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特許7157880靴、特に運動靴、及び該靴を作製する方法
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  • 特許-靴、特に運動靴、及び該靴を作製する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-12
(45)【発行日】2022-10-20
(54)【発明の名称】靴、特に運動靴、及び該靴を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/04 20060101AFI20221013BHJP
   A43B 13/18 20060101ALI20221013BHJP
【FI】
A43B13/04 A
A43B13/18
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021532437
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2018085712
(87)【国際公開番号】W WO2020125963
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】Puma Way 1,91074 Herzogenaurach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン、マティアス
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-536707(JP,A)
【文献】特表2018-535767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0338573(US,A1)
【文献】特表2015-513354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0150855(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00-23/30
A43C 1/00-19/00
A43D 1/00-999/00
B29D 35/00-35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴アッパー(2)及び該靴アッパー(2)と接続されるソール部(3)を有する靴(1)であり、前記ソール部(3)は、底領域(5)及び側壁領域(6)を有するソール本体(4)を含み、前記底領域(5)と前記壁領域(6)は、上部で開口する受容室(7)を形成し、前記受容室(7)を、バルク材(8)で充填し、前記バルク材(8)は、少なくとも部分的に熱可塑性エラストマー(TPE)から成り、前記充填した受容室(7)を、閉鎖体(9)によって密閉し、前記閉鎖体(9)は、格子構造物を形成する編織布である、靴(1)であって、
前記閉鎖体(9)の前記格子構造物は、少なくとも0.75mm及び最大で2.0mmのメッシュ幅(w1、w2)を有し、球形又は楕円球形の物体を、バルク材(8)として使用し、3つの空間方向における前記バルク材(8)の前記物体の寸法は、3mm~6mmであり、前記閉鎖体(9)は、その縁部領域に補強層(13)を備え、前記補強層(13)は、前記閉鎖体(9)の全周領域周りに走り、補強板(10)を、前記ソール本体(4)の底領域(5)に配置する構成において、
前記補強層(13)を、接着フィルムによって形成する
ことを特徴とする、靴。
【請求項2】
前記閉鎖体(9)の前記格子構造物の前記メッシュ幅(w1、w2)は、前記閉鎖体(9)の範囲に亘り全体的に一定であることを特徴とする、請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記閉鎖体(9)を、平坦な織布構造物として設計することを特徴とする、請求項1又は2に記載の靴。
【請求項4】
前記織布構造物は、からみ織布であることを特徴とする、請求項3に記載の靴。
【請求項5】
繊維強化糸により前記織布構造物を形成することを特徴とする、請求項3又は4に記載の靴。
【請求項6】
通気性及び透湿性膜を、前記閉鎖体(9)の上及び/又は下に配置することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の靴。
【請求項7】
前記閉鎖体(9)を、前記ソール本体(4)に、直接又は間接的に接着及び/又は縫着することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の靴。
【請求項8】
前記靴アッパーを、前記ソール部(3)に接着及び/又は縫着することを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の靴。
【請求項9】
前記靴アッパー(2)は、底部でストローベルソール(12)と縫着されるアッパー部(11)を有することを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の靴。
【請求項10】
前記バルク材(8)の前記物体を、中空体として設計することを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の靴。
【請求項11】
前記バルク材(8)の前記物体は、発泡熱可塑性エラストマーから成ることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の靴。
【請求項12】
前記バルク材(8)の前記物体は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリアミド(TPA)、及び/又はオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)から成り、前記材料を膨張させることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の靴。
【請求項13】
周枠(16)を、前記ソール本体(4)の前記壁領域(6)の上端領域に配置し、該枠を前記ソール本体(4)に、接続し、前記枠(16)は、前記閉鎖体(9)に対する支え面(17)を有することを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の靴。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の靴(1)を製造する方法であって、該方法は:
a)靴アッパー(2)を製造するステップ;
b)ソール部(3)を作製するステップであって:
b1)底領域(5)及び側壁領域(6)を有するソール本体(4)を提供するステップであって、前記底領域(5)と前記壁領域(6)は、上部が開口した受容室(7)を形成する、ステップ;
b2)バルク材(8)で前記受容室(7)を充填するステップであって、前記バルク材は、少なくとも部分的に熱可塑性エラストマー(TPE)から成り、球形又は楕円球形の物体を、バルク材(8)として使用し、3つの空間方向における前記バルク材(8)の前記物体の寸法は、3mm~6mmである、ステップ;
b3)前記充填した受容室(7)を閉鎖体(9)で閉鎖するステップであって、使用する前記閉鎖体(9)は、格子構造物を形成する編織布であり、前記格子構造物は、0.75mm~2.0mmのメッシュ幅(w1、w2)を有し、前記閉鎖体(9)は、その縁部領域に接着フィルムによって形成する補強層(13)を備え、前記補強層(13)は、前記閉鎖体(9)の全周領域周りに走り、補強板(10)を、前記ソール本体(4)の底領域(5)に配置する、ステップ;
から成る、前記ソール部(3)の作製ステップ;
c)前記靴アッパー(2)の下側領域が、前記閉鎖体(9)上に載置されるように、前記靴アッパー(2)を前記ソール部(3)に固定するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴アッパー及び該靴アッパーと接続されるソール部を有する靴、特に運動靴であり、ソール部は、底領域及び側壁領域を有するソール本体を含み、底領域と壁領域は、上部で開口する受容室を形成し、受容室を、バルク材で充填し、バルク材は、少なくとも部分的に、好適には完全に、熱可塑性エラストマー(TPE)から成り、充填した受容室を、閉鎖体によって密閉閉鎖体は、格子構造物を形成する編織布である、靴に関する。本発明は、更に、かかる靴を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な種類の靴は、米国特許出願公開第2016/0007675(A1)号(特許文献1)から既知である。同様の解決手段が、米国特許出願公開第2009/0313853号(A1)(特許文献2)及び米国特許第5617650号(A)(特許文献3)に示されている。
【0003】
同種の靴は、国際公開第2017/097315(A1)号(特許文献)から既知である。発泡プラスチック球体を、空洞を有するソール要素内に配置し、閉鎖要素によって該空洞内に保持する。こうして作製したソールを、靴のアッパー部分に接続する。この場合、閉鎖要素を、着用者の足が、空洞内にある緩いプラスチック球体を感じられるフィルムで形成する。
【0004】
しかしながら、この解決手段では、時々、靴の履き心地が、この種の閉鎖要素で悪影響を受けることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2016/0007675(A1)号
【文献】米国特許出願公開第2009/0313853(A1)号
【文献】米国特許第5617650(A)号
【文献】国際公開第2017/097315(A1)号
【文献】国際公開第2005/066250(A1)号
【文献】国際公開第2010/010010(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、本発明は、履き心地を更に向上できるような方法で、上記種類の靴を開発するという目的に基づいている。それと同時に、靴を製造するための経済的な工程も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるこの目的の解決手段は、格子構造物が、少なくとも0.75mm及び最大2.0mmのメッシュ幅を有し、球形又は楕円球形の物体を、バルク材として使用し、3つの空間方向におけるバルク材の物体の寸法は、3mm~6mmであり、閉鎖体は、その縁部領域に補強層を備え、補強層は、閉鎖体の全周領域周りを走り、補強板を、ソール本体の底領域に配置することを特徴とする。それに関して、閉鎖体の格子構造物のメッシュ幅を、閉鎖体の範囲に亘り全体的に一定とするのが好ましい。
【0008】
従って、既知の解決手段とは対照的に、ソール本体の空洞を閉鎖するのに、及び該空洞内に存在するバルク材の粒子を保持するのに、ホイルや伝統的な織物材料を全く使用せずに、メッシュ幅が、最小値以下にならない(また、最大値も超えない)碁盤目状の構造物を使用する。
【0009】
緩く配置した、特に発泡プラスチック球体の粒子を有する靴の一般的な設計で、特に快適な着用感をこのように実現できることが分かっている。
【0010】
閉鎖体を、好適には、平坦な織布構造物として設計する。からみ織の形の織成構造物は、この点で特に有効であることが証明されている。かかるからみ織布では、長手方向に延伸する複数の横糸を設ける;複数の縦糸が、横糸と直交して延伸する。縦糸を、横糸に巻回して、織布の強度を高くしている。
【0011】
好適には、織布構造物を、繊維強化糸によって形成する。
【0012】
通気性及び透湿性膜を、閉鎖体の上及び/又は下に配置してもよい。この文脈において、ここだけでなく、本明細書を通して、「下」方向及び「上」方向は、靴底を地面に付けて立っているときの靴を参照していることを、言及しておく。
【0013】
閉鎖体を、ソール本体に、直接又は間接的に接着及び/又は縫着してもよい。
【0014】
本発明によると、補強板を、ソール本体の底領域に配置する。補強板は、ソール構造物を補強して、ヒケを防ぐ被覆層を形成する。
【0015】
靴アッパーを、ソール部に接着及び/又は縫着してもよい。
【0016】
靴アッパーは、好適には、底部でストローベルソールに縫合するアッパー部分を有する。
【0017】
上記補強層を、接着フィルムによって形成できる。補強層は、閉鎖体の全周領域周りに、0.5cm~2.5cmの幅を有する縁継目部として走ることが好ましい。
【0018】
ルク材の物体を、中空体としても形成できる。格子構造物のメッシュ幅は、バルク材の物体の寸法より小さくするものとする
【0019】
バルク材の物体は、好適には、発泡熱可塑性エラストマーから成る。特に、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリアミド(TPA)、及び/又はオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)で、上記材料を、特に膨張(発泡)させたものが、ここでは考えられる。
【0020】
本発明の更なる極めて好適な実施形態では、周枠を、ソール本体の壁領域の上端領域に配置し、該枠をソール本体に、接続、特に接着し、その場合、該枠は、閉鎖体に対して、特に枠の縁領域に、座面を有するものとする。かかる設計で、閉鎖体は、もう片方のソール要素に安定して接続できると共に、縁領域に画成された座面を有することも実現できる。
【0021】
提案するかかる靴を製造する方法は:
a)靴アッパーを製造するステップ;
b)ソール部を作製するステップであって:
b1)底領域及び側壁領域を有するソール本体を提供するステップであって、上記底領域と上記壁領域は、上部が開口した受容室を形成する、ステップ;
b2)バルク材で受容室を充填するステップであって、バルク材は、少なくとも部分的に、好適には、完全に熱可塑性エラストマー(TPE)から成り、球形又は楕円球形の物体を、バルク材として使用し、3つの空間方向におけるバルク材の物体の寸法は、3mm~6mmである、ステップ;
b3)充填した受容室を閉鎖体で閉鎖するステップであって、使用する閉鎖体は、格子構造物を形成する編織布であり、格子構造物は、0.75mm~2.0mmのメッシュ幅を有し、閉鎖体は、その縁部領域に補強層を備え、補強層は、閉鎖体の全周領域周りを走り、補強板を、ソール本体の底領域に配置する、ステップ;
から成る該ソール部の作製ステップ;
c)靴アッパーの下側領域が、閉鎖体上に載置されるように、靴アッパーをソール部に固着するステップ
を含む。
【0022】
従って、本靴の作製は、簡素化され、経済的な方法で可能である。また、全ての上記実施形態を、上記工程で、使用することもできる。
【0023】
格子構造物の閉鎖体を使用するため、ソール要素の空洞内にバルク材の粒子を確実に保持する安定した製造工程を実現できる。
【0024】
本靴を使用する際、既知の解決手段では実現できない改善された着用感がある。
【0025】
一般に、靴のアッパー部分を作製するのに、様々な可能性が考えられる。特に、靴アッパーのアッパー部分は、靴の着用者の足裏下に延伸する下側領域を、例えば、ストローベルソール(上で説明したような)とし、該ストローベルソールを、例えば、靴アッパーのアッパー部分に縫着するという、従来の方法で作製するものとできる。これを、特に、靴アッパーの編成したアッパー部分と組合せて、行うことができる。
【0026】
ソール部を、好適には、射出成形部として、又は熱成形部として製造する。
【0027】
また、少なくとも1つのウェブ状構造物を、底領域に形成し、受容空間内に延出するようにもできる。このウェブ状構造物は、壁領域を、受容空間内に形成し、該壁領域は、緩く充填されたバルク材の自由な動きを妨害して、バルク材を受容空間の特定の領域内に保持する。これにより、靴を着用したときの歩行体験に前向きな効果を及ぼすことができる。
【0028】
上記ウェブ状構造物により、ソールは、意図した通りに荷重を受けて使用された場合に、特定の用途において最適に足を支持することが可能となる。これは、ソール部の受容空間内にある(プラスチックの)物体が、相互に接続されることなく緩く配置されている結果、別の手段では、足に対して優れた支持機能を提供しないという観点から、適切であり得る。
【0029】
プラスチック体は、ショアA硬度75~90、好適にはショアA硬度80~85を有するのが好ましい。プラスチック体は、100~300kg/m3のかさ密度を有するのが好ましい。
【0030】
ソール部の受容空間に導入するプラスチック体に使用するのが好ましい膨張する熱可塑性ポリウレタン(E-TPU)に関して、以下について言及しておく:この材料は、それ自体は既知であり、靴に使用されている。これは、例えば、Huntsman International LLCからの「PearlFoam」という名称で、又は、BASF SEからの「Infinergy」という名称で、入手可能である。この材料に関して、明確には、国際公開第2005/066250(A1)号(特許文献)を参照されたい。同特許では、この材料、即ち、膨張可能な熱可塑性ポリウレタン及びその作製についての詳細が、見られる。
【0031】
ウレタンベースの熱可塑性エラストマーの従来技術に関して、更に明確には、国際公開第2010/010010(A1)号(特許文献)も参照されたい。同特許では、熱可塑性ポリウレタン及びスチレン重合体を含有する、膨張可能な発泡剤含有熱可塑性ポリマーブレンドが開示されている。ポリマーブレンドは、少なくとも1つの更なる熱可塑性ポリマーを含有してもよい。更なる熱可塑性ポリマーとして、特に、ポリアミド(PA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロース又はポリオキシメチレン(POM)を使用できる。
【0032】
ソール部は、好適には、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリアミド(PA)、及び/又はゴム材料製とする。
【0033】
受容空間に配設される物体に関して、バルク材について述べたが、これは、相互に接続していない個々の粒子を意味する。特に、本発明の好適な実施形態によれば、プラスチック体を、相互に接続させずに、ソール部の受容空間に配設する。よって、個々の球体又は楕円球体は、いかなる手段によっても相互に接続されず、ソール部の受容空間に緩く配設される。
【0034】
バルク材を、ソール部の受容空間に、満杯に詰込み、好適には、僅かに加圧した状態で、配設するのが好ましい。
【0035】
上記ソール部には更に、必要ならば、下側にアウトソールを備えることもできる。
【0036】
靴、特に運動靴を、靴の圧縮挙動及びその回復特性(着用者の足による圧縮力が取除かれた後の)に関して、上記のように設計すると、靴の極めて有利で快適な着用性を実現できることが証明されている。これは、特に激しい温度変動の側面に言えることである。
【0037】
提案する熱可塑性エラストマー(従来のポリマーとは異なる)を、緩いバルク材としてソールの空洞内で使用した場合、バルク材は、不所望に相互に摺動しないが、緩く配置しているにもかかわらず、着用者の足によってバルク材が変形したときでも、ある程度の強度を提供するため、個々の粒子間の摩擦特性によって、好ましい状態が結果として得られる。従って、一方で、ある程度のマッサージ効果と、他方で、靴の使用中に足を十分に保持することの間で最適な妥協が実現される。
【0038】
図面では、本発明の実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の第1実施形態による運動靴の分解図である。
図2】本発明の第2実施形態による靴、運動靴の長手方向に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1では、靴アッパー2及びソール部3を有する靴1が見られ、靴アッパー2とソール部3は相互に接続されている(この接続は、図1では、分解図のため見られない)。「上」及び「下」という指定は、靴の意図される使用、及び靴が地面上で立っている状態であるときをそれぞれ参照している。鉛直の方向V及び靴1の長手方向Lが、示されている。
【0041】
ソール部3は、ソール本体4を有する。該ソール本体4は、底領域5及び周縁部を備える壁領域6を有し、それにより底領域と壁領域とで、バルク材8を受容するように設計、提供される受容室7を画成する。ソール本体4を、例えば、射出成形法又は熱成形法によって製造できる。
【0042】
靴アッパー2及びソール部3を作製(この作製は、同時に、又は任意の順序で行うことができる)後に、受容室7を、バルク材8で充填するが、これについては、図1でのみ示している。
【0043】
図2から分かるように、バルク材8を、受容室7に導入して、必要であれば、僅かに加圧して、完全に詰込んだ状態にする。その後、バルク材8を受容室7内に固定するように、閉鎖体9を嵌合させて、受容室7を閉鎖する。
【0044】
閉鎖体9を、格子構造物を形成する編織布とすることは、必須であり、該格子構造物は、少なくとも0.5mmのメッシュ幅w1、w2を有する(図1を参照)。メッシュ幅w1は、長手方向Lの格子構造物の個々の糸間の距離であり、メッシュ幅w2は、該糸に直交する糸間の距離である。メッシュ幅w1とw2は、同じにできるが、そうである必要はない。上述した少なくとも0.5mmという値を維持することは、必須であり、これは、履き心地を向上するのに必須である。
【0045】
その後、靴アッパー2を、こうして準備したソール部3上に配設し、ソール部3を、靴アッパー2に接合する。これを、縫着及び/又は接着によって行うことができる。
【0046】
よって、靴アッパー2の下側領域は、この時点で、閉鎖体9を介して、バルク材8上に載置されており、それにより、靴の使用時に、快適な歩行感覚が生じるようになる。
【0047】
一般に、発泡プラスチック材料製の球体又は楕円球体が好ましいものの、任意の材料を(例えば、砂も)、バルク材8として使用できる;詳細については、上述している。
【0048】
図2は、本発明の同様な実施形態を示している。
【0049】
まず、補強板10について、ここで言及しておく。補強板10を、ソールの剛性を向上させるために、ソール本体4の底領域5に配設する。また、補強板10は、走行運動を支援するバネ弾性特性を有するものとすることもできる。
【0050】
靴アッパー2のアッパー部11では、これを、底部でストローベルソール12に接続する材料(織成材料又は編成材料)で作成し;図2では、継目を、アッパー部11とストローベルソール12の間に、模式的に示している。
【0051】
また、閉鎖体9(格子構造物)の特殊な設計についても、特に言及する価値がある:この閉鎖体9は、周縁領域に補強層13を有し、該補強層を塗布フィルムによって実装する。このフィルムは、熱加工によって閉鎖体9に接着又は付着させることができる。枠16を、ソール本体4の壁領域6の上端部に取着する。枠16は、楕円環状構造物として設計されており、壁領域6の上縁部の形状に対応している。枠16を、壁領域6の上端部に、接続する、例えば接着する。この場合、枠16は、閉鎖体9が、その縁部で載置される座面17を有する。ここで、閉鎖体9を、枠16に接着する、又は幾つかの他の方法で、固着する。
【0052】
また、図2による実施形態では、ソール部3は、アウトソール14を含む;中敷き15を、靴アッパー2の内部に挿入する。
【0053】
材料特有の及び幾何学的なパラメータ(バルク材の粒子寸法、メッシュの大きさ、靴アッパー及びソール部の個々の領域の寸法、材料の選択等)を選定することによって、靴の、特にソールの弾性減衰挙動(spring and damping behavior)に影響を及ぼすことが可能である。
【0054】
上記のように、バルク材の形をした個々の物体を緩く挿入することが想定されるが、原理的に、上記材料製の上記物体を、少なくとも部分的に互いに結合又は接合することも可能である。この点に関しては、例えば、マイクロ波融着によって、多数の物体を接合する構造物を作成することが可能である。
【0055】
また、個々の物体から成る同様の複合体も、合成樹脂発泡体、特にポリウレタン発泡体に個々の物体を埋設することによって作製して、靴底を構築するのに使用し得る構造物を作成できる。
【符号の説明】
【0056】
1 靴
2 靴アッパー
3 ソール部
4 ソール本体
5 ソール本体の底領域
6 ソール本体の壁領域
7 受容室
8 バルク材
9 閉鎖体
10 補強板
11 靴アッパーのアッパー部
12 ストローベルソール
13 補強層
14 アウトソール
15 中敷き
16 枠
17 座面
1 メッシュ幅
2 メッシュ幅
L 靴の長手方向
V 鉛直方向
図1
図2