(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】伸縮棒
(51)【国際特許分類】
F16B 7/14 20060101AFI20221014BHJP
F16F 9/02 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
F16B7/14 M
F16F9/02
(21)【出願番号】P 2018075092
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591283903
【氏名又は名称】吉田電材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 健司
(72)【発明者】
【氏名】小林 鉄男
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096375(JP,A)
【文献】特表2009-540220(JP,A)
【文献】特開2008-106885(JP,A)
【文献】特開2006-230479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 1/00-41/06
A47C 3/00- 3/40
A47F 5/00- 8/02
F15B 15/00-15/28
F16B 7/00- 7/22
F16F 9/00- 9/58
F16M 1/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入れ子状に組み合わされた複数の筒であって、外筒と、前記外筒の内側に伸縮自在に組み合わされたn個(nは1以上の任意の整数を示す。)の内筒とを含んだ複数の筒と、
前記外筒における両端間の空気の流れを止める閉塞部と、
n個の前記内筒の少なくとも一部における両端間の空気の流れを制御する1以上の第1弁とを有し、
n個の前記内筒の各々を区別して第k内筒(kは1からnまでの任意の整数を示す。)と呼び、
最も外側の前記内筒を第n内筒と呼び、
k≧2の場合、前記第k内筒の内側の前記内筒を第(k-1)内筒と呼び、
前記外筒と前記第n内筒とにより形成される内部空間を第n内部空間と呼び、
k≧2の場合、前記第k内筒と前記第(k-1)内筒とにより形成される内部空間を第(k-1)内部空間と呼び、
最も内側の前記内筒である第1内筒の内部は外気に通じており、
前記第1内筒における両端間の空気の流れを制御する前記第1弁は、
前記外筒又は第2内筒と前記第1内筒とにより形成される第1内部空間の圧力が前記外気の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、
前記第1内部空間の圧力が前記外気の圧力に比べて低い場合に開いた状態となり、
n≧2の場合、
前記第n内筒における両端間の空気の流れを制御する前記第1弁は、
前記第n内部空間の圧力が、前記第n内筒と第(n-1)内筒とにより形成される第(n-1)内部空間の圧力に比べて高い場合に
閉じた状態となり、
前記第n内部空間の圧力が前記第(n-1)内部空間の圧力に比べて低い場合に開いた状態となり、
k≧3の場合、
前記第(k-1)内筒における両端間の空気の流れを制御する前記第1弁は、
前記第(k-1)内部空間の圧力が、前記第(k-1)内筒と第(k-2)内筒とにより形成される第(k-2)内部空間の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、
前記第(k-1)内部空間の圧力が前記第(k-2)内部空間の圧力に比べて低い場合に開いた状態となる、
伸縮棒。
【請求項2】
1以上の前記内筒における前記閉塞部側の一端を塞ぐ1以上の栓を有し、
前記栓には第1貫通孔が形成されており、
前記第1弁は、前記第1貫通孔における空気の流れを制御する、
請求項1に記載の伸縮棒。
【請求項3】
前記第1弁は、前記栓の前記閉塞部側の第1端面に密着可能に設けられた第1可撓性シートを含み、
前記第1可撓性シートは、
前記第1端面に密着した状態において前記第1端面に形成された前記第1貫通孔の第1開口部を塞ぎ、
前記第1端面との間に隙間がある状態において前記第1開口部を開放する、
請求項2に記載の伸縮棒。
【請求項4】
前記第1可撓性シートは、前記第1端面に密着する面の一部が前記第1端面に固定されている、
請求項3に記載の伸縮棒。
【請求項5】
nが2以上であり、
n個の前記内筒の各々に前記栓が設けられており、
前記栓は、前記閉塞部に対して反対側の端面に第1凸部が形成されており、
k≧2の場合、前記第(k-1)内筒の前記栓における前記第1端面と、前記第k内筒の前記栓に形成された前記第1凸部とが当接可能であり、
前記第1端面と前記第1凸部とが当接した状態において当該第1端面に設けられた前記第1可撓性シートが前記第1開口部を開閉可能である、
請求項3又は請求項4に記載の伸縮棒。
【請求項6】
前記閉塞部は、前記第n内筒の前記栓における前記第1端面と当接可能な第2凸部を含み、
前記第1端面と前記第2凸部とが当接した状態において当該第1端面に設けられた前記第1可撓性シートが前記第1開口部を開閉可能である、
請求項3~請求項5の何れか一項に記載の伸縮棒。
【請求項7】
前記第n内筒と前記外筒との隙間、又は、k≧2の場合における前記第
(k-1)内筒と前記第k内筒との隙間を塞ぐ1以上のシール部材を有し、
前記シール部材が前記栓の外周面に固定されている、
請求項2~請求項6の何れか一項に記載の伸縮棒。
【請求項8】
前記閉塞部には第2貫通孔が形成されており、
前記閉塞部の前記第2貫通孔における空気の流れを制御する第2弁を有し、
前記第2弁は、
前記第n内部空間の圧力が前記外気の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、
前記第n内部空間の圧力が前記外気の圧力に比べて低い場合に開いた状態となる、
請求項1~請求項7の何れか一項に記載の伸縮棒。
【請求項9】
前記第2弁は、前記第n内部空間に面する前記閉塞部の第2端面に密着可能に設けられた第2可撓性シートを含み、
前記第2可撓性シートは、
前記第2端面に密着した状態において前記第2端面に形成された前記第2貫通孔の第2開口部を塞ぎ、
前記第2端面との間に隙間がある状態において前記第2開口部を開放する、
請求項8に記載の伸縮棒。
【請求項10】
前記閉塞部には第2貫通孔が形成されており、
前記外筒の前記第2貫通孔における空気の流れを制御する第2弁を有し、
前記第2弁は、前記第n内筒と前記外筒とにより形成される前記第n内部空間に面する前記閉塞部の第2端面に密着可能に設けられた第2可撓性シートを含み、
前記第2可撓性シートは、
前記第n内部空間の圧力が前記外気の圧力に比べて高い場合、前記第2端面に密着した状態において前記第2端面に形成された前記第2貫通孔の第2開口部を塞ぎ、
前記第n内部空間の圧力が前記外気の圧力に比べて低い場合、前記第2端面との間に隙間がある状態において前記第2開口部を開放し、
前記第2凸部は、前記第2端面に形成されており、
前記第1端面と前記第2凸部とが当接した状態において、当該第1端面に設けられた前記第1可撓性シートが前記第1開口部を開閉可能であるとともに、前記第2可撓性シートが前記第2開口部を開閉可能である、
請求項6に記載の伸縮棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の筒を入れ子状に組み合わせた構造の伸縮棒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の筒を入れ子状に組み合わせた構造を持つ伸縮棒が一般的に知られている。このような構造の伸縮棒は、例えばカメラを先端に取り付けて家屋や橋梁などの高所を撮影する用途や、ライトを先端に取り付けて周辺を照らす用途、アンテナを先端に取り付けて無線通信に用いる用途、旗を掲げる竿としての用途など、様々な用途で使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数の筒を入れ子状に組み合わせた構造の伸縮棒は、各筒を長手方向へ移動させることにより、僅かな力で容易に伸縮させることができる。また、コレット等を用いた固定機構によって筒同士を固定することにより、伸縮棒の長さを無段階に調節することができる。しかしながら、このような伸縮棒を鉛直方向に立てた場合、固定機構による筒同士の固定を急に解除すると、上方の筒が重力によって勢いよく落下してしまう。このような筒の落下を防止するためには、固定機構による固定の解除を慎重に行わなければならならず、扱いが面倒である。
【0004】
そこで本開示は、鉛直方向に立てた状態で筒同士の固定を解除した場合に上方の筒が勢いよく落下することを防止できる伸縮棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る伸縮棒は、入れ子状に組み合わされた複数の筒であって、外筒と、外筒の内側に伸縮自在に組み合わされたn個(nは1以上の任意の整数を示す。)の内筒とを含んだ複数の筒と、外筒における両端間の空気の流れを止める閉塞部と、n個の内筒の少なくとも一部における両端間の空気の流れを制御する1以上の第1弁とを有し、n個の内筒の各々を区別して第k内筒(kは1からnまでの任意の整数を示す。)と呼び、最も外側の内筒を第n内筒と呼び、k≧2の場合、第k内筒の内側の内筒を第(k-1)内筒と呼び、外筒と第n内筒とにより形成される内部空間を第n内部空間と呼び、k≧2の場合、第k内筒と第(k-1)内筒とにより形成される内部空間を第(k-1)内部空間と呼び、最も内側の内筒である第1内筒の内部は外気に通じており、第1内筒における両端間の空気の流れを制御する第1弁は、外筒又は第2内筒と第1内筒とにより形成される第1内部空間の圧力が外気の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、第1内部空間の圧力が外気の圧力に比べて低い場合に開いた状態となり、n≧2の場合、第n内筒における両端間の空気の流れを制御する第1弁は、第n内部空間の圧力が、第n内筒と第(n-1)内筒とにより形成される第(n-1)内部空間の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、第n内部空間の圧力が第(n-1)内部空間の圧力に比べて低い場合に開いた状態となり、k≧3の場合、第(k-1)内筒における両端間の空気の流れを制御する第1弁は、第(k-1)内部空間の圧力が、第(k-1)内筒と第(k-2)内筒とにより形成される第(k-2)内部空間の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、第(k-1)内部空間の圧力が第(k-2)内部空間の圧力に比べて低い場合に開いた状態となる。
【0006】
上記伸縮棒によれば、鉛直方向に立てた状態で筒同士の固定(内筒同士の固定、内筒と外筒との固定)を解除した場合、1以上の内筒が外筒の底部に近づく方向へ移動する。1以上の内筒が外筒の底部に近づくと、当該1以上の内筒に対して外側にある1以上の内部空間の体積が小さくなり、1以上の内部空間において圧力が上昇する。ここで、最も内側の内筒の内部は外気に通じているため、当該1以上の内筒に対して外側にある1以上の内部空間の圧力が外気の圧力より高くなると、当該1以上の内筒における少なくとも1つの第1弁が閉じた状態となる。少なくとも1つの第1弁が閉じた状態になると、少なくとも1つの内部空間が密閉された状態となり、空気が漏れ難くなって、高い圧力に維持され易くなる。少なくとも1つの内部空間において圧力の高い状態が維持されると、外筒の底部へ近づく方向への内筒の移動を抑制する抵抗力が大きくなり、内筒の移動速度が抑制され易くなる。従って、鉛直方向に立てた状態で筒同士の固定を解除しても、上方の筒が勢いよく落下し難くなる。
【0007】
また上記伸縮棒によれば、複数の筒を縮んだ状態から伸びた状態へ変化させるために1以上の内筒を外筒の底部から離れる方向へ移動させると、当該1以上の内筒より外側にある1以上の内部空間の体積が大きくなり、1以上の内部空間において圧力が低下する。ここで、最も内側の内筒の内部は外気に通じているため、当該1以上の内筒に対して外側にある1以上の内部空間の圧力が外気の圧力より低くなると、当該1以上の内筒における第1弁がそれぞれ開いた状態となる。これにより、当該1以上の内部空間は外気に通じた状態となり、外気との圧力差が小さくなる。従って、当該1以上の内筒を外筒の底部から離れる方向へ移動させる際の抵抗力が小さくなるため、複数の筒を縮んだ状態から伸びた状態へ変化させ易い。
【0008】
好適に、上記伸縮棒は、1以上の内筒における閉塞部側の一端を塞ぐ1以上の栓を有してよい。栓には、第1貫通孔が形成されてよい。第1弁は、第1貫通孔における空気の流れを制御してよい。
【0009】
この構成によれば、内筒の閉塞部側の一端を塞ぐ栓に第1貫通孔が形成され、この第1貫通孔における空気の流れが第1弁によって制御される。これにより、第1弁が内筒の中間部に設けられる場合に比べて内筒同士の端部を近づけ易くなり、伸縮による長さの変化範囲を広げ易くなる。
【0010】
好適に、第1弁は、栓の閉塞部側の第1端面に密着可能に設けられた第1可撓性シートを含んでよい。第1可撓性シートは、第1端面に密着した状態において第1端面に形成された第1貫通孔の第1開口部を塞ぎ、第1端面との間に隙間がある状態において第1開口部を開放してよい。
【0011】
この構成によれば、第1可撓性シートを用いる簡易な構成で第1貫通孔の空気の流れが制御される。
【0012】
好適に、第1可撓性シートは、第1端面に密着する面の一部が第1端面に固定されていてよい。
【0013】
この構成によれば、第1端面に形成された第1開口部が、第1可撓性シートの第1端面に密着する面において気密に塞がれ易くなる。
【0014】
好適に、nが2以上であり、n個の内筒の各々に栓が設けられており、栓は、閉塞部に対して反対側の端面に第1凸部が形成されていてよい。k≧2の場合、第(k-1)内筒の栓における第1端面と、第k内筒の栓に形成された第1凸部とが当接可能であってよい。第1端面と第1凸部とが当接した状態において当該第1端面に設けられた第1可撓性シートが、第1開口部を開閉可能であってよい。
【0015】
この構成によれば、第(k-1)内筒の栓における閉塞部側の第1端面と、第k内筒の栓における閉塞部に対して反対側の端面に形成された第1凸部とが当接した状態において、第(k-1)内筒の栓と第k内筒の栓との間に隙間が生じる。当該第1端面に設けられた第1可撓性シートは、この隙間において第1開口部を開閉可能となる。2つの筒の栓が当接した状態でも、第1可撓性シートによる第1開口部の開閉が可能であるため、内筒同士の端部を近づけ易くなる。
【0016】
好適に、閉塞部は、第n内筒の栓における第1端面と当接可能な第2凸部を含んでよい。第1端面と第2凸部とが当接した状態において当該第1端面に設けられた第1可撓性シートが、第1開口部を開閉可能であってよい。
【0017】
この構成によれば、第n内筒の栓における閉塞部側の第1端面と、閉塞部の第2凸部とが当接した状態において、第n内筒の栓と外筒の閉塞部との間に隙間が生じる。当該第1端面に設けられた第1可撓性シートは、この隙間において第1開口部を開閉可能となる。第n内筒の栓と外筒の閉塞部とが当接した状態でも、第1可撓性シートによる第1開口部の開閉が可能であるため、第n内筒の端部と外筒の端部とを近づけ易くなる。
【0018】
好適に、上記伸縮棒は、第n内筒と外筒との隙間、又は、k≧2の場合における第(k-1)内筒と第k内筒との隙間を塞ぐ1以上のシール部材を有してよい。シール部材は、栓の外周面に固定されていてよい。
【0019】
この構成によれば、第n内筒と外筒との隙間、又は、k≧2の場合における第(k-1)内筒と第k内筒との隙間がシール部材によって塞がれ、当該隙間における空気の漏れが減少する。これにより、内筒が外筒の底部に近づく方向へ移動する場合に、閉じた状態の第1弁と閉塞部との間の内部空間(1以上の内部空間を含む空間)から空気が漏れ難くなり、当該内部空間の圧力が高くなり易い。当該内部空間の圧力が高くなると、上述した内筒の移動を抑制する抵抗力がより大きくなるため、内筒の移動速度が更に抑制され易くなる。また、シール部材が栓の外周面に固定されるため、シール部材を固定するための別の部材を用いる場合に比べて部品点数が少なくなり、構成が簡易になる。
【0020】
好適に、閉塞部には第2貫通孔が形成されていてよい。上記伸縮棒は、外筒の第2貫通孔における空気の流れを制御する第2弁を有してよい。第2弁は、第n内部空間の圧力が外気の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、第n内部空間の圧力が外気の圧力に比べて低い場合に開いた状態となってよい。
【0021】
この構成によれば、第n内筒が外筒の底部に近づく方向へ移動すると、第n内筒と外筒とにより形成される第n内部空間の体積が小さくなり、その圧力が高くなる。第n内部空間の圧力が外気の圧力より高くなると、閉塞部に設けられた第2弁が閉じた状態になる。第2弁が閉じると、第n内部空間の空気が閉塞部の第2貫通孔から漏れなくなり、第n内部空間の密閉性が保たれる。
【0022】
また、この構成によれば、第n内筒が外筒の底部から離れる方向へ移動すると、第n内筒と外筒とにより形成される第n内部空間の体積が大きくなり、その圧力が低くなる。第n内部空間の圧力が外気の圧力に比べて低くなると、第2弁が開いた状態となり、第n内部空間は外気に通じる。これにより、第n内筒が外筒の底部から離れる方向へ移動する際の抵抗力が小さくなるため、複数の筒を縮んだ状態から伸びた状態へ変化させ易くなる。
【0023】
好適に、第2弁は、第n内部空間に面する閉塞部の第2端面に密着可能に設けられた第2可撓性シートを含んでよい。第2可撓性シートは、第2端面に密着した状態において第2端面に形成された第2貫通孔の第2開口部を塞ぎ、第2端面との間に隙間がある状態において第2開口部を開放してよい。
【0024】
この構成によれば、第2可撓性シートを用いる簡易な構成で第2貫通孔の空気の流れが制御される。
【0025】
好適に、第2凸部は、第2端面に形成されてよい。第1端面と第2凸部とが当接した状態において、当該第1端面に設けられた第1可撓性シートが第1開口部を開閉可能であるとともに、第2可撓性シートが第2開口部を開閉可能であってよい。
【0026】
この構成によれば、第n内筒の栓の第1端面と外筒の閉塞部の第2凸部とが当接した状態において、第1可撓性シートによる第1開口部の開閉及び第2可撓性シートによる第2開口部の開閉がそれぞれ可能であるため、第n内筒の端部と外筒の端部とを近づけ易くなる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、複数の筒を入れ子状に組み合わせた構造の伸縮棒において、鉛直方向に立てた状態で筒同士の固定を解除した場合に上方の筒が勢いよく落下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1A~
図1Bは、本実施形態に係る伸縮棒の一例を示す図である。
図1Aは伸ばした状態の伸縮棒を示し、
図1Bは縮めた状態の伸縮棒を示す。
【
図2】
図2A~
図2Bは、外筒の底部付近の部分拡大断面図である。
図2Aは伸縮棒を最短に縮めた状態を示し、
図2Bは先端の筒を伸ばした場合を示す
【
図4】
図4は、外筒の底部付近の部分拡大断面図であり、先端の筒を縮めた場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1A~
図1Bは、本実施形態に係る伸縮棒1の一例を示す図である。
図1Aは伸ばした状態の伸縮棒1を示し、
図1Bは縮めた状態の伸縮棒1を示す。本実施形態に係る伸縮棒1は、例えば、可搬型の点検装置などにおいて高所点検用のカメラを先端に取り付けて使用される。
【0030】
図1A~
図1Bの例において、伸縮棒1は、入れ子状に組み合わされた複数の筒(2A,2B,2X)を有する。この複数の筒は、外筒2Xと、外筒2Xの内側に伸縮自在に組み合わされた内筒2A及び2Bを含む。以下の説明では、外筒2X、内筒2A、及び内筒2Bの各々を区別せずに「筒2」と記す場合がある。
【0031】
複数の筒2は、
図1A~
図1Bの例においてそれぞれ円筒状の形状を持ち、中心軸を揃えて(すなわち同軸に)配置されている。外筒2Xの外径が最も大きく、内筒2Aの外径が2番目に大きく、内筒2Bの外径が最も小さい。外筒2Xの内側に内筒2Aが配置され、内筒2Aの内側に内筒2Bが配置される。最も内側の内筒2Bの内部は、外気に通じている。
【0032】
外筒2Xの長手方向の一端を外筒2Xの底部20とすると、内筒2A,2Bは、底部20に対して反対側の外筒2Xの一端から外筒2Xの外側に突き出ている。伸縮棒1を伸ばす場合、内筒2A,2Bを外筒2Xの底部20から離れる方向に移動させ、伸縮棒1を縮める場合、内筒2A,2Bを外筒2Xの底部20へ近づける方向に移動させる。
【0033】
伸縮棒1は、外筒2Xに対する内筒2Aの位置を固定するための位置固定機構3Aと、内筒2Aに対する内筒2Bの位置を固定するための位置固定機構3Bを有する。位置固定機構3Aは、底部20に対して反対側の外筒2Xの一端に設けられており、外筒2Xに対する内筒2Aの位置を解除可能に固定する。位置固定機構3Bは、底部20から離れた側の内筒2Aの一端に設けられており、内筒2Aに対する内筒2Bの位置を解除可能に固定する。位置固定機構3A,3Bは、例えば、コレット機構などによって筒2同士の固定位置を無段階に調節できるようにしたものでもよいし、嵌合機構などによって筒2同士の固定位置を段階的に調節できるようにしたものでもよい。
【0034】
底部20から離れた内筒2Bの上側の一端には、例えば高所点検用のカメラなどを取り付けるための取り付け具4が固定されている。
【0035】
図2A~
図2B、
図3A~
図3B及び
図4(以下、
図2A~
図4と記す場合がある。)は、外筒2Xの底部20付近の部分拡大断面図であり、伸縮棒1の長手方向に平行な断面を示す。
図2A~
図4の例において、伸縮棒1は、内筒2Aに設けられた栓5A及び第1弁6Aと、内筒2Bに設けられた栓5B及び第1弁6Bと、外筒2Xに設けられた閉塞部7及び第2弁8とを有する。以下の説明では、栓5A及び5Bを区別せずに「栓5」と記し、第1弁6A及び6Bを区別せずに「第1弁6」と記す場合がある。
【0036】
閉塞部7は、外筒2Xにおける両端間の空気の流れを止める部材であり、
図2A~
図4の例では外筒2Xの底部20側の一端を塞いでいる。閉塞部7には、外筒2Xの内側と外側とを連通する第2貫通孔71が形成されている。第2弁8は、第2貫通孔71における空気の流れを制御する。第2弁8は、内筒2Aと外筒2Xとにより形成される内部空間11の圧力が外気の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、内部空間11の圧力が外気の圧力に比べて低い場合に開いた状態となる。
【0037】
栓5Aは内筒2Aにおける閉塞部7側の一端を塞ぎ、栓5Bは内筒2Bにおける閉塞部7側の一端を塞ぐ。栓5Aには、内筒2Aの内側と外側とを連通する第1貫通孔51Aが形成され、栓5Bには、内筒2Bの内側と外側とを連通する第1貫通孔51Bが形成される。以下の説明では、第1貫通孔51A及び51Bを区別せずに「第1貫通孔51」と記す場合がある。
【0038】
第1弁6Aは、内筒2Aにおける両端間の空気の流れを制御する。
図2A~
図4の例において、第1弁6Aは、栓5Aに形成された第1貫通孔51Aにおける空気の流れを制御する。第1弁6Aは、外筒2Xと内筒2Aとにより形成される内部空間11の圧力が内筒2Aと内筒2Bとにより形成される内部空間12の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、内部空間11の圧力が内部空間12の圧力に比べて低い場合に開いた状態となる。
【0039】
第1弁6Bは、内筒2Bにおける両端間の空気の流れを制御する。
図2A~
図4の例において、第1弁6Bは、栓5Bに形成された第1貫通孔51Bにおける空気の流れを制御する。第1弁6Bは、内筒2Aと内筒2Bとにより形成される内部空間12の圧力が内筒2Bの内部に通じる外気の圧力に比べて高い場合に閉じた状態となり、内部空間12の圧力が外気の圧力に比べて低い場合に開いた状態となる。
【0040】
図5A~
図5Bは、栓5の一例を示す斜視図である。
図5Aは栓5の上面側(底部20から離れた側)を示し、
図5Bは栓5の底面側(底部20に近い側)を示す。
図5A~
図5Bの例において、栓5の形状は概ね円柱である。栓5は、上面側に位置する小径部56と、底面側に位置し、小径部56より径が大きい大径部57とを含む。小径部56は、内筒(2A,2B)の閉塞部7側の開口部に挿入され、この開口部の縁に大径部57が当接する。栓5は、内筒(2A,2B)の閉塞部7側の一端を概ね塞いでおり、図示しない固定手段(ネジなど)によって内筒(2A,2B)に固定されている。
【0041】
図5A及び
図5Bに示すように、栓5には第1貫通孔51が形成されている。第1貫通孔51は、内筒(2A,2B)の内側と外側とを連通する孔であり、栓5の2つの端面(52、54)を貫通する。端面52(以下、「第1端面52」と記す場合がある。)は、閉塞部7側を向いた面であり、端面54は、閉塞部7に対して反対側を向いた面である。
【0042】
第1弁6は、例えば
図5Bに示すように、第1可撓性シート61とネジ62を含む。第1可撓性シート61は、可撓性を有するプラスチックなどの材料で形成されたシート状の部材であり、
図5Bの例では矩形の平面形状を持つ。第1可撓性シート61は、栓5の第1端面52に対して密着可能に設けられている。第1端面52に密着する第1可撓性シート61の面の一部は、ネジ62によって第1端面52に固定されている。なお、第1端面52への第1可撓性シート61の固定には他の手段(例えば接着剤など)を用いてもよい。
【0043】
第1可撓性シート61は、第1端面52に密着した状態において、第1端面52に形成された第1貫通孔51の第1開口部53を塞ぎ、第1貫通孔51における空気の流れを止める。また第1可撓性シート61は、第1端面52との間に隙間がある状態において、第1開口部53を開放し、第1貫通孔51における空気の流れを許容する。
【0044】
第1可撓性シート61は、第1開口部53から第1貫通孔51を介して内筒(2A,2B)の中へ空気が流入しようとするとき、第1端面52に密着した状態となって、第1開口部53を塞ぐ。また第1可撓性シート61は、内筒(2A,2B)の中から第1貫通孔51を介して第1開口部53へ空気が流出しようとするとき、第1端面52との間に隙間がある状態となって、第1開口部53を開放する。
【0045】
図5Aに示すように、栓5の閉塞部7に対して反対側の端面54には、第1凸部55が形成されている。第1凸部55は、略円形の端面54の縁に沿ってリング状に立設されており、端面54の周囲を囲んでいる。この第1凸部55は、
図2Aに示すように、他の栓5の第1端面52と当接可能である。すなわち、内筒2Bの栓5Bにおける閉塞部7側の第1端面52と、内筒2Aの栓5Aに形成された第1凸部55とが当接可能である。栓5Bの第1端面52と栓5Aの第1凸部55とが当接した状態になっても、
図2Aに示すように、栓5Bと栓5Aとの間には隙間(内部空間12)が形成される。栓5Bの第1端面52に設けられた第1可撓性シート61は、この隙間の中で第1開口部53を開閉可能である。
【0046】
図2A~
図4の例において、伸縮棒1は、シール部材9A及び9B(以下、区別せずに「シール部材9」と記す場合がある。)を有する。シール部材9Aは、外筒2Xと内筒2Aとの隙間を塞ぐ部材であり、栓5Aの外周面に固定され、外筒2Xの内周面に当接する。外筒2Xに対して内筒2Aを移動させると、シール部材9Aが外筒2Xの内周面を摺動する。シール部材9Bは、内筒2Aと内筒2Bとの隙間を塞ぐ部材であり、栓5Bの外周面に固定され、内筒2Aの内周面に当接する。内筒2Aに対して内筒2Bを移動させると、シール部材9Bが内筒2Aの内周面を摺動する。
【0047】
図5A及び
図5Bに示すように、栓5の大径部57の外周面には、リング状の溝58が形成されている。この大径部57の溝58には、リング状のシール部材9が固定される。シール部材9は、摩擦係数が小さく耐久性の高い材料(例えばPTFEなど)によって形成される。
【0048】
図6A~
図6Bは、閉塞部7の一例を示す斜視図である。
図6Aは閉塞部7の上面側(底部20から離れた側)を示し、
図6Bは閉塞部7の底面側(底部20に近い側)を示す。
図6A~
図6Bの例において、閉塞部7の形状は概ね円柱である。閉塞部7は、外筒2Xの底部20側の一端における開口部に略全体が挿入されており、図示しない固定手段(ネジなど)によって外筒2Xに固定されている。
【0049】
図6A及び
図6Bに示すように、閉塞部7には第2貫通孔71が形成されている。第2貫通孔71は、外筒2Xの内側と外側とを連通する孔であり、閉塞部7の2つの端面(72、74)を貫通する。端面72(以下、「第2端面72」と記す場合がある。)は、内筒2Aと外筒2Xとによって形成される内部空間11に面している。端面74は、底部20において外筒2Xの外側を向いた面である。
【0050】
第2弁8は、例えば
図6Aに示すように、第2可撓性シート81とネジ82を含む。第2可撓性シート81は、可撓性を有するプラスチックなどの材料で形成されたシート状の部材であり、
図6Aの例では矩形の平面形状を持つ。第2可撓性シート81は、閉塞部7の第2端面72に対して密着可能に設けられている。第2端面72に密着する第2可撓性シート81の面の一部は、ネジ82によって第2端面72に固定されている。第2端面72への第2可撓性シート81の固定には他の手段(例えば接着剤など)を用いてもよい。
【0051】
第2可撓性シート81は、第2端面72に密着した状態において、第2端面72に形成された第2貫通孔71の第2開口部73を塞ぎ、第2貫通孔71における空気の流れを止める。また第2可撓性シート81は、第2端面72との間に隙間がある状態において、第2開口部73を開放し、第2貫通孔71における空気の流れを許容する。
【0052】
第2可撓性シート81は、第2開口部73から第2貫通孔71を介して外筒2Xの外へ空気が流出しようとするとき、第2端面72に密着した状態となって、第2開口部73を塞ぐ。また第2可撓性シート81は、外筒2Xの外から第2貫通孔71を介して第2開口部73へ空気が流入しようとするとき、第2端面72との間に隙間がある状態となって、第2開口部73を開放する。
【0053】
図6Aに示すように、閉塞部7の内部空間11側の第2端面72には、第2凸部75が形成されている。第2凸部75は、略円形の第2端面72の縁に沿ってリング状に立設されており、第2端面72の周囲を囲んでいる。この第2凸部75は、
図2Aに示すように、栓5の第1端面52と当接可能である。すなわち、内筒2Aの栓5Aにおける閉塞部7側の第1端面52と、外筒2Xの第2端面72に形成された第2凸部75とが当接可能である。栓5Aの第1端面52と閉塞部7の第2凸部75とが当接した状態になっても、
図2Aに示すように、栓5Aと閉塞部7との間には隙間(内部空間11)が形成される。栓5Aの第1端面52に設けられた第1可撓性シート61は、この隙間の中で第1開口部53を開閉可能であり、閉塞部7の第2端面72に設けられた第2可撓性シート81も、同じ隙間の中で第2開口部73を開閉可能である。
【0054】
ここで、伸縮棒1を伸縮させた場合の動作について、
図2A~
図4を参照して説明する。
図2Aは伸縮棒1を最短に縮めた状態を示し、
図2Bは内筒2B(先端の筒2)を伸ばした場合を示し、
図3Aは内筒2A(中間の筒2)を伸ばした場合を示し、
図3Bは内筒2Aを縮めた場合を示し、
図4は内筒2Bを縮めた場合を示す。
図2A~
図4において、黒い矢印は筒2の移動方向を示し、点線の矢印は空気の流れを示す。
【0055】
伸縮棒1を最短に縮めた状態(
図2A)において、
図2Bに示すように内筒2Bを底部20から離れる方向へ移動させると、内筒2Aと内筒2Bとにより形成される内部空間12の体積が大きくなり、その圧力が低下する。内筒2Bの内部は外気に通じているため、内部空間12の圧力が外気の圧力より低くなると、点線に示す空気の流れによって第1可撓性シート61が押され、第1可撓性シート61と第1端面52との間に隙間が生じ、第1弁6Bが開いた状態になる。第1弁6Bが開くと、第1貫通孔51Bを通って内部空間12に空気が流れ込み、内部空間12と外気との圧力差が抑制される。これにより、内筒2Bは、内部空間12と外気との圧力差による大きな抵抗を受けずに、底部20から離れる方向へ移動させることができる。
【0056】
次に、位置固定機構3Bによって内筒2Bを内筒2Aに固定した状態で、
図3Aに示すように内筒2Aを底部20から離れる方向へ移動させると、内筒2Aと外筒2Xとの間に形成される内部空間11の体積が大きくなり、その圧力が低下する。内部空間11の圧力が内部空間12の圧力より低くなると、内部空間12から第1貫通孔51Aを通って流れる空気により第1弁6Aの第1可撓性シート61が押され、第1弁6Aが開いた状態になり、内部空間12の圧力も低下する。内部空間12の圧力低下により第1弁6Bも開いた状態になると、外部からの空気が内筒2B、第1貫通孔51B、内部空間12、第1貫通孔51Aを介して内部空間11に流れ込む。また、内部空間11の圧力が外気の圧力より低くなると、外部から第2貫通孔71を通って流れる空気により第2可撓性シート81が押され、第2弁8が開いた状態になり、外部からの空気が第2貫通孔71を介して内部空間11に流れ込む。従って、内筒2Aの移動により内部空間11の体積が増大した場合、第1貫通孔51Aや第2貫通孔71を介して外部からの空気が内部空間11に流れ込み、内部空間11と外気との圧力差が抑制される。これにより、内筒2A及び2Bは、内部空間11と外気との圧力差による大きな抵抗を受けずに、底部20から離れる方向へ移動させることができる。
【0057】
次に、位置固定機構3Bによって内筒2Bを内筒2Aに固定した状態で、
図3Bに示すように内筒2Aを底部20に近づく方向へ移動させると、内部空間11の体積が小さくなり、その圧力が上昇する。内部空間11の圧力が内部空間12の圧力より高くなると、第1弁6Aの第1可撓性シート61が第1貫通孔51Aの第1開口部53を塞ぎ、第1弁6Aが閉じた状態となる。また、内部空間11の圧力が外気の圧力より高くなると、第2弁8の第2可撓性シート81が第2貫通孔71の第2開口部73を塞ぎ、第2弁8も閉じた状態になる。これにより、内部空間11から空気が漏れ出し難くなり、内部空間11の高い圧力が維持され易くなる。内部空間11の圧力が高いと、内筒2Aの底部20側への移動を抑制する抵抗力が大きくなり、外筒2Xに対する内筒2Aの移動速度が抑制され易くなる。従って、伸縮棒1を鉛直方向に立てた状態で内筒2Aと外筒2Xとの固定を解除しても、内筒2Aは勢いよく落下し難くなる。
【0058】
次に、内筒2Aの栓5Aを外筒2Xの閉塞部7まで到達させた状態で、位置固定機構3Bによる内筒2Aと内筒2Bとの固定を解除し、
図4に示すように内筒2Bを底部20に近づく方向へ移動させると、内部空間12の体積が小さくなり、その圧力が上昇する。内筒2Bの内部は外気に通じているため、内部空間12の圧力が外気の圧力より高くなると、第1弁6Bの第1可撓性シート61が第1貫通孔51Bの第1開口部53を塞ぎ、第1弁6Bが閉じた状態となる。また、内部空間12の圧力が内部空間11の圧力より高くなると、第1弁6Aの第1可撓性シート61が内部空間12からの空気の流れに押され、第1弁6Aが開いた状態となり、内部空間11の圧力も高くなる。内部空間11の圧力が外気の圧力より高くなると、第2弁8の第2可撓性シート81が第2貫通孔71の第2開口部73を塞ぎ、第2弁8が閉じた状態となる。結果として、第1弁6B及び第2弁8がそれぞれ閉じた状態となり、内部空間11及び12が全体的に密閉される。これにより、内部空間11及び12から空気が漏れ出し難くなり、内部空間11及び12の高い圧力が維持され易くなる。内部空間11及び12の圧力が高いと、内筒2Bの底部20側への移動を抑制する抵抗力が大きくなり、外筒2Xに対する内筒2Bの移動速度が抑制され易くなる。従って、伸縮棒1を鉛直方向に立てた状態で内筒2Aと内筒Bとの固定を解除しても、内筒2Bは勢いよく落下し難くなる。
【0059】
上述した本実施形態に係る伸縮棒1によれば、次のような効果が得られる。
【0060】
(1)伸縮棒1を鉛直方向に立てた状態で筒2同士の固定(内筒2Aと内筒2Bとの固定、内筒2Aと外筒2Xとの固定)を解除した場合、1以上の内筒(2A,2B)が外筒2Xの底部20に近づく方向へ移動する。1以上の内筒(2A,2B)が外筒2Xの底部20に近づくと、当該1以上の内筒(2A,2B)に対して外側にある1以上の内部空間(11,12)の体積が小さくなり、当該1以上の内部空間(11,12)において圧力が上昇する。ここで、最も内側の内筒2Bの内部は外気に通じているため、当該1以上の内筒(2A,2B)に対して外側にある1以上の内部空間(11,12)の圧力が外気の圧力より高くなると、当該1以上の内筒(2A,2B)における少なくとも1つの第1弁6が閉じた状態となる。少なくとも1つの第1弁6が閉じた状態になると、少なくとも1つの内部空間(11,12)が密閉された状態となり、空気が漏れ難くなって、高い圧力に維持され易くなる。少なくとも1つの内部空間(11,12)において圧力の高い状態が維持されると、外筒2Xの底部20へ近づく方向への内筒(2A,2B)の移動を抑制する抵抗力が大きくなり、内筒(2A,2B)の移動速度が抑制され易くなる。従って、鉛直方向に立てた状態で筒2同士の固定を解除した場合に、上方の筒2が勢いよく落下することを効果的に防止できる。
【0061】
(2)複数の筒2を縮んだ状態から伸びた状態へ変化させるために1以上の内筒(2A,2B)を外筒2Xの底部20から離れる方向へ移動させると、当該1以上の内筒(2A,2B)より外側にある1以上の内部空間(11,12)の体積が大きくなり、1以上の内部空間(11,12)において圧力が低下する。ここで、最も内側の内筒2Bの内部は外気に通じているため、当該1以上の内筒(2A,2B)に対して外側にある1以上の内部空間(11,12)の圧力が外気の圧力より低くなると、当該1以上の内筒(2A,2B)における第1弁6がそれぞれ開いた状態となる。これにより、当該1以上の内部空間(11,12)は外気に通じた状態となり、外気との圧力差が小さくなる。従って、当該1以上の内筒(2A,2B)を外筒2Xの底部20から離れる方向へ移動させる際の抵抗力が小さくなるため、複数の筒2を縮んだ状態から伸びた状態へ容易に変化させることができる。
【0062】
(3)内筒(2A,2B)の閉塞部7側の一端を塞ぐ栓5に第1貫通孔51が形成され、この第1貫通孔51における空気の流れが第1弁6によって制御される。これにより、第1弁6が内筒(2A,2B)の中央部に設けられる場合に比べて内筒同士の端部を近づけることができ、伸縮による長さの変化範囲を広げることができる。
【0063】
(4)栓5の閉塞部7側の第1端面52に密着可能に設けられた第1可撓性シート61によって第1貫通孔51の第1開口部53が開閉されるため、簡易な構成で第1貫通孔51の空気の流れを制御できる。
【0064】
(5)第1端面52に密着する第1可撓性シート61の面の一部が第1端面52に固定されるため、第1端面52に形成された第1開口部53を第1可撓性シート61の当該面によって気密に塞ぐことができる。
【0065】
(6)内筒2Bの栓5Bにおける閉塞部7側の第1端面52と、内筒2Bより外側の内筒2Aの栓5Aにおける閉塞部7に対して反対側の端面54に形成された第1凸部55とが当接した状態(
図2A)において、内筒2Bの栓5Bと内筒2Aの栓5Aとの間に隙間が生じる。栓5Bの第1端面52に設けられた第1弁6Bの第1可撓性シート61は、この隙間において第1開口部53を開閉可能となる。このように、2つの内筒2A,2Bの栓5A,5Bが当接した状態でも、第1可撓性シート61による栓5Bの第1開口部53の開閉が可能であるため、内筒2A及び2Bの端部を近づけ易くなり、伸縮による長さの変化範囲を広げることができる。
【0066】
(7)内筒2Aの栓5Aにおける閉塞部7側の第1端面52と、外筒2Xの閉塞部7の第2凸部75とが当接した状態(
図2A、
図2B、
図4)において、内筒2Aの栓5Aと外筒2Xの閉塞部7との間に隙間が生じる。栓5Aの第1端面52に設けられた第1弁6Aの第1可撓性シート61は、この隙間において第1開口部53を開閉可能となる。このように、内筒2Aの栓5Aと外筒2Xの閉塞部7とが当接した状態でも、第1可撓性シート61による栓5Aの第1開口部53の開閉が可能であるため、内筒2Aの端部と外筒2Xの端部とを近づけ易くなり、伸縮による長さの変化範囲を広げることができる。
【0067】
(8)一の内筒(2A,2B)と当該一の内筒(2A,2B)より外側の内筒2A又は外筒2Xとの隙間がシール部材9によって塞がれ、当該隙間における空気の漏れが減少する。これにより、一の内筒(2A,2B)が外筒2Xの底部20に近づく方向へ移動する場合に、閉じた状態の第1弁6と閉塞部7との間の内部空間(11,12)から空気が漏れ難くなり、当該内部空間(11,12)の圧力が高くなり易い。当該内部空間(11,12)の圧力が高くなると、底部20側への内筒(2A,2B)の移動を抑制する抵抗力がより大きくなるため、内筒(2A,2B)の移動速度を更に抑制できる。また、シール部材9が栓5の外周面に固定されるため、シール部材9を固定するための別の部材を用いる場合に比べて部品点数を削減し、構成を簡易化できる。
【0068】
(9)内筒2Aが外筒2Xの底部20から離れる方向へ移動すると、内筒2Aと外筒2Xとにより形成される内部空間11の体積が大きくなり、その圧力が外気の圧力より低くなる。内部空間11の圧力が外気の圧力に比べて低くなると、閉塞部7に設けられた第2弁8が開いた状態となり、閉塞部7の第2貫通孔71を介して内部空間11に空気が流入し、内部空間11と外気との圧力差が小さくなる。これにより、内筒2Aが外筒2Xの底部20から離れる方向へ移動する際の抵抗力が更に小さくなるため、複数の筒2を縮んだ状態から伸びた状態へより容易に変化させることができる。
【0069】
(10)内部空間11に面する閉塞部7の第2端面72に密着可能に設けられた第2可撓性シート81によって第2貫通孔71の第2開口部73が開閉されるため、簡易な構成で第2貫通孔71の空気の流れを制御できる。
【0070】
(11)内筒2Aの栓5Aの第1端面52と外筒2Xの閉塞部7の第2凸部75とが当接した状態(
図2A、
図2B、
図4)において生じる隙間の中で、第1弁6Aの第1可撓性シート61による栓5Aの第1開口部53の開閉、及び、第2弁8の第2可撓性シート81による閉塞部7の第2開口部73の開閉がそれぞれ可能である。そのため、栓5Aと閉塞部7にそれぞれ弁(6A,8)が設けられている場合でも、内筒2Aの端部と外筒2Xの端部とを近づけ易くなり、伸縮による長さの変化範囲を広げることができる。
【0071】
なお、本開示は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0072】
例えば、伸縮棒1を構成する筒2の数は3に限らず、4以上でもよいし、2つでもよい。
【0073】
筒2の形状は上述した実施形態のような円筒に限定されない。すなわち、長手方向に対して垂直な断面の形状は円に限らず、他の任意の形状(四角形など)でもよい。
【0074】
本開示に係る伸縮棒は、カメラを先端に取り付けて家屋や橋梁などの高所を撮影する用途の他にも、ライトを先端に取り付けて周辺を照らす用途や、アンテナを先端に取り付けて無線通信に用いる用途、旗を掲げる竿としての用途、釣り竿としての用途など、様々な用途の伸縮棒に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…伸縮棒、2…筒、2X…外筒、2A,2B…内筒、20…底部、3,3A,3B…位置固定機構、4…取り付け具、5,5A,5B…栓、51,51A,51B…第1貫通孔、52…第1端面、53…第1開口部、54…端面、55…第1凸部、56…小径部、57…大径部、58…溝、6,6A,6B…第1弁、61…第1可撓性シート、62…ネジ、7…閉塞部、71…第2貫通孔、72…第2端面、73…第2開口部、74…端面、75…第2凸部、8…第2弁、81…第2可撓性シート、82…ネジ、9,9A,9B…シール部材、11,12…内部空間