(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】植物の栽培施設の管理制御装置および管理制御方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20221014BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20221014BHJP
A01G 9/22 20060101ALI20221014BHJP
A01G 9/18 20060101ALI20221014BHJP
A01G 7/02 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A01G9/24 C
A01G7/00 601Z
A01G9/24 J
A01G9/24 R
A01G9/22
A01G9/18
A01G7/00 603
A01G7/02
(21)【出願番号】P 2018198484
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】514253699
【氏名又は名称】株式会社北海道興農社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】永田 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 浩
(72)【発明者】
【氏名】溝内 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大熊 孝一
(72)【発明者】
【氏名】川村 靖
(72)【発明者】
【氏名】河原林 主一
(72)【発明者】
【氏名】三木 大輔
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-012056(JP,A)
【文献】特開平03-094619(JP,A)
【文献】特開2011-244697(JP,A)
【文献】特公昭60-019971(JP,B2)
【文献】実開平06-009439(JP,U)
【文献】特開平05-296493(JP,A)
【文献】実開昭62-074551(JP,U)
【文献】特開2018-068205(JP,A)
【文献】特開2014-018196(JP,A)
【文献】特開2018-014896(JP,A)
【文献】特開2016-151273(JP,A)
【文献】特開2011-120557(JP,A)
【文献】特開平08-172912(JP,A)
【文献】特開2018-038322(JP,A)
【文献】特開2016-182092(JP,A)
【文献】特開2017-195895(JP,A)
【文献】特開2017-038547(JP,A)
【文献】特開2005-176721(JP,A)
【文献】特開平04-278031(JP,A)
【文献】特開2014-128263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24
A01G 7/00
A01G 9/22
A01G 9/18
A01G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の栽培施設内の温度を計測する室内温度センサと、
前記栽培施設内の遮光カーテンを開閉する遮光カーテン開閉装置と、
前記栽培施設の天窓を開閉する天窓開閉装置と、
前記栽培施設の側窓を開閉する側窓開閉装置と、
前記栽培施設外部に設置された雨量計と、
前記栽培施設内に細霧を供給する細霧冷房装置と
に接続された植物の栽培施設の管理制御装置において、
前記室内温度センサによる計測値に基づいて前記栽培施設内の温度が予め設定された第1閾値以下であると判定したときには、前記遮光カーテン開閉装置により前記遮光カーテンを開状態にさせ、前記天窓開閉装置により前記天窓を閉状態にさせ、前記側窓開閉装置により前記側窓を閉状態にさせるとともに、前記細霧冷房装置を停止させ、
前記栽培施設内の温度が、前記第1閾値以上の第2閾値を超えたと判定したときには、前記遮光カーテン開閉装置により前記遮光カーテンを閉状態にさせ、
前記栽培施設内の温度が、前記第2閾値以上の第3閾値を超えたと判定したときには、前記細霧冷房装置により前記栽培施設内に細霧を供給させ、
前記栽培施設内の温度が、前記第3閾値以上の第4閾値を超えたと判定し、且つ、前記雨量計の計測値に基づいて降雨がないと判定したときには、前記天窓開閉装置により前記天窓を開状態にさせ、
前記栽培施設内の温度が、前記第4閾値以上の第5閾値を超えたと判定し、且つ、前記雨量計の計測値に基づいて降雨がないと判定したときには、前記側窓開閉装置により前記側窓を開状態にさせ、
前記栽培施設内の温度が前記第5閾値を超えた状態が所定時間以上継続したと判定したときには、前記栽培施設内が高温異常状態であることを示す報知情報を出力する制御部を備える
ことを特徴とする植物の栽培施設の管理制御装置。
【請求項2】
植物の栽培施設内の温度を計測する室内温度センサと、
前記栽培施設内の遮光カーテンを開閉する遮光カーテン開閉装置と、
前記栽培施設の天窓を開閉する天窓開閉装置と、
前記栽培施設の側窓を開閉する側窓開閉装置と、
前記栽培施設外部に設置された雨量計と、
前記栽培施設内に細霧を供給する細霧冷房装置と
に接続された植物の栽培施設の管理制御装置が、
前記室内温度センサによる計測値に基づいて前記栽培施設内の温度が予め設定された第1閾値以下であると判定したときには、前記遮光カーテン開閉装置により前記遮光カーテンを開状態にさせ、前記天窓開閉装置により前記天窓を閉状態にさせ、前記側窓開閉装置により前記側窓を閉状態にさせるとともに、前記細霧冷房装置を停止させ、
前記栽培施設内の温度が、前記第1閾値以上の第2閾値を超えたと判定したときには、前記遮光カーテン開閉装置により前記遮光カーテンを閉状態にさせ、
前記栽培施設内の温度が、前記第2閾値以上の第3閾値を超えたと判定したときには、前記細霧冷房装置により前記栽培施設内に細霧を供給させ、
前記栽培施設内の温度が、前記第3閾値以上の第4閾値を超えたと判定し、且つ、前記雨量計の計測値に基づいて降雨がないと判定したときには、前記天窓開閉装置により前記天窓を開状態にさせ、
前記栽培施設内の温度が、前記第4閾値以上の第5閾値を超えたと判定し、且つ、前記雨量計の計測値に基づいて降雨がないと判定したときには、前記側窓開閉装置により前記側窓を開状態にさせ、
前記栽培施設内の温度が前記第5閾値を超えた状態が所定時間以上継続したと判定したときには、前記栽培施設内が高温異常状態であることを示す報知情報を出力する
ことを特徴とする植物の栽培施設の管理制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培施設内の機器の動作を管理するための管理制御装置および管理制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、植物の栽培過程においては、温湿度や二酸化炭素(CO2)濃度等の環境要素を制御することで、光合成を促進させて好適な成長を促すことができる。これに鑑み農業者は、栽培施設外部の天候、施設内部の温湿度、植物の状態等を監視し、過去の経験に基づいていずれかの環境要素の調整が必要と判断すると、手動で栽培施設内の窓やカーテンの開閉操作、加温器のON/OFF操作、CO2供給装置のON/OFF操作等を行うことで、好適な栽培環境を保つようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-153405号公報
【文献】特開2004-201630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、栽培施設内の環境を農業者が手動で操作して調整する場合、常時監視を継続することが困難である。そのため、監視の合間に植物が萎れたり病害が発生したりすることがあるという問題があった。また、農業者が手動で操作して調整する場合は各装置の操作状況を一元管理していないため、例えば加温器を動作させているときに窓を開けてしまうなど、無駄なエネルギー消費を発生させてしまうおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、植物の栽培施設内を、効率良く、高い精度で好適な環境に保つための植物の栽培施設の管理制御装置および管理制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の植物の栽培施設の管理制御装置は、植物の栽培施設内の温度を計測する室内温度センサと、前記栽培施設内の遮光カーテンを開閉する遮光カーテン開閉装置と、前記栽培施設の天窓を開閉する天窓開閉装置と、前記栽培施設の側窓を開閉する側窓開閉装置と、前記栽培施設外部に設置された雨量計と、前記栽培施設内に細霧を供給する細霧冷房装置とに接続された植物の栽培施設の管理制御装置において、前記室内温度センサによる計測値に基づいて前記栽培施設内の温度が予め設定された第1閾値以下であると判定したときには、前記遮光カーテン開閉装置により前記遮光カーテンを開状態にさせ、前記天窓開閉装置により前記天窓を閉状態にさせ、前記側窓開閉装置により前記側窓を閉状態にさせるとともに、前記細霧冷房装置を停止させ、前記栽培施設内の温度が、前記第1閾値以上の第2閾値を超えたと判定したときには、前記遮光カーテン開閉装置により前記遮光カーテンを閉状態にさせ、前記栽培施設内の温度が、前記第2閾値以上の第3閾値を超えたと判定したときには、前記細霧冷房装置により前記栽培施設内に細霧を供給させ、前記栽培施設内の温度が、前記第3閾値以上の第4閾値を超えたと判定し、且つ、前記雨量計の計測値に基づいて降雨がないと判定したときには、前記天窓開閉装置により前記天窓を開状態にさせ、前記栽培施設内の温度が、前記第4閾値以上の第5閾値を超えたと判定し、且つ、前記雨量計の計測値に基づいて降雨がないと判定したときには、前記側窓開閉装置により前記側窓を開状態にさせ、前記栽培施設内の温度が前記第5閾値を超えた状態が所定時間以上継続したと判定したときには、前記栽培施設内が高温異常状態であることを示す報知情報を出力する制御部を備えることを特徴とする。
【0007】
また本発明の植物の栽培施設の管理制御方法は、植物の栽培施設内の温度を計測する室内温度センサと、前記栽培施設内の遮光カーテンを開閉する遮光カーテン開閉装置と、前記栽培施設の天窓を開閉する天窓開閉装置と、前記栽培施設の側窓を開閉する側窓開閉装置と、前記栽培施設外部に設置された雨量計と、前記栽培施設内に細霧を供給する細霧冷房装置とに接続された植物の栽培施設の管理制御装置が、前記室内温度センサによる計測値に基づいて前記栽培施設内の温度が予め設定された第1閾値以下であると判定したときには、前記遮光カーテン開閉装置により前記遮光カーテンを開状態にさせ、前記天窓開閉装置により前記天窓を閉状態にさせ、前記側窓開閉装置により前記側窓を閉状態にさせるとともに、前記細霧冷房装置を停止させ、前記栽培施設内の温度が、前記第1閾値以上の第2閾値を超えたと判定したときには、前記遮光カーテン開閉装置により前記遮光カーテンを閉状態にさせ、前記栽培施設内の温度が、前記第2閾値以上の第3閾値を超えたと判定したときには、前記細霧冷房装置により前記栽培施設内に細霧を供給させ、前記栽培施設内の温度が、前記第3閾値以上の第4閾値を超えたと判定し、且つ、前記雨量計の計測値に基づいて降雨がないと判定したときには、前記天窓開閉装置により前記天窓を開状態にさせ、前記栽培施設内の温度が、前記第4閾値以上の第5閾値を超えたと判定し、且つ、前記雨量計の計測値に基づいて降雨がないと判定したときには、前記側窓開閉装置により前記側窓を開状態にさせ、前記栽培施設内の温度が前記第5閾値を超えた状態が所定時間以上継続したと判定したときには、前記栽培施設内が高温異常状態であることを示す報知情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物の栽培施設の管理制御装置および管理制御方法によれば、植物の栽培施設内を、効率良く、高い精度で好適な環境に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置を用いた栽培施設管理システムの構成を示す全体図である。
【
図2A】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で実行される栽培施設内の高温に対する処理を示すフローチャートである。
【
図2B】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で実行される栽培施設内の高温に対する処理を示すフローチャートである。
【
図3】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で実行される栽培施設内の低温に対する処理を示すフローチャートである。
【
図4】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で実行される栽培施設内の高湿度に対する処理を示すフローチャートである。
【
図5】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で実行される栽培施設内の低湿度に対する処理を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で実行される栽培施設内のCO
2濃度調整処理を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で実行される栽培施設内の植物の状態情報の生成処理を示すフローチャートである。
【
図8】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で生成される植物の重量の計時変化を示すグラフである。
【
図9】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で生成される植物の重量変化量を示すグラフである。
【
図10】一実施形態による植物の栽培施設の管理制御装置で生成される植物の蒸散量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈一実施形態による管理制御装置を用いた栽培施設管理システムの構成〉
本発明の一実施形態による管理制御装置を用いた栽培施設管理システム1の構成について、
図1を参照して説明する。本実施形態による栽培施設管理システム1が搭載される栽培施設Xは、内部に複数の植物P1~P5がそれぞれ容器10-1~10-5内の土壌に栽植されて設置されている。この栽培施設Xは、天井部分を覆うように設置された遮光カーテン2-1、2-2および保温カーテン3-1、3-2と、天井の一部を解放するための天窓4-1、4-2と、側壁の一部を解放するための側窓5-1、5-2とを備える。遮光カーテン2-1、2-2は、栽培施設X内に入る太陽光を遮断する。保温カーテン3-1、3-2は、栽培施設X内の熱が外部に漏れることを防止する。
【0011】
栽培施設Xには、遮光カーテン開閉装置21と、保温カーテン開閉装置31と、天窓開閉装置41と、側窓開閉装置51とが設置されている。遮光カーテン開閉装置21は、遮光カーテン2-1、2-2を開閉させる。保温カーテン開閉装置31は、保温カーテン3-1、3-2を開閉させる。天窓開閉装置41は、天窓4-1、4-2を開閉させる。側窓開閉装置51は、側窓5-1、5-2を開閉させる。
【0012】
また、栽培施設X内には、室内温度センサ11と、室内湿度センサ12と、CO2濃度センサ13と、照度センサ14と、加温器15と、CO2供給装置16と、細霧冷房装置17とが設置されている。室内温度センサ11は、栽培施設X内の温度を計測する。室内湿度センサ12は、栽培施設X内の相対湿度を計測する。CO2濃度センサ13は、栽培施設X内のCO2濃度を計測する。照度センサ14は、栽培施設X内の照度を計測する。加温器15は、例えば燃焼処理により、栽培施設X内を加温する。CO2供給装置16は、例えば、加温器15による燃焼処理で発生したCO2を用いて、栽培施設X内にCO2を供給する。細霧冷房装置17は、栽培施設X内に霧状の水を噴霧することで細霧冷房を行う。
【0013】
また、栽培施設X外部には、雨量計18と、外気温度センサ19とが設置されている。雨量計18は、降雨量を計測する。外気温度センサ19は、栽培施設X外部の温度を計測する。
【0014】
また、栽培施設X内の一部の植物が栽植された容器(
図1においては、植物P3が栽植された容器10-3)の下部には、重量検出器としてのロードセル20が設置されている。ロードセル20は、上部に積載された植物P3の重量を検出する。
【0015】
また、栽培施設X内には、室内温度センサ11、室内湿度センサ12、CO2濃度センサ13、照度センサ14、加温器15、CO2供給装置16、細霧冷房装置17、雨量計18、外気温度センサ19、およびロードセル20に接続された管理制御装置60が設置されている。
【0016】
管理制御装置60は、制御部61と、記憶部62とを有する。制御部61は、室内温度センサ11、室内湿度センサ12、CO2濃度センサ13、照度センサ14、雨量計18、または外気温度センサ19の計測値に基づいて、遮光カーテン開閉装置21、保温カーテン開閉装置31、天窓開閉装置41、側窓開閉装置51、加温器15、CO2供給装置16、または細霧冷房装置17の動作を制御する。また、制御部61は、ロードセル20の検出値に基づいて、栽培施設X内の植物の状態情報を生成する。記憶部62は、制御部61による制御処理で用いられる各種情報が予め記憶される。記憶部62に記憶される情報の詳細については、後述する。
【0017】
また、栽培施設Xの外部には、栽培施設X内の状態を監視する監視員が操作する監視装置70が、管理制御装置60に接続されて設置されている。
【0018】
〈一実施形態による栽培施設管理システムの動作〉
次に、本実施形態による栽培施設管理システム1の動作として、栽培施設X内の高温、低温、高湿度、低湿度、またはCO2不足に対してそれぞれ実行される処理、および、植物の状態情報の生成処理について説明する。
【0019】
(1)栽培施設X内の高温に対する処理
栽培施設X内の高温に対して管理制御装置60で実行される処理について、
図2のフローチャートを参照して説明する。本実施形態において、管理制御装置60の記憶部62には、栽培施設X内の高温に対する処理で用いられる情報として、栽培施設X内の温度に関する6つの閾値(第1閾値~第6閾値)が予め設定され記憶されている。これらの閾値は、第1閾値が最も低い値で設定され、第1閾値≦第2閾値≦第3閾値≦第4閾値≦第5閾値≦第6閾値となるように、それぞれの値が設定される。
【0020】
第1閾値は、栽培施設X内の高温に対する処理が必要であるか否かを判定するための値である。第6閾値は、制御対象の機器を用いて栽培施設X内を適正な温度範囲まで下げることが不可能であるか否かを判定するための値である。各閾値は、栽培される植物の種類や栽培施設Xが設置される場所等によって異なるが、本実施形態においては、第1閾値が26℃、第2閾値が26℃、第3閾値が28℃、第4閾値が30℃、第5閾値が32℃、第6閾値が34℃として設定されている。
【0021】
これらの情報が記憶された状態で、制御部61において、室内温度センサ11の計測値に基づいて栽培施設X内の温度が第1閾値(26℃)よりも高いか否かが判定される(S1)。ここで、栽培施設X内の温度が26℃以下であるときには(S1の「NO」)、高温に対する処理は不要であると判定される。この場合、現在の各機器の動作状態に関わらず、遮光カーテン開制御信号が遮光カーテン開閉装置21に送信され、遮光カーテン開閉装置21により遮光カーテン2-1、2-2が開状態にされる。また、天窓閉制御信号が天窓開閉装置41に送信され、天窓開閉装置41により天窓4-1、4-2が閉状態にされる。また、側窓閉制御信号が側窓開閉装置51に送信され、側窓開閉装置51により側窓5-1、5-2が閉状態にされる。また、細霧冷房OFF信号が細霧冷房装置17に送信され、細霧冷房装置17がOFF状態に制御される。ステップS1において、栽培施設X内の温度が第1閾値よりも高いと判定されたときには(S1の「YES」)、ステップS3に移行して高温に対する処理が開始される。
【0022】
高温に対する処理の開始後、栽培施設X内の温度が第2閾値(26℃)よりも高いと判定されると(S3の「YES」)、遮光カーテン閉制御信号が遮光カーテン開閉装置21に送信される。そして、遮光カーテン開閉装置21により遮光カーテン2-1、2-2が閉状態にされる(S4)。
【0023】
その後、栽培施設X内の温度がさらに上昇し、第3閾値(28℃)よりも高くなったと判定されると(S5の「YES」)、室内温度センサ11の計測値と室内湿度センサ12の計測値とに基づいて、栽培施設X内の飽差が算出される。算出された飽差が予め設定された値よりも高ければ(S6の「YES」)、細霧冷房が有効であると判定される。この場合、細霧冷房ON制御信号が細霧冷房装置17に送信され、細霧冷房装置17がON状態になる(S7)。細霧冷房装置17がON状態になると、細霧冷房装置17から栽培施設X内に霧状の水が噴霧される。
【0024】
ステップS7において細霧冷房が行われた後、またはステップS6において栽培施設X内の飽差が予め設定された値以下であると判定された後(S6の「NO」)、温度がさらに上昇して第4閾値(30℃)よりも高くなったか否かが監視される(S8)。栽培施設X内の温度が30℃よりも高くなったと判定されると(S8の「YES」)、雨量計18の計測値に基づいて、栽培施設Xの設置場所で雨が降っているか否かが判定される(S9)。ここで雨が降っていないと判定されると(S9の「NO」)、天窓開制御信号が天窓開閉装置41に送信され、天窓開閉装置41により天窓4-1、4-2が開状態にされる(S10)。
【0025】
天窓4-1、4-2が開状態にされた後、温度がさらに上昇して第5閾値(32℃)よりも高くなったと判定されると(S11の「YES」)、側窓開制御信号が側窓開閉装置51に送信され、側窓5-1、5-2が開状態にされる(S12)。
【0026】
側窓5-1、5-2が開状態にされた後、または栽培施設X外部で雨が降っていると判定された後(S9の「YES」)、1時間程度経過してから(S13の「YES」)、温度が第6閾値(34℃)よりも高くなっているか否かが判定される(S14)。
【0027】
ここで、栽培施設X内の温度が34℃よりも高くなったと判定されると(S14の「YES」)、第5閾値を超えた状態が1時間以上継続した高温異常状態であり、植物が枯れてしまう可能性があると判定され、高温異常報知信号が監視装置70に送信される。監視装置70では、管理制御装置60から送信された高温異常報知信号が受信されると、栽培施設X内が高温異常状態であることを監視員に報知するための情報、例えばアラームが出力される(S15)。
【0028】
上述した処理の中で、ステップS3において栽培施設X内の温度が第2閾値以下であると判定されたとき(S3の「NO」)、ステップS5において第3閾値以下であると判定されたとき(S5の「NO」)、ステップS8において第4閾値以下であると判定されたとき(S8の「NO」)、ステップS11において第5閾値以下であると判定されたとき(S11の「NO」)、または、ステップS14において第6閾値以下であると判定されたとき(S14の「NO」)にはステップS1に戻る。そして、栽培施設X内の温度が第1閾値以下になれば(S1の「NO」)、遮光カーテン2-1、2-2が開状態にされ、天窓4-1、4-2および側窓5-1、5-2が閉状態にされ、細霧冷房装置17がOFF状態に制御される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、栽培施設X内の温度が適正範囲よりも高くなったときに、まず遮光カーテン2-1、2-2を閉め、それでもさらに温度が上昇してしまったときに細霧冷房を行うようにする。このように処理を行うことで、なるべくエネルギーを消費せずに温度調整を行うことができる。また、細霧冷房を行ってもさらに温度が上昇してしまったときにのみ、天窓、側窓を開けるようにすることで、なるべく病害虫の浸入を防止しつつ、温度調整を効果的に行うことができる。
【0030】
(2)栽培施設X内の低温に対する処理
次に、栽培施設X内の低温に対して管理制御装置60で実行される処理について、
図3のフローチャートを参照して説明する。本実施形態において、記憶部62には、栽培施設X内の低温に対する処理で用いられる情報として、栽培施設X内の温度に関する4つの閾値(第7閾値~第10閾値)が予め設定された記憶されている。これらの閾値は、第7閾値が最も高い値で設定され、第7閾値≧第8閾値≧第9閾値≧第10閾値となるように、それぞれの値が設定される。第7閾値は、上記(1)で説明した第1閾値以下であり、栽培施設X内の低温に対する処理が必要であるか否かを判定するための値である。また、第10閾値は、制御対象の機器を用いて栽培施設X内を適正な温度まで上げることが不可能であるか否かを判定するための値である。
【0031】
また、記憶部62には、日毎の日の出および日の入りの時刻が予め記憶されており、これに基づいて制御部61において、カレンダー機能により現在の日時から日中であるか夜間であるかが判定される。
【0032】
冬場は夜間の外気温度が低く栽培施設X内の温度が下がりやすいため、冬場の夜間に関しては第7閾値~第10閾値が他の期間よりも高い値で設定される。例えば、第7閾値が日中に対しては20℃、夜間に対しては26℃に設定される。また、第8閾値が日中に対しては20℃、夜間に対しては26℃に設定され、第9閾値が日中に対しては17℃、夜間に対しては23℃に設定され、第10閾値が日中に対しては12℃、夜間に対しては18℃に設定される。以下に、制御部61により日中に実行される、低温に対する処理について説明する。
【0033】
まず、室内温度センサ11の計測値および現在時刻情報に基づいて、栽培施設X内の温度が第7閾値(20℃)よりも低いか否かが判定される(S21)。ここで、栽培施設X内の温度が20℃以上であるときには(S21の「NO」)、低温に対する処理は不要であると判定される。この場合、現在の各機器の動作状態に関わらず、保温カーテン開制御信号が保温カーテン開閉装置31に送信され、保温カーテン開閉装置31により保温カーテン3-1、3-2が開状態にされる。また、加温器OFF信号が加温器15に送信され、加温器15がOFF状態(停止状態)に制御される。ステップS21において、栽培施設X内の温度が第7閾値よりも低いと判定されたときには(S21の「YES」)、ステップS23に移行して低温に対する処理が開始される。
【0034】
低温に対する処理の開始後、栽培施設X内の温度が第8閾値(20℃)よりも低いと判定されると(S23の「YES」)、保温カーテン閉制御信号が保温カーテン開閉装置31に送信される。そして、保温カーテン開閉装置31により保温カーテン3-1、3-2が閉状態にされる(S24)。
【0035】
その後、栽培施設X内の温度がさらに低下し、第9閾値(17℃)よりも低くなったと判定されると(S25の「YES」)、加温器ON制御信号が加温器に送信されて加温器15がON状態になり、栽培施設X内が加温される(S26)。
【0036】
加温器15がON状態にされた後、1時間程度経過してから(S27の「YES」)、栽培施設X内の温度がさらに低下して第10閾値(12℃)よりも低くなったか否かが判定される(S28)。ここで、栽培施設X内の温度が第10閾値よりも低くなったと判定されると(S28の「YES」)、第9閾値よりも低い状態が1時間以上継続した低温異常状態であり、植物に低温障害が発生するおそれがあると判定される。この判定に基づいて、低温異常報知信号が生成され、監視装置70に送信される。監視装置70では、管理制御装置60から送信された低温異常報知信号が受信されると、栽培施設X内の低温異常を監視員に報知するための情報、例えばアラームが出力される(S29)。
【0037】
上述した処理の中で、ステップS23において栽培施設X内の温度が第8閾値以上であると判定されたとき(S23の「NO」)、ステップS25において第9閾値以上であると判定されたとき(S25の「NO」)、または、ステップS28において第10閾値以上であると判定されたとき(S28の「NO」)には、ステップS21に戻って処理が継続される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態では、栽培施設X内の温度が適正範囲よりも低くなったときに、まず保温カーテン3-1、3-2を閉める。そして、さらに温度が低下してしまったときに加温器による加温処理を行う。このように段階的に低温に対する処理を行うことで、なるべくエネルギーを消費せずに温度調整を行うことができる。
【0039】
(3)栽培施設X内の高湿度に対する処理
次に、栽培施設X内の高湿度に対して管理制御装置60で実行される処理について、
図4のフローチャートを参照して説明する。本実施形態において、記憶部62には、栽培施設X内の高湿度に対する処理で用いられる情報として、栽培施設X内の相対湿度に関する4つの閾値(第11閾値~第14閾値)および外気温度に関する1つの閾値(第15閾値)が予め設定され記憶されている。栽培施設X内の相対湿度の閾値は、第11閾値が最も低い値で設定され、第11閾値≦第12閾値≦第13閾値≦第14閾値となるように、それぞれの値が設定される。
【0040】
第11閾値は、栽培施設X内の高湿度に対する処理が必要であるか否かを判定するための値である。第14閾値は、制御対象の機器を用いて栽培施設X内を適正な相対湿度範囲まで下げることが不可能であるか否かを判定するための値である。設定される各閾値は、栽培施設X内で栽培される植物の種類や栽培施設Xが設置される場所等によって異なる。本実施形態においては、第11閾値が相対湿度60%、第12閾値が70%、第13閾値が75%、第14閾値が80%として設定されている。
【0041】
これらの情報が記憶された状態で、制御部61において、室内湿度センサ12の計測値に基づいて、栽培施設X内の相対湿度が第11閾値(60%)よりも高いか否かが判定される(S31)。ここで、栽培施設X内の相対湿度が60%以下であるときには(S31の「NO」)、高湿度に対する処理は不要であると判定される。この場合、現在の機器の動作状態に関わらず、天窓閉制御信号が天窓開閉装置41に送信され、天窓開閉装置41により天窓4-1、4-2が閉状態にされる。また、加温器OFF信号が加温器15に送信され、加温器15がOFF状態に制御される。ステップS31において、栽培施設X内の湿度が第11閾値よりも高いと判定されたときには(S31の「YES」)、ステップS33に移行して高湿度に対する処理が開始される。
【0042】
高湿度に対する処理の開始後、栽培施設X内の湿度が上昇し、第12閾値(70%)よりも高くなったと判定されると(S33の「YES」)、加温器ON制御信号が加温器15に送信され、加温器15がON状態に制御される(S34)。
【0043】
その後、栽培施設X内の相対湿度がさらに上昇し、第13閾値(75%)よりも高くなったと判定されると(S35の「YES」)、外気温度センサ19の計測値に基づいて、栽培施設X外部の外気温度が第15閾値よりも高いか否かが判定される(S36)。外気温度が第15閾値よりも高いと判定されると(S36の「YES」)、天窓開制御信号が天窓開閉装置41に送信され、天窓4-1、4-2が開状態にされる(S37)。
【0044】
天窓4-1、4-2が開状態にされた後、3時間程度経過してから(S38の「YES」)、栽培施設X内の相対湿度がさらに上昇して第14閾値よりも高くなった否かが判定される(S39)。
【0045】
ここで、栽培施設X内の相対湿度が第14閾値よりも高くなったと判定されると(S39の「YES」)、第13閾値よりも湿度が高い状態が3時間以上継続した高湿異常状態であり植物に病害が発生する可能性があると判定される。この判定に基づいて、高湿度異常報知信号が生成され、監視装置70に送信される。高湿度により植物に黒カビ等の病害が発生するまでには、高温による被害が発生するときよりも時間がかかるため、各機器の動作を制御して3時間程度経過してからステップS39における判定処理を行うようにする。監視装置70では、管理制御装置60から送信された高湿度異常報知信号が受信されると、栽培施設X内の高湿度異常を監視員に報知するための情報、例えばアラームが出力される(S40)。
【0046】
上述した処理の中で、ステップS33において栽培施設X内の相対湿度が第12閾値以下であると判定されたとき(S33の「NO」)、ステップS35において第13閾値以下であると判定されたとき(S35の「NO」)、または、ステップS39において第14閾値以下であると判定されたとき(S39の「NO」)には、ステップS31に戻って処理が継続される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、栽培施設X内の相対湿度が適正範囲よりも高くなったときには、まず加温器15をON状態にする。そして、さらに相対湿度が上昇してしまったときに天窓4-1、4-2を開状態にする。このように段階的に高湿度に対する処理を行うことで、なるべく病害虫の浸入を防止しつつ、湿度調整を効果的に行うことができる。
【0048】
(4)栽培施設X内の低湿度に対する処理
次に、栽培施設X内の低湿度に対して管理制御装置60で実行される処理について、
図5のフローチャートを参照して説明する。本実施形態において、記憶部62には、栽培施設X内の低湿度に対する処理で用いられる情報として、栽培施設X内の温度に関する3つの閾値(第16閾値~第18閾値)が予め設定された記憶されている。これらの閾値は、第16閾値が最も高い値で設定され、第16閾値≧第17閾値≧第18閾値となるように、それぞれの値が設定される。第16閾値は、上記(3)で説明した第11閾値よりも低く、栽培施設X内の低湿度に対する処理が必要であるか否かを判定するための値である。また、第18閾値は、制御対象の機器を用いて栽培施設X内を適正な相対湿度まで上げることが不可能であるか否かを判定するための値である。本実施形態においては、第16閾値が相対湿度40%、第17閾値が35%、第18閾値が30%として設定されている。
【0049】
これらの情報が記憶された状態で、制御部61において、室内温度センサ11の計測値と室内湿度センサ12の計測値とに基づいて、栽培施設X内の相対湿度が第16閾値(40%)よりも低いか否かが判定される(S41)。ここで、栽培施設X内の相対湿度が40%以上であるときには(S41の「NO」)、低湿度に対する処理は不要であると判定される。この場合、現在の各機器の動作状態に関わらず、細霧冷房OFF制御信号が細霧冷房装置17に送信され、細霧冷房装置17がON状態に制御される。ステップS41において、栽培施設X内の相対湿度が第16閾値よりも低いと判定されたときには(S41の「YES」)、ステップS43に移行して低湿度に対する処理が開始される。
【0050】
低湿度に対する処理の開始後、栽培施設X内の湿度が低下し、第17閾値(35%)よりも低くなったと判定されると(S43の「YES」)、細霧冷房ON制御信号が細霧冷房装置17に送信され、細霧冷房装置17がON状態に制御される(S44)。
【0051】
その後、3時間程度経過してから(S45の「YES」)、栽培施設X内の相対湿度がさらに低下して第18閾値よりも低くなった否かが判定される(S46)。ここで、栽培施設X内の相対湿度が第18閾値よりも低くなったと判定されると(S46の「YES」)、湿度が第17閾値よりも低い状態が3時間以上継続した低湿異常状態であり植物に白カビ等の病害虫が発生するおそれがあると判定される。この判定に基づいて低湿度異常報知信号が生成され、監視装置70に送信される。監視装置70では、管理制御装置60から送信された低湿度異常報知信号が受信されると、栽培施設X内の低湿度異常を監視員に報知するための情報、例えばアラームが出力される(S47)。
【0052】
上述した処理の中で、ステップS43において栽培施設X内の相対湿度が第17閾値以上であると判定されたとき(S43の「NO」)、または、ステップS46において第18閾値以上であると判定されたとき(S46の「NO」)には、ステップS41に戻って処理が継続される。
【0053】
以上説明したように、栽培施設X内の相対湿度が適正範囲より低くなったときには、一般的に温度を低下させる際に用いている細霧冷房装置17により霧状の水を栽培施設X内に噴霧させることで、相対湿度の調整を行う。このように処理を行うことで、既存の設備を流用して効率よく湿度調整を行うことができる。
【0054】
(5)栽培施設X内のCO
2濃度調整処理
次に、管理制御装置60で実行される、栽培施設X内のCO
2濃度調整処理について、
図6のフローチャートを参照して説明する。本実施形態において、記憶部62には、栽培施設X内にCO
2を供給する必要の有無を判定するためのCO
2濃度の閾値(第19閾値)が予め設定され記憶されている。また、制御部61には、(2)で説明した処理と同様にカレンダー機能が搭載されており、現在の時刻から日中の午前であるか、午後であるか、または夜間であるかが判定される。
【0055】
午前中は植物の光合成活動が活発であるため午前は午後よりも第19閾値が高く設定されており、例えば午前は1000ppm、午後は800ppmに設定される。また、記憶部62には、植物の光合成に必要な照度があるか否かを判定するために設定された閾値(第20閾値)が、例えば5000luxとして予め記憶されている。この第20閾値は、該当場所および時期により異なる日射角度に基づいて適宜補正される。
【0056】
これらの情報が記憶された状態で、制御部61において、夜間はCO2供給装置16がOFF状態にされている(S51の「NO」、S52)。日の出時刻が経過し日中時間帯になると(S51の「YES」)、天窓4-1、4-2および側窓5-1、5-2が閉状態であるか否かが判定される(S53)。天窓4-1、4-2または側窓5-1、5-2が開状態であるときには(S53の「NO」)、CO2を供給しても解放された窓から拡散されてしまい供給効率が悪いため、CO2濃度の高低に関わらず、CO2供給装置16はOFF状態が維持される(S52)。
【0057】
天窓4-1、4-2および側窓5-1、5-2が閉状態であるときには(S53の「YES」)、CO2濃度センサ13の計測値に基づいて、栽培施設X内のCO2濃度が、該当する時間帯(午前または午後)の第19閾値よりも低いか否かが判定される(S54)。ここで、栽培施設X内のCO2濃度が第19閾値よりも低いと判定されると(S54の「YES」)、さらに、照度センサ14の計測値に基づいて、栽培施設X内の照度が第20閾値(5000lux)よりも高いか否かが判定される(S55)。ここで、栽培施設X内の照度が第20閾値よりも高いと判定されると(S55の「YES」)、CO2供給装置ON信号がCO2供給装置16に送信され、CO2供給装置16により栽培施設X内にCO2が供給される(S56)。
【0058】
ステップS54においCO2濃度が第19閾値以上であると判定されたとき(S54の「NO」)、またはステップS55において照度が第20閾値以下であると判定されたとき(S55の「NO」)には、CO2供給装置16はOFF状態が維持される(S52)。
【0059】
その後、日の入り時刻までの日中時間帯の間は(S51の「YES」)、ステップS52~S56の処理が繰り返される。
【0060】
以上説明したように、日中に、栽培施設X内の天窓4-1,4-2および側窓5-1,5-2が閉状態で、CO2濃度が低く、且つ、照度が高いときにCO2を供給することで、効率よく植物の光合成を活性化させることができる。
【0061】
(6)栽培施設X内の植物の状態情報の生成処理
次に、管理制御装置60で実行される、栽培施設X内の植物の状態情報の生成処理について説明する。本実施形態においては、ロードセル20において、予め設定された第1時間間隔(例えば、1分間隔)で上部に積載された植物P3の重量が検出され、管理制御装置60に送信される。管理制御装置60で実行される処理について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0062】
管理制御装置60の制御部61では、ロードセル20から送信された植物P3の重量の情報が取得されると、
図8(a)に示すように時間経過により変化する重量を示すグラフが生成される(S61、S62)。
図8(a)のグラフでは、2016年1月24日の午後に重量が21000g程度から22500g程度に大きく増加し、その後毎日、日中に100g前後の連続した増減を繰り返しつつ、徐々に重量が増加している。
【0063】
次に、ステップS62で生成されたグラフから、植物P3の重量の各検出時点における直前の検出時点からの重量変化量を示すグラフが、
図8(b)に示すように生成される(S63)。
【0064】
次に、ステップS63で生成されたグラフから、増加による重量変化量、および所定値以上の減少による重量変化量が算出された時間帯については、当該重量変化は蒸散以外の外乱によるものと判定され、該当する時間帯の重量変化量の情報が除去される(S64)。
図8(b)では、2016年1月24日午後の大きな重量増加が、当該ロードセル上に設置された容器内の土壌に植物が栽植された等の外乱によるものと判定され、該当する時間帯の重量の情報が除去される。また、各日の日中に発生した連続した重量増減のうち増加部分は灌水によるものであると判定され、該当する時間帯の重量変化量の情報が除去される。また、所定値以上の減少による重量変化があったときには、果実の収穫によるものであると判定され、該当する時間帯の重量変化量の情報が除去される。
【0065】
次に、外乱による重量変化があった時間帯の情報が除去された後の重量変化量の情報から、第2時間ごと(例えば、1時間ごと)の総重量減少量の情報が、蒸散量を示すグラフとして
図8(c)に示すように生成される(S65)。第2時間は第1時間よりも長い時間で設定されており、制御部61では、それぞれ第2時間内の重量減少量の総計値が、当該第2時間内の蒸散量として算出される。
図8(c)では、日毎に、日中の午後の時間帯に、蒸散量が多く算出されている。
【0066】
生成された
図8(c)の蒸散量を示すグラフの情報は、栽培施設X内の植物の状態情報として監視装置70に送信される。このとき管理制御装置60は、日中の各時間における蒸散量と、対応する時間における温度、相対湿度、CO
2濃度および照度等の栽培施設X内の環境情報とから、植物で光合成が好適に行われているか否かを示す報知情報を生成して植物の状態情報に含めてもよい。例えば、栽培施設X内の環境が光合成に適した環境であるにも関わらず蒸散量が所定値よりも少なったときは、光合成が好適に行われていない可能性があり、土壌状態や灌水状態の確認等を行う必要があることを報知する情報を植物の状態情報に含める。監視装置70では、管理制御装置60から送信されたグラフおよび報知情報を表示することで、監視員に栽培施設X内の植物の状態情報が提供される。
【0067】
以上説明したように、栽培施設X内の植物の蒸散活動状況を精度よく検出することにより、好適に光合成が行われる環境を提供できているか否かを効率よく判定することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 栽培施設管理システム
2-1,2-2 遮光カーテン
3-1,3-2 保温カーテン
4-1,4-2 天窓
5-1,5-2 側窓
10-1~10-5 容器
11 室内温度センサ
12 室内湿度センサ
13 濃度センサ
14 照度センサ
15 加温器
16 供給装置
17 細霧冷房装置
18 雨量計
19 外気温度センサ
20 ロードセル
21 遮光カーテン開閉装置
31 保温カーテン開閉装置
41 天窓開閉装置
51 側窓開閉装置
60 管理制御装置
61 制御部
62 記憶部
70 監視装置