IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オークマ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-加工品の回収機構および回収方法 図1
  • 特許-加工品の回収機構および回収方法 図2
  • 特許-加工品の回収機構および回収方法 図3
  • 特許-加工品の回収機構および回収方法 図4
  • 特許-加工品の回収機構および回収方法 図5
  • 特許-加工品の回収機構および回収方法 図6
  • 特許-加工品の回収機構および回収方法 図7
  • 特許-加工品の回収機構および回収方法 図8
  • 特許-加工品の回収機構および回収方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】加工品の回収機構および回収方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018167090
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020040131
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 清
(72)【発明者】
【氏名】一木 洋介
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-233986(JP,A)
【文献】特開平01-103202(JP,A)
【文献】特開2004-114226(JP,A)
【文献】特開昭52-16071(JP,A)
【文献】実開昭49-50880(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋削加工で素材から切り離される加工品を回収する回収機構であって、
一対のアームで前記加工品を挟持可能な挟持ユニットであって、前記加工品を挟持するべく前記一対のアームを前記加工品の周面に接触するまで閉じた挟持状態と、前記加工品の周面との間に隙間を開けて前記一対のアームを前記加工品の周面に近接させた待機状態と、に切替可能な挟持ユニットと、
前記挟持ユニットの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記加工品の切断が完了したか否かを監視し、切断完了前は、前記挟持ユニットを前記待機状態に保つ一方で、切断完了したタイミングで、前記挟持ユニットを前記待機状態から前記挟持状態に切り替える、
ことを特徴とする回収機構。
【請求項2】
請求項1に記載の回収機構であって、
前記アームは、
アーム本体と、
前記アーム本体の途中に設けられ、前記加工品の周面で転動可能な1以上のローラと、
を有する、ことを特徴とする回収機構。
【請求項3】
請求項2に記載の回収機構であって、
前記挟持ユニットは、前記一対のアームを、前記挟持ユニットの幅方向に直線進退させる開閉用アクチュエータを有し、
前記アームは、前記挟持ユニットの高さ方向に一直線に配置された二つの前記ローラを有する、
ことを特徴とする回収機構。
【請求項4】
請求項3に記載の回収機構であって、
前記アーム本体のうち、少なくとも他方のアーム本体との対向面は、前記他方のアーム本体から離れる方向に凸となるように湾曲または屈曲している、ことを特徴とする回収機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の回収機構であって、さらに、
前記素材を回転保持する主軸の回転抵抗、および、前記素材を切削する際の切削抵抗の少なくとも一方に依存する物理量を検出する切断判断用センサを備え、
前記制御部は、前記切断判断用センサの検出値に基づいて、前記加工品の切断完了タイミングを判断する、
ことを特徴とする回収機構。
【請求項6】
請求項に記載の回収機構であって、
前記切断判断用センサは、前記主軸の回転モータのトルク、前記回転モータの電流、前記工具を保持する刃物台の送りモータのトルク、前記送りモータの電流、前記工具の歪みのいずれかを検知するセンサを含み、
前記制御部は、前記切断判断用センサの検出値の微分値が、規定の負の値である閾値以下となったタイミングを、前記加工品の切断完了タイミングと判断する、
ことを特徴とする回収機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の回収機構であって、さらに、
前記加工室内に設けられ、多自由度のロボットを備え、
前記挟持ユニットは、エンドエフェクタとして前記ロボットに取り付けられている、
ことを特徴とする回収機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の回収機構であって、
前記制御部は、前記加工品を切り離した後に残った素材である残存素材も、前記挟持ユニットにより回収させる、ことを特徴とする回収機構。
【請求項9】
旋削加工で素材から切り離される加工品を回収する回収方法であって、
前記加工品の切断加工中、前記加工品の切断が完了したか否かを監視し、一対のアームを有する挟持ユニットを、切断完了前は、前記一対のアームを前記加工品の周面との間に隙間を開けて前記加工品の周面に近接させ、切断完了のタイミングで、前記加工品を挟持するべく前記一対のアームが前記加工品の周面に接触するまで当該挟持ユニットを閉じるように、前記監視結果に基づいて前記挟持ユニットを駆動する、
ことを特徴とする回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、旋削加工で素材から切り離される加工品を回収する回収機構および回収方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、旋削加工により素材から加工品を切り離す切断加工(突っ切り加工)が知られている。切断加工では、回転保持した素材に、工具を押し当てて旋削することで、加工品である素材の一部を切り離す。
【0003】
ここで、通常、素材は、主軸により回転保持されているが、切断加工が完了すると、切り離された素材部分(加工品)は、重力により落下する。そして、落下した加工品が、工作機械と衝突することにより、当該加工品に凹みや傷が生じることがあった。
【0004】
そこで、従来から、切断された加工品の損傷を防止しつつ、当該加工品を回収するための技術が提案されている。例えば、特許文献1,2には、一対の爪で、加工品を挟持して回収する挟持機構が開示されている。この爪の内側面には、素材の回転を許容し得るベアリングが配置されている。そのため、切断加工の最中であっても、一対の爪で加工品を挟持することが可能となる。そして、これにより、切断された加工品の落下に伴う傷を効果的に防止できるため、加工品の品質をある程度向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭49-50880号公報
【文献】特開2002-233986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、こうした挟持機構の位置決め精度は、工作機械に比べて低いため、素材の回転中心と挟持機構の位置とが一致せず、挟持機構で挟持することにより素材が僅かに撓むことがあった。このように撓んだ状態で素材を回転させると、振動が発生し、切断面の品質が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、本明細書では、切断加工により素材から切り離される加工品の品質をより向上できる、加工品の回収機構および回収方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する回収機構は、旋削加工で素材から切り離される加工品を回収する回収機構であって、一対のアームで前記加工品を挟持可能な挟持ユニットであって、前記加工品を挟持するべく前記一対のアームを前記加工品の周面に接触するまで閉じた挟持状態と、前記加工品の周面との間に隙間を開けて前記一対のアームを前記加工品の周面に近接させた待機状態と、に切替可能な挟持ユニットと、前記挟持ユニットの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記加工品の切断が完了したか否かを監視し、切断完了前は、前記挟持ユニットを前記待機状態に保つ一方で、切断完了したタイミングで、前記挟持ユニットを前記待機状態から前記挟持状態に切り替える、ことを特徴とする。
【0009】
かかる構成とすることで、切断加工の実行中、挟持ユニットと素材は離間しているため、挟持ユニットから素材に余計な力が付加されない。その結果、素材の撓みや振動が抑制され、切断面の品質が向上する。その一方で、切断加工が完了すれば、挟持ユニットにより加工品が挟持されるため、落下に起因する加工品の損傷を効果的に防止できる。
【0010】
前記アームは、アーム本体と、前記アーム本体の途中に設けられ、前記加工品の周面で転動可能な1以上のローラと、を有してもよい。
【0011】
ローラを設けることで、切断後も惰性回転する加工品と、アームとの擦れが防止され、加工品の品質をより向上できる。
【0012】
この場合、前記挟持ユニットは、前記一対のアームを、前記挟持ユニットの幅方向に直線進退させる開閉用アクチュエータを有し、前記アームは、前記挟持ユニットの高さ方向に一直線に配置された二つの前記ローラを有してもよい。
【0013】
かかる構成とした場合、加工品は、合計4つのローラで挟持されることになり、加工品の中心は、4つのローラに接する外接円の中心と一致する。そして、上記構成とすることで、挟持ユニットの根元にある基準点から、外接円の中心位置が、加工品の径に関わらず(アームの開き量に関わらず)常に一定となるため、挟持ユニットの位置制御が簡易化できる。
【0014】
この場合、前記アーム本体のうち、少なくとも他方のアーム本体との対向面は、前記他方のアーム本体から離れる方向に凸となるように湾曲または屈曲していてもよい。
【0015】
かかる構成とすることでアーム本体と加工品との干渉を抑制できる。
【0016】
また、さらに、前記素材を回転保持する主軸の回転抵抗、および、前記素材を切削する際の切削抵抗の少なくとも一方に依存する物理量を検出する切断判断用センサを備え、前記制御部は、前記切断判断用センサの検出値に基づいて、前記加工品の切断完了タイミングを判断してもよい。
【0017】
かかる構成とすることで、切断完了のタイミングを正確に判断できる。
【0018】
この場合、前記切断判断用センサは、前記主軸の回転モータのトルク、前記回転モータの電流、前記工具を保持する刃物台の送りモータのトルク、前記送りモータの電流、前記工具の歪みのいずれかを検知するセンサを含み、前記制御部は、前記切断判断用センサの検出値の微分値が、規定の負の値である閾値以下となったタイミングを、前記加工品の切断完了タイミングと判断してもよい。
【0019】
かかる構成とすることで、切断完了のタイミングをより正確に判断できる。
【0020】
また、さらに、加工室内に設けられ、多自由度のロボットを備え、前記挟持ユニットは、エンドエフェクタとして前記ロボットに取り付けられていてもよい。
【0021】
かかる構成とすることで、挟持ユニットの移動の自由度が高く、回収機構の汎用性を向上できる。
【0022】
この場合、前記制御部は、前記加工品を切り離した後に残った素材である残存素材も、前記挟持ユニットにより回収させてもよい。
【0023】
かかる構成とすることで、残存素材が、加工室に落下することがないため、残存素材で加工室が傷つくことが防止できる。
【0024】
本明細書で開示する回収方法は、旋削加工で素材から切り離される加工品を回収する回収方法であって、前記加工品の切断加工中、前記加工品の切断が完了したか否かを監視し、一対のアームを有する挟持ユニットを、切断完了前は、前記一対のアームを前記加工品の周面との間に隙間を開けて前記加工品の周面に近接させ、切断完了のタイミングで、前記加工品を挟持するべく前記一対のアームが前記加工品の周面に接触するまで当該挟持ユニットを閉じるように、前記監視結果に基づいて前記挟持ユニットを駆動する、ことを特徴とする。
【0025】
かかる構成とすることで、切断加工の実行中、挟持ユニットと素材は離間しているため、挟持ユニットから素材に余計な力が付加されない。その結果、素材の撓みや振動が抑制され、切断面の品質が向上する。その一方で、切断加工が完了すれば、挟持ユニットにより加工品が挟持されるため、落下に起因する加工品の損傷を効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0026】
本明細書で開示する加工品の回収機構および回収方法によれば、切断加工により素材から切り離される加工品の品質をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】回収機構が組み込まれた工作機械の概略的な側面図である。
図2】工作機械の概略的な正面図である。
図3】切断加工の様子を示す図である。
図4】待機状態の挟持ユニットを示す図である。
図5】挟持状態の挟持ユニットを示す図である。
図6】他の挟持ユニットの一例を示す図である。
図7】切断完了のタイミング判断に関係する部材の電気的構成を示すブロック部である。
図8】切断判断用センサの検出値と、検出値の微分値と、最小隙間量cの変化を示すグラフである。
図9】加工品102の切断と回収の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、加工品の回収機構の構成について図面を参照して説明する。図1は、回収機構が組み込まれた工作機械10の概略的な側面図である。また、図2は、工作機械10の概略的な正面図である。以下の説明では、主軸18の回転軸と平行な方向をZ軸、刃物台20のZ軸と直交する移動方向と平行な方向をX軸、X軸およびZ軸に直交する方向をY軸と呼ぶ。また、Z軸においては、主軸18から刃物台20に近づく向きをプラス方向、X軸においては、主軸18から刃物台20に近づく向きをプラス方向、Y軸においては、主軸18から上に向かう向きをプラス方向とする。
【0029】
この工作機械10は、自転する素材(図1図2では図示せず)に刃物台20で保持した工具110を当てることで、素材を加工する旋盤である。より具体的には、この工作機械10は、NC制御されるとともに、複数の工具110を保持するタレット22を備えたターニングセンタである。こうした旋盤を用いた旋削加工の中には、素材を所定の長さに切断する切断加工(突っ切り加工)がある。切断加工では、素材から切り離された部分(加工品)を回収する必要がある。本明細書で開示する回収機構は、この切断加工で切り離された加工品102を回収するものである。
【0030】
工作機械10の加工室16の周囲は、カバー12で覆われている。加工室16の前面には、大きな開口が形成されており、この開口は、ドア14により開閉される。オペレータは、この開口を介して、加工室16内の各部にアクセスする。加工中、開口に設けられたドア14は、閉鎖される。これは、安全性や環境性等を担保するためである。
【0031】
工作機械10は、素材の一端を自転可能に保持する主軸装置と、工具110を保持する刃物台20と、素材の他端を支える心押台24と、を備えている。主軸装置は、回転モータ等を内蔵した主軸台(図示せず)と、当該主軸台に取り付けられた主軸18と、を備えている。主軸18は、素材を着脱自在に保持するチャック30やコレットを備えており、保持する素材を適宜、交換できる。また、主軸18およびチャック30は、水平方向(Z軸方向)に延びる回転軸を中心として自転する。
【0032】
心押台24は、Z軸方向に、主軸18と対向して配置されており、主軸18で保持された素材の他端を支える。心押台24は、素材に対して接離できるように、Z軸方向に移動可能となっている。
【0033】
刃物台20は、工具110、例えば、バイトと呼ばれる旋削用工具を保持するもので保持装置として機能する。この刃物台20は、Z軸、すなわち、素材の軸と平行な方向に移動可能となっている。また、刃物台20は、X軸と平行な方向、すなわち、素材の径方向にも進退できるようになっている。なお、図1から明らかな通り、X軸は、加工室16の開口からみて、奥側に進むにつれ上方に進むように、水平方向に対して傾いている。刃物台20の先端には、複数の工具110を保持可能なタレット22が設けられている。タレット22は、Z軸方向視で多角形をしており、Z軸に平行な軸を中心として回転可能となっている。このタレット22の周面には、1以上の工具110が着脱自在に取り付けられており、タレット22を回転させることで、加工に使用する工具110を変更できるようになっている。
【0034】
このタレット22に保持された工具110は、刃物台20を、Z軸と平行な方向に移動することで、Z軸と平行な方向に移動する。また、刃物台20をX軸と平行な方向に移動させることで、タレット22に保持された工具110は、X軸に平行な方向に移動する。そして、刃物台20をX軸に平行な方向に移動させることで、工具110による素材の切り込み量等が変更できる。
【0035】
加工室16内には、さらに、回収機構の一部として機能する機内ロボット26が設けられている。機内ロボット26は、加工室16内に設けられた多自由度のロボットであり、複数のロボットアームが関節を介して接続された多関節ロボットである。本例では、この機内ロボット26を加工室16の床面に設置しているが、機内ロボット26は、後述する挟持ユニット38で加工品を挟持できるのであれば、その設置場所や構成は適宜、変更されてもよい。例えば、機内ロボット26は、加工室16の壁面や主軸18等に設置されてもよい。また、機内ロボット26は、加工室16内で移動する部材、たとえば、心押台24等に取り付けられてもよい。かかる構成とすることで機内ロボット26の可動範囲を広げることができる。
【0036】
機内ロボット26には、エンドエフェクタ36の一種である挟持ユニット38が設けられている。挟持ユニット38は、素材(加工品含む)を挟持して保持するもので、開閉可能な一対のアーム40を有している。図示例では、この挟持ユニット38を、機内ロボット26の先端に一つだけ取り付けているが、挟持ユニット38は、必要に応じて、異なる位置に取り付けてもよいし、2以上設けてもよい。また、機内ロボット26に取り付けるエンドエフェクタ36は、交換可能でもよく、例えば、加工品を回収する必要がない場面では、挟持ユニット38とは別のエンドエフェクタ36(例えばセンサなど)を機内ロボット26に取り付けてもよい。なお、挟持ユニット38の具体的な構成は、後述する。
【0037】
制御装置28は、オペレータからの指示に応じて、工作機械10の各部の駆動を制御する。この制御装置28は、例えば、各種演算を行うCPUと、各種制御プログラムや制御パラメータを記憶するメモリと、を有する。また、制御装置28は、通信機能を有しており、他の装置との間で各種データ、例えば、NCプログラムデータ等を授受できる。この制御装置28は、例えば、工具110や素材の位置を随時演算する数値制御装置を含んでもよい。また、制御装置28は、単一の装置でもよいし、複数の演算装置を組み合わせて構成されてもよい。
【0038】
制御装置28は、例えば、素材を工具110で旋削加工する際に、主軸18や刃物台20、心押台24の動きを制御する。また、本例の制御装置28は、さらに、加工品の回収機構の制御部としても機能し、必要に応じて、機内ロボット26および挟持ユニット38の駆動を制御する。以下、加工品の回収について詳説する。
【0039】
図3は、突っ切り加工の様子を示す模式図である。また、図4図5は、図3のZ方向からみた加工品102および挟持ユニット38であり、図4は、切断前の、図5は、切断完了時の様子を示している。なお、図3図4において、矢印Gは、鉛直方向下向きを示している。
【0040】
図3に示す通り、切断加工の際、素材100は、チャック30を介して主軸18に保持されており、主軸18は、この素材100を、所定の回転数で自転させる。刃物台20は、切断加工用の工具110を、素材100の周面に押し当てながら、素材100の径方向に進出させ、徐々に切り進ませる。最終的に、工具110が素材100の中心まで達すれば、素材100のうち、工具110より先端側の部分が加工品102として切り離される。
【0041】
ここで、挟持ユニット38がない場合、加工品102の切断完了と同時に、当該加工品102は、重力により加工室16の床面に落下する。この落下の衝撃や、他部材との擦れにより、加工品102に傷や凹みが生じることがあった。
【0042】
そこで、従来から、予め、加工品102を一対のアームで挟持することで、切り離された加工品102の落下を防止する技術が提案されている。かかる技術では、アームには、素材100の自転を許容するベアリングが設けられている。これにより、切断加工の実行中(すなわち加工品102が自転している期間中)から加工品102を一対のアームで挟持できる。そして、一対のアームで加工品102を挟持することで、当該加工品102が素材100から切り離された後も、加工品102が落下しないため、加工品102の損傷を効果的に防止できる。
【0043】
しかし、通常、こうした挟持ユニット38の位置決め精度は、工作機械10に比べて低いため、素材100の回転中心と挟持ユニット38の位置とが一致せず、挟持ユニット38で挟持することにより素材100が僅かに撓むことがあった。このように撓んだ状態で素材を回転させると、振動が発生し、切断面の品質の低下を招くおそれがあった。
【0044】
そこで、本例では、加工品102の切り離し前、すなわち、加工品102と素材100とが繋がっている際には、図4に示すように、挟持ユニット38のアーム40と加工品102の周面との間に隙間が生じるように、当該アーム40を前記加工品102の周面に近接させた待機状態とし、切り離しが完了した時点で、図5に示すように、アーム40が加工品102の周面に接触するまで挟持ユニット38を閉じた挟持状態に切り替えるようにしている。こうした挟持ユニット38の開閉を実現するために、制御装置28は、加工品102の切断加工が完了したか否かを監視し続ける。そして、加工品102の切断加工が完了したと判断できたタイミングで、制御装置28は、挟持ユニット38を図4に示す待機状態から図5に示す挟持状態に切り替える。
【0045】
かかる構成とした場合、切断加工の実行中、挟持ユニット38が、素材100に余計な力を付加しないため、素材100の撓みや振動が効果的に防止される。そして、結果として、切断面の品質をより向上できる。また、切断完了時には、加工品102が挟持ユニット38により挟持されるため、加工品102の落下に伴う損傷を効果的に防止できる。
【0046】
ここで、こうした加工品102の回収に用いる挟持ユニット38について詳説する。本例の挟持ユニット38は、図4図5に示すように、挟持ユニット38の幅方向(図4図5の紙面上下方向)中心を軸として鏡像配置された二つのアーム40を有している。この二つのアーム40は、互いに近づく方向および離れる方向に移動可能である。換言すれば、二つのアーム40は、挟持ユニット38の幅方向に進退可能となっている。
【0047】
挟持ユニット38の内部には、この二つのアーム40を開閉させるための開閉用アクチュエータ(図示せず)が設けられている。開閉用アクチュエータは、例えば、電動モータ、油圧ピストン、空圧ピストン、電磁シリンダの少なくとも一つを含んでもよい。このアクチュエータによる動きは、直接、または、種々の伝達機構を介して、アーム40に伝達される。この伝達機構は、例えば、リードスクリュー、歯車、カム等を含んでもよい。いずれにしても、二つのアーム40に伝わる動きは、鏡像関係にあることが望ましい。本例では、各アーム40は、開閉用アクチュエータ48により、挟持ユニット38の幅方向に直線移動できるようになっている。ただし、当然ながら、二つのアーム40は、直線移動に限らず、他の動きをしてもよい。例えば、図6に示すように、二つのアーム40は、その根元に設けられた回転軸Rを中心として揺動してもよい。
【0048】
各アーム40は、アーム本体42と、当該アーム本体42の途中に設けられた二つのローラ44と、を有している。ローラ44は、挟持ユニット38の厚み方向(図4図5における紙面垂直方向)に延びる軸周りに回転自在である。挟持ユニット38で加工品102を挟持する際には、このローラ44の回転軸と、加工品102の中心軸とが平行になるように、挟持ユニット38を配置する。このとき、ローラ44は、アーム本体42の幅から食み出ているため、加工品102は、二つのアーム40に設けられた合計四つのローラ44で挟持されることになる。そして、加工品102を挟持した際、各ローラ44は、加工品102の周面で転動可能となるため、挟持ユニット38と加工品102との摩擦を低減できる。
【0049】
なお、本例では、一つのアーム本体42に設けられた二つのローラ44を、挟持ユニット38の高さ方向(図4,5における紙面左右方向)に一直線に配置している。かかる構成とするのは、挟持ユニット38の目標位置の演算処理を簡易化するためである。すなわち、挟持ユニット38で加工品102を挟持するためには、挟持ユニット38を、四つのローラ44の外接円の中心が加工品102の中心に一致する位置に位置決めしなければならない。ここで、挟持ユニット38の根元(あるいは機内ロボット26の先端)にある基準点Pに対する外接円の中心位置が、二つのアーム40の開き幅(ひいては挟持する加工品102の径)によって変化する場合、加工品102の径が変わる度に、基準点Pに対する外接円中心位置を算出しなければならず、演算処理が複雑化する。一方、二つのローラ44を挟持ユニット38の高さ方向に一直線に配置し、かつ、一対のローラ44を挟持ユニット38の幅方向に直線進退させる構成とすれば、一つのアーム40に設けられた二つのローラ44を結ぶ直線と、他のアーム40に設けられた二つのローラ44を結ぶ直線と、は常に平行になる。この場合、基準点Pに対する四つのローラ44の外接円中心位置は、二つのアーム40の開き幅(ひいては加工品102の径)が変わっても、常に一定となる。その結果、基準点Pに対する外接円中心位置の算出が不要となり、演算処理を簡易化できる。
【0050】
なお、アーム本体42のうち、少なくとも、他のアーム本体42との対向面は、当該他のアーム本体42から離れる方向に凸となるように湾曲または屈曲していることが望ましい。本例では、アーム本体42は、互いに離れる方向に凸となる略「く」の字形状である。かかる構成とすることで、図5に示すように、四つのローラ44で加工品102を挟持した際に、アーム本体42が加工品102に干渉しにくくなる。
【0051】
ここで、上述した通り、待機状態において、各アーム40は、加工品102の外周面との間に若干の隙間を開ける。この待機状態におけるアーム40と、加工品102の外周面との間の最小隙間量cは、切断加工中における加工品102の垂れ量や振れ量等を考慮して決定されることが望ましい。例えば、加工品102の質量が大きいほど、切り落とされる前の重力方向の垂れ量が大きくなる。また、主軸回転速度が大きいほど、遠心力による加工品102の振れ量が大きくなる。待機状態における最小隙間量cは、こうした垂れ量、振れ量よりも大きいことが望ましいため、加工品102の質量が大きいほど、また、主軸回転速度が大きいほど、待機状態における最小隙間量cを大きくしてもよい。また、最小隙間量cは、一定値でもよいし、切断加工の進行に伴い変化する可変値でもよい。例えば、最小隙間量cは、切断加工の進行に伴い、徐々に小さくしてもよい。
【0052】
次に、制御装置28による切断完了タイミングの判断について詳説する。制御装置28は、加工品102の切断状況を監視し、切断が完了したと判断すれば、挟持ユニット38を待機状態から挟持状態に切り替える。ここで、切断が完了すると切削抵抗および主軸回転抵抗が急激に低下することが知られている。そこで、本例では、切断加工の実行中、切削抵抗および主軸回転抵抗の少なくとも一つを監視し、これら抵抗が急激に低下したタイミングを切断完了タイミングと判断する。
【0053】
切削抵抗および主軸18の回転抵抗の少なくとも一つを監視するために、本例では、切削抵抗および主軸18の回転抵抗の少なくとも一つに依存する物理量を検出するセンサ(以下「切断判断用センサ46」という)を設けている。ここで、切削抵抗に依存する物理量としては、刃物台20のX方向送りモータの出力トルクや印加電流、工具110の歪み量が含まれる。これら出力トルク、印加電流、歪み量は、切削抵抗が大きいほど増加する。また、主軸18の回転抵抗に依存する物理量としては、主軸18の回転モータの出力トルクや印加電流が含まれる。この出力トルクや印加電流は、主軸18の回転抵抗が大きいほど増加する。したがって、本例では、切断完了を判断するために、X方向送りモータのトルクを検出するトルクセンサ、X方向送りモータの印加電流を検出する電流センサ、工具110の歪みを検出する歪みセンサ(例えば圧電素子等)、主軸18の回転モータの出力トルクを検出するトルクセンサ、主軸18の回転モータの印加電流を検出する電流センサの少なくとも一つを切断判断用センサ46として設けている。
【0054】
制御装置28は、これら切断判断用センサ46で検出された検出値が急激に低下したタイミングを、切断完了タイミングとして判断する。図7は、この切断完了のタイミング判断に関係する部材の電気的構成を示すブロック部である。図7において、切断判断用センサ46は、切削抵抗および主軸18の回転抵抗の少なくとも一つに依存する物理量を検出するセンサである。この切断判断用センサ46の検出結果は、制御装置28に入力される。制御装置28は、この検出値に基づいて、加工品102の切断が完了したか否かを判断する。例えば、制御装置28は、検出値を時間微分し、この微分値Dが、所定の閾値α(α<0)以下となったタイミングを、切断完了のタイミングと判断してもよい。
【0055】
なお、この検出値の微分、および、閾値αとの比較は、アナログ的に行ってもよいし、デジタル的に行ってもよい。例えば、切断判断用センサ46と制御装置28との間に、公知の微分回路および比較回路を直列に設け、この比較回路の出力値を、A/D変換して制御装置28に入力してもよい。また、別の形態として、切断判断用センサ46の出力値をA/D変換して、制御装置28に入力した後、制御装置28内において、入力された検出値(離散データ)をデジタル微分したうえで、閾値αと比較してもよい。また、いずれの場合でも、微分処理に先立って、切断判断用センサ46の検出値にローパスフィルタを適用し、高周波ノイズを除去しておいてもよい。微分値Dと比較する閾値αは、負の値であり、予め、実験等を行い、決定される。この閾値αは、固定値でもよいし、切断される素材100の径等に応じて変更される変動値でもよい。
【0056】
いずれにしても、制御装置28は、検出値の微分値Dが、負の値である閾値α以下となった場合には、加工品102の切断が完了したと判断する。この場合、制御装置28は、挟持ユニット38に設けられた開閉用アクチュエータ48を駆動して、挟持ユニット38を待機状態から挟持状態に切り替える。
【0057】
図8は、切断判断用センサ46の検出値と、最小隙間量cの変化の一例を示す図である。図8において、上段は、刃物台20のX方向送りモータに設けられた電流センサ(切断判断用センサ)の検出値を示している。また、図8の中段は、この検出値の微分値Dを、下段は、アーム40と加工品102との最小隙間量cを示している。
【0058】
図8の上段に示す通り、切断加工が開始され、工具110の先端が、素材100の外周面に当たると、切削抵抗が急激に増加する。これに伴い、X方向の送りモータへの印加電流も急激に増加する。そして、工具110が、素材100に食い込んだ後は、電流センサの検出値は、ほぼ一定となる。以降、制御装置28は、刃物台20をX方向に徐々に移動させ、工具110の先端を径方向に移動させる。そして、工具110の先端が、素材100の中心軸まで達すると、加工品102が切断される。加工品102が切断されると、切削抵抗は、急激に低下し、電流センサの検出値も急激に低下する。
【0059】
この検出値を微分すると、図8の中段に示す通り、切断加工の開始時には正の方向に、切断完了時には負の方向に、大きなピークが発生する。制御装置28は、微分値Dが、閾値α以下となる時刻t1において、切断が完了したと判断する。
【0060】
アーム40と加工品102との最小隙間量cは、切断加工の開始から切断が完了するまで、ほぼ一定に保たれている。そして、時刻t1において、制御装置28は、切断完了と判断すれば、挟持ユニット38を待機状態から挟持状態に切り替える。その結果、時刻t1を境に、アーム40と加工品102との最小隙間量cは、急激に低下し、最終的にゼロとなる。これにより、切り離された加工品102は、挟持ユニット38により挟持され、床面への落下が防止される。
【0061】
次に、こうした加工品102の切断と回収の流れについて図9を参照して説明する。加工品102を切断する場合は、予め、素材100と工具110をそれぞれ、主軸18および刃物台20にセットしておく。また、挟持ユニット38を、待機状態にセットする(S10)。具体的には、挟持ユニット38のアーム40を加工品102の直径よりも大きく開いた状態で、機内ロボット26を駆動して、当該アーム40を、加工品102の重心位置の近接に移動させる。なお、このとき、四つのローラ44の外接円中心が、加工品102の中心と一致させる。その状態で、挟持ユニット38のアーム40を、加工品102の周面との間に所定の隙間が残る程度まで閉じて、待機状態とする。
【0062】
挟持ユニット38を待機状態に出来れば、制御装置28は、主軸18および刃物台20を駆動して、加工品102の切断加工を開始させる(S12)。このとき、一対のアーム40は、加工品102から離間しているため、当該挟持ユニット38から加工品102に余計な力がかかることがない。結果として、素材100の撓みや振動が抑制され、良好な切断面が得られる。
【0063】
切断加工が開始されれば、制御装置28は、切削抵抗または主軸回転抵抗に依存する物理量を検出する切断判断用センサ46の検出値を随時取得するとともに、当該検出値を微分する(S14)。そして、得られた微分値Dを規定の閾値αと比較する(S16)。比較の結果、微分値Dが閾値αより大きい場合には、ステップS14~S16を繰り返す。一方、微分値が閾値α以下となれば、制御装置28は、切断が完了したと判断し、挟持ユニット38を、待機状態から挟持状態に切り替える(S18)。すなわち、開閉用アクチュエータ48を駆動して、一対のアーム40を互いに近づく方向に移動させ、当該一対のアーム40で加工品102を挟持する。これにより、加工品102が床面に落下すること、ひいては、落下衝撃による加工品102の損傷を効果的に防止できる。
【0064】
なお、加工品102が切り離された直後は、加工品102は、慣性力により回転を続ける。本例のアーム40には、この加工品102の周面で転動するローラ44が設けられているため、この加工品102の惰性回転を阻害せず、加工品102の擦れによる傷を効果的に防止できる。そして、挟持ユニット38で加工品102を挟持できれば、制御装置28は、機内ロボット26を駆動して、加工品102を所定の排出部に、搬送することで、処理は、終了となる(S20)。
【0065】
以上の説明から明らかな通り、本例によれば、加工品102の切断が完了したか否かを監視し、切断完了前は、挟持ユニット38を待機状態に保つ一方で、切断完了したタイミングで、挟持ユニット38を待機状態から挟持状態に切り替える。そのため、切断加工の実行中、挟持ユニット38が、素材100に余計な力を付加しないため、素材100の撓みや振動が効果的に防止される。そして、結果として、切断面の品質をより向上できる。また、切断完了時には、加工品102が挟持ユニット38により挟持されるため、加工品102の落下に伴う損傷を効果的に防止できる。
【0066】
ところで、加工品102を切断した後、主軸18には、素材100が残る。このように加工後に残った素材100(以下「残存素材」という)も、機内ロボット26および挟持ユニット38を用いて回収してもよい。すなわち、加工品102を所定の排出部に搬送した後、制御装置28は、挟持ユニット38を残存素材の直径より大きく開いた状態で、機内ロボット26を駆動して、挟持ユニット38を残存素材の重心近傍に移動させる。その後、制御装置28は、開閉用アクチュエータ48を駆動して挟持ユニット38で残存素材の重心近傍を挟持させるとともに、チャック30を解除する。この状態になれば、制御装置28は、機内ロボット26を駆動して、残存素材を、所定の廃棄場所に搬送する。このように、機内ロボット26および挟持ユニット38を用いて残存素材を回収することで、工作機械10に損傷を与えることなく、残存素材を回収できる。
【0067】
なお、ここでは、素材は、主軸18の前方から着脱される場合を想定しているが、素材は、主軸18の背後に設けられたバーフィーダーから供給されてもよい。バーフィーダーを用いる場合、従来、残存素材は、新たに供給される素材により押し出されて、加工室16の底面に落下した後、チップコンベアにより排出されていた。しかし、この場合、残存素材が、加工室16を傷つけるおそれがあった。
【0068】
そこで、バーフィーダーを用いる場合でも、挟持ユニット38および機内ロボット26を用いて残存素材を回収してもよい。この場合、制御装置28は、一対のアーム40を残存素材の直径よりも大きく開き、残存素材のうち重心近傍を挟持ユニット38で支持する。また、チャック30を解除する。この場合、残存素材は、挟持ユニット38および解除されたチャック30の2点で支持されることになる。この状態になれば、制御装置28は、バーフィーダーを駆動して、残存素材を、新しい素材で押し出す。このとき、制御装置28は、機内ロボット26を駆動して、挟持ユニット38を残存素材の移動に同期させる。そして、最終的に、残存素材の後端が、チャック30を抜ければ、制御装置28は、挟持ユニット38のアーム40を閉じて、挟持ユニット38に残存素材を挟持させる。
【0069】
また、別の形態として、残存素材の重心が、チャック30を越えるまでは、挟持ユニット38で当該残存素材の先端近傍に支持し、残存素材の重心がチャック30を越えれば、その時点で、残存素材の重心を挟持ユニット38で挟持してもよい。すなわち、制御装置28は、一対のアーム40を残存素材の直径よりも大きく開いた状態で、挟持ユニット38を残存素材のうち先端近傍に移動させ、当該先端近傍を挟持ユニット38で支持させる。この状態になれば、制御装置28は、チャック30を解除するとともに、バーフィーダーを駆動して、残存素材を、新しい素材100で押し出す。そして、残存素材の重心が、チャック30を越えれば、制御装置28は、チャック30を再び閉じるとともに、挟持ユニット38を、残存素材の重心近傍に移動させる。そして、その状態で、挟持ユニット38を閉じて、挟持ユニット38に残存素材を挟持させる。この状態になれば、制御装置28は、チャック30を再び解除したうえで、機内ロボット26を駆動して、残存素材を搬送させる。
【0070】
以上の通り、バーフィーダーを用いる場合でも、機内ロボット26および挟持ユニット38を用いて、残存素材を回収するため、残存素材の落下に起因する加工室16の損傷を防止できる。また、残存素材のうち、重心近傍を挟持ユニット38で挟持することで、長い残存素材でも確実に回収できる。
【0071】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、適宜、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、各アーム40にローラ44を設けていたが、こうしたローラ44は、省略されてもよい。すなわち、本例では、切断完了前には、挟持ユニット38で素材100を挟持しないため、ローラ44は必ずしも必要ではない。ただし、加工品102は、素材100から切り離された後も、慣性力により、しばらく回転を続ける。この回転する加工品102とアーム40との擦れを防止するために、ローラ44が設けられることが望ましい。なお、ローラ44の有無に限らず、アーム40と加工品102との接触面は、加工品102を傷つけない程度に柔らかいことが望ましい。例えば、アーム40と加工品102との接触面(例えばローラ44の外周面)は、ゴムやスポンジ等の弾性材料で被覆されていてもよい。
【0072】
また、上述の説明では、切断判断用センサ46の検出値の微分値Dに基づいて切断完了のタイミングを判断している。しかし、微分値Dではなく、切断判断用センサ46の検出値から直接、切断完了タイミングを判断してもよい。すなわち、切断判断用センサ46の検出値が、例えば、閾値β(図8参照)以下になったタイミングを、切断完了タイミングと判断してもよい。また、加工方法によっては、加工品102が切り離される直前で、切削抵抗が大きく振動する場合もある。この場合には、この切削抵抗の振動を検出し、当該振動が検出されたタイミングを切断完了タイミングとして判断してもよい。
【0073】
また、これまでは、一つの切断判断用センサ46の検出値に基づいて判断していたが、切断判断用センサ46を複数設け、この複数の切断判断用センサ46の検出値に基づいて切断完了タイミングを判断してもよい。例えば、主軸回転モータの電流センサと、刃物台20のX方向送りモータの電流センサと、工具110の歪みセンサと、を設けるとともに、各センサごとに閾値α1、α2、α3を設定しておく。そして、これら三つのセンサの検出値の微分値D1,D2、D3が、全て、対応する閾値α1、α2,α3以下となったタイミング、すなわち、D1≦α1かつD2≦α2かつD3≦α3となったタイミングを切断完了タイミングと判断してもよい。かかる構成とすることで、実際には切断完了前であるのに、切断完了と誤判断する過剰判断を防止できる。あるいは、三つのセンサの検出値の微分値D1,D2,D3のいずれか一つが、対応する閾値α1,α2,α3以下となったタイミング、すなわち、D1≦α1またはD2≦α2またはD3≦α3となったタイミングを、切断完了タイミングと判断してもよい。かかる構成とすることで、実際には切断完了しているのに、切断完了していないと判断する検出スルーを防止できる。
【0074】
また、本例では、切削抵抗および主軸回転抵抗の少なくとも一方に基づいて切断完了を判断しているが、他のパラメータに基づいて切断の状況を判断してもよい。例えば、刃物台20のX方向位置に基づいて、工具110の先端位置を推測し、この工具110の先端位置が、素材100の中心軸に達したタイミングを、切断完了タイミングとして特定してもよい。さらに、素材100の直径や工具110の送り速度等に基づいて切断加工に要する時間を予め推定しておき、切断加工を開始してからの経過時間に基づいて、切断完了タイミングを判断してもよい。
【0075】
また、これまでの説明では、挟持ユニット38を移動させる移動装置として、多自由度の機内ロボット26を用いているが、挟持ユニット38を少なくとも、Z軸方向に移動できるのであれば、他の移動機構を用いてもよい。例えば、加工室16の天面に、Z移動機構を設けておき、このZ移動機構に、挟持ユニット38を吊り下げ保持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 工作機械、12 カバー、14 ドア、16 加工室、18 主軸、20 刃物台、22 タレット、24 心押台、26 機内ロボット、28 制御装置、30 チャック、36 エンドエフェクタ、38 挟持ユニット、40 アーム、42 アーム本体、44 ローラ、46 切断判断用センサ、48 開閉用アクチュエータ、100 素材、102 加工品、110 工具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9