(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】高Q-LTCC誘電体組成物及び装置
(51)【国際特許分類】
C04B 35/16 20060101AFI20221013BHJP
H01B 3/12 20060101ALI20221013BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20221013BHJP
H01G 4/10 20060101ALI20221013BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
C04B35/16
H01B3/12 322
H01B3/12 333
H01B3/12 336
H01B3/12 325
H01G4/12 900
H01G4/10
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
(21)【出願番号】P 2021500533
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 US2019040231
(87)【国際公開番号】W WO2020014035
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-08
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503468695
【氏名又は名称】フエロ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】マーリー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】サイムズ,ウォルター,ジェイ.,ジュニア.
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-063857(JP,A)
【文献】特開2008-230948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0110246(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0240471(US,A1)
【文献】特開2004-115295(JP,A)
【文献】特開2005-272199(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102531558(CN,A)
【文献】特開2009-132579(JP,A)
【文献】特開平11-209174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
H01B 3/12
H01G 4/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a
)80~99wt%の
ホストI:
ホストIは:
i)10~30wt%ZnO
、
ii)65~90wt%SiO
2、及び
i
ii)0.1~5wt%MnOを含み
;
加えて
、
(b)0~5wt%CaCO
3、
(
c)0
.1~8wt%H
3BO
3、
(
d)0
.1~5wt%Li
2CO
3、
(
e)0.1~5wt%CuO
、並びに
(
f)0~5wt%CaF
2
、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【請求項2】
(a)80~99wt%のホストII:
ホストIIは:
i)10~30wt%MgO、及び
ii)70~90wt%SiO
2
を含み;
加えて、
(b)0.1~5wt%CaCO
3
、
(c)0.1~8wt%H
3
BO
3
、
(d)0.1~5wt%Li
2
CO
3
、並びに
(e)0.1~5wt%CuO、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【請求項3】
(a)80~99wt%のホストIII:
ホストIIIは:
i)50~85wt%ZnO、
ii)0~20wt%のMgO、及び
iii)15~40wt%SiO
2
を含み;
加えて、
(b)0.1~5wt%SiO
2
、
(c)0.1~5wt%CaCO
3
、
(d)0.1~8wt%H
3
BO
3
、
(e)0.1~5wt%Li
2
CO
3
、
(f)0.1~5wt%CuO、並びに
(g)0.1~5wt%CaF
2
、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【請求項4】
(a)80~99wt%のホストIII:
ホストIIIは:
i)50~85wt%ZnO、及び
ii)15~40wt%SiO
2
を含み;
加えて、
(b)0.1~5wt%CuO、
(c)0.1~5wt%LiF、並びに
(d)0.1~12wt%のホウ酸亜鉛、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【請求項5】
(a)80~99wt%のホストIV:
ホストIVは:
i)45~70wt%MgO、
ii)0~25wt%ZnO、及び
iii)30~55wt%SiO
2
を含み;
加えて、
(b)0~5wt%CaCO
3
、
(c)0.1~8wt%H
3
BO
3
、
(d)0~5wt%Li
2
CO
3
、
(e)0.1~5wt%CuO、
(f)0~5wt%LiF、並びに
(g)0~12wt%のホウ酸亜鉛、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【請求項6】
(a)80~99wt%の、ホストIII及びホストIV:
1.ホストIIIは:
i)50~85wt%ZnO、及び
ii)15~40wt%SiO
2
を含み;並びに
2.ホストIVは:
i)45~70wt%MgO、及び
ii)30~55wt%SiO
2
を含み;
加えて、
(b)0~5wt%SiO
2
、
(c)0~5wt%CaCO
3
、
(d)0~8wt%H
3
BO
3
、
(e)0~5wt%Li
2
CO
3
、
(f)0.1~5wt%CuO、
(g)0~5wt%LiF、
(h)0~5wt%CaF
2
、並びに
(i)0~12wt%のホウ酸亜鉛、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【請求項7】
(a
)20~50wt%の
ホストIV:
ホストIVは:
i)45~70wt%MgO、
及び
ii
)30~55wt%SiO
2
を含み;
加えて
(b)45~70wt%SiO
2、
(c)0.1~5wt%CaCO
3、
(d)0.1~8wt%H
3BO
3、
(e)0.1~5wt%Li
2CO
3、
並びに
(f)0.1~5wt%CuO
、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【請求項8】
(a
)40~60wt%の
ホストIII:
ホストIIIは:
i)50~85wt%ZnO、
及び
ii
)15~40wt%SiO
2
を含み
;
加えて
(b)30~50wt%CaTiO
3、
(c
)0.1~5wt%CaCO
3、
(
d)0.1~8wt%H
3BO
3、
並びに
(
e)0.1~5wt%Li
2CO
3
、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【請求項9】
前記誘電体材料が粉末形態である、請求項1~
8のいずれかに記載の誘電体材料。
【請求項10】
(a)0
.1~40wt%ZnO、
(b
)0~5wt%MnO、
(
c)55~90wt%SiO
2、
(
d)0~5wt%CaO
、
(e)0.1~5wt%B
2O
3、
(
f)0.1~5wt%Li
2O、
(
g)0.1~5wt%CuO、
及び
(
h)0~5wt%CaF
2
、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項11】
(a)0.1~30wt%MgO、
(b)55~90wt%SiO
2
、
(c)0.1~5wt%CaO、
(d)0.1~5wt%B
2
O
3
、
(e)0.1~5wt%Li
2
O、及び
(f)0.1~5wt%CuO、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項12】
(a)30~50wt%ZnO
、
(b)5~25wt%SiO
2、
(
c)8~28wt%CaO、
(
d)15~35wt%TiO
2、
(
e)0.1~5wt%B
2O
3、
及び
(
f)0.1~5wt%Li
2O
、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項13】
(a)45~80wt%ZnO、
(b
)15~40wt%SiO
2、
(
c)0~5wt%CaO
、
(d)0.1~8wt%B
2O
3、
(
e)0~5wt%Li
2O、
(
f)0.1~5wt%CuO、
(
g)0~5wt%CaF
2、
(
h)0~5wt%LiF、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項14】
(a)45~80wt%ZnO、
(b)0.1~20wt%MgO、
(c)15~40wt%SiO
2
、
(d)0.1~5wt%CaO、
(e)0.1~8wt%B
2
O
3
、
(f)0.1~5wt%Li
2
O、
(g)0.1~5wt%CuO、
(h)0~5wt%CaF
2
、
(i)0~5wt%LiF、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【請求項15】
焼成後に前記材料又は組成物が、1GHzよりも高い周波数で測定したとき、少なくとも5000のQf値を示す、請求項1~
9のいずれかに記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料、又は請求項
10~
14のいずれかに記載の誘電体組成物。
【請求項16】
焼成後に前記材料又は組成物が3~50の誘電率Kを示す、請求項1~
9のいずれかに記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料、又は請求項
10~
14のいずれかに記載の誘電体組成物。
【請求項17】
(a)60~90wt%のAg+Pd+Pt+Au、
(b)遷移金属のケイ化物、炭化物、窒化物、及びホウ化物からなる群から選択される1~10wt%の添加剤、
(c)0.5~10wt%の少なくとも1つのガラスフリット、並びに
(d)10~40wt%の有機部、
を含む導電性ペーストと共に、請求項1~
9のいずれかに記載の鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料又は請求項
10~
14のいずれかに記載の誘電体組成物を焼成前に含む、電気又は電子部品。
【請求項18】
前記電気又は電子部品が、高Q共振器、電磁干渉フィルタ、バンドパスフィルタ、ワイヤレスパッケージングシステム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
17に記載の電気又は電子部品。
【請求項19】
(a1)請求項1~
9のいずれかに記載の誘電体材料もしくは請求項
10~
14のいずれかに記載の誘電体組成物を基体に適用する工程;又は
(a2)請求項1~
9のいずれかに記載の誘電体材料もしくは請求項
10~
14のいずれかに記載の誘電体組成物を含むテープを基体に適用する工程;又は
(a3)請求項1~
9のいずれかに記載の誘電体材料もしくは請求項
10~
14のいずれかに記載の誘電体組成物の複数の粒子を成形して、モノリシック複合基体を形成する工程;及び
(b)前記誘電体材料を焼結するのに十分な温度で前記基体を焼成する工程、
を含む、電子部品を形成する方法。
【請求項20】
焼成
が800℃
~900℃の温度で行われる、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
7未満の誘電率を有する、請求項1~
9のいずれかに記載の誘電体材料又は請求項
10~
14のいずれかに記載の誘電体組成物の少なくとも1つの層を、7よりも高い誘電率を有するテープ又はペーストの少なくとも1つの互い違いとなる別個の層と組み合わせて同時焼成し、多層基体を形成する方法であり、
互い違いの層が異なる誘電率を有する方法。
【請求項22】
焼成
が800℃
~900℃の温度で行われる、請求項
21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物(dielectric composition)に関し、より具体的には、GHz高周波数で非常に高いQ値(Q factor)を有すると共に、貴金属の金属化を伴う低温同時焼成セラミック(LTCC;low temperature co-fired ceramic)用途において使用可能な、誘電率(dielectric constant)K=4~12又は代替的に約50以下を示す亜鉛-マグネシウム-マンガン-ケイ素酸化物系の誘電体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスアプリケーション用のLTCCシステムにおいて使用される最先端の材料は、誘電率K=4~8であると共に、1MHzの測定周波数で約500~1,000のQ値を有する誘電体を使用する。これは一般に、セラミックの低温緻密化(875℃以下)を可能にする高濃度のBaO-CaO-B2O3低軟化温度ガラスと混合されたセラミック粉末を使用することによって達成される。このような大量のガラスは、前記セラミックのQ値を低下させるという望ましくない効果を及ぼし得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、誘電体組成物に関し、より具体的には、GHz高周波数で非常に高いQ値を有すると共に、貴金属の金属化を伴う低温同時焼成セラミック(LTCC)用途において使用可能な、誘電率K=4~12又は代替的に50以下、例えば約4~約50、を示す亜鉛-マグネシウム-マンガン-ケイ酸塩系誘電体組成物に関する。Q値=1/Df、ここでDfは誘電正接(dielectric loss tangent)である。Qf値は、通常GHz範囲の周波数における、誘電体の質を表すために使用されるパラメータである。Qfは、Qf=Q×fとして表すことができ、ここでは、測定周波数f(GHz)にその周波数でのQ値を乗じる。高周波数アプリケーション向けに、10GHzを超える周波数で500よりも高い非常に高いQ値を有する誘電体材料の需要が高まっている。
【0004】
概して、本発明のセラミック材料は、適量のZnO、MgO、MnO、及びSiO2を混合し、これらの材料を水性媒体中で約0.2~5.0ミクロン(micron)の粒径D50まで一緒に粉砕する(milling)ことによって作製されるホストを含む。このスラリーを乾燥し、約900~1250℃で約1~5時間焼成して、ZnO、MgO、MnO、及びSiO2を含むホスト材料(host material)を形成する。次に、得られたホスト材料を機械的に微粉化し(pulverized)、融剤(fluxing agent)と混合し、再度水性媒体中で約0.5~1.0μmの粒径D50まで粉砕する。粉砕したセラミック粉末を乾燥、微粉化し、細かく分割した粉末を生成する。得られた粉末を円筒形のペレットにプレスし、約775~約925℃、好ましくは約800~約900℃、より好ましくは約800~約880℃、より好ましくは約825~約880℃、あるいは約845~約885℃、さらにより好ましくは約860~約880℃又は870℃~880℃の温度で焼成することができる。最も好ましい単一の値は850℃又は880℃である。焼成が行われる時間は、約1~約200分、好ましくは約5~約100分、より好ましくは約10~約50分、さらにより好ましくは約20~約40分、最も好ましくは約30分間である。
【0005】
本発明の実施形態は、鉛フリー(lead-free)かつカドミウムフリー(cadmium-free)であり、それ単体で、又は他の酸化物と組み合わせて、誘電体材料を形成することができる亜鉛-マグネシウム-マンガン-ケイ素酸化物ホスト材料を焼成時に(焼成により)形成する前駆体材料(precursor material)の混合物を含む組成物である。
【0006】
好ましい実施形態において、ホスト材料は鉛を含まない。代替的な好ましい実施形態において、ホスト材料はカドミウムを含まない。より好ましい実施形態において、ホスト材料は鉛を含まず、かつカドミウムを含まない。
【0007】
一実施形態においては、ホスト材料は、(i)5~40wt%(重量%)、好ましくは10~30wt%、より好ましくは15~25wt%のZnO、(ii)0~25wt%、好ましくは5~20wt%、より好ましくは0~10wt%のMgO、(iii)50~95wt%、好ましくは60~95wt%、より好ましくは65~95wt%、さらにより好ましくは65~90wt%、さらにより好ましくは70~85wt%のSiO2、及び(iv)0~5wt%、好ましくは0.1~3wt%、より好ましくは0.5~2.5wt%のMnOを含む。
【0008】
別の実施形態においては、ホスト材料は、(i)5~40wt%、好ましくは10~30wt%、より好ましくは15~25wt%のMgO、(ii)0~25wt%、好ましくは5~20wt%、より好ましくは0~10wt%のZnO、(iii)55~95wt%、好ましくは60~95wt%、より好ましくは65~95wt%、さらにより好ましくは70~90wt%のSiO2、及び(iv)0~5wt%、好ましくは0.1~3wt%、より好ましくは0.5~2.5wt%のMnOを含む。
【0009】
別の実施形態において、ホスト材料は、(i)35~80wt%、好ましくは40~75wt%、より好ましくは45~70wt%のMgO、(ii)0~30wt%、好ましくは0~25wt%、より好ましくは5~20wt%のZnO、(iii)25~65wt%、好ましくは30~60wt%のSiO2、及び(iv)0~5wt%、好ましくは0.1~3wt%、より好ましくは0.5~2.5wt%のMnOを含む。
【0010】
別の実施形態において、ホスト材料は、(i)10~35wt%、好ましくは10~25wt%のMgO、(ii)0~10wt%、好ましくは0~5wt%のZnO、(iii)70~85wt%、好ましくは77~84wt%のSiO2、及び(iv)0~5wt%、好ましくは0~3wt%のMnOを含む。
【0011】
本発明の実施形態は、本明細書のいずれかに開示される2つ以上のホスト又はホストの選択を含むことができる。
【0012】
本発明の誘電体材料(dielectric material)は、括弧内に示された値を超えない量で、以下のいずれか又はすべてとともに、本明細書に開示される80~99wt%の少なくとも1つのホスト材料を含むことができる:SiO2(5wt%);CaCO3(5wt%);H3BO3(8wt%);Li2CO3(5wt%);LiF(5wt%);CaF2(5wt%)、ホウ酸亜鉛(12wt%)及び0.1~5wt%のCuO。本発明の誘電体材料は、いかなる形態の鉛も、いかなる形態のカドミウムも含まない。
【0013】
本発明の誘電体材料は、以下のいずれか又はすべてとともに、本明細書に開示される20~50wt%の少なくとも1つのホスト材料を含むことができる:45~70wt%SiO2;0.1~5wt%CaCO3;0.1~8wt%H3BO3;0.1~5wt%Li2CO3;0.1~5wt%CuO;0~5wt%LiF;0~5wt%CaF2及び0~5wt%ホウ酸亜鉛。
【0014】
本発明の誘電体材料は、以下のいずれか又はすべてとともに、本明細書に開示される40~60wt%の少なくとも1つのホスト材料を含むことができる:30~50wt%CaTiO3;0~5wt%SiO2;0.1~5wt%CaCO3;0.1~8wt%H3BO3;0.1~5wt%Li2CO3;0~5wt%CuO;0~5wt%LiF;0~5wt%CaF2及び0~5wt%ホウ酸亜鉛;鉛を含ます、カドミウムを含まない。
【0015】
本発明の実施形態は、以下を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である:(a)0~40wt%ZnO、(b)0~30wt%MgO、(c)0~5wt%MnO、(d)55~90wt%SiO2、(e)0~5wt%CaO、(f)0~5wt%TiO2、(g)0.1~5wt%B2O3、(h)0.1~5wt%Li2O、(i)0.1~5wt%CuO、(j)0~5wt%CaF2、(k)0~5wt%LiF;鉛を含まず、カドミウムを含まない。
【0016】
本発明の実施形態は、以下を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である:(a)45~80wt%ZnO、(b)0~20wt%MgO、(c)0~5wt%MnO、(d)15~40wt%SiO2、(e)0~5wt%CaO、(f)0~5wt%TiO2、(g)0.1~8wt%B2O3、(h)0~5wt%Li2O、(i)0.1~5wt%CuO、(j)0~5wt%CaF2、(k)0~5wt%LiF;鉛を含まず、カドミウムを含まない。
【0017】
本発明のいずれかの実施形態について、ゼロで境界付けられた材料範囲は、下端で0.01%又は0.1%で境界付けられた同様の範囲のサポートを提供すると見なされる。
【0018】
本発明の実施形態は、以下を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物である:(a)0~25wt%ZnO、(b)40~70wt%MgO、(c)0~5wt%MnO、(d)15~55wt%SiO2、(f)0~5wt%CaO、(g)0~5wt%TiO2、(h)0.1~8wt%B2O3、(i)0~5wt%Li2O、(j)0.1~5wt%CuO、(k)0~5wt%CaF2、(l)0~5wt%LiF、又は前述の均等物;鉛を含まず、カドミウムを含まない。
【0019】
本発明の種々の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されたいずれかのホスト材料を、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含むことができる。
【0020】
一実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、1~30wt%のSiO2、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0021】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、55~75wt%のSiO2、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0022】
追加的実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、2~50wt%のCaTiO3、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0023】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、2~50wt%のCaTiO3、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0024】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~3wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0025】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、0~6wt%のホウ酸、2~12wt%のホウ酸亜鉛、0.2~3wt%のLiF、及び0.1~3wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0026】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、2~50wt%のCaTiO3、2~12wt%のホウ酸亜鉛、0.2~3wt%のLiF、及び0.1~3wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0027】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0028】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、8~30wt%のSiO2、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%CuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0029】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、55~75wt%のSiO2、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0030】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、2~50wt%のCaTiO3、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0031】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、2~50wt%のCaTiO3、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLi2CO3、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0032】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0033】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、8~30wt%のSiO2、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0034】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、55~75wt%のSiO2、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0035】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、2~50wt%のCaTiO3、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0036】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、2~50wt%のCaTiO3、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0037】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、0~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0038】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、8~30wt%のSiO2、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0039】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、55~75wt%のSiO2、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0040】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、2~50wt%のCaTiO3、0.3~4wt%のCaF2、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0041】
別の実施形態において、誘電体組成物は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を、2~50wt%のCaTiO3、0.3~4wt%のCaCO3、0.5~4wt%のH3BO3、0.1~4wt%のLiF、及び0.1~1wt%のCuO、又は前述の均等物とともに含む。
【0042】
ゼロ重量パーセントで境界付けられた各組成範囲について、その範囲は、0.01wt%又は0.1wt%の下限を有する範囲も示すと見なされる。60~90wt%Ag+Pd+Pt+Auなどの教示は、言及された成分のいずれか又はすべてが、規定された範囲で組成物中に存在できることを意味する。
【0043】
別の実施形態において、本発明は、本明細書のいずれかに開示されるいずれかのホスト材料を焼成前に含む、鉛フリーかつカドミウムフリーの誘電体組成物に関する。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるいずれかの誘電体ペーストを、導電性ペーストと共に焼成前に含む電気又は電子部品に関し、導電性ペーストは(a)60~90wt%のAg+Pd+Pt+Au、(b)遷移金属のケイ化物、炭化物、窒化物、及びホウ化物からなる群から選択される1~10wt%の添加剤、(c)0.5~10wt%の少なくとも1つのガラスフリット、及び(d)10~40wt%の有機部(organic portion)を含む。電気又は電子部品は、高Q共振器、バンドパスフィルタ、ワイヤレスパッケージングシステム、及びこれらの組み合わせとすることができる。
【0045】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるいずれかの誘電体ペーストを基体(基板)(substrate)に適用する(塗布する)(applying)工程;及び誘電体材料を焼結するのに十分な温度で基体を焼成する工程を含む、電子部品を形成する方法に関する。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に開示されるいずれかの誘電体材料の粒子を基体に適用する工程、及び誘電体材料を焼結するのに十分な温度で基体を焼成する工程を含む、電子部品を形成する方法に関する。
【0047】
別の実施形態において、本発明の方法は、
(a1)本明細書に開示されるいずれかの誘電体組成物を基体に適用する工程、又は
(a2)本明細書に開示されるいずれかの誘電体組成物を含むテープを基体に適用する工程、又は
(a3)本明細書に開示されるいずれかの誘電体組成物の複数の粒子を成形して、モノリシック複合基体(monolithic composite substrate)を形成する工程;及び
(b)誘電体材料を焼結するのに十分な温度で基体を焼成する工程;
を含む、電子部品を形成する工程を含む。
【0048】
本発明による方法は、7よりも高い誘電率を有する本明細書に開示されるいずれかの誘電体材料の少なくとも1つの層を、7未満の誘電率を有するテープ又はペーストの少なくとも1つの互い違いとなる別個の層(alternating separate layer)と組み合わせて、同時焼成して、互い違いの層が異なる誘電率を有する多層基体(multi-layer substrate)を形成する方法である。
【0049】
本明細書の各数値(パーセンテージ、温度等)の前には「約」(about)が付いていると推定されることを理解されたい。本明細書のいずれかの実施形態において、誘電体材料は、異なる相、例えば結晶性及びアモルファス、をモル%(mol%)又はwt%のいずれかで表される任意の比率、例えば1:99~99:1(結晶性:アモルファス)、で含むことができる。他の比率には、10:90、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、及び90:10、並びにその間のすべての値が含まれる。一実施形態において、誘電体ペーストは、10~30wt%の結晶性誘電体及び70~90wt%のアモルファス誘電体を含む。
【0050】
本発明の前述の特徴及び他の特徴は、以下においてより十分に説明され、特に特許請求の範囲において指摘され、以下の説明は、本発明の特定の例示的な実施形態を詳細に記載するが、これらは、本発明の原理を使用することができる様々な方法のうちのいくつかだけを表示するにすぎない。
【発明の詳細な説明】
【0051】
LTCC(低温同時焼成セラミック)は、比較的低い焼成温度(1000℃未満)で、Ag、Au、PtもしくはPd、又はこれらの組み合わせ等の低抵抗金属導電体と同時焼成(共焼成)される多層ガラスセラミック基体技術である。主な組成がガラス及びアルミナ又は他のセラミックフィラーからなることがあるため、「ガラスセラミック」(Glass Ceramics)と呼ばれることもある。一部のLTCC処方物は再結晶ガラスである。本明細書のガラスは、インシツ(in situ)で形成され得るか、又は組成物に添加され得るフリットの形態で提供することができる。状況によっては、ニッケル及びその合金等の卑金属が、理想的には、10-12~10-8気圧の酸素分圧等の非酸化性雰囲気において、使用することができる。「卑金属」とは、金、銀、パラジウム、及び白金以外のいずれかの金属である。合金金属には、Mn、Cr、Co、及びAlが含まれ得る。
【0052】
誘電体材料のスラリーから成型(cast)されたテープが切断され、ビア(via)として知られる孔を形成して層間の電気的接続を可能にする。ビアには導電性ペーストが充填される。次に、回路パターンが、必要に応じて同時焼成抵抗とともに印刷される。印刷基板の複数の層が積層される。スタックが加熱及び加圧され、複数の層が1つに結合される。次に、低温(<1000℃)焼結が行われる。焼結スタックは最終的な寸法に切断され、必要に応じて後焼成処理が完了される。
【0053】
自動車用途に有用な多層構造は、約5つのセラミック層、例えば、3~7又は4~6、を有することができる。RF用途において、構造は10~25のセラミック層を有することができる。配線基板として、5~8のセラミック層を使用することができる。
【0054】
[誘電性ペースト]誘電体層を形成するためのペーストは、本明細書に開示されるように、有機ビヒクル(organic vehicle)を原料の誘電体材料と混合することによって得ることができる。また、上述のように、焼成時にそのような酸化物及び複合酸化物に変換する前駆体化合物(炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩)も有用である。誘電体材料は、これらの酸化物、又はこれらの酸化物の前駆体を含む化合物を選択し、それらを適切な比率で混合することによって得られる。原料の誘電体材料中のこのような化合物の割合は、焼成後に所望の誘電体層組成が得られるように決定される。(本明細書のいずれかに開示されるように)原料の誘電体材料は、一般に、約0.1~約3ミクロン、より好ましくは約1ミクロン以下の平均粒子(mean particle size)を有する粉末形態で使用される。
【0055】
[有機ビヒクル]本明細書のペーストは有機部を含む。有機部は、有機溶媒中のバインダ又は水中のバインダである有機ビヒクルであるか、又は有機ビヒクルを含む。本明細書において使用されるバインダの選択は重要ではない;エチルセルロース、ポリビニルブタノール、エチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース、並びにこれらの組み合わせ等の一般的なバインダが溶媒と合わせて適当である。有機溶媒も重要ではなく、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、エタノール、ジエチレングリコールブチルエーテル等の一般的な有機溶媒;2,2,4-トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール(Texanol)(登録商標));α-テルピネオール;β-テルピネオール;γ-テルピネオール;トリデシルアルコール;ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール(Carbitol)(登録商標))、ジエチレングリコールブチルエーテル(ブチルカルビトール(Butyl Carbitol)(登録商標))及びプロピレングリコール;並びにこれらの混合物から、特定の適用方法(すなわち、印刷又は被覆(sheeting))に従って選択することができる。テキサノール(登録商標)の商品名で販売されている製品は、テネシー州キングズポート(Kingsport)にあるイーストマンケミカル社(Eastman Chemical Company)から入手することができる;ダウワノール(Dowanol)(登録商標)及びカルビトール(登録商標)の商品名で販売されている製品は、ミシガン州ミッドランド(Midland)にあるダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から入手することができる。
【0056】
本発明の誘電体ペーストの有機部に何らかの限定は課されない。一実施形態において、本発明の誘電体ペーストは、約10wt%~約40wt%の有機ビヒクルを含む。別の実施形態においては、約10wt%~約30wt%の有機ビヒクルを含む。多くの場合、ペーストは約1~5wt%のバインダ及び約10~50wt%の有機溶媒を含み、残りは誘電体成分(固体部)である。一実施形態において、本発明の誘電体ペーストは、約60~約90wt%のいずれかに開示される固体部、及び本段落及び前の段落に記載の約10wt%~約40wt%の有機部を含む。必要に応じて、本発明のペーストは、分散剤、可塑剤、誘電性化合物、及び絶縁性化合物等の他の添加剤を最大約10wt%含むことができる。
【0057】
[フィラー]異なる誘電体組成物のテープ層間の膨張の不整合を最小限に抑えるために、コーディエライト、アルミナ、ジルコン、フューズドシリカ、アルミノケイ酸塩、及びこれらの組み合わせ等のフィラーを、本明細書の1つ又は複数の誘電体ペーストに1~30wt%、好ましくは2~20wt%、より好ましくは2~15wt%の量で添加することができる。
【0058】
[焼成]次に、誘電体スタック(2つ以上の層)が、内部電極層形成ペースト中の導体の種類に従って決定される雰囲気中で焼成される。内部電極層がニッケル及びニッケル合金等の卑金属導体で形成される場合、焼成雰囲気は、約10-12~約10-8atmの酸素分圧を有することができる。約10-12atm未満の分圧での焼結は避けるべきであり、このような低圧では、導体が異常に焼結され、誘電体層との分離が生じることがあるためである。約10-8atmを超える酸素分圧では、内部電極層が酸化されることがある。約10-11~約10-9atmの酸素分圧が最も良い。本明細書に開示される誘電体組成物は周囲空気(ambient air)中で焼成することも可能である。しかしながら、還元性雰囲気(H2、N2、又はH2/N2)は、誘電体ペーストから金属ビスマスへとBi2O3を還元してしまうことがあり望ましくない。
【0059】
本明細書に開示されるLTCC組成物及び装置の用途には、バンドパスフィルタ、(ハイパス又はローパス)、セルラー用途を含むテレコミュニケーション(telecommunication)用の無線送信機及び受信機、電力増幅器モジュール(PAM)、RFフロントエンドモジュール(FEM)、WiMAX2モジュール、LTE-advancedモジュール、トランスミッションコントロールユニット(TCU)、電子パワーステアリング(EPS)、エンジンマネジメントシステム(EMS)、種々のセンサーモジュール、レーダーモジュール、圧力センサー、カメラモジュール、スモールアウトラインチューナーモジュール、装置及び部品用薄型プロファイルモジュール、並びにICテスターボードが含まれる。バンドパスフィルタには、コンデンサとインダクタの2つの主要部が含まれる。低K材料はインダクタの設計には適しているが、十分な静電容量を生成するためにより多くのアクティブ領域を必要とするためコンデンサの設計には適していない。高K材料はその逆の結果となる。本発明者らは、低K(low K)(4~8)/中K(Mid K)(10~100)LTCC材料を同時焼成して単一の部品にすることができ、最適化された性能を有するように低K材料をインダクタ領域の設計に使用することができ、高K材料をコンデンサ領域の設計に使用することができることを発見した。
【実施例】
【0060】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を例示するために提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0061】
以下の表に示すように、適量のMg(OH)2、ZnO、MnO、及びSiO2を混合し、次に、水性媒体中で、約0.2~1.5μmの粒子径D50まで合わせて粉砕する。このスラリーを乾燥し、約800~1250℃で約1~10時間か焼して(calcine)、MgO、ZnO、MnO、及びSiO2を含むホスト材料を形成する。次に、得られたホスト材料を機械的に微粉化し、融剤及びドーパントと混合し、再び水性媒体中で約0.5~1.0μmの粒子径D50まで粉砕する。粉砕したセラミック粉末を乾燥及び微粉化して、細かく分割した粉末を製造する。得られた粉末を円筒形のペレットにプレスし、約880℃の温度で約30分間焼成する。組成は重量パーセントで示される。
【0062】
【0063】
【0064】
以下の表は、表2に示される調合物の特性及び性能データを提示する。
【0065】
【表3】
880℃で30分間焼結した後の調合物1~14のK及びQfデータ
【0066】
【表4】
880℃で30分間焼結した後の調合物1~14の組成(重量%)
【0067】
本発明は、以下の項によってさらに規定される。
【0068】
項1:
(a)ホストI、ホストII、ホストIII及びホストIVからなる群から選択される、80~99wt%の少なくとも1つのホスト材料:
1.ホストIは:
i)10~30wt%ZnO、
ii)0~10wt%MgO、
iii)65~90wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;
2.ホストIIは:
i)10~30wt%MgO、
ii)0~10wt%ZnO、
iii)70~90wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;
3.ホストIIIは:
i)50~85wt%ZnO、
ii)0~20wt%MgO、
iii)15~40wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;並びに
4.ホストIVは:
i)45~70wt%MgO、
ii)0~25wt%ZnO、
iii)30~55wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;
加えて、
(b)0~5wt%SiO2、
(c)0~5wt%CaCO3、
(d)0~8wt%H3BO3、
(e)0~5wt%Li2CO3、
(f)0.1~5wt%CuO、
(g)0~5wt%LiF、
(h)0~5wt%CaF2、並びに
(i)0~12wt%のホウ酸亜鉛、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【0069】
項2:
(a)ホストI、ホストII、ホストIII、及びホストIVからなる群から選択される、20~50wt%の少なくとも1つのホスト材料:
1.ホストIは:
i)10~30wt%ZnO、
ii)0~10wt%MgO、
iii)65~90wt%SiO2、及び
iV)0~5wt%MnOを含み;
2.ホストIIは:
i)10~30wt%MgO、
ii)0~10wt%ZnO、
iii)70~90wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;
3.ホストIIIは:
i)50~85wt%ZnO、
ii)0~20wt%MgO、
iii)15~40wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;並びに
4.ホストIVは:
i)45~70wt%MgO、
ii)0~25wt%ZnO、
iii)30~55wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;
加えて
(b)45~70wt%SiO2、
(c)0.1~5wt%CaCO3、
(d)0.1~8wt%H3BO3、
(e)0.1~5wt%Li2CO3、
(f)0.1~5wt%CuO、
(g)0~5wt%LiF、
(h)0~5wt%CaF2、並びに
(i)0~5wt%のホウ酸亜鉛、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【0070】
項3:
(a)ホストI、ホストII、ホストIII、及びホストIVからなる群から選択される、40~60wt%の少なくとも1つのホスト材料:
1.ホストIは:
i)10~30wt%ZnO、
ii)0~10wt%MgO、
iii)65~90wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;
2.ホストIIは:
i)10~30wt%MgO、
ii)0~10wt%ZnO、
iii)70~90wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;
3.ホストIIIは:
i)50~85wt%ZnO、
ii)0~20wt%MgO、
iii)15~40wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;並びに
4.ホストIVは:
i)45~70wt%MgO、
ii)0~25wt%ZnO、
iii)30~55wt%SiO2、及び
iv)0~5wt%MnOを含み;
加えて
(b)30~50wt%CaTiO3、
(c)0~5wt%SiO2、
(d)0.1~5wt%CaCO3、
(e)0.1~8wt%H3BO3、
(f)0.1~5wt%Li2CO3、
(g)0~5wt%CuO、
(h)0~5wt%LiF、
(i)0~5wt%CaF2、並びに
(j)0~5wt%のホウ酸亜鉛、
又は前述のいずれかの酸化物均等物を焼成前に含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料。
【0071】
項4:誘電体材料が粉末形態である、項1~3のいずれかの誘電体材料。
【0072】
項5:
(a)0~40wt%ZnO、
(b)0~30wt%MgO、
(c)0~5wt%MnO、
(d)55~90wt%SiO2、
(e)0~5wt%CaO、
(f)0~5wt%TiO2、
(g)0.1~5wt%B2O3、
(h)0.1~5wt%Li2O、
(i)0.1~5wt%CuO、
(j)0~5wt%CaF2、及び
(k)0~5wt%LiF、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0073】
項6:
(a)30~50wt%ZnO、
(b)0~10wt%MgO、
(c)0~5wt%MnO、
(d)5~25wt%SiO2、
(e)8~28wt%CaO、
(f)15~35wt%TiO2、
(g)0.1~5wt%B2O3、
(h)0.1~5wt%Li2O、
(i)0~5wt%CuO、
(j)0~5wt%CaF2、
(k)0~5wt%LiF、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0074】
項7:
(a)45~80wt%ZnO、
(b)0~20wt%MgO、
(c)0~5wt%MnO、
(d)15~40wt%SiO2、
(e)0~5wt%CaO、
(f)0~5wt%TiO2、
(g)0.1~8wt%B2O3、
(h)0~5wt%Li2O、
(i)0.1~5wt%CuO、
(j)0~5wt%CaF2、
(k)0~5wt%LiF、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0075】
項8:
(a)0~25wt%ZnO、
(b)40~70wt%MgO、
(c)0~5wt%MnO、
(d)15~55wt%SiO2、
(e)0~5wt%CaO、
(f)0~5wt%TiO2、
(g)0.1~8wt%B2O3、
(h)0~5wt%Li2O、
(i)0.1~5wt%CuO、
(j)0~5wt%CaF2、
(k)0~5wt%LiF、を含み、
鉛及びカドミウムを含まない、
鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料を焼成時に形成する前駆体の混合物を含む、
鉛フリー及びカドミウムフリーの組成物。
【0076】
項9:焼成後に材料又は組成物が、1GHzよりも高い周波数で測定したとき、少なくとも5000のQf値を示す、項1~4のいずれかの鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料、又は項5~8のいずれかの誘電体組成物。
【0077】
項10:焼成後に材料又は組成物が3~50の誘電率Kを示す、項1~4のいずれかの鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料、又は項5~8のいずれかの誘電体組成物。
【0078】
項11:
a.60~90wt%のAg+Pd+Pt+Au、
b.遷移金属のケイ化物、炭化物、窒化物、及びホウ化物からなる群から選択される1~10wt%の添加剤、
c.0.5~10wt%の少なくとも1つのガラスフリット、並びに
d.10~40wt%の有機部、
を含む導電性ペーストと共に、項1~4のいずれかの鉛フリー及びカドミウムフリーの誘電体材料又は項5~8のいずれかの誘電体組成物を焼成前に含む、電気又は電子部品。
【0079】
項12:電気又は電子部品が、高Q共振器、電磁干渉フィルタ、バンドパスフィルタ、ワイヤレスパッケージングシステム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項10の電気又は電子部品。
【0080】
項13:
(a1)項1~4のいずれかの誘電体材料もしくは項5~8のいずれかの誘電体組成物を基体に適用する工程;又は
(a2)項1~4のいずれかの誘電体材料もしくは項5~8のいずれかの誘電体組成物を含むテープを基体に適用する工程;又は
(a3)項1~4のいずれかの誘電体材料もしくは項5~8のいずれかの誘電体組成物の複数の粒子を成形して、モノリシック複合基体を形成する工程;及び
(b)誘電体材料を焼結するのに十分な温度で基体を焼成する工程、
を含む、電子部品を形成する方法。
【0081】
項14:焼成が約800℃から約900℃の温度で行われる、項13の方法。
【0082】
項15:7未満の誘電率を有する、項1~4のいずれかの誘電体材料又は項5~8のいずれかの誘電体組成物の少なくとも1つの層を、7よりも高い誘電率を有するテープ又はペーストの少なくとも1つの互い違いとなる別個の層と組み合わせて同時焼成し、多層基体を形成する方法であり、
互い違いの層が異なる誘電率を有する方法。
【0083】
項16:焼成が約800℃から約900℃の温度で行われる、項15の方法。
【0084】
追加の利点及び変更は、当業者が容易に想到するであろう。したがって、そのより広い態様における本発明は、本明細書に示され、説明される特定の詳細なかつ例示的な例に限定されない。したがって、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって規定される一般的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。