(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/06 20060101AFI20221013BHJP
【FI】
B66B7/06 F
(21)【出願番号】P 2021506086
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011685
(87)【国際公開番号】W WO2020188787
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】西野 隆博
(72)【発明者】
【氏名】金山 泰裕
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-020481(JP,A)
【文献】実開平02-109593(JP,U)
【文献】実開昭61-195088(JP,U)
【文献】特公昭54-013889(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0163010(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0009635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する乗りかごと、
昇降路内を乗りかごとは反対方向に昇降する釣合おもりと、
一端が前記釣合おもりの下部に接続され、他端が前記乗りかごの下部に接続されて吊り下げられる補償索と、
前記補償索の他端側を支持する補償索支持部材と、
前記補償索支持部材を移動可能に支持する補償索吊り位置調整ブラケットを備え、
前記補償索吊り位置調整ブラケットは、前記補償索支持部材を係合する複数の調整窪みを有し、
前記補償索支持部材は、弾性体の一端が固定されており、前記弾性体の他端は前記調整窪みよりも上方に固定され、前記弾性体の自然長時に弾性体の一端が前記乗りかごの中心近傍となり、
前記調整窪みは
、前記乗りかごの下部に設けられ、前記弾性体の前記乗りかごへの固定側とは反対側の底面にR部を有することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーター装置において、
前記複数の調整窪みは、所定の間隔にて並んで配されることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベーター装置において、
前記
補償索吊り位置調整ブラケットは、前記補償索支持部材を支持し、前記調整窪みよりも上方に固定される前記弾性体の固定側にはい上がり防止部材を有することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3
のうち、いずれか1項に記載のエレベーター装置において、
前記補償索吊り位置調整ブラケットは、前記
調整窪みの下部に設けられ、前記補償索の吊り位置である前記補償索支持部材の位置を検知する吊り位置変更検出装置を備えることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のエレベーター装置において、
前記補償索
は、乗りかご側端部が有する補償索鎖部の鎖穴を通して前記補償索支持部材により支持されることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項6】
請求項
1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載のエレベーター装置において、
前記
調整窪みは鉛直方向に窪み、前記補償索支持部材は調整窪みの前記R部を滑ることで、一の調整窪みから他の調整窪みに係合することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項7】
請求項1
又は請求項2に記載のエレベーター装置において、
前記調整窪みは
水平方向に窪み、前記補償索支持部材は一の調整窪みから他の調整窪みに係合することを特徴とするエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンペンチェーン又はコンペンケーブル等の補償索が乗りかごと釣合おもりとの間に吊り下げられているエレベーター装置に係り、乗りかご側補償索吊り位置を調整可能とするエレベーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーター装置において乗りかご底部の懸架機構により補償索吊り位置を調整する方式が知られていた。
例えば、特許文献1には、昇降路内を昇降するかご、昇降路内をかごとは反対方向へ昇降する釣合おもり、水平方向へ移動可能にかごに接続されているかご接続部と、釣合おもりに接続されている釣合おもり接続部とを有し、かご及び釣合おもりから昇降路内に吊り下げられているコンペンセーティング体、昇降路の底部へのかごの衝突の衝撃を緩和するかご緩衝器、及びかごが昇降路の下部の基準位置に達すると、かご接続部を水平方向へ移動させて、かご緩衝器の全圧縮時に、前記昇降路の底部に設定されている退避スペースにコンペンセーティング体が干渉するのを防止する干渉防止装置を備えたエレベーター装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、エレベーター装置では昇降路のピット内に退避スペース確保を要求されることがある。一方、乗りかごへの偏荷重を小さくするため、乗りかご底部の中央付近から補償索が吊り下げられており、昇降路のピット内に設定された退避スペースに補償索が侵入する可能性がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるような干渉防止装置を備えたエレベーター装置においては、乗りかご緩衝器の全圧縮時に吊り位置を水平移動させる構造であるため、昇降路のピット内保守点検作業時における退避スペースの確保を担保できない問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、昇降路のピット内の退避スペースへの補償索の侵入を防止し得るエレベーター装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るエレベーター装置は、昇降路内を昇降する乗りかごと、昇降路内を乗りかごとは反対方向に昇降する釣合おもりと、一端が前記釣合おもりの下部に接続され、他端が前記乗りかごの下部に接続されて吊り下げられる補償索と、前記補償索の他端側を支持する補償索支持部材と、前記補償索支持部材を移動可能に支持する補償索吊り位置調整ブラケットを備え、前記補償索吊り位置調整ブラケットは、前記補償索支持部材を係合する複数の調整窪みを有し、前記補償索支持部材は、弾性体の一端が固定されており、前記弾性体の他端は前記調整窪みよりも上方に固定され、前記弾性体の自然長時に弾性体の一端が前記乗りかごの中心近傍となり、前記調整窪みは、前記乗りかごの下部に設けられ、前記弾性体の前記乗りかごへの固定側とは反対側の底面にR部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、昇降路のピット内の退避スペースへの補償索の侵入を防止し得るエレベーター装置を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例に係る実施例1のエレベーター装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す補償索吊り位置調整機構の構成を示す正面図である。
【
図3】
図1に示す補償索吊り位置調整機構の構成を示す上面図である。
【
図4】
図1に示すエレベーター装置の通常運転時における状態を示す正面図である。
【
図5】
図1に示すエレベーター装置の保守点検作業時における状態を示す正面図である。
【
図6】本発明の他の実施例に係る実施例2の補償索吊り位置調整機構の構成を示す正面図である。
【
図7】本発明の他の実施例に係る実施例3の補償索吊り位置調整機構の構成を示す正面図である。
【
図8】本発明の他の実施例に係る実施例3の補償索吊り位置調整機構の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係る実施例1のエレベーター装置の概略構成図である。
図1に示すように、主索1は、エレベーター上部において巻上機の綱車2およびそらせ車3に掛けられている。主索1は、昇降路内において、一端が乗りかご4の上部に、他端が釣合おもり5の上部に接続されている。巻上機の駆動力は、乗りかご4をガイドレール6に沿って昇降路内で昇降させ、同時に釣合おもり5は乗りかご4とは反対方向に昇降路内を昇降する。
【0012】
昇降路のピット100の内部には、一部分の空間が退避スペース7として設定されている。退避スペース7は、ピット100の内部での保守点検作業時における作業員の安全性を保障する直方体の空間である。
【0013】
補償索吊り位置調整機構8を介して乗りかご4の下部に取り付けられている補償索9は、他端が釣合おもり5の下部に接続されている。補償索9は、乗りかご4および釣合おもり5の下部から吊り下げられており、乗りかご4と釣合おもり5の位置関係による主索1の重量比や、乗りかご4にかかる荷重の違いによる影響を補償する。補償索吊り位置調整機構8は、昇降路内のピット100から補償索9の吊り位置を調整することが可能な構造となっており、保守点検作業前に補償索9の吊り位置を手動で調整できるので、任意の乗りかご位置における補償索9の退避スペース7への侵入防止が可能である。
【0014】
図2は、補償索吊り位置調整機構8の構成を示す正面図である。
図2に示すように、乗りかご4の下部に取り付けられた2つの固定用ブラケット10には、L字型に曲げ加工された補償索吊り位置調整ブラケット11が固定されている。補償索吊り位置調整ブラケット11は、補償索9の吊り位置を調整するために一定間隔で乗りかご4の下部に設けられた複数の調整窪み12a、調整窪み12bおよび調整窪み12cと、調整窪み12a、調整窪み12bおよび調整窪み12cにおける弾性体15の固定側にはい上がり防止部材20を有している。また調整窪み12a、調整窪み12bおよび調整窪み12cは、弾性体15の反固定側の底面にR部を有しており、フックのような構造となっている。
【0015】
複数の連続した調整窪み12a、調整窪み12b、および調整窪み12cの内、乗りかご4の中心に最も近い調整窪み12aは、エレベーターの通常運転時における補償索9の吊り位置である。エレベーターの通常運転時においては、調整窪み12aには補償索支持部材13が係合している。補償索支持部材13には、補償索9の乗りかご側端部が有する補償索鎖部14が固定されているため、補償索支持部材13を支点に補償索9が吊り下がっており、補償索9のもう一端は釣合おもりに接続されている。昇降路のピット100内保守点検作業時において、作業員は補償索9を介して補償索支持部材13を水平方向に引張り、補償索吊り位置調整ブラケット11の調整窪み12bまたは調整窪み12cに引掛け直すことで、乗りかご側の補償索9の吊り位置の調整を可能とする。
【0016】
また、補償索支持部材13は乗りかご4の中心近傍に配置された弾性体15の一端を有しており、換言すれば、補償索支持部材13には、乗りかご4の中心近傍に配置された弾性体15の一端が固定されている。よって、弾性体15の他端を乗りかご4の下部に固定することで、補償索支持部材13は弾性体15により乗りかご4の中心方向へ常に張力が与えられる。弾性体15による張力は、補償索吊り位置調整ブラケット11のはい上がり防止部材20にて補償索支持部材13を固定し動作を制限するため、エレベーター運転の振動による補償索支持部材13の振動抑制を可能とする。加えて、昇降路のピット100内作業員が補償索9を水平方向に引っ張ることで、弾性体15によって与えられる調整窪み12より上方への張力のために、補償索支持部材13は補償索吊り位置調整ブラケット11の調整窪み12の窪み面R部を滑るような動作が可能となる。よって、補償索吊り位置調整ブラケット11からの補償索支持部材13の離脱を助長し、手動による補償索9の吊り位置復帰作業が容易となる。このとき、調整窪み12は乗りかご4の底部に平行に並んで設けられているため、補償索支持部材13の移動経路長が最短となり、弾性体15の張力を最低限で済ませることができる。
【0017】
さらに、補償索吊り位置調整ブラケット11の同一高さに設けられた複数の調整窪み12a、調整窪み12b、および調整窪み12cによって、補償索支持部材13の固定高さは吊り位置によらず一定となるため、昇降路のピット100の底面や退避スペース7への補償索9の侵入を防止する。
【0018】
図3は、
図1に示す補償索吊り位置調整機構8の構成を示す上面図である。
図3に示すように、左右2つの固定用ブラケット10に対して、補償索吊り位置調整ブラケット11は、補償索9の寸法に合わせて狭めた間隔にて2つ取り付けられている。2つの補償索吊り位置調整ブラケット11の間からは補償索9が吊り下げられており、補償索9の他端は釣合おもり5へと接続されている。
補償索支持部材13は、2つの補償索吊り位置調整ブラケット11にて両端が支持されており、2つの補償索吊り位置調整ブラケット11の間にて補償索支持部材13の乗りかご4の中心方向に弾性体15が接続され、乗りかご4の中心方向に張力が与えられている。また、補償索支持部材13は、部材両端に外れ止め16を備えており、補償索吊り位置調整ブラケット11からの脱落を防止する。さらに、2つの補償索吊り位置調整ブラケット11の間隔に伴い補償索支持部材13の長さも短くなり、昇降路のピット100内から補償索9を引っ張ることにより与えられる補償索支持部材13への引張り力に対する補償索支持部材13のモーメントが小さくなるため、昇降路のピット100内からの容易な補償索支持部材13の移動が可能となる。
【0019】
図4は、
図1に示すエレベーター装置の通常運転時の状態を示す正面図である。
図4に示すように、エレベーター装置の通常運転時においては、固定用ブラケット10によって乗りかご下部17に取り付けられている補償索吊り位置調整ブラケット11は、乗りかご4の中心近傍にて補償索支持部材13を固定している。このとき、乗りかご下部17とは、補償索吊り位置調整機構8も含めた乗りかご4の底部全体を指す。補償索9の補償索鎖部14は補償索支持部材13に固定されており、補償索支持部材13を支点に、退避スペース7へ侵入しつつピット100内へ吊り下がり、補償索9の他端がガイドレール6に沿って釣合おもり5に接続されている。このとき、補償索9の異なる補償索鎖部14を補償索支持部材13に固定することで、補償索9の吊り長さ調整を可能とする。
【0020】
乗りかご下部17の乗りかご側補償索端部固定部材18は、補償索吊り位置調整ブラケット11の乗りかご4の中心近傍に設けられている。補償索支持部材13と乗りかご側補償索端部固定部材18との間の補償索鎖部14の長さは、保守点検時において作業員が昇降路のピット100内から補償索9の吊り位置を調整する場合にも突っ張らない程度の余裕を持たせている。
【0021】
図5は、
図1に示すエレベーター装置の保守点検作業時における状態を示す正面図である。
図5に示すように、補償索支持部材13は、補償索9の補償索鎖部14を介して昇降路のピット100内作業員に引っ張られることで、乗りかご下部17に取り付けられている補償索吊り位置調整ブラケット11の窪み面を滑りながら移動するため、乗りかご4の中心に最も近い調整窪み12aから離脱し、補償索吊り位置調整ブラケット11の上端面に乗る。その状態から、昇降路のピット100内作業員が補償索9を介して更に補償索支持部材13を引っ張ることで、補償索支持部材13は補償索吊り位置調整ブラケット11の上端面を滑るように移動し、補償索吊り位置調整ブラケット11の他の調整窪み12cに引っ掛かり固定される。このとき、乗りかご側補償索9の吊り位置の変更により、乗りかご側補償索端部固定部材18の位置は変わらないことから、補償索9の下端がより屈曲し、補償索9の退避スペース7への侵入を回避しつつ、ガイドレール6に沿って釣合おもり5の下部に接続される。
【0022】
また、昇降路のピット100内保守点検作業が終了した際、補償索9を介して補償索支持部材13に引張力を与えることで、補償索支持部材13と調整窪み12cとの係合を解除し、補償索吊り位置調整ブラケット11の上面に補償索支持部材13が乗る。このとき、補償索支持部材13は乗りかご4の中心方向へ弾性体15による張力が与えられているため、補償索9への引張力を除去することで、弾性体15は自然長に戻るよう弾性力を発揮し、補償索支持部材13は自然と乗りかご4の中心方向へ移動する。そして、昇降路のピット100内作業者は、補償索9を介して補償索支持部材13に引張力を与えることで、補償索支持部材13と調整窪み12aとを係合させ、
図4に示した通常運転時の状態に戻すことができる。
【0023】
なお本実施例では、補償索9の下端高さを統一させるために、補償索吊り位置調整ブラケット11が有する調整窪み12を、乗りかご4の中心から水平方向に遠ざかる程高くなるように設けても良い。また、本実施例では、調整窪みを、調整窪み12a、調整窪み12b、および調整窪み12cの三箇所に設ける構成としたが、これに限られず、調整窪み数は適宜設けて良い。
【0024】
以上の通り本実施例によれば、昇降路のピット内の退避スペースへの補償索の侵入を防止し得るエレベーター装置を提供することができる。
また、本実施例によれば、昇降路のピット内の保守点検作業時において、補償索の吊り位置を昇降路のピット内から手動で調整することが可能となる。
【実施例2】
【0025】
図6は、本発明の他の実施例に係る実施例2の補償索吊り位置調整機構の構成を示す正面図である。本実施例では、固定用ブラケット10によって取り付けられている補償索吊り位置調整用ブラケット11の調整窪み12a、調整窪み12bおよび調整窪み12cの下部に吊り位置変更検出装置19a、吊り位置変更検出装置19bおよび吊り位置変更検出装置19cをそれぞれ設ける点が実施例1と異なる。その他の構成は、上述の実施例1と同様であり、以下では、実施例1と同一の構成要素に同一符号を付し、実施例1と重複する説明を省略する。
【0026】
図6に示すように、補償索吊り位置調整用ブラケット11の調整窪み12a、調整窪み12bおよび調整窪み12cの下部に設けられた吊り位置変更検出装置19a、吊り位置変更検出装置19bおよび吊り位置変更検出装置19cは押釦を有している。調整窪み12a、調整窪み12bおよび調整窪み12cと係合している補償索支持部材13の下端が押釦を押下可能な位置および高さに吊り位置変更検出装置19a、吊り位置変更検出装置19bおよび吊り位置変更検出装置19cを固定する。補償索支持部材13が固定されている状態にある調整窪み12a、調整窪み12bまたは調整窪み12c下部の吊り位置変更検出装置19a、吊り位置変更検出装置19bまたは吊り位置変更検出装置19cは、弾性体15の張力により常に押釦が押下されている状態となり、それ以外の吊り位置変更検出装置19a、吊り位置変更検出装置19bまたは吊り位置変更検出装置19cの押釦は押下されていない。例として、乗りかご4の中心に最も近い調整窪み12a下部の吊り位置変更検出装置19aの押釦が押下されている時は、補償索9が通常の吊り位置になるよう補償索鎖部14が固定されていることを吊り位置変更検出装置19aの押釦が検知し、エレベーター装置に通常運転を可能とさせる。一方で、補償索9の吊り位置変更時における調整窪み12bあるいは調整窪み12c下部の吊り位置変更検出装置19bあるいは吊り位置変更検出装置19cの押釦が押下されている場合は、補償索9の吊り位置変更を吊り位置変更検出装置19bあるいは吊り位置変更検出装置19cの押釦が検知し、エレベーター装置の通常運転を不可とさせる。上記により、保守点検作業終了時において、補償索9の吊り位置を作業員が戻し忘れないよう防止することができる。
【0027】
なお、調整窪みを、調整窪み12a、調整窪み12b、および調整窪み12cの三箇所に設ける構成としたが、これに限られず、調整窪み数は適宜設けて良い。吊り位置変更検出装置についても同様である。
【0028】
以上の通り本実施例によれば、実施例1の効果に加え、作業員による補償索9の吊り位置の戻し忘れを防止することが可能となる。
【実施例3】
【0029】
図7は、本発明の他の実施例に係る実施例3の補償索吊り位置調整機構の構成を示す正面図であり、
図8は、実施例3の補償索吊り位置調整機構の構成を示す上面図である。本実施例では、補償索吊り位置調整ブラケット11が、平板に穴が開いた構造となっており、水平方向に調整窪み12aおよび調整窪み12bを有する点が実施例1と異なる。その他の構成は、上述の実施例1と同様であり、以下では、実施例1と同一の構成要素に同一符号を付し、実施例1と重複する説明を省略する。
【0030】
図7および
図8に示すように、補償索支持部材13は、頂部に外れ止め16を有しており、補償索9が有する補償索鎖部14を支持しつつ、調整窪み12aにて補償索吊り位置調整ブラケット11と係合している。また、補償索支持部材13は、前記外れ止め16の上部にて弾性体15と接続しており、調整窪み12aの窪み方向に張力が与えられている。保守点検時において、作業員が補償索9を介して補償索支持部材13を引っ張ることで、補償索支持部材13は調整窪み12aを離脱する。その状態から更に補償索支持部材13を引っ張ると、補償索支持部材13は調整窪み12bにて固定され、補償索9の吊り位置が調整可能となるため、補償索9は退避スペース7への侵入を回避しつつ、ガイドレール6に沿って釣合おもり5の下部に接続される。このとき、昇降路のピット100内作業員は、モーメントによる回転運動に打ち勝つ並進運動を生む引張力を補償索9に与える必要がある。加えて、補償索支持部材13と補償索吊り位置調整ブラケット11との接触面積増加により摩擦力も大きくなる。一方で、上述の実施例1よりも少ない部品点数にて、補償索9の吊り位置調整を可能とする。
【0031】
なお、調整窪みを、調整窪み12aおよび調整窪み12bの二箇所に設ける構成としたが、これに限られず、調整窪み数は適宜設けて良い。
【0032】
以上の通り本実施例によれば、少ない部品点数にて補償索の吊り位置調整が可能となる。
【0033】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…主索、2…綱車、3…そらせ車、4…乗りかご、5…釣合おもり、6…ガイドレール、7…退避スペース、8…補償索吊り位置調整機構、9…補償索、10…固定用ブラケット、11…補償索吊り位置調整ブラケット、12a,12b,12c…調整窪み、13…補償索支持部材、14…補償索鎖部、15…弾性体、16…外れ止め、17…乗りかご下部、18…乗りかご側補償索端部固定部材、19a,19b,19c…吊り位置変更検出装置、20…はい上がり防止部材、100…ピット