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  • 特許-高圧噴射工法のロッド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】高圧噴射工法のロッド
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018175290
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020045686
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390025759
【氏名又は名称】株式会社ワイビーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【氏名又は名称】町田 光信
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】奈須 徹夫
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-053635(JP,U)
【文献】特開2010-084495(JP,A)
【文献】特開平03-119219(JP,A)
【文献】特開2013-083125(JP,A)
【文献】実開昭61-121234(JP,U)
【文献】特開2011-236560(JP,A)
【文献】特開2012-136843(JP,A)
【文献】特開2008-285811(JP,A)
【文献】特開2013-241812(JP,A)
【文献】米国特許第05803184(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E21B 1/00-19/24
E21B 44/00-44/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固結改良体を造成するために地盤に固化材を噴射する高圧噴射工法において、
固結改良体を造成するために、下端に前記固化材を地盤に噴射するモニターを有した造成ロッドと、
前記造成ロッドの外周には、前記造成ロッドの軸線と平行な一以上の平面が形成されており、
前記造成ロッドは、前記平面が前記造成ロッドの軸線の外周に等角度位置に3面形成されており、前記3面と等角度位置に交互に配置された円筒形の一部の円孤面からなる
ことを特徴とする高圧噴射工法のロッド。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧噴射工法のロッドにおいて、
前記造成ロッドの外周に配置され、前記固結改良体を造成する前に削孔する削孔穴を削るための掘削刃を有する
ことを特徴とする高圧噴射工法のロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤対策工法中の固結改良工法の一種である高圧噴射工法に用いるロッドに関する。更に詳しくは、軟弱地盤を改良するために固化材を高圧で噴射する高圧噴射工法に用いるロッドであって、特にスライムの排泥を効率的にできるロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧噴射工法には、地盤に改良柱を造成するための機械攪拌工法、高圧噴射工法、機械攪拌併用工法等が知られている。この高圧噴射工法は、固化材を噴射する単管工法、「エアー+グラウト噴射」の二重管工法、「エアー+水噴射、グラウト噴射」、「エアー+水噴射、エアー+グラウト噴射」、又は「水噴射、エアー+グラウト噴射」の三重管工法等が知られている。円柱状の改良体を造成する高圧噴射工法は、例えば、ケーシングで削孔する場合、この削孔完了後、ケーシング内に造成用ロッドを挿入し、ケーシングを引き抜いた後、ロッドを引き上げながら改良体の造成作業を行うものである。改良体の造成中に、余分な土粒子、水等からなるスライムが、ケーシングで削孔した削孔穴とロッドの外周面との間の隙間から地表面上のスライムビット内に排泥される。
【0003】
このスライムの排泥が円滑にできないと、大口径で高品質な改良体を造成することはできない。従って、大口径で高品質な改良体を造成するためには、スライムを円滑に排出することが重要な施工条件となる。ロッドを多重管で構成し、外側のガイド管とこのガイド管内にインナー注入ロッドを挿入し、ガイド管とインナー注入ロッドの間の隙間を、排泥のための排出路とするものも提案されている(特許文献1)。また、スライムビットへのスライムの排出を促進するために、ロッドの外周に螺旋羽根を設けてスクリューで送られたものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-166533号公報
【文献】特開2001-131954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されているような多重管ロッドを用いて、その隙間から排泥するものは、多重管で隙間が狭いので、排泥中に砂利等の小石等が混入していると、小石等がこの隙間に挟まり、詰まりの原因となり円滑に排泥できない問題がある。また、特許文献2のように螺旋状の羽根を形成したものも同様に、排泥中に砂利等の小石等が混入していると、小石等を螺旋羽根の間、又は螺旋羽根と排泥孔間で噛み込む問題があり、必ずしも円滑な排泥はできない。
【0006】
本発明は、以上のような背景により以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、固結改良工法である高圧噴射工法において、円滑にスライムを排泥できる、高圧噴射工法のロッドを提供することにある。
本発明の他の目的は、固結改良工法である高圧噴射工法において、スライムを排泥するときに攪拌できる、高圧噴射工法のロッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明1の高圧噴射工法のロッドは、固結改良体を造成するために地盤に固化材を噴射する高圧噴射工法において、固結改良体を造成するために、下端に前記固化材を地盤に噴射するモニターを有した造成ロッドと、前記造成ロッドの外周には、前記造成ロッドの軸線と平行な一以上の平面が形成されており、前記造成ロッドは、前記平面が前記造成ロッドの軸線の外周に等角度位置に3面形成されており、前記3面と等角度位置に交互に配置された円筒形の一部の円孤面からなることを特徴とする。
【0008】
本発明2の高圧噴射工法は、本発明1において、前記造成ロッドの外周に配置され、前記固結改良体を造成する前に削孔する削孔穴を削るための掘削刃を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高圧噴射工法のロッドは、流量面積を大きくして円滑にスライムを排泥でき、かつスライムを排泥するときに攪拌できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、高圧噴射工法において、柱状の固結改良体を造成しているときの地下の模式を示す断面図である。
図2図2は、造成ロッドを構成する単位ロッドの断面図である。
図3図3は単位ロッドの断面図であり、図3(a)は、図2のA-A線で切断した断面図、図3(b)は、図2のB-B線で切断した断面図である。
図4図4は、単位ロッドを連結したときの継手部分の断面図である。
図5図5は、高圧噴射工法のモニターと掘削刃を示す図であり、図5(a)は噴射ノズルの断面図であり、図5(b)は図5(a)の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、高圧噴射工法において、柱状の固結改良体を造成しているときの地下の模式を示す断面図である。本実施の形態で説明する高圧噴射工法は、二重管工法を例で説明する。地盤改良機1の把持・駆動装置2により、二重管である造成ロッド3を把持した後、この造成ロッド3を回転させながら、かつ地盤改良機1のリーダー4に沿って引き上げて、固結改良体10を造成する。高圧ジェットグラウトポンプ(図示せず)で加圧されたセメント系の固化材、及び空圧ポンプで加圧された圧縮空気は、二重管スイベル(図示せず)を介し、その固化材及び圧縮空気が造成ロッド3を通して供給される。加圧された固化材に圧縮空気を添わせて地盤に高圧噴射し、固結改良体10を造成する。固化材及び空気は、後述するように造成ロッド3の内部を通って供給される。
【0013】
固結改良体10を造成中に排出される余分な土粒子、水等からなるスライム7は、造成ロッド3と削孔された削孔穴6と造成ロッド3の外周面との間の隙間5から上昇して、地表面上のスライムビット8内に排泥される。スライム7を円滑に排泥するためには、可能な限り隙間5の大きさは大きくしたほうが良い。しかしながら、隙間5を必要以上に大きくすると、均一で品質の良い固結改良体10を造成できない。図2は、造成ロッドを構成する単位ロッドの断面図である。図3は単位ロッドの断面図であり、図3(a)は、図2のA-A線で切断した断面図、図3(b)は、図2のB-B線で切断した断面図である。図4は、単位ロッドを連結したときの継手部分の断面図である。
【0014】
造成ロッド3は、所定の長さの単位ロッド10をその両端部に設けられた継手で連結し、所望の長さに組み立てて使用される。単位ロッド10は、その一端部に六角雄継手部11、及び他端部に六角雌継手12を有している。単位ロッド10であるアウターパイプ13を軸線直角で切断した断面形状は、異形の6角形である(図3(b)参照)。軸線直角で切断したアウターパイプ13の断面の外形には、直線状に現れる正三角形の面14と円弧面15が現れる。単位ロッド10の中心には、インナーパイプ21が配置されている。このインナーパイプ21は、高圧に加圧された固化材を通すための中空の管である。六角雄継手部11は、単位ロッド10を順次必要な長さに連結するときの雄継手を構成する。六角雄継手部11の外殻を構成する六角ジョイント16の部分は、外形の断面形状が六角形の角筒部17、18、円筒の小径部19からなる。
【0015】
六角ジョイント16の角筒部18には、接続ピン挿入孔20が2箇所に形成されている。この接続ピン挿入孔20は、六角雄継手部11を六角雌継手12に挿入後、後述する接続ピン30(図3(a)参照)を挿入して、六角雄継手部11と六角雌継手12が固定される。六角ジョイント16の中心部には、継手用インナーパイプ22が配置されている。継手用インナーパイプ22の一端は、インナーパイプ21の一端と連結される。他方、六角雌継手12の外筒25は、外形が前述したアウターパイプ13と同様の形状を成している。外筒25内の貫通孔は、六角形の角孔部26、27、円形の小円孔部28からなる。この角孔部26、27、及び小円孔部28は、六角雄継手部11の角筒部17、18、及び小径部19にそれぞれに対応して、連結時にそれぞれの軸線方向の位置、角度で挿入される。
【0016】
六角雌継手12の角孔部27には、接続ピン30(図3(a))を挿入するための貫通孔であるピン孔29が60度の角度を変えて2箇所に配置されている。図4は、二つの単位ロッド10を連結したものであり、六角雄継手部11と六角雌継手12を連結した状態を示す断面図である。継手用インナーパイプ22の先端は、インナーパイプ21の一端のインナーパイプ連結部35内に挿入されて連結される。連結部35には、Oリング36が配置されているので、この連結部35から固化材が漏れることはない。この六角雄継手部11と六角雌継手12を連結した状態で、継手用インナーパイプ22の外周には、空気路40が形成される。空気路40は、前述したように、加圧されたセメント系の固化材を高圧噴射して固結改良体10を噴射するとき、圧縮空気を添わせて造成するときの圧縮空気を通すための通路である。
【0017】
図5は、高圧噴射工法のモニターと掘削刃を示す図であり、図5(a)は噴射ノズルの断面図であり、図5(b)は図5(a)の底面図である。固化材ノズル45は、地盤に高圧で噴射するための噴射ノズルである。固化材ノズル45は、インナーパイプ21に連結されている固化材供給路46に連通している。固化材供給路46から供給された高圧の固化材は、固化材ノズル45の外周に回転しながら噴射される。固化材ノズル45の外周には、空気ノズル47が配置されている。空気ノズル47に供給される圧縮空気は、インナーパイプ14の外周に形成された空気路40から供給される。加圧された固化材が固化材ノズル45から噴射され、この外周に圧縮空気を添わせて噴射され固結改良体10を造成する。
【0018】
造成ロッド3の先端には、3本の掘削刃50が6角の円弧面15に固定されている。固結改良体10を形成する前に、図1に示す削孔穴6は、掘削刃50で最初に掘削される。削孔穴6の内径の大きさは、掘削刃50の外径とほぼ同一となる。スライム7は、削孔穴6と造成ロッド3の外周面との間の隙間5から上昇して地表面上のスライムビット8内に排泥される。このとき、造成ロッド3の外表面は、断面において、直線状に現れる正三角形の平面14と円弧面15からなる、平面と円弧面が形成されているので、円形に比べて削孔穴6と造成ロッド3の外周面との間の隙間5が大きい。更に、この造成ロッド3の外表面の平面14により、スライム7が攪拌されるので、小石等が挟まって詰まりが少ない。即ち、造成ロッド3の外表面の平面14は、一種の攪拌翼の機能を果たすことになる。
【0019】
[その他の実施の形態]
前述した実施の形態は、高圧噴射工法において、硬化材を圧縮空気を添わせながら噴射する二重管工法であった。しかしながら、本発明は、この二重管工法に限定されない。本発明は、造成ロッド3の外周面と掘削孔6との間の隙間5の面積を大きく、かつスライムを攪拌できるものであり、二重管工法に限定されず、単管工法、三重管工法等にも適用できる。また、前述した造成ロッド3の外周面には、等角度間隔に軸線と平行な三つの平面が形成されたものであった。しかしながら、一平面以上であれば、二平面でも良い。また、円筒面と組み合わせたものであったが、円筒面を有さない六角柱であっても良い。
【符号の説明】
【0020】
1…地盤改良機
3…造成ロッド
6…掘削穴
8…スライムビット
10…固結改良体
11…六角雄継手部
12…六角雌継手
13…アウターパイプ
14…面
15…円弧面
16…六角ジョイント
17、18…角筒部
19…小径部
21…インナーパイプ
22…継手用インナーパイプ
25…外筒
30…接続ピン
35…連結部
45…固化材ノズル
47…空気ノズル
50…掘削刃
図1
図2
図3
図4
図5