(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 57/22 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
A01D57/22 F
(21)【出願番号】P 2021123912
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 憲之
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 秀範
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-099301(JP,A)
【文献】特開2012-029568(JP,A)
【文献】特開2012-139118(JP,A)
【文献】特開2011-050314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に脱穀装置(4)を設けたコンバインにおいて、
前記刈取装置(3)を、圃場の穀稈を引起こす
左右方向に並ぶ4つの引起装置(31A,31B,31C,31D)と、穀稈の株元を刈取る刈刃装置(32)と、刈取られた穀稈を脱穀装置(4)に向けて搬送する搬送装置(33)で形成し、
前記引起装置(31A,31B,31C,31D)の上方に左右方向に延在する伝動筒(24)を設け、
前記引起装置(31A,31B,31C,31D)
の左右方向の中間に設けられた
前記引起装置(31B,31C)と伝動筒(24)を支持アーム(61)で連結し、
該支持アーム(61)を伝動筒(24)の下部から下方に延在する第1縦アーム(70)と、該第1縦アーム(70)の下部に回転自在に支持された水平方向に延在する第1横アーム(71)と、該第1横アーム(71)の先端部から下方に延在する第2縦アーム(72)と、該第2縦アーム(72)の下部に回転自在に支持された水平方向に延在する第2横アーム(73)と、該第2横アーム(73)の先端部から下方前側に延在して引起装置(31B,31C)の後面に至る第3縦アーム(74)で形成し、
前記第1縦アーム(70)の内部にエンジン(E)の出力回転が伝動される上下方向に延在する第1回転軸(75A)を設け、
前記第1縦アーム(70)を
左右方向の中間に設けられた前記引起装置(31B,31C)の左右方向の中心よりも右側に偏移して設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記第1横アーム(71)の基部に第1回転軸(75A)の下部に支持された第1ギヤ(75)を設け、前記第1横アーム(71)の先端部と第2横アーム(73)の基部を上下方向に貫通して延在する第2回転軸(77A)に支持され
た第2ギヤ(77U)を設け、
前記第2横アーム(73)の基部に、前記第2回転軸(77A)に支持された第3ギヤ(77D)を設け、前記第2横アーム(73)の先端部に、上下方向に延在する第3回転軸(79A)に支持され
た第4ギヤ(79)を設け、
前記第1ギヤ(75)と第2ギヤ(77U)のピッチ径を同一径に形成して、前記第3ギヤ(77D)と第4ギヤ(79)のピッチ径を同一径に形成し
、
前記第1横アーム(71)の中間部に上下方向に延在する少なくとも1個の第1カウンタ軸(76A)に支持されて、前記第1ギヤ(75)と第2ギヤ(77U)に係合する少なくとも1個の第1カウンタギヤ(76)を設け、前記第2横アーム(73)の中間部に上下方向に延在する少なくとも1個の第2カウンタ軸(78A)に支持されて、前記第3ギヤ(77D)と第4ギヤ(79)に係合する少なくとも1個の第2カウンタギヤ(78)を設けた
請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1カウンタ軸(76A)と第1カウンタギヤ(76)を奇数個設け、前記第2カウンタ軸(78A)と第2カウンタギヤ(78)を奇数個設けた請求項
2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記第1ギヤ(75)と第3ギヤ(77D)のピッチ径を同一径に形成した請求項
3記載のコンバイン。
【請求項5】
前記支持アーム(61)の収納姿勢時に、正面視において、前記第1横アーム(71)と第2横アーム(73)を引起装置(31B,31C)の外周縁の内側に設けた請求項1~
4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分草された穀稈を引起こす引起装置を備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいて、引起装置の上方に設けられた伝動筒と非引起作用側を対向して設けた一対の刈取装置を支持アームで連結して、引起装置の後方に設けられた搬送装置等に詰まった穀稈を取除く場合には、引起装置と伝動筒の伝動部の接続を解除して、支持アームの第1横アームと第2横アームを伸縮又は回転させて刈取装置を前方に移動させる技術が知られていた。(特許文献1参照)
【0003】
また、引起装置の上方に設けられた伝動筒と非引起作用側を対向して設けた一対の刈取装置の左右方向の中心を支持アームで連結して、引起装置の後方に設けられた搬送装置等に詰まった穀稈を取除く場合には、支持アームの軸心回りに引起装置を時計方向又は反時計方向に回転させる技術が知られていた。(特許文献2参照)
【0004】
さらに、引起装置の上方に設けられた伝動筒と非引起作用側を対向して設けた一対の刈取装置の左右方向の中心を支持アームで連結して、引起装置の後方に設けられた搬送装置等に詰まった穀稈を取除く場合には、支持アームの軸心回りに、左側の引起装置を時計方向に回転させて引起装置の左部を前側に移動して、右側の引起装置を反時計方向に回転させて引起装置の右部を前側に移動させる技術が知られていた。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-29568号公報
【文献】特開2012-139118号公報
【文献】特開2013-99301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、詰まった穀稈を取除いた後に、一対の引起装置と伝動筒の伝動部を再接続する必要が有るので、引起装置を迅速に再駆動することができないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2の技術では、搬送装置等の前側に大きな作業空間を形成することができないので、詰まった穀稈を容易に取除くことができないという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献3の技術でも、搬送装置等の前側に大きな作業空間を形成することができないので、詰まった穀稈を容易に取除くことができないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、刈取装置の搬送装置等の前側に大きな作業空間を形成して詰まった穀稈を容易に取除きことができ、詰まった穀稈を取除いた後に、引起装置を迅速に再駆動することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)を搭載した機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方左側に脱穀装置(4)を設けたコンバインにおいて、
前記刈取装置(3)を、圃場の穀稈を引起こす左右方向に並ぶ4つの引起装置(31A,31B,31C,31D)と、穀稈の株元を刈取る刈刃装置(32)と、刈取られた穀稈を脱穀装置(4)に向けて搬送する搬送装置(33)で形成し、前記引起装置(31A,31B,31C,31D)の上方に左右方向に延在する伝動筒(24)を設け、前記引起装置(31A,31B,31C,31D)の左右方向の中間に設けられた前記引起装置(31B,31C)と伝動筒(24)を支持アーム(61)で連結し、該支持アーム(61)を伝動筒(24)の下部から下方に延在する第1縦アーム(70)と、該第1縦アーム(70)の下部に回転自在に支持された水平方向に延在する第1横アーム(71)と、該第1横アーム(71)の先端部から下方に延在する第2縦アーム(72)と、該第2縦アーム(72)の下部に回転自在に支持された水平方向に延在する第2横アーム(73)と、該第2横アーム(73)の先端部から下方前側に延在して引起装置(31B,31C)の後面に至る第3縦アーム(74)で形成し、前記第1縦アーム(70)の内部にエンジン(E)の出力回転が伝動される上下方向に延在する第1回転軸(75A)を設け、前記第1縦アーム(70)を左右方向の中間に設けられた前記引起装置(31B,31C)の左右方向の中心よりも右側に偏移して設けたことを特徴とするコンバインである。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記第1横アーム(71)の基部に第1回転軸(75A)の下部に支持された第1ギヤ(75)を設け、前記第1横アーム(71)の先端部と第2横アーム(73)の基部を上下方向に貫通して延在する第2回転軸(77A)に支持された第2ギヤ(77U)を設け、前記第2横アーム(73)の基部に、前記第2回転軸(77A)に支持された第3ギヤ(77D)を設け、前記第2横アーム(73)の先端部に、上下方向に延在する第3回転軸(79A)に支持された第4ギヤ(79)を設け、前記第1ギヤ(75)と第2ギヤ(77U)のピッチ径を同一径に形成して、前記第3ギヤ(77D)と第4ギヤ(79)のピッチ径を同一径に形成し、前記第1横アーム(71)の中間部に上下方向に延在する少なくとも1個の第1カウンタ軸(76A)に支持されて、前記第1ギヤ(75)と第2ギヤ(77U)に係合する少なくとも1個の第1カウンタギヤ(76)を設け、前記第2横アーム(73)の中間部に上下方向に延在する少なくとも1個の第2カウンタ軸(78A)に支持されて、前記第3ギヤ(77D)と第4ギヤ(79)に係合する少なくとも1個の第2カウンタギヤ(78)を設けた請求項1記載のコンバインである。
【0012】
【0013】
請求項3記載の発明は、前記第1カウンタ軸(76A)と第1カウンタギヤ(76)を奇数個設け、前記第2カウンタ軸(78A)と第2カウンタギヤ(78)を奇数個設けた請求項2記載のコンバインである。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記第1ギヤ(75)と第3ギヤ(77D)のピッチ径を同一径に形成した請求項3記載のコンバインである。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記支持アーム(61)の収納姿勢時に、正面視において、前記第1横アーム(71)と第2横アーム(73)を引起装置(31B,31C)の外周縁の内側に設けた請求項1~4のいずれか1項に記載のコンバインである。
【0016】
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、刈取装置(3)を、圃場の穀稈を引起こす左右方向に並ぶ4つの引起装置(31A,31B,31C,31D)と、穀稈の株元を刈取る刈刃装置(32)と、刈取られた穀稈を脱穀装置(4)に向けて搬送する搬送装置(33)で形成し、引起装置(31A,31B,31C,31D)の上方に左右方向に延在する伝動筒(24)を設け、引起装置(31A,31B,31C,31D)の左右方向の中間に設けられた引起装置(31B,31C)と伝動筒(24)を支持アーム(61)で連結し、支持アーム(61)を伝動筒(24)の下部から下方に延在する第1縦アーム(70)と、第1縦アーム(70)の下部に回転自在に支持された水平方向に延在する第1横アーム(71)と、第1横アーム(71)の先端部から下方に延在する第2縦アーム(72)と、第2縦アーム(72)の下部に回転自在に支持された水平方向に延在する第2横アーム(73)と、第2横アーム(73)の先端部から下方前側に延在して引起装置(31B,31C)の後面に至る第3縦アーム(74)で形成し、第1縦アーム(70)の内部にエンジン(E)の出力回転が伝動される上下方向に延在する第1回転軸(75A)を設け、第1縦アーム(70)を左右方向の中間に設けられた引起装置(31B,31C)の左右方向の中心よりも右側に偏移して設けたので、引起装置(31B,31C)を収納姿勢から前方に移動させて搬送装置(33)の前側に大きな作業空間を形成して搬送装置(33)等に詰まった穀稈を容易に取除くことができる。特に、引起装置(31B,31C)を収納姿勢から前方左側に移動させて引起装置(31A,31B)と引起装置(31C,31D)で引起こされた穀稈が合流する引起装置(31B)の後方左側に位置する搬送装置(33)の合流位置の前側に大きな作業空間を形成して搬送装置(33)の合流位置に詰まった穀稈を容易に取除くことができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、第1横アーム(71)の基部に第1回転軸(75A)の下部に支持された第1ギヤ(75)を設け、第1横アーム(71)の先端部と第2横アーム(73)の基部を上下方向に貫通して延在する第2回転軸(77A)に支持された第2ギヤ(77U)を設け、第2横アーム(73)の基部に、第2回転軸(77A)に支持された第3ギヤ(77D)を設け、第2横アーム(73)の先端部に、上下方向に延在する第3回転軸(79A)に支持された第4ギヤ(79)を設け、第1ギヤ(75)と第2ギヤ(77U)のピッチ径を同一径に形成して、第3ギヤ(77D)と第4ギヤ(79)のピッチ径を同一径に形成し、第1横アーム(71)の中間部に上下方向に延在する少なくとも1個の第1カウンタ軸(76A)に支持されて、第1ギヤ(75)と第2ギヤ(77U)に係合する少なくとも1個の第1カウンタギヤ(76)を設け、第2横アーム(73)の中間部に上下方向に延在する少なくとも1個の第2カウンタ軸(78A)に支持されて、第3ギヤ(77D)と第4ギヤ(79)に係合する少なくとも1個の第2カウンタギヤ(78)を設けたので、引起装置(31B,31C)を前方に移動した場合には、引起装置(31B,31C)のラグの上下方向の移動を抑制することができる。また、引起装置(31B,31C)を収納姿勢に戻した場合には、ラグの位置も元の位置に戻るので、詰まった穀稈を取除いた後に、引起装置(31B,31C)を収納姿勢に戻して、迅速に再駆動することができる。また、第1ギヤ(75)と第2ギヤ(77U)のピッチ径、第3ギヤ(77D)と第4ギヤ(79)のピッチ径を大径化するのを抑制することができる。
【0019】
【0020】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、1カウンタ軸(76A)と第1カウンタギヤ(76)を奇数個設け、第2カウンタ軸(78A)と第2カウンタギヤ(78)を奇数個設けたので、第1ギヤ(75)及び第2ギヤ(77U)の回転方向と、第3ギヤ(77D)及び第4ギヤ(79)の回転方向が同一方向となるので調整を容易に行うことができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明による効果に加えて、第1ギヤ(75)と第3ギヤ(77D)のピッチ径を同一径に形成したので、第1ギヤ(75)及び第2ギヤ(77U)の回転角度と、第3ギヤ(77D)及び第4ギヤ(79)の回転角度を同一角度になり調整をより容易に行うことができる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、請求項1~4のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、支持アーム(61)の収納姿勢時に、正面視において、第1横アーム(71)と第2横アーム(73)を引起装置(31B,31C)の外周縁の内側に設けたので、引起装置(31A)と引起装置(31B)や引起装置(31C)と引起装置(31D)で引起こされた穀稈等が横アーム(71)や横アーム(73)に絡まるのを抑制することができる。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図10】可動引起装置の伝動ケースの説明図である。
【
図11】前方に移動した開放姿勢時の刈取装置の正面図である。
【
図15】前方左側に移動した開放姿勢時の刈取装置の正面図である。
【
図19】前方右側に移動した開放姿勢時の刈取装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1,2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0026】
操縦部5の下側には、エンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ8によって外部に排出される。
【0027】
操縦部5の操縦席の前方には、フロントパネル10が設けられ、操縦席の左方には、サイドパネル15が設けられている。
【0028】
フロントパネル10の中央部には、エンジンEの出力回転等を表示するモニタ11が設けられ、モニタ11の右側には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する操作レバー12が設けられている。
【0029】
サイドパネル15の前部には、エンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置を操作する主変速レバー16が設けられ、主変速レバー16の後側には、無段変速装置の出力回転の増減速を行うトランスミッションを操作する副変速レバー17が設けられている。
【0030】
図3~7示すように、刈取装置3は、主枠となる刈取フレーム20に取付けられている。刈取フレーム20は、前後方向に延在する伝動筒21と、伝動筒21の前部に設けられた左右方向に延在する伝動筒22と、伝動筒22の左部に設けられた上下方向に延在する伝動筒23と、伝動筒23の上部に設けられた左右方向に延在する伝動筒24から形成されている。また、伝動筒21の後部は、エンジンEの出力回転が伝動される脱穀装置4の前側に設けられた左右方向に延在する伝動筒25に揺動可能に支持されている。これにより、伝動筒21に連結された昇降シリンダ(図示省略)を駆動して伝動筒21の前部、すなわち、刈取フレーム20を介して刈取装置3を上下方向に昇降させることができる。なお、伝動筒21~25の内部には、エンジンE等の出力回転が伝動される回転軸21A~25Aが設けられている。
【0031】
刈取装置3は、圃場に植立する穀稈を分草する分草体30と、分草された穀稈を引起す引起装置31と、引起こされた穀稈を刈取る刈刃装置32と、刈取られた穀稈を挟持して脱穀装置4に搬送する搬送装置33から形成されている。
【0032】
引起装置31は、左側から順に4つの引起装置31Aと、引起装置31Bと、引起装置31Cと、引起装置31Dが設けられている。これにより、2条に植立する穀稈、すなわち、引起装置31Aと引起装置31Bで1条に植立する穀稈を引起こし、引起装置31Cと引起装置31Dで1条の右側に隣接する1条に植立する穀稈を引起すことができる。なお、引起装置31Bと引起装置31Cは連結部材(図示省略)を介して連結されている。
また、符号39は、引起装置31Aと引起装置31B等による穀稈の引起作業を補助する補助引起装置を示している。
【0033】
刈刃装置32は、刈取装置3の左側に設けられた左刈刃装置32Aと右側に設けられた右刈刃装置32Bから形成されている。
【0034】
搬送装置33は、刈取られた穀稈の株元を挟持して搬送する株元搬送装置34と刈取られた穀稈の穂先を挟持して搬送する穂先搬送装置35から形成されている。また、株元搬送装置34は、刈取装置3の左側に設けられた左株元搬送装置34Aと右側に設けられた右株元搬送装置34Bから形成され、穂先搬送装置35は、刈取装置3の左側に設けられた左穂先搬送装置35Aと右側に設けられた右穂先搬送装置35Bから形成されている。なお、本明細書では、左株元搬送装置34Aと左穂先搬送装置35Aを総称して左搬送装置33Aといい、右株元搬送装置34Bと右穂先搬送装置35Bを総称して右搬送装置33Bという。
【0035】
伝動筒24の左部には、伝動筒24の下部と引起装置31Aの後面の上部を連結する支持アーム60が設けられ、伝動筒24の中間部には、伝動筒24の下部と引起装置31Bと引起装置31Cの後面の上部を連結する支持アーム61が設けられ、伝動筒24の右部には、伝動筒24の下部と引起装置31Dの後面の上部を連結する支持アーム62が設けられている。なお、支持アーム60~62の内部には、エンジンE等の出力回転が伝動される回転軸(図示省略)が設けられている。
【0036】
支持アーム60は、伝動筒24の下部から下側に向かって延在した後に、前側に向かって湾曲して引起装置31Aの後面に連結されている。支持アーム62は、伝動筒24の下部から下側に向かって延在した後に、前側に向かって湾曲して引起装置31Dの後面に連結されている。
【0037】
支持アーム61は、伝動筒24の下部から下側に向かって延在する縦アーム(請求項の「第1縦アーム」)70と、縦アーム70の下部に回転自在に支持された横アーム(請求項の「第1横アーム」)71と、横アーム71の先端部の下部から下側に向かって延在する縦アーム(請求項の「第2縦アーム」)72と、縦アーム70の下部に回転自在に支持された横アーム(請求項の「第2横アーム」)73と、横アーム73の先端部の下部から下側に向かって延在した後に、前側に向かって湾曲して引起装置31Bと引起装置31Cの後面に連結され縦アーム(請求項の「第3縦アーム」)74で形成されている。これにより、搬送装置33等に詰まった穀稈を取除く場合に、
図14に示すように、引起装置31Bと引起装置31Cを前方に移動させたり、
図18に示すように、引起装置31Bと引起装置31Cを前方左側に移動させたり、
図22に示すように、引起装置31Bと引起装置31Cを前方右側に移動させて搬送装置33の前側の作業空間を大きくして搬送装置33に詰まった穀稈を容易に取除くことができる。
【0038】
支持アーム61の収納姿勢時には、横アーム71の長手方向と横アーム73の長手方向を伝動筒24に沿って左右方向に延在させて、引起装置31Bと引起装置31Cの後側に設けている。これにより、引起装置31Aと引起装置31Bで引起こされる穀稈等が横アーム71と横アーム73に絡まるのを抑制することができる。
【0039】
また、伝動筒24の前部と、支持アーム61の横アーム71の基部の前部と、横アーム73の先端部の前部には、固定用ピン95を貫通させる開口部が設けられている。これにより、支持アーム61の収納姿勢時には、伝動筒24に、支持アーム61の横アーム71と横アーム73が固定して、横アーム71と横アーム73が回転して支持アーム61が開放姿勢になるのを防止することができる。
【0040】
なお、支持アーム61を、伝動筒24の下部から下側に向かって延在する縦アーム70と、縦アーム70の下部に回転自在に支持された横アーム71と、横アーム73の先端部の下部から下側に向かって延在した後に、前側に向かって湾曲して引起装置31Bと引起装置31Cの後面に連結され縦アーム74で形成することもできる。これにより、支持アーム61の構成をより簡易に構成することができる。
【0041】
<エンジンの出力回転の伝動>
図8に示すように、エンジンEの出力回転は、ベルト40等を介して伝動筒25に内装された回転軸25Aに伝動される。
【0042】
回転軸25Aに伝動された出力回転は、回転軸25Aの中間部に設けられたギヤ41等を介して右穂先搬送装置35Bの右穂先搬送チェン35bに伝動される。また、回転軸25Aに伝動された出力回転は、回転軸25Aにおける右側部に設けられたギヤ42等を介して伝動筒21に内装された回転軸21Aに伝動される。
【0043】
回転軸21Aに伝動された出力回転は、回転軸21Aの中間部に設けられたギヤ43等を介して右株元搬送装置34Bの右株元搬送チェン34bに伝動される。また、回転軸21Aに伝動された出力回転は、回転軸21Aの前部に設けられたギヤ44等を介して伝動筒22に内装された回転軸22Aに伝動される。
【0044】
回転軸22Aに伝動され出力回転は、回転軸22Aにおける左側に設けられた揺動ロッド56等を介して左刈刃装置32Aに伝動され、回転軸22Aにおける右側に設けられた揺動ロッド57等を介して右刈刃装置32Bに伝動される。また、回転軸22Aに伝動され出力回転は、回転軸22Aにおける左側に設けられたギヤ45等を介して伝動筒23に内装された回転軸23Aに伝動される。
【0045】
回転軸23Aに伝動され出力回転は、回転軸23Aの中間部に設けられたギヤ46等を介して左株元搬送装置34Aの左株元搬送チェン34aと左穂先搬送装置35Aの左穂先搬送チェン35aに伝動される。なお、符号37は、搬送装置33の後部に搬送されてきた穀稈を脱穀装置4に引継ぐ供給装置の供給チェンを示し、符号38は、搬送装置33で搬送される穀稈の姿勢を調節する調節装置の調節チェンを示している。
【0046】
回転軸23Aに伝動され出力回転は、回転軸23Aの前部に設けられたギヤ47とギヤボックス48等を介して伝動筒24に内装された回転軸24Aに伝動される。
【0047】
回転軸24Aに伝動され出力回転は、回転軸24Aにおける左側に設けられたギヤ50とギヤ80を介して回転軸81に伝動され、回転軸81に伝動された出力回転はギヤ82を介して引起装置31Aに伝動される。
【0048】
回転軸24Aに伝動され出力回転は、回転軸24Aにおける中間部に設けられたギヤ51とギヤ84を介して回転軸(請求項の「第1回転軸」)75Aに伝動され、回転軸75Aに伝動された出力回転は、ギヤ(請求項の「第1ギヤ」)75と、カウンタギヤ(請求項の「第1カウンタギヤ」)76と、ギヤ(請求項の「第2ギヤ」)77Uを介して回転軸(請求項の「第2回転軸」)77Aに伝動され、回転軸77Aに伝動された出力回転は、ギヤ(請求項の「第3ギヤ」)77Dと、カウンタギヤ(請求項の「第2カウンタギヤ」)78と、ギヤ(請求項の「第4ギヤ」)79を介して回転軸(請求項の「第3回転軸」)79Aに伝動される。なお、ギヤ84は回転軸75Aの上部に設けられ、ギヤ75は回転軸75Aの上部に設けられている。また、ギヤ77Uは回転軸77Aの上部に設けられ、ギヤ77Dは回転軸77Aの下部に設けられている。
【0049】
回転軸79Aに伝動された出力回転は、ギヤ85とギヤ86を介して回転軸87に伝動され、回転軸87に伝動された出力回転は、回転軸87の左部に設けられたギヤ88を介して引起装置31Bに伝動され、回転軸87の右部に設けられたギヤ89を介して引起装置31Cに伝動される。なお、ギヤ79は回転軸79Aの上部に設けられ、ギヤ85は回転軸75Aの下部に設けられている。
【0050】
回転軸24Aに伝動され出力回転は、回転軸24Aにおける右側に設けられたギヤ52とギヤ90を介して回転軸91に伝動され、回転軸91に伝動された出力回転はギヤ92を介して引起装置31Dに伝動される。
【0051】
これにより、エンジンEの出力回転を引起装置31A~31Dと、刈刃装置32と、搬送装置33に伝動することができる。
【0052】
図9に示すように、横アーム71には、ギヤ75と、カウンタギヤ76と、ギヤ77Uが設けられている。ギヤ75は横アーム71の右部に上下方向に延在する回転軸75Aに支持され、カウンタギヤ76は横アーム71の中間部に上下方向に延在するカウンタ軸(請求項の「第1カウンタ軸」)76Aに支持され、ギヤ77Uは横アーム71の左部に上下方向に延在する回転軸77Aに支持されている。なお、回転軸77Aは、横アーム71の左部の上側から横アーム73の左部の下側まで延在して形成されている。
【0053】
回転軸75Aは、横アーム71に回転自在に支持され、カウンタ軸76Aは、横アーム71に回転自在に支持され、回転軸77Aの上部は横アーム71回転自在に支持されている。
【0054】
横アーム73には、ギヤ77Dと、カウンタギヤ78と、ギヤ79が設けられている。ギヤ77Dは、横アーム73の左部に上下方向に延在する回転軸77Aに支持され、カウンタギヤ78は、横アーム73の中間部に上下方向に延在するカウンタ軸(請求項の「第2カウンタ軸」)78Aに支持され、ギヤ79は、横アーム73の右部に上下方向に延在する回転軸79Aに支持されている。
【0055】
回転軸77A下部は横アーム73回転自在に支持され、カウンタ軸78Aは横アーム73に回転自在に支持され、回転軸79Aは横アーム73に回転自在に支持されている。
【0056】
ギヤ75とギヤ77Uのピッチ円は同一直径に形成されている。これにより、ギヤ75の回転角度とギヤ77Uの回転角度を同一角度にすることができる。また、ギヤ75とギヤ77Uの間には奇数個である1個のカウンタギヤ76が設けられている。これにより、ギヤ75の回転方向とギヤ77Uの回転方向を同一方向に設定することができる。なお、ギヤ75とギヤ77Uの間には、2個以上のカウンタギヤ76を設けることもでき、偶数個のカウンタギヤ76を設けた場合には、ギヤ75の回転方向とギヤ77Uの回転方向を逆方向に設定することができる。
【0057】
ギヤ77Dとギヤ79のピッチ円は同一直径に形成されている。これにより、ギヤ77Dの回転角度とギヤ79の回転角度を同一角度にすることができる。また、ギヤ77Dとギヤ79の間には奇数個である1個のカウンタギヤ78が設けられている。これにより、ギヤ77Dの回転方向とギヤ79の回転方向を同一方向に設定することができる。なお、ギヤ77Dとギヤ79の間には、2個以上のカウンタギヤ78を設けることもでき、偶数個のカウンタギヤ78を設けた場合には、ギヤ77Dの回転方向とギヤ79の回転方向を逆方向に設定することができる。
【0058】
本実施形態では、ギヤ75、カウンタギヤ76、ギヤ77U、ギヤ77D、カウンタギヤ78、ギヤ79のピッチ円を同一直径に形成されている。これにより、ギヤ75等の互換性を高めてギヤ75等の共通化を図ることができる。
【0059】
図10に示すように、回転軸75Aが内装された縦アーム70は、引起装置31Bと引起装置31Cの左右方向の中心よりも右側に偏移して設けられている。これにより、引起装置31Aと引起装置31Bで引起こされた穀稈と引起装置31Cと引起装置31Dで引起こされた穀稈が合流する左搬送装置33Aと右搬送装置33Bが接近する合流位置に詰まった穀稈を取除く場合に、引起装置31Bと引起装置31Cを前方右側に移動させて搬送装置33等の前側により大きな作業空間が形成され、穀稈をより容易に取除くことができる。
【0060】
<搬送装置に詰まった穀稈の取除き作業>
引起装置31Bと引起装置31Cの後方に位置する搬送装置33等に穀稈が詰まった場合には、エンジンEを停止した後、
図11~13に示すように、引起装置31Bと引起装置31Cを前方に手動で移動させて開放姿勢にする。これにより、搬送装置33等の前側に大きな作業空間が形成され、穀稈を容易に取除くことができる。
【0061】
図14に示すように、引起装置31Bと引起装置31Cを前方に手動で移動させた場合には、縦アーム70の軸心視で、縦アーム70を中心として横アーム71が時計方向に90度回転して、縦アーム72の軸心視で、縦アーム72を中心として横アーム73が反時計方向に90度回転して、横アーム71の長手方向と横アーム73の長手方向が前後方向に沿って延在する。これにより、引起装置31Bと引起装置31Cの穀稈を搬送するラグが上下方向に移動することを防止することができ、引起装置31Bと引起装置31Cを後方に移動させて収納姿勢にした場合には、ラグの位置も移動前の位置に移動させることができる。また、詰まった穀稈を取除いた後に、引起装置31Bと引起装置31Cを収納姿勢にして迅速に再駆動することができる。
【0062】
引起装置31Bと引起装置31Cの後方右側に位置する搬送装置33等に穀稈が詰まった場合には、エンジンEを停止した後、
図15~17に示すように、引起装置31Bと引起装置31Cを前方左側に手動で移動させて開放姿勢にする。これにより、引起装置31Bと引起装置31Cを前方左側に移動させて搬送装置33等の前側に大きな作業空間が形成され、穀稈を容易に取除くことができる。
【0063】
図18に示すように、引起装置31Bと引起装置31Cを前方左側に手動で移動させた場合には、縦アーム70の軸心視で、縦アーム70を中心として横アーム71が時計方向に60度回転して、縦アーム72の軸心視で、縦アーム72を中心として横アーム73が反時計方向に120度回転して、横アーム71の長手方向と横アーム73の長手方向が前後方向と交差角度30度で交差する仮想線L1沿って延在する。これにより、引起装置31Bと引起装置31Cの穀稈を搬送するラグが上下方向に移動することを抑制することができ、引起装置31Bと引起装置31Cを後方に移動させて収納姿勢にした場合には、ラグの位置も移動前の位置に移動させることができる。また、詰まった穀稈を取除いた後に、引起装置31Bと引起装置31Cを収納姿勢にして迅速に再駆動することができる。
【0064】
引起装置31Bと引起装置31Cの後方左側に位置する搬送装置33等に穀稈が詰まった場合には、エンジンEを停止した後、
図19~21に示すように、引起装置31Bと引起装置31Cを前方右側に手動で移動させて開放姿勢にする。これにより、引起装置31Bと引起装置31Cを前方右側に移動させて搬送装置33等の前側に大きな作業空間が形成され、穀稈を容易に取除くことができる。
【0065】
図22に示すように、引起装置31Bと引起装置31Cを前方右側に手動で移動させた場合には、縦アーム70の軸心視で、縦アーム70を中心として横アーム71が時計方向に120度回転して、縦アーム72の軸心視で、縦アーム72を中心として横アーム73が反時計方向に60度回転して、横アーム71の長手方向と横アーム73の長手方向が前後方向と交差角度30度で交差する仮想線L2沿って延在する。これにより、引起装置31Bと引起装置31Cの穀稈を搬送するラグが上下方向に移動することを抑制することができ、引起装置31Bと引起装置31Cを後方に移動させて収納姿勢にした場合には、ラグの位置も移動前の位置に移動させることができる。また、詰まった穀稈を取除いた後に、引起装置31Bと引起装置31Cを収納姿勢にして迅速に再駆動することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 機体フレーム
3 刈取装置
4 脱穀装置
24 伝動筒
31A 引起装置
31B 引起装置
31C 引起装置
31D 引起装置
32 刈刃装置
33 搬送装置
61 支持アーム
70 縦アーム(第1縦アーム)
71 横アーム(第1横アーム)
72 縦アーム(第2縦アーム)
73 横アーム(第2横アーム)
74 縦アーム(第3縦アーム)
75 ギヤ(第1ギヤ)
75A 回転軸(第1回転軸)
76 カウンタギヤ(第1カウンタギヤ)
76A カウンタ軸(第1カウンタ軸)
77A 回転軸(第2回転軸)
77U ギヤ(第2ギヤ)
77D ギヤ(第3ギヤ)
78 カウンタギヤ(第2カウンタギヤ)
78A カウンタ軸(第2カウンタ軸)
79 ギヤ(第4ギヤ)
79A 回転軸(第3回転軸)
E エンジン
【要約】
【課題】刈取装置の搬送装置等の前側に大きな作業空間を形成して詰まった穀稈を容易に取除きことができ、詰まった穀稈を取除いた後に、引起装置を迅速に再駆動することができるコンバインを提供する。
【解決手段】支持アーム(61)を伝動筒(24)の下部から下方に延在する第1縦アーム(70)と、第1縦アーム(70)の下部に回転自在に支持された水平方向に延在する第1横アーム(71)と、第1横アーム(71)の先端部から下方に延在する第2縦アーム(72)と、第2縦アーム(72)の下部に回転自在に支持された水平方向に延在する第2横アーム(73)と、第2横アーム(73)の先端部から下方前側に延在して引起装置(31B,31C)の後面に至る第3縦アーム(74)で形成し、第1縦アーム(70)の内部にエンジン(E)の出力回転が伝動される上下方向に延在する第1回転軸(75A)を設け、第1縦アーム(70)を引起装置(31B,31C)の左右方向の中心よりも右側に偏移して設けた。
【選択図】
図10