(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-13
(45)【発行日】2022-10-21
(54)【発明の名称】土留め用籠構造物およびその形成方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20221014BHJP
【FI】
E02D17/20 103G
E02D17/20 103B
(21)【出願番号】P 2018204800
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-09-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年5月7日に、メールに添付して送付した、発明の内容が記載された説明書
(73)【特許権者】
【識別番号】591083901
【氏名又は名称】共和ハーモテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森谷 完
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-003261(JP,A)
【文献】特開2012-127160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金網からなる籠に土砂を充填した土留め用籠構造物であって、
複数の金網パネルを組み合わせて形成した籠と、前記籠の少なくとも前面の内側に配置されたシート部材と、前記籠の内部に充填された土砂とを備え、
前記金網パネルは溶接金網からなっており、
前記籠の内部であって土砂の内部には中敷き金網が略水平に配置されており、
前記中敷き金網は、前記籠の後面に後面側連結部材により連結されていると共に、前記籠の前記前面に前面側連結部材により連結されており、
前記前面に配置された前記シート部材は、前記土砂が籠の外に排出されることを防ぐとともに、前記前面側連結部材が取り付けられている位置において上下に分割されて
おり、
前記前面側連結部材は前記前面に対して、前記溶接金網の上下に延びる鉄線に沿って移動可能に取り付けられているとともに、前記溶接金網の左右に伸びる隣り合う2本の横方向の鉄線において上側の前記横方向の鉄線から下側の前記横方向の鉄線まで移動可能に取り付けられている、土留め用籠構造物。
【請求項2】
前記前面に配置された前記シート部材は、上下に分割された位置において、それぞれの端部側が前記籠の内部側へと折り曲げられている、請求項1に記載されている土留め用籠構造物。
【請求項3】
複数の金網パネルを組み合わせて籠を形成する工程Aと、
第1のシート部材を前記籠の前面の内側下半分と底面の一部を覆うように配置する工程Bと、
前記籠の下側半分に土砂を入れる工程Cと、
前記第1のシート部材の上側端部を後方へ折り曲げて前記土砂の上に載せる工程Dと、
前記土砂の上に中敷き金網を載せる工程Eと、
前記中敷き金網と前記前面とを前面側連結部材で連結するとともに、前記前面側連結部材を前記前面に対して、前記金網パネルの溶接金網の上下に延びる鉄線に沿って移動可能に取り付ける工程Fと、
前記中敷き金網と前記籠の後面とを後面側連結部材で連結する工程Gと、
第2のシート部材を前記籠の前面の内側上半分と前記中敷き金網の一部を覆うように配置する工程Hと、
前記籠の上側半分に土砂を入れる工程Iと
を含
み、
前記前面側連結部材は、前記溶接金網の左右に伸びる隣り合う2本の横方向の鉄線において上側の前記横方向の鉄線から下側の前記横方向の鉄線まで移動可能に取り付けられている、土留め用籠構造物の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留め用籠構造物およびその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛇籠やふとん籠は、金網から構成された籠の中に割り栗石などを入れて、土留めや擁壁等に用いられる。けれども、籠の中に入れる石は、金網の網目よりも大きく且つ大きさも揃っていることが求められるため、工事を急ぐ場合には供給が間に合わない場合がある。一方、土砂であれば籠の設置のために掘削を行えばどこでも容易に入手できるため、籠の中に土砂を入れることが行われている。
【0003】
しかし、土砂は栗石に比べて剪断抵抗力が小さいため、背面からの土圧等によって土砂が動いてしまい籠が変形したり段積みの崩壊が生じたりする危険性があり、このような変形や崩壊が生じないように小型で背の低い籠、又は変形を防止するために補強した大型の籠にしか土砂を入れることが行われてこなかった。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1には、ひし形金網や溶接金網、エキスパンドメタル等で形成された箱型の容器であるかご枠構造物の内部に土砂等の中詰材を充填してブロック化したものを所要高さに段積みすることにより、擁壁や堰堤に構築する土留め用かご枠構造物であって、中詰材の間に、中詰材の横変形に対して摩擦抵抗力を生じて変形を抑制しようとする面状材料を介在させる技術が開示されている。具体的には、かご枠構造物の途中まで土砂を投入して転圧した後、その上に不織布等のシート状面状材料を載せて、その上にさらに土砂を投入し、土留め用かご枠構造物を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、土留め用かご枠構造物を設置した後に土砂が沈下してしまっていき、籠が変形し、かご枠構造物そのものの高さが小さくなってしまうというという問題があった。この問題は、特許文献1に開示された技術ではシート状面状材料を単に土砂の上に載せてさらに土砂を載せているだけなので、この問題を解決することができない。また、籠自体が大型化するとこの問題は顕著に表れてくる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金網からなる籠の中に土砂を入れた際に土砂の沈下による籠の変形及び土砂の過度の沈下を防止する構造を有した土留め用籠構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の土留め用籠構造物は、金網からなる籠に土砂を充填した土留め用籠構造物であって、複数の金網パネルを組み合わせて形成した籠と、前記籠の少なくとも前面の内側に配置されたシート部材と、前記籠の内部に充填された土砂とを備え、前記金網パネルは溶接金網からなっており、前記籠の内部であって土砂の内部には中敷き金網が略水平に配置されており、前記中敷き金網は、前記籠の後面に後面側連結部材により連結されていると共に、前記籠の前記前面に前面側連結部材により連結されており、前記前面に配置された前記シート部材は、前記土砂が籠の外に排出されることを防ぐとともに、前記前面側連結部材が取り付けられている位置において上下に分割されている構成を備えたものである。
【0009】
前面に配置された前記シート部材は、上下に分割された位置において、それぞれの端部側が前記籠の内部側へと折り曲げられていることが好ましい。
【0010】
前面側連結部材は前記前面に対して、前記溶接金網の上下に延びる鉄線に沿って移動可能に取り付けられていることが好ましい。
【0011】
本発明の土留め用籠構造物の形成方法は、複数の金網パネルを組み合わせて籠を形成する工程Aと、第1のシート部材を前記籠の前面の内側下半分と底面の一部を覆うように配置する工程Bと、前記籠の下側半分に土砂を入れる工程Cと、前記第1のシート部材の上側端部を後方へ折り曲げて前記土砂の上に載せる工程Dと、前記土砂の上に中敷き金網を載せる工程Eと、前記中敷き金網と前記前面とを前面側連結部材で連結するとともに、前記前面側連結部材を前記前面に対して、前記金網パネルの溶接金網の上下に延びる鉄線に沿って移動可能に取り付ける工程Fと、前記中敷き金網と前記籠の後面とを後面側連結部材で連結する工程Gと、第2のシート部材を前記籠の前面の内側上半分と前記中敷き金網の一部を覆うように配置する工程Hと、前記籠の上側半分に土砂を入れる工程Iとを含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
金網からなる籠の内部に中敷き金網が略水平に配置されて、中敷き金網は籠の前面及び後面と連結されているので、籠の中に土砂を充填しても籠内での土砂の沈下が防止され、籠の変形及び沈下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る土留め用籠構造物の模式的な断面構造である。
【
図2】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【
図3】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【
図4】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【
図6】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【
図7】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【
図8】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【
図9】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【
図10】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【
図12】前面側連結部材と中敷き金網との連結構造を示す模式的な部分拡大図である。
【
図13】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【
図14】実施形態に係る土留め用籠構造物を形成する一工程を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0015】
(実施形態1)
実施形態1に係る土留め用籠構造物の模式的な断面構造を
図1に示す。また、
図2から
図4,
図6から
図10,
図13,14によって本実施形態に係る土留め用籠構造物の形成方法を示す。
【0016】
図1は本実施形態に係る土留め用籠構造物101,102が2段に積まれた状態の模式的な断面構造である。土留め用籠構造物101,102は前面32,後面34,底面36及び側面38に囲まれて形成された籠の中に土砂20を充填して形成されている。前面32,後面34,底面36及び側面38は、溶接金網からなる金網パネルからなっている。
【0017】
前面32の内部側には第1植生シート24及び第2植生シート26が配置されて、土砂20が前面32の金網の目から外部へ出てこないようにしている。また、2段目の土留め用籠構造物102は、1段目の土留め用籠構造物101の前面32から後方へ、籠の奥行きの1/4の長さ分だけずらして積載されており、1段目の土留め用籠構造物101の上面のうち、2段目の土留め用籠構造物102が載っていない部分には蓋となる上面金網52が載せられて前面32の金網パネルとコイル22cで連結されている。2段目の土留め用籠構造物102は上面の全面が露出しているため、上面全面に蓋となる上面金網54が載せられて前面32と後面34とコイル22cにより連結されている。
【0018】
次に本実施形態の土留め用籠構造物101、102の形成方法を説明する。
【0019】
まず、整地された地盤の上に、断面がL字型の前側金網パネル12と後側金網パネル14とを、地盤から垂直に立設した部分同士が平行になり、地盤上に置かれた部分の端部同士を突き合わて置く(
図2)。これらの金網パネル12,14は、溶接金網を折り曲げて形成されている。両方の金網パネル12,14の地盤上に置かれた部分の端部同士をコイル22aによって連結する。このようなL字型の金網パネル12,14を用いると、金網パネル12,14が地盤上に自立し、かつ、コイル22aにより連結するだけで前面32、後面34、底面36が一度に形成できるため、手間がかからず短時間で形成できる。
【0020】
また、図では前側金網パネル12と後側金網パネル14とをそれぞれ1つずつしか示していないが、水平方向において必要な長さを確保できるように、複数の前側金網パネル12及び後側金網パネル14をそれぞれの側部同士が隣接するようにして並べ、隣同士をコイルにより連結する。これにより、籠の前面32と後面34と底面36が形成される。さらに側方の端に金網パネルを前面32及び後面34とコイル22bで連結して側面38を形成することにより籠を形成する(工程A)。
【0021】
それから
図3に示すように、前面32の内側(籠の内部側)に第1植生シート(第1のシート部材)24を設置する。第1植生シート24は、下端側が折り曲げられて籠の底面36の上に置かれ、上端は前面32の高さ方向の中間位置より高い部分に配置される(工程B)。好ましくは、第1植生シート24の高さ方向の長さは籠の前面32とほぼ同じ長さとして、そのうちの1/4を底面36側に載せる。
【0022】
次に
図4に示すように籠の下方において、補強ステー28を前面32及び後面34に連結させる。補強ステー28は
図5に示すように直線状の鉄線の両端をフック形状に曲げたもので、フックの部分を前面32及び後面34に引っかける。引っかける位置は前面32及び後面34の高さの約1/5の位置が好ましい。この補強ステー28により、籠の内部に土砂を充填した際に前面32及び後面34が外側に膨らんでしまうことを防止する。
【0023】
図6は補強ステー28を設置した状態の籠を斜め上方から見た模式的な図である。補強ステー28は、前面32及び後面34を構成する溶接金網の縦線に引っかけている。また、側面38は底面36とコイル22dにより連結されており、はらみ(外方への膨らみ)防止のため補強ステー29によっても底面36と連結されている。
【0024】
その後、
図7に示すように籠の中に土砂20を籠の高さの1/3弱の高さまで入れて転圧を行って土砂20を締め固める。土砂20は補強ステー28よりも上まで入れて、補強ステー28を土砂20に埋没させるようにすることにより、補強ステー28が転圧作業の際の邪魔にならないようにする。さらに籠の半分の高さまで土砂20を入れて、転圧を行って土砂20を締め固める(
図8)。ここまでの土砂20の投入を行う工程が工程Cである。工程Cが終了した時点で、土砂20の上の面は略水平になっている。
【0025】
それから
図9に示すように、第1植生シート24のうち土砂20の上に突き出している上端部分が土砂20の上に載るように、第1植生シート24を後方(籠の内部側)に折り曲げる(工程D)。
【0026】
次に
図10に示すように、土砂20と第1植生シート24の上側折り曲げ部分との上に中敷き金網40を載せる(工程E)。中敷き金網40は種々の種類の金網、エキスパンドメタル等を用いることができるが、溶接金網からなっていることが好ましい。また、土砂20の表面に中敷き金網40は略水平に載せられる。略水平とは、厳密な意味での水平ではなく、工程Cにおいて転圧を行った状態で、その表面状態に相当する水平の度合のことである。
【0027】
それから
図11に示す前面側連結部材42を用いて、籠の前面32と中敷き金網40とを連結し(工程F)、後面側連結部材46を用いて籠の後面34と中敷き金網40を連結する(工程G)。本実施形態では後面側連結部材46は、Uボルトとそれが挿通される穴が2つ設けられた金属板と2つのナットからなっており、後面34を構成する溶接金網の縦線に固定される。
【0028】
前面側連結部材42は、1本の金属製の線材を曲げて形成されており、中央の直線状の中央部44の両端から中央部44に対して垂直に延びていって、その途中から中央部44側へと曲がっている2つのフック部43を備えている。フック部43は、中央部44とその両側のフック部43への繋ぎ部分からなる平面に対して垂直な面内に形成されている。
【0029】
前面側連結部材42は、籠の前面32の外側に中央部44を、前面32を構成する溶接金網の横線94と平行に配置し、前面32の網目からフック部43を籠の内部へ挿入する。そして
図12に示すようにフック部43を中敷き金網40の前方側端部に位置する線材に引っかける。このように連結することにより、中央部44は前面32の溶接金網の縦線92と当接し、縦線92に沿って上下に移動することができる。また、前面側連結部材42の中央部44とフック部43の繋ぎ部分は水平な配置だけではなく、中央部44よりもフック部43が上又は下に位置するような斜めの配置となることが可能となる。
【0030】
次に
図13に示すように、前面32の内側(籠の内部側)に第2植生シート(第2のシート部材)26を設置する。本実施形態では、第2植生シート26は第1植生シート24と同じものを使用している。第1植生シート24と同様に、第2植生シート26も下端側が折り曲げられて、中敷き金網40の前面側の一部と前面側連結部材42と土砂20との上に置かれ、上端は前面32の上端よりも高い部分に位置し、前面32の外側に垂らされている(工程H)。この後、補強ステー28を前面32及び後面34に連結させる。連結させる位置は、前面32及び後面34の上端よりも少し下側が好ましい。
【0031】
そして
図7から
図9に示した工程と同様の土砂20投入・転圧を行って(工程I)、第2植生シート26の上端側を土砂20の上に載せるように後方側に折り曲げて(
図14)、土留め用籠構造物の本体部分が出来上がる。この上に籠構造物を載せない場合は、上部の全面に蓋となる金網パネルを載せる。この上にさらに土留め用籠構造物や他の籠構造物を載せる場合は、籠構造物を載せる部分以外で上面が露出する部分に蓋となる金網パネルを載せる。
【0032】
本実施形態に係る土留め用籠構造物は、中敷き金網40を土砂20の内部に略水平に配置し、籠の前面32と後面34とに連結をさせているので、土砂20が圧密沈下したり、乾湿の繰り返しによる沈下が生じても、中敷き金網40よりも上方の土砂20の沈下は中敷き金網40によって受けとめられて、中敷き金網40よりも下方の土砂20への影響を防止するため、籠全体としては土砂20の沈下の度合を中敷き金網40がない場合に比較して小さくすることができる。そのため、籠構造物の高さが小さくなること及び籠が変形してしまう(籠が膨らんでしまう)ことを防止できる。そして中敷き金網40と前面32とを連結する前面側連結部材42が存する位置において、植生シートが分割されているので、中敷き金網40と前面32との連結作業を容易に短時間で行うことができる。もちろん中敷き金網40によって土砂20の水平方向の変形を抑制できる。
【0033】
前面側連結部材42は、前面32において溶接金網の上下に延びる鉄線に沿って移動可能に取り付けられているので、土砂20の沈下により中敷き金網40に下側への力がかかっても、前面側連結部材42が下側に移動することができる。前面側連結部材42が下側に移動できないと仮定すると、中敷き金網40と前面側連結部材42とに大きな力がかかって、それらに変形が生じたり破損が生じたりするおそれがあり、あるいは前面32に変形が生じるおそれがある。後面側連結部材46も縦線に固定されており、下側に移動することは可能であり、少なくとも下側に傾くことはできる。
【0034】
また、下側の第1植生シート24の上端部及び上側の第2植生シート26下端部は前面側連結部材42を挟むように配置されているとともに、それぞれ籠の内側に折り曲げられているので、前面側連結部材42の下側への移動を妨げず、また前面側連結部材42の下側への移動によって植生シート24,26が損傷することもない。そして、前面側連結部材42が下側へ移動しても土砂20が籠の外に出てしまうことを確実に防止できる。
【0035】
補強ステー28を1つの籠について上下方向において2箇所、中敷き金網40を挟む位置に設置しているので、前面32と後面34との変形がさらに防止される。また、土砂20を投入する際は、補強ステー28を配置する位置よりも上になるように、あらかじめ補強ステー28の配置位置を決めているので、転圧の際に補強ステー28が邪魔にならず、作業がやりやすい。
【0036】
前面側連結部材42は前面32の金網に対して、中央部44が外側に位置して当接しているだけであるので、前面32が露出していても人に対する危険性が増すことはない。また、中央部44は横線94とほぼ見分けがつかないので、目立ちにくい。一方、後面側連結部材44はUボルトの先端が外方に突き出しているが、後面34は埋められるため人に対する危険性はない。
【0037】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0038】
籠を形成する金網パネルの形状や構成は、実施形態1のものに限定されず、例えば、前面、後面、底面をそれぞれ1枚の金網パネルで形成してもよいし、底面や後面を菱形金網からなる金網パネルにより形成してもよい。さらに籠の内部に補強用の中間パネルを配置して前面及び後面と連結させてもよい。中間パネルは金網パネルであってもよいし、鉄線の枠の中に補強用の鉄線を溶接した構造のものであってもよい。
【0039】
前面側連結部材および後面側連結部材の構成も実施形態1のものに限定されない。前面側連結部材としてUボルトやコイル等を使用してもよいし、後面側連結部材として
図11に示す部材やコイル等を使用してもよい。
【0040】
中敷き金網は菱形金網やエキスパンドメタルからなっていてもよい。また、上下方向における配置の位置は、中央に限定されない。また、1つの籠に複数の中敷き金網を配置しても構わない。中敷き金網にフック等の連結部材を取り付けておいて、前面及び/又は後面とその連結部材によって中敷き金網とを連結しても構わない。
【0041】
植生シートは土砂が前面の金網の目から出てこないように金網の目を塞ぐ機能を有するシートであればよく、それ以外の機能は必須ではないが、降雨の場合水を早く外部に出すために透水性を有していることが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
12 前側金網パネル
14 後側金網パネル
20 土砂
24 第1植生シート(第1のシート部材)
26 第2植生シート(第2のシート部材)
32 前面
34 後面
40 中敷き金網
42 前面側連結部材
46 後面側連結部材
101,102 土留め用籠構造物