(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】機器内蔵電池の保護回路
(51)【国際特許分類】
H02H 7/18 20060101AFI20221013BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221013BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
H02H7/18
H02J7/00 302D
H02J1/00 309Q
H02J1/00 304H
(21)【出願番号】P 2021209698
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2022-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103574
【氏名又は名称】株式会社オーバル
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田名部 義峰
(72)【発明者】
【氏名】北野 哲史
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-104426(JP,A)
【文献】特開2007-288952(JP,A)
【文献】特開2002-095157(JP,A)
【文献】特開2001-169474(JP,A)
【文献】特開2001-118607(JP,A)
【文献】特開平05-199740(JP,A)
【文献】特開2016-001943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/18
H02J 7/00
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池で駆動され、外部フィールド機器に電力を供給する機器の保護回路であって、
電池と、
前記電池の電池電圧を変圧するDC-DCコンバータからなる電源部と、
前記電源部の出力電流を監視する電流監視部と、
前記電流監視部からの信号に基づき前記電源部のオンオフ状態及び出力電圧を制御する制御部と、
前記電池を保護するヒューズと、
を含み、
前記制御部は、前記電流監視部で検出された過電流の状態に応じて、前記出力電圧を低減すると共に、前記電源部のオンオフ状態を制御
し、
前記制御部は、
前記電流監視部で過電流が検出されると前記出力電圧を低減する出力電圧低減指令を前記電源部に出力する第1制御部と、
前記出力電圧低減指令を受けて前記電源部のオンオフ時期を制御すると共に、前記外部フィールド機器の異常を判定する第2制御部と、
を備えることを特徴とする保護回路。
【請求項2】
前記第1制御部は、前記電流監視部で過電流が検出されると第1期間後に前記出力電圧を低減する出力電圧低減指令を前記電源部に送り、
前記第2制御部は、
前記出力電圧低減指令を受けてから第2期間後に前記電源部をオフ状態とし、さらに第3期間後に前記電源部をオン状態とし、
前記電源部のオンオフ回数に基づき前記外部フィールド機器の異常を判定することを特徴とする請求項
1に記載の保護回路。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電池電圧を監視する電池電圧監視部を備え、
前記電池電圧が所定の電圧よりも低下したことを検出すると、前記電源部にオフ指令を出力することを特徴とする請求項1
又は2に記載の保護回路。
【請求項4】
前記保護回路は、防爆機器であることを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載の保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池で駆動され、外部フィールド機器に電源を供給する機器における保護回路、例えば外部フィールド機器の短絡故障から電池及び周辺回路を保護する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線ネットワーク技術の進展に伴い、フィールド機器においても、測定データを無線通信する無線モジュールが採用されている。
【0003】
特許文献1には、フィールド機器に無線通信手段が組み込まれた無線フィールド機器が開示されている。ここで、フィールド機器とは、圧力計、差圧計、温度計、レベル計、流量計、又は各種伝送器等のプロセスに直結して測定を行うものであり、工業用発信器とも呼ばれる。
【0004】
特許文献1の無線信号変換器は、通常の配線が困難な場所に配置することを前提とし、例えばリチウム電池等の電池で動作する方式が考えられて採用されている。
【0005】
特許文献2には、ループ信号線を介して電源電圧の供給を受け、測定値等に応じた4-20Aのアナログ直流電流信号を出力する2線式伝送器に接続する無線装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、電池を電源とし、出力電流が過電流となると電源供給をOFFとし、一定時間後に電源供給をONとする過電流リセット部を有する電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5229592号
【文献】特許第6706424号
【文献】特開2016-1943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電池で駆動され、外部フィールド機器に電源を供給する機器においては、電池を保護し、電池寿命を高める必要がある。
【0009】
特許文献1では、無線フィールド機器を間欠的に動作させることにより、電池の消費電力を低減することが記載されているが、電池の保護については記載されていない。
【0010】
特許文献2では、無線装置に電池を内蔵し、フィールド機器の信号を無線通信可能としているが、電池を保護し、電池寿命を高めることについては記載されていない。
【0011】
特許文献3では、電源部の出力電流の過電流を検出して、電源供給をON/OFF制御することが記載されている。しかしながら、特許文献3では入力容量の大きな外部フィールド機器に対しては、電源印加後の突入電流が大きくなるので、すぐに電源供給がOFFされてしまうため、外部フィールド機器を起動することができない。
【0012】
また、電源部の半導体部品の短絡故障に対して電池を保護するためにヒューズが設けられることがあるが、外部フィールド機器への給電の際に意図せず溶断しやすい。電池の保護対策として一般的にフの字特性を持つ過電流抑制回路が設けられることがあるが、電流監視の際の電力損失が大きく、電池寿命が短くなるという問題がある。
【0013】
そこで、本発明はこれらの実情に鑑みてなされたものであり、電池で駆動される機器により外部フィールド機器に電源を供給する際に、電池の保護と長寿命化に加え、外部フィールド機器の起動能力を向上した保護回路を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成できる。すなわち、本発明の第1の態様の保護回路は、電池で駆動され、外部フィールド機器に電力を供給する機器の保護回路であって、電池と、前記電池の電池電圧を変圧するDC-DCコンバータからなる電源部と、前記電源部の出力電流を監視する電流監視部と、
前記電流監視部からの信号に基づき前記電源部のオンオフ状態及び出力電圧を制御する制御部と、前記電池を保護するヒューズと、を含み、前記制御部は、前記電流監視部で検出された過電流の状態に応じて、前記出力電圧を低減すると共に、前記電源部のオンオフ状態を制御し、前記制御部は、前記電流監視部で過電流が検出されると前記出力電圧を低減する出力電圧低減指令を前記電源部に出力する第1制御部と、前記出力電圧低減指令を受けて前記電源部のオンオフ時期を制御すると共に、前記外部フィールド機器の異常を判定する第2制御部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の態様の保護回路は、第1の態様の保護回路において、前記第1制御部は、前記電流監視部で過電流が検出されると第1期間後に前記出力電圧を低減する出力電圧低減指令を前記電源部に送り、前記第2制御部は、前記出力電圧低減指令を受けてから第2期間後に前記電源部をオフ状態とし、さらに第3期間後に前記電源部をオン状態とし、前記電源部のオンオフ回数に基づき前記外部フィールド機器の異常を判定することを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の態様の保護回路は、第1又は第2の態様の保護回路において、前記制御部は、前記電池電圧を監視する電池電圧監視部を備え、前記電池電圧が所定の電圧よりも低下したことを検出すると、前記電源部にオフ指令を出力することを特徴とする。
【0018】
本発明の第4の態様の保護回路は、第1~第3のいずれかの態様の保護回路において、前記保護回路は、防爆機器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様の保護回路によれば、制御部が電流監視部で検出された過電流の状態に応じて、出力電圧を低減すると共に、電源部のオンオフ状態を制御することにより、電池で駆動される機器により外部フィールド機器に電源を供給する際に、電池の保護と長寿命化に加え、外部フィールド機器の起動能力を向上することができる。
【0020】
また、第1の態様の保護回路によれば、制御部が電流監視部で検出された過電流の状態に応じて、出力電圧を低減することができるため、速やかな過電流保護が実現できる。さらに、起動時に電源部の出力電流に発生する過電流により電池の定格電流やヒューズの溶断電流を超えないようにできる。加えて、第1制御部の応答が速く、速やかに電源部を制御して外部フィールド機器に供給する電圧を低減させ、瞬間的な過電流から電池を保護することができる。さらに、第2制御部が第1制御部の信号を受けて、電源部のオンオフ状態を制御することにより、外部フィールド機器の起動能力を向上することができると共に、外部フィールド機器の異常を診断することができる。例えば、外部フィールド機器の起動に必要な一時的な過大電流の供給と、持続的に発生する短絡故障と、を分けて継続的な過電流発生から電池を保護することができる。
【0022】
本発明の第2の態様の保護回路によれば、電源部の出力電流IOの過電流を検出してから速やかに、すなわち、第1期間(例えば判定期間td)後に電源部の出力電圧VOを低電圧VOLに低下させることで電池にかかる電流負荷を下げ、保護しつつ、外部フィールド機器に低電圧VOLを印加し、外部フィールド機器の入力容量に対し一定期間にわたり電力を供給することができる。第2制御部は、電源部の出力電圧VOを低電圧VOLに低下させた後、第2期間(例えばオン期間ton)後に電源部をオフ状態にし、さらに、第3期間(例えばオフ期間toff)後に電源を再びオン状態にする(以下、「リトライ」ということがある)。
【0023】
このように、過電流検出後に、低電圧VOLによる外部フィールド機器の入力容量のチャージが行われ、第2期間後に電源部がオフ状態となり、さらに、第3期間後にはリトライが行われ、電源部から出力電圧VOが外部フィールド機器に印加される。この結果、電源部はリトライによるオンオフ動作を繰り返し、外部フィールド機器の入力容量が徐々に充電され、外部フィールド機器が立ち上げられていく。したがって、リトライ時の突入電流を抑えながら、外部機器の迅速な起動が可能となるので、外部機器の起動能力向上と電池の保護能力向上を両立することができる。
【0024】
本発明の第3の態様の保護回路によれば、電流監視部による出力電流の過電流の監視に加え、電池電圧を監視する電池電圧監視部を備え、電池電圧が所定の電圧よりも低下したことを検出すると、電源部にオフ指令を出力することにより、制御部は、電池残量減少による電池電圧低下と、電池電圧低下に伴うヒューズ電流IHの増大によるヒューズの不要な溶断を防ぐことができると共に、ヒューズ電流IHが一定以下に抑えられることで、電池の過放電を防止することができる。さらに、電池寿命の判定も可能である。
【0025】
本発明の第4の態様の保護回路によれば、保護回路を防爆機器とすることができる。従来は、4-20mAの電流信号を持つ汎用的な外部フィールド機器に対して電池から電力を供給できる防爆機器は実現されていなかった。本発明の第5の態様の保護回路によれば、最大で20mA以上の消費電流となる外部フィールド機器の駆動を、防爆機器に組み込んだ電池で駆動することが可能である。これは、本態様では、起動時に発生する過電流を低減しつつ外部フィールド機器の入力容量を徐々に充電しつつ、他方では、外部フィールド機器の短絡時に発生する短絡電流等の異常を判定することができるため、継続的に発生する電池定格に対して大きい消費電流と、短絡時に発生する短絡電流からの保護を両立することを実現した。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態1における保護回路を含むシステムのブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態2における保護回路を含むシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の保護回路の好適な一実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するために例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0028】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る保護回路について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0029】
[全体のシステムの構成]
図1は、本発明の実施形態1における保護回路20を含むシステムのブロック図である。無線信号変換器10は、保護回路20及び無線信号変換回路30を含み、特に限定されるものではないが、耐圧防爆型容器の内部に収容されていることにより、耐圧防爆構造を実現している。耐圧防爆型容器は例えば直方体形状であり、その少なくとも1面には、強化ガラスが設けられており、外部から、無線信号変換器10のインジケータ等を確認できるようになっている。
【0030】
保護回路20には、外部機器40として、例えば外部フィールド機器41、特に限定されるものではないが、例えば2線式の外部フィールド機器41が2線ケーブル42,43によって接続されている。外部フィールド機器41としては、特に限定されるものではないが、例えば、圧力計、差圧計、温度計、レベル計、流量計、又は各種伝送器等のプロセスに直結して測定を行うものが例示される。
【0031】
また、外部フィールド機器41としては、防爆構造の機器、例えば耐圧防爆型の外部フィールド機器41を想定している。このため、無線信号変換器10を防爆構造とする場合には、2線ケーブル42,43についても耐圧防爆型のケーブルとするため、例えば、耐圧防爆用電線管に収容されている。そして、耐圧防爆型容器の2線ケーブル42,43の挿入口には、防爆構造とするために、例えば耐圧パッキン金具が設けられている。
【0032】
無線信号変換器10及び外部フィールド機器41等について、耐圧防爆型であることを説明したが、防爆構造のレベルは、機器を配置するプロセスやプラント等の設置環境に応じて設定されており、本実施形態を耐圧防爆型だけに限定することを意図するものではなく、例えば、本質安全防爆構造とすることも含まれており、この場合、危険場所は0種、1種、2種、非危険場所のいずれについても適用可能である。
【0033】
ここで、本質安全防爆に関して、危険場所については次のように定義されている。
「0種危険場所」:爆発性雰囲気が連続的、もしくは長時間存在する可能性がある場所
「1種危険場所」:正常な状況下においても、爆発性のあるガスが生成される恐れのある場所
「2種危険場所」:異常な状況下においてのみ爆発性のあるガスが生成される恐れのある場所
「非危険場所」:異常事態が起こっても爆発性のガスが生成される恐れがない場所
【0034】
本質安全防爆構造とは、内部回路で発生した火花が発火原因となる装置の爆発を防止し、また、装置内の高温部分が周囲の部品に与える影響を抑制した防爆構造を意味する。本質安全防爆構造は、危険場所は0種、1種、2種及び非危険場所のいずれについても適用可能である。
【0035】
耐圧防爆構造とは、容器内部で装置に爆発性ガスによる爆発が起こった場合に、容器外部で副次的な被害がでないような防爆構造を意味する。耐圧防爆構造では、例えば1MPa程度の内部圧力に耐えられるように設計されている。また、耐圧防爆構造では、1種危険場所、2種危険場所、及び、非危険場所には適用可能であるが、0種危険場所には適用できない。なお、ここでは、防爆構造について説明したが、これは本実施形態を防爆構造に限定することを意図するものではなく、本実施形態の保護回路20は非防爆構造でもよく、また、被防爆構造の機器にも適用可能である。
【0036】
外部フィールド機器41は、特に限定されるものではないが、標準的な4-20mAのアナログ直流電流信号を出力する外部フィールド機器41を採用することができ、2線ケーブル42,43を介して保護回路20からVO(例えば14.3V)の電圧が供給されている。2線ケーブル42,43は、電源線と信号線とを兼ねており、また、外部フィールド機器41に近い位置に無線信号変換器10を設置できるため、配線距離を最小限に抑えることができる。
【0037】
外部フィールド機器41の電気的パラメータに制限されることなく、汎用的な4-20mAの電流信号を対象とした駆動電力の給電・測定を行うことができるため、外部フィールド機器41として、広く普及している汎用的な外部フィールド機器41との結合が可能であり、既存設備にて使用していた外部フィールド機器41への適用が可能となり、さらに、不要となったラインからの転用も可能となる。
【0038】
なお、2線式フィールド機器の仕様は、ナムール規格43番(NAMUR NE 43)で規定されている。外部フィールド機器41から出力されるアナログ直流電流信号の電流範囲を表1に示す。
【0039】
正常な出力信号は、4-20mAである。この正常な出力信号の境界値として、正常下限範囲(3.8-4.0mA)と正常上限範囲(20.0-20.5mA)が規定されている。また、2線式の外部フィールド機器41の故障時(送信機の故障)の場合には、正常範囲よりも低い電流(3.6-3.8mA)又は正常範囲よりも高い電流(20.5-22.0mA)が出力される。また、開放故障の可能性がある場合の出力信号は0~3.6mAとなり、短絡故障の可能性がある場合の出力信号は22.0mAよりも大きい電流値となる。
【0040】
【0041】
外部フィールド機器41に2線ケーブル42,43から供給される電圧は例えば14.3Vであり、機器信号としての電流は、通常時には4~20mAの範囲、最大で25mAのアナログ直流電流となる。外部フィールド機器41は、例えばセンサ検出値をアナログ直流電流信号として返すものであり、圧力計(圧力伝送器)の場合の一例として、0~1MPaの計測レンジの機器において、0MPaで4mA、1MPaで20mAのアナログ直流信号が出力される。このように、外部フィールド機器41としては、汎用的な4-20mAの電流信号を対象とした駆動電力の給電・測定を行うことができるため、広く普及している汎用的な外部フィールド機器41との結合が可能であり、既存設備にて使用していた外部フィールド機器41への適用が可能となり、さらに、不要となったラインからの転用も可能となる。
【0042】
無線信号変換器10は、通常の配線が困難な場所に配置することを前提にして、追加の電源等の準備を必要としない電池21で動作する方式が採用されている。このため、例えば、無線信号変換回路30を間欠動作させるようにしておけば、電池21の消費電力を低減することにより、長時間動作を実現できる。
【0043】
無線信号変換回路30は、演算部31、通信モジュール32、及び無線アンテナ33等を備えており、電池21から電力を供給されている。
【0044】
演算部31は、電流監視部23で検出された2線ケーブル42,43のアナログ直流電流(出力電流IO)の電流値から、外部フィールド機器41からの信号、例えば外部フィールド機器41がセンサの場合、そのセンサ検出値を出力電流IOから演算する。
【0045】
通信モジュール32は、演算部31で演算されたセンサ検出値を無線信号に変換し、無線アンテナ33から、上位機器(図示省略)へ送信するために、無線信号を出力する。無線アンテナ33は、耐圧防爆型容器内に設置されているが、少なくとも、強化ガラスを通して無線信号を外部に出力することが可能である。上位機器は、外部フィールド機器41が配置されているプロセスやプラント等の制御を行うと共に、無線信号変換器10の各種パラメータの設定を行うことができる。なお、無線信号変換器10の各種パラメータの設定は、無線信号変換器10に有線ないし無線により接続された入力装置、又は、無線信号変換器10に設けられたコンソールから入力するようにしてもよい。
【0046】
[保護回路の構成]
保護回路20は、電池21、ヒューズ22、電流監視部23、電源部24、遮断部25、第1制御部26、第2制御部27、及び電池電圧監視部28等を備えている。電池21のプラス出力から順に、ヒューズ22、遮断部25、電源部24、電流監視部23、保護回路20のプラス側出力端子、プラス側ケーブル42、外部フィールド機器41、マイナス側ケーブル43、保護回路20のマイナス側出力端子、及びアース端子が接続されている。
【0047】
電池21としては、一次電池が用いられる。一次電池としては、特に限定されるものではないが、寿命が長く、安定した高い出力電圧VO(約6V程度)を供給できるリチウム電池が用いられる。
【0048】
電池21の出力側にはヒューズ22が設けられている。このヒューズ22は、無線信号変換器10内の半導体の故障から電池21を保護するものである。
【0049】
電流監視部23は2線ケーブル42,43のアナログ直流電流(出力電流IO)を検出し、検出した出力電流IOの信号を第1制御部26及び演算部31に出力する。
【0050】
電源部24は、電池21を電源として、外部フィールド機器41に対して、後述の第1制御部26の制御指令P1に基づき、2線ケーブル42,43を介して設定された一定の電圧値(出力電圧VO)、例えばプラス側ケーブル42に例えば+14.3V、マイナス側ケーブル43に0V(アース電圧)の直流電圧が供給される。電源部24は、昇圧型DC-DCコンバータであり、電池21の電圧(例えば6V)を外部フィールド機器41に供給する所定の電圧、例えば設定電圧(例えば、定格電圧VOC=14.3V)まで昇圧する。昇圧型DC-DCコンバータの形式は特に限定されるものでは無いが、防爆性能の観点から絶縁型のものが好ましく、電池寿命の観点からは省電力の半導体素子、例えば、炭化ケイ素(SiC)や、窒化ガリウム(GaN)を用いたものが好ましい。
【0051】
遮断部25は、電源部24に供給される電池21の電力をオンオフするスイッチング回路であり、後述の第2制御部27の制御指令P2に基づき、電源部24への電池21の電力の供給をオンオフ制御する。
【0052】
第1制御部26は、電流監視部23で検出された電流値IOに基づき、電源部24に対して出力電圧VOの制御指令P1を出力する。電流値IOが基準電流IOS(例えば25mA)よりも大きい状態が、第1期間(判定期間td)以上続くと、第1制御部26は出力電流IOが過電流であると判断し、出力電圧VOを低電圧VOL(例えば6.0V)へ低減させる制御指令P1を電源部24に出力する。判定期間tdは、例えば1msよりも短い期間に設定されている。したがって、第1制御部26は応答が速いので、出力電流IOの過電流検出時にはすぐに電源部24の出力電圧VO、すなわち外部フィールド機器41に供給する電圧を低電圧VOLに制御することにより、電池21を瞬間的な過電流から保護することができる。
【0053】
第2制御部27は、第1制御部26からの、出力電圧VOを低電圧VOLへ低減させる制御指令P1を受けて、遮断部25による電源部24への電池電力の供給のオンオフを制御する制御指令P2を出力すると共に、外部フィールド機器41の異常、例えば短絡故障の診断を行う。
【0054】
保護回路20は間欠的にスリープ状態となるように設定しておくことができる。間欠動作の周期は保護回路20に設定しておくことができる。スリープ状態においては、保護回路20のタイマー機能以外の機能ないし電力供給は停止する待機状態として、消費電力を低減する。スリープ状態となった場合にも、保護回路20のタイマー機能が持続しているため設定された間欠動作に対応する起動時間になると、保護回路20及び無線信号変換器10はスリープ状態から動作状態へと起動し、外部フィールド機器41への電力供給を開始する。
【0055】
間欠動作の周期は、特に限定されるものでは無いが、例えば1時間に1回、機器信号、すなわち出力電流IOを検出して、出力電流IOに対応する外部フィールド機器41の測定値を無線アンテナ33から無線信号により出力するように設定することが可能である。間欠動作のスリープ状態の期間においては電力消費を大幅に低減することができるため、一次電池によって約10年間の運用が確保でき、電池寿命を延ばすことにより、通常の配線が困難な場所に配置することができ、さらに、電池寿命の改善に伴い、電池交換に係る維持費用も低減できる。間欠動作の周期は、外部フィールド機器41の電力供給の開始から機器信号が安定するまでに要する時間、すなわち、外部フィールド機器41の起動に要する時間に応じて設定される。外部フィールド機器41の起動に要する時間は、通常は2秒~5秒程度であることから、外部フィールド機器41の起動に要する時間を、2秒~60秒の間でユーザが決定できるようにしている。あるいは、この2線式の外部フィールド機器41の起動に要する時間を、第2制御部27が実際に2線式の外部フィールド機器41を起動した際のデータから取得することも可能である。
【0056】
本実施形態では、上述のとおり、起動時間を2秒から60秒の間でユーザが決定できることに対応し、特に限定されるものではないが、間欠動作の周期を1分~60分の間で設定できるようにしている。間欠動作の周期の最短時間は、起動時間の最長時間である1分(60秒)と対応している。一方、間欠動作の周期の最長時間の一例として1時間(60分)を示したが、最長時間については2線式の外部フィールド機器41の起動期間とは直接の関係はなく任意に設定できるため、間欠動作の周期の最長時間としては、例えば2時間、6時間、12時間、24時間、あるいは、2日等、適宜設定可能であり、特段の限界的な上限を定める必要はない。
【0057】
保護回路20が起動すると、第2制御部27から遮断部25へ電源部24への電力供給をオンにする制御指令P2が出力される。次に第1制御部26から出力電圧VOを低電圧VOLへ低減させる制御指令P1を受けると、第2制御部27は、第2期間(オン期間ton)後に、遮断部25へ電源部24への電力供給をオフする制御指令P2を出力する。
【0058】
第2制御部27はさらに、第3期間(オフ期間toff)後に、遮断部25へ電源部24への電力供給を再びオンにする、すなわちリトライする制御指令P2を出力する。
【0059】
外部フィールド機器41が起動するまでの時間によって、外部フィールド機器41の異常を診断することができる。本実施形態では、第2制御部27は起動するまでのリトライ回数によって、外部フィールド機器41の異常を診断することができる。例えば、リトライ回数がある所定回数、特に限定されるものではないが例えば100回よりも多い場合には、外部フィールド機器41で短絡故障が発生している可能性があることを診断することができる。一方、例えば、リトライ回数が別の所定回数よりも少ない回数、特に限定されるものではないが例えば3回で起動した場合には、外部フィールド機器41の容量素子の異常、例えば入力キャパシタンス等のアルミ電解コンデンサのドライアップの異常が生じている可能性があることを診断することができる。
【0060】
電池電圧監視部28は、電池電圧VBを検出し、第2制御部27へ電池電圧VBの検出値を出力する。第2制御部27では、電池電圧VBが基準電圧VBSよりも低下しているか否かを判定する。電池電圧VBが基準電圧VBSよりも低下している場合には、電池電圧が異常低下していると判断し、遮断部25に電源部24への電力供給をオフする制御指令P2を出力する。この電池電圧VBによる診断により、電池寿命の判定も可能であり、電池電圧VBの変化履歴より、電池残量の推定も可能である。
【0061】
電流監視部23による出力電流IOの過電流の監視に加え、電池電圧VBを監視する電池電圧監視部28を備え、電池電圧VBが終止電圧(以下「基準電圧VBS」ということがある。)よりも低下したことを検出すると、電源部24への電力供給をオフすることにより、電池残量減少による電池電圧低下と、電池電圧低下に伴うヒューズ電流IHの増大によるヒューズ22の不要な溶断を防ぐことができると共に、ヒューズ電流IHが一定以下に抑えられることで、電池21の過放電を防止することができる。さらに、電池寿命の判定も可能である。特に限定されるものではないが、基準電圧VBSは例えば4.0Vとすることができる。電池電圧監視部28により電池電圧VBを監視することにより、電池の寿命を判定することができ。また、電池電圧VBの波形の履歴から、電池電圧VBの低下の度合いを分析することにより、電池21の残量を予測することができる。
【0062】
[保護回路の動作]
図2は、
図1の保護回路20の各部の波形図である。
図2の波形図である、電池電圧V
B、ヒューズ電流I
H、出力電圧V
O、出力電流I
O、制御指令P
1、及び制御指令P
2は、
図1における各部の電圧、電流、信号に付した符号と対応している。以下、
図2を参照して、時刻t1からt19までの時間の経過における保護回路20の動作を説明する。なお、
図2の波形図は説明用の図面であり、実際の電流又は電圧波形を模式化して示しており、説明を分かりやすくするための例示である。
図2では、リトライ回数が6回で出力電流I
Oが4-20mAで安定し、外部フィールド機器41が起動した例を示しているが、実際のリトライ回数は入力容量、例えば入力キャパシタンスやフィルタコンデンサ等の容量素子が比較的小さい外部フィールド機器41では、リトライ回数10回程度で起動されることがあるし、容量素子が大きい場合にはリトライ回数が多くなり、リトライ回数100回以上の場合、外部フィールド機器41で短絡故障が発生している可能性があると診断される。また、例えばリトライ回数3回で起動した場合には、外部フィールド機器41の容量素子の異常、例えばアルミ電解コンデンサのドライアップの異常が生じている可能性があると診断される。
【0063】
(1)時刻t1
時刻t1において、保護回路20が起動し、第2制御部27から、遮断部25をオンする制御指令P2ONを出力する。これにより、電源部24に電池21の電力が供給される。電源部24は第1制御部26からの制御指令P1により、出力電圧VOが設定電圧VOC(例えば14.3V)になるように制御される。出力電圧VOは2線ケーブル42,43を介して外部フィールド機器41に供給される。外部フィールド機器41への通電直後は、外部フィールド機器41の容量素子が未充電の状態にあり、入力抵抗が小さいため、出力電流IOが大きな値となる。このため、基準電流IOS(例えば25mA)を越える出力電流IO1が流れる。大きな出力電流IO1が流れるため、ヒューズ電流IHも大きいIH1となり、電池電圧VBは内部抵抗に対してヒューズ電流IH1の分だけ電圧降下した電圧VB2となる。電池電圧VBが基準電圧VBS以下となると、第2制御部27は、遮断部25をオフする制御指令P2を出力する。
【0064】
(2)時刻t2
時刻t2において、判定期間tdの間、出力電流IOが基準電流IOSを越えると、第1制御部26は出力電流IOに過電流が発生したと判断して、電源部24に対して出力電圧VOを低減する出力電圧低減指令P1Lを出力する。電源部24は出力電圧低減指令P1Lを受けると、出力電圧VOを低電圧VOLに低減する。出力電圧VOが低電圧VOL(例えば6.0V)に低減されると、出力電流IOはIO2まで低減するが、依然として、基準電流IOSよりも大きい。出力電圧VOが低電圧VOLに低減されると、ヒューズ電流IHは基準電流IHSよりも少しだけ大きい電流IH2まで低減される。これに応じて、電池電圧VBは正常動作時の電圧レベルである電圧VB1まで回復する。基準電流IHSは、ヒューズ電流IHの制限値、すなわち、電池電流の制限値であり、電池21及びヒューズ22等の回路の状況に応じて決定される制限値である。ただし、ヒューズ電流IHが、瞬間的に基準電流IHSを超過したとしてもヒューズ22がただちに溶断するものではなく、基準電流IHSは、ヒューズ電流IHが定常的な状態時の制限値であり、通常動作にヒューズ22がヒューズ電流IHによって溶断されることがないように設定されている。
【0065】
図2では、時刻t2は時刻t1から判定期間t
d後としている。実際には電流監視部23における電流検出時間、及び第1制御部26等における演算時間等の遅れ時間があるため、時刻t2は、時刻t1から判定期間t
dに演算遅れ時間を加えた時間後となる。ただし、演算速度、検出速度等が十分に早い場合には、演算遅れ時間は無視できるほど小さくなるため、本実施形態において
図2では、演算遅れ時間は無視している。
【0066】
(3)時刻t3~時刻t4
時刻t3において、時刻t2から第2期間(遮断待機時間、以下「オン期間ton」ということがある。)後に、第1制御部26は、制御指令P1をP1Lから0レベルへ変更し、出力電圧低減指令P1Lを解除すると同時に、第2制御部27にオン期間tonが経過したことを通知すると、第2制御部27は、遮断部25をオフする制御指令P2を出力する。遮断部25をオフすると、出力電流IOは時刻t3において、零になる。オン期間tonは、例えば1msとすることができる。出力電流IOが零になると、ヒューズ電流IHも時刻t3に零になる。一方、出力電圧VOは、外部フィールド機器41の容量素子に少し充電されているため、時刻t3から時刻t4にかけて緩やかに、VOLから零となる。
【0067】
(4)時刻t5~時刻t8
時刻t5において、時刻t3から第3期間(リトライ待機時間(以下「オフ期間toff」ということがある。)後には、リトライにより、再び第2制御部27は遮断部25をオンにする制御信号P2onを出力する。オフ期間toffは、例えば30msに設定することができる。
【0068】
遮断部25がオンされると、外部フィールド機器41の容量素子がまだ十分な電圧まで充電されていないため、上記(1)と同様に、出力電流IOは基準電流IOSを越え、第1期間(判定期間td)過電流が継続しているので、第1制御部26は、電源部24に出力電圧低減指令P1Lを出力する(時刻t6)。さらに、第2期間(オン期間ton)が経過すると、時刻t7において第1制御部26は、制御指令P1をP1Lから0レベルへ変更し、出力電圧低減指令P1Lを解除すると同時に、第2制御部27にオン期間tonが経過したことを通知し、第2制御部27は、遮断部25をオフする制御指令P2を出力する。遮断部25をオフすると、出力電流IOは時刻t7において、零になる。出力電流IOが零になると、ヒューズ電流IHも時刻t7に零になる。一方、出力電圧VOは、外部フィールド機器41の容量素子が少しずつ充電されていたため、時刻t7から時刻t8にかけて緩やかに、VOLから零となる。外部フィールド機器41の容量素子に充電された電圧が高まった分だけ、時刻t7で遮断部25をオフされてから、t8で出力電圧VOが零になるまでの時間は、前回のリトライ時の時刻t3で遮断部25がオフされてから、t4で出力電圧VOが零になるまでの時間よりも長くなっている。
【0069】
(5)時刻t9~時刻t12
時刻t9において、時刻t7から第3期間(オフ期間toff)後には、リトライにより、再び第2制御部27は遮断部25をオンにする制御信号P2onを出力する。ところが、外部フィールド機器41の容量素子は、依然として十分な電圧まで充電されていないため、上記(1)及び(4)と同様に、出力電流IOは基準電流IOSを越え、第1期間(判定期間td)過電流が継続しているので、第1制御部26は、電源部24に出力電圧低減指令P1Lを出力する(時刻t10)。さらに、第2期間(オン期間ton)が経過すると、時刻t11において第1制御部26は、制御指令P1をP1Lから0レベルへ変更し、出力電圧低減指令P1Lを解除すると同時に、第2制御部27にオン期間tonが経過したことを通知し、第2制御部27は、遮断部25をオフする制御指令P2を出力する。遮断部25をオフすると、出力電流IOは時刻t11において、零になる。出力電流IOが零になると、ヒューズ電流IHも時刻t11に零になる。
【0070】
一方、出力電圧VOは、外部フィールド機器41の容量素子が少しずつ充電されていたため、時刻t10において出力電圧低減指令P1Lが出力された後にただちに低電圧VOLまで低下するのではなく、時刻t10において設定電圧VOCから出力電圧VOが低下した後、時刻t10~時刻t11にわたって緩やかに出力電圧VOが低下する。さらに、時刻t11において、遮断部25がオフされても、外部フィールド機器41の容量素子の充電が進んでいるので、出力電圧VOが急激に減少することはなく、時刻t11~時刻t12にわたって緩やかに出力電圧VOが低下する。外部フィールド機器41の容量素子が少し充電されたことにより、時刻t12において出力電圧VOは零になるのではなく、低電圧VOLに近いレベルとなる。
【0071】
外部フィールド機器41に対してはリトライの度に出力電圧VO、出力電流IOが印加されるため、外部フィールド機器41の容量素子が徐々に充電されていき、残留エネルギーが増加する。これにより、リトライを繰り返すごとに、外部フィールド機器41を起動するために必要となる容量素子を充電するための所要エネルギーは低下していく。このため、リトライごとに出力電圧VOが大きくなっていき、起動し易い状態に近づく。したがって、外部フィールド機器41が起動するまでのリトライ回数によって、外部フィールド機器41の容量素子の状態を推定することができる。例えば前述のように、第2制御部27は起動するまでのリトライ回数によって、外部フィールド機器41の異常を診断することができる。
【0072】
(6)時刻t12~時刻t15
時刻t12において、時刻t11から第3期間(オフ期間toff)後には、リトライにより、再び第2制御部27は遮断部25をオンにする制御信号P2onを出力する。ところが、外部フィールド機器41の容量素子は、依然として十分な電圧まで充電されていないため、上記(1)、(4)、(5)と同様に、出力電流IOは基準電流IOSを越え、第1期間(判定期間td)過電流が継続しているので、第1制御部26は、電源部24に出力電圧低減指令P1Lを出力する(時刻t13)。さらに、第2期間(オン期間ton)が経過すると、時刻t14において第1制御部26は、制御指令P1をP1Lから0レベルへ変更し、出力電圧低減指令P1Lを解除すると同時に、第2制御部27にオン期間tonが経過したことを通知し、第2制御部27は、遮断部25をオフする制御指令P2を出力する。遮断部25をオフすると、出力電流IOは時刻t14において、零になる。出力電流IOが零になると、ヒューズ電流IHも時刻t14に零になる。
【0073】
一方、出力電圧VOは、外部フィールド機器41の容量素子の充電が進んできているため、時刻t13において出力電圧低減指令P1Lが出力されても低電圧VOLまで低下するのではなく、時刻t13において設定電圧VOCから出力電圧VOが少し低下した後、時刻t13~時刻t14にわたって緩やかに出力電圧VOが低下する。さらに、時刻t14において、遮断部25がオフされても、外部フィールド機器41の容量素子の充電が進んでいるので、出力電圧VOが急激に減少することはなく、時刻t14~時刻t15にわたって緩やかに出力電圧VOが低下する。外部フィールド機器41の容量素子の充電が進んできたことに伴い、時刻t15において出力電圧VOは零になるのではなく、設定電圧VOCよりも低い所定レベルとなる。
【0074】
(7)時刻t15~時刻t18
時刻t15において、時刻t14から第3期間(オフ期間toff)後には、リトライにより、再び第2制御部27は遮断部25をオンにする制御信号P2onを出力する。ところが、外部フィールド機器41の容量素子の充電は進んでいるが、依然として完全に立ち上がるのに十分な電圧までは充電されていないため、上記(1)、(4)、(5)、(6)と同様に、出力電流IOは基準電流IOSを越え、第1期間(判定期間td)過電流が継続しているので、第1制御部26は、電源部24に出力電圧低減指令P1Lを出力する(時刻t16)。さらに、第2期間(オン期間ton)が経過すると、時刻t17において第1制御部26は、制御指令P1をP1Lから0レベルへ変更し、出力電圧低減指令P1Lを解除すると同時に、第2制御部27にオン期間tonが経過したことを通知し、第2制御部27は、遮断部25をオフする制御指令P2を出力する。遮断部25をオフすると、出力電流IOは時刻t17において、零になる。出力電流IOが零になると、ヒューズ電流IHも時刻t17に零になる。
【0075】
一方、出力電圧VOは、外部フィールド機器41の容量素子の充電がかなり進んできているため、時刻t16において出力電圧低減指令P1Lが出力されてもVOLまで低下するのではなく、時刻t16において設定電圧VOCから出力電圧VOが少し低下した後、時刻t16~時刻t17にわたって緩やかに出力電圧VOが低下する。さらに、時刻t17において、遮断部25がオフされても、外部フィールド機器41の容量素子の充電が進んでいるので、出力電圧VOが急激に減少することはなく、時刻t17~時刻t18にわたって緩やかに出力電圧VOが低下する。リトライを繰り返し、出力電圧VOは時刻t18においても、設定電圧VOCから大きく低下することが無いレベルまで、外部フィールド機器41の容量素子の充電が進んでいる。
【0076】
(8)時刻t18~時刻t19
時刻t18において、時刻t17から第3期間(オフ期間toff)後には、リトライにより、再び第2制御部27は遮断部25をオンにする制御信号P2onを出力する。外部フィールド機器41の容量素子の充電が起動可能なまでに十分に進んでいるため、出力電流IOは時刻t18~t19の間で瞬間的に突入電流により、基準電流IOSを越えるものの、判定期間tdよりも短い、瞬間的なパルス状電流であり、出力電流IOはすぐに基準電流IOSよりも低い値となり、時刻t19以降では、出力電流IOは基準電流IOSよりも小さい値、具体例としては、4-20mAで安定している。このため、時刻t18以降では、第1制御部26が出力電流IOの過電流と判定することはないので、電源部24の出力電圧VOを低減する指令である出力電圧低減指令P1Lを出力することはない。
【0077】
第1制御部26が電源部24に出力電圧VOを低減する指令である出力電圧低減指令P1Lを出力しなければ、第2期間(オン期間ton)の計時が行われることはなく、さらに、第2制御部27にて第3期間(オフ期間toff)の計時が行われることはない。したがって、時刻t18以降では、外部フィールド機器41の容量素子が十分に充電され、出力電流IOが基準電流IOSよりも小さい値で安定し、外部フィールド機器41の起動が完了する。
【0078】
時刻t18以降は、出力電圧VOは、設定電圧VOC(例えば14.3V)で安定する。第2制御部27の制御指令P2は、P2onのままとなるので、他に過電流等が検出されない限りは、遮断部25はオン状態のままとなり、電源部24には電池21の電力が供給され続ける。
【0079】
時刻t18~t19の間では、出力電流IOに瞬間的な突入電流が含まれるため、ヒューズ電流IHも瞬間的に基準電流IHSを越えるが、時刻t19以降は、基準電流IHSよりも小さい値で安定する。また、時刻t18~t19の間では、瞬間的にヒューズ電流IHも瞬間的に基準電流IHSを越えるので、電池電圧VBは電池の内部抵抗による電圧降下により、VB2まで瞬間的に低下するが、時刻t19以降は、VB1で安定する。
【0080】
外部フィールド機器41が起動された後は、通常であれば、電流監視部23で検出された出力電流IOが4-20mAのセンサの検出値に応じた値で安定している。そして、出力電流IOが基準電流IOSを越えた場合には、第1制御部26は、過電流異常が発生したと判断し、電源部24の出力電圧VOを低電圧VOLに低減し、さらに、第2制御部27はオン期間ton後に遮断部25をオフにする制御指令P2を出力し、外部フィールド機器41への電力供給をオフにする。そして、所定回数のリトライによっても、出力電流IOの過電流が継続する場合には、第2制御部27は外部フィールド機器41に短絡異常が発生したものと判断し、遮断部25をオフする制御指令P2を出力すると共に、通信モジュール32からの無線信号により、上位機器に出力電流IOに異常が発生したことを報知する。
【0081】
本発明の第1の態様の保護回路20によれば、第1制御部26が電流監視部23で検出された過電流の状態に応じて、出力電圧VOを低減すると共に、電源部24のオンオフ状態を制御することにより、電池21で駆動される機器により外部フィールド機器41に電源を供給する際に、電池21の保護と長寿命化に加え、外部フィールド機器41の起動能力を向上することができる。
【0082】
本実施形態の保護回路20によれば、第1制御部26が電流監視部23で検出された過電流の状態に応じて、出力電圧VOを低減することができるため、速やかな過電流保護が実現できる。さらに、起動時に電源部24の出力電流IOに発生する過電流により、電池21の定格電流やヒューズ22の溶断電流を超えないようにできる。
【0083】
また、本実施形態の保護回路20によれば、第1制御部26の応答が速く、速やかに電源部24を制御して外部フィールド機器41に供給する出力電圧VOを低減させ、瞬間的な過電流から電池21を保護することができる。さらに、第2制御部27が第1制御部26の信号を受けて、電源部24のオンオフ状態を制御することにより、具体的には、遮断部25をオンオフ制御することにより、外部フィールド機器41の起動能力を向上することができると共に、外部フィールド機器41の異常を診断することができる。例えば、外部フィールド機器41の起動に必要な一時的な過大電流の供給と、持続的に発生する短絡故障と、を分けて継続的な過電流発生から電池21を保護することができる。
【0084】
また、本実施形態の保護回路20によれば、電源部24の出力電流IOの過電流を検出してから速やかに、すなわち、第1期間(例えば判定期間td)後に電源部24の出力電圧VOを低電圧VOLに低下させることで電池21にかかる電流負荷を下げ保護しつつ、外部フィールド機器41に低電圧VOLを印加し、外部フィールド機器41の容量素子、例えば入力キャパシタンスに対し一定期間にわたり電力を供給することができる。第2制御部27は、電源部24の出力電圧VOを低電圧VOLに低下させた後、第2期間(例えばオン期間ton)後に電源部24をオフ状態にし、具体的には、遮断部25をオフとし、さらに、第3期間(例えばオフ期間toff)後に遮断部25を再びオン状態とし、リトライする。
【0085】
このように、過電流検出後に、低電圧VOLによる外部フィールド機器41の容量素子のチャージが行われ、第2期間後に電源部24がオフ状態となり、さらに、第3期間後にはリトライが行われ、電源部24から出力電圧VOが外部フィールド機器41に印加される。この結果、電源部24はリトライによるオンオフ動作を繰り返し、外部フィールド機器41の容量素子が徐々に充電され、外部フィールド機器41が起動されていく。したがって、リトライ時の突入電流を抑えながら、外部フィールド機器41の迅速な起動が可能となるので、外部フィールド機器41の起動能力向上と電池21の保護能力向上を両立することができる。また、電池21から過剰な電流が出力されることを防止することにより、一層の電池寿命の向上を図ると共に、外部フィールド機器41の保護も行うことができる。
【0086】
さらに、実施形態の保護回路20によれば、電流監視部23による出力電流IOの過電流の監視に加え、電池電圧VBを監視する電池電圧監視部28を備え、電池電圧VBが所定の電圧(基準電圧VBS)よりも低下したことを検出すると、電源部24にオフ指令を出力すること、具体的には遮断部25をオフすることにより、第1制御部26及び第2制御部27は、電池残量減少による電池電圧低下と、電池電圧低下に伴うヒューズ電流IHの増大によるヒューズ22の不要な溶断を防ぐことができると共に、ヒューズ電流IHが一定以下に抑えられることで、電池21の過放電を防止することができる。さらに、電池寿命の判定も可能である。
【0087】
また本実施形態の保護回路20によれば、保護回路20を防爆機器とすることができる。従来は、4-20mAの電流信号を持つ汎用的な外部フィールド機器41に対して電池21から電力を供給できる防爆機器は実現できていなかった。本実施形態の保護回路20によれば、最大で20mA以上の消費電流となる外部フィールド機器41の駆動を、防爆機器に組み込んだ電池21で駆動することが可能である。これは、本実施形態では、起動時に発生する過電流を低減しつつ外部フィールド機器41の容量素子を徐々に充電しつつ、他方では、外部フィールド機器41の短絡時に発生する短絡電流等の異常を判定することができるため、継続的に発生する電池定格に対して大きい消費電流と、短絡時に発生する短絡電流からの保護を両立することを実現した。
【0088】
[実施形態2]
本発明の実施形態2に係る保護回路20について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図3において実施形態1と同様の構成については同一の符号を用い、その説明は省略する。実施形態1では、保護回路20と共に無線信号変換回路30を備えた無線信号変換器10を例示して説明したが、実施形態2では、保護回路20と外部機器40のみで成り立つ例を説明する。
図2の保護回路20の各部の波形図は、実施形態1と共通である。
【0089】
図3は、本発明の実施形態2における保護回路20を含むシステムのブロック図である。保護回路20の構造は、実施形態1と共通しているので、詳細な説明は省略する。電源部24からは出力電圧V
Oとして外部フィールド機器41の設定電圧V
OC(例えば14.3V)が出力され、外部フィールド機器41に2線ケーブル42,43を介して供給される。
【0090】
外部フィールド機器41は、実施形態1と同様に例えば2線式の外部フィールド機器41とすることができる。外部フィールド機器41に2線ケーブル42,43から供給される電圧は例えば14.3Vであり、機器信号としての出力電流IOは、通常時には4~20mAの範囲、基準電流IOS(過電流検出の基準電流IOS=25mA)のアナログ直流電流となる。外部フィールド機器41としては、例えばセンサ検出値をアナログ直流電流信号として、4-20mAの範囲で返すものであり、広く普及している汎用的な外部フィールド機器41が利用可能である。
【0091】
本実施形態においても、実施形態1と同様に、電流監視部23による過電流の検出に基づき、第1制御部26及び第2制御部27による制御を行うことにより、電源部24の出力電流IOの過電流を検出してから速やかに、すなわち、第1期間(例えば判定期間td)後に電源部24の出力電圧VOを低電圧VOLに低下させることで電池21にかかる電流負荷を下げ保護しつつ、外部フィールド機器41に低電圧VOLを印加し、外部フィールド機器41の入力容量に対し一定期間にわたり電力を供給することができる。第2制御部27は、電源部24の出力電圧VOを低電圧VOLに低下させた後、第2期間(例えばオン期間ton)後に電源部24をオフ状態にし、すなわち、遮断部25をオフにし、さらに、第3期間(例えばオフ期間toff)後にリトライを行う。
【0092】
このように、過電流検出後に、低電圧VOLによる外部フィールド機器41の入力容量のチャージが行われ、第2期間(オン期間ton)後に電源部24がオフ状態となり、さらに、第3期間(オフ期間toff)後にはリトライが行われ、電源部24から出力電圧VOが外部フィールド機器41に印加される。この結果、電源部24はリトライによるオンオフ動作を繰り返し、外部フィールド機器41の入力容量が徐々に充電され、外部フィールド機器41が起動されていく。したがって、リトライ時の突入電流を抑えながら、外部フィールド機器41の迅速な起動が可能となるので、外部フィールド機器41の起動能力向上と電池21の保護能力向上を両立することができる。
【0093】
保護回路20により電池21を保護しながら、外部フィールド機器41に電力を供給する構造において、外部フィールド機器41からの機器電流である出力電流IOの検出値を、保護回路20側でどのように使用するのか、どのような付加回路を設けるのかについては、様々な応用が可能である。例えば、外部フィールド機器41が設置されるプロセス又はプラント等における制御装置を構成するための制御部又は検出部を本実施形態の保護回路20を採用して実施することができる。
【0094】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は本発明の技術思想を具体化するための保護回路20を例示するものであって、本発明をこれらに限定するものではなく、その他の実施形態のものにも等しく適用し得るものであり、また、これらの実施形態の一部を省略、追加、変更することや、各実施形態の態様を組み合わせることが可能である。
【0095】
例えば、実施形態1における防爆構造の説明は、本発明を防爆構造のものだけに限定することを意図するものではなく、本発明は防爆構造を有しない機器にも等しく適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
10・・・無線信号変換器
20・・・保護回路
21・・・電池
22・・・ヒューズ
23・・・電流監視部
24・・・電源部
25・・・遮断部
26・・・第1制御部
27・・・第2制御部
28・・・電池電圧監視部
30・・・無線信号変換回路
31・・・演算部
32・・・通信モジュール
33・・・無線アンテナ
40・・・外部機器
41・・・外部フィールド機器
42,43・・・2線ケーブル
【要約】
【課題】電池で駆動される機器により外部フィールド機器に電源を供給する際に、電池の保護と長寿命化に加え、外部フィールド機器の起動能力を向上した保護回路を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態の保護回路は、電池で駆動され、外部フィールド機器に電力を供給する機器の保護回路であって、電池と、前記電池の電池電圧を変圧するDC-DCコンバータからなる電源部と、前記電源部の出力電流を監視する電流監視部と、前記電流監視部からの信号に基づき前記電源部のオンオフ状態及び出力電圧を制御する制御部と、前記電池を保護するヒューズと、を含み、前記制御部は、前記電流監視部で検出された過電流の状態に応じて、前記出力電圧を低減すると共に、前記電源部のオンオフ状態を制御することを特徴とする。
【選択図】
図3