(ギブコ社(Gibco)、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific)、米国マサチューセッツ州所在)中で細胞を15×10細胞/mlの濃度にし、35mmプレート(コーニング社、米国ニューヨーク州所在)の真中に0.9ml滴下した。次いで、プレートを37℃、5%CO2で1時間培養した。培養の最後に、細胞をPBS(バイオロジカル・インダストリーズ社(Biological industries)、イスラエル国ベイトヘメク所在)で3回洗浄し、光学顕微鏡を用いて接着を測定した。次いで、細胞を完全培地(RPMI1640+10%熱不活性化FBS+1%Glutamax+1%PenStrep(全てギブコ社))で培養した。
【0498】
単球単離の別の方法も使用し、密度勾配遠心分離によってヒト単核細胞をヘパリン化末梢血から単離した。次いで、単離された単核細胞を、磁気ビーズ分離(ミルテニー・バイオテック社(Miltenyi Biotec)、米国カリフォルニア州オーバーン所在)によってCD14+分画として正の選択をすること、CD22+分画としてB細胞を正の選択をすること、及びCD14-CD22-分画としてT細胞を負の選択をすることにより、単球をB細胞及びT細胞集団に分離した。単球の純度は95%以上であった。
【0499】
マクロファージ分化のために、接着の最後に、細胞をPBSで3回洗浄し、次いでRPMI1640+1%Glutamax+1%PenStrep及び10%加熱不活性化したヒト血清AB型(シグマ社(Sigma)、米国ミズーリ州所在)で培養した。
【0500】
apo+単球からの上清
【0501】
CD14+単球を、上述で調製したアポトーシス細胞と1:16の比率で24時間培養した。単球の数は、12ウェルプレート中の1ウェルあたり50万個であり、アポトーシス細胞の数は、12ウェルプレート中の1ウェルあたり800万個であった。24時間の培養後、細胞を遠心分離した(290g、4℃、10分間)。上清を回収し、使用まで-80℃でアリコートで凍結した。アポトーシス細胞、及び/または、マクロファージ及び樹状細胞などの他の細胞源を用いて異なる単球の比率で同様の手順を実施することができる。
【0502】
結果
【0503】
ステップ1:SKOV3-luc腫瘍細胞に対するT4+CAR-T細胞活性の確認
【0504】
T4+CAR-T細胞活性を確証するために、SKOV3-lucの単層を、100万個のT4+CAR-T細胞、または100万個の非形質導入T細胞のいずれかに曝露した。24時間の培養後、T4+CAR-T細胞は、非形質導入T細胞の対照(図4)と比較してSKOV3-luc増殖を30%減少させ、T4+CAR-T細胞の抗腫瘍活性を示した。
【0505】
ステップ2:SKOV3-luc腫瘍細胞に対するT4+CAR-T細胞単体の活性を、アポトーシス細胞への曝露後の活性と比較した
【0506】
アポトーシス細胞(ApoCell)及びアポトーシス細胞上清(ApoSup及びApoMon Sup)を試験し、それらがT4+CAR-T細胞抗腫瘍活性を妨げるかどうか決定した。SKOV3-luc腫瘍細胞をアポトーシス細胞と共に1時間培養した後、T4+CAR-T細胞(50万個)またはT4+非形質導入T細胞(50万個)を添加した(T4+CAR-T細胞とアポトーシス細胞は1:2の比率)。次いで、腫瘍細胞/アポトーシス細胞/T4+CAR-T細胞を48時間共培養した。対照のSKOV3-luc腫瘍細胞を、48時間、T4+CAR-T細胞及びハルトマン溶液(アポトーシス細胞のビヒクル)と共培養したが、アポトーシス細胞は共存させなかった。
【0507】
結果は、48時間の培養後、T4+CAR-T細胞の抗腫瘍活性が、非形質導入T細胞との培養より優れていることを示した。同様の培養をアポトーシス細胞上清で行った。驚くべきことに、T4+CAR-T細胞抗腫瘍活性は、アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清への曝露の有り無しの場合で類似していた(図5)。
【0508】
ステップ3:CAR-T処置から生じるサイトカインストームの改善、減少または阻害に対するアポトーシス細胞の効果
【0509】
次に、アポトーシス細胞がサイトカインストームを減少させる効果を調べた。IL-6は、サイトカインストームにおいて放出される原型炎症性サイトカインであり(Lee DW et al. (2014) Blood 124(2): 188-195)、しばしばサイトカインストーム応答のマーカーとして使用される。
【0510】
培養物を確立し、インビボのCAR-T細胞療法環境を模倣した。SKOV3-luc腫瘍細胞を、ヒト単球マクロファージ及びT4+CAR-T細胞の存在下で培養した。培養培地中で測定したIL-6の濃度は、約500~600pg/mlであった。IL-6のこの濃度は、サイトカインストームの典型である。
【0511】
予期しないことに、SKOV3-luc腫瘍細胞、ヒト単球-マクロファージ、T4+CAR-T細胞の培養培地で測定したIL-6レベルは、アポトーシス細胞と共に予め1時間(T4+CAR-T細胞とアポトーシス細胞の比率は1:2)培養した腫瘍細胞が劇的に減少した。同様に、SKOV3-luc腫瘍細胞、ヒト単球-マクロファージ、T4+CAR-T細胞の培養培地で測定したIL-6レベルは、アポトーシス細胞上清と共に予め1時間培養した腫瘍細胞もまた劇的に減少した。このIL-6濃度の減少は、サイトカインストームの減少の典型である(図6)。
【0512】
予期しないことに、アポトーシス細胞及びアポトーシス上清は、腫瘍細胞増殖に対するCAR-T細胞の効果を無効にしないと結論付けられ、同時に、罹患をもたらす主要サイトカインとして説明されるIL-6などの炎症性サイトカインを減少させた。
【0513】
ステップ4:広範囲のサイトカインを用いた分析
【0514】
実験手順中には生成されないが、ヒトサイトカインストーム中の臨床環境に現れる可能性のある、より広い範囲及びレベルのサイトカインに対する効果をさらに評価するために、上記で概説したSKOV3-luc培養条件にLPS(10ng/ml)を添加した。LPSの添加は、サイトカインストームレベルを指数関数的に増加させることが予想された。予想通り、LPSの添加はサイトカインストーム効果を増加させ、結果としてIL-6レベルは約30,000pg/mlまで増加した。サイトカインストーム中に高レベルで発現することが知られているサイトカインは、上昇したレベル、例えばTNF-α(250~300pg/ml)、IL-10(200~300pg/ml)、IL1-α(40~50pg/ml)、及びIL-18(4~5pg/ml)を示した。図7に示されるように、アポトーシス細胞への曝露は、サイトカインストームの指数関数状態の間でさえも、臨床環境で見られる可能性のあるほぼ正常なレベルまでIL-6のレベルを劇的に低下させたが、CAR-T細胞の実験手順において常に見られるわけではない。この効果は、サイトカインTNF-α、IL-10、IL-1α、IL-1β、及びIL-18のレベルの正常化を伴う他の炎症性サイトカインにおいて同様であり、20~90%の低下を示した。アポトーシス細胞の代わりにアポトーシス細胞上清を使用した場合にも同様の結果が見られた。
【0515】
結論
【0516】
CAR-T細胞療法は、有意の数の患者においてサイトカインストームを引き起こすことが実証されている。本明細書に示したこれらの結果は、驚くべきことに、アポトーシス細胞及びアポトーシス細胞上清は、腫瘍細胞を死滅させるCAR-T細胞の有効性に影響を及ぼすことなく、サイトカインストームを低減できることを証明した。
【0517】
本明細書に開示された特定の特徴が本明細書に図示及び説明されたが、多くの修正、置換、変更、及び均等物が、当業者に想到されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書に開示された真の精神に該当するすべての改変及び変更を包含すべく意図されていることを理解されたい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7