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特許7157869ハイブリッドキャピラリ/充填トラップ及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】ハイブリッドキャピラリ/充填トラップ及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/04 20060101AFI20221013BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20221013BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
G01N30/04 A
G01N30/06 G
G01N1/22 L
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021503100
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019044252
(87)【国際公開番号】W WO2020028441
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】62/712,699
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518320904
【氏名又は名称】エンテック インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーディン, ダニエル ビー.
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/156005(WO,A1)
【文献】特開2000-002695(JP,A)
【文献】特開2004-053268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160038(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0242579(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0079143(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0020209(US,A1)
【文献】E.Pocurull et a.,Introduction of large volumes of water-containing samples into a gas chromatograph,Journal of Chromatography A,2000年,Vol.876,pp.135-145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/12
G01N 1/00-1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕捉システムであって、
キャピラリステージであって、前記キャピラリステージが、開放管状キャピラリカラムを備え、前記開放管状キャピラリカラムの内面が、収着剤によってコーティングされている、キャピラリステージと、
充填ステージであって、前記充填ステージが、充填収着剤を備え、前記充填ステージが、前記キャピラリステージに流体連結されている、充填ステージと、
本体であって、前記本体が、
前記充填収着剤を包含する内部空洞、及び
前記内部空洞に流体連結された脱着ポート、を備える、本体と、
前記捕捉システムの前記本体に取り付けられたバルブと、を備え、前記バルブが、前記本体の開口部をポンプに、前記ポンプが前記バルブに取り付けられたときに流体連結するように構成されており、前記本体の前記開口部が、前記本体の前記内部空洞に流体連結され、前記本体の前記開口部が、前記本体の前記脱着ポートとは異なる、捕捉システム。
【請求項2】
前記充填収着剤が、第1の充填収着剤及び第2の充填収着剤を含み、前記捕捉システムが、前記第1の充填収着剤と前記第2の充填収着剤との間にスクリーンを更に備える、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項3】
前記捕捉システムが、前記捕捉システムの環境から前記捕捉システムを隔離する隔離エンクロージャ内に挿入されるように構成されている、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項4】
前記脱着ポートが、前記捕捉システムからの試料の脱着中にキャリア流体を受容するように構成されている、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項5】
前記捕捉システムからの前記試料の脱着中に、
第1の化合物が、前記キャピラリステージから脱着され、
第2の化合物が、前記充填ステージから脱着され、
前記キャリア流体を受容することにより、前記第1の化合物が、前記キャピラリステージからプレカラム内へと流され、前記キャリア流体を受容することにより、前記第2の化合物が、前記充填ステージから前記キャピラリステージを通って、前記プレカラム内へと流される、請求項4に記載の捕捉システム。
【請求項6】
前記バルブは、前記バルブに対する第2の力がない状態で前記バルブを閉鎖する第1の力を加えるばねを備え、前記ポンプは、前記ポンプが前記バルブに取り付けられているときに前記第2の力を加える、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項7】
第1の保持スクリーンと、
第2のクリーンと、を更に備え、前記充填収着剤が、前記第1の保持スクリーンと前記第2のクリーンとの間に配置され、前記充填収着剤が、前記第1の保持スクリーン及び前記第2のクリーンと接触する、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項8】
前記開放管状キャピラリカラムが、除去され、第2の開放管状キャピラリカラムと交換されるように構成されており、1つ以上の粒子が、前記開放管状キャピラリカラムに付着し、前記開放管状キャピラリカラムを除去すると、前記1つ以上の粒子が除去される、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項9】
前記捕捉システムが、可搬性であり、前記捕捉システムで試料を収集することは、前記試料の分析が行われる分析場所とは異なるサンプリング場所に前記捕捉システムを輸送することを含む、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項10】
前記捕捉システムによって捕捉された試料の分析が、完全に又は部分的に自動化されている、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項11】
前記捕捉システムによる試料の収集が、1時間~1週間に及ぶ期間にわたって完全に又は部分的に自動化されている、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項12】
前記キャピラリステージが、前記捕捉システムによって収集された1つ以上の粒子を保持し、前記1つ以上の粒子が、前記充填ステージに移送されない、請求項1に記載の捕捉システム。
【請求項13】
化学分析用に試料を捕捉するための方法であって、
ポンプを使用して捕捉システムを通して前記試料を引き出すことであって、前記試料が、第1の化合物及び第2の化合物を含み、前記捕捉システムが、キャピラリステージ及び充填ステージを備え、前記ポンプを使用してガス試料を引き出すことが、
前記第1の化合物及び前記第2の化合物を前記捕捉システムの前記キャピラリステージ内へと引き出すことであって、前記キャピラリステージが、開放管状キャピラリカラムを備え、前記開放管状キャピラリカラムの内面が、収着剤によってコーティングされている、前記第1の化合物及び前記第2の化合物を前記捕捉システムの前記キャピラリステージ内へと引き出すことと、
前記第1の化合物を前記捕捉システムの前記キャピラリステージ内で捕捉することと、
前記第2の化合物を前記捕捉システムの前記充填ステージ内に引き出すことであって、前記充填ステージが、充填収着剤を含む、前記第2の化合物を前記捕捉システムの前記充填ステージ内に引き出すことと、
前記第2の化合物を前記捕捉システムの前記充填ステージ内で捕捉することと、を含み、
前記捕捉システムが、本体を備え、前記本体が、
前記充填収着剤を包含する内部空洞、及び
前記内部空洞に流体連結された脱着ポート、を備え、
前記捕捉システムを通して前記ガス試料を引き出すことが、前記ポンプを、前記捕捉システムの前記本体に取り付けられたバルブに取り付けることを含み、前記ポンプを前記バルブに取り付けることにより、前記バルブが前記ポンプを前記本体の開口部に流体連結させ、前記本体の前記開口部が、前記本体の前記内部空洞に流体連結され、前記本体の前記開口部が、前記本体の前記脱着ポートとは異なる、方法。
【請求項14】
前記充填収着剤が、第1の充填収着剤及び第2の充填収着剤を含み、前記捕捉システムが、前記第1の充填収着剤と前記第2の充填収着剤との間にスクリーンを更に備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記捕捉システムを通して前記ガス試料を引き出した後に、前記捕捉システムを、前記捕捉システムの環境から前記捕捉システムを隔離する隔離エンクロージャ内に挿入することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記脱着ポートが、前記捕捉システムからの試料の脱着中にキャリア流体を受容するように構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記捕捉システムからの前記試料の脱着中に、
前記キャピラリステージから前記第1の化合物を脱着させることと、
前記充填ステージから前記第2の化合物を脱着させることと、を更に含み、前記キャリア流体を受容することにより、前記第1の化合物が、前記キャピラリステージからプレカラム内へと流され、前記キャリア流体を受容することにより、前記第2の化合物が、前記充填ステージから前記キャピラリステージを通って、前記プレカラム内へと流される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記バルブは、前記バルブに対する第2の力がない状態で前記バルブを閉鎖する第1の力を加えるばねを備え、前記ポンプは、前記ポンプが前記バルブに取り付けられているときに前記第2の力を加える、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記捕捉システムが、
第1の保持スクリーンと、
第2のクリーンと、を更に備え、前記充填収着剤が、前記第1の保持スクリーンと前記第2のクリーンとの間に配置され、前記充填収着剤が、前記第1の保持スクリーン及び前記第2のクリーンと接触する、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記開放管状キャピラリカラムを除去し、前記開放管状キャピラリカラムを第2の開放管状キャピラリカラムと交換することを更に含み、1つ以上の粒子が、前記開放管状キャピラリカラムに付着し、前記開放管状キャピラリカラムを除去すると、前記1つ以上の粒子が除去される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記捕捉システムが、可搬性であり、前記捕捉システムで前記試料を捕捉することは、前記試料の分析が行われる分析場所とは異なるサンプリング場所に前記捕捉システムを輸送することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記捕捉システムによって捕捉された試料の分析が、完全に又は部分的に自動化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記捕捉システムによる試料の収集が、1時間~1週間に及ぶ期間にわたって完全に又は部分的に自動化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記キャピラリステージが、前記捕捉システムによって収集された1つ以上の粒子を保持し、前記1つ以上の粒子が、前記充填ステージに移送されない、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年7月31日に出願された「HYBRID CAPILLARY/PACKED TRAP FOR CHEMICAL ANALYSIS」と題する米国特許仮出願第62/712,699号に対する優先権を主張するものであり、その内容は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、捕捉システムに関し、かつより具体的には、開放管状キャピラリトラップと、空気から半揮発性化合物を捕捉することが可能な充填トラップと、を含む、マルチステージ式捕捉システムに関する。
【背景技術】
【0003】
吸着剤を使用して、気相試料中の有機化合物を収集することができる。吸着剤の使用と、それに続くGC又はGCMSへの熱的脱着は、-50℃~約400℃の沸点範囲で揮発性~半揮発性の化合物の分析に有効であり得るが、4~6環芳香族化合物及びパラフィン化合物の、400℃超で沸騰するC30への回収はそれほど成功していない、と長い間理解されてきた。加えて、駆除剤、除草剤などの多くの熱的に不安定な化合物、並びに炭素及び水素だけでなく、酸素、窒素、硫黄、リン、及び臭素などの原子を包含する一般的なヘテロ原子半揮発性化合物の回収は、充填吸着剤トラップからより重い化合物を除去するために必要とされる高い温度に起因して、熱的脱着技術を使用しても信頼できない。
【0004】
1つの理論は、吸着剤の「チャネリング」が、これらの化合物の完全な回収に干渉することである。加熱及び冷却中の吸着剤の通常の膨張及び収縮の間、収着剤中にチャネルが作り出される。捕捉中、収着剤は、脱着中の温度と比較して比較的低温であるが、より重い化合物は、吸着剤中の間隙を、熱的脱着中の有効な又は完全な回収のためには大きすぎる程度まで浸透する。乏しい回収は、実行間の変動により分析精度に影響するだけではない。回収の欠如により、これらのより重い化合物が、後続の分析で吸着剤から「滲出」される可能性がある。
【0005】
熱的脱着トラップを使用するこれらの課題により、米国保護環境庁及びその他の機関は、代わりに、熱的脱着アプローチを使用するのではなく、収着剤(例えば、XAD-2樹脂及びポリウレタンフォーム(Polyurethane Foam、PUF)カートリッジ)と、それに続く溶媒抽出と、を利用する、より面倒な試料調製方法を開発した。しかしながら、吸着剤の溶媒抽出は、試料の希釈を引き起こし、かつ限定された可搬性を有し得る大容量のサンプリング装置を使用する。場合によっては、溶媒は、収集された化合物が吸着剤にしっかりと結合している可能性があるため、全ての化合物を吸着剤から完全に回収することができず、その結果、溶媒は、複数の抽出ステップ及び潜在的に複数の溶媒を使用することなく、当該化合物を遊離させるには効果がない。これらの技術の多くは、大量の溶媒、多くの場合、試料当たり0.1~1リットルを使用し、これは、非常に無駄であり、かつ研究所の多くの空間を占める。溶媒抽出後、溶媒の大部分は蒸発によって除去されなければならず、そのため、ナフタレンよりも軽い試料化合物は回収されないが、代わりに溶媒と共に蒸発によって失われる。研究所は現在、非常に高価な溶媒回収システムに投資する必要があるが、それでも溶媒の一部が環境に逃げるのを防ぐことはできない。溶媒はまた、化学者及び環境に対する健康上のリスクをもたらすため、世界中のほとんどの環境機関にとって、より「グリーン」な技術の創出が最優先事項になっている。
【0006】
したがって、人及び環境の両方への影響を低減するために溶媒の使用を排除しながら、重く、熱的に不安定な化合物の改善された回収、より良好な再現性、感度、及び可搬性を有する、捕捉技術が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、捕捉システムに関し、かつより具体的には、開放管状キャピラリトラップと、空気から半揮発性化合物を捕捉することが可能な充填トラップと、を含む、マルチステージ式捕捉システムに関する。開示される技術は、従来の充填吸着剤トラップの使用では回収されないGC適合性化合物の回収を可能にする方式で非溶媒系の熱的脱着を使用する。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態は、充填ステージと、キャピラリステージと、を含む、捕捉システムを対象とする。充填ステージは、充填収着剤床を含む。キャピラリステージは、WCOT(wall-coated open tubular、壁がコーティングされた開放管状)カラム又はPLOT(porous-layer open tubular、多孔質層の開放管状)カラムなどのキャピラリカラムを含む。サンプリング中、ガス試料(例えば、空気)は、最初にキャピラリステージを通して、次いで充填ステージを通って引き出される。キャピラリステージは、空気及び他の重い化合物中の粒子を捕捉し、それによって、当該粒子が下流の充填トラップステージに輸送されるのを防止することができる。より重い半揮発性化合物が空気中の粒子状物質上に吸着され、初期のキャピラリトラップは、これらの粒子が充填トラップに到達することを効果的に防止することが理解される。キャピラリステージを横断するより軽い化合物、主により大きい粒子上にまだ吸着されていない化合物は、充填ステージによって捕捉される。捕捉された化合物を分析するために、捕捉装置が熱的脱着装置内に挿入され、GC(gas chromatograph、ガスクロマトグラフ)などの化学分析システムに連結される。分析は、MS(mass spectrometer、質量分析計)などの検出器又は他の検出器によって実施され得る。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態は、空気などのガス試料を捕捉及び分析する方法を対象とする。試料は、キャピラリステージと、充填ステージと、を含む、捕捉装置を通って引き出される。試料収集後、捕捉装置は、化学分析システムに連結された熱的脱着装置内に挿入される。脱着装置、捕捉装置、及び試料は、プレカラムに移送される前に脱着温度(例えば、250~320℃)まで加熱される。脱着装置の反対側のプレカラムの端部にあるスプリットポートにより、バルクガス及び水蒸気がシステムから出され、より重い(例えば、SVOC、VOC)化合物がプレカラム上で捕捉される。次いで、スプリットポートが閉鎖され、プレカラム上の化合物が、分離のために別のカラムに移送され、続いて検出器によって分析される。プレカラムから他のカラムへの移送中に、捕捉装置に流体連結された別のスプリットポートが開放されて、プレカラムに移送されなかった化合物がシステムから出されるか、又は非常に重い化合物がプレカラムからバックフラッシュされる。
【0010】
複数回(例えば、5~20回)使用された後、捕捉装置のキャピラリステージは交換され得る。更に、脱着装置は、捕捉装置からプレカラムへの清浄な流路を提供する、交換可能なライナを含み得る。したがって、捕捉装置のキャピラリステージ及び/又は脱着装置ライナの交換により、捕捉装置及び脱着装置の寿命をそれぞれ改善し、これらのシステムのメンテナンス及び操作のコストを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示のいくつかの実施形態による捕捉装置を例示している。
【0012】
図2】本開示のいくつかの実施形態によるエンクロージャ内の捕捉装置を例示している。
【0013】
図3】本開示のいくつかの実施形態による、脱着装置ライナ内に嵌められた捕捉装置を例示している。
【0014】
図4】本開示のいくつかの実施形態による、捕捉装置内に収集された試料を分析するために使用されるシステムを例示している。
【0015】
図5】本開示のいくつかの実施形態による、試料を収集する方法を例示している。
【0016】
図6】本開示のいくつかの実施形態による、試料の化学分析を行う例示的なプロセスを例示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願は、捕捉システムに関し、かつより具体的には、開放管状キャピラリトラップと、空気から半揮発性化合物を捕捉することが可能な充填トラップと、を含む、マルチステージ式捕捉システムに関する。開示される技術は、従来の充填吸着剤トラップの使用では回収されないGC適合性化合物の回収を可能にする方式で非溶媒系の熱的脱着を使用する。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態は、充填ステージと、キャピラリステージと、を含む、捕捉システムを対象とする。充填ステージは、充填収着剤床を含む。キャピラリステージは、WCOT(壁がコーティングされた開放管状)カラム又はPLOT(多孔質層の開放管状)カラムなどのキャピラリカラムを含む。サンプリング中、ガス試料(例えば、空気)は、最初にキャピラリステージを通して、次いで充填ステージを通って引き出される。キャピラリステージは、空気及び他の重い化合物中の粒子を捕捉し、それによって、当該粒子が下流の充填トラップステージに輸送されるのを防止することができる。より重い半揮発性化合物が空気中の粒子状物質上に吸着され、初期のキャピラリトラップは、これらの粒子が充填トラップに到達することを効果的に防止することが理解される。キャピラリステージを横断するより軽い化合物、主により大きい粒子上にまだ吸着されていない化合物は、充填ステージによって捕捉される。捕捉された化合物を分析するために、捕捉装置が熱的脱着装置内に挿入され、GC(ガスクロマトグラフ)などの化学分析システムに連結される。分析は、MS(質量分析計)などの検出器又は他の検出器によって実施され得る。
【0019】
本開示のいくつかの実施形態は、空気などのガス試料を捕捉及び分析する方法を対象とする。試料は、キャピラリステージと、充填ステージと、を含む、捕捉装置を通って引き出される。試料収集後、捕捉装置は、化学分析システムに連結された熱的脱着装置内に挿入される。脱着装置、捕捉装置、及び試料は、プレカラムに移送される前に脱着温度(例えば、250~320℃)まで加熱される。脱着装置の反対側のプレカラムの端部にあるスプリットポートにより、バルクガス及び水蒸気がシステムから出され、より重い(例えば、SVOC、VOC)化合物がプレカラム上で捕捉される。次いで、スプリットポートが閉鎖され、プレカラム上の化合物が、分離のために別のカラムに移送され、続いて検出器によって分析される。プレカラムから他のカラムへの移送中に、捕捉装置に流体連結された別のスプリットポートが開放されて、プレカラムに移送されなかった化合物がシステムから出されるか、又は非常に重い化合物がプレカラムからバックフラッシュされる。
【0020】
複数回(例えば、5~20回)使用された後、捕捉装置のキャピラリステージは交換され得る。更に、脱着装置は、捕捉装置からプレカラムへの清浄な流路を提供する、交換可能なライナを含み得る。したがって、捕捉装置のキャピラリステージ及び/又は脱着装置ライナの交換により、捕捉装置及び脱着装置の寿命をそれぞれ改善し、これらのシステムのメンテナンス及び操作のコストを低下させることができる。
概要
【0021】
GC又はGCMSによる熱的脱着分析のために揮発性及び半揮発性の化合物をサンプリングするための新しいアプローチが提示される。代替的な捕捉技術に関連する問題は、充填トラップのインレットに、WCOT(壁がコーティングされた開放管状)カラム又はPLOT(多孔質層の開放管状)カラムのいずれかなどの短いキャピラリトラップを置くことによって解決される。このキャピラリステージは、より重い化合物がトラップの充填ステージに到達することを防止するが、多床充填トラップにおいて、単により弱い充填ステージを使用するのとは大きく異なる機構を使用する。
【0022】
単床又は多床充填トラップと流体連通しているキャピラリカラムを含む捕捉装置により、より重い半揮発性化合物を、熱的脱着中のより効果的な回収のために、キャピラリステージを追加することによって捕獲することができる。空気中の粒子がキャピラリステージによって保持され得、これにより、不揮発性デブリが充填ステージに入るのを防止する。具体的には、WCOTキャピラリカラムは、粒子を開放管状カラムの壁に固着させ、粒子、及び粒子上に吸着された重い有機化合物が充填トラップに到達するのを防止する、ポリマーコーティングを有する。キャピラリトラップの開放管状性質は、キャピラリカラムが、トラップが高温でも低温でも実質的に同じ開放アーキテクチャを有するため、チャネリングがキャピラリカラム内で発生するのを防止し、信頼性及び再現性のある分析装置に役立つ。重い粒子結合化合物をトラップのインレットで、充填トラップ内に見出されるほとんどの吸着剤よりもはるかに吸着性が低いポリマー材料上に保持することにより、重い化合物を、充填ステージに対するキャピラリステージの小さな断面積に起因して、はるかに低い温度及びより高いライナ速度で脱着させることができる。これらの要因は全て、より低い揮発性化合物及びより熱的に不安定な化合物の両方のより有効な回収を増加させる。最後に、サンプリング中及び熱的脱着分析中の両方において、別様に下流充填ステージの寿命を低減させ得る不揮発性粒子及びデブリが、そのステージに到達するのを防止する。キャピラリステージは、サンプリング装置全体を交換する必要なしに、キャピラリステージを通る清浄な、粒子を含まない流路を再び発生させるために何度か使用した後に交換され得る。
【0023】
捕捉システムは通常、0.01~10リットルの空気を収集し、その後、フィールド可搬性GC/GCMSのいずれかを使用した分析のためのGC若しくはGCMSシステムへの熱的脱着のため、又は移動式の若しくは固定された研究所への送達のために使用される。PUFカートリッジ及びXAD-2樹脂を使用して数千リットルの試料を捕捉することができるが、より大きな量の溶媒を注入する際の悪影響、すなわち、キャリアガス送達ラインへの試料の逆膨張により、最終的な1000μLの溶媒濃縮物のうち1μLしか分析することができないため、通常は1000倍の希釈物が存在し、これは、汚染されたGCインジェクタアセンブリを分解及び清浄化する必要性を作り出す。キャピラリステージは、より重い化合物が充填トラップ内でより強い吸着剤に曝露されるのを防止すること、及びGC又はGCMSへの脱着プロセス中により高いライン速度を維持することによって、より重い化合物の回収を改善する。充填トラップへの曝露を防止することにより、実行間の充填トラップの汚染及びより重い化合物のキャリーオーバも低減され、これは、これらの重い化合物を充填吸着剤トラップを用いて分析しようと試みる際の既知の問題である。最後に、はるかにより弱いキャピラリトラップ上で収集することにより、重く、熱的に不安定な化合物をより低い脱着温度で回収することができ、充填トラップのみを使用して、乏しい回収で知られている多くの化合物の正確な分析を可能にする。
【0024】
開示される捕捉システムの利点は、チャネリングの悪影響を低減することである。充填トラップは、吸着剤で完全に充填されているが、WCOT又はPLOTカラムなどのキャピラリカラムは、単に吸着剤を有するか、又は吸着剤がカラムの内壁上にコーティングされる。したがって、充填トラップのインレットにキャピラリカラムを置くことにより、より重い化合物がチャネリング効果に供されることを防止することができ、それにより、化合物が、吸着剤に対する高い親和性に基づいて別様に予想され得るよりも、充填トラップの捕捉媒体へと更に送達される。具体的には、既に粒子上に吸着されているより重い化合物は、充填トラップ内に見出されるほとんどの吸着剤に固着しない可能性があり、当該化合物が吸着剤中になおも更に浸透することを可能にし、粒子上に吸着された化合物の回収を更に低減させる。加えて、試料化合物の遊走の可能性は、粒子が充填収着剤中に更に遊走することを可能にすると、脱着及び分析中に回収に干渉し得るため、これらの粒子が充填収着剤に到達するのを防止する重要性を高める。したがって、粒子及び他の重い化合物をキャピラリステージで捕捉することにより、これらの粒子が充填収着剤を汚染することを防止し、脱着及び分析中にこれらの粒子に付着した化合物の回収を確実にする。
【0025】
充填トラップ内で使用される収着剤を含む収着剤は、それらを加熱時に膨張させ、冷却時に収縮させる、熱膨張係数を有する。脱着中、収着剤は、高い温度まで加熱されることにより、膨張し得る。捕捉中などの脱着後に、収着剤は、低い温度まで冷却されることにより、収縮し得る。加熱と冷却のサイクルを繰り返すと、収着剤が捕捉用に低減された温度にあるときに、チャネルが収着剤内に形成され、より重い化合物がチャネル内に捕捉され、収着剤が膨張すると脱着中に逃げることができなくなる場合があり、チャネルが閉鎖される可能性がある。加えて、サンプリング場所への充填トラップの輸送により、吸着剤を包含する管の内壁に沿ってチャネルが形成される方式で、吸着剤の定着が引き起こされ、サンプリング中に更なるチャネリング及びより深い浸透を引き起こす場合がある。脱着中に捕捉ステージから重い化合物を排除するのに失敗すると、重い化合物の検出量を低減させることによって化学分析結果を損なう可能性があるだけでなく、重い化合物が後続のトラップの使用中に脱着され、それによって、後続のトラップの使用中に、重い化合物の検出量が増加し得るため、充填トラップの汚染につながる可能性もある。チャネル形成の程度及びこれらのチャネル(多くの小さなチャネル又は少数の大きなチャネル)の正確な構造は、従来の充填トラップを使用すると、幅広い変動を作り出す可能性があるが、ハイブリッドキャピラリ/充填トラップを使用することによって、より重い化合物をこれらのチャネルに到達させ続けることにより、一貫性を捕捉するようにトラップを大幅に改善することができ、これは、当然のことながら、あらゆる良好な分析技術で重要である。
【0026】
ポアズイユの法則によると、チャネルの内径又はカラムの内径を2倍にすると、相対的な流量が、その増加の4乗だけ増加する。したがって、チャネリングなどによる充填吸着剤トラップ内の粒子の分離を2倍に増加させると、そのチャネルを通る流量が16倍まで増加する。特定の温度でガスの拡散速度をはるかに上回るサンプリング流量では、化学物質は、収着剤と接触する前に、これらのチャネルを通って吸着剤中になおも更に導入され得る。より重い有機化合物が収着剤に強く付着することになり、浸透のわずかな増加のみが、熱的脱着中の乏しい回収をもたらし得る。加えて、浸透が大きくなると、多くの熱的に不安定な化合物は、高い温度での熱的脱着中に管上に十分長く保持され、これにより、当該化合物は分解されるため、分析中に正確に測定されない。
【0027】
全ての化合物は、充填トラップステージ内でチャネリングに供されるが、最も重い化合物が最も影響を受け、分析中に最大の損失を示し、後続の分析でのキャリーオーバの可能性が最大になる。WCOT及びPLOTカラムなどのキャピラリカラムは、充填カラムの場合と同様に、カラムの内側全体に収着剤が充填されている代わりに、薄い収着剤のコーティングが壁に施されているだけなので、充填カラムほどチャネリングの影響を受けない。中心を通る開放されているキャピラリ管は、加熱されたときに閉鎖されない。例えば、530μmの内径を備えるキャピラリカラムは、それらの内壁に1~20μmのコーティングを有し、これは、キャピラリ管の内径の92%~99%超である、完全に開放されている490~528μmの内径を備える経路を残す。キャピラリカラムの加熱及び冷却中、この開口部のサイズはほぼ一定のままであり、充填トラップ内で生じ得るチャネリングを排除する。これにより、分析間及びサンプラ間の一貫性が大きく増加する。これは、これらのキャピラリトラップが通常、キャピラリカラムの作製に使用され、今日では非常に再現性が高いため、充填カラム及びそれらに対応する充填吸着剤トラップよりもはるかに優れている。加えて、キャピラリカラム内の収着剤粒子の体積は通常、充填トラップ内でより大きな収着剤粒子を使用して、粒子間に適度な大きさの間隙を作り出し、ひいては、サンプリング中に充填トラップを通して適度な流速を作り出す必要があるため、充填トラップで使用される収着剤粒子よりも1000~5000倍小さい。充填トラップ内ではるかに小さい粒子が使用される場合、流量は、通って流れる開放空間がないことを考慮して、ゼロ付近まで低下し得る。したがって、充填トラップの前方のキャピラリカラムは、空気又は他の揮発性マトリックス中の有機化合物をサンプリングするためのコンパクトな設計を提供する一方で、他の熱的脱着装置と比較して実質的に改善された回収を提供する。
【0028】
開示されるシステム及び方法の別の利益は、粒子管理である。空気中の半揮発性化合物の正確な測定を得るためには、粒子状物質の収集が重要であり、これは、空気中に見出されるより重い有機物の大部分がこれらの粒子に結合するためである。これらの粒子は、キャピラリカラムのポリマー相に固着し、それらの捕獲を可能にし、それらがトラップの充填ステージに進むことを実質的に防止することができる。熱的脱着中、ほとんどの粒子は化学化合物に対して強い吸着効果を有していないため、化合物(例えば、重い揮発性化合物、半揮発性化合物など)を粒子から脱着させ、化合物の定量的測定を可能にすることができる。空気を5~20回サンプリングした後、キャピラリセクションを除去し、トラップ全体を交換するコストの一部で、キャピラリの清浄なセクションと交換することができる。キャピラリカラムを交換する能力は、サンプリング及び熱的脱着の数百サイクルまで持ちこたえることができる空気監視ソリューションを提供する。
【0029】
最後に、充填トラップへの入口にキャピラリトラップを置くことにより、600℃の沸点を有する化合物を含む化合物の完全な回収を、より低い脱着温度で達成することができる。いくつかの方法は、従来の充填吸着剤トラップを使用して化合物をC30から回収する能力を示すが、400℃ほどの高さの脱着温度を使用する必要があり、ひいては、この温度で安定している化合物のみが回収され得る。充填トラップの入口に、表面積が小さく、吸着強度がはるかに低いキャピラリトラップを置くことによって、重い化合物をより低い脱着温度(例えば、250~320℃)で回収することができ、より熱的に不安定な化合物も回収することができる。加えて、熱劣化が起こると、吸着剤に損傷を与えるフリーラジカルが生成され、捕捉装置の寿命が短くなる場合がある。脱着温度が低減されることにより、より熱的に不安定な化合物を回収して、より完全で包括的な分析を達成しながら、サンプリング装置の寿命を大幅に増加させることができる。
【0030】
フィールド内の空気の収集は、既知の流量を備える真空ポンプを使用すること、又は真空リザーバを使用することのいずれかによって行われ、収集される体積は、既知の体積のリザーバ内の真空の変化によって決定され得る。全て又は実質的に全ての試料が化学分析装置(例えば、GC、GCMSなど)に熱的に脱着されるため、溶媒抽出技術に見出される通常の1000倍の希釈とは、新しいハイブリッドサンプラを使用して収集された空気の1リットルの体積のみが、PUF(ポリウレタンフォーム)又はXAD-2樹脂上に収集された空気の1000リットルの体積と同等の感度を与え得ることを意味する。加えて、研究所の処理の欠如は、はるかに速い分析を意味し、可搬性のGC又は移動式研究所を使用して、フィールド内で分析を行うことが可能となる。
実施形態の開示
【0031】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による捕捉装置100を例示している。捕捉装置100は、キャピラリステージ110と、それに続く充填ステージ120と、を含む。キャピラリステージ110と充填ステージ120とが流体連結され、キャピラリステージ110を通って流れる空気は、試料採取中に、キャピラリステージ110を出て、充填ステージ120を通って流れる。キャピラリステージ110は、PLOTカラム又はWCOTカラムなどのキャピラリカラムである。充填ステージ120は、サンプリングの流れ方向に弱い方から強い方へと配列された複数の吸着剤床122~126を含む。すなわち、吸着剤床122は、1つ以上の標的化合物に対して、吸着床124よりも低い化学親和力を有し、吸着床124は、1つ以上の標的化合物に対して、吸着剤床126よりも低い化学親和力を有する。換言すれば、吸着剤床126は最強であり、吸着剤床122は最弱である。いくつかの実施形態では、単一の吸着剤床又は異なる数の複数の吸着剤床などの異なる数の吸着剤床を、充填ステージ120に使用することができる。
【0032】
使用される吸着剤に応じて、キャピラリステージ110は、400~600℃の範囲の沸点を有する化合物を捕捉することができ、充填ステージ120は、-50℃~400℃で沸騰する化合物を収集することができる。キャピラリステージ110への小さなインレット直径は、事実上ゼロである正味拡散速度をもたらすため、0.2~1cc/分ほどの低さの流量でアクティブサンプリングを行う場合、拡散オフセットは事実上発生しない。すなわち、捕捉装置100は、拡散による試料への添加がほとんどない状態で、キャップを外したままにすることができる。1日若しくは1週間又はそれを超える期間などにわたって、平均濃度が必要とされる場合に、長期間の統合サンプリングを行うときに、緩徐なアクティブサンプリング速度を使用することが望ましい場合がある。より重い化合物を捕捉することに加えて、キャピラリステージ110は、粒子を捕捉し、それらの充填ステージ120への導入を防止する。
【0033】
キャピラリステージ110は、標準的な溶融シリカキャピラリカラム、又は耐久性を高めるために、コーティングされた金属カラムのいずれかであり得る。キャピラリステージ110の直径は、0.01インチ~0.04インチの直径であり得るか、又は多少より小さい若しくはより大きいIDを使用することができる。キャピラリステージの長さは、1cm~10cm、又は0.5インチの範囲である。キャピラリステージ110は、プレス嵌め、ねじ山接続、高温ポリマー接続、又はセラミック接続などを含む、いくつかの技術を使用して、充填ステージ120に連結され得る。キャピラリステージ110の質量が低いことにより、それを定位置に保つために必要な力は非常に少ない。複数回(例えば、5~20回)使用した(例えば、サンプリング及びGC又はGCMSへの熱的脱着を複数回サイクルした)後、キャピラリステージ110を除去し、新しいキャピラリステージと交換して、キャピラリステージ110上の粒子の蓄積を排除することができる。複数回使用した後にキャピラリステージ110を交換することにより、充填ステージ120の内外への新しい流路を作り出し、キャピラリステージ110の吸着強度を改善し、充填ステージ120の汚染を防止又は低減する。
【0034】
捕捉装置100は、充填ステージ120内に収着剤を維持するためのスクリーン130を更に含み、収着剤がキャピラリステージ110に直接曝露されることを防止する。充填トラップ内の吸着剤床を、フィールドへの輸送中及びフィールドからの輸送中に混合することはできない。したがって、捕捉装置100は、収着剤122~126を定位置に保つための保持フリット132又は他の材料を含み、それが捕捉装置の本体101内でシフトすることを防止する。充填ステージ120は通常、1/4インチの外径であるが、他のサイズも可能である。加えて、捕捉装置100は、各タイプの収着剤を他のものとは別々に保つために、収着剤122、124、及び126の各床間にスクリーンを更に含む。すなわち、収着剤122と収着剤124との間にスクリーン、並びに収着剤124と収着剤126との間にスクリーンがある。
【0035】
充填ステージ120は、標的化合物の所望の揮発性範囲に応じて使用され得る、1つ又は複数の収着剤を含み得る。単一の吸着剤を使用して、200~400℃の化合物を、充填ステージ120内で保持及び回収することができ、これらをキャピラリステージ110で組み合わせて、200~600℃の全沸点範囲を得る。更により軽い化合物の回収が所望される一部の事例では、各床間にスクリーンが挿入された状態で、2つ又は3つの吸着剤床を使用することができる。この場合、キャピラリカラム後の第1の床は強度が最も弱く、強度又は保持力を増加させる床が続く。複数の吸着剤床の使用により、より弱い第1の充填収着剤床及びインレットキャピラリステージ上に保持された200~600℃の沸点の化合物の回収を損なうことなく、更により揮発性の化合物を回収することができる。
【0036】
捕捉装置100はまた、Oリング140と、脱着ポート142と、一体型バルブ150とをシールすることを含む。捕捉装置100の頂部は、捕捉中に捕捉装置100が真空供給源に取り付けられ得る、戻り止め152を含む。Oリング140及び一体型バルブ150は、サンプリング及び分析を容易にすることができ、ロボットレール又はGC若しくはGCMSの頂部に装着された他のオートサンプラを使用して、分析を自動化するのに役立ち得る。しかしながら、本開示はまた、従来の圧縮嵌めを使用して隔離される管を含む。
【0037】
サンプリング、保管、及び脱着中のOリング140、脱着ポート142、及びバルブ150の詳細及び機能については、図2及び図3を参照して以下でより詳細に説明する。
【0038】
図2は、本開示のいくつかの実施形態によるエンクロージャ200内の捕捉装置100を例示している。エンクロージャ200は、スリーブ202及びキャップ204を含み、これらは、ねじ山206によって互いにねじ山式に連結される。エンクロージャ200の内径は、捕捉装置100がエンクロージャ200内に置かれる場合、Oリング140がスリーブ202の内部表面に対してシールを形成するようにサイズ決めされる。
【0039】
サンプリング場所への輸送中及びサンプリング場所からの輸送中など、捕捉装置100が使用されていない間に、キャップ204をスリーブ202に嵌めて、サンプリング装置100の本体101の内側空洞を、サンプリング装置の外部環境から隔離することができる。上述のように、Oリング140は、脱着ポート142をシールするように、スリーブ202の内側表面に対してシールを形成する。キャップ204は、サンプリング装置のキャピラリステージ110のインレット端部をシールする。サンプリング装置100のバルブ150は、バルブのばねの力などにより、閉鎖されたままであり、捕捉装置100の頂部をシールする。このように捕捉装置100をシールすることにより、サンプリング装置100の汚染を防止する。
【0040】
サンプリング中、キャップ204が除去され、空気がキャピラリステージ110を通って捕捉装置100に入ることが可能になる一方、Oリング140及びスリーブ202は、脱着ポート142をシールし続ける。したがって、試料は、キャピラリステージ110を通るが、脱着ポート142を通らずに、捕捉装置100に入ることができる。スリーブ202を定位置に残したままでキャップ204を除去することもまた、取り扱い中(例えば、試料を収集しているとき)などの、サンプリング装置の管126の外側の汚染を防止する。取り扱い中にスリーブ202を除去すると、人との接触による脂肪酸、アルデヒド、及びその他の汚染物質が導入される可能性がある。定量ポンプ又は真空リザーバを、捕捉システム100の頂部にある戻り止め152に接続して、捕捉システム100内に既知の体積の空気を引き出して、試料を収集する。試料収集後、キャップ204を交換する。更に、定量ポンプ又は真空リザーバを戻り止め152から接続解除することにより、バルブ150を閉鎖することができる。キャップ204を交換して、バルブ150を閉鎖することを可能にすることは、研究所に戻る間、及びGC又はGCMSによる熱的脱着分析を待っている間の捕捉装置100の汚染を防止する。
【0041】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による、脱着装置ライナ300内に嵌められた捕捉装置100を例示している。脱着中、捕捉装置100及び脱着装置ライナ300は、捕捉装置100からGC又はGCMS上に試料を再び脱着させる(back-desorb)ために使用される熱的脱着装置の内側に置かれる。熱的脱着装置は、図4を参照して以下でより詳細に説明する。
【0042】
ライナ300は、捕捉装置100の本体101の周りに嵌められる。図2に例示されるエンクロージャ200とは異なり、ライナ300は、捕捉装置100の脱着ポート142をシールしない。脱着中、脱着ガス(例えば、水素又はヘリウムなどの不活性キャリアガス)は、脱着ポート142を通って捕捉装置100に入る。ライナ300は、図4を参照して以下でより詳細に説明されるように、試料を分析のために捕捉装置100から出すことができる、開口部301を含む。
【0043】
ライナ300は、不活性ガラス製であり得るか、又はシリカコーティングなどの不活性材料でコーティングされたステンレス鋼から作製され得る。ライナ300は、それが熱的脱着の数回(又は数百回)のサイクル後に交換されることを可能にすることによって、化学分析システムを清浄に保つ。脱着装置100をライナ内に挿入する能力は、ライナ300、脱着装置100のキャピラリステージ110、及び場合によっては、(任意のGC分析器で必要とされる)プレカラム422を単に交換することによって、試料分析のために「新品のような」流路を作り出すことができる。このようにして、完全に新しい分析器の性能を達成し、ひいては、同じ品質の分析を化学分析器の寿命にわたって提供することができる。
【0044】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、捕捉装置100内に収集された試料を分析するために使用されるシステム400を例示している。システム400は、熱的脱着装置410と、ガスクロマトグラフ420と、複数のバルブ432~438と、検出器440と、フローコントローラ452及び454と、を含む。ガスクロマトグラフ420は、プレカラム422、別のカラム424、及びキャリア流体(例えば、水素又はヘリウムなどの不活性若しくは非反応性ガス)供給源428を収容する。フローコントローラ452は、脱着バルブ434を通って捕捉装置100に至るキャリア流体428の流量、及び/又はバイパスバルブ432を通ってカラム424に至るキャリア流体428の流量を制御する。分割制御部454は、捕捉装置100からスプリットバルブ436を通る流量、及び/又は接合部426からスプリットバルブ438を通ってシステム400の外に至る流量を制御する。
【0045】
バイパスバルブ432は、キャリア流体供給源428を、プレカラム422とカラム424との間の接合部426に連結する。脱着バルブ432は、キャリア流体供給源を捕捉装置100に連結する。スプリットバルブ436は、捕捉装置100をスプリットコントローラ454に連結し、化合物がプレカラム422の前にシステムから出ることを可能にする。スプリットバルブ438は、プレカラム422とカラム424との間の接合部426をスプリットコントローラ454に連結し、プレカラム422を横断した化合物が、カラム424に入る前に、システムから出ることを可能にする。これらのバルブの操作については、図6を参照して以下でより詳細に説明する。
【0046】
熱的脱着装置410をガスクロマトグラフ(GC)420の頂部に取り付けて、試料がGC 420内に直接導入されることを可能にする。この配列により、次に回転バルブ及び追加の加熱ラインを通して試料をGCに送達しなければならない遠隔の「コンディショニング」装置に試料を脱着させるシステムと比較して、試料の回収が改善される。熱的脱着装置410は、試料を、熱的脱着装置ライナ300、及び脱着後に試料を更に濃縮するために使用され得るプレカラム422だけに曝露する。
【0047】
脱着中、熱的脱着装置410は、250~320℃の範囲の脱着温度まで加熱される。この加熱により、捕捉装置100内に捕捉された化合物が、充填ステージ内の充填収着剤を含む、捕捉装置100の収着剤、及びキャピラリステージの収着剤コーティングによって放出される。脱着中、プレカラムの下流にあるスプリットポート438を開放して、捕捉装置100を通る流量を増加させて、より重い化合物の回収率を改善させる。脱着中、重いVOC及び全てのSVOCは、プレカラム422上で収集され、水蒸気及びより軽い化合物は、スプリットポート438を介してプレカラム422とカラム424との間で大部分スプリットされる。
【0048】
脱着が完了した後、スプリットポート436を開放して、捕捉装置100内に残された任意の残留化合物がプレカラム422に到達することを実質的に停止し、スプリットポート438を閉鎖することができる。このようにして、プレカラム422の全内容物は、GC420の温度がより高い温度へと傾斜するときにカラム424に移送され、それによって、技術の感度を最大化する。後で、いくつかの実施形態では、バイパスバルブ432を開放して、プレカラム422を通って流れずにカラム424を通るキャリア流体428の流れを可能にする。更に他の実施形態では、バイパスバルブ432を開放し、次いでスプリットバルブ436を開放することにより、プレカラムをバックフラッシュして、真に最も重い化合物を除去し、一次分析カラム424の汚染を回避することができる。今日のGC分析器の温度及び流れの一貫性により、分析におけるこのバックフラッシュポイントは、全ての標的化合物が回収されることを確実にするために真に再現可能でありながら、依然として、真に最も重い化合物が主カラム424の全長を通して押し出され得るよりもはるかに速くプレカラム422からバックフラッシュされ得るため、試料スループットを最適化することができる。カラム424から溶出する化合物は、検出器440に導入される。検出器は、FID、PID、ECD、FPD、PFPD、PPD、ホール検出器、CLDなどのような非特異的検出器であっても、質量分析計であってもよい。
【0049】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、試料を収集する方法500を例示している。方法500は、図1図4を参照して上に記載される捕捉装置100などの装置のうちの1つ以上を使用して行うことができ、かつ図6を参照して以下に記載される方法600に従って、分析前に行うことができる。捕捉装置100は、研究所と、試料が収集される場所との間で可搬性がある。したがって、方法500の1つ以上のステップは、サンプリング場所で行われる。方法500を行う前に、捕捉装置100は、捕捉装置100を使用して以前の分析を実施した研究所、又は保管場所などの別の場所からサンプリング場所まで輸送され得る。方法500を行った後、捕捉装置100は、分析のために研究所に輸送され得るか、又は分析前の保管のために別の場所に輸送され得る。いくつかの実施形態では、試料が収集された場所で試料の分析を可能にするように、移動式研究所をセットアップすることができる。いくつかの実施形態では、方法500の1つ以上のステップを自動化することができる。
【0050】
ステップ502では、空気がサンプリングされる環境内にある間に、エンクロージャ200のキャップ204を除去し、捕捉装置100のキャピラリステージ110のインレットを環境に曝露する。エンクロージャ200のスリーブ202は、脱着ポート142がスリーブ202の内部表面に対してOリング140によってシールされるように、定位置に留まる。自動化を利用する実施形態では、ロボットが、キャップ204を保持しながら捕捉装置100を持ち上げることなどによって、エンクロージャのキャップ204を除去し、それに伴って、キャップから捕捉装置100を分離する。
【0051】
ステップ504では、定量ポンプ又は真空供給源が、戻り止め152で捕捉装置100に取り付けられる。ステップ502及び504は、任意の順序で、又は同時に行うことができる。自動化を利用するいくつかの実施形態では、定量ポンプ又は真空供給源は、ロボット又は他の自動化システムによって取り付けられ得る。定量ポンプ又は真空供給源を戻り止め152で捕捉装置100に取り付けることにより、バルブ150が開放され、それによって、定量ポンプ又は真空供給源が捕捉装置100の本体101の内部空洞に連結される。
【0052】
ステップ502及び504の後、ステップ506において、定量ポンプ又は真空供給源を使用して、既知の体積の空気を捕捉装置100内に引き出す。空気を、捕捉装置100を通してポンプ又は真空供給源で引き出すことにより、空気が、捕捉装置100のキャピラリステージ110内に、捕捉装置のキャピラリステージ110を通って、捕捉装置の充填ステージ120内に、捕捉装置110の充填ステージ120を通って流される。換言すれば、ポンプ又は真空供給源の単一の作動により、空気が、捕捉システム100のキャピラリステージ110及び充填ステージ120の両方を通って流れるようにすることができる。サンプリングは、最大1週間以上の期間にわたって行うことができる。1日以上又は1週間超にわたってサンプリングすることにより、化学分析中に決定される様々な化合物のサンプリング期間にわたる平均濃度の分析を可能にする。リスク評価のために、長期間にわたる平均濃度は、一時的な低濃度又は高濃度のエピソード中であり得る迅速な収集よりも関連性が高い場合がある。自動化を利用するいくつかの実施形態では、定量ポンプ又は真空供給源を自動的に起動させて、既知の体積の空気を捕捉システム100内に引き出すように、所定の時間にわたって所定の速度で空気を捕捉システム100内に引き出すことができる。サンプリングが完了した後、定量ポンプ又は真空は捕捉システム100から除去される。自動化を利用するいくつかの実施形態では、定量ポンプ又は真空は、ロボット又は他の自動装置によって除去され得る。
【0053】
ステップ506で試料を収集した後、ステップ508において、エンクロージャ200のキャップ202を交換して、捕捉装置100のキャピラリステージ110のインレットをシールすることができる。定量ポンプ又は真空供給源を除去することもでき、捕獲装置100のバルブ150を閉鎖することができる。このようにして、捕捉装置100は、以下の図6に記載されるように、試料を収集し、化学分析を行っている間の期間中、外部環境からシールされる。自動化を利用するいくつかの実施形態では、捕捉装置100は、ロボット、オートサンプラ、又は他の自動装置を使用して、エンクロージャ200のキャップ202の位置に置かれ得る。例えば、捕捉中にキャップ202が捕捉装置100の下に保持されている場合、ロボットは、キャップ202に向かって捕捉システム100を低下させて、エンクロージャのキャップ202を交換することができる。
【0054】
図6は、本開示のいくつかの実施形態による、試料の化学分析を行う例示的なプロセス600を例示している。試料は、図1図4を参照して上に記載される捕捉装置100などの1つ以上の装置を使用し、かつ図5を参照して上に記載される方法500に従って、収集され得る。いくつかの実施形態では、方法600の1つ以上のステップを自動化することができる。例えば、試料調製レールロボットオートサンプラは、複数の試料調製装置のトレーから試料調製装置100を(例えば、戻り止め152によって試料調製装置100を把持することによって)持ち上げ、捕捉装置100を熱的脱着装置410内に置くことができる(例えば、以下に記載されるステップ604)。本方法の残りのステップは、化学分析システム400に動作可能に連結されたプロセッサによって制御され得る。分析が完了した後、ロボットオートサンプラは、脱着装置から捕捉装置100を除去し、捕捉装置100を他の捕捉装置と共にトレー内に再び置くことができる。
【0055】
ステップ602では、エンクロージャ200が、スリーブ202及びキャップ204の両方を含む捕捉装置100から除去される。エンクロージャ200を除去して、脱着ポート152及びキャピラリステージ110のインレットを開放することにより、キャリア流体及び1つ以上の化合物が捕捉装置100を通って流れることを可能にする。
【0056】
ステップ604では、捕捉装置100が、既に脱着ライナ300を包含する脱着装置410内に挿入される。この配列は、経時的な脱着装置410の汚染を排除しながら、GCカラムへの小容量の不活性流路を提供する。必要に応じて、並びに複数回の使用後に、脱着ライナ300を交換して、捕捉装置100から脱着装置410を通る新しい流路を提供することができる。
【0057】
ステップ606では、脱着装置410が予熱温度まで加熱される。予熱温度は、70~200℃の範囲であり得る。脱着装置410を加熱することにより、捕捉装置100内に包含された試料を加熱し、試料の化合物が、捕捉装置100内の収着剤(例えば、充填収着剤及びキャピラリカラムコーティング)から脱着し始めることを引き起こす。
【0058】
ステップ608では、スプリットポート438が開放される。スプリットポート438を開放することにより、捕捉装置100を通り、プレカラム422内へのキャリア流体及び捕捉された化合物の流量を増加させる。
【0059】
ステップ610では、脱着ポート434が開放されて、キャリア流体がキャリア流体供給源428から捕捉装置100へと送達される。ステップ608及び610は、任意の順序で行うことができるが、多くの場合、同時に行うことができる。
【0060】
ステップ611では、脱着装置410が脱着温度まで加熱される。脱着温度は、250~320℃の範囲である。脱着装置410を加熱することにより、捕捉装置100内に包含された試料を加熱し、試料の化合物が、捕捉装置100内の収着剤(例えば、充填収着剤及びキャピラリカラムコーティング)から脱着し続けることを引き起こす。ステップ611は、ステップ608~610の後に、又はステップ608~610と同時に行うことができる。いくつかの実施形態では、ステップ608~610の前に予熱を始めることができ、ステップ608~610は、脱着装置410が最終予熱温度に到達する前に行われ得る(例えば、加熱を開始し、次いで、加熱が継続している間にステップ608~610が行われる)。
【0061】
いくつかの実施形態では、1つ以上の化合物が捕捉装置100からプレカラム422に移送される間の期間の後に、ステップ612において、スプリットポート438が閉鎖される。スプリットポート438を閉鎖することにより、システム400は、プレカラム422からカラム424へ、そして検出器440内への全ての化合物のスプリットレス注入を行うことができる。スプリットレス注入を行うことにより、試料全体を分析することができ、検出器440は、低い濃度を有する、試料の化合物を検出することができる。いくつかの実施形態では、ステップ612は行われない。すなわち、いくつかの実施形態では、スプリットポート438は、プレカラム422からカラム424へのスプリット注入を行うために、開放されたままである。スプリット注入を行うことにより、高濃度の試料を分析する際に検出器440の飽和が防止される。
【0062】
ステップ614では、スプリットポート436を開放することにより、プレカラム422の内容物がカラム424に移送されている間、捕捉装置100内に残っている化合物をシステムから逃がすことができる。分割制御部454は、システム400からの、キャリア流体及び捕捉装置100からの任意の残りの化合物の流れを制御する。
【0063】
ステップ616では、ガスクロマトグラフ420が、250~330℃の範囲の温度まで徐々に加熱される。ステップ612、614、及び616は、任意の順序で、又は同時に行うことができる。ステップ612が行われない場合、ステップ614及び616は、任意の順序で、又は同時に行うことができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、ステップ618では、バイパスポート432を開放して、キャリア流体供給源428からカラム424へのキャリア流体の流れを導く。いくつかの実施形態では、ステップ618は行われない。特に、バイパスポート432により、スプリットポート436を通って後退する、依然としてプレカラム422上にある不要な非常に重い化合物のバックフラッシュを可能にし、GCを非常に高い温度まで加熱して、非常に重い化合物を溶出する必要性を防ぎ(GCカラムベークアウト中)、それによって、GCカラムの寿命を増加させることと同時に、分析の実行時間を低減し、それによって、研究所のスループットを改善することの両方を行うことができる。
【0065】
ステップ620では、検出器440は、カラム424から溶出する試料の分析を実施する。
【0066】
方法600のステップが完了した後、ガスクロマトグラフ420、脱着装置410、及び捕捉装置100は、高温で維持され、残っている任意の化合物を除去するためにベークアウトされる。ベークアウトの間、脱着ポート434及びスプリットポート436は開放される。捕捉装置100をベークアウトすることにより、残っている任意の化合物を除去して、残っている化合物が次の分析にキャリーオーバされることなく、再使用のために捕捉装置100を調製することができる。上に記載されるように、数回使用した後に、捕捉装置100のキャピラリステージ110及び/又は脱着ライナ300を交換して、捕捉装置100から脱着装置410を通って、プレカラム422内への新しい流路を作り出すことができる。
本開示の検出限界
【0067】
検出限界は、収集された空気の体積、及び検出器440の感度に依存する。最近、質量分析計により、1リットルの空気試料が、駆除剤、多環芳香族炭化水素(Poly Aromatic Hydrocarbon、PAH)、フタレート、内分泌攪乱物質、化学兵器剤(Chemical Warfare Agent、CWA)、ポリ塩化ビフェニル(Poly Chlorinated Biphenyl、PCB)、PCDD、PBDD、フェノール、空気中のTHC、及び他のカンナビノイド、並びに他の化学物質を含む化合物を、1~3部/兆(1-3 parts per trillion)まで分析するのに十分な定量的測定値を生成することができるような、市販のシステムの感度の大幅な増加が見られている。いくつかの状況では、0.01~10リットルの試料を収集することができる。例えば、1cc/分の速度で24時間サンプリングすることにより、システムは1.44リットルの試料を収集することができ、この速度で1週間サンプリングすることにより、システムは約10リットルの試料を収集することができる。選択的イオン監視(Selective Ion Monitoring、SIM)モード又はトリプルステージ四重極標的分析を使用して、更に10分の1(例えば、10又は1リットルの試料の収集に応じて、0.01~0.1部/兆)の検出限界が可能である。オービットトラップ型又は飛行時間型MS(Orbitrap or Time of Flight MS、TOF-MS)などの高位質量分析計は、高分解能、フルスキャン操作、及びスペクトルデコンボリューションを使用して、試料中の未知の化合物の標的定量的分析及び非標的定量的識別の両方を提供して、1リットルの試料を分析するときに0.1部/兆未満の濃度を報告することができる。
本開示の使用
【0068】
本開示の実施形態は、ガス相試料中のC4~C30の範囲の化合物の収集の精度及び容易さを改善する。特に、周囲空気及び室内空気中の化合物を、ポンプ又は他の定量装置を使用して収集して、捕捉システム100を通して既知の体積を引き出すことができる。これらの定量装置は、所望の時間積分の長さに応じて、様々な速度でトラップ内に空気を引き出すことができる。EPA方法8270及びTO13は、溶媒抽出を行う際に必要とされる体積と比較して、必要な体積の画分を使用して行われ得る。研究所ではなく、フィールドでの分析が、ますます重要になってきている。本開示の実施形態により、抽出装置及びドラフトチャンバなどの機器、並びに溶媒蒸気の環境への投棄を防止する大多数の領域の法律により、現在は高価な溶媒回収システムと共にセットアップされている固定された研究所を必要とする溶媒抽出技術とは異なり、フィールド内での分析が可能になる。化学分析中の溶媒の排除は、より環境に優しい技術を達成するという利点を有し、これはまた、研究所の職員にとっても安全である。この技術から利益を得ることができる他の試料タイプとしては、呼気分析器及び他の臨床技術、大容量静的ヘッドスペース分析器、臭気の収集及び識別、工業製品及び消費者製品からガス放出する化学物質の測定、並びに微量芳香及び香りの分析が挙げられる。より高い感度、及びより重い化合物のより完全な回収の両方を必要とする任意のGC又はGCMSの適用は、本開示の実施形態から利益を得ることになる。
【0069】
したがって、上記によれば、いくつかの実施形態では、捕捉システムは、キャピラリステージであって、キャピラリステージが、開放管状キャピラリカラムを備え、開放管状キャピラリカラムの内面が、収着剤によってコーティングされている、キャピラリステージと、充填ステージであって、充填ステージが、充填収着剤を備え、充填ステージが、キャピラリステージに流体連結されている、充填ステージと、本体であって、本体が、充填収着剤を包含する内部空洞、及び内部空洞に流体連結された脱着ポート、を備える、本体と、捕捉システムの本体に取り付けられたバルブと、を備え、バルブは、本体の開口部をポンプに、ポンプがバルブに取り付けられているときに、流体連結するように構成されており、本体の開口部は、本体の脱着ポートとは異なる。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、充填収着剤は、第1の充填収着剤及び第2の充填収着剤を含み、捕捉システムは、第1の充填収着剤と第2の充填収着剤との間にスクリーンを更に備える。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムは、捕捉システムの環境から捕捉システムを隔離する隔離エンクロージャ内に挿入されるように構成される。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、脱着ポートは、捕捉システムからの試料の脱着中にキャリア流体を受容するように構成される。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムからの試料の脱着中に、第1の化合物は、キャピラリステージから脱着され、第2の化合物は、充填ステージから脱着され、キャリア流体を受容することにより、第1の化合物が、キャピラリステージからプレカラム内へと流され、キャリア流体を受容することにより、第2の化合物が、充填ステージからキャピラリステージを通って、プレカラム内へと流される。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、バルブは、バルブに対する第2の力がない状態でバルブを閉鎖する第1の力を加えるばねを備え、ポンプは、ポンプがバルブに取り付けられているときに第2の力を加える。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムは、第1の保持スクリーンと、第2の再訓練スクリーンと、を含み、充填収着剤は、第1の保持スクリーンと第2の保持スクリーンとの間に配置され、充填収着剤は、第1の保持スクリーン及び第2の保持スクリーンと接触する。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、開放管状キャピラリカラムは、除去され、第2の開放管状キャピラリカラムと交換されるように構成されており、1つ以上の粒子は、開放管状キャピラリカラムに付着し、開放管状キャピラリカラムを除去すると、1つ以上の粒子が除去される。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムは、可搬性であり、捕捉システムで試料を収集することは、試料の分析が行われる分析場所とは異なるサンプリング場所に捕捉システムを輸送することを含む。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムによって捕捉された試料の分析は、完全に又は部分的に自動化されている。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムによる試料の収集は、1時間~1週間に及ぶ期間にわたって完全に又は部分的に自動化されている。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、キャピラリステージは、捕捉システムによって収集された1つ以上の粒子を保持し、1つ以上の粒子は、充填ステージに移送されない。
【0070】
いくつかの実施形態では、化学分析用に試料を捕捉するための方法は、ポンプを使用して捕捉システムを通して試料を引き出すことであって、試料が、第1の化合物及び第2の化合物を含み、捕捉システムが、キャピラリステージ及び充填ステージを備え、ポンプを使用してガス試料を引き出すことが、第1の化合物及び第2の化合物を捕捉システムのキャピラリステージ内へと引き出すことであって、キャピラリステージが、開放管状キャピラリカラムを備え、開放管状キャピラリカラムの内面が、収着剤によってコーティングされている、引き出すことと、第1の化合物を捕捉システムのキャピラリステージ内で捕捉することと、第2の化合物を捕捉システムの充填ステージ内に引き出すことであって、充填ステージが、充填収着剤を含む、引き出すことと、第2の化合物を捕捉システムの充填ステージ内で捕捉することと、を含み、捕捉システムは、本体を備え、本体は、充填収着剤を包含する内部空洞、及び内部空洞に流体連結された脱着ポート、を備え、捕捉システムを通してガス試料を引き出すことは、ポンプを、捕捉システムの本体に取り付けられたバルブに取り付けることを含み、ポンプをバルブに取り付けることにより、バルブがポンプを本体の開口部に流体連結させ、本体の開口部は、本体の内部空洞に流体連結され、本体の開口部は、本体の脱着ポートとは異なる。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、充填収着剤は、第1の充填収着剤及び第2の充填収着剤を含み、捕捉システムは、第1の充填収着剤と第2の充填収着剤との間にスクリーンを更に備える。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、本方法は、捕捉システムを通してガス試料を引き出した後に、捕捉システムを、捕捉システムの環境から捕捉システムを隔離する隔離エンクロージャ内に挿入することを更に含む。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、脱着ポートは、捕捉システムからの試料の脱着中にキャリア流体を受容するように構成される。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、本方法は、捕捉システムからの試料の脱着中に、キャピラリステージから第1の化合物を脱着させることと、充填ステージから第2の化合物を脱着させることと、を更に含み、キャリア流体を受容することにより、第1の化合物が、キャピラリステージからプレカラム内へと流され、キャリア流体を受容することにより、第2の化合物が、充填ステージからキャピラリステージを通って、プレカラム内へと流される。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、バルブは、バルブに対する第2の力がない状態でバルブを閉鎖する第1の力を加えるばねを備え、ポンプは、ポンプがバルブに取り付けられているときに第2の力を加える。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムは、第1の保持スクリーンと、第2の再訓練スクリーンと、を更に備え、充填収着剤は、第1の保持スクリーンと第2の保持スクリーンとの間に配置され、充填収着剤は、第1の保持スクリーン及び第2の保持スクリーンと接触する。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、本方法は、開放管状キャピラリカラムを除去し、開放管状キャピラリカラムを第2の開放管状キャピラリカラムと交換することを更に含み、1つ以上の粒子は、開放管状キャピラリカラムに付着し、開放管状キャピラリカラムを除去すると、1つ以上の粒子が除去される。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムは、可搬性であり、捕捉システムで試料を捕捉することは、試料の分析が行われる分析場所とは異なるサンプリング場所に捕捉システムを輸送することを含む。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムによって捕捉された試料の分析は、完全に又は部分的に自動化されている。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、捕捉システムによる試料の収集は、1時間~1週間に及ぶ期間にわたって完全に又は部分的に自動化されている。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、キャピラリステージは、捕捉システムによって収集された1つ以上の粒子を保持し、1つ以上の粒子は、充填ステージに移送されない。
【0071】
添付の図面を参照して実施例を完全に説明してきたが、様々な変更及び修正が当業者には明らかとなることに留意されたい。かかる変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の実施例の範囲内に含まれるものとして理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6